JP3430737B2 - 高強度を有するTi系炭窒化物サーメット - Google Patents

高強度を有するTi系炭窒化物サーメット

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JP3430737B2 JP26225095A JP26225095A JP3430737B2 JP 3430737 B2 JP3430737 B2 JP 3430737B2 JP 26225095 A JP26225095 A JP 26225095A JP 26225095 A JP26225095 A JP 26225095A JP 3430737 B2 JP3430737 B2 JP 3430737B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、金属結合相に対
する硬質分散相の密着性にすぐれ、これによって高強度
を有し、特に切削工具として用いた場合に、切刃に欠け
やチッピング(微小欠け)などの発生なく、長期に亘っ
てすぐれた耐摩耗性を示すTi系炭窒化物サーメット
(以下、単にサーメットという)に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、特に切削工具として用いるのに適
したサーメットとして、例えば特開平6−256884
号公報および特開平6−299281号公報に記載され
るように、Coおよび/またはNiを主成分とする金属
結合相:5〜30容量%を含有し、残りが、実質的に芯
部がTi炭窒化物(以下、TiCNで示す)および/ま
たはTiと、W,Mo,Ta,Nb,V、およびZrの
うちの1種以上とのTi系複合炭窒化物[以下、(T
i,M)CNで示す]で構成され、周辺部が(Ti,
M)CNで構成された有芯構造の硬質分散相と、TiC
Nおよび/または(Ti,M)CNで構成された単一相
構造の硬質分散相からなるサーメットが知られている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】一方、近年の例えば切
削加工分野におけるFA化はめざましく、かつ省力化に
対する要求も強く、これに伴ない、連続切削は勿論のこ
と、断続切削でもすぐれた切削性能を発揮する切削工具
が必要とされる傾向にあるが、上記の従来サーメットを
切削工具として適用した場合、特に断続切削で強度不足
が原因で切刃に欠けやチッピング(微小欠け)などが発
生し易く、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状であ
る。 【0004】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、上記の従来サーメットに着目
し、これの強度向上をはかるべく研究を行なった結果、
焼結に際して、焼結温度に所定時間保持[この時点で結
合相中にMoおよび/またはW(以下、Mo/Wで示
す)は10重量%以上の固溶含有が可能であるが、T
i,Zr,V,Ta、およびNbはそれぞれ1重量%以
下固溶含有するにすぎない]した後、前記焼結温度から
(液相出現温度−100℃)以下の温度まで冷却(炉冷
または急冷)し、再び液相出現温度+(10〜50℃)
の温度まで昇温すると、結合相中に固溶するMo/Wが
結合相と硬質分散相の界面にMo/W系複合炭窒化物
[以下、(Mo/W,M)CNで示す]として析出する
ようになり、したがって焼結温度で結合相中に固溶含有
するMo/Wの含有割合を調整して、前記結合相と硬質
分散相の界面に析出した(Mo/W,M)CNにおける
Mo/Wの含有割合を、前記析出した(Mo/W,M)
CNの金属成分の合量に占める割合で50〜75重量%
とすると、この結果の析出した(Mo/W,M)CNは
結合相および硬質分散相のいずれにもすぐれた密着性
(ぬれ性)を示し、かつ再昇温時の保持時間を短時間、
望ましくは1分以下に調整して、硬質分散相と金属結合
相の界面にそって形成される前記析出(Mo/W,M)
CNの厚さを1〜50nmにすると、この厚さではサーメ
ットの特性に悪影響を及ぼすことはなく、むしろ前記
(Mo/W,M)CNからなる析出薄層のもつすぐれ
た密着性によって著しい強度向上がもたらされるように
なるという研究結果を得たのである。 【0005】この発明は、上記の研究結果にもとづいて
なされたものであって、Coおよび/またはNiを主成
分とする金属結合相:5〜30容量%を含有し、残り
が、実質的に芯部がTiCNおよび/または(Ti,
M)CNで構成され、周辺部が(Ti,M)CNで構成
された有芯構造の硬質分散相と、TiCNおよび/また
は(Ti,M)CNで構成された単一相構造の硬質分散
相からなるサーメットにおいて、上記硬質分散相と金属
結合相の界面にそって、(Mo/W,M)CNからなる
析出薄層を1〜50nmの厚さで形成し、かつ前記析出薄
層におけるMo/Wの含有割合が、前記析出薄層を構成
する(Mo/W,M)CNの金属成分の合量に占める割
合で50〜75重量%である、強度の著しい向上をはか
ったサーメットに特徴を有するものである。 【0006】つぎに、この発明のサーメットにおいて、
上記の通りに数値限定した理由を説明する。 (a) 金属結合相の含有割合 その含有割合が5容量%未満では、所望の焼結性を確保
するのが困難となり、強度低下は避けられず、一方その
含有割合が30容量%を越えると、硬さが急激に低下
し、摩耗進行が促進するようになることから、その含有
割合を5〜30容量%と定めた。 【0007】(b) 析出薄層を構成する(Mo/W,
M)CNのMo/W含有割合Mo/Wの含有割合が、析出薄層を構成する(Mo/
W,M)CNの 金属成分の合量に占める割合で50重量
%未満では、金属結合相および硬質分散相の両方に対し
て、所望のすぐれた密着性を確保することができず、こ
の結果所望の高強度は得られず、一方その含有割合が7
5重量%を越えると、(Mo/W,M)CN自体が脆化
し、欠損が発生し易くなることから、その含有割合を5
0〜75重量%と定めた。 【0008】(c) 析出薄層の厚さ その厚さが1nm未満では所望のすぐれた密着性を結合相
および硬質分散相の間に確保することができず、一方そ
の厚さが50nmを越えると、析出薄層が破壊の起点とな
り、欠損が発生し易くなることから、その厚さを1〜5
0nm、望ましくは2〜15nmと定めた。 【0009】 【発明の実施の形態】原料粉末として、いずれも0.5
〜2μmの範囲内の所定の平均粒径を有する(Ti,
W)CN[重量比で(以下同じ)、TiCN/WC=7
0/30]粉末、(Ti,Mo)CN[TiCN/Mo
2 C=90/10]粉末、(Ti,Zr)CN[TiC
N/ZrC=85/15]粉末、(Ti,Ta)CN
[TiCN/TaC=80/20]粉末、(Ti,N
b)CN[TiCN/NbC=80/20]粉末、(T
i,Mo,W)CN[TiCN/WC/Mo2 C=70
/20/10]粉末、(Ti,V,W)CN[TiCN
/VC/WC=70/10/20]粉末、(Ti,N
b,W)CN[TiCN/NbC/WC=70/10/
20]粉末、(Ti,Ta,W)CN[TiCN/Ta
C/WC=70/10/20]粉末、(Ti,Zr,
W)CN[TiCN/WC/ZrC=75/20/5]
粉末、(Ti,Nb,Mo)CN[TiCN/NbC/
Mo2 C=80/10/10]粉末、(Ti,Nb,T
a,W)CN[TiCN/NbC/TaC/WC=65
/5/10/20]粉末、(Ti,Zr,Nb,W)C
N[TiCN/ZrC/NbC/WC=70/5/5/
20]粉末、(Ti,V,Nb,W)CN[TiCN/
VC/NbC/WC=65/5/10/20]粉末、
(Ti,V,Ta,Mo)CN[TiCN/VC/Ta
C/Mo2 C=75/5/10/10]粉末、(Ti,
V,Nb)CN[TiCN/VC/NbC=85/5/
10]粉末、(Ti,Nb,Ta)CN[TiCN/N
bC/TaC=70/10/20]粉末、(Ti,Z
r,Nb,Ta)CN[TiCN/ZrC/NbC/T
aC=80/5/5/10]粉末、TiCN粉末、さら
に表1〜3に示される各種の炭化物粉末、窒化物粉末、
および炭窒化物粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意
し、これら原料粉末を表1〜3に示される配合組成に配
合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、
1.5ton /cm2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、前記
圧粉体を、常温から900℃までの昇温速度を10℃/
min とし、900℃から1420〜1600℃の範囲内
の所定の焼結温度までの昇温速度を2℃/min とし、前
記焼結温度に1時間保持した後、1250℃まで炉冷
し、再び2℃/min の昇温速度で1370℃に加熱し、
1370℃に昇温直後炉冷する条件(この場合の雰囲気
は、1350℃までの昇温過程を0.01〜0.5torr
の真空雰囲気とし、1350℃に昇温後は冷却過程の1
200℃までを10torrの窒素雰囲気とし、さらに12
00℃以下の冷却過程は再び0.01〜0.5torrの真
空雰囲気とした)で焼結することにより、それぞれ表4
〜6に示される本発明サーメット1〜30で構成され
た、幅:8mm×厚さ:6mm×長さ:25mmの寸法をもっ
た抗折力測定用試片、幅:3mm×厚さ:4mm×長さ:1
5mmの3点曲げ試験(破壊靭性値測定)用試片、および
SNMG432の規格に則した形状をもった切削工具と
してのスローアウェイチップをそれぞれ製造した。 【0010】また、比較の目的で、表3に示される配合
組成とし、かつ上記の焼結条件のうちの焼結温度から室
温までの冷却を10torrの窒素雰囲気での炉冷にて行な
う以外は同一の条件で表7に示される従来サーメット1
〜10で構成された抗折力測定用試片、3点曲げ試験用
試片、およびスローアウェイチップをそれぞれ製造し
た。 【0011】なお、この結果得られた各種サーメットに
おいて、硬質分散相と金属結合相の割合、並びに硬質分
散相における構成成分割合を走査型電子顕微鏡および画
像解析装置を用いて測定し、また析出薄層の厚さと、析
出薄層におけるMo/Wの割合(金属成分に占める割
合)を高分解能の透過型電子顕微鏡(1nm以上の分解
能)を用いて測定した。これらの測定結果は表4〜7に
示す通りである。また、強度を評価する目的で、抗折力
および破壊靭性値を測定し、さらに、 被削材:SNCM439(硬さ:HB 270)の長さ方
向等間隔4本縦溝入り丸棒、 切削速度:200m/min.、 切り込み:1mm、 送り:0.2mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での鋼の乾式断続切削試験を行ない、切刃の逃げ
面摩耗幅を測定した。これらの測定結果も表8,9に示
した。 【0012】 【表1】【0013】 【表2】【0014】 【表3】【0015】 【表4】【0016】 【表5】【0017】 【表6】【0018】 【表7】【0019】 【表8】【0020】 【表9】【0021】 【発明の効果】表4〜9に示される結果から、本発明サ
ーメット1〜30は、いずれも金属結合相と硬質分散相
の界面に形成された析出薄層によって硬質分散相の金属
結合相に対する密着性が著しく向上し、これによって高
い強度(抗折力および破壊靭性値)をもつようになり、
かつ断続切削でもすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対し
て、前記析出薄層の形成がない従来サーメット1〜10
においては、強度が低く、断続切削では切刃に欠けやチ
ッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ること
が明らかである。上述のように、この発明のサーメット
は、高強度を有し、かつ切削工具として用いた場合に
は、連続切削は勿論のこと、断続切削においてもすぐれ
た切削性能を長期に亘って発揮し、切削加工のFA化お
よび省力化に十分満足に対応することができるものであ
る。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 Coおよび/またはNiを主成分とする
    金属結合相:5〜30容量%を含有し、残りが、実質的
    に芯部がTi炭窒化物および/またはTiと、W,M
    o,Ta,Nb,V、およびZrのうちの1種以上との
    Ti系複合炭窒化物で構成され、周辺部がTiと、W,
    Mo,Ta,Nb,V、およびZrのうちの1種以上と
    のTi系複合炭窒化物で構成された有芯構造の硬質分散
    相と、Ti炭窒化物および/またはTiと、W,Mo,
    Ta,Nb,V、およびZrのうちの1種以上とのTi
    系複合炭窒化物で構成された単一相構造の硬質分散相か
    らなるTi系炭窒化物サーメットにおいて、 上記硬質分散相と金属結合相の界面にそって、Moおよ
    び/またはW系複合炭窒化物からなる析出薄層を1〜5
    0nmの厚さで形成し、かつ前記析出薄層におけるMoお
    よび/またはWの含有割合が、前記析出薄層を構成する
    Moおよび/またはW系複合炭窒化物の金属成分の合量
    に占める割合で50〜75重量%であることを特徴とす
    る高強度を有するTi系炭窒化物サーメット。
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