JP3427634B2 - 原子力プラントの制御棒駆動装置用ガイドローラ - Google Patents

原子力プラントの制御棒駆動装置用ガイドローラ

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JP3427634B2 JP24692996A JP24692996A JP3427634B2 JP 3427634 B2 JP3427634 B2 JP 3427634B2 JP 24692996 A JP24692996 A JP 24692996A JP 24692996 A JP24692996 A JP 24692996A JP 3427634 B2 JP3427634 B2 JP 3427634B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は原子炉プラントの制
御棒駆動装置に使用されるガイドローラに関する。
【0002】
【従来の技術】従来原子力プラントにおける摺動部には
コバルト基合金が多く使用されている。たとえば制御棒
のガイドローラやブッシュ等にはステライトの鋳造材が
用いられている。このステライトはコバルトを主成分と
し、クロムを28〜30%,炭素を1〜2.5% 、さら
にタングステン,鉄,ニッケルを少量含有している。高
クロムであるために耐食性が良く、また高炭素であるた
めに硬さが高く耐摩耗性に優れている。しかしながら、
この合金部材が高温高圧の原子炉水中におかれるとコバ
ルトが炉水中に溶出し、これが燃料被覆管表面に付着し
て放射化され、再び溶出して炉水中を循環する。その結
果、プラント定期検査や補修時における被爆線量が増大
し運転休止期間が長期化してプラントの稼働率を低下さ
せる。このようなコバルトの溶出による線量の増大を防
止するにはコバルト基合金に替わる耐摺動材料を適用す
る必要が有る。コバルトを成分元素としないローラ及び
ブッシュ用耐摩耗材料として、既に特公昭59−52228 号
が開示されている。これはローラ材にニッケル基合金を
用いたものであるが、耐摩耗性がコバルト基合金に及ば
ないため機械的荷重の高い摺動部では摩耗による寸法変
化が大きくなり、長期間の使用に耐えられない。また、
特公昭58−23454 号にはクロム,ニオブを添加したニッ
ケル基合金が開示されているが、ステライトに比べ衝撃
値が低くスクラム時の衝撃荷重に対する信頼性に難点が
あった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高温
水中,高荷重下で原子炉制御棒の円滑な駆動を長期間に
わたって保証するため、耐摩耗性がステライトより優
れ、かつスクラム時の高速駆動による衝撃荷重に対して
も信頼性が高く、またコバルトの溶出がなく、被爆線量
を低減し原子力プラントの安全性を高めることのできる
ガイドローラを提供するにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、重量で、C
1.2%より多く3.0%以下,Si1%以下,Mn2%
以下及びCr12+8×C%〜25+8×C%,残部N
iよりなるNi基合金からなり、精密鋳造或いは真空溶
解による素材から加工されたことを特徴とするガイドロ
ーラにある。
【0005】本発明は重量で、C1.2%より多く3.0
以下,Si1%以下,Mn2%以下,Al0.1〜4.
0%及びCr12+8×C%〜25+8×C%,残部N
iよりなるNi基合金からなり、精密鋳造或いは真空溶
解による素材から加工されたことを特徴とするガイドロ
ーラにある。
【0006】本発明は、重量で、C1.2%より多く3.
0%以下,Si1%以下,Mn2%以下,Cr12+8
×C%〜25+8×C%,Ti及びNbの1種以上を合
計で0.1〜1.5%,残部NiよりなるNi基合金から
なり、精密鋳造或いは真空溶解による素材から加工され
たことを特徴とするガイドローラにある。
【0007】本発明は、重量で、C1.2%より多く3.
0%以下,Si1%以下,Mn2%以下,Cr12+8
×C%〜25+8×C%,Mo及びWの1種以上を合計
で0.5 %より多く10%以下,残部NiよりなるNi
基合金からなり、精密鋳造或いは真空溶解による素材か
ら加工されたことを特徴とするガイドローラにある。
【0008】原子力プラントの制御棒駆動装置は従来の
水圧駆動式のものから電動モータによる微動駆動が可能
な新しいタイプのものに変わりつつある。この新タイプ
の制御棒駆動装置では中空ピストンの動きを円滑にする
ため、ガイドローラが使用されるが、従来の制御棒用ロ
ーラに比べ桁違いに負荷荷重が大きく、より高い耐摩耗
性が要求される。また、緊急時のピストンの高速駆動に
対しては衝撃荷重による破損に対する高い信頼性が要求
される。
【0009】このガイドローラにおいて、摩耗は主とし
てローラ内周面とローラを支持する固定ピンの表面で生
ずる。この場合、摩耗は高温水中における無潤滑摩耗で
あり、ローラとピンの相対的なすべり運動による凝着摩
耗となる。この凝着摩耗においては、接触部で凝着によ
り大きな剪断応力が発生し、摺動面の損傷が生ずる。こ
の場合、延性が乏しく硬い材料ではほとんど塑性変形を
伴わずに局所破壊が生じ摩耗粉となるが、延性を有する
材料では塑性流動層が形成され、繰返し摺動を受けるこ
とによって塑性流動層の一部が分離破断し摩耗粉とな
る。上記ローラの高速駆動時における耐衝撃性の観点か
ら基地はある程度軟らかくし、延性を付与する必要があ
る。したがって、耐衝撃性に優れたローラ材の耐摩耗性
を向上するには、まず凝着の頻度を減少し、かつ凝着が
生じた後の塑性流動層の成長を抑制し、さらに塑性流動
層自体を強固にし分離破断を生じにくくすることが肝要
である。しかし、従来材料においてはこの塑性流動層の
強化に対しては特に考慮がされておらず、高温水中での
耐摩耗性に限界があった。
【0010】また、制御棒駆動機構におけるガイドロー
ラは高温水中で長期間使用されるため、それに耐えうる
十分な耐食性も兼ね備えている必要がある。
【0011】本発明はかかることがらを考慮してなされ
たものである。すなわち、まずローラ,ブッシュ等のバ
ルク材に対し、本発明の最も重要なポイントは形状が比
較的大きなクロム炭化物を軟らかい基質中に分散するこ
とである。この場合、炭化物は摩耗面にかかる荷重を支
えると共に、相手材との凝着の頻度を減少し、塑性流動
層の成長を抑制する効果を有する。すなわち、炭化物が
小さいと表面の塑性流動によって炭化物の表面が合金に
よって完全に覆われるため、凝着が生じ易くなるのに対
し、炭化物がある程度大きいと塑性流動層が炭化物上で
とぎれ、完全に覆われることがないため凝着の発生を抑
制できる。そのためには炭化物のサイズがある程度以上
大きいことが必要である。本発明の合金では縦と横の長
さの和が50ミクロン以上の場合に優れた耐摩耗性を示
した。クロム炭化物のサイズをある程度大きくするもう
一つの理由は、アンカー効果による塑性流動層の抑制で
ある。20ミクロン以下になると炭化物によるアンカー
効果が少なくなり塑性流動層が形成され易くなる結果、
一度に剥離破断する容積が大きくなり摩耗量も大きくな
るのである。また、クロム炭化物の量も本発明において
は重要な要件である。すなわち、クロム炭化物の量が面
積比で10%以下では凝着と塑性流動に対する抑制効果
が十分でない。また25%以上になると相手材であるピ
ンの摩耗量が増大し全体としては好ましくない。さらに
耐衝撃性の低下も顕著になる。良好な耐摩耗性と耐衝撃
性を両立するにはクロム炭化物の量を面積比で10〜2
5%とする必要がある。
【0012】このような粗大なクロム炭化物を得るには
凝固過程で初晶炭化物あるいはニッケルとの共晶炭化物
として液相から直接晶出させればよい。そのためにはク
ロムを含むニッケル中の炭素量を適正範囲に調整する必
要がある。
【0013】さらに本発明における粗大なクロム炭化物
の重要な作用は剪断応力によって表面の炭化物が細かく
粉砕され、それが塑性流動によって基質中に取り込まれ
て、微細なクロム炭化物が密に分散し基質とは異なった
表面層を形成することにある。このような表面層は強
度,硬さが高く、また損傷が生じた部分を埋めるように
形成されるので、いわゆる自己補償作用を発現するので
ある。このように細かく粉砕されたクロム炭化物が系外
に排出されずに基質部の中に取り込まれるには基質部の
硬さが適度に軟らかいことが重要で、ビッカース硬さ
(Hv)350以下,合金組成により400以下である
必要がある。これ以上の硬さではクロム炭化物が塑性流
動層中に十分埋込まれず摩耗表面に一部留まって引っ掻
きによるいわゆるアブレッシブ摩耗となり、自材,相手
材の損傷が大きくなり、また、衝撃値の低下が顕著にな
る。基質部の硬さは二次炭化物によって大きく変化し、
Hv350以下とするには、炭化物の溶体化温度以下の
冷却途中や熱処理によって析出する二次炭化物の析出量
を面積比で2%以下に制限する必要がある。硬さの下限
値はクロムを固溶したニッケル基質の硬さであり、適正
範囲をHv200〜400とし、合金組成によって適正
の範囲とされる。
【0014】クロム炭化物相の硬さは相手材への損傷を
できるだけ小さくする観点から重要である。すなわち、
クロム炭化物は他の炭化物形成元素が存在するとそれを
固溶して硬さが高くなり、相手材の引っ掻きによるアブ
レッシブ摩耗を著しくさせ全体としては好ましくない。
炭化物の硬さがHv1300〜1800であるクロム炭
化物は特に相手材の摩耗量が少ないこと、またHv20
00以上になると相手材の摩耗量が急速に増大すること
がわかった。
【0015】高温水に対する耐食性を確保する観点か
ら、ニッケル基質中に固溶した基地のクロム量は10重
量%以上、好ましくは12%以上とする必要がある。こ
れ以下では高温水中での耐食性が充分でなく、35%以
上、好ましくは25%以上になるとかえって靭性が低下
することから12〜25%が適正である。クロムは凝固
時に炭素と反応し、クロム炭化物となって消費されるこ
とから、溶解時の合金組成としては炭素量に比例してさ
らにクロムを多く添加し、基地に留まるクロム量を確保
する必要がある。すなわち、トータルのクロム量として
12+8×C〜25+8×C%が必要である。
【0016】本発明の合金は以上示した基本的な3成分
でステライトを十分に超える耐摩耗性が得られるが、さ
らに耐食性向上の観点からモリブデン,タングステン,
ニオブまたはチタンの添加が有効である。モリブデン,
タングステンは主として基質中に固溶し耐食性を高める
が、0.5% 以下ではその効果がなく、10%を超える
と硬さがHv2000以上の硬い炭化物が2%以上析出
し、衝撃特性が低下すると共に相手材の摩耗量が増加し
好ましくない。1〜5%が好ましい。ニオブまたはチタ
ンの添加は基質中に固溶しているフリ−の炭素を固定し
耐食性を向上するのに効果的なもので、0.1〜1.5%
が適当な範囲でそれ以上では硬いニオブ炭化物が析出
し、衝撃値の低下をきたすと共に相手材の摩耗量を増大
させる。0.1〜0.5%が好ましい。
【0017】
【0018】Cは基地を強化し、クロム炭化物を形成す
るのになくてはならないものであるが、1.2% 以下で
は耐摩耗性が低く、3.0% を越えると相手材の摩耗を
多くするので好ましくない。より、1.5〜2.5% が
好ましい。
【0019】Siは脱酸剤等として添加されるもので、
1%以下が好ましい。特に、0.05〜0.5%が好まし
い。
【0020】MnはSiと同様であり、2%以下が好ま
しく、より0.1〜0.5%が好ましく、Siと同様に製
造上から無添加とすることができる。
【0021】Alは耐酸化性及び基地の強化をするため
に0.1〜4.0%添加される。
【0022】
【発明の実施の形態】〔実施例1〕 表1は摺動摩耗試験に供したローラ材の化学成分(重量
%)を示す。A1〜A5は炭素量によって炭化物量を変
えたクロム−炭素−ニッケル3元系合金である。B1〜
B4はアルミニウムを添加しγ′(Ni3Al)量によっ
て基質部の硬さを変えたニッケル合金であり、C1〜C
4はクロム量を変えたものである。D1〜D6はA3に
モリブデン,ニオブ,チタンを添加したものである。R
1は比較材として用いたコバルト基合金である。コバル
ト基合金を除いたニッケル基合金は精密鋳造によるニア
ネットシェイプの素材及び真空溶解によるインゴット
(5kg)の素材から外径17mm,内径5.5mm,幅7.5
mmのローラに加工した。
【0023】
【表1】
【0024】摺動摩耗試験において相手材となるピン材
の化学成分を表2に示す。P1はA1〜D6のローラと
組み合わせて試験を行った鉄基合金のピン材であり、P
2はR1のコバルト基合金のローラ材と組み合わせ
験を行ったコバルト基合金のピンである。P1は溶解
で作製したインゴットを熱間鍛造で棒状にし、さらに冷
間加工を30%行った後、機械加工によりφ5.5mmの
ピンとした。
【0025】
【表2】
【0026】表3は精密鋳造法によるローラ材について
摩耗試験結果、シャルピー衝撃試験結果、高温水中での
腐食試験結果及び基質部の硬さ、Cr炭化物の面積比を
示す。摩耗試験はローラにピンを挿入して試験機に装着
し、ピンを介してローラをステンレス(SUS316L)製の回
転体に10kgの荷重で押しつけて行った。試験環境は実
炉条件を模擬した288℃高温水中とし、ローラ周速度
0.03m/s ,走行距離10kmで行い、1km当りの重
量減少量を摩耗減量とした。シャルピー衝撃試験は10
mm角のノッチ無し試験片を用いて行った。また、腐食試
験は288℃,溶存酸素0.2ppm ,pH7.2の高温純
水中に2000時間放置した時の重量減少量を求めた。
【0027】
【表3】
【0028】A1〜A5の炭素量を変えた実質的にクロ
ム−炭素−ニッケル3元合金において、摩耗減量は炭素
量すなわちクロム炭化物量の増大と共に減少し、面積比
で10%以上(炭素量1.5%以上)でCo基合金より摩
耗量が少なくなり良好な耐摩耗性を示す。しかし、25
%(炭素量2.5%)を超えると相手材(ピン)の摩耗量
が顕著になる。炭素量1.5〜2.5wt%(クロム炭化
物量の面積比10〜25%)の範囲で良好な摩耗特性を
示している。
【0029】B1〜B4のクロム炭化物量を一定にし、
ニッケル基地の硬さをγ′量と2次炭化物量で変えた場
合の摩耗試験結果からニッケル基地の硬さがHv300
を超えると摩耗量が増加し、Hv350以上になるとC
o基合金よりも摩耗量が大きくなり、衝撃値が著しく低
下することから基地の硬さはHv350以下とする必要
のあることがわかる。
【0030】クロムについてはC1〜C4の結果から、
12+8×C%未満では高温水中での腐食減量がCo基
合金よりも大きくなり、また25+8×C%を超えると
耐食性に対する効果が飽和し、衝撃値の低下が顕著にな
る。
【0031】D1〜D6の結果からwt%のモリブデ
ンの添加は耐摩耗性を損なわずに耐食性の向上に効果が
あることがわかる。また、wt%のタングステンも耐
食性を損なわずに耐磨耗性の向上に効果がある。さらに
0.5 wt%のニオブ或いはチタンも高温水中での耐食
性の向上に有効である。
【0032】図2は本発明の代表的な組織(A3)を示
す。黒く見える部分がクロム炭化物である。
【0033】図3は本発明の合金(A3)のローラ摩耗
断面を示す。表面付近の塑性流動層中には細かく砕かれ
たクロム炭化物が埋め込まれている。
【0034】図4は腐食減量と基地のCr量との関係を
示す線図である。図に示すように基地のCr量を高める
ことによって腐食が抑制されることが分る。特に、基地
のCr量を10%以上とすることにより顕著に耐食性が
向上する。より12%以上で高い耐食性が得られる。
【0035】図5はローラ及びピンの摩耗量とC量との
関係を示す線図である。図に示すように摩耗量はC量が
1.5〜2.5%でローラ及びピンともに顕著に少ない。
【0036】図6はローラの摩耗減量とCr炭化物の面
積率との関係を示す線図である。図に示すようにCr炭
化物の面積率を10%以上とすることにより摩耗量を約
4mg/km以下とすることができる。特に、20%以上で
より小さい摩耗量のものが得られる。
【0037】図7及び図8はローラ及びピンの摩耗量と
基地の硬さとの関係を示す線図である。図7に示すよう
にローラの摩耗量はCr−Ni−C系合金においてはそ
の硬さはCr炭化物量によって高められ、その結果ロー
ラの摩耗量を低める。特に、基地の硬さをHvで230
以上、より好ましくは240以上とすることにより摩耗
量を少なくすることができる。Alを含む合金のBシリ
ーズのものはAlの含有量を高めるとともに硬さが増
し、特にHvで350以上で著しく摩耗量が増大する。
また、Nb及びTiを各々1.5% 含むD3及びD5の
合金はHvで380以上では顕著に摩耗量が多くなる。M
o及びWを含むD1及びD6は基地の硬さが高くなるが
摩耗量は変らず高い耐摩耗性を有する。
【0038】図8に示すようにピンの摩耗量はCr−N
i−C系では基地の硬さ(Hv)が260以上で急激に
増大する。また、Alを含むBシリーズでは基地の硬さ
(Hv)が360以上で摩耗量が増大する。Mo,Wに
おいてはHvで400及びTi及びNbにおいても40
0程度までは大きな摩耗量にはならない。
【0039】図9はローラ及びピンの摩耗量とAl量と
の関係を示す線図である。Alを含有させることによっ
て基地の硬さが急激に高められ、ローラ及びピンもに
耐摩耗性が低下する。しかし、4%を超えると摩耗量が
多くなる。
【0040】図10はローラ及びピンの摩耗量とMo,
Nb,Ti及びW量との関係を示す線図である。図に示
すようにMo及びWは5%程度までは摩耗量は増加しな
いので耐食性の向上には有効である。Ti及びNbは特
にローラにおいては急激に摩耗量を増加するのでTi及
びNb量をともに1.5% 以下とするのが好ましい。 〔実施例2〕 図11は沸騰水型原子炉炉心の部分断面図である。
【0041】本原子炉は蒸気温度286℃,蒸気圧力7
0.7atgで運転され、発電出力として500,800,
1100MWの発電が可能である。各名称は次の通りで
ある。炉心は、中性子源パイプ51,炉心支持板52,
中性子計装検出管53,制御棒54,炉心シュラウド5
5,上部格子板56,燃料集合体57,上鏡スプレイノ
ズル58,ベントノズル59,圧力容器蓋60,フラン
ジ61,計測用ノズル62,気水分離器63,シュラウ
ドヘッド64,給水入口ノズル65,ジェットポンプ6
6,蒸気乾燥機68,蒸気出口ノズル69,給水スパー
ジャ70,炉心スプレイ用ノズル71,下部炉心格子7
2,再循環水入口ノズル73,バッフル板74,制御棒
案内管75を具備している。
【0042】前述の上部格子板56はリム胴,フランジ
及びグリットプレートを有し、これらにはSUS316鋼多結
晶の圧延材が用いられる。グリットプレート35は互い
に交叉しているだけで互いに固定はされていない。ま
た、炉心支持板52は同じくSUS316鋼多結晶圧延材が用
いられ、一枚の圧延板により製造され、燃料支持金具を
取り付ける穴が設けられ、円周面で炉容器に固定され
る。従っていずれも中性子照射を受ける中心部では熔接
部がない構造である。
【0043】図1は電動モータによる微動駆動可能な制
御棒駆動機構の断面図である。表1の試料A3のローラ
と表2に示したP1のピンを実施例1と同様に製作し3
2組装着し、40年に相当する負荷駆動試験を実炉を模
擬した高温水中循環で行った。その結果、ローラ及びピ
ンとも摩耗による寸法変化は僅少で設計基準を十分満足
するものであった。また、スクラム駆動時の衝撃荷重で
の破損も全くみられなかった。
【0044】本実施例における制御棒駆動機構はモータ
3によって回転するピストン駆動用ネジ9を通して駆動
ピストン7により中空ピストン4を介して制御棒1を上
下に駆動するものであり、原子炉圧力容器2に溶接によ
って接続される。制御棒1は制御棒案内管5の中で駆動
される。水圧駆動ピストン10は緊急時に水挿入配管8
より水を挿入することにより制御棒1を上方に急速に持
ち上げるようにするもので、駆動ピストン7とは分離さ
れている。特に高温水に接する部分はSUS316Lが使用さ
れる。また、制御棒1は自重で落下する構造になってい
る。
【0045】また、本実施例におけるローラとピンは図
示されるA〜Hの各々の位置に、中空ピストン4とハウ
ジング6内に設けられた各種チューブとの間に中空ピス
トンがスムースに移動できるように設けられている。A
はバッファ部で、上下に2個所あり、各々4ヶずつ90
度間隔で設けられる。Bはストップピストン部、Cはス
ピンドルヘット部、Dはボールねじ上部、Eはラッチ支
持部、Fはラッチ外側面、Gは中空ピストン/ボールナ
ット部で各々2ヶ所に各4個ずつ設けられる。Hはミド
ルフランジ部で、円周上に6ヶ設けられる。各部分のロ
ーラとピンの形状は次の通りである。
【0046】図12はA部におけるローラ16にピン1
7を挿入した断面図であり、ピン17は押えピン18に
よって回転が拘束される。ピン17は3段階の直径を有
する。ローラ16はピン部で厚肉で、外周面で若干薄肉
になっている。
【0047】図13はC部における外側部分及び図14
は同じくその内側部分に設けられる断面が相似の卵形の
ローラ16にピン17を挿入した断面図である。D部は
同じ構造のローラとピンが設けられる。ピン17は頭部
で太径になっており、ローラ部と頭部との反対面側まで
がストレートな構造を有する。
【0048】図15はG部及び図16はH部におけるロ
ーラ16とピン17であり、前者がボールナットローラ
・ピンである。ピン17は先端部を円錐形で頭部が若干
ローラ部より大径になっている。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、合金組成としてコバル
トをまったく含まないので、高温高圧の炉水中へのコバ
ルトの溶出がないので誘導放射化による被爆線量を低く
押さえることができる。また、耐摩耗性がステライトよ
り優れているので、摩耗による摺動部材の寸法変化が少
なく、また焼き付き等により軸受部のスム−ズな回転が
損なわれることがなく、信頼性の高い原子力プラントの
運転が可能となる。さらに耐腐食性,耐衝撃性に優れて
いるので長時間の運転や緊急時の高速駆動に対しても高
い信頼性を確保できる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】制御棒駆動装置の断面図。
【図2】本発明合金の断面の金属組織を示す顕微鏡写
真。
【図3】本発明合金の摩耗試験後の断面の金属組織を示
す顕微鏡写真。
【図4】腐食減量と基地のCr量との関係を示す線図。
【図5】摩耗量とC量との関係を示す線図。
【図6】ローラの摩耗減量とCr炭化物の面積率との関
係を示す線図。
【図7】ローラの摩耗減量と基地の硬さとの関係を示す
線図。
【図8】ピンの摩耗量と基地の硬さとの関係を示す線
図。
【図9】摩耗減量とAl量との関係を示す線図。
【図10】摩耗減量とMo,Ti,Nb及びW含有量と
の関係を示す線図。
【図11】原子炉の部分断面図。
【図12】ピンとローラの断面図。
【図13】ピンとローラの断面図。
【図14】ピンとローラの断面図。
【図15】ピンとローラの断面図。
【図16】ピンとローラの断面図。
【符号の説明】
1,54…制御棒、2…圧力容器、3…モータ、4…中
空ピストン、5…制御棒案内管、6…ハウジング、7…
駆動ピストン、8…水挿入配管、9…ピストン駆動用ネ
ジ、10…水圧駆動ピストン、16…ローラ、17…ピ
ン、18…押えピン、75…制御棒案内管。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 越石 正人 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (72)発明者 白木 智美 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (56)参考文献 特開 昭52−134809(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 19/05 G21C 7/12

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子力プラントの制御棒駆動装置に使用さ
    れるガイドローラであって、重量で、C1.2%より多
    3.0%以下,Si1%以下,Mn2%以下及びCr
    12+8×C%〜25+8×C%,残部Niよりなる
    i基合金からなり、精密鋳造或いは真空溶解による素材
    からローラに加工されたことを特徴とする原子力プラン
    トの制御棒駆動装置用ガイドローラ。
  2. 【請求項2】原子力プラントの制御棒駆動装置に使用さ
    れるガイドローラであって、重量で、C1.2%より多
    3.0%以下,Si1%以下,Mn2%以下,Al0.
    1 〜4.0% 及びCr12+8×C%〜25+8×C
    %,残部NiよりなるNi基合金からなり、精密鋳造或
    いは真空溶解による素材からローラに加工されたことを
    特徴とする原子力プラントの制御棒駆動装置用ガイドロ
    ーラ。
  3. 【請求項3】原子力プラントの制御棒駆動装置に使用さ
    れるガイドローラであって、重量で、C1.2%より多
    3.0%以下,Si1%以下,Mn2%以下,Ti及
    びNbの1種以上を合計で0.1〜1.5%,及びCr
    2+8×C%〜25+8×C%,残部NiよりなるNi
    基合金からなり、精密鋳造或いは真空溶解による素材か
    らローラに加工されたことを特徴とする原子力プラント
    の制御棒駆動装置用ガイドローラ。
  4. 【請求項4】原子力プラントの制御棒駆動装置に使用さ
    れるガイドローラであって、重量で、C1.2%より多
    3.0%以下,Si1%以下,Mn2%以下,Mo及
    びWの1種以上を合計で0.5 %より多く10%以下
    及びCr12+8×C%〜25+8×C%,残部Niよ
    りなるNi基合金からなり、精密鋳造或いは真空溶解に
    よる素材からローラに加工されたことを特徴とする原子
    力プラントの制御棒駆動装置用ガイドローラ。
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