JPH1072642A - 耐摩耗合金及びそれを用いた制御棒駆動装置と原子炉 - Google Patents

耐摩耗合金及びそれを用いた制御棒駆動装置と原子炉

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JPH1072642A
JPH1072642A JP8246929A JP24692996A JPH1072642A JP H1072642 A JPH1072642 A JP H1072642A JP 8246929 A JP8246929 A JP 8246929A JP 24692996 A JP24692996 A JP 24692996A JP H1072642 A JPH1072642 A JP H1072642A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、原子力プラントの制御棒駆動
機構の摺動部にコバルトを含まない耐摩耗材料を適用す
ることによって、コバルトの溶出による放射線量の低減
を図るとともに、高荷重や衝撃荷重下での制御棒の円滑
な駆動を長期間にわたって保証することのできる耐摩耗
性合金及びそれを用いた制御棒駆動装置と原子炉を提供
することにある。 【解決手段】本発明は、ニッケルまたは鉄を主成分とす
る合金において、棒状のクロム炭化物を面積比で10〜
28.5% 有し、基質部のCr量を10%以上、その硬
さをHv200〜400とした耐摩耗合金及びそれをロ
ーラに使用した制御棒駆動装置と原子炉にある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗性と同時に耐
食性,耐衝撃性に優れた耐摩耗合金に係り、特に原子炉
プラントの制御棒駆動装置に使用される摺動部材に好適
な耐摩耗合金及びそれを用いた制御棒駆動装置と原子炉
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来原子力プラントにおける摺動部には
コバルト基合金が多く使用されている。たとえば制御棒
のガイド用ローラやブッシュ等にはステライトの鋳造材
が用いられている。このステライトはコバルトを主成分
とし、クロムを28〜30%,炭素を1〜2.5% 、さ
らにタングステン,鉄,ニッケルを少量含有している。
高クロムであるために耐食性が良く、また高炭素である
ために硬さが高く耐摩耗性に優れている。しかしなが
ら、この合金部材が高温高圧の原子炉水中におかれると
コバルトが炉水中に溶出し、これが燃料被覆管表面に付
着して放射化され、再び溶出して炉水中を循環する。そ
の結果、プラント定期検査や補修時における被爆線量が
増大し運転休止期間が長期化してプラントの稼働率を低
下させる。このようなコバルトの溶出による線量の増大
を防止するにはコバルト基合金に替わる耐摺動材料を適
用する必要が有る。コバルトを成分元素としないローラ
及びブッシュ用耐摩耗材料として、既に特公昭59−5222
8 号が開示されている。これはローラ材にニッケル基合
金を用いたものであるが、耐摩耗性がコバルト基合金に
及ばないため機械的荷重の高い摺動部では摩耗による寸
法変化が大きくなり、長期間の使用に耐えられない。ま
た、特公昭58−23454 号にはクロム,ニオブを添加した
ニッケル基合金が開示されているが、ステライトに比べ
衝撃値が低くスクラム時の衝撃荷重に対する信頼性に難
点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高温
水中,高荷重下で原子炉制御棒の円滑な駆動を長期間に
わたって保証するため、耐摩耗性がステライトより優
れ、かつスクラム時の高速駆動による衝撃荷重に対して
も信頼性が高く、またコバルトの溶出がなく、被爆線量
を低減し原子力プラントの安全性を高めることのできる
耐摩耗合金及びそれを用いた制御棒駆動装置と原子炉を
提供するにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、重量で、C
1.0〜3.0%及びCr12〜50%を含み、棒状のク
ロム炭化物を有し、クロム炭化物量が面積率で10〜2
8.5% 及び基地のクロム量が10重量%以上のFe基
又はNi基合金からなることを特徴とする耐摩耗性合金
にある。
【0005】更に、本発明は重量で、C1.0〜3.0%
及びCr12〜50%を含み、棒状のクロム炭化物を有
し、クロム炭化物量が面積率で15〜28.5% 及び基
地の室温のヴィッカース硬さが230〜260であるF
e基又はNi基合金からなることを特徴とする耐摩耗性
合金にある。
【0006】本発明は、重量で、C1.0〜3.0%,C
r12〜50%及びAl0.1〜4.0%を含み、棒状のク
ロム炭化物を有し、基地のクロム量が10重量%以上及
び基地の室温のヴィッカース硬さが200〜350であ
るFe基又はNi基合金からなることを特徴とする耐摩
耗合金にある。
【0007】本発明は、重量で、C1.0〜3.0%,C
r12〜50%,Ti及びNbの1種以上を合計で0.
1〜1.5%を含み、棒状のクロム炭化物を有し、基地
のクロム量が10重量%以上及び基地の室温のヴィッカ
ース硬さが200〜380であるFe基又はNi基合金
からなることを特徴とする耐摩耗合金にある。
【0008】本発明は、重量で、C1.0〜3.0%,C
r12〜50%,Mo及びWの1種以上を合計で0.5
〜10% を含み、棒状のクロム炭化物を有し、基地の
クロム量が10重量%以上及び基地の室温のヴィッカー
ス硬さが200〜400であるFe基又はNi基合金か
らなることを特徴とする耐摩耗合金にある。
【0009】本発明は、2次炭化物の量が面積比で5%
以下であることを特徴とする。
【0010】本発明は、ハウジングと、該ハウジング内
に設けられた中空ピストンと、該中空ピストンを上下に
駆動する駆動ピストンと、前記中空ピストンと前記ハウ
ジング内のチューブとの間で該チューブに設けられたロ
ーラと、該ローラの回転軸となるピンとを備えた制御棒
駆動装置において、前記ローラが前述の合金によって構
成されることを特徴とする。
【0011】本発明の制御棒駆動装置は、前記ローラと
ピンは該ローラとピンとの摺動幅0.75mm 当り1kgの
荷重下で、288℃高温水中での前記ローラとピンの両
者の摩耗減量が摺動幅7.5mm に対し摺動距離1km当り
10mg以下の鉄基又はニッケル基鋳造合金によって構成
されることを特徴とする。
【0012】本発明の制御棒駆動装置は、前記ローラは
前記ピンとの摺動幅0.75mm 当り1kgの荷重下で、2
88℃高温水中での摩耗減量が摺動幅7.5mm に対し摺
動距離1km当り8.5mg 以下である鉄基又はニッケル基
鋳造合金よりなることを特徴とする。
【0013】本発明の制御棒駆動装置において、前記ピ
ンは前記ローラとの摺動幅0.75mm当り1kgの荷重下
で、288℃高温水中での摩耗減量が摺動幅7.5mm に
対し摺動距離1km当り4.5mg 以下である鉄基又はニッ
ケル基鋳造合金よりなることを特徴とする。
【0014】本発明は、圧力容器と、該圧力容器内に設
けられた燃料集合体と、該燃料集合体間に設けられる制
御棒と、該制御棒を駆動する前述の制御棒駆動装置とを
備えた原子炉であって、該原子炉は燃焼度が45GWd
/t以上であり、前記燃料集合体を構成する最外周のチ
ャンネルボックスはその燃焼度8GWd/t当りの曲が
り量が0.8mm 以下及び前記燃焼度45GWd/tでの
曲がり量が2.8mm 以下であり、前記制御棒駆動装置が
30年以上無交換で使用でき、稼働率を85%以上とし
たことを特徴とする。
【0015】本発明は、前述の耐摩耗合金よりなること
を特徴とする制御棒駆動装置用ローラにある。
【0016】原子力プラントの制御棒駆動装置は従来の
水圧駆動式のものから電動モータによる微動駆動が可能
な新しいタイプのものに変わりつつある。この新タイプ
の制御棒駆動装置では中空ピストンの動きを円滑にする
ため、ガイドローラが使用されるが、従来の制御棒用ロ
ーラに比べ桁違いに負荷荷重が大きく、より高い耐摩耗
性が要求される。また、緊急時のピストンの高速駆動に
対しては衝撃荷重による破損に対する高い信頼性が要求
される。
【0017】このローラにおいて、摩耗は主としてロー
ラ内周面とローラを支持する固定ピンの表面で生ずる。
この場合、摩耗は高温水中における無潤滑摩耗であり、
ローラとピンの相対的なすべり運動による凝着摩耗とな
る。この凝着摩耗においては、接触部で凝着により大き
な剪断応力が発生し、摺動面の損傷が生ずる。この場
合、延性が乏しく硬い材料ではほとんど塑性変形を伴わ
ずに局所破壊が生じ摩耗粉となるが、延性を有する材料
では塑性流動層が形成され、繰返し摺動を受けることに
よって塑性流動層の一部が分離破断し摩耗粉となる。上
記ローラの高速駆動時における耐衝撃性の観点から基地
はある程度軟らかくし、延性を付与する必要がある。し
たがって、耐衝撃性に優れたローラ材の耐摩耗性を向上
するには、まず凝着の頻度を減少し、かつ凝着が生じた
後の塑性流動層の成長を抑制し、さらに塑性流動層自体
を強固にし分離破断を生じにくくすることが肝要であ
る。しかし、従来材料においてはこの塑性流動層の強化
に対しては特に考慮がされておらず、高温水中での耐摩
耗性に限界があった。
【0018】また、制御棒駆動機構におけるガイドロー
ラは高温水中で長期間使用されるため、それに耐えうる
十分な耐食性も兼ね備えている必要がある。
【0019】本発明はかかることがらを考慮してなされ
たものである。すなわち、まずローラ,ブッシュ等のバ
ルク材に対し、本発明の最も重要なポイントは形状が比
較的大きなクロム炭化物を軟らかい基質中に分散するこ
とである。この場合、炭化物は摩耗面にかかる荷重を支
えると共に、相手材との凝着の頻度を減少し、塑性流動
層の成長を抑制する効果を有する。すなわち、炭化物が
小さいと表面の塑性流動によって炭化物の表面が合金に
よって完全に覆われるため、凝着が生じ易くなるのに対
し、炭化物がある程度大きいと塑性流動層が炭化物上で
とぎれ、完全に覆われることがないため凝着の発生を抑
制できる。そのためには炭化物のサイズがある程度以上
大きいことが必要である。本発明の合金では縦と横の長
さの和が50ミクロン以上の場合に優れた耐摩耗性を示
した。クロム炭化物のサイズをある程度大きくするもう
一つの理由は、アンカー効果による塑性流動層の抑制で
ある。20ミクロン以下になると炭化物によるアンカー
効果が少なくなり塑性流動層が形成され易くる結果、一
度に剥離破断する容積が大きくなり摩耗量も大きくなる
のである。また、クロム炭化物の量も本発明においては
重要な要件である。すなわち、クロム炭化物の量が面積
比で10%以下では凝着と塑性流動に対する抑制効果が
十分でない。また25%以上になると相手材であるピン
の摩耗量が増大し全体としては好ましくない。さらに耐
衝撃性の低下も顕著になる。良好な耐摩耗性と耐衝撃性
を両立するにはクロム炭化物の量を面積比で10〜25
%とする必要がある。
【0020】このような粗大なクロム炭化物を得るには
凝固過程で初晶炭化物あるいはニッケルとの共晶炭化物
として液相から直接晶出させればよい。そのためにはク
ロムを含むニッケル中の炭素量を適正範囲に調整する必
要がある。炭素量1.0%以下、好ましくは1.5% 以
下ではクロム炭化物の面積比が10%以下となり、また
3.0%以上、好ましくは2.5% 以上になると25%
以上となるため、1.5〜2.5%を適正な範囲とした。
【0021】さらに本発明における粗大なクロム炭化物
の重要な作用は剪断応力によって表面の炭化物が細かく
粉砕され、それが塑性流動によって基質中に取り込まれ
て、微細なクロム炭化物が密に分散し基の基質とは異な
った表面層を形成することにある。このような表面層は
強度,硬さが高く、また損傷が生じた部分を埋めるよう
に形成されるので、いわゆる自己補償作用を発現するの
である。このように細かく粉砕されたクロム炭化物が系
外に排出されずに基質部の中に取り込まれるには基質部
の硬さが適度に軟らかいことが重要で、ビッカース硬さ
(Hv)350以下,合金組成により400以下である
必要がある。これ以上の硬さではクロム炭化物が塑性流
動層中に十分埋込まれず摩耗表面に一部留まって引っ掻
きによるいわゆるアブレッシブ摩耗となり、自材,相手
材の損傷が大きくなり、また、衝撃値の低下が顕著にな
る。基質部の硬さは二次炭化物によって大きく変化し、
Hv350以下とするには、炭化物の溶体化温度以下の
冷却途中や熱処理によって析出する二次炭化物の析出量
を面積比で2%以下に制限する必要がある。硬さの下限
値はクロムを固溶したニッケル及び鉄基質の硬さであ
り、適正範囲をHv200〜400とし、合金組成によ
って適正の範囲とした。
【0022】クロム炭化物相の硬さは相手材への損傷を
できるだけ小さくする観点から重要である。すなわち、
クロム炭化物は他の炭化物形成元素が存在するとそれを
固溶して硬さが高くなり、相手材の引っ掻きによるアブ
レッシブ摩耗を著しくさせ全体としては好ましくない。
粉末焼結法で種々の硬さを有する炭化物を分散させた材
料を用いた摩耗試験結果によると、炭化物の硬さがHv
1300〜1800であるクロム炭化物は特に相手材の
摩耗量が少ないこと、またHv2000以上になると相
手材の摩耗量が急速に増大することがわかった。
【0023】高温水に対する耐食性を確保する観点か
ら、ニッケルあるいは鉄基質中に固溶した基地のクロム
量は10重量%以上、好ましくは12%以上とする必要
がある。これ以下では高温水中での耐食性が充分でな
く、35%以上、好ましくは25%以上になるとかえっ
て靭性が低下することから12〜25%が適正である。
クロムは凝固時に炭素と反応し、クロム炭化物となって
消費されることから、溶解時の合金組成としては炭素量
に比例してさらにクロムを多く添加し、基地に留まるク
ロム量を確保する必要がある。すなわち、トータルのク
ロム量として12+8×C〜25+8×C%が必要であ
る。
【0024】本発明の合金は以上示した基本的な3成分
でステライトを十分に超える耐摩耗性が得られるが、さ
らに耐食性向上の観点からモリブデン,タングステン,
ニオブまたはチタンの添加が有効である。モリブデン,
タングステンは主として基質中に固溶し耐食性を高める
が、0.5% 以下ではその効果がなく、10%を超える
と硬さがHv2000以上の硬い炭化物が2%以上析出
し、衝撃特性が低下すると共に相手材の摩耗量が増加し
好ましくない。1〜5%が好ましい。ニオブまたはチタ
ンの添加は基質中に固溶しているフリ−の炭素を固定し
耐食性を向上するのに効果的なもので、0.1〜1.5%
が適当な範囲でそれ以上では硬いニオブ炭化物が析出
し、衝撃値の低下をきたすと共に相手材の摩耗量を増大
させる。0.1〜0.5%が好ましい。
【0025】基質相については細かく砕けた硬質相が埋
め込まれるに充分な軟らかさが必要であるとともに、高
温水に対する耐食性を確保することから、Hv200〜400
の硬さを有し、クロムを固溶したニッケルあるいは鉄基
合金を選んだ。クロム量は12%以下では高温水中での
耐食性が充分でなく、50%以上になるとかえって靭性
が低下することから12〜50%とし、好ましくは、1
5〜30%とした。特に、20〜25%が好ましい。
【0026】Cは基地を強化し、クロム炭化物を形成す
るのになくてはならないものであるが、1.2% 以下で
は耐摩耗性が低く、3.0% を越えると相手材の摩耗を
多くするので好ましくない。より、1.5〜2.5% が
好ましい。
【0027】Siは合金粉末を製造する際の脱酸剤等に
添加されるもので、1%以下が好ましい。特に、0.0
5〜0.5%が好ましい。
【0028】MnはSiと同様であり、2%以下が好ま
しく、より0.1〜0.5%が好ましく、Siと同様に製
造上から無添加とすることができる。
【0029】Alは耐酸化性及び基地の強化をするため
に0.1〜4.0%添加される。特に、Ni基合金に対し
ての添加が好ましい。
【0030】Fe基合金に対してはNiはオーステナイ
ト系ステンレス鋼とするために8〜20%加えられる。
特に8〜13%が好ましい。
【0031】本発明に係る被覆管,スペーサ,チャンネ
ルボックスとして、取出平均燃焼度45GWd/t以上
に対し以下の組成を有するZr基合金が好ましい。ただ
しウォータロッドには同様に用いられるが、ジルカロイ
2合金を用いることができる。
【0032】Snは1%以下では十分な耐食性,強度が
得られず、また逆に2%を越えてもそれ以上の顕著な効
果が得られないだけでなく、加工性を低めるので、1〜
2%とする。特に、1.2〜1.7%が好ましい。
【0033】Feは耐食性,耐水素吸収性を高めるのに
0.02% 以上必要であるが、逆に0.55% を越えて
添加してもそれ以上の顕著な効果はなく、加工性を低め
るので、0.55% 以下とする。特に、0.22〜0.3
0%が好ましい。
【0034】Niは微量で耐食性を顕著に高めるのに
0.03% 以上含有されるが、逆に水素吸収を促進して
脆化を起こすので、0.16%以下とする。特に0.05
〜0.10%が好ましい。
【0035】本発明のZr基合金はCrを0.05〜0.
15%を含むことができる。Crは耐食性,強度を高め
るのに0.05% 以上必要であるが、逆に0.15% を
越えると加工性を低めるので0.05〜0.15%とす
る。
【0036】本発明に係る燃料集合体に用いられるZr
基合金にはジルカロイ2(錫1.2〜1.7%,鉄0.07
〜0.20%,クロム0.05〜0.15%,ニッケル0.
03〜0.08%,残部が実質的にジルコニウム)又は
ジルカロイ4(錫1.2〜1.7%,鉄0.18〜0.24
%,Ni0.007% 以下及び残部が実質的にジルコニ
ウム)があり、これらは前述の合金と組合わせ取出平均
燃焼度45GWd/t以下のものに応じて使用される。
【0037】本発明に係る被覆管は、最終熱間加工後、
ジルコニウム基合金のα+β相又はβ相温度範囲から急
冷する処理を施し、その後冷間加工と焼なまし処理を繰
返すことにより製造されたものであるのが好ましい。特
に、α+β相温度からの急冷は、その後の冷間塑性加工
性がβ相急冷されたものに比較し高いことから好まし
い。
【0038】合金は前述のβ相又はα+β相からの急冷
を施したものが好ましく、その処理は最後の熱間塑性加
工後最後の冷間塑性加工前に施すのが好ましく、特に最
初の冷間塑性加工前に施すのが良い。
【0039】α+β相は790〜950℃、α相は95
0℃を越える温度より1100℃以下とするのが好まし
く、これらの温度より流水,噴霧水等により急冷するの
が好ましい。特に、最初の冷間塑性加工前に行うのがよ
く、その場合素管内に水を流しながら外周より高周波加
熱により局部的に加熱する方法が好ましい。
【0040】この結果、管内面側が焼入れされず延性が
高く、外面側が焼入れされ、耐食性が高いうえ水素吸収
率の高いものが得られる。α+β相での加熱は温度によ
ってα相をβ相の形成量が異なるかつ、β相が主に形成
される温度を選ぶのが好ましい。α相は急冷しても変ら
ず、硬さの低い延性の高いものであり、β相に変った部
分からの急冷は硬さの高い針状の相が形成され、冷間加
工性が低い。しかし、α相がわずかながらでも混在する
ことによって高い冷間塑性加工性が得られ、耐食性及び
水素吸収率の低いものが得られる。β相として80%〜
95%の面積率になる温度で加熱し、急冷すのが好まし
い。加熱は短時間で行い、5分以内、特に5秒〜1分以
内が好ましい。長時間の加熱は結晶粒が成長するととも
に析出物が形成され、耐食性が低下するのでまずい。
【0041】冷間加工後に焼なまし温度は500〜70
0℃が好ましく、特に550〜640℃が好ましい。640℃
以下では耐食性の高いものが得られる。この加熱はAr
中、又は高真空中で行うのが好ましい。真空度は10-4
〜10-5Torrが好ましく、焼なましによって合金表面に
酸化皮膜が実質的に形成させず、表面が無色の金属光沢
を有するのがよい。焼鈍時間は1〜5時間が好ましい。
【0042】
【発明の実施の形態】
〔実施例1〕表1は摺動摩耗試験に供したローラ材の化
学成分(重量%)を示す。A1〜A5炭素量によって炭
化物量を変えたクロム−炭素−ニッケル3元系合金であ
る。B1〜B5はアルミニウムを添加しγ´量(Ni3
l)によって基質部の硬さを変えたニッケル合金あり、
C1〜C3はクロム量を変えたものである。D1〜D4
はA3にモリブデン,ニオブ,チタンを添加したもので
ある。R1は比較材として用いたコバルト基合金であ
る。コバルト基合金を除いた本発明に関わる合金は精密
鋳造によるニアネットシェイプの素材及び真空溶解によ
るインゴット(5kg)素材とし、これらの素材から外径
17mm,内径5.5mm,幅7.5mmのローラに加工した。
【0043】
【表1】 摺動摩耗試験において相手材となるピン材の化学成分を
表2に示す。P1はA1〜D4の本発明のローラと組合
せで試験を行った鉄基合金のピン材であり、P2はR1
のコバルト基合金のローラ材と組合せで試験を行ったコ
バルト基合金のピンである。P1は溶解で作製したイン
ゴットを熱間鍛造で棒状にし、さらに冷間加工を30%
行った後、機械加工によりφ5.5mm のピンとした。
【0044】
【表2】 表3は精密鋳造法によるローラ材について摩耗試験結
果、シャルピー衝撃試験結果、高温水中での腐食試験結
果及び基質部の硬さ、Cr炭化物の面積比を示す。摩耗
試験はローラにピンを挿入して試験機に装着し、ピンを
介してローラをステンレス(SUS316L)製の回転体に10
kgの荷重で押しつけて行った。試験環境は実炉条件を模
擬した288℃高温水中とし、ローラ周速度0.03m
/s ,走行距離10kmで行い、1km当りの重量減少量
を摩耗減量とした。シャルピー衝撃試験は10mm角のノ
ッチ無し試験片を用いて行った。また、腐食試験は28
8℃,溶存酸素0.2ppm ,pH7.2の高温純水中に2
000時間放置した時の重量減少量を求めた。
【0045】
【表3】 A1〜A5の炭素量を変えた実質的にクロム−炭素−ニ
ッケル3元合金において、摩耗減量は炭素量すなわちク
ロム炭化物量の増大と共に減少し、面積比で10%以上
(炭素量1.5%以上)でCo基合金より摩耗量が小さく
なり良好な耐摩耗性を示す。しかし、25%(炭素量2.
5%)を超えると相手材(ピン)の摩耗量が顕著にな
る。炭素量1.5〜2.5wt%(クロム炭化物量の面積
比10〜25%)の範囲で良好な摩耗特性を示めしてい
る。
【0046】B1〜B4のクロム炭化物量を一定にし、
ニッケル基地の硬さをγ´量と2次炭化物量で変えた場
合の摩耗試験結果からニッケル基地の硬さがHv300
を超えると摩耗量が増加し、Hv350以上になるとC
o基合金よりも摩耗量が大きくなり、衝撃値が著しく低
下することから基地の硬さはHv350以下とする必要
のあることがわかる。
【0047】クロムについてはC1〜C4の結果から、
12+8×C%以下では高温水中での腐食減量がCo基
合金よりも大きくなり、また25+8×C%を超えると
耐食性に対する効果が飽和し、衝撃値の低下が顕著にな
る。
【0048】D1〜D4の結果から1〜5wt%のモリ
ブデンの添加は耐摩耗性を損なわずに耐食性の向上に効
果があることがわかる。また、1〜5wt%のタングス
テンも耐食性を損なわずに耐摩耗性の向上に効果があ
る。さらに0.5wt% 以下のニオブあるいはチタンも
高温水中での耐食性の向上に有効である。しかし、これ
らの元素は2次炭化物形成元素であり、上記の量以上に
なると基地の硬さがHv350以上となり、かえって摩
耗量が増大する。
【0049】図2は本発明の代表的な組織(A3)を示
す。黒く見える部分がクロム炭化物である。
【0050】図3は本発明の合金(A3)のローラ摩耗
断面を示す。表面付近の塑性流動層中には細かく砕かれ
たクロム炭化物が埋め込まれている。
【0051】図4は腐食減量と基地のCr量との関係を
示す線図である。図に示すように基地のCr量を高める
ことによって腐食が抑制されることが分る。特に、基地
のCr量を10%以上とすることにより顕著に耐食性が
向上する。より12%以上で高い耐食性が得られる。
【0052】図5はローラ及びピンの摩耗量とC量との
関係を示す線図である。図に示すように摩耗量はC量が
1.5〜2.5%でローラ及びピンともに顕著に少ない。
【0053】図6はローラの摩耗減量とCr炭化物の面
積率との関係を示す線図である。図に示すようにCr炭
化物の面積率を10%以上とすることにより摩耗量を約
4mg/km以下とすることができる。特に、20%以上で
より小さい摩耗量のものが得られる。
【0054】図7及び図8はローラ及びピンの摩耗量と
基地の硬さとの関係を示す線図である。図7に示すよう
にローラの摩耗量はCr−Ni−C系合金においてはそ
の硬さはCr炭化物量によって高められ、その結果ロー
ラの摩耗量を低める。特に、基地の硬さをHvで230
以上、より好ましくは240以上とすることにより摩耗
量を少なくすることができる。Alを含む合金のBシリ
ーズのものはAlの含有量を高めるとともに硬さが増
し、特にHvで350以上で著しく摩耗量が増大する。
また、Nb及びTiを各々1.5% 含むD3及びD5の
合金はHvで380以上では顕著に摩耗量が多くなる。M
o及びWを含むD1及びD6は基地の硬さが高くなるが
摩耗量は変らず高い耐摩耗性を有する。
【0055】図8に示すようにピンの摩耗量はCr−N
i−C系では基地の硬さ(Hv)が260以上で急激に
増大する。また、Alを含むBシリーズでは基地の硬さ
(Hv)が360以上で摩耗量が増大する。Mo,Wに
おいてはHvで400及びTi及びNbにおいても40
0程度までは大きな摩耗量にはならない。
【0056】図9はローラ及びピンの摩耗量とAl量と
の関係を示す線図である。Alを含有させることによっ
て基地の硬さが急激に高められ、逆にローラ及びピンと
ともに耐摩耗性が低下する。特に4%以上で高い摩耗が
生じる。
【0057】図10はローラ及びピンの摩耗量とMo,
Nb,Ti及びW量との関係を示す線図である。図に示
すようにMo及びWは5%程度までは摩耗量は増加しな
いので耐食性の向上には有効である。Ti及びNbは特
にローラにおいては急激に摩耗量を増加するのでTi及
びNb量をともに1.5% 以下とするのが好ましい。 〔実施例2〕図11は沸騰水型原子炉炉心の部分断面図
である。
【0058】本原子炉は蒸気温度286℃,蒸気圧力7
0.7atgで運転され、発電出力として500,800,
1100MWの発電が可能である。各名称は次の通りで
ある。炉心は、中性子源パイプ51,炉心支持板52,
中性子計装検出管53,制御棒54,炉心シュラウド5
5,上部格子板56,燃料集合体57,上鏡スプレイノ
ズル58,ベントノズル59,圧力容器蓋60,フラン
ジ61,計測用ノズル62,気水分離器63,シュラウ
ドヘッド64,給水入口ノズル65,ジェットポンプ6
6,蒸気乾燥機68,蒸気出口ノズル69,給水スパー
ジャ70,炉心スプレイ用ノズル71,下部炉心格子7
2,再循環水入口ノズル73,バッフル板74,制御棒
案内管75を具備している。
【0059】前述の上部格子板56はリム胴21,フラ
ンジ22及びグリットプレート35を有し、これらには
SUS316鋼多結晶の圧延材が用いられる。グリットプレー
ト35は互いに交叉しているだけで互いに固定はされて
いない。また、炉心支持板52は同じくSUS316鋼多結晶
圧延材が用いられ、一枚の圧延板により製造され、燃料
支持金具を取り付ける穴が設けられ、円周面で炉容器に
固定される。従っていずれも中性子照射を受ける中心部
では熔接部がない構造である。
【0060】図1は電動モータによる微動駆動可能な制
御棒駆動機構の断面図である。表1の試料A3のローラ
と表2に示したP1のピンを実施例1と同様に製作し3
2組装着し、40年に相当する負荷駆動試験を実炉を模
擬した高温水中循環で行った。その結果、ローラ及びピ
ンとも摩耗による寸法変化は僅少で設計基準を十分満足
するものであった。また、スクラム駆動時の衝撃荷重で
の破損も全くみられなかった。
【0061】本実施例における制御棒駆動機構はモータ
3によって回転するピストン駆動用ネジ9を通して駆動
ピストン7により中空ピストン4を介して制御棒1を上
下に駆動するものであり、原子炉圧力容器2に溶接によ
って接続される。制御棒1は制御棒案内管5の中で駆動
される。水圧駆動ピストン10は緊急時に水挿入配管8
より水を挿入することにより制御棒1を上方に急速に持
ち上げるようにするもので、駆動ピストン7とは分離さ
れている。特に高温水に接する部分はSUS316Lが使用さ
れる。また、制御棒1は自重で落下する構造になってい
る。
【0062】また、本実施例におけるローラとピンは図
示されるA〜Hの各々の位置中空ピストン4とハウジン
グ6内に設けられた各種チューブとの間に中空ピストン
がスムースに移動できるように設けられている。Aはバ
ッファ部で、上下に2個所あり、各々4ヶずつ90度間
隔で設けられる。Bはストップピストン部、Cはスピン
ドルヘット部、Dはボールねじ上部、Eはラッチ支持
部、Fはラッチ外側面、Gは中空ピストン/ボールナッ
ト部で各々2ヶ所に各4個ずつ設けられる。Hはミドル
フランジ部で、円周上に6ヶ設けられる。各部分のロー
ラとピンの形状は次の通りである。
【0063】図12はA部におけるローラ16にピン1
7を挿入した断面図であり、ピン17は押えピン18に
よって回転が拘束される。ピン17は3段階の直径を有
する。ローラ16はピン部で厚肉で、外周面で若干薄肉
になっている。
【0064】図13はC部における外側部分及び図14
は同じくその内側部分に設けられる断面が相似の卵形の
ローラ16にピン17を挿入した断面図である。D部は
図6と同じ構造のローラとピンが設けられる。ピン17
は頭部で太径になっており、ローラ部と頭部との反対面
側までがストレートな構造を有する。
【0065】図15はG部及び図16はH部におけるロ
ーラ16とピン17であり、前者がボールナットローラ
・ピンである。ピン17は先端部を円錐形で頭部が若干
ローラ部より大径になっている。
【0066】図17は制御棒駆動機構11によって駆動
される制御棒1,燃料集合体(A),(B),中央燃料
支持金具14,炉心支持板12の組立て配置図である。
図17(A)はハンドルを有しない燃料集合体で、図1
7(C)のb部に配置される。同じく(B)はハンドル
を有し図17(C)のaに配置される。燃料支持金具1
4は炉心支持板12に接して固定され、燃料集合体を支
持するものである。制御棒1は本実施例ではシース及び
4C 又はHfチューブに表1に示すNo.5の合金を用
いた。B4C 又はHfチューブは熱間によって素管を作
った後、ピンガーミルによって冷間圧延と焼鈍とを繰返
して得た。またシースは冷間圧延と焼鈍を繰返し薄板と
した後、溶接によって得た。
【0067】図18は本発明に係る沸騰水型原子炉用燃
料集合体の断面図である。
【0068】BWR燃料集合体は、図に示す様に多数の
燃料棒21とそれらを相互に所定の間隔で保持する複数
段のスペーサ27、更に、それらを収納すね角筒のチャ
ンネルボックス24,燃料被覆管内に燃料ペレットが入
った燃料棒21の両端を保持する上部タイプレート2
5,下部タイプレート26,スペーサの中心部に配置さ
れたウォータロッド22,全体を搬送するためのハンド
ル31から構成される。また、これら燃料集合体の製造
に際しては、通常の工程を経て組立てられる。
【0069】チャンネルボックス24はスペーサ27に
より一体化された燃料棒およびウォータロッド22を内
部に収納し、上部タイプレート25と下部タイプレート
26とはウォータロッド22で固定した状態で使用され
る。チャンネルボックス24は二分割した長さ4m,厚
さが80,100,120ミルの3種のコの字型板加工
材をプラズマ溶接で接合した角筒形状を呈する。この部
材はプラント運転時に燃料棒表面で発生した蒸気及び燃
料棒間を流れる高温水を整流し、強制的に上部へ導く働
きをさせるものである。内部の圧力が外部よりわずかに
高い為、角筒を外側に押し広げる応力が作用した状態で
長期間使用される。
【0070】本発明における燃料集合体はウォータロッ
ド22がスペーサ27の中心部に対称に3本配置されて
おり、いずれも両端でタイプレートにネジで固定され、
またチャンネルボックス24が上部タイプレート25に
ネジ止め固定され、燃料集合体がハンドル31によって
一体で運搬できる構造となっている。本実施例では燃料
棒はタイプレートには固定はされていない。
【0071】チャンネルボックスは次の様に熱処理が施
され、板厚方向の〈0001〉結晶方位の配向率(Fr
値)が0.25〜0.6、長手方向の配向率(Fl)が0.
25〜0.4 、幅方向の配向率(Ft)が0.25〜0.
4とするものである。好ましくはFr0.25〜0.5、
Fl0.25〜0.36,Ft0.25〜0.36とするの
が好ましい。熱処理によりこのように配向させることに
より、βZr結晶粒径が平均で50〜300μm(好ま
しくは100〜200μm)となり、著しく照射伸びが
防止され、その結果曲がりが生ぜずチャンネルボックス
と制御棒との干渉が防止される。これにより燃焼度45
GWd/t以上でも周辺に配置したものでも曲がりが生
ぜず、更に50、又は60GWd/tでも全く問題なく
使用可能である。また、従来の燃焼度32GWd/tに
対し燃料を交換しての使用も可能である。
【0072】特に、従来材のFr0.67 ,Fl0.1
1 ,Ft0.22 のものは最外周での曲がりが1年
(燃焼度8GWd/t)で0.9mm であり、Fr0.6
では0.8mm,Fr0.5 では0.45mm 、Fr0.4
では0.15mm である。従って、燃焼度45GWd/t
ではFr0.67の従来材では最外周に1年、中心部に
4.5年としても制御棒の干渉は防止されない。しか
し、Fr0.6 では最外周に1年とし、中心部で4.5
年の使用では干渉は防止される。Fr0.5 では最外周
に4年、中心部に1.5 年の使用で干渉は防止される。
Fr0.4 以下では最外周だけで5.5 年使用しても全
く干渉しない。
【0073】チャンネルボックスは合金組成として表4
に示すジルコニウム基合金板材をコの字型に冷間曲げ加
工し、長さ:4mの2つのコの字型部材とし、これらを
レーザ又はプラズマ溶接して角筒12とした。溶接部の
凹凸は平担に仕上げられる。この角筒を高周波誘導加熱
によるβ相温度範囲への加熱及び高周波誘導加熱コイル
の直下に設けたノズルから吹き付ける冷却水で急冷し
た。角筒が一定速度で上方から下方へコイル内に通過す
ることにより全体の熱処理が完了する。加熱温度は11
00℃で、980℃以上の保持時間は10秒以上となる
ように角筒の送り速度及び高周波電源の出力を調整し
た。尚、処理温度は1,000〜1,200℃好ましくは
特に、1050〜1100℃で3〜10秒保持すること
により行うことができる。熱処理完了後、幅:40mm,
長さ40mmの試験片を切り出しF値を測定した。表5
は、その測定結果を示す。熱処理パラメータ(P)は1.
96である。熱処理はオーステナイトステンレス鋼製マ
ンドレル18を筒12にネジ3で両端を固定して行っ
た。表からわかる様に6角柱の(0002)底面、柱面
が(1010)面共にF値としてFr,Fl及びFtの
いずれもほぼ1/3となり、完全にランダムな結晶方位
の配向となる。このもののβZr平均結晶粒は約100
μmであった。この熱処理を施した後、高寸法精度に成
形サンドブラスト処理及び酸洗を行い、表面酸化膜を除
去した後、水蒸気によるオートクレーブ処理が施され
る。
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】 更に、チャンネルボックスの他の例として前述の肉厚一
定のものに対し、角部が辺部の肉厚より厚く、辺部が上
部でその下部より薄肉になっている長手方向肉厚分布を
有するものにした。このような成形加工は熱処理後に行
われる。成形加工はマスキングして弗化水素と硝酸の混
酸水溶液による化学エッチング又は機械加工によって行
われ、本実施例では外面側を加工し凹したものである。
このような肉厚分布は内面側で凹にしてもよい。
【0076】本実施例によれば、各部材はいずれも30
年無交換で使用可能となり、更に検査によって40年で
無交換で使用できる見通しが得られた。原子炉温度は2
88℃であり、12ヶ月運転後で1回当り50月以内、
好ましくは40日以内、特に好ましくは30日での定期
点検が繰返し実施されるとともに、稼働率85%以上、
より好ましくは90%以上、特に好ましくは92%,熱
効率35%とするものである。
【0077】なお、上記の説明は原子炉制御棒駆動装置
のピストンに使用されるガイド用ピン及びローラとブッ
シュに適用する場合について説明したが、本発明はこれ
に限定されるものではなく、原子炉以外に使用される部
品に対しても適用できるものである。
【0078】
【発明の効果】本発明によれば、合金組成としてコバル
トをまったく含まないので、制御棒駆動装置における摺
動部材や弁における肉盛材として使用された場合、高温
高圧の炉水中へのコバルトの溶出がないので誘導放射化
による被爆線量を低く押さえることができる。また、耐
摩耗性がステライトより優れているので、摩耗による摺
動部材の寸法変化が少なく、また焼き付き等により軸受
部のスム−ズな回転が損なわれることがなく、信頼性の
高い原子力プラントの運転が可能となる。さらに耐腐食
性,耐衝撃性に優れているので長時間の運転や緊急時の
高速駆動に対しても高い信頼性を確保できる等の効果が
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】制御棒駆動装置の断面図。
【図2】本発明合金の断面の金属組織を示す顕微鏡写
真。
【図3】本発明合金の摩耗試験後の断面の金属組織を示
す顕微鏡写真。
【図4】腐食減量と基地のCr量との関係を示す線図。
【図5】摩耗量とC量との関係を示す線図。
【図6】ローラの摩耗減量とCr炭化物の面積率との関
係を示す線図。
【図7】ローラの摩耗減量と基地の硬さとの関係を示す
線図。
【図8】ピンの摩耗量と基地の硬さとの関係を示す線
図。
【図9】摩耗減量とAlとの関係を示す線図。
【図10】摩耗減量と含有量との関係を示す線図。
【図11】原子炉の部分断面図。
【図12】ピンとローラの断面図。
【図13】ピンとローラの断面図。
【図14】ピンとローラの断面図。
【図15】ピンとローラの断面図。
【図16】ピンとローラの断面図。
【図17】制御棒駆動機構と燃料集合体と制御棒との組
立図。
【図18】燃料集合体の断面図。
【符号の説明】
1,54…制御棒、2…圧力容器、3…モータ、4…中
空ピストン、5…制御棒案内管、6…ハウジング、7…
駆動ピストン、8…水挿入配管、9…ピストン駆動用ネ
ジ、10…水圧駆動ピストン、11…制御棒駆動機構、
12…炉心支持板、13,21…燃料棒、14…燃料支
持金具、15,24…チャンネルボックス、16…ロー
ラ、17…ピン、18…押えピン、27…スペーサ、7
5…制御棒案内管。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G21C 7/12 GDB G21C 3/30 GDBH (72)発明者 越石 正人 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 白木 智美 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量で、C1.0〜3.0%及びCr12〜
    50%を含み、棒状のクロム炭化物を有し、クロム炭化
    物量が面積率で10〜28.5% 及び基地のクロム量が
    10重量%以上のFe基又はNi基合金からなることを
    特徴とする耐摩耗合金。
  2. 【請求項2】重量で、C1.0〜3.0%及びCr12〜
    50%を含み、棒状のクロム炭化物を有し、クロム炭化
    物量が面積率で15〜28.5% 及び基地の室温のヴィ
    ッカース硬さが230〜260であるFe基又はNi基
    合金からなることを特徴とする耐摩耗合金。
  3. 【請求項3】重量で、C1.0〜3.0%,Cr12〜5
    0%及びAl0.1〜4.0%を含み、棒状のクロム炭化
    物を有し、基地のクロム量が10重量%以上及び基地の
    室温のヴィッカース硬さが200〜350であるFe基
    又はNi基合金からなることを特徴とする耐摩耗合金。
  4. 【請求項4】重量で、C1.0〜3.0%,Cr12〜5
    0%,Ti及びNbの1種以上を合計で0.1〜1.5%
    を含み、棒状のクロム炭化物を有し、基地のクロム量が
    10重量%以上及び基地の室温のヴィッカース硬さが2
    00〜380であるFe基又はNi基合金からなること
    を特徴とする耐摩耗合金。
  5. 【請求項5】重量で、C1.0〜3.0%,Cr12〜5
    0%,Mo及びWの1種以上を合計で0.1〜10% を
    含み、棒状のクロム炭化物を有し、基地のクロム量が1
    0重量%以上及び基地の室温のヴィッカース硬さが20
    0〜400であるFe基又はNi基合金からなることを
    特徴とする耐摩耗合金。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかにおいて、2次炭
    化物の量が面積比で5%以下であることを特徴とする耐
    摩耗合金。
  7. 【請求項7】ハウジングと、該ハウジング内に設けられ
    た中空ピストンと、該中空ピストンを上下に駆動する駆
    動ピストンと、前記中空ピストンと前記ハウジング内の
    チューブとの間で該チューブに設けられたローラと、該
    ローラの回転軸となるピンとを備えた制御棒駆動装置に
    おいて、前記ローラが請求項1〜6のいずれかに記載の
    合金によって構成されることを特徴とする制御棒駆動装
    置。
  8. 【請求項8】ハウジングと、該ハウジング内に設けられ
    た中空ピストンと、該中空ピストンを上下に駆動する駆
    動ピストンと、前記中空ピストンと前記ハウジング内の
    チューブとの間で該チューブに設けられたローラと、該
    ローラの回転軸となるピンとを備えた制御棒駆動装置に
    おいて、前記ローラとピンは該ローラとピンとの摺動幅
    0.75mm 当り1kgの荷重下で、288℃高温水中での
    前記ローラとピンの両者の摩耗減量が摺動幅7.5mm に
    対し摺動距離1km当り10mg以下の鉄基又はニッケル基
    鋳造合金によって構成されることを特徴とする制御棒駆
    動装置。
  9. 【請求項9】ハウジングと、該ハウジング内に設けられ
    た中空ピストンと、該中空ピストンを上下に駆動する駆
    動ピストンと、前記中空ピストンと前記ハウジング内の
    チューブとの間で該チューブに設けられたローラと、該
    ローラの回転軸となるピンとを備えた制御棒駆動装置に
    おいて、前記ローラは前記ピンとの摺動幅0.75mm当
    り1kgの荷重下で、288℃高温水中での摩耗減量が摺
    動幅7.5mm に対し摺動距離1km当り8.5mg 以下であ
    る鉄基又はニッケル基鋳造合金よりなることを特徴とす
    る制御棒駆動装置。
  10. 【請求項10】ハウジングと、該ハウジング内に設けら
    れた中空ピストンと、該中空ピストンを上下に駆動する
    駆動ピストンと、前記中空ピストンと前記ハウジング内
    のチューブとの間で該チューブに設けられたローラと、
    該ローラの回転軸となるピンとを備えた制御棒駆動装置
    において、前記ピンは前記ローラとの摺動幅0.75mm
    当り1kgの荷重下で、288℃高温水中での摩耗減量が
    摺動幅7.5mm に対し摺動距離1km当り4.5mg 以下で
    ある鉄基又はニッケル基鋳造合金よりなることを特徴と
    する制御棒駆動装置。
  11. 【請求項11】圧力容器と、該圧力容器内に設けられた
    燃料集合体と、該燃料集合体間に設けられる制御棒と、
    該制御棒を駆動する請求項7〜10のいずれかに記載の
    制御棒駆動装置とを備えた原子炉であって、該原子炉は
    燃焼度が45GWd/t以上であり、前記燃料集合体を
    構成する最外周のチャンネルボックスは燃焼度8GWd
    /t当りの曲がり量が0.8mm 以下及び前記燃焼度45
    GWd/tでの曲がり量が2.8mm 以下であり、前記制
    御棒駆動装置が30年以上無交換で使用でき、稼働率を
    85%以上としたことを特徴とする原子炉。
  12. 【請求項12】請求項1〜6のいずれかに記載の耐摩耗
    合金よりなることを特徴とする制御棒駆動装置用ロー
    ラ。
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