JP3415997B2 - 溶融の真空脱炭処理ガイダンス方法 - Google Patents

溶融の真空脱炭処理ガイダンス方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、[C]の中途分析
なしに、溶鋼の脱炭処理中の[C]濃度をオンラインで
算定して脱炭処理の終点判定基準を提示する簡便な方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】真空脱ガス処理による溶鋼の脱炭終点判
定の方法は、例えば、脱炭処理中の任意の時刻で溶鋼の
サンプルを採取してその[C]の分析値と真空槽からの
排ガスを分析して、物質収支に基づき脱炭量を算定する
方法(特開昭51−81722)、[C]の分析値と反
応速度式の演算に基づく方法(特開昭61−1972
6)等が公知であるが、いずれも、極低炭領域までの脱
炭予測に対してはその精度が十分ではなく、極低炭素鋼
溶製時での脱炭処理の終点判定法としての活用には問題
がある。そこで、本発明者らは、脱炭処理中の任意の時
期の採取した溶鋼試料の分析値をもとに、脱炭モデルか
ら脱炭処理終点時間を決定する方法を提示した(特開平
7−118730)。しかし、この方法も脱炭処理途中
での[C]分析値が必要であること、速度定数kcoの
値が、圧力が20mmHgであるときの値で代表させた
一定値を採用していること、比較的高[C]濃度での推
定が難しいこと等の課題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は極低炭素溶鋼
を含む脱炭処理中に[C]の中途分析なしに、且つ、高
炭素領域から効果的に[C]濃度の経時変化を示すと共
に、脱炭処理終点判定基準を提供することを目的とする
ものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、溶鋼の真空脱
炭反応モデルに基づいて脱炭処理中の[C]濃度を算定
する方法において、予め決定した設備固有定数kcoq
とks および[C]*の値を用い、真空排気開始前の任
意の時期に溶鋼を採取し、採取した溶鋼試料の炭素分析
値と、真空排気開始直前に測定した溶鋼の温度Tと酸素
濃度センサーによる酸素活量[O]の値に基づき、真空
槽内の圧力Pt の変化をオンラインで読み込み、(1)
式の差分により[C]の経時変化を時々刻々計算し、且
つ、脱炭量に合せた物質収支を基に、次ステップの計算
に必要な[O]濃度の値を算定して与え、脱炭処理中の
[C]濃度を算定して脱炭処理終点判定基準を提供する
ことを特徴とする。
【0005】
【数3】
【0006】さらに、RH脱ガス設備を用いた脱炭処理
での[C]濃度の経時変化を算定するに際して、設備固
有定数kcoq とks の値を、当該チャージの浸漬管内
径Dを用い、Pt と環流ガス流量Fgasの変化を時々
刻々与えて、(4)式で算定した溶鋼環流量Qm の値を
その都度算定し、予め決定した設備固有定数である反応
速度補正値αとβを用いて各々(3−1)と(3−2)
式で与える事を特徴とする溶鋼の脱炭ガイダンス方法。
【0007】
【数4】
【0008】
【発明の実施の形態】
【0009】
【作用】通常の脱炭処理では真空槽内の圧力が大きく変
化し、溶鋼の酸素濃度[O]も各々異なる条件下で実施
されている。さらに、脱炭設備の相違によって溶鋼の撹
拌強度、溶鋼循環形態も各々大きく異なる。本発明者ら
は、種々の研究・検討を重ねた結果、真空脱炭処理中の
[C]の経時変化が、設備形態によらず(1)式で再現
できる事を見出した。
【0010】脱炭速度式(1)式右辺第1項は溶鋼内部
からのCO気泡発生による脱炭速度を表し、(1)式右
辺第2項は溶鋼自由表面からのCO生成による脱炭速度
を表す。
【0011】ここで、kcoq とKs および[C]*
値は、[O]濃度に依存しない設備固有の速度定数と濃
度パラメータである。kcoq の値は溶鋼撹拌力あるい
は溶鋼環流速度と真空度Pt によって決まる値であり、
s の値は溶鋼撹拌力あるいは溶鋼環流速度とガス吹込
み方法によって決まる値である。
【0012】また、[C]* の値はCO気泡生成のため
の限界[C]濃度であり、溶鋼の物理的な性質と処理形
態によって決まる。種々の検討から、通常、[C]*
値は0.0014〜0.0016(mass%)の範囲
にある値である事を発見した。本発明の実施に当たって
は[C]* =0.0015(mass%)の値を採用す
る。平衡定数Kは公知(製鋼反応の推奨平衡値:日本学
術振興会、製鋼第19委員会編)の値を用いる。
【0013】したがって、予め同一設備を用いて種々の
条件で脱炭処理を実施して、実績の[C]の経時変化を
測定し、その経時変化が(1)式で最も良く記述できる
設備固有定数kcoq およびks の値を決定し、そのk
coq およびks の支配因子を明らかにしておけば、処
理前[C]濃度、真空排気速度や[O]濃度の異なる溶
鋼の脱炭処理の任意の時刻tでの[C]濃度が算定でき
る。ただし、脱炭の進行に伴って、処理中の[O]の値
は変化するので次式にしたがって[O]濃度の変化を考
慮する。
【0014】 d[O]=(16/12)・d[C]+ηo・(Wo/Wm )・100・dt … (5) Wo:脱炭処理期間中の任意の時刻での酸素供給速度
(トン/min) ηo:酸素利用効率(−) もちろん、(5)式第2項は、酸素源を供給している期
間に適用される項である。ηoの値は予め統計的な処理
により決定した値を用いる。
【0015】(1)式の差分に基づく脱炭処理中の
[C]濃度の経時変化の算定は簡単なプログラムを計算
機にインプットすることで容易に計算でき、モニターに
表示できる。[C]濃度の計算に当たり、時間計算ステ
ップdtの値は小さいほど良いが、最大でも0.1(m
in)程度に押えるべきである。
【0016】通常のRH設備での溶鋼環流速度Qm の値
の算定式はISIJ,Vol.28(1988),p.
305に記載のごとく、(4)式で示されている。した
がって、本発明の実施に当たっては、時々刻々変化する
t の変化を取り込んで、Qm の値を(4)式で算定す
る。本発明者らは、kcoq とks の値が環流比Qm
m の関数であり、各々(3−1)と(3−2)式で表
せることを発見した。つまり、kcoq とks の値は一
定値ではなく、Pt に対して変化する値となる。ここ
で、αとβの値は設備固有定数であり、反応速度補正値
と位置付けられ、予め決定しておく。本発明では、実施
例1に示したように、α=0.80,β=0.10の値
を用いる。
【0017】kcoq とks のPt 依存性が評価できる
ため、処理前[C]の分析値さえああれば、中途での
[C]分析値なしに、高炭素から極低炭素濃度領域の
[C]の経時変化が精度よく計算提示できる。
【0018】ただしks はkcoq の値に対して小さい
ため、実施例1に示したように、Pt =1.0mmHg
で与えた一定値を使用しても実質上は問題ない。
【0019】したがって、RHでの脱炭処理中の[C]
の経時変化は、(3)式に(4)式で算定したQm の値
を代入すればよい。
【0020】通常、RHの浸漬管は使用回数の増加と共
に内径が大きくなる。しかし、実際操業では、高温であ
り有効内径は実測不可能である。本発明では、Qm の算
定に当たり、当該チャージでの浸漬管径Dの値は、予め
統計的に決定した浸漬管の平均拡大速度dφから回帰す
る。
【0021】 D=Do+dφ・nch (m) … (6) Do:取付け浸漬管径(m) dφ:浸漬管径平均拡大速度(m/回) nch:浸漬管取付けからの処理回数(回) Pt とFgasはオンラインで計算機に取り込んで
[C]濃度を計算する。その結果を脱炭処理中の[C]
の経時変化としてテレビ等の画面に時々刻々表示するこ
とができる。
【0022】本発明の実施に当たり、処理前[C]濃度
の値は、通常は転炉出鋼後(電気炉出鋼後)の取鍋溶鋼
の脱炭処理前の任意の時刻に取鍋から採取した溶鋼の分
析値を用いる。
【0023】実溶鋼の脱炭処理中の温度はおよそ165
0〜1570℃程度であり、本発明の実施に当たり、溶
鋼温度Tの値は1600℃で代表させても、その影響は
極めて小さい。
【0024】本発明の方法によれば、脱炭処理期間中の
溶鋼の途中サンプリングによる[C]分析の実施が不用
であり、省力化・効率化を図ることができる。
【0025】
【実施例】
実施例1(設備固有定数kcoq およびks の決定) RH脱ガス設備を用いて290〜330トンの溶鋼の脱
炭処理を下記に示す種々の条件で実施し、任意の時刻に
溶鋼を採取して、[C]の経時変化を測定し、設備固有
定数kcoq およびks の支配因子を決定した。
【0026】取付け浸漬管内径:0.55〜0.70
(m) 環流Ar流量:2000〜3500(Nl/min) [C]の経時変化を最も良く記述できるkcoq および
s の値を、当該チャージのPt と還流Ar流量変化デ
ータおよび[O]と温度のデータを用いて(1)式に基
づき決定した。
【0027】kcoq と(Qm /Wm20との関係およ
びks と(Qm /Wm1 との関係を各々図1に示し
た。ただし(Qm /Wm20と(Qm /Wm1 の値は
各々Pt が20(mmHg)と1.0(mmHg)であ
るときの溶鋼環流比Qm /Wmを表す。
【0028】kcoq の値はPt の変化と共に変化する
ので、図1でのkcoq はPt が20(mmHg)であ
る時の値で代表させた。
【0029】Qm の値の算定に用いた当該チャージの浸
漬管径は取付け浸漬管径と浸漬管使用回数から浸漬管径
平均拡大速度を考慮して、(6)式から決定した。
【0030】設備固有定数として以下の関係を得た。
【0031】kcoq =0.80・(Qm /Wm20
(l/min) ks =0.10・(Qm /Wm1 (l/min)
【0032】実施例2(経時変化の記述) RH脱ガス設備を用いて315トンの溶鋼の脱炭処理を
下記に示す条件で実施し、本発明の方法により[C]の
経時変化を算定した結果を図2に曲線で示した。さら
に、脱炭処理中に溶鋼試料を採取して、後日分析し、本
発明の方法で算定した[C]の経時変化の計算値と比較
した。
【0033】本発明の方法により、[C]の経時変化が
高濃度域から低濃度域まで極めて精度良く記述できた。
【0034】取付け浸漬管内径:0.55(m) 浸漬管使用回数:20(回) 環流Ar流量:2000(Nl/min) 浸漬管径平均拡大速度:0.002(m/回) 実施例3(終点目標[C]と、実績[C]との対比を図
3に示す) 溶鋼処理量が290〜350トンであるRH脱ガス設備
で脱炭処理を実施した。
【0035】 取付け浸漬管内径:0.55〜0.65(m) 環流Ar流量:2000〜2500(Nl/min) 脱炭終点[C]濃度を0.0018(mass%)と設
定し、本発明の方法で[C]の経時変化を推定し、本モ
デルによる[C]の算定値が0.0018(mass
%)に到達した時に脱炭処理を停止し、その時の溶鋼試
料を採取し[C]の分析を実施した。本発明の方法によ
り究めてよく終点判定が実施できた。
【0036】
【発明の効果】本発明の方法を実施する事により、脱炭
処理途中の[C]分析を実施せずに、脱炭処理中の
[C]の経時変化が正確に掲示でき、終点判定が容易に
なると共に、目標[C]濃度の溶鋼溶製の精度が向上し
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】kcoq と(Qm /Wm20との関係、および
s と(Qm /Wm1 との関係を示す図面。
【図2】[C]濃度の経時変化の実測値と本発明の方法
による[C]濃度の計算値との対応関係を示す図面。
【図3】脱炭処理終点目標[C]=0.0018(ma
ss%)である時の、RH処理実績終点[C]濃度の分
布を示す図面。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−118730(JP,A) 特開 平8−41528(JP,A) 特開 平6−256840(JP,A) 特開 昭62−174317(JP,A) 特開 昭58−153721(JP,A) 特開 昭49−61013(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21C 7/10 C21C 7/00 C21C 7/068

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶鋼の真空脱炭反応モデルに基づいて脱
    炭処理中の[C]濃度を算定する方法において、予め決
    定した設備固有定数kcoq とks および[C]* の値
    を用い、真空排気開始前の任意の時期に溶鋼を採取し、
    採取した溶鋼試料の炭素分析値と、真空排気開始直前に
    測定した溶鋼の温度Tと酸素濃度センサーによる酸素活
    量[O]の値に基づき、真空槽内の圧力Pt の変化をオ
    ンラインで読み込み、(1)式の差分により[C]の経
    時変化を時々刻々計算し、且つ、脱炭量に合せた物質収
    支を基に、次ステップの計算に必要な[O]濃度の値を
    算定して与え、脱炭処理中の[C]濃度を算定する事を
    特徴とする脱炭処理ガイダンス方法 【数1】
  2. 【請求項2】 請求項第1項記載の溶鋼の真空脱炭処理
    ガイダンス方法において、RH脱ガス設備を用いた脱炭
    処理での[C]濃度の経時変化を算定するに際して、設
    備固有定数kcoq とks の値を、当該チャージの浸漬
    管内径Dを用い、Pt と環流ガス流量Fgasの変化を
    時々刻々与えて、(4)式で算定した溶鋼環流量Qm
    値をその都度算定し、予め決定した設備固有定数である
    反応速度補正値αとβを用いて各々(3−1)と(3−
    2)式で与える事を特徴とする溶鋼の脱炭ガイダンス方
    法 【数2】
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