JP3408398B2 - 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の製造方法 - Google Patents

低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、医薬用の錠剤や顆
粒剤に、崩壊剤、結合剤及び賦形剤として添加される低
置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の製造方法に
関する。 【0002】 【従来の技術】医薬品の錠剤や顆粒剤は、投与後に、そ
の中に含まれている崩壊剤が膨潤して崩壊する。崩壊剤
としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロ
ース、カルボキシメチルセルロースおよびそのカルシウ
ム塩、デンプンおよびその誘導体を挙げることができ
る。この中で、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
は、薬物との相互作用が少ない非イオン性の崩壊剤であ
る。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを医薬品の
添加剤として使用し得ることは、特公昭48−3885
8号公報および特公昭57−53100号公報に記載さ
れている。 【0003】低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
は、アルカリセルロースとプロピレンオキサイドを反応
させることによって得ることができる。反応生成物に存
在するアルカリを中和する際に、通常の方法、例えば、
酸を含む熱水中に反応生成物を投入する方法を用いる
と、次のような問題が生じる。すなわち、該方法によっ
て得られる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、
置換度が低く、原料のパルプと同様に繊維質であるため
に、洗浄性がよく、精製が容易であるが、その反面、粉
砕が困難であり、流動性の良好な粉砕品を得ることがで
きない。粉砕品の流動性が悪いと、直接打錠法で製錠す
る場合、製錠された錠剤の重量偏差が大きくなってしま
い、また、押出造粒法で顆粒剤を製造する場合、造粒速
度が小さくなることがある。 【0004】一方、特公昭57−53100号公報に記
載された方法では、エーテル化反応の終了後に、反応触
媒として用いたアルカリを水中で部分的に中和し、低置
換度ヒドロキシプロピルセルロースを一部溶解させて、
繊維質の部分を制御する。この方法では、残存するアル
カリ量を多くすると、溶解量が大きくなって見掛け密度
が大きくなり、流動性が良好になる。しかし、この方法
によると、生成した粒子が固くなって、不純物を除去す
る際の洗浄性が悪くなり、多量の洗浄水を必要とするば
かりでなく、強熱残分が規格値を越えてしまうことがあ
る。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の欠点を解消するためになされたものであり、製造工
程中において不純物を容易に除去することができ、か
つ、粉末にする際の粉砕性が良好であり、しかも、粉砕
して得られる粉末の流動性が良好である、低置換度ヒド
ロキシプロピルセルロース粉末の製造方法を提供するこ
とを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明の42%以下の圧
縮度と48度以下の安息角を有する低置換度ヒドロキシ
プロピルセルロース粉末の製造方法は、水酸化ナトリウ
ムを含むアルカリセルロースとプロピレンオキサイドを
反応させる工程と、該水酸化ナトリウムを少なくとも部
分的に酸で中和する工程と、該中和後の生成物を洗浄し
た後、脱水して、70〜90重量%の含水率を有するケ
ーキを得る工程と、該ケーキを乾燥させた後に粉砕する
工程とを含むことを特徴とする。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明の方法は、まず、水酸化ナ
トリウムを含むアルカリセルロースとプロピレンオキサ
イドを置換反応させる。アルカリセルロースは、シート
状のパルプを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し圧搾する
か、または、攪拌中の粉末パルプに水酸化ナトリウムを
噴霧することによって得られる。水酸化ナトリウムは、
置換反応の触媒として作用する。水酸化ナトリウムの使
用量は、セルロースに対して重量比で0.3〜0.7程
度である。反応の際のプロピレンオキサイドの添加量
は、セルロースの無水グルコース単位1モル当たり0.
2〜1.0モル程度である。反応温度は40〜80℃で
あり、反応時間は1〜5時間である。反応は、耐圧反応
容器を用いて行なう。 【0008】次に、水酸化ナトリウムを、完全にまたは
部分的に、酸で中和する。酸としては、酢酸、塩酸等が
用いられる。部分的に中和させた場合、低置換度ヒドロ
キシプロピルセルロースが、残存する水酸化ナトリウム
によって一部溶解し、後に粉末にしたときの流動性が、
良好になる反面、部分中和に用いる酸の量が少ないとき
には、析出させた粒子が固く締まって、洗浄が困難にな
り、不純物の含有量が増加する。部分的に中和させる
際、全中和反応中、初期の中和量を大きくすることによ
って、原料セルロースに由来する繊維質が多く残存し、
中和反応によって得られる生成物が洗浄し易くなり、後
にケーキの含水率を調整して、粉体の物性を制御するこ
とが容易となる。部分的に中和させる場合の酸の添加量
は、全アルカリを中和するのに要する酸の20モル%以
上である。 【0009】得られる低置換度ヒドロキシプロピルセル
ロースのヒドロキシプロポキシル基の含有量は、5〜1
6重量%、好ましくは7〜13重量%である。5重量%
未満であると、ヒドロキシプロピルセルロースが原料セ
ルロースの性質に類似しているため、また、16重量%
を越えると、ヒドロキシプロピルセルロースの水溶性が
大きくなるため、共に膨潤率が小さくなり、錠剤等に使
用した場合に崩壊性が不十分となる。 【0010】次に、中和後の生成物を洗浄した後、脱水
して、ケーキの含水率を70〜90重量%に調整する。
生成物の洗浄には、通常、60〜100℃の熱水を用い
る。熱水の温度が60℃未満であると、低置換度ヒドロ
キシプロピルセルロースが膨潤するため、洗浄が困難に
なる。通常、洗浄は、中和されたヒドロキシプロピルセ
ルロースを熱水中で3〜7%のスラリーとし、濾過して
ケーキとした後、その上に熱水を散布するか、あるい
は、再びスラリー化して脱水することによって、行われ
る。脱水後の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの
ケーキの含水率は、70〜90重量%、好ましくは75
〜85重量%に調整する。70重量%未満であると、粉
砕性が劣り、また、粉砕させた場合の粉末の圧縮度と安
息度が大きく、流動性が劣る。90重量%を超えると、
乾燥に負荷が掛かりすぎるため好ましくない。 【0011】含水率をこの範囲内に調整するには、脱水
機の運転条件を調整すればよい。例えば、遠心分離低減
剤機で脱水する場合には、回転数または脱水時間を調整
すればよい。あるいは、目標とする含水率よりも低い含
水率となるようにした後に、混合機中で水を加えて、含
水率を調整してもよい。含水率を70〜90重量%とし
た状態で、温度を20℃以下、好ましくは15℃以下に
すると、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの水和
が進み、好ましい。 【0012】前述の特公昭57−53100号公報に記
載されている方法のように、流動性を良好にするため
に、残存するアルカリによって低置換度ヒドロキシプロ
ピルセルロースを部分的に溶解させる方法では、析出し
た粒子が固く締まり、不純物の除去が困難となる場合が
あるが、本発明の方法によれば、洗浄が終了した後に、
粉末としたときの流動性を改善することができるため、
析出する粒子を固くする必要がなく、洗浄性を良好とす
ることができる。 【0013】次に、ケーキを乾燥させた後に、粉砕す
る。乾燥は、攪拌型あるいは箱型等の乾燥機を用いて、
通常の方法で行なう。粉砕は、ハンマーミル等の衝撃型
粉砕機によって行なう。 【0014】以上に説明した本発明の製造方法によって
得られる低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末
は、圧縮度が42%以下で安息角が48度以下であり、
流動性が良好である。したがって、直接打錠法で製錠し
た場合、配合成分の流動性が良好で、製錠される錠剤の
重量偏差が小さくなり、また、押出造粒法によって顆粒
剤を得る場合、造粒速度が大きくなる。 【0015】ここで、圧縮度は、{(固め見掛比重)−
(ゆるみ見掛比重)}/(固め見掛比重)×100
〔%〕の式によって算出され、安息角と共に粉末の流動
性を評価する値である。圧縮度および安息角ともに、値
が小さくなるほど流動性が良好になる。 【0016】固め見掛比重とは、試料を一定の容器に軽
く充填した後、タッピングの衝撃で固めたときの見掛比
重をいい、パウダテスタ(ホソカワミクロン社製)を用
いて、50回/分で3分間タッピングした後の100c
cの容器中に充填された試料の重量を測定することによ
って、算出される。ゆるみ見掛比重とは、ふるいを振動
させて試料を一定の容器に落下させたときの比重をい
い、パウダテスタ(ホソカワミクロン社製)を用いて、
100ccの容器中に充填された試料の重量を測定する
ことによって、算出される。 【0017】安息角とは、試料を平面上に落下させて堆
積させた円錐の母線と水平面とのなす角をいい、パウダ
テスタを用いて直径80mmの円板状の台の上に75m
mの高さより流出させ、堆積している粉体と台との角度
を測定することによって、求められる。 【0018】低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉
末の平均粒子径は、通常、5〜150μmであり、好ま
しくは40〜100μmである。5μm未満では、流動
性が劣る。150μmを越えると、ヒドロキシプロピル
セルロースと薬物とを混合させた場合に不均一となるお
それがある。平均粒子径は、ふるい分けの際のふるいの
目開きを適当に選択することによって、調整することが
できる。 【0019】低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉
末は、薬物、賦形剤、結合剤、着色剤、滑沢剤等を配合
して造粒することによって、顆粒剤とすることができ
る。また、薬物等を配合して組成物としたものをそのま
まで、または造粒物とした後に、打錠することによっ
て、錠剤とすることができる。 【0020】 【実施例】以下、本発明の実施例を詳細に説明する。実施例1〜2 (1)低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの合成;
パルプを49重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬
した後、圧搾して、24.2重量%の水酸化ナトリウム
を含有するアルカリセルロースを得た。このアルカリセ
ルロース100重量部を反応機に仕込み、窒素置換を行
なった。置換後、プロピレンオキサイド9.0重量部を
反応機に仕込み、攪拌しながら40℃で1時間、50℃
で1時間、および70℃で1時間反応させて、反応生成
物109重量部を得た。 【0021】ニーダーに65℃の熱水2.5重量部と酢
酸0.08重量部を入れ、これに反応生成物1重量部を
分散させた。温度を30℃にして、反応生成物の一部を
溶解させた後、0.25重量部の酢酸を入れ、析出させ
た。析出物を90℃の熱水で洗浄した後、圧搾して脱水
し、リボンミキサー中で解砕し、含水率65%の洗浄品
を得た。 【0022】洗浄品をリボンミキサー内に入れ、リボン
ミキサーを回転させながら水を加え、含水率を75%
(試料No.1)または85%(試料No.2)として
から乾燥させた。乾燥品を、0.3mmのスクリーンを
有する高速回転衝撃粉砕機によって、定格電流値付近で
粉砕し、目開き75μmの篩でふるい、微粉末を得た。
粉砕機へのフィード速度とふるいの通過率から粉砕能力
を算出した。これらの値を表1に示す。置換基の分析を
行ったところ、ヒドロキシプロピキシル基の含有率は、
10.7%であった。 【0023】(2)低置換度ヒドロキシプロピルセルロ
ースの物性;試料No.1および試料No.2の見掛比
重および安息角をパウダーテスターPD−T型(ホソカ
ワミクロン社製)で、また、平均粒子径をレーザー回折
式測定装置HELOS&RODOS(シンパック社製)
により測定した。その結果を表1に示す。 【0024】 【表1】【0025】(3)直接打錠による製錠;アスピリン造
粒末(アスピリン/コーンスターチ=95/5)を基剤
として、試料No.1または試料No.2が10重量
部、アスピリン造粒末が90重量部、ステアリン酸マグ
ネシウムが0.5重量部の配合比で、直接打錠用組成物
を調製した。 【0026】RT−S15K−T35(菊水製作所社
製)により、回転数30rpm、打錠圧0.6トンでこ
の直接打錠用組成物を打錠し、直径が9mm、重量が3
00mgの錠剤を得た。この錠剤の重量偏差、硬度、崩
壊時間を測定した。結果を表1に示す。 【0027】(4)押出造粒;10重量部の試料No.
1または試料No.2と、90重量部のフェナセチン
を、ヘンシェルミキサーによって混合し、52重量部の
水を加えて練合した後、0.6mmφのスクリーンを有
する5インチの円筒押出機を用いて造粒した。造粒速度
の結果を表1に示す。 【0028】比較例1 実施例1〜2で水を加えて含水率を75重量%または8
5重量%に調整する前の含水率65%の洗浄品を用いた
他は、実施例1〜2と同様の方法で微粉末を得て、試料
No.3とした。その粉砕能力を表1に示す。試料N
o.3について、実施例1〜2と同様の方法で、粉体の
物性の測定、直接打錠による製錠および押出造粒を行っ
た。結果を表1に示す。 【0029】実施例1、2の低置換度ヒドロキシプロピ
ルセルロースは、粉砕性(粉砕能力:単位時間当たりの
粉砕量)に優れ、錠剤の重量偏差が小さく、顆粒剤の造
粒速度が大きい。これは、乾燥前に含水率を70重量%
以上としたことによるものである。 【0030】 【発明の効果】本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセ
ルロース粉末の製造方法は、製造工程中において不純物
を容易に除去することができ、かつ、粉末にする際の粉
砕性が良好である。また、本発明の製造方法によって得
られる粉末は、42%以下の圧縮度と48度以下の安息
角を有し、流動性が良好である。したがって、該粉末を
直接打錠用組成物に配合した場合に、重量偏差の小さい
錠剤を得ることができ、押出顆粒剤に配合した場合に、
造粒速度が大きく、顆粒剤の生産効率が向上する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−63927(JP,A) 特開 平8−229103(JP,A) 特開 平8−104650(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61J 3/02 A61J 3/06

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 水酸化ナトリウムを含むアルカリセルロ
    ースとプロピレンオキサイドを反応させる工程と、該水
    酸化ナトリウムを少なくとも部分的に酸で中和する工程
    と、該中和後の生成物を洗浄した後、脱水して、70〜
    90重量%の含水率を有するケーキを得る工程と、該ケ
    ーキを乾燥させた後に粉砕する工程とを含むことを特徴
    とする42%以下の圧縮度と48度以下の安息角を有す
    る低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の製造方
    法。
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