JP4290417B2 - 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び乾式直打用の結合剤兼崩壊剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品又は食品分野等において製剤を製造する際に崩壊性又は結合性を付与するために添加する低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医薬品又は食品分野等の固形製剤において、主薬のみで作製された製剤では、薬物を投与しても十分な崩壊性が得られず、薬効が十分に発揮されない場合や結合性が劣るため、錠剤や顆粒剤とした際にその形状を保つことができない場合等の問題がある。このような場合に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを製剤に添加することにより、崩壊性や結合性を付与することができる。
【0003】
このような目的で使用されるものとして、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの他にカルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルスターチ等があるが、この低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは非イオン性であるため、イオン性の物等との反応による変質が起きにくい等の利点を有する。
【0004】
上記利点を利用して、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの粉末と薬物やその他の賦形剤等を乾式混合後に、打錠する方法や水又は水溶性結合剤の水溶液と混練して造粒することにより、顆粒剤を成型する方法等がある。この低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、日本薬局方収載の医薬品添加物であり、これを医薬品添加物として使用することは特許文献1、特許文献2に記載がある。
【0005】
この低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの形状は、繊維状物と粒状物の混合物からなる粉体であり、錠剤等に成形する際の結合性はこの繊維状物の絡み合いにより得られると言われている。一方、この結合性を高めるために、この様な繊維状物が多くすると粉体が嵩高いものとなり、その流動性が低下する。そのため、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと薬物やその他の賦形剤等を乾式混合後に打錠する方法、一般的に乾式直打といわれる方法においては、この流動性が低いことにより打錠機のホッパーから流出せず打錠不可能となるか、あるいは錠剤の重量偏差が著しく大きくなる問題があった。特許文献3には安息角が45度以下で膨潤率100%以上であることを特徴とする低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが開示されている。この場合、流動性は改善されるが、繊維状物が減少することにより結合性が低下する問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特公昭46−42792号公報
【特許文献2】
特公昭57−53100号公報
【特許文献3】
特開平7−324101号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、錠剤を成形する際に添加する結合剤及び崩壊剤として使用される低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの結合性が高く、流動性が高い乾式直打用の結合剤兼崩壊剤とすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、好ましくは造粒により低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの繊維をコイル状にすることにより結合性及び流動性が改善された乾式直打用の結合剤兼崩壊剤となることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、コイル状の繊維を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、これを含んでなる乾式直打用の結合剤兼崩壊剤や固形製剤及びコイル状の繊維を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の乾式直打用の結合剤兼崩壊剤は、乾式で錠剤等を作製する際に使用される結合剤兼崩壊剤をいう。乾式直打とは、薬物及び、賦形剤と結合剤と崩壊剤から選ばれる一以上を水又は溶媒を用いず、粉体のまま混合し、その混合物を錠剤成型機を用いて圧縮成型することにより錠剤等を作製する方法をいい、粉体をそのまま混合して圧縮成型するのみであるため、工程が簡略であるという利点を持つ。
【0011】
本発明に使用される低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとしては、無水グルコース単位あたりヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.1〜0.5である。ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.1未満だと目的の結合性を示さず、0.5を超えると目的の崩壊性を示さず、成型された錠剤等の製剤の崩壊時間が長くなる。
【0012】
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、乾式直打において打錠機のホッパーから連続的に粉体を供給するため高い流動性が必要であり、流動性指数で60以上のものが好ましい。流動指数の上限については、結合性が得られる範囲であれば特に制限されないが、特に80程度が好ましい。
上記の流動性指数とは、カル(Carr)によって提唱された粉体の流動性の指標である。その求め方は、次式から求められる圧縮度の他に安息角、スパチュラ角、均一度の4種の値を測定し、その値からそれぞれについて指数を求め、それらを総和して流動性指数を求める。詳細は、「改訂増補粉体物性図説」粉体工学会・日本粉体工業技術協会編、日経技術図書、1985年、第151頁に記載がある。
圧縮度(%)={(固め嵩密度−ゆるめ嵩密度)/固め嵩密度}×100
【0013】
ここで、ゆるめ嵩密度とは、疎充填の嵩密度をいい、ゆるめ嵩密度の測定方法は、直径5.03cm、高さ5.03cm(容積100ml)円筒容器に試料をJIS22メッシュ(710μm)の篩を通して23cm上方から均一に供給して、上面をすり切ってその重量を秤量することにより測定でき、最も典型的にはホソカワミクロン社製パウダーテスター(PT−D)を用いて測定できる。
【0014】
固め嵩密度は、ゆるめ嵩密度測定後にさらにこの容器上部にホソカワミクロン社製パウダーテスターの備品である専用キャップをはめ、この上縁まで試料を追加し1.8cmのタップ高さで180回タツピングを行った後、キャップをはずして容器の上面で試料をすり切って100ml容器への試料充填量により測定できる。
【0015】
安息角とスバチュラ角と均一度は、R.L.Carr,Jr., Chemical Engineering, pp.163〜168,January18, 1965年 に準じて測定される。
安息角は、直径8cmのテーブルにJIS22メッシュ(710μm)の篩を通して高さ11cmのところから0.5cmの径のロートを通して落とし、形成された粉体の山の稜線とテーブルの角度を測定することにより得られる。
スバチュラ角は、縦方向10cmと横方向2cmの板(ブレード)を有するスバチュラを昇降テーブルに乗せ、昇降テーブル上に粉体を置きテーブルを降下することにより形成された粉体の山の稜線と板の角度の第1の測定角を得た後、スバチュラの一端に10cmの高さから5gのおもりを落としてスバチュラに振動を与えることにより形成された粉体の山の稜線と板の角度の第2の測定角を得て、両測定角の平均値より得ることができる。
均一度の測定は、粉体の粒度分布を測定し、60%積算粒径と10%積算粒径の比によって求められる。粒度分布の測定方法としては篩を用いた測定方法とレーザー回折装置により測定する方法がある。例えば、篩を用いた測定方法の場合、篩い目開きの異なる篩を目開きの大きい物を上に縦にいくつか重ね、そこにサンプル50gを乗せ20分間振とうした後、各篩い上の重量を測定することにより粒度分布を測定できる。
【0016】
通常の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、繊維状物と粒状物の混合物であり結合性は主に繊維状物により得られ、流動性は粒状物によって得られる。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、アルカリ水溶液に可溶である性質を利用して、この流動性を高めることができる。さらに詳しくは、原料パルプの繊維状形態を引き継ぐアルカリ含有の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース反応品を水に溶解させ、酸により中和析出させることにより、その形態を繊維状物から粒状物に変化させることにより達成される。しかし、この様に一端溶解後中和して得られた粒状の形態の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、緻密な構造を有し、圧縮成型時の結合性が低下する。
【0017】
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、繊維状と粒状の形態の中の直鎖状の繊維をコイル状に丸めた形態を持つものである。このため、見かけの形態は球状であり流動性に優れる。また、これを圧縮成型する際にはその繊維により結合性が高いものとなる。
その結合性の指標としては、IR(infrared)錠剤成型器にて9.8MPa、30秒で低置換度ヒドロキシプロピルセルロース200mgを圧縮成型し、10mmφの錠剤を作製し、その錠剤の長軸方向の破壊強度にて評価できる。一般的にこの強度を錠剤硬度という。乾式直打用の結合剤としては、この錠剤硬度が130N以上が好ましく、さらには150N以上がさらに好ましい。この錠剤硬度の上限については、崩壊性が得られる範囲であれば特に制限されないが、特に300N以下が好ましい。
【0018】
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを製造する方法としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの洗浄品を造粒することにより得られる。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの洗浄品は、特に限定されず、公知の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法を用いることができる。
【0019】
例えば、パルプを苛性ソーダ水溶液に浸せき後、圧搾することにより作製されたアルカリセルロースとプロピレンオキサイドを反応させるか、粉末状パルプをイソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、ヘキサン等の有機溶剤中で苛性ソーダ水溶液を添加してアルカリセルロースを作製し、プロピレンオキサイドを添加して反応させる等により、反応生成物を得ることができる。
【0020】
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、アルカリ水溶液に可溶であり、反応品中には触媒として利用した苛性ソーダが残存する。この反応生成物に水を加えて溶解後、残存するアルカリを酸(例えば、酢酸、塩酸、硫酸等)により中和し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの中和析出粒子を形成させる。
この工程において生成される塩及びその他の不純物を除去するために水又は熱水を用いて洗浄を行い、水分を除去して低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの洗浄品を得ることができる。
【0021】
この低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの洗浄品は、更に乾燥工程と粉砕工程を経て従来の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを生ずるが、本発明では、これらの工程の前に、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの洗浄品を造粒することを特徴とする。
【0022】
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの洗浄品の造粒に用いられる造粒装置としては、縦型撹拌造粒装置、横型撹拌造粒装置、バッチ式混練装置、横型短軸連続混練装置、横型2軸連続混練装置等が挙げられるが、特に横型2軸連続混練装置が好ましい。連続混練装置の場合、機内での洗浄品の滞留時間により、製品の見かけ密度及び流動性を調製できる。
【0023】
この連続混練装置を用いた場合での滞留時間の調製は、内蔵するパドルの配列、回転数、排出口の開度等で調製できる。また、滞留時間の測定方法としては供給口に色素を添加した後、経時的に排出口から出でくる反応生成物造粒末をサンプリングし、色素濃度の最も高いところを平均滞留時間として測定できる。滞留時間としては、求められる製品の見かけ密度により変化するが概ね30〜300秒程度である。
【0024】
このような連続混練装置は、バッチ式の混合装置と比較して造粒時間を短縮でき処理速度を向上させることができる。また、小さな装置で処理が可能であり設備費用、設置場所の削減が可能となる。
【0025】
本発明に使用できる連続混練装置としては単軸、2軸等があるが本発明においては混練性が優れる点から2軸タイプのものが好ましい。この様な装置では内蔵するパドルの組み合わせにより滞留時間または混練状態を調整することができる。また、連続混練装置のトラフ長さとパドル径の比であるL/Dは5〜13程度のものが使用可能である。
【0026】
造粒時の温度の製品物性に与える影響は小さく、自由に選択可能である。得られた造粒物を定法により乾燥し、得られた乾燥物を必要に応じて粉砕、分級することは自由である。なお、乾燥方法は、特に限定されないが、送風オーブンを用いて60〜80℃程度で乾燥する方法や流動層乾燥にて吸気温度60〜80℃程度で乾燥する方法等が挙げられる。
【0027】
このようにして得られる本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、結合性及び流動性が改善された乾式直打用の結合剤兼崩壊剤となる。本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと薬物を粉体のまま混合し、その混合物を錠剤成型機を用いて圧縮成型することにより錠剤等の固形製剤を作製することができる。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、薬物種、剤形等に依存するが、好ましくは固形製剤中に5〜30重量%である。混合される粉体の好ましい平均粒径については、薬物や賦形剤等との混合体等を考慮して決められるが、本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの好ましい平均粒径は、50〜300μmである。
【0028】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例1
パルプを43重量%苛性ソーダ溶液に浸せき後圧搾してNaOH22.2重量%、セルロース44.8重量%、H2O33.0重量%の組成のアルカリセルロースを得た。セルロース換算で350gのアルカリセルロースを5Lの容量の反応機に仕込み、窒素置換を行った。そこにプロピレンオキサイドを79g(0.226重量部:対セルロース1重量部)添加して、ジャケット温度45℃で2時間、65℃で30分反応を行い、無水グルコース単位あたりヒドロキシプロポキシル基置換モル数0.25のヒドキシプロピルセルロース粗反応品857gを得た。次に、5Lのバッチ式ニーダーに45℃の水1925g、氷酢酸52gを張り込み、反応した粗反応品を全量投入して溶解を行った。その後、33重量%酢酸633gを20g/分の速度で添加して中和析出を行った。その中和析出物を熱水にてスラリー化し、遠心脱水機にて脱水することにより洗浄を行った。この洗浄品を300g/分の速度で2軸の連続混練装置(KRCニーダーS2型、パドル径:50mmφ、バレル長:660mm、L/D:13.2、内容積:1.2L栗本鉄工社製)を用いて、回転数100rpm、滞留時間を105秒、ジャケット温度60℃にて造粒した。
得られた造粒物を80℃、1昼夜送風オーブンにて乾燥後粉砕し、150メッシュ(目開き100μm)篩いで篩過し、篩い上のものを回収することにより目的物を得た。得られた目的物の流動性指数、結合性、崩壊性を表1に記載した。
【0029】
実施例2
パルプを43重量%苛性ソーダ溶液に浸せき後、圧搾してNaOH22.2重量%、セルロース44.8重量%、H2O33.0重量%の組成のアルカリセルロースを得た。セルロース換算で350gのアルカリセルロースを5Lの容量の反応機に仕込み、窒素置換を行った。これにプロピレンオキサイドを79g(0.226重量部:対セルロース1重量部)添加して、ジャケット温度45℃で2時間、65℃で30分反応を行い、無水グルコース単位あたりヒドロキシプロポキシル基置換モル数0.25のヒドキシプロピルセルロース粗反応品857gを得た。
次に、5Lのバッチ式ニーダーに45℃の水1925g氷酢酸52gを張り込み実施例1と同様の方法で反応した粗反応品を全量投入して溶解を行った。その後、33重量%の酢酸633gを20g/分の速度で添加して中和析出を行った。その中和析出物を熱水にてスラリー化し、遠心脱水機にて脱水することにより洗浄を行った。この洗浄品を300g/分の速度で2軸の連続混練装置(KRCニ−ダーS2型、パドル径:50mmφ、バレル長:660mm、L/D:13.2、内容積:1.2L、栗本鉄工社製)を用いて、回転数100rpm、滞留時間を105秒、ジャケット温度60℃にて造粒した。
得られた造粒物を80℃、1昼夜送風オーブンにて乾燥後粉砕し、150メッシュ(目開き100μm)篩いで篩過することにより目的物(篩過品)を得た。得られた目的物の流動性指数、結合性、崩壊性を表1に記載した。
【0030】
実施例3
実施例1と同様の方法にて反応を行い得られた粗反応品を5Lのバッチ式ニーダーに45℃の水2450g氷酢酸104gを張り込み、実施例1と同様の方法で反応した粗反応品を全量投入して溶解を行った。その後、33重量%の酢酸468gを20g/分の速度で添加して中和析出を行った。その中和析出物を熱水にてスラリー化し、遠心脱水機にて脱水することにより洗浄を行った。この洗浄品を300g/分の速度で2軸の連続混線装置(KRCニーダーS2型、パドル径:50mmφ、バレル長:660mm、L/D:13.2、内容積;1.2L栗本鉄工社製)を用いて、回転数100rpm、滞留時間を105秒、ジャケット温度60℃にて造粒した。
得られた造粒物を80℃、1昼夜送風オーブンにて乾燥後粉砕し、150メッシュ(目開き100μm)篩で篩過することにより目的物(篩過品)を得た。得られた目的物の流動性指数、結合性、崩壊性を表1に記載した。
【0031】
比較例1
パルプを43重量%苛性ソーダ溶液に浸せき後圧搾してNaOH22.2重量%、セルロース44.8重量%、H2O33.0重量%の組成のアルカリセルロースを得た。セルロース換算で350gのアルカリセルロースを5Lの容量の反応機に仕込み、窒素置換を行った。そこにプロピレンオキサイドを79g(0.226重量部:対セルロース)添加して、ジャケット温度45℃で2時間、65℃で30分反応を行い、無水グルコース単位あたりヒドロキシプロポキシル基置換モル数0.25のヒドキシプロピルセルロース粗反応品857gを得た。次に5Lのバッチ式ニーダーに45℃の水1925g氷酢酸104gを張り込み実施例1と同様の方法で反応した粗反応品を全量投入して溶解を行った。その後、33重量%酢酸473gを20g/分の速度で添加して中和析出を行った。その中和析出物を熱水にてスラリー化し、遠心脱水機にて脱水することにより洗浄を行った。得られた洗浄品を80℃、1昼夜送風オーブンにて乾燥後粉砕し、150メッシュ(目開き100μm)篩いで篩過することにより目的物(篩過品)を得た。得られた目的物の流動性指数、結合性、崩壊性を表1に記載した。
【0032】
比較例2
実施例1と同様の方法にて反応を行い得られた粗反応品を5Lのバッチ式ニーダーに45℃の水2450gを張り込み実施例1と同様の方法で反応した粗反応品を全量投入して溶解を行った。その後、33重量%の酢酸780gを20g/分の速度で添加して中和析出を行った。その中和析出物を熱水にてスラリー化し、遠心脱水機にて脱水することにより洗浄を行った。中和、洗浄を行い、得られた洗浄品を80℃、1昼夜送風オーブンにて乾燥後粉砕し、150メッシュ(目開き100μm)篩いで篩過することにより目的物(篩過品)を得た。得られた目的物の流動性指数、結合性、崩壊性を表1に記載した。
【0033】
以下、評価試験法について記載する。
流動性指数
パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)を用いて圧縮度、安息角、スパチュラ角、均一度を測定して各指数を総和して求めた。
【0034】
結合性
各目的物を200mgずつ秤取り、IR錠剤成形器にて9.8MPa、30秒加圧して直径10mmの錠剤を作製し、その錠剤の硬度を測定した。
【0035】
崩壊性
日本薬局方13の崩壊試験に準じて、試験液として37℃の水を用いて崩壊時間を測定した。以上の試験結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
上記の結果から、本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、結合性が高く、流動性の優れた粉体であることが判る。また、その崩壊性も優れた乾式直打用の基剤として利用できる。
【0038】
実施例1と比較例1で得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのSEM写真をそれぞれ図1と図2に示す。図1のSEM写真では、本発明の特徴である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの繊維がコイル状に造粒した状態が観察され、このものは流動性が高く結合性が高いものであった。図2のSEM写真では、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの繊維状物が多く観察され、このものは結合性は高いが流動性は低いものであった。
【0039】
【発明の効果】
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの繊維をコイル状にすることにより、結合性及び流動性が高い結合材及び崩壊剤として乾式直打用の基剤として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの75倍のSEM写真を示す。
【図2】比較例1で得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの75倍のSEM写真を示す。
Claims (6)
- コイル状の繊維を有し、ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.1〜0.5である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであって、アルカリセルロースとプロピレンオキサイドの反応生成物を水に溶解後、酸で中和して析出させ、洗浄して得られる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの洗浄品を造粒して得られる低置換度ヒドロキシプロピルセルロース。
- 流動指数が60以上である請求項1に記載の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース。
- ヒドロキシプロピルセルロースを圧縮成型して得られる錠剤の破壊強度を評価する錠剤硬度において、130N以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含んでなる乾式直打用の結合剤兼崩壊剤。
- 請求項4に記載の乾式直打用の結合剤兼崩壊剤と、薬物とを含んでなる固形製剤。
- ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数が0.1〜0.5である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの洗浄品を混練装置にて造粒することを特徴とするコイル状の繊維を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法。
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