JP3404260B2 - 高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤ - Google Patents
高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤInfo
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Description
給性及び耐割れ性が良好であるワイヤ表面に銅メッキを
施さないガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤに関
する。
リッドワイヤは、ワイヤ表面に銅メッキを施したものが
主流となっている。その理由は、銅メッキを施さないと
ワイヤの電気抵抗値が高くなり、アークが不安定となっ
て、溶接中のスパッタ(ワイヤ端から小粒の溶滴が飛散
する現象)が増大することが大きな原因であった。特に
高電流の炭酸ガスアーク溶接では、溶滴の円滑なグロビ
ュール移行(ワイヤ径又はそれ以上の大きい粒状の溶滴
となって移行する)ができずに多くのスパッタが発生す
ることがあるからである。
では、メッキワイヤの場合に生じるワイヤ送給系での銅
くずが発生しない等の長所があり、また、ワイヤの製造
工程においてもメッキ工程が省略されることから、青化
銅、硫酸銅、ピロリン酸銅等メッキ廃液に含まれる有害
物質の取扱い処理が不要になる等の利点がある。
は、ワイヤ表面にMoS 2 やグラファイト、またフッ素
系の潤滑剤、その他防錆油を塗布するなどによってワイ
ヤの送給性若しくはワイヤの耐錆性などを改善した例は
あった。しかし、それらだけではワイヤの送給性や耐錆
性は十分ではなく、更に高電流溶接時の溶滴の円滑なグ
ロビュール移行ができずに、多くのスパッタが発生する
のが依然として問題であった。
問題点の解消を図るために成されたものであり、本発明
の目的は、高電流での炭酸ガスアーク溶接に際しての溶
滴のグロビュール移行をスムーズにし、スパッタ発生が
少なく、かつ、耐錆性、ワイヤ送給性及び耐割れ性が良
好であるワイヤ表面に銅メッキを施さない高電流炭酸ガ
スアーク溶接用ソリッドワイヤを提供することを目的と
する。
達成するため以下に述べる構成としたものである。即
ち、本発明における請求項1の発明は、ワイヤ化学成分
として、重量%でC:0.01〜0.09%,Si:
0.4〜1.2%,Mn:1.0〜2.2%,Ti:
0.1〜0.35%,Al:0.0005〜0.1%,
S:0.0005〜0.025%,O:0.001〜
0.03%,S+O:0.0015〜0.04%,C
u:0.001〜0.1%を含有し、溶滴の表面張力を
適度に保たせるためのパラメータX=(5C+Si+M
n+10Ti+20Al)/(100S+100O)が
X:1〜13を満足し、残部がFe及び不可避不純物で
あり、かつ、ワイヤ表面にワイヤ10kgに対し0.0
2〜2gの量のMoS 2 が塗布されており、ワイヤ表面
に銅メッキが施されていないことを特徴とする高電流炭
酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤである。
流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤにおいて、前記
Cは0.01〜0.05%、前記Siは0.5〜1.0
%、前記Mnは1.4〜2.0%、前記Tiは0.21
〜0.28%、前記Alは0.0005〜0.08%、
前記Sは0.0005〜0.008%、前記Oは0.0
01〜0.02%、前記S+Oは0.0015〜0.0
25%、前記X値は3〜12であることを特徴とする。
の高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤにおい
て、ワイヤ化学成分として、さらに、N:0.0005
〜0.009%,Ni:0.001〜0.2%,Cr:
0.002〜0.5%,Mo:0.0005〜0.2
%,V:0.0005〜0.1%を含有することを特徴
とする。
記載の高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤにお
いて、ワイヤ表面に、K+3Csがワイヤ重量に対し
0.5〜10ppmとなるように、KとCsの少なくと
も何れか一方が塗布されてなることを特徴とする。
て詳細に説明する。本発明においては、これまでの銅メ
ッキを施さないソリッドワイヤで問題となっていた、高
電流溶接時のアーク不安定によるスパッタ発生、ワイヤ
送給性、耐錆性について、脱酸剤の量を適正バランス化
するとともに、ワイヤ剛性を考慮するなどのワイヤ化学
成分を適正配分化することによって、大幅な改良が実現
されるに至ったものである。
を行うためには、溶滴の表面張力を適度に保たせる必要
があり、OとSとはその表面張力に大きく影響を及ぼ
す。即ち、多すぎると溶滴の表面張力が小さくなり、移
行自体は行いやすくなるが、溶滴のふらつきが大きくな
り、アーク力によって飛ばされるスパッタが増大する。
逆に少なすぎると溶滴の表面張力は大きくなり、溶滴の
離脱の際のピンチ力が増大し、瞬時の短絡の際に飛ばさ
れる大粒のスパッタが発生しやすくなるものである。従
って、ワイヤ中の脱酸剤とO及びSの量を適正バランス
化することが非常に重要である。
適度に保つ必要があり、ワイヤ中のNはワイヤの剛性を
保たせるために、0.005重量%以上は必要な成分で
あるが、このNが多過ぎると、溶融プールよりN2 ガス
が発生してスパッタが増加する傾向にある。しかしなが
ら、Cr、Vという比較的Nとの親和力が強い元素を微
量添加することにより、アーク不安定を解消し得ること
がわかった。
on hardening) につながる成分もワイヤ剛性を保つため
に必要な成分である。しかしながら、過剰に添加すると
表面張力を上げる傾向があり、スパッタを増大させる。
微量添加することにより、さらに改善されることがわか
った。これは、ステンレス鋼で良く知られている不慟態
皮膜と同じ効果であるが、微量添加によっても効果が認
められる。また、メッキを施さないということで、ワイ
ヤ全重量のCuも比較的低く抑えられる。これにより、
耐割れ性がかなり向上する。しかしながら、Cuについ
ても耐錆性を向上する元素であり、微量添加によりその
効果が認められる。
ワイヤについても当てはまる点があるが、メッキを施さ
ないソリッドワイヤの場合はメッキワイヤよりも厳しく
コントロールする必要があり、耐錆性などはメッキを施
さないワイヤに特有の問題である。
項3におけるワイヤ組成と、ワイヤ表面に適量のMoS
2 を塗布することとを組み合わせる手段により、更に高
電流溶接時の溶滴のスムーズなグロビュール移行が可能
となることがわかった。また、ワイヤ表面に適量のKま
たはCsを塗布することにより、より高電流溶接時の溶
滴のスムーズなグロビュール移行が可能となることもわ
かった。
定した理由を説明する。C:0.01〜0.09重量% Cは、メッキを施さないソリッドワイヤにおいて溶滴の
表面張力を適度に保ち、スパッタを低減させるための必
須成分であり、0.01%より少ないとその効果がな
く、0.09%より多いとスパッタが逆に増加してく
る。さらに最適な範囲は0.01〜0.05重量%であ
る。
の表面張力を適度に保ち、スパッタを低減させるための
必須成分であり、0.4%より少ないとその効果がな
く、1.2%より多いとスパッタが逆に増加してくる。
さらに最適な範囲は0.5〜1.0重量%である。
の表面張力を適度に保ち、スパッタを低減させるための
必須成分であり、1.0%より少ないとその効果がな
く、2.2%より多いとスパッタが逆に増加してくる。
さらに最適な範囲は1.4〜2.0重量%である。
の表面張力を適度に保ち、スパッタを低減させるための
必須成分であり、0.1%より少ないとその効果がな
く、0.35%より多いとスパッタが逆に増加してく
る。さらに最適な範囲は0.21〜0.28重量%であ
る。
の表面張力を適度に保ち、スパッタを低減させるための
必須成分であり、0.0005%より少ないとその効果
がなく、0.1%より多いとスパッタが逆に増加してく
る。AlはTiと同様に強脱酸剤であり、その効果は類
似しており、特にTiと共に添加することによって、低
スパッタ化の相乗効果が認められる。さらに最適な範囲
は0.0005〜0.08重量%である。
表面張力を適度に保ち、スパッタを低減させるための必
須成分であり、0.0005%より少ないとその効果が
なく、0.025%より多いと耐割れ性が劣化してく
る。さらに最適な範囲は0.0005〜0.008重量
%である。
表面張力を適度に保ち、スパッタを低減させるための必
須成分であり、0.001%より少ないとその効果がな
く、0.03%より多いと耐割れ性が劣化してくる。さ
らに最適な範囲は0.001〜0.02重量%である。
いソリッドワイヤにおいて溶滴の表面張力を適度に保
ち、スパッタを低減させるための相乗効果が認められ、
合計量が0.0015%より少ないとその効果がなく、
0.04%より多いと耐割れ性が劣化してくる。さらに
最適な範囲は0.0015〜0.025重量%である。
Al)/(100S+100O):1〜13 Xは、メッキを施さないソリッドワイヤにおいて溶滴の
表面張力を適度に保つためとして有効とされるパラメー
タである。Xが1より小さいと溶滴のふらつきが大きく
なり、かつ、スパッタが増大し、13より大きいと瞬時
の短絡の際に発生する大粒スパッタが多くなる。さらに
最適な範囲は3〜12である。なお、La、Ceなどの
レアーアースメタルも脱酸効果が大きく、本パラメータ
においては、Alとほぼ同等に評価できる。
が小さいと、ワイヤの送給が若干不安定となり、スパッ
タが増加傾向にある)であり、0.0005%より少な
いとその効果がなく、多くなると溶融プールよりのスパ
ッタが増加する。0.009%より多くなると、VやC
rを添加してもスパッタの増加を抑制することが不可能
となる。
であるが、0.2%より多いとスパッタが逆に増加して
くる。
0.002%より少なくてはその効果がない。また、
0.01%以上の添加により、ワイヤの耐錆性が向上す
る。ただし、0.5%よりも多く添加すると、脱酸剤で
もあるため、溶滴の表面張力を過大にし、大粒スパッタ
が増加する。
要であるが、0.2%より多いとスパッタが逆に増加し
てくる。
0.0005%より少なくてはその効果がなく、0.1
%よりも多く添加すると溶接金属の耐割れ性を劣化させ
る。
0.001%より少なくてはその効果がなく、0.1%
よりも多く添加すると溶接金属の耐割れ性を劣化させ
る。
02〜2gの量のMoS 2 を塗布 ワイヤ表面にMoS 2 を塗布することによって、ワイヤ
の送給性を良好にし、スパッタの発生を少なくできる。
特に、メッキを施さないワイヤにおいて、ワイヤ組成面
から低スパッタ化を考慮したものとMoS 2 塗布とを組
み合わせることによって、更なる低スパッタ化が可能と
なる。その塗布量は、ワイヤ10kgに対して0.02
gより少ないとその効果がなく、2gよりも多くなる
と、コンジット(導管)等のワイヤ送給系での詰まり量
が多くなり、却ってワイヤ送給性を劣化させてしまうこ
とになる。
対し0.5〜10ppmとなるように、KとCsの少な
くとも何れか一方を塗布 ワイヤ表面にK、Cs又はKとCsを塗布することによ
って、溶滴へのアークの這い上がりを促進し、スムーズ
なグロビュール移行を可能とする。つまり、K、Csは
電子のポテンシャルが非常に小さく、溶接中に容易に電
子を放出する。その結果、アーク雰囲気の電位傾度が下
がり、溶滴へのアークの這い上がりが促進される。その
ために、溶滴の離脱がスムーズになり、その結果、低ス
パッタ化が可能となる。
イヤでも確認されてはいるが、ワイヤ組成面から低スパ
ッタ化を考慮したメッキを施さないワイヤとの組み合わ
せにより低スパッタ化は更に顕著となるものである。そ
れは、メッキの無い場合はワイヤの電気抵抗が高いた
め、メッキワイヤに較べると溶滴移行後のアーク発生が
スムーズではないが、K、Csの存在により、アークの
発生が円滑化されるからである。KとCsの合計量(K
+3Cs)が0.5ppmより少ないとその効果がなく
10ppmを超えるとコンジット(導管)等のワイヤ送
給系での詰まり量が多くなり、却ってワイヤ送給性を劣
化させてしまう。
の塗布については、ワイヤに別途塗布するワイヤ送給潤
滑剤に対して、MoS 2 、K、Csを含む化合物を分散
または溶解しておいてこれを塗布する方法や、乾式もし
くは湿式の伸線潤滑剤に当該化合物を添加し、伸線処理
時にワイヤ表面に付着させる方法等があり、ワイヤ製造
工程に適した塗布方法を適宜選択すればよい。
本発明は何ら限定されるものではない。実施例 表1及び表2に示すワイヤ成分を有し、かつ、MoS 2
やK、Csの表面塗布が成された本発明に係る実施例と
同じく表示のワイヤ成分を有する比較例とを、下記の溶
接条件に基づいて高電流炭酸ガスアーク溶接した結果を
表3に示す。なお、実施例及び比較例のワイヤの径は
1.2mmφである。 ○溶接条件(スパッタ発生量評価): 姿勢:下向き(ビードオンプレート溶接) 電流:300A 電圧:35V 速度:30cpm シールドガス:100%CO 2 、20l/min、 極性:DCEP
る実施例( N0.1〜11, NO.13〜15, N0.35〜
38)では、スパッタ発生量評価が一部を除いて10〜
6と高値を示しているのに対して、比較例( N0.16〜
32)では、殆どが4,3と低値を示し、6と高いもの
( N0.30,32)でも、耐割れ性が劣化する問題を有
していることがわかる。
X値が低く、かつ、MoS 2 塗布量が少ないためにスパ
ッタ発生量評価が他に比して5と低く、また、 NO.9に
ついては、C量が多く、かつ、X値が低いためにスパッ
タ発生量評価が同様に5と低い結果となった。
ているから、以下に記載されるような効果を奏する。即
ち、銅メッキを施さないワイヤでありながら高電流での
炭酸ガスアーク溶接における溶滴のグロビュール移行を
スムーズにし、スパッタ発生が少なく、かつ、耐錆性、
ワイヤ送給性及び耐割れ性の良好な銅メッキを施さない
高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤを提供する
ことが可能となり、産業上極めて有用である。
Claims (4)
- 【請求項1】 ワイヤ化学成分として、重量%でC:
0.01〜0.09%,Si:0.4〜1.2%,M
n:1.0〜2.2%,Ti:0.1〜0.35%,A
l:0.0005〜0.1%,S:0.0005〜0.
025%,O:0.001〜0.03%,S+O:0.
0015〜0.04%,Cu:0.001〜0.1%を
含有し、溶滴の表面張力を適度に保たせるためのパラメ
ータX=(5C+Si+Mn+10Ti+20Al)/
(100S+100O)がX:1〜13を満足し、残部
がFe及び不可避不純物であり、かつ、ワイヤ表面にワ
イヤ10kgに対し0.02〜2gの量のMoS 2 が塗
布されており、ワイヤ表面に銅メッキが施されていない
ことを特徴とする高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッド
ワイヤ。 - 【請求項2】 前記Cは0.01〜0.05%、前記S
iは0.5〜1.0%、前記Mnは1.4〜2.0%、
前記Tiは0.21〜0.28%、前記Alは0.00
05〜0.08%、前記Sは0.0005〜0.008
%、前記Oは0.001〜0.02%、前記S+Oは
0.0015〜0.025%、前記X値は3〜12であ
ることを特徴とする請求項1に記載の高電流炭酸ガスア
ーク溶接用ソリッドワイヤ。 - 【請求項3】 ワイヤ化学成分として、さらに、N:
0.0005〜0.009%,Ni:0.001〜0.
2%,Cr:0.002〜0.5%,Mo:0.000
5〜0.2%,V:0.0005〜0.1%を含有する
ものである請求項1又は2に記載の高電流炭酸ガスアー
ク溶接用ソリッドワイヤ。 - 【請求項4】 ワイヤ表面に、K+3Csがワイヤ重量
に対し0.5〜10ppmとなるように、KとCsの少
なくとも何れか一方が塗布されてなる請求項1、2又は
3に記載の高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイ
ヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20612797A JP3404260B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | 高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20612797A JP3404260B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | 高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH1147981A JPH1147981A (ja) | 1999-02-23 |
JP3404260B2 true JP3404260B2 (ja) | 2003-05-06 |
Family
ID=16518246
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP20612797A Expired - Fee Related JP3404260B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | 高電流炭酸ガスアーク溶接用ソリッドワイヤ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
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KR100405855B1 (ko) | 2001-04-19 | 2003-11-14 | 고려용접봉 주식회사 | 용접용 무도금 와이어 |
JP4628027B2 (ja) * | 2004-07-12 | 2011-02-09 | 株式会社神戸製鋼所 | ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ |
JP2024067527A (ja) * | 2022-11-04 | 2024-05-17 | 株式会社神戸製鋼所 | ガスシールドアーク溶接用ワイヤ |
-
1997
- 1997-07-31 JP JP20612797A patent/JP3404260B2/ja not_active Expired - Fee Related
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