JP3400716B2 - ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ

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JP3400716B2
JP3400716B2 JP17149298A JP17149298A JP3400716B2 JP 3400716 B2 JP3400716 B2 JP 3400716B2 JP 17149298 A JP17149298 A JP 17149298A JP 17149298 A JP17149298 A JP 17149298A JP 3400716 B2 JP3400716 B2 JP 3400716B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表面に銅メッキが施
されていないガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
に関し、特に、低電流での溶接に使用しても、スパッタ
の発生量を低減することができるガスシールドアーク溶
接用ソリッドワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ガスシールドアーク溶接用の
ワイヤとしては、表面に銅メッキが施されているものが
多く使用されている。これは、ワイヤ表面に銅メッキが
施されていないと、ワイヤの電気抵抗値が高くなって、
アークが不安定になり、その結果、溶接中のスパッタ発
生量が増加するからである。特に、比較的低電流で溶接
する場合には、溶滴をスムーズに短絡移行させることが
できないので、多量のスパッタが発生する。
【0003】一方、表面に銅メッキが施されていないワ
イヤについても、従来より、種々の研究が実施されてい
る。これは、表面に銅メッキが施されたワイヤを使用し
た場合には、ワイヤ送給時において銅くずが発生すると
いう問題点があるが、ワイヤ表面に銅メッキが施されて
いないと、このような問題点が発生することがないから
である。また、ワイヤ表面に銅メッキを施さない場合に
は、その製造工程において、表面に銅メッキを施す工程
を省略することができるので、青化銅、硫酸銅及びピロ
リン酸銅等のメッキ廃液の有害物質の取扱いが不要にな
る等の利点もある。
【0004】表面に銅メッキが施されていないワイヤと
しては、例えば、表面に黒鉛及びMoS2のいずれか一
方又は両方を含有する固体潤滑剤と、フッ素樹脂を含有
する液体潤滑剤とを塗布した溶接用ワイヤが開示されて
いる(特公昭51−43987号公報)。また、黒鉛及
びMoS2のいずれか一方又は両方並びにアルカリ金属
等のアーク安定剤を含有する固体潤滑剤と、フッ素樹脂
とを付着させた溶接用ワイヤも提案されている(特公昭
51−4503号公報)。これらは、いずれもワイヤ表
面の潤滑剤の種類を適切に選択して、ワイヤの送給性、
アーク安定性及び耐錆性の向上を図ったものである。
【0005】更に、ジンクジチオフォスフェートを含有
する防錆潤滑油を表面に塗布した溶接用鋼ワイヤも公知
である(特公昭55−24393号公報)。この溶接用
鋼ワイヤは、銅メッキが施されたワイヤと同等か又はそ
れ以上のワイヤ送給性及び耐錆性が得られるものであ
る。
【0006】他に、メッキの工程を経ることなく、炭素
等の給電向上剤及びLi、K又はCs等のアーク安定剤
を含有する油性潤滑剤を使用して、所定の減面率でワイ
ヤを伸線する工程を有する溶接用ソリッドワイヤの製造
方法も開示されている(特開昭61−126995号公
報)。これは、溶接用ワイヤの製造工程の簡略化と、こ
のワイヤを使用した溶接時の送給性の向上を図ったもの
である。
【0007】一方、酸素含有量が規定された軟鋼製ワイ
ヤの表面に燐酸鉄皮膜が形成された溶接用ソリッドワイ
ヤも提案されている(特公昭63−39355号公
報)。これは、表面の銅メッキの有無に拘わらず、溶接
時の溶滴移行性を向上させ、アークの安定化を図ったも
のである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たいずれの従来のワイヤを使用して溶接しても、低電流
溶接時におけるスパッタ発生量の増加を十分に抑制する
ことはできない。また、ワイヤ送給性及び耐錆性を十分
に向上させることができないことがある。
【0009】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、低電流での溶接時において溶滴をスムーズ
に短絡移行させて、スパッタ発生量を低減することがで
き、好ましくは、耐錆性及びワイヤ送給性が優れてお
り、得られる溶接金属の耐割れ性が良好であるガスシー
ルドアーク溶接用ソリッドワイヤを提供することを目的
とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係るガスシール
ドアーク溶接用ソリッドワイヤは、C:0.03乃至
0.13質量%、Si:0.2乃至1.1質量%、M
n:0.5乃至1.9質量%、S:0.0005乃至
0.025質量%、O:0.0005乃至0.015
、Cu:0.001乃至0.1質量%を含有し、T
iが0.03質量%以下、Alが0.02質量%以下に
規制されていて、残部がFe及び不可避的不純物からな
ると共に、表面にワイヤ10kgあたり0.05乃至
0.8gのMoS2が被着されており、銅メッキが施さ
れていないことを特徴とする。
【0011】更に、N:0.0005乃至0.009
%、Cr:0.002乃至0.5質量%及びV:0.
0005乃至0.1質量%を含有することが好ましい。
【0012】このソリッドワイヤは、表面にK及びCs
からなる群から選択された少なくとも1種の元素が被着
されており、ワイヤ全重量あたりのKの被着量を重量p
pmで[K]、ワイヤ全重量あたりのCsの被着量を重
量ppmで[Cs]としたとき、[K]+3×[Cs]
が2乃至15であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】本願発明者等が前記課題を解決す
るために鋭意実験研究を重ねた結果、ワイヤ中の脱酸剤
量及び酸素量をバランス良く適正化すると共に、ワイヤ
の剛性を考慮した上でワイヤの化学組成を適切に規定す
ると共に、適正量のMoS2をワイヤ表面に被着させる
ことにより、低電流溶接時においてアークが不安定にな
ることによって発生するスパッタ発生量を低減すると共
に、ワイヤ送給性及び耐錆性を向上させることができる
ことを見い出した。
【0014】ガスシールドアーク溶接時において、溶滴
をスムーズに短絡移行させるためには、溶滴の表面張力
を適切に保持する必要がある。この溶滴の表面張力は、
溶滴中の酸素量が大きく影響する。即ち、溶滴中の酸素
量が多すぎると、溶滴の表面張力が小さくなり、溶滴が
移行しやすくなるが、その移行時に飛散する細かいスパ
ッタ量が増加する。一方、溶滴中の酸素量が少ないと、
溶滴の表面張力が大きくなり、溶滴移行が困難になると
共に、溶滴の大きさが大きくなって、大粒のスパッタが
発生しやすくなる。従って、本発明においては、ワイヤ
中の脱酸剤量と酸素量とをバランス良く適正化すること
が極めて重要である。また、Sも溶滴の表面張力に影響
を与える元素であるので、本発明においては、ワイヤ中
のS含有量を適切に規定する。
【0015】また、ワイヤ送給性を向上させるために
は、ワイヤの剛性を適切に保持する必要がある。Nはワ
イヤの剛性を高める元素であるが、ワイヤ中のN含有量
が多すぎると、溶融プールからN2ガスが発生してアー
クが不安定になるので、スパッタの発生量が増加する傾
向にある。しかしながら、本願発明者等は、Nとの親和
力が強いV及びCr等の元素をワイヤ中に微量添加する
と、アークの不安定によるスパッタ量の増加を防止する
ことができることを見い出した。
【0016】更に、本願発明者等は、ワイヤ中に微量の
Crを添加すると、ワイヤの耐錆性をより一層向上させ
ることができることを見い出した。鋼材にCrを添加す
ることにより耐錆性を向上させる効果は、ステンレス鋼
において公知である不動態皮膜が有する効果と同様であ
るが、本発明に示す如く組成及び表面への被着成分を規
定しているワイヤに対しては、極めて微量のCrを添加
すると、耐錆性を高める効果を得ることができる。
【0017】更にまた、本発明においては、ワイヤ表面
に銅メッキを施さないので、ワイヤ全重量あたりのCu
量を低減することができる。従って、本発明に係るワイ
ヤを使用して溶接することにより、得られる溶接金属の
耐割れ性を向上させることができる。一方、Cuは耐錆
性を向上させる元素でもあるので、ワイヤ中に微量のC
uを添加すると、耐錆性を向上させることができる。
【0018】このように、ワイヤ組成を規定することに
より得られる効果は、表面に銅メッキが施されたワイヤ
に適用しても得ることができるが、本発明においては、
特に、ワイヤ中のC、Si、Mn、O及びSの含有量を
厳密に規定するので、銅メッキを施すことなく、低電流
での溶接時においても溶接中に発生するスパッタ量を低
減することができる。
【0019】更に、本発明においては、上述の如く組成
が規定されたワイヤの表面に適正量のMoS2を被着さ
せる。これにより、低電流での溶接時においても、銅メ
ッキを施すことなく溶滴をスムーズに短絡移行させるこ
とができる。これは、ワイヤ中のSは、溶滴の表面張力
を適正化するための必須元素であるが、MoS2中のS
も溶滴の表面張力を適正化する作用を有するからであ
る。即ち、従来において、MoS2は送給潤滑剤として
作用するものであるとされていたが、本願発明者等は、
ワイヤ表面にSが存在することにより、溶滴の表面張力
を適正化する効果を十分に得ることができることを見い
出した。従って、本発明においては、ワイヤ表面に適正
量のSを存在させるために、ワイヤ表面に被着させるM
oS2量を厳密に規定する。
【0020】更に、ワイヤ表面に適正量のK及びCsの
いずれか一方又は両方を被着させると、低電流での溶接
時における溶滴の短絡移行がより一層スムーズになる。
このような効果は銅メッキが施されたワイヤについても
得ることができるが、ワイヤ表面にMoS2が被着され
た本発明によるワイヤの表面に、適正量のK及びCsの
いずれか一方又は両方を被着させると、銅メッキが施さ
れたワイヤと比較して、より一層大きな効果を得ること
ができる。
【0021】以下、本発明に係るガスシールドアーク溶
接用ソリッドワイヤについて、先ず、ワイヤ中に含有さ
れる化学成分及びその組成限定理由について説明する。
【0022】C:0.03乃至0.13重量% Cは銅メッキを施さないソリッドワイヤ中において、溶
滴の表面張力を適切に保持し、スパッタを低減させる効
果を有する元素である。ワイヤ全重量あたりのC含有量
が0.03重量%未満であると、前記効果を得ることが
できない。一方、ワイヤ全重量あたりのC含有量が0.
13重量%を超えると、大粒のスパッタの発生量が増加
する。従って、ワイヤ全重量あたりのC含有量は0.0
3乃至0.13重量%とする。
【0023】Si:0.2乃至1.1重量% Siは銅メッキを施さないソリッドワイヤ中において、
溶滴の表面張力を適切に保持し、スパッタを低減させる
効果を有する元素である。ワイヤ全重量あたりのSi含
有量が0.2重量%未満であると、前記効果を得ること
ができない。一方、Si含有量が0.9重量%を超える
と、スパッタ特性が劣るようになるものの、スラグとな
るSiO2が増加してビードの形状及びその安定性が良
好となる。しかし、ワイヤ全重量あたりのSi含有量が
1.1重量%を超えると、大粒のスパッタの発生量が増
加する。従って、ワイヤ全重量あたりのSi含有量は
0.2乃至1.1重量%とする。
【0024】Mn:0.5乃至1.9重量% Mnは銅メッキを施さないソリッドワイヤ中において、
溶滴の表面張力を適切に保持し、スパッタを低減させる
効果を有する元素である。ワイヤ全重量あたりのMn含
有量が0.5重量%未満であると、前記効果を得ること
ができない。一方、ワイヤ全重量あたりのMn含有量が
1.9重量%を超えると、大粒のスパッタの発生量が増
加する。従って、ワイヤ全重量あたりのMn含有量は
0.5乃至1.9重量%とする。
【0025】S:0.0005乃至0.025重量% Sは銅メッキを施さないソリッドワイヤ中において、溶
滴の表面張力を適切に保持し、スパッタを低減させる効
果を有する元素である。ワイヤ全重量あたりのS含有量
が0.0005重量%未満であると、前記効果を得るこ
とができない。一方、ワイヤ全重量あたりのS含有量が
0.025重量%を超えると、小粒のスパッタの発生量
が増加する。従って、ワイヤ全重量あたりのS含有量は
0.0005乃至0.025重量%とする。
【0026】O:0.0005乃至0.015重量% Oは銅メッキを施さないソリッドワイヤ中において、溶
滴の表面張力を適切に保持し、スパッタを低減させる効
果を有する元素である。ワイヤ全重量あたりのO含有量
が0.0005重量%未満であると、前記効果を得るこ
とができない。一方、ワイヤ全重量あたりのO含有量が
0.015重量%を超えると、小粒のスパッタの発生量
が増加する。従って、ワイヤ全重量あたりのO含有量は
0.0005乃至0.015重量%とする。
【0027】Ti:0.03重量%以下 低電流領域での溶接に使用されるワイヤ中のTi含有量
は、低減する必要がある。ワイヤ全重量あたりのTi含
有量が0.03重量%を超えると、大粒のスパッタの発
生量が増加する。従って、ワイヤ全重量あたりのTi含
有量は0.03重量%以下とする。
【0028】Al:0.02重量%以下 低電流領域での溶接に使用されるワイヤ中のAl含有量
は、低減する必要がある。ワイヤ全重量あたりのAl含
有量が0.02重量%を超えると、大粒のスパッタの発
生量が増加する。従って、ワイヤ全重量あたりのAl含
有量は0.02重量%以下とする。
【0029】N:0.0005乃至0.009重量% Nはワイヤの剛性を適切に保つ効果を有する元素であ
る。ワイヤの剛性が小さいと、ワイヤの送給性が若干不
安定になり、スパッタが増加することがある。ワイヤ全
重量あたりのN含有量が0.0005重量%未満である
と、ワイヤの剛性を保つ効果を十分に得ることができな
い。一方、ワイヤ全重量あたりのN含有量が0.009
重量%を超えて増加すると、溶融プールからのスパッタ
の発生量が増加して、V又はCrをワイヤ中に添加して
も、スパッタの増加を抑制することができないことがあ
る。従って、ワイヤ中にNを含有させる場合は、ワイヤ
全重量あたりのN含有量は0.0005乃至0.009
重量%とすることが好ましい。
【0030】Cr:0.002乃至0.5重量% Crは、ワイヤ中にNを添加することによって発生する
スパッタを抑制する効果を有する元素である。ワイヤ全
重量あたりのCr含有量が0.002重量%未満である
と、前記効果を得ることができない。また、ワイヤ中に
0.01重量%以上のCrを添加すると、ワイヤの耐錆
性を向上させることができる。しかし、Crは脱酸剤と
しての作用も有するので、ワイヤ全重量あたりのCr含
有量が0.5重量%を超えると、溶滴の表面張力が過大
となり、大粒のスパッタの発生量が増加する。従って、
ワイヤ中にCrを含有させる場合は、ワイヤ全重量あた
りのCr含有量は0.002乃至0.5重量%とするこ
とが好ましい。
【0031】V:0.0005乃至0.1重量% VはCrと同様に、ワイヤ中にNを添加することによっ
て発生するスパッタを抑制する効果を有する元素であ
る。ワイヤ全重量あたりのV含有量が0.0005重量
%未満であると、前記効果を得ることができない。一
方、ワイヤ全重量あたりのV含有量が0.1重量%を超
えると、溶接金属の耐割れ性が低下する。従って、ワイ
ヤ中にVを含有させる場合は、ワイヤ全重量あたりのV
含有量は0.0005乃至0.1重量%とすることが好
ましい。
【0032】Cu:0.001乃至0.1重量% Cuはワイヤの耐錆性を向上させる効果を有する元素で
ある。ワイヤ全重量あたりのCu含有量が0.001重
量%以下であると、前記効果を十分に得ることができな
い。一方、ワイヤ全重量あたりのCu含有量が0.1重
量%を超えると、溶接金属の耐割れ性が低下する。従っ
て、ワイヤ中にCuを含有させる場合は、ワイヤ全重量
あたりのCu含有量は0.001乃至0.1重量%とす
ることが好ましい。
【0033】次に、本発明に係るソリッドワイヤの表面
に被着させる成分の被着量限定理由について説明する。
【0034】ワイヤ10kgあたりのMoS2 の被着
量:0.05乃至0.8g ワイヤ表面にMoS2を被着させることによって、溶滴
の表面張力を最適な状態で保持することができ、これに
より、スパッタ発生量を低減することができる。特に、
本発明が対象とする銅メッキが施されていないワイヤに
おいては、ワイヤの組成を厳密に規定すると共に、ワイ
ヤ表面にMoS2を被着させることによって、スパッタ
発生量を十分に低減することができる。ワイヤ表面への
MoS2の被着量がワイヤ10kgあたり0.05g未
満であると、前記効果を十分に得ることができない。一
方、MoS2の被着量がワイヤ10kgあたり0.8g
を超えると、ワイヤ送給系、例えば、コンジットチュー
ブ内等においてMoS2の詰まりが発生するので、ワイ
ヤ送給性が低下する。従って、ワイヤ表面へのMoS2
の被着量は、ワイヤ10kgあたり0.05乃至0.8
gとする。なお、ワイヤ10kgあたりのMoS2の被
着量が0.1乃至0.5gであると、溶滴の短絡移行が
より一層スムーズになると共に、スパッタ発生量を更に
一層低減することができる。
【0035】K及びCsのいずれか一方又は両方のワイ
ヤ表面への被着量:[K]+3×[Cs]が2乃至15
(重量ppm) ワイヤ表面にK及びCsのいずれか一方又は両方を被着
させると、溶滴へのアークのはいあがりが促進されて、
溶滴をスムーズに短絡移行させることができる。これ
は、K及びCsは電子の放出ポテンシャルが極めて小さ
く、溶接中に容易に電子を放出する元素であるからであ
る。この電子の放出によって、アーク雰囲気の電位傾度
が低下して、溶滴へのアークのはいあがりが促進され
る。その結果、ワイヤから溶滴が容易に離脱するので、
スパッタの発生量を低減することができる。
【0036】K及びCsのいずれか一方又は両方をワイ
ヤ表面に被着させることによって得られる効果は、表面
に銅メッキが施されたワイヤについても得ることができ
るが、本発明に示す如く組成が厳密に規定されていると
共に、銅メッキが施されていないワイヤに対しては、低
スパッタ化の効果をより一層向上させることができる。
また、銅メッキが施されていないワイヤは、その電気抵
抗が高いので、銅メッキが施されたワイヤと比較して、
短絡移行後のアークの発生がスムーズではないが、K又
はCsをワイヤ表面に被着させることによって、アーク
を容易に発生させることができる。
【0037】このように、本発明に係るワイヤは、K及
びCsからなる群から選択された少なくとも1種の元素
が表面に被着されていることが好ましいが、本発明にお
いては、これらの被着量を、数式([K]+3×[C
s])によって得られる値によって規定する。なお、上
記数式においては、ワイヤ表面へのKの被着量をワイヤ
全重量あたりの重量ppmで[K]、ワイヤ表面へのC
sの被着量をワイヤ全重量あたりの重量ppmで[C
s]としている。
【0038】([K]+3×[Cs])が2未満である
と、前記効果を十分に得ることができない。一方、
([K]+3×[Cs])が15を超えると、ワイヤ送
給系、例えば、コンジットチューブ内等において目詰ま
りが発生するので、ワイヤ送給性が低下する。従って、
([K]+3×[Cs])が2乃至15となるように、
K及びCsのいずれか一方又は両方をワイヤ表面に被着
させることが好ましい。なお、Kを単独でワイヤ表面に
被着させる場合は、ワイヤ全重量あたりのKの被着量を
2乃至7重量ppmとすることが好ましい。
【0039】ワイヤ表面にMoS2、K及びCsを被着
させる方法としては、MoS2、K又はCsを含有する
化合物をワイヤ送給潤滑剤に分散するか又は溶解させ
て、これをワイヤ表面に塗布する方法、及び乾式又は湿
式の伸線潤滑剤に前記化合物を添加して、伸線時にワイ
ヤ表面に被着させる方法等がある。従って、ワイヤの製
造工程に適した被着方法を選択することができる。
【0040】
【実施例】以下、本発明の実施例に係るガスシールドア
ーク溶接用ソリッドワイヤによりガスシールドアーク溶
接を実施した試験結果について、その比較例による試験
結果と比較して具体的に説明する。
【0041】先ず、種々の組成を有する線材の表面にM
oS2等を被着させて、直径が1.2mmであるソリッ
ドワイヤを作製した。次に、これを使用して下記表1に
示す溶接条件によってガスシールドアーク溶接を実施す
ることにより、スパッタ発生量を評価した。ワイヤの化
学組成及びワイヤ表面への化合物の被着量を下記表2乃
至7に示し、スパッタ発生量の評価結果を下記表4及び
7に併せて示す。なお、下記表2乃至6に示すワイヤに
おいては、Pは不可避的不純物としてワイヤ中に含有さ
れる元素である。
【0042】各ワイヤのスパッタ発生量は、飛散したス
パッタ量を目測によって10段階で評価した。即ち、1
0及び9はスパッタ発生量が極めて少ないもの、8及び
7はスパッタ発生量が少ないもの、6及び5はスパッタ
発生量がやや少ないもの、4及び3はスパッタ発生量が
やや多いもの、2及び1はスパッタ発生量が多いもので
あり、5以上を合格とした。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】上記表2乃至7に示すように、実施例N
o.1乃至18は、ワイヤの化学組成及びワイヤ表面へ
のMoS2の被着量が本発明において規定する範囲内で
あるので、スパッタ発生量の評価が5以上となり、低ス
パッタ化することができた。但し、実施例18はSi量
が若干高いため、スパッタ発生量の評価結果は4であっ
た。しかし、特に、実施例No.1乃至4は、好ましい
範囲内でK及びCsのいずれか一方又は両方がワイヤ表
面に被着されていると共に、ワイヤ中にN、Cr及びV
が好ましい範囲内で含有されているので、実施例No.
5乃至10と比較して、より一層スパッタ発生量を低減
することができた。
【0051】また、実施例No.1乃至6及び8乃至1
3は、ワイヤ中のCr含有量が0.01重量%以上であ
るので、実施例No.7と比較して、ワイヤの耐錆性が
より一層向上した。実施例No.1乃至9及び11乃至
13はワイヤ中のV含有量が0.1重量%を超えている
ので、得られた溶接金属の耐割れ性がより一層向上し
た。
【0052】実施例No.11はワイヤ中のCu含有量
が本発明の好ましい範囲から外れているので、耐錆性が
若干劣ったものとなったが、ワイヤ中にN、Cr及びV
が好ましい範囲内で含有されているので、スパッタ発生
量を低減することができた。実施例No.12はワイヤ
中にN、Cr及びVが好ましい範囲内で含有されている
ので、スパッタ発生量を低減することができ、ワイヤ中
のCu含有量が他の実施例と比較して高い値であるの
で、特に、ワイヤの耐錆性が優れたものとなった。実施
例No.13は([K]+3[Cs])の値が15を超
えており、ワイヤ送給性は若干低下したが、スパッタ発
生量を低減することができた。
【0053】実施例No.15はワイヤ中のCu含有量
が本発明の好ましい範囲内であるので、本発明の請求項
1のみを満足する実施例No.14と比較して、ワイヤ
の耐錆性が優れたものとなった。実施例No.16は
([K]+3[Cs])の値が本発明の好ましい範囲内
であるので、実施例No.14と比較してスパッタ発生
量を低減することができた。
【0054】一方、比較例No.19及び32はワイヤ
表面へのMoS2の被着量が本発明の範囲から外れたも
のである。比較例No.20及び21はワイヤ中のC含
有量が本発明の範囲から外れたものである。比較例N
o.22及び23はワイヤ中のSi含有量が本発明の範
囲から外れたものである。比較例No.24及び25は
ワイヤ中のMn含有量が本発明の範囲から外れたもので
ある。また、比較例No.26及び29はワイヤ中のT
i又はAlの含有量が本発明範囲の上限を超えている。
比較例No.27及び28はワイヤ中のO含有量が本発
明の範囲から外れたものである。更に、比較例No.3
0及び31はワイヤ中のS含有量が本発明の範囲から外
れたものである。従って、これらはいずれも、溶接時に
スパッタが多量に発生した。特に、比較例No.32は
MoS2の被着量が多いので、ワイヤ送給性も劣化し
た。
【0055】なお、実施例17,18と比較例23と
は、Si含有量のみが異なり、他の成分は全て同一で本
発明の範囲内にあるものである。この場合に、表4と表
7の比較からわかるように、Si含有量が0.7重量%
の実施例17はスパッタ発生量評価結果が9で最もスパ
ッタが少なく、Si含有量が1.0重量%の実施例18
はスパッタ発生量評価結果が若干低く4であった。これ
に対し、Si含有量が1.2重量%の比較例23はスパ
ッタ発生量が2と極めて多量のスパッタが発生した。そ
して、ビード形状の安定性をみると、実施例17は良好
であるのに対し、比較例23及び実施例18は極めて良
好であった。このように、実施例18は若干スパッタ評
価が劣るものの、ビード形状の安定性は極めて優れたも
のであった。
【0056】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤの化学組成を
厳密に規定すると共に、ワイヤ表面に被着させるMoS
2の被着量を適切に規定しているので、表面に銅メッキ
を施すことなく、低電流での溶接時においても溶滴をス
ムーズに短絡移行させて、スパッタの発生を低減するこ
とができる。また、銅メッキを施す必要がないので、ワ
イヤの製造工程を簡略化することができ、有害物質の取
扱いが不要になる。更に、適正量の特定成分をワイヤに
含有させると、耐錆性及びワイヤ送給性を高めることが
できると共に、得られる溶接金属の耐割れ性を向上させ
ることができる。更にまた、ワイヤ表面にK又はCsの
いずれか一方又は両方を適正量被着させると、スパッタ
の発生をより一層低減することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 輿石 房樹 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 (72)発明者 伊藤 崇明 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 (72)発明者 伊藤 和彦 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 (72)発明者 清水 弘之 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 (56)参考文献 特開 平8−19893(JP,A) 特開 平9−168889(JP,A) 特開 昭63−157794(JP,A) 特開 昭59−120395(JP,A) 特開 昭61−126995(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/00 - 35/30

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.03乃至0.13質量%、S
    i:0.2乃至1.1質量%、Mn:0.5乃至1.9
    質量%、S:0.0005乃至0.025質量%、O:
    0.0005乃至0.015質量、Cu:0.001
    乃至0.1質量%を含有し、Tiが0.03質量%以
    下、Alが0.02質量%以下に規制されていて、残部
    がFe及び不可避的不純物からなると共に、表面にワイ
    ヤ10kgあたり0.05乃至0.8gのMoS2が被
    着されており、銅メッキが施されていないことを特徴と
    するガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ。
  2. 【請求項2】 更に、N:0.0005乃至0.009
    質量%、Cr:0.002乃至0.5質量%及びV:
    0.0005乃至0.1質量%を含有することを特徴と
    する請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ソリッ
    ドワイヤ。
  3. 【請求項3】 表面にK及びCsからなる群から選択さ
    れた少なくとも1種の元素が被着されており、ワイヤ全
    質量あたりのKの被着量を質量ppmで[K]、ワイヤ
    質量あたりのCsの被着量を質量ppmで[Cs]と
    したとき、[K]+3×[Cs]が2乃至15であるこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載のガスシールドア
    ーク溶接用ソリッドワイヤ。
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