JP2005254284A - ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガスシールドアーク溶接を、質量%でC:≦0.10%,Si:0.25〜1.40%,Mn:0.7〜2.0%,P:0.003〜0.040%,S:0.001〜0.040%,残部不可避的不純物及びFeの組成を有する溶接ワイヤと、体積%でArガス若しくはArガスとHeガスとの混合ガスをベースとして更に5〜25%CO2及び5.5〜15%O2を含んだ組成のシールドガスとを用いて行うようにする。
【選択図】 なし
Description
このガスシールドアーク溶接方法では、かねてよりノンスパッタ化即ちスパッタ発生の防止ないし抑制と、アンダーカット等の有害な溶接欠陥の抑制との両方とが求められている。
しかしながらこれら2つの要求特性はいわば相反するものであり、従来にあっては何れか一方が顕著に現れないような条件を設定して溶接を行っているのが実情である。
尚アンダーカットが生じた場合、疲労亀裂が発生し、強度上問題となる。
ここでアーク長が長くなるとアンダーカットを生じ易いのは、被溶接母材Yの溶込みの幅が広がることによる。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものである。
しかしながらこの特許文献1に開示のものはアンダーカットを生じる場合があり、スパッタ及びアンダーカットの両方を抑制することができない点で本発明とは異なっている。
A=45×[C]質量%−2×[Si]質量%−[Mn]質量%−18×[P]質量%−96×[S]質量%・・・(1)式
詳しくは、図4に示すBゾーンでの溶接即ちスパッタを発生しないようなアーク長の下で溶接を行っても、アンダーカット等の溶接欠陥の発生を抑制し得るとの知見を得た。
本発明はこのような知見の下になされたものである。
従来より、アークによる母材の溶込み形状については様々な研究が行われており、その代表例として、図6に示すような溶込み形状が開示されている。
同図において(a)は単純溶込み型、(b)は中央溶込み型、(c)は周辺溶込み型を示している。
このビードの幅方向の中央部におけるくびれの発生は、溶湯が中央部から周辺部に向かって流れたときに典型的に現れる現象であることは従来から知られている。
この溶込み幅の広がりは、溶融池表面における溶湯の流れが中央部から周辺部に向かう結果であると考えられている。
かかる本発明によればスパッタの発生も、またアンダーカット等の溶接欠陥も生じることなく、良好にガスシールドアーク溶接を行うことが可能となる。
更にまた必要に応じてMoを1.2%以下,Bを0.005%以下の量で溶接ワイヤに含有させておくことができる(請求項3)。
一方で不純物としてのCaは、その含有量を0.0020%以下に規制しておくことが望ましい(請求項4)。
具体的には式(1)で規定される係数Aを0以下とする。
ここで係数Aは、溶融池表面における溶湯の中心部から周辺部に向かう外向きの流れの指標として捉えることができ、この係数Aが負の数値且つその絶対値が大きいほど、つまり係数Aが小さいほど中央部から周辺部に向かう流れが起き易い。つまり溶込み形状が左右方向に広い形状となり易い。
C:≦0.10%
Cは溶接金属の強度を確保するために重要な元素であり、また溶融金属の粘性を低下させて流動性を増す作用も有する。
しかしC含有量が0.10%を超えると、溶接時の溶滴移行及び溶融池の挙動が不安定となり、スパッタが多量に発生する。また溶接金属の靭性が低下してしまう。
そのためCは0.10%以下に限定した。
尚溶接金属の強度を確保するためにC含有量の下限は0.01%とすることが好ましい。
Siは脱酸作用を有し、溶接金属の脱酸のためには不可欠な元素である。
Si含有量が0.25%未満では、溶接時の溶滴移行及び溶融池の挙動が不安定となり、スパッタが多発するばかりでなく、溶融金属の脱酸が不足し、溶接金属にピット及びブローホールが発生する。しかも不安定な短絡現象が生じ、溶接ワイヤの送給性が悪くなる。
一方1.40%を超えて含有すると、溶接金属の靭性が低下してしまう。
そのためSiは0.25〜1.40%の範囲内に限定した。
MnはSiと同様に脱酸作用を有し、溶接金属の脱酸のためには不可欠な元素である。
Mn含有量が0.7%未満では、溶接時の溶滴移行及び溶融池の挙動が不安定となり、スパッタが多発するばかりでなく、溶融金属の脱酸が不足し、溶接金属にピット及びブローホールが発生する。しかも不安定な短絡現象が生じ、溶接ワイヤの送給性が悪くなる。
一方2.0%を超えて含有すると、溶接金属の靭性が低下するとともに溶接ワイヤ自身の硬さを過度に増加させ、製造性を阻害する。
そのためMnは0.7〜2.0%の範囲内に限定した。
Pは製鋼プロセスにおける不純物として溶接ワイヤに混入する元素であるが、ビード形状を平滑にする効果を有する。
しかしながらP含有量が0.003%未満では、ビード形状を平滑にする効果は得られない。
一方0.040%を超えると溶接時の溶滴移行が不安定となり、スパッタが多発する。また溶接割れが発生し易くなってしまう。
そのためPは0.003〜0.040%の範囲内に限定した。
Sはビード形状を平滑にする効果を有し、S含有量が0.001%以上でその効果を発揮する。
一方0.040%を超えると、小粒のスパッタが増加するとともに溶接割れが発生し易くなってしまう。
そのためSは0.001〜0.040%の範囲内に限定した。
Alは強力な脱酸作用を有しているため溶接金属の清浄度を高めるとともに結晶粒を微細化し、ブローホールの発生を抑制し溶接金属の機械的性質を向上させる。
しかし0.30%を超えて添加すると、大粒のスパッタが発生するばかりでなく、溶接金属の靭性の低下を招く。
そのためAlは0.30%以下とした。
尚Alの望ましい下限値は0.01%である。
TiはAlと同様に強力な脱酸作用を有しているため、溶接金属の清浄度を高めるとともにブローホールの発生を抑制し、溶接金属の機械的性質を向上させる。
しかし0.30%を超えて添加すると、大粒のスパッタが発生するばかりでなく、溶接金属の靭性の低下を招く。
そのためTiは0.30%以下とした。
尚Tiの望ましい下限値は0.01%である。
Moは溶接金属の強度を増加させ且つ耐候性を向上させる元素で、僅かな添加量でこれらの効果を発揮する。
しかし1.2%を超えて添加すると、溶接金属の靭性の低下及び製造性を阻害してしまう。
そのためMoは1.2%以下とした。
尚Moの望ましい下限値は0.01%である。
Bは、Moと同様に溶接金属の強度を増加させ且つ耐候性を向上させる元素で、僅かな添加量でこれらの効果を発揮する。
しかし0.005%を超えて添加すると、溶接金属の靭性の低下及び製造性を阻害してしまう。
そのためBは0.005%以下とした。
尚Bの上限値は0.003%とするのが一層好ましい。
Caは製鋼プロセス或いは伸線加工における不純物として溶接ワイヤに混入する。
Ca含有量が0.0020%を超えると大粒のスパッタが多発する。
そのためCaは0.0020%以下とした。
不可避的不純物としてはO及びNが代表的であり、O:≦0.020%,N:≦0.015%に規制することが溶接品質上好ましい。
特にOはアーク安定性の確保から、0.0020〜0.0070%とするのが一層好ましい。
ガスシールドアーク溶接におけるMAG溶接としてはベースとなるガス成分である。
アークの安定性のためには5%以上必要であるが、25%を超えると短絡現象が増してアークが不安定になる。また溶接金属のC量が増し、靭性が低下してしまう。
そのためCO2ガスは5〜25%とした。
ビード形状を改善するために重要なガス成分であり、溶融金属の対流を変化させる作用を有する。
5.5%未満では有害なアンダーカットを生ぜしめる。
一方15%を超えて配合するとアンダーフィルが顕著になり、のど厚不足及び強度不足となる。
そのためO2ガスは5.5〜15%とした。
表1に示す各種組成の溶接ワイヤを用い、表2,表3及び表4に示す各種組成のシールドガスと組み合わせてガスシールドアーク溶接を行った。
また具体的な溶接条件については以下とした。
0.11 0.20 0.63 0.017 0.015 Bal
・板厚:9mm
・溶接電源:インバータ電源
・極性:逆極性直流
・シールドガス流量:20L/min
・溶接電流:250A
・アーク電圧:26V
・溶接速度:35cm/min
・溶接姿勢:下向き,すみ肉溶接
これらの結果に示しているように、本発明例では比較例に比べてスパッタ及びアンダーカットともに良好に抑制されており、特にワイヤ組成が請求項5に規定する条件を満たすものについてはスパッタ及びアンダーカットともに全く生じておらず、溶接が良好に行われていることが分る。
尚、表2〜表4においてアンダーフィルとあるのは、図7(ロ)において余盛不足によるビード表面中央部のくぼみを表している。
また図2は係数Aとアンダーカットの深さとの関係を示したものである。
また図2の結果に示しているように係数Aを0以下とすることによって、同じくアンダーカットの発生を良好に抑制できることが分る。
また酸素含有量が本発明の範囲内にある(B)ではビード形状が良好な形状となっており、一方で酸素含有量が本発明の範囲を超えて多い(C)ではビードの幅方向中央部に大きなくびれ、即ちアンダーフィル(余盛不足)が生じている。
Claims (5)
- 質量%で、
C :≦0.10%
Si:0.25〜1.40%
Mn:0.7〜2.0%
P :0.003〜0.040%
S :0.001〜0.040%
残部不可避的不純物及びFeの組成を有する溶接ワイヤと、体積%で、Arガス若しくはArガスとHeガスとの混合ガスをベースとして更に5〜25%CO2及び5.5〜15%O2を含んだ組成のシールドガスとを用いて行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。 - 請求項1において、前記溶接ワイヤが質量%で、
Al:≦0.30%
Ti:≦0.30%
の何れか1種又は2種を更に含んでいることを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。 - 請求項1,2の何れかにおいて、前記溶接ワイヤが質量%で、
Mo:≦1.2%
B :≦0.005%
の何れか1種又は2種を更に含んでいることを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。 - 請求項1〜3の何れかにおいて、前記不可避的不純物としてのCaを質量%で、
Ca:≦0.0020%
に規制してあることを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。 - 請求項1〜4の何れかにおいて、下記(1)式に規定する係数AがA≦0を満足することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
A=45×[C]質量%−2×[Si]質量%−[Mn]質量%−18×[P]質量%−96×[S]質量%・・・(1)式
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