JP3401534B2 - 強靱高炭素バナジュウムセメンタイト合金鋳鉄 - Google Patents

強靱高炭素バナジュウムセメンタイト合金鋳鉄

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は強靱高炭素バナジ
ュウムセメンタイト合金鋳鉄に係り、その目的は耐食
性、耐摩耗性、耐熱性、といった特性を全て充分に兼ね
備え、特に炭化物晶出による耐衝撃性低下に対しても炭
化物の粒状又は球状化により耐衝撃性を向上させるもの
であり、産業の発展に伴い高性能・高機能化されつつあ
る化学工業や産業機械等の諸工業において広範囲に適用
することができる強靱高炭素バナジュウムセメンタイ
金鋳鉄の提供にある。
【0002】
【発明の背景】従来より各種ボイラ設備や化学プラント
機器類等、高温環境下で使用される装置の素材には耐熱
性や耐食性が要求されていた。しかし、近年、産業技術
の発展に伴い化学工業を始めとする諸工業の高温設備の
向上や高機能・高性能化は著しく、より厳しい条件での
耐用が要求されるようになってきている。例えば、エン
ジニアリングプラスチックの射出成形の分野において
は、樹脂成形体の強度や難燃性、耐摩耗性等を向上させ
るため樹脂中にFRPなどの補強材や各種添加剤が添加
されるようになってきている。この結果、樹脂成形体の
シリンダ樹脂中の補強材により摩耗しやすく、しかも添
加剤から発生する強腐食性ガスにより腐食しやすくなっ
ている。また、自動車などの各種産業において製造され
る部品の形状も複雑化されてきており、部品の製造装置
の摩耗は従来よりも著しいものとなってきている。この
ように産業の高度化に伴い、そこで使用される装置等の
使用環境は極めて苛酷なものとなってきており、その素
材には、強度、耐熱性、耐食性等諸性能の従来以上の向
上が要求されている。
【0003】
【従来の技術】腐食や高温における酸化性において比較
的良好な性質を示すFe系の鋳鋼としてはステンレス鋼
が存在する。ステンレス鋼の種類は多く、例えばJIS
G5122の規格では、代表的な18Cr−8Ni系の
SCS12、SCS13、SCS19、SCS21や1
8Cr−11Ni−Mo系のSCS14、高Cr−Ni
系のSCS11、13Cr系のSCS1、SCS2、高
Cr系などが例示される。これらステンレス鋼はいずれ
もCrを12%以上含有しており、このCrの酸化作用
により不動態化し、銅の表面にFeO、Cr、N
iOなどの酸化物が晶出され、表面を錆から保護される
構成となっているもので、中でも特に18Cr−8Ni
オーステナイト系ステンレス鋼は古くから汎用されてい
る代表的なステンレス鋼であった。一方、ボイラ・ター
ビン、原子炉、内燃機関の弁等高温度下で高温酸化と荷
重を受ける部分に使用される鋼として、耐熱鋳鋼と呼ば
れる高Cr系や高Cr−Ni系の合金鋳鋼も存在する。
この耐熱鋳鋼の種類としては高Cr系のSCH1、SC
H2及び高Cr−Ni系のSCH11〜15等が例示さ
れる。一方、上記した鋳鋼にも欠点があり、SCSタイ
プのステンレス鋼の硬度が低く耐摩耗性に劣る点、また
18Cr−8Niオーステナイト系ステンレス鋼の塩酸
等のハロゲンに侵されやすい点、さらにSCHタイプの
ステンレス鋼の耐食性が悪くまた耐摩耗性に必要な充分
な強度が得られない点等があったが、これらの諸問題点
については特開平6−240404号の強靱高炭素セメ
ンタイト系合金鋳鉄において解決されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、
例えば、灰流管、水中ポンプ汚泥処理用プロペラのよう
な石炭燃焼後の残灰の高圧輸送や高速攪拌を行う場合、
低品位石炭原料使用のため、残灰中の粗大砂石が、猛烈
な速さで管内部を直撃したり、高速回転するプロペラに
食い込んで、これを破壊してしまう危険があり、上記合
金鋳鉄の耐衝撃性向上が望まれることとなった。金属組
織は通常、晶出物の形状が平面の場合、靱性は弱くなる
が、球状の場合、外部から衝撃を受けても力が分散され
るので靱性は強くなる。この強靱性が耐衝撃性を向上さ
せる要因となる。金属中の晶出物の形状は金属的な性質
が強いと金属結合すなわち非有面(nonfacet)
粒状又は球状のデンドライトとなり、非金属の晶出物の
形状は共有結合又は静電結合すなわち有面(face
t)となり、常に非球状であって板状になるとされてい
る。本発明者らはこの有面組織が耐衝撃性を劣化させる
ことに着目し、鋭意研究を行った結果、バナジュウムを
特定含有量の炭素に配合することにより、粒状又は球状
バナジュウム炭化物を晶出させることについて知見を
得、耐衝撃性を充分に満足させる合金鋳鉄を見出した。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
C:0.6〜6.5重量%、Si:0.2〜3.0重量
%、Mn:0.2〜1.0重量%、P:0.01〜0.
15重量%、S:0.01〜0.05重量%、Cr:1
3〜30重量%、Ni:4〜15重量%、V:8〜15
重量%、残部鉄(Fe)及び不可避不純物からなり、そ
の組織中に共有結合性の粒状又は球状V−C炭化物及び
Fe−Cr炭化物を晶出させてなることを特徴とする強
靱高炭素バナジュウムセメンタイト合金鋳鉄である。請
求項2記載の発明は、前記合金元素に、(a)Mo:
0.1〜15重量%、(b)Ti:0.01〜5重量
%、(c)B:0.01〜2重量%、(d)Cu、W、
Zr、Co、Nb、Yのうちの少なくとも2種以上の合
金元素:0.2〜5重量%、の(a)〜(d)の中から
選択された一以上を配合してなることを特徴とする請求
項1記載の強靱高炭素バナジュウムセメンタイト合金鋳
鉄である。これらの発明を提供することにより上記の課
題を悉く解決する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、この発明に係る強靱高炭素
バナジュウムセメンタイト合金鋳鉄の実施例を以下詳述
する。先ず、この発明の第1の実施例を説明すると、こ
の発明に係る強靱高炭素バナジュウムセメンタイト合
鋳鉄は、C:0.6〜6.5重量%、Si:0.2〜
3.0重量%、Mn:0.2〜1.0重量%、P:0.
01〜0.15重量%、S:0.01〜0.05重量
%、Cr:13〜30重量%、Ni:4〜15重量%、
V:8〜15重量%、残部鉄(Fe)及び不可避不純物
からなり、その組織中に共有結合性の粒状又は球状V−
C炭化物及びFe−Cr炭化物を晶出させてなる。この
合金鋳鉄において配合組成元素を特定しその配合範囲を
上記のように限定したのは以下のような理由による。炭
素(C)は、含有量0.1〜0.6%未満は合金鋳鉄の
硬度及び機械的性質はあまり変化しないが、0.6%を
超えると合金鋳鉄の硬度は増加し、機械的性質も向上す
る。一方、6.5%を超えると、Cの一部は炭化物とは
ならずキッシュ黒鉛として析出するため、逆に硬度、耐
食性、耐摩耗性、耐衝撃性を低下させる。したがってこ
の発明では、C含有量は、0.6〜6.5%とするのが
望ましい。ケイ素(Si)は脱酸及び硬度増大、また鋳
造性を良くするのに有効である。通常、含有量1.0%
程度は必要とされるが、3.0%を超えると靱性を劣化
させる原因となる。したがってこの発明では、Si含有
量は3.0%以下とするのが望ましい。なお現実的には
0.2〜3.0%とすることとなる。マンガン(Mn)
は1.0%を超えると偏析を起こすので、Fe−Cr系
の合金鋳鉄に好ましくない。したがってこの発明ではM
n含有量は1.0%以下とするのが望ましい。なお現実
的には0.2〜1.0%とすることとなる。リン(P)
は偏析や脆性を起こすが、硬度を若干ではあるが上昇さ
せ、且つ流動性も向上させるため、鋳造性が良好とな
る。したがってこの発明ではP含有量は0.15%以下
とするのが望ましい。なお現実的には0.01〜0.1
5%とすることとなる。
【0007】硫黄(S)は低含有である方がよい。この
発明では、Sの含有量は、炭素含有量6.5%の時のキ
ッシュ黒鉛析出を防止できる範囲である0.05%以下
とする。なお現実的には0.01〜0.05%とするこ
ととなる。クロム(Cr)は含有量13%以上でないと
強固な共有結合性Fe−Cr炭化物(セメンタイト)を
晶出しない、一方、30%を超えると偏析を起こし、強
度を劣化させる原因となる。したがってこの発明ではC
r含有量は13〜30%とするのが望ましい。ニッケル
(Ni)は含有量4.0%未満では金属組織のマルテン
サイト化が起こりやすくなる。一方、15%を超えると
偏析を起こし、また基地が柔らかくなる。したがってこ
の発明ではNi含有量を4.0〜15%とする。バナジ
ュウム(V)は含有量8.0%以上でないと、高硬度の
炭化物を分散させ共有結合性の粒状又は球状V−C炭
物を晶出させない。一方、15%を超えてもV配合によ
る効果は得られず逆に偏析を起こしやすくなる。したが
ってこの発明では、V含有量は、8.0〜15%とす
る。
【0008】(熱処理条件) 以上記載の組成からなる強靱高炭素バナジュウムセメン
タイト合金鋳鉄は常法に準じ、鋳型内に熔湯を注ぎ込
み、その後冷却する鋳放しで製造すればよい。しかし、
冷却時に生じる鋳造応力を除去することが望ましいの
で、973〜1293Kで1時間程度保持した後、焼準
及び焼鈍してもよい。973〜1173Kで保持後炉冷
(焼鈍)又は空冷処理(焼準)した場合、組織はオース
テナイト(γ)+セメンタイト(Fe−Cr
)+V複合体となる。また、1173〜12
93Kで保持後炉冷(焼鈍)又は空冷処理(焼準)した
場合は強度、靱性の向上を目的とした焼準、耐衝撃性向
上のための鋳造応力除去を目的とした焼なましといった
処理が必要となる。この温度範囲での組織も、オーステ
ナイト(γ)+セメンタイト(Fe−Cr−C
複合体となり、前記973〜1173Kで処理
した合金鋳鉄と相違はない。上記の如く焼準処理、焼鈍
処理を施しても鋳放しで製造した合金鋳鉄とその組織に
相違はない。
【0009】以上の元素は主成分たる鉄(Fe)に含有
させる必須成分であるが、この発明では上記の各元素に
加えて、以下の元素を適宜配合させてもよい。その場合
の実施例を以下に説明する。この第2の実施例に係る強
靱高炭素バナジュウムセメンタイト合金鋳鉄は(a)M
o:0.1〜15%、(b)Ti:0.01〜5%、
(c)B:0.01〜2%、(d)Cu、W、Zr、C
o、Nb、Yのうちの少なくとも2種以上の合金元素
0.2〜5%、の(a)〜(d)の中から選択された一
上を混合してなる。この実施例に係る合金鋳鉄中に含
まれる組成成分を配合することとその配合範囲を上記の
ように限定したのはそれぞれ以下の理由による。モリブ
デン(Mo)は基地を安定化させ、耐食性を向上させ
る。しかし、15.0%を超えると逆に偏析を起こしや
すくなる。したがってこの発明ではMo含有量を15.
0%以下とするのが望ましい。なお現実的には0.1〜
15.0%とすることとなる。チタン(Ti)は脱窒素
と金属組織の微細化に効果的である。しかし、5.0%
を超えるとTi系炭化物の析出が著しくなり、強度を劣
化させる。したがってこの発明ではTi含有量を5.0
%以下とするのが望ましい。なお現実的には0.01〜
5.0%とすることとなる。ホウ素(B)は熱処理によ
り硬度を増大させることができる。しかし、2.0%を
超えると強度を劣化させる原因となる。したがってこの
発明ではB含有量を2.0%以下とするのが望ましい。
なお現実的には0.01〜2.0%とすることとなる。
銅(Cu)、タングステン(W)、ジルコニウム(Z
r)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウ
ム(Y)については、耐食性、耐摩耗性、耐熱性等の目
的に応じて配合する。これらは単独で配合しても効果は
あるが、複数組み合わせて配合することにより、一層の
効果を得ることができる。しかし、いたずらに配合して
も共有結合を強固なものとするとは限らない。したがっ
て、この発明では少なくとも2種以上の元素を合わせて
含有量を5.0%以下とするのが望ましい。なお現実的
には0.2〜5.0%とすることとなる。この第2の実
施例についても前記第1の実施例に準じて合金鋳鉄を鋳
造することができる。
【0010】この発明では以上説明したような各配合成
分組成とその範囲で、その使用目的に応じて適宜配合し
て鋳造すればよいが、高炭素含有物の硬度安定化にはS
i、P、B、Zr、Cu、Nb、Yの配合が、またキッ
シュ黒鉛の析出防止にはCr、Mo、Wの配合が、鋳造
時における金属組織の微細化、脱ガスにはTiの配合
が、金属組織のマルテンサイト化の防止にはNi、Co
の配合が有効である。
【0011】
【実施例】以下、この発明の強靱高炭素バナジュウムセ
メンタイト合金鋳鉄を一層詳細に説明するが、この発明
は以下の実施例に何ら限定されるものでない。
【0012】(実施例1〜8、比較例1〜3) 溶製条件 JIS G−5121 SCS13規格を基準(表1)
に、純鉄にC:0.05%、Si:0.4%、Mn:
0.87%、P:0.04%、S:0.015%、N
i:8.7%、Cr:18.6%をそれぞれ配合し、さ
らに表2及び表3に示す配合に従ってCを配合し、さら
に炭素(C)配合量一種類に付きバナジュウム(V)
、15%配合した鋳造原料を、20Kg高周波誘導炉
(ラミング材MgO+Al)を用いて、溶解鋳造
を行った。溶製試料はシエル型引張試験片(JIS Z
2201 金属材料引張14A試験片)、シエル型衝撃
試験片(JIS Z2201 金属材料衝撃3号試験
片)、硬度、ミクロ組織、摩耗試験片として25mm角
×50mm高の角状試料とし、鋳造後、973Kで1時
間保持後空冷を行った。それぞれ表2に示す実施例1〜
8及び表3に示す比較例2及び3の合金を得た。なお、
表3に示す比較例1の熱処理は1303〜1423K固
溶化熱処理とした。
【表1】
【表2】
【表3】
【0013】
【試験例】(試験例1) 前記実施例5及び比較例2、3で得られた合金鋳鉄につ
いてミクロ組織の観察を行うため、973K熱処理組織
の顕微鏡写真(倍率:400)撮影した。この結果を図
1〜に示す。
【0014】(試験例2、3) 引張り強度及び伸び 前記実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた合金鋳鉄
の引張り強度及び伸びを試験した。試験方法は、引張り
強度及び伸び共にJIS 2241 金属材料引張り試験
法の基準に従って測定した。引張り強度の結果及び伸び
の結果を表4にまとめて示した。下記試験例4の試験結
果も合わせて表4に示す。
【表4】
【0015】(試験例4) 硬度測定 前記実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた合金鋳鉄
の硬度をそれぞれ測定した。硬度の指標としては「ロッ
クウエル硬さ(H)」の「Cスケール」(HC)を
用いた。試験方法JIS Z 2245に示される「ロッ
クウエル硬さ試験方法」(ダイヤモンド圧子又は球圧子
を用いて、まず基準荷重を加え、次に試験荷重を加え、
再び基準荷重に戻したとき、前後2回の基準荷重におけ
る圧子の侵入深さの差によって定義式から求める)に準
じて行った。
【0016】(試験例5) 前記実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた合金鋳鉄
の衝撃試験を行った。試験方法は、シャルピー衝撃試験
とし、試験を行う前に、試験片の表面にある酸化物をB
elt式研摩機で取り除き、10×10×55mmの形
状で、ノッチなしのJIS3号試験片に加工したものを
試験した。試験後破断面を観察し、大きな欠陥の見られ
るものについては除外した。衝撃試験の結果を表5に示
した。下記試験例6の試験結果も合わせて表5に示す。
【表5】
【0017】(試験例6) 摩耗試験 前記実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた合金鋳鉄
について摩耗試験を行った。摩耗試験機の概略を図
示す。操作は次のように行った。試料は25mm角×5
0mm高の供試材より10mm棒を切り出し試験片と
し、ネジホルダーで取り付け、長さ12mmにマイクロ
カッターで切断した。また、試料に接触させる砥石には
市販の材質Al質,寸法がφ25mm×2mmの
軸付砥石を用い、♯80の砥粒を用いた。粘土系バイン
ダー約30%配合して成形後、約1473K焼結したも
のを用いた。試料の各面をBelt式研摩機により♯8
0で研摩した。特に砥石と接触する面は良好な平面状態
になるように注意を払った。研摩試料表面に付着物がな
いことを確認した後その重量を精密天秤で測定した。こ
れを摩耗試験前重量とした。ホルダー部に試験面を下に
試料を取り付け、砥石と同じ高さに合わせた水平台を用
いて試験面の水平度を水平に調整しつつ、側面からネジ
止めをした。試験機のバランスを調整した後試料の真上
に荷重用分銅(0.2kg)を置き、試料とは反対側に
制振スプリングを取り付け試料の空走をおさえた。摩耗
試験機をスタートさせ、回転速度を1700rpmと
し、回転時間を90秒とした。試験中はスタートさせて
から30、60秒後にドレッシング用砥石で軸付き砥石
をドレッシングした。これは目詰まりを防止するためで
ある。試験が終了したら試料に付着した研摩粉をよく拭
き取り除去し、再び精密天秤で秤量し、試験前の重量と
の差をもって摩耗量とした。
【0018】図1及び2から明らかなように実施例5の
合金鋳鉄では球状炭化物が晶出されていることが判る。
これに対し、図3乃至6の比較例2、3では粒状又は球
状炭化物が晶出されていないことが判る。したがって、
図1〜から炭素(C)配合量が0.6%未満及び6.
5%を超える時はバナジュウム(V)を配合しても粒状
又は球状炭化物は晶出しないが、C配合量が0.6〜
6.5%の時は晶出することがわかる。このことから、
単にVを配合するのみでは粒状又は球状組織が晶出され
ず、C、V双方の配合量が粒状又は球状組織の晶出に影
響を及ぼすものと思われる。
【0019】次に表3、4の結果から実施例の合金鋳鉄
と比較例の合金鋳鉄の機械的強度を比較する。引張り強
度は、炭素(C)配合1.0〜2.5%で最大値をとっ
ており、このC配合量で最も材料の引張り強度が大き
い。またバナジュウム(V)配合15%が最も大きいこ
とからV配合量が増えるにしたがって引張り強度が増す
と思われる。伸びはC配合1.0%で最大値を示してお
り、1.0%を超えると、C配合量が増えるにしたがっ
て値は小さくなる傾向にある。硬度はC配合量が増える
にしたがって増大し、C配合5.0〜6.0%で最大と
なり6.0%以上では下がっている。衝撃値はC配合量
が0.1%で最大となっているが、その後一旦減少した
後、配合量0.6%で再び大きな値をとりその後は減少
している。また実施例に関してはV配合量が増えるに伴
って、衝撃値も増大している。摩耗係数はC配合量6.
0%で最小値をとり、V配合量が大きいほど小さい値を
とっている。硬度は両者ともピークはC配合量5.0〜
6.5%付近であり、硬度の値が大きいものは摩耗係数
が小さくなるという相関関係が見られる。以上から、材
料の耐衝撃性はC配合量が0.6〜6.5%の時はV配
合量が増すほど衝撃値が大きくなっており、耐衝撃性は
向上しているといえる。C配合量が6.6%の時も同様
なことがいえるが、このC配合量での他の要素、即ち引
張り強度、伸び、硬度、摩耗係数は優れているとはいえ
ない。このことから、V配合により、金属組織中に粒状
又は球状炭化物が晶出した効果が、実施例では見られる
のに対し、比較例では見られないといえる。そこで、従
来の合金鋳鉄が備えていた効果に加え、耐衝撃性を向上
させるのはC配合量が0.6〜6.5%の範囲内にあ
り、V配合量が8.0〜15%の範囲内で配合量が多い
場合ということができる。
【0020】(試験例7) 水中ミキサー・プロペラ実証試験 汚泥貯槽の排水処理装置として水中ミキサー・プロペラ
実証試験を行った。汚泥貯槽の実使用はpH5〜9(設
計pH7〜9)、汚泥中の異物として、砂を混入させ
た。また汚泥濃度は3%前後であった。この処理装置汚
泥貯槽水を蛍光X線分析で分析したとき、汚泥濃度0.
5%、FeSO18.0%,SO6.1%、Al
4.2%、SiO8.8%、V2.9%有
機物(C)63.0%であった。なおpHの実証値は
6.8であった。実施例5(V配合量8.0%、C配合
量3.0%)と従来の鋳鉄FC200を材料として外径
φ190、φ230のプロペラを作成し、汚泥処理用水
中ミキサーに取り付けて実証試験を行った。その結果、
実施例5を材料として作成したプロペラではφ190の
プロペラは1852時間運転後プロペラ翼部重量の0.
91%の、φ230のプロペラは1003時間運転後
0.29%の減量が見られた。これに対し、従来の鋳鉄
のφ230のプロペラは844時間運転後7.07%の
減量となり、明らかに実施例を材料としたものが優れて
いた。このことから、実施例の合金鋳鉄は従来の鋳鉄に
比べ耐摩耗性に優れているといえる。
【0021】
【発明の効果】以上詳述した如く、これらの発明のうち
請求項1記載の発明は、C:0.6〜6.5重量%、S
i:0.2〜3.0重量%、Mn:0.2〜1.0重量
%、P:0.01〜0.15重量%、S:0.01〜
0.05重量%、Cr:13〜30重量%、Ni:4〜
15重量%、V:8〜15重量%、残部鉄(Fe)及び
不可避不純物からなり、その組織中に共有結合性の粒状
又は球状V−C炭化物及びFe−Cr炭化物を晶出させ
てなることを特徴とする強靱高炭素バナジュウムセメン
タイト合金鋳鉄であり、また請求項2記載の発明は、前
記合金元素に、(a)Mo:0.1〜15重量%、
(b)Ti:0.01〜5重量%、(c)B:0.01
〜2重量%、(d)Cu、W、Zr、Co、Nb、Yの
うちの少なくとも2種以上の合金元素:0.2〜5重量
%、の(a)〜(d)の中から選択された一以上を配合
してなることを特徴とする請求項1記載の強靱高炭素バ
ナジュウムセメンタイト合金鋳鉄であるから以下のよう
な優れた効果を奏する。即ちこれらの発明は、耐食性、
耐摩耗性、耐熱性、といった特徴を全て充分に備え、さ
らに特に炭化物の粒状又は球状化による耐衝撃性を向上
させた強靱高炭素バナジュウムセメンタイト合金鋳鉄を
提供し、これにより、産業の発展に伴い高機能、高性能
化されつつある化学工業や産業機械等の諸工業において
広範囲に適用され得るという効果を奏する。なお耐食性
には基地の安定化が大きく影響する。Mo、W、Nb、
Bは基地を強化し炭化物を安定化させる。耐摩耗性には
炭化物安定のためZr、Cu、Nb、Yを、金属組織の
微細化、脱ガスにはTiを、マルテンサイト化防止には
Coを用途に応じて勘案して配合すればそれぞれの効果
が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5で得られたV配合量8%での合金鋳鉄
の組織の400倍の顕微鏡写真である。
【図2】実施例5で得られたV配合量15%での合金鋳
鉄の組織の400倍の顕微鏡写真である。
【図3】比較例2で得られたV配合量8%での合金鋳鉄
の組織の400倍の顕微鏡写真である。
【図4】比較例2で得られたV配合量15%での合金鋳
鉄の組織の400倍の顕微鏡写真である。
【図5】比較例3で得られたV配合量8%での合金鋳鉄
の組織の400倍の顕微鏡写真である。
【図6】比較例3で得られたV配合量15%での合金鋳
鉄の組織の400倍の顕微鏡写真である。
【図7】この発明の強靱高炭素バナジュウムセメンタイ
ト合金鋳鉄の摩耗試験に使用した、試験機の側面図であ
る。
【符号の説明】
1・・・・・軸付砥石 2・・・・・ネジホルダー 3・・・・・分銅 4・・・・・天秤 5・・・・・制振スプリング
フロントページの続き (72)発明者 菅原 清介 大阪府東大阪市御厨南2丁目5番28号 (56)参考文献 特開 平6−240404(JP,A) 特開 昭62−47451(JP,A) 特開 昭57−2834(JP,A) 特開 昭62−211319(JP,A) 特公 昭54−19371(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 37/08 C22C 37/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.6〜6.5重量%、Si:0.
    2〜3.0重量%、Mn:0.2〜1.0重量%、P:
    0.01〜0.15重量%、S:0.01〜0.05重
    量%、Cr:13〜30重量%、Ni:4〜15重量
    %、V:8〜15重量%、残部鉄(Fe)及び不可避不
    純物からなり、その組織中に共有結合性の粒状又は球状
    V−C炭化物及びFe−Cr炭化物を晶出させてなるこ
    とを特徴とする強靱高炭素バナジュウムセメンタイト合
    金鋳鉄。
  2. 【請求項2】 前記合金元素に、(a)Mo:0.1〜
    15重量%、(b)Ti:0.01〜5重量%、(c)
    B:0.01〜2重量%、(d)Cu、W、Zr、C
    o、Nb、Yのうちの少なくとも2種以上の合金元素:
    0.2〜5重量%、の(a)〜(d)の中から選択され
    た一以上を配合してなることを特徴とする請求項1記載
    の強靱高炭素バナジュウムセメンタイト合金鋳鉄。
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