JP3296509B2 - 強靱高炭素セメンタイト系合金鋳鉄 - Google Patents

強靱高炭素セメンタイト系合金鋳鉄

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JP3296509B2
JP3296509B2 JP05484593A JP5484593A JP3296509B2 JP 3296509 B2 JP3296509 B2 JP 3296509B2 JP 05484593 A JP05484593 A JP 05484593A JP 5484593 A JP5484593 A JP 5484593A JP 3296509 B2 JP3296509 B2 JP 3296509B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】この発明は強靱高炭素セメンタイト系合金
鋳鉄に係り、その目的は耐食性、耐磨耗性、耐熱性とい
った3つの特性を全て充分に兼ね備え、産業の発展に伴
い高性能・高機能化されつつある化学工業や機械、船
舶、石油等の諸工業において広範囲に適用することがで
きる強靱高炭素セメンタイト系合金鋳鉄の提供にある。
【0002】
【発明の背景】従来より各種ボイラ設備や化学プラント
機器類等、高温環境下で使用される装置の素材には耐熱
性や耐食性が要求されていた。しかし、近年、産業技術
の発展に伴い化学工業をはじめとする諸工業の高温設備
の向上や高機能・高性能化は著しく、より厳しい条件で
の耐用が要求されるようになってきている。例えば、エ
ンジニアリングプラスチックの射出成形の分野において
は、樹脂成形体の強度や難燃性、耐磨耗性等を向上させ
るため樹脂中にFRPなどの補強材や各種添加材が添加
されるようになっている。この結果、樹脂成形体のシリ
ンダは樹脂中の補強材により磨耗しやすく、しかも添加
剤から発生する強腐食性ガスにより腐食しやすくなって
いる。また、自動車などの各種産業において製造される
部品の形状も複雑化されてきており、部品の製造装置の
磨耗は従来よりも著しいものとなってきている。このよ
うに産業の高度化に伴い、そこで使用される装置等の使
用環境は極めて苛酷なものとなってきており、その素材
には、強度、耐熱性、耐食性等諸性能の従来以上の向上
が要求されている。
【0003】
【従来の技術】腐食や高温における酸化性において比較
的良好な性質を示すFe系の鋳鋼としてはステンレス鋼
が存在する。ステンレス鋼の種類は多く、例えばJIS
G5122の規格では、代表的な18Cr−8Ni系
のSCS12,SCS13,SCS19,SCS21や
18Cr−11Ni−Mo系のSCS14、高Cr−N
i系のSCS11、13Cr系のSCS1,SCS2,
高Cr系などが例示される。これらステンレス鋼はいず
れもCrを12%以上含有しており、このCrの酸化作
用により不動態化し、鋼の表面にFeO、Cr2 3
NiOなどの酸化物が晶出され、表面を錆から保護され
る構成となっているもので、中でも特に18Cr−8N
i オーステナイト系ステンレス鋼は古くから汎用され
ている代表的なステンレス鋼であった。一方、ボイラ・
タービン、原子炉、内燃機関の弁等高温度下で高温酸化
と荷重を受ける部分に使用される鋼として、耐熱鋳鋼と
呼ばれる高Cr系や高Cr−Ni系の合金鋳鋼も存在す
る。この耐熱鋳鋼の種類としては高Cr系のSCH1,
SCH2及び高Cr−Ni系のSCH11〜15等が例
示される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
たSCSタイプのステンレス鋼では、耐食性や耐熱性は
良好であるものの、炭素含有率が極めて低いため硬度が
低く、耐磨耗性に劣るという課題が存在した。また、代
表的なステンレス鋼である18Cr−8Ni オーステ
ナイト系ステンレス鋼は耐食性、耐酸化性には優れてい
るが、塩酸(HCl)やハロゲンには侵されやすいとい
った課題が存在した。一方、SCHタイプの耐熱鋳鋼
は、元来耐熱性を主眼としてものであり、Fe−Cr系
の晶出は認められるが、C重量%が少ないめた粒界腐食
による劣化が生じやすく、耐食性が悪いといった課題が
存在した。しかも、このSCHタイプの耐熱鋳鋼では、
含有されるFe−Cr系の晶出は金属結合となってお
り、強固な共有結合とはなっていないため、耐磨耗性に
必要な充分な強度が得られないという課題が存在した。
一般に、合金は添加される元素の種類によって所望の性
質を付与することが可能であるが、高温引張り強度を増
大させ、耐熱性・耐磨耗性を良好なものにせんとして成
分規格範囲内でC量を増加するほど、耐食性は劣化され
ていく。従って、耐食性とともに耐熱性や耐磨耗性とを
同時に具備した合金については未だ創出されておらず、
業界では産業の高度化に適用できる耐熱性や耐食性・耐
磨耗性等の諸特性を全て充分に具備する優れた合金鋳鋼
の創出が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明では、C:0.
6〜6.5重量%、Si:3.0重量%以下、Mn:
1.0重量%以下、P:0.15重量%以下、S:0.
05重量%以下、Cr:13〜30重量%、Ni:4〜
12重量%、Ti:5重量%以下残部鉄(Fe)及び
不可避不純物からなり、その組織中に共有結合性のFe
−Cr系炭化物を晶出させてなることを特徴とする強靱
高炭素セメンタイト系合金鋳鉄を提供することにより上
記従来の課題を悉く解消する。すなわちこの発明では、
発明者らが強固な共有結合を得る元素として炭素に注目
し、鋭意研究を行った結果、共有結合を得る成分範囲及
び熱処理条件について知見を得、耐熱性・耐食性・耐磨
耗性の3つの性能を充分に満足させる合金鋳鉄を見出し
た。
【0006】
【発明の構成】以下、この発明に係る強靱高炭素セメン
タイト系合金鋳鉄の成分組成を限定する理由を詳述す
る。尚、以下において「%」はすべて「重量%」を示
す。
【0007】(1) C:0.03〜1.2%付近までの
添加では急激に硬度は増加するが、耐食性の値は0.6
%より安定を示し、以後、C%の増加に伴い硬度及び耐
食性が増加する。しかし6.5%を越えると、Cの一部
は炭化物とはならずキッシュ黒鉛として析出するため、
逆に硬度、耐食性を低下させる結果となる。従ってこの
発明ではC含有量は0.6〜6.5%とした。 (2) Si:Siは脱酸及び硬度上昇、鋳造性に有効であ
り、1%程度は通常必要とされるが、3%を越えると靱
性を劣化させる原因となる。従ってこの発明ではSi含
有量は3%以下としたが実際には0.2〜3%含有され
る。 (3) Mn:Mnは原素材に含有されており、1.0%迄
は問題はないが、1.0%を越えると偏析を起こし、F
e−Cr系の共有結合に寄与しない。従ってこの発明で
はMn含有量は1%以下としたが実際には0.2〜1%
含有される。 (4) P:Pは偏析や脆性を起こすが、硬度を若干上昇
させ、且つ流動性も向上させるため、鋳造性が良好とな
る。従ってこの発明ではP含有量は0.15%としたが
実際には0.01〜0.15%含有される。
【0008】(5)S:Sは低含有が良いが、この発明で
はSの含有量は、C:6.5%時のキッシュ黒鉛析出防
止対応可能範囲の0.05%以下としたが実際には0.
01〜0.05%含有される。 (6)Cr:Crは13%以上でないと強固な共有結合の
Fe−Cr系炭化物(セメンタイト)を晶出せず、一
方、30.0%を越えると偏析を起こし、強度劣化を起
因させる。従ってこの発明ではCr含有量は13〜30
%とした。 (7)Ni:4.0%未満はマルテンサイト化をしやすく
し、一方、12.0%を越えると基地を柔らかくし、ま
た偏析を起こす。従って、この発明ではNi含有量を
4.0〜12.0%とした。(8)Ti:Tiは脱窒素と微細化に効果的であるが、
5.0%を超えるとTi系炭化物の析出が著しくなり、
劣化を起こす。従って、この発明ではTi含有量を5.
0%以下としたが実際には0.01〜5.0%含有され
る。
【0009】以上の元素は主成分たるFeに含有させる
必須成分であるが、この発明では上記の各元素につい
て、以下の元素を適宜配合させてもよい。(9) Mo:Moは基地を安定化させ、耐食性を向上させ
るが、15.0%を超えると逆に偏析を起こしやすくな
る。従って、この発明ではMo含有量を15.0%以下
としたが実際には0.1〜15.0%含有される。 (10)B:Bは熱処理特性により硬度を上げる。しかし、
2.0%を超えると劣化を引き起こす原因となる。従っ
て、この発明ではB含有量を2.0%以下としたが実際
には0.01〜2.0%含有される。 (11)Cu,V,Co,W:これら元素は単独添加でも効
果はあるが、各々(耐食、耐磨耗、耐熱)の主要目的に
応じて複合添加することにより、一層の効果を得ること
ができるが、いたずらに添加しても共有結合を強固とす
る意味がない。 従って、この発明では少なくとも2種以上の含有量を
7.0%以下としたが実際には0.2〜7.0%含有さ
れる。
【0010】この発明では上記したような元素組成を使
用目的等に応じて適宜任意に配合して鋳造すればよい
が、高C含有物の硬度安定化にはSi、P、Bの添加
が、またキッシュ黒鉛防止にはCr、Mo、V、Wの添
加が、鋳造時の微細化、脱ガスにはTiの添加が、マル
テンサイト化の防止にはNiの添加が有効である。
【0011】(熱処理条件)この発明では、前記組成か
らなる鋳鉄を、通常鋳放しでも使用できるが、鋳造応力
除去処理を実施することが望ましいので、使用目的に応
じて、973〜1293K、厚さ25mm程度に対して
1時間程度保持した後、焼準及び焼鈍して、セメンタイ
ト系合金鋳鉄を得る。973〜1173Kダイレクトテ
ンパー(保持後炉冷又は空冷処理)の場合、組織はオー
ステナイト(γ)+セメンタイト(FeL −Crm −C
n )となる。また、1173Kを超え、1293K迄の
場合は強度、靱性を目的とした焼準、衝撃性を目的とし
た鋳造応力除去と焼なましといった変化が実施できる。
この場合の組織は、オーステナイト(γ)+セメンタイ
ト(FeL −Crm −Cn )で、前記973〜1173
Kで処理した鋳鉄と相違は無い。
【0012】
【実施例】以下、実施例によりこの発明の強靱高炭素セ
メンタイト系合金鋳鉄を一層詳細に説明するが、この発
明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0013】(実施例1〜7及び比較例1〜3)小規模溶解 JIS G−5121 SCS13規格を基準(表1)
に、純鉄にC:0.05%、Si:0.4%、Mn:
0.87%、P:0.04%、S:0.015、Ni:
8.7%、Cr:18.6%をそれぞれ添加し、さらに
表2に示す配合に従ってCを添加した鋳造原料を、図1
に示す遠心鋳造装置を用いて、鋳造を行なった。図中、
(1)はコイル、(2)はるつぼ、(3)はクォーツキ
ャップ、(4)はパイプ(Arガス)、(5)は銅型、
(6)はバランサーをそれぞれ示す。また、この際の鋳
型としては図2乃至図4に示す銅型を用い、モルホス
(商品名、燐酸アルミニウム)で塗型とした。溶解量は
40gとし、熱処理は鋳造後の試料より、10mm3
験片を2ケ切り出し、1ケを973K、他方を1293
Kで1時間保持後、空冷して行ない、それぞれ表2に示
す実施例1〜7及び比較例2〜3の合金鋳鉄を得た。
尚、比較例1の熱処理は、1303〜1423K固溶化
熱処理とした。
【表1】
【表2】
【0014】(実施例8〜14及び比較例4〜6)多量溶解 前記実施例1〜7及び比較例1〜3と同様の鋳造原料を
20Kg高周波誘導炉(ラミング材:MgO+Al
)で前記熱処理と同様の手順で、シェル型引張り試験
片(JIS Z2201 金属材料引張14A号試験
片)を鋳造した。尚、比較例4の熱処理は、1303〜
1423K固溶化熱処理とした。
【0015】
【試験例】
(試験例1)前記実施例5、6及び比較例2、3で得ら
れた合金鋳鉄についてミクロ組織による観察を行なうた
め、973K熱処理組織の顕微鏡写真(倍率:400)
を撮影した。この結果を図5〜8に示す。
【0016】(試験例2)硬度測定 前記実施例1〜7及び比較例1〜3で得られた合金鋳鉄
の硬度をそれぞれ測定した。硬度の指標としては「ロッ
クウエル硬さ(HR )」の「Cスケール」(HR C)を
用いた。試験方法はJIS Z 2245に示される
「ロックウェル硬さ試験方法」(ダイヤモンドモンド圧
子又は球圧子を用いて、まず基準荷重を加え、次に試験
荷重を加え、再び基準荷重に戻したとき、前後2回の基
準荷重における圧子の侵入深さの差によって定義式から
求める)に準じて行なった。この結果を表3に示す。
【表3】
【0017】(試験例3)耐食性試験 前記実施例1〜7及び比較例1〜3で得られた合金鋳鉄
(熱処理品(比較例1については1303K〜1423
Kの固溶化熱処理、他は1293K、1時間保持、空
冷))でのHCl(6N)及びH2 SO4 (6N)に対
する耐食性を試験した。試験方法としては、試料10m
3 を全面仕上(エメリー320番仕上)し、アルコー
ルで脱脂洗浄した後、重量及び表面積測定を行い試験に
供した。各試験片はそれぞれ別々に同一大の300cc
の容器(ビーカー)に700ccのHCl(6N)及び
2 SO4 (6N)溶液をそれぞれ入れ、恒温槽中で温
度を調節、2830.2Kは暗室、2970.5
K、3332Kは自然採光中として、試料全体を浸漬
し、8時間迄は1時間毎、以降は12時間毎に取り出
し、洗浄、乾燥後、各試料常温での重量測定と表面積測
定により腐食減量をmg/cm2 で測定した。HClで
の結果を表4及び表5に、H2 SO4 での結果を表6及
び表7に示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0018】また、前記同様の実施例1〜7及び比較例
1〜3で得られた合金鋳鉄試料のHCl(6N)中で9
6時間浸漬後の溶液中のCr、Ni濃度をそれぞれ測定
した。この結果を表8に示す。
【表8】
【0019】(試験例4)引張り強度及び伸び 前記実施例8〜14及び比較例4〜6で得られた合金鋳
鉄の引張り強度及び伸びを試験した。試験方法は、引張
り強度及び伸び共にJIS 2241 金属材料引張り
試験法の基準に従って測定した。引張り強度の結果を表
9、伸びの結果を表10にそれぞれ示した。
【表9】
【表10】
【0020】(試験例5)耐熱性試験 前記実施例1〜7及び比較例1〜3で得られた合金鋳鉄
973K熱処理材について耐熱性試験を行なった。試験
方法は、熱処理電気式加熱炉(容積300mm3 ,27
000リットル)に各合金鋳鉄を2列に10m/mの間
隙を保ち、恒温加熱できるように設置し、加熱温度12
735Kで大気中100Hr保持し、その後、炉冷し
て、その酸化増量をmg/cm2 で測定した。この結果
を表11に示す
【表11】
【0021】図5〜6から明らかなように、実施例の合
金鋳鉄では共有結合が晶出されているのが判る。これに
対し、図7〜8から明らかなように、比較例の合金鋳鉄
では、共有結合が晶出されていないことが判る。
【0022】表3の結果から明らかな如く、Cの添加に
より硬度は5%添加迄はC量の増加に従って逐次増大し
ていた。特に973K空冷でのC:5%添加で、HRc
56を示した。これ以上になると若干降下するが、これ
は初晶黒鉛(キッシュ黒鉛)が晶出した為であった。
尚、1293K空冷により硬度は若干減少し、高C配合
量程、その差は大きくなっていた。この原因は、原材料
がオーステーナイト相の安定な化学組成であり、そのう
えCはオーステーナイトを安定にさせる元素であるた
め、空冷によりますますオーステーナイトが残留し、こ
の熱処理によって却って軟化したものであった。高C含
有物の硬度安定化について種々検討した結果、高C含有
物の硬度安定化には、Si,P,Bが効果的であり、初
晶黒鉛(キッシュ黒鉛)防止にはCr,Mo,V,Wが
よく、微細化、脱ガスにはTi、マルテンサイト化防止
にはNiが有効であったことが判った。
【0023】表4及び表5の結果から明らかな如く、H
Cl(6N)2830.2K,2970.5K,3
332Kでの耐食性はC添加量が増加するに従い逐次
向上するが、0.6%添加から顕著に耐食性が向上し、
4〜5%で最低値を示し、2832、96HrでSC
S13比で約1/8の減耗量となり、ステンレス鋼の最
大の欠点であった耐HCl性が改善されていることが判
る。表6及び表7の結果から明らかな如く、H2 SO4
(6N)2830.2KでSCS13比で約1/6の
減耗量であり、耐食性が良好であることが判る。表8の
結果から明らかな如く、CrはC量の添加に従って減量
し、5%では最低値を示した。これに反し、NiはC量
増加により逐次増加していた。この理由はCrは主とし
てセメンタイト(FeL −Crm −Cn )の構成元素と
なるためである。Fe−Cr−Cの結合力は強く、すな
わち共有結合となるためで、この共有結合をさらに効果
あるものとするにはNi等の溶出防止の基地強化が必要
となり、共有結合を得る条件として前述した各元素の有
効な添加を行うことが有効であることが判った。
【0024】表9の結果から明らかな如く、引張り強度
は、973K空冷では、C添加2.0%で最大値を示
し、以後C添加量が増加するに従って下降する傾向にあ
った。1293K空冷ではC添加量3.0%で最大値を
示し、3.0%以下では973K空冷に比較して大幅に
向上していた。4.0%以上では973K空冷、129
3K空冷共変化が無かった。表10に示すように伸びは
C添加量が増加するに従って急激に減じ、3.0%付近
では伸びが無くなった。このことから、C;0.6〜
3.0%以下では耐食性、耐磨耗性はやや減ずるが、強
度、靱性、熱衝撃、耐熱性が必要な場合に効果があり、
3.1%以上は厳しい耐食性と耐磨耗性、酸化耐熱性を
要求される場合に優れた性能を発揮することが判る。
【0025】表11に示す如く、酸化増量は0.6%よ
り低下し、4%で最低値を示す。4%を超えると増加傾
向を示す。5%を超えると急速に増加を示す。この事
は、所晶黒鉛晶出によるもので、前述した各元素の添加
を行なうことが有効であることが判った。
【0026】
【発明の効果】以上詳述した如く、この発明は、C:
0.6〜6.5重量%、Si:3.0重量%以下、M
n:1.0重量%以下、P:0.15重量%以下、S:
0.05重量%以下、Cr:13〜30重量%、Ni:
4〜12重量%、Ti:5重量%以下残部鉄(Fe)
及び不可避不純物からなり、その組織中に共有結合性の
Fe−Cr系炭化物を晶出させてなることを特徴とする
強靱高炭素セメンタイト系合金鋳鉄であるから、前記実
施例からも明らかな如く、耐食性、耐磨耗性、耐熱性と
いった特性を全て充分に兼ね備え、高度化した化学工業
等に広範囲に使用できるとともに、C値が高いため溶湯
の流動性が良好で、欠陥の少ない鋳造品が造りやすく、
また硬度も調節可能であるため、従来の耐磨耗材におけ
る加工不可といった欠点をも解消することができるとい
う優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の強靱高炭素セメンタイト系合金鋳鉄
を鋳造する一実施例において使用した遠心鋳造装置の一
例を示す模式図である。
【図2】この発明の強靱高炭素セメンタイト系合金鋳鉄
を鋳造する一実施例において使用した鋳型(銅型)を示
す平面図である。
【図3】同上、A−A' 断面図である。
【図4】同上、B−B' 断面図である。
【図5】実施例5で得られた合金鋳鉄の組織の400倍
の顕微鏡写真である。
【図6】実施例6で得られた合金鋳鉄の組織の400倍
の顕微鏡写真である。
【図7】比較例2で得られた合金鋳鉄の組織の400倍
の顕微鏡写真である。
【図8】比較例3で得られた合金鋳鉄の組織の400倍
の顕微鏡写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菅原 清介 東大阪市御厨南2丁目5番28号 (56)参考文献 特開 昭49−106425(JP,A) 特開 昭60−29423(JP,A) 特開 平4−80344(JP,A) 特開 平3−134208(JP,A) 特開 昭59−80751(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 37/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.6〜6.5重量%、Si:3.
    0重量%以下、Mn:1.0重量%以下、P:0.15
    重量%以下、S:0.05重量%以下、Cr:13〜3
    0重量%、Ni:4〜12重量%、Ti:5重量%以
    残部鉄(Fe)及び不可避不純物からなり、その組
    織中に共有結合性のFe−Cr系炭化物を晶出させてな
    ることを特徴とする強靱高炭素セメンタイト系合金鋳
    鉄。
  2. 【請求項2】 前記合金元素に、(a)Mo:15%以
    下、(b)B:2%以下、(c)Cu、V、Co、Wのうちの
    少なくとも2種以上の合金元素7%以下、の(a)〜(c)
    添加物の中から選択された一以上の添加物を混合してな
    ることを特徴とする請求項1に記載の強靱高炭素セメン
    タイト系合金鋳鉄。
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