JPH07157846A - 高強度ばね用鋼 - Google Patents
高強度ばね用鋼Info
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- JPH07157846A JPH07157846A JP30438893A JP30438893A JPH07157846A JP H07157846 A JPH07157846 A JP H07157846A JP 30438893 A JP30438893 A JP 30438893A JP 30438893 A JP30438893 A JP 30438893A JP H07157846 A JPH07157846 A JP H07157846A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 引張強度が200Kgf/mm2 以上であり、且つ
ばね特性として重要な疲労特性やへたり特性に優れ、且
つ腐食疲労特性の良好な高強度ばねを得ることのできる
ばね用鋼を提供することを目的とする。 【構成】 鋼材中に含まれるC,Si,Mn,Ni,C
r,Mo,V等の各含有率を特定すると共に、(550-333
[C]-34[Mn]-20[Cr]-17[Ni]-11[Mo] ≧300)(但し、[元
素]は各元素の重量%)の関係を満たし、更には適量の
La,Ca,Ce,Wを含み、且つ酸化物系介在物の平
均粒子径の特定された、高強度で疲労特性の改善された
ばね用鋼である。また上記構成に加えて、(50[Si]+25[N
i]+40[Cr]-100[C]≧230)の関係を満足させることによっ
て腐食疲労特性も改善することができる。
ばね特性として重要な疲労特性やへたり特性に優れ、且
つ腐食疲労特性の良好な高強度ばねを得ることのできる
ばね用鋼を提供することを目的とする。 【構成】 鋼材中に含まれるC,Si,Mn,Ni,C
r,Mo,V等の各含有率を特定すると共に、(550-333
[C]-34[Mn]-20[Cr]-17[Ni]-11[Mo] ≧300)(但し、[元
素]は各元素の重量%)の関係を満たし、更には適量の
La,Ca,Ce,Wを含み、且つ酸化物系介在物の平
均粒子径の特定された、高強度で疲労特性の改善された
ばね用鋼である。また上記構成に加えて、(50[Si]+25[N
i]+40[Cr]-100[C]≧230)の関係を満足させることによっ
て腐食疲労特性も改善することができる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用エンジン等の
内燃機関の弁ばねや懸架ばね等に使用される高強度ばね
用鋼に関し、特に材料強度が200kgf/mm2 以上であ
り、しかもばね特性として要求される疲労寿命およびへ
たり特性を十分に満足し、更には耐食性を高めて腐食疲
労特性の改善された高強度ばねを製造する為のばね用鋼
に関するものである。
内燃機関の弁ばねや懸架ばね等に使用される高強度ばね
用鋼に関し、特に材料強度が200kgf/mm2 以上であ
り、しかもばね特性として要求される疲労寿命およびへ
たり特性を十分に満足し、更には耐食性を高めて腐食疲
労特性の改善された高強度ばねを製造する為のばね用鋼
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ばね用鋼の化学成分はJIS G3565 〜356
7,4801等に規定されており、それらから製造された圧
延材を所定の線径まで伸線加工し、その後オイルテンパ
ー処理してからばね加工(冷間加工)したり、圧延材を
伸線加工し、加熱してばね成形した後焼入れ焼戻し(熱
間加工)を行なうこと等により、各種ばねが製造されて
いる。近年、ばねに対する要求が次第に厳しくなってく
るにつれ、各種の合金鋼に熱処理を施したものが多く利
用されている。
7,4801等に規定されており、それらから製造された圧
延材を所定の線径まで伸線加工し、その後オイルテンパ
ー処理してからばね加工(冷間加工)したり、圧延材を
伸線加工し、加熱してばね成形した後焼入れ焼戻し(熱
間加工)を行なうこと等により、各種ばねが製造されて
いる。近年、ばねに対する要求が次第に厳しくなってく
るにつれ、各種の合金鋼に熱処理を施したものが多く利
用されている。
【0003】従来のばね鋼においては、焼入れ焼戻し後
の強度が160〜180kgf/mm2 程度であるのが一般的
であるが、強度が200kgf/mm2 以上の高強度ばね用鋼
が要求される様になってきた。従来鋼の強度を熱処理等
によって200kgf/mm2 以上にすることも可能である
が、その様にした場合、ばね特性として必要な疲労寿命
やへたり特性が満足できないという問題があった。
の強度が160〜180kgf/mm2 程度であるのが一般的
であるが、強度が200kgf/mm2 以上の高強度ばね用鋼
が要求される様になってきた。従来鋼の強度を熱処理等
によって200kgf/mm2 以上にすることも可能である
が、その様にした場合、ばね特性として必要な疲労寿命
やへたり特性が満足できないという問題があった。
【0004】更に一般的傾向として、ばね用鋼において
は素線の強度を高めるにつれて、ばね特性の一つである
腐食疲労特性が著しく低下する傾向があることはよく知
られている。腐食疲労特性が悪化する一つの理由として
は、使用中にばね表面に深さ約100μm程度の孔食が
生じ、それが応力集中源となって疲労亀裂の発生・進展
の起点となることが挙げられる。また、高強度化するに
つれて傷に対する感受性も敏感になると言われている。
このため、比較的短い使用期間で折損等を生ずることが
懸念され、特に北米地方の様に冬季に凍結防止剤として
塩を撒く様な高腐食環境下で使用される自動車部品など
として使用する場合は、腐食疲労特性が大きな問題とな
る。
は素線の強度を高めるにつれて、ばね特性の一つである
腐食疲労特性が著しく低下する傾向があることはよく知
られている。腐食疲労特性が悪化する一つの理由として
は、使用中にばね表面に深さ約100μm程度の孔食が
生じ、それが応力集中源となって疲労亀裂の発生・進展
の起点となることが挙げられる。また、高強度化するに
つれて傷に対する感受性も敏感になると言われている。
このため、比較的短い使用期間で折損等を生ずることが
懸念され、特に北米地方の様に冬季に凍結防止剤として
塩を撒く様な高腐食環境下で使用される自動車部品など
として使用する場合は、腐食疲労特性が大きな問題とな
る。
【0005】こうした状況の下で本発明者らは、腐食疲
労強度の改善を目的として研究を行なっており、鋼中の
C,Si,Ni,Cr,Mo,V等の各含有率を特定す
ると共に、これら各成分含有率の相互関係、並びに酸化
物系介在物の平均粒子径などを特定することにより、疲
労特性やへたり特性、更には腐食疲労特性などが改善さ
れることを知り、こうした知見を元にして先に特許出願
を行なった(特開平5−1951531 号公報)。ところが上
記の改良発明でさえも、より厳しい環境下での腐食疲労
特性については尚不十分であり、一層の改善が望まれ
る。
労強度の改善を目的として研究を行なっており、鋼中の
C,Si,Ni,Cr,Mo,V等の各含有率を特定す
ると共に、これら各成分含有率の相互関係、並びに酸化
物系介在物の平均粒子径などを特定することにより、疲
労特性やへたり特性、更には腐食疲労特性などが改善さ
れることを知り、こうした知見を元にして先に特許出願
を行なった(特開平5−1951531 号公報)。ところが上
記の改良発明でさえも、より厳しい環境下での腐食疲労
特性については尚不十分であり、一層の改善が望まれ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な事情
に着目してなされたものであって、その目的は、強度が
200kgf/mm2 以上であり、しかも前記公開発明で得ら
れる耐疲労特性や耐へたり特性などを満足しつつ、耐食
性および耐腐食疲労特性の一段と改善された高強度ばね
を与えるばね用鋼を提供することにある。
に着目してなされたものであって、その目的は、強度が
200kgf/mm2 以上であり、しかも前記公開発明で得ら
れる耐疲労特性や耐へたり特性などを満足しつつ、耐食
性および耐腐食疲労特性の一段と改善された高強度ばね
を与えるばね用鋼を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明の高強度ばね用鋼とは、 C :0.3〜0.5% Si:1〜4% Mn:0.2%以上0.5%未満 Ni:0.5〜4% Cr:0.3〜5% Mo:0.1〜2% V :0.1〜0.5%を夫々含有し、 550-333[C]-34[Mn]-20[Cr]-17[Ni]-11[Mo]≧300 (但し、[元素]は各元素の重量%を表す)の関係を満
足すると共に、 La:0.001〜0.1% Ca:0.001〜0.1% Ce:0.001〜0.1% W :0.01〜1%よりなる群から選択される少なく
とも1種の元素を含有し、あるいは更に他の元素として Nb:0.05〜0.5% Cu:0.1〜1% Al:0.01〜0.1% Co:0.1〜5%よりなる群から選択される少なくと
も1種の元素を含有し、残部鉄および不可避不純物から
なり、且つ鋼材の中心を含む圧延方向断面における表面
から3mmまでの被検面積160mm2 内において平均粒
子径50μm以上の酸化物系介在物を含まず、平均粒子
径20μm以上の酸化物系介在物が10個未満であると
ころに要旨を有するものである。
発明の高強度ばね用鋼とは、 C :0.3〜0.5% Si:1〜4% Mn:0.2%以上0.5%未満 Ni:0.5〜4% Cr:0.3〜5% Mo:0.1〜2% V :0.1〜0.5%を夫々含有し、 550-333[C]-34[Mn]-20[Cr]-17[Ni]-11[Mo]≧300 (但し、[元素]は各元素の重量%を表す)の関係を満
足すると共に、 La:0.001〜0.1% Ca:0.001〜0.1% Ce:0.001〜0.1% W :0.01〜1%よりなる群から選択される少なく
とも1種の元素を含有し、あるいは更に他の元素として Nb:0.05〜0.5% Cu:0.1〜1% Al:0.01〜0.1% Co:0.1〜5%よりなる群から選択される少なくと
も1種の元素を含有し、残部鉄および不可避不純物から
なり、且つ鋼材の中心を含む圧延方向断面における表面
から3mmまでの被検面積160mm2 内において平均粒
子径50μm以上の酸化物系介在物を含まず、平均粒子
径20μm以上の酸化物系介在物が10個未満であると
ころに要旨を有するものである。
【0008】また本発明においては、上記構成に加え
て、不可避不純物として混入してくる酸素を15ppm 以
下、窒素を100ppm 以下、燐を100ppm 以下、硫黄
を100ppm 以下に制限し、更には、C、Si、Niお
よびCrの各含有量が 50[Si]+25[Ni]+40[Cr]-100[C] ≧230 (但し、[元素]は各元素の重量%を表す)の関係を満
たす様に成分調整することによって、耐食性および腐食
疲労特性の非常に優れた高強度ばね用鋼を得ることがで
きる。
て、不可避不純物として混入してくる酸素を15ppm 以
下、窒素を100ppm 以下、燐を100ppm 以下、硫黄
を100ppm 以下に制限し、更には、C、Si、Niお
よびCrの各含有量が 50[Si]+25[Ni]+40[Cr]-100[C] ≧230 (但し、[元素]は各元素の重量%を表す)の関係を満
たす様に成分調整することによって、耐食性および腐食
疲労特性の非常に優れた高強度ばね用鋼を得ることがで
きる。
【0009】
【作用】先の公開発明にも開示した様に、材料を高強度
化して疲労寿命を向上させるためには、素材の靭性向上
を図る必要がある。従来のばね用鋼では、弾性限を高め
るという観点から炭素含有量の比較的高い鋼が用いられ
てきたのであるが、素材の靭性向上を図るため、炭素量
を従来のばね用鋼の含有量から大幅に減少させることが
有効であることは厚板の結果から明らかである。但し、
引張強度を200kgf/mm2 レベル以上に高めるという観
点からすれば、炭素量を減少し過ぎると焼入れ焼戻し後
の強度不足を招くので、炭素量の低減には自ずと限界が
ある。また合金元素を適切な範囲に調整しつつ添加する
必要がある。
化して疲労寿命を向上させるためには、素材の靭性向上
を図る必要がある。従来のばね用鋼では、弾性限を高め
るという観点から炭素含有量の比較的高い鋼が用いられ
てきたのであるが、素材の靭性向上を図るため、炭素量
を従来のばね用鋼の含有量から大幅に減少させることが
有効であることは厚板の結果から明らかである。但し、
引張強度を200kgf/mm2 レベル以上に高めるという観
点からすれば、炭素量を減少し過ぎると焼入れ焼戻し後
の強度不足を招くので、炭素量の低減には自ずと限界が
ある。また合金元素を適切な範囲に調整しつつ添加する
必要がある。
【0010】本発明者らは、靭性向上の観点から炭素の
適切な範囲として0.3〜0.5%を選び、この範囲に
おける各種合金元素量が焼入れ焼戻し後の強度および靭
性に与える影響について調査した。その結果、上記炭素
量の範囲において焼入性向上元素を多量に添加した場合
には、焼入れ焼戻し後の強度が逆に低下することが分か
った。これは合金元素量を増やすことにより、焼入れ焼
戻し後の残留オーステナイト量が増大して強度が低下す
るものと考えられる。この様な観点から、高強度ばねと
して必要な強度および靭性を確保するには、各合金元素
の添加割合を適切な範囲に調整するのは勿論であるが、
少なくとも下記(1) 式の関係を満足する必要がある。 550-333[C]-34[Mn]-20[Cr]-17[Ni]-11[Mo]≧300 (1) (但し、[元素]は各元素の含有%を示す)
適切な範囲として0.3〜0.5%を選び、この範囲に
おける各種合金元素量が焼入れ焼戻し後の強度および靭
性に与える影響について調査した。その結果、上記炭素
量の範囲において焼入性向上元素を多量に添加した場合
には、焼入れ焼戻し後の強度が逆に低下することが分か
った。これは合金元素量を増やすことにより、焼入れ焼
戻し後の残留オーステナイト量が増大して強度が低下す
るものと考えられる。この様な観点から、高強度ばねと
して必要な強度および靭性を確保するには、各合金元素
の添加割合を適切な範囲に調整するのは勿論であるが、
少なくとも下記(1) 式の関係を満足する必要がある。 550-333[C]-34[Mn]-20[Cr]-17[Ni]-11[Mo]≧300 (1) (但し、[元素]は各元素の含有%を示す)
【0011】一方、先に説明した様に引張り強度が20
0kgf/mm2 以上の高強度鋼になると腐食疲労特性が著し
く悪くなる。これは、高強度化に伴って傷などの欠陥に
対する感受性が敏感になるためと思われ、腐食環境下に
曝らすとばねの表面に孔食が生じ、これが亀裂発生の起
点となって折損等を起こす原因となる。その為、腐食環
境下に曝らされた場合でも表面に孔食を生じさせない
様、合金元素を適量添加する必要がある。そこで前述の
先願発明では、合金元素のうちCr,Ni,Si,Cr
の各含有量が下記(2) 式の関係を満たす様に調整し、そ
れにより、耐孔食性および腐食疲労特性の非常に良好な
ばね用鋼を得るものである。 50[Si]+25[Ni]+40[Cr]-100[C] ≧230 (2) (但し、[元素]は各元素の含有%を表す)
0kgf/mm2 以上の高強度鋼になると腐食疲労特性が著し
く悪くなる。これは、高強度化に伴って傷などの欠陥に
対する感受性が敏感になるためと思われ、腐食環境下に
曝らすとばねの表面に孔食が生じ、これが亀裂発生の起
点となって折損等を起こす原因となる。その為、腐食環
境下に曝らされた場合でも表面に孔食を生じさせない
様、合金元素を適量添加する必要がある。そこで前述の
先願発明では、合金元素のうちCr,Ni,Si,Cr
の各含有量が下記(2) 式の関係を満たす様に調整し、そ
れにより、耐孔食性および腐食疲労特性の非常に良好な
ばね用鋼を得るものである。 50[Si]+25[Ni]+40[Cr]-100[C] ≧230 (2) (但し、[元素]は各元素の含有%を表す)
【0012】本発明では、こうした先願発明の構成に加
え、更に他の添加元素としてLa,Ca,Ce,Wより
なる群から選択される少なくとも1種の元素を含有せし
め、それにより腐食疲労特性を一段と高めることに成功
したものである。また本発明においても、鋼を清浄化し
て不純介在物量を可及的に少なくすることは疲労特性の
向上に有効であり、特に酸化物系介在物として、被検面
積160mm2 において平均粒子径50μm以上の酸化物
系介在物を含まず、且つ平均粒子径20μm以上のもの
が10個未満に制限されたものは、非常に優れた耐疲労
特性を発揮する。ここで平均粒子径とは、酸化物系介在
物の長径と単径の平均値を意味し、また被検面とは、供
試鋼材断面における表層から3mmまでの領域をいう。次
に、本発明に係る高強度ばね用鋼における化学成分の限
定理由を説明する。 C:0.3〜0.5% Cは焼入れ焼戻し後の強度を高めると共に、腐食疲労特
性の要因である耐孔食性を高める上でも不可欠の元素で
あり、C含有量が0.3%未満では、焼入れ後のマルテ
ンサイトの硬さが低くなり過ぎ、焼入れ焼戻し後の強度
が不足する。また0.5 %を超えて過多に添加すると、焼
入れ焼戻し後の靭性が劣化するばかりでなく、希望する
疲労特性や腐食疲労特性が得られなくなる。
え、更に他の添加元素としてLa,Ca,Ce,Wより
なる群から選択される少なくとも1種の元素を含有せし
め、それにより腐食疲労特性を一段と高めることに成功
したものである。また本発明においても、鋼を清浄化し
て不純介在物量を可及的に少なくすることは疲労特性の
向上に有効であり、特に酸化物系介在物として、被検面
積160mm2 において平均粒子径50μm以上の酸化物
系介在物を含まず、且つ平均粒子径20μm以上のもの
が10個未満に制限されたものは、非常に優れた耐疲労
特性を発揮する。ここで平均粒子径とは、酸化物系介在
物の長径と単径の平均値を意味し、また被検面とは、供
試鋼材断面における表層から3mmまでの領域をいう。次
に、本発明に係る高強度ばね用鋼における化学成分の限
定理由を説明する。 C:0.3〜0.5% Cは焼入れ焼戻し後の強度を高めると共に、腐食疲労特
性の要因である耐孔食性を高める上でも不可欠の元素で
あり、C含有量が0.3%未満では、焼入れ後のマルテ
ンサイトの硬さが低くなり過ぎ、焼入れ焼戻し後の強度
が不足する。また0.5 %を超えて過多に添加すると、焼
入れ焼戻し後の靭性が劣化するばかりでなく、希望する
疲労特性や腐食疲労特性が得られなくなる。
【0013】Si:1〜4% Siは固溶強化元素として必要であり、1%未満ではマ
トリックスの強度が不十分になる。しかしながら4%を
超えて添加すると、焼入れ加熱時に炭化物の溶け込みが
不十分になり、高温に加熱しないと均一にオーステナイ
ト化しなくなって焼入れ焼戻し後の強度が低下するばか
りか、ばねにおける耐へたり特性も悪くなる。200Kg
f/mm2 以上の強度を安定して得るためのより好ましいS
i量は1.5〜3.5%の範囲である。
トリックスの強度が不十分になる。しかしながら4%を
超えて添加すると、焼入れ加熱時に炭化物の溶け込みが
不十分になり、高温に加熱しないと均一にオーステナイ
ト化しなくなって焼入れ焼戻し後の強度が低下するばか
りか、ばねにおける耐へたり特性も悪くなる。200Kg
f/mm2 以上の強度を安定して得るためのより好ましいS
i量は1.5〜3.5%の範囲である。
【0014】Mn:0.2%以上0.5%未満 Mnは焼入れ性向上元素として0.2%以上は必要であ
る。しかしMnは焼入れ焼戻し後の素材に対して水素透
過性を高め、その結果として腐食環境下での水素脆化を
促進させる。従って、水素脆化による粒界破壊の発生を
防止し疲労寿命の低下を防止するという観点から、0.
5%未満に抑える必要がある。
る。しかしMnは焼入れ焼戻し後の素材に対して水素透
過性を高め、その結果として腐食環境下での水素脆化を
促進させる。従って、水素脆化による粒界破壊の発生を
防止し疲労寿命の低下を防止するという観点から、0.
5%未満に抑える必要がある。
【0015】Ni:0.5〜4% Niは焼入れ焼戻し後の素材靭性を向上させ、且つ耐孔
食性を高める作用があり、更にはばね特性として重要な
耐へたり性を大幅に改善する作用があり、これらの作用
を有効に発揮させるには少なくとも0.5%以上含有さ
せなければならない。しかし4%を超えて含有させると
Ms点が低下し、残留オーステナイトの影響により所定
の引張強度が得られなくなる。尚、Niは高価な金属で
あるので、経済性を考慮してより好ましい含有量は0.
5〜2%の範囲である。
食性を高める作用があり、更にはばね特性として重要な
耐へたり性を大幅に改善する作用があり、これらの作用
を有効に発揮させるには少なくとも0.5%以上含有さ
せなければならない。しかし4%を超えて含有させると
Ms点が低下し、残留オーステナイトの影響により所定
の引張強度が得られなくなる。尚、Niは高価な金属で
あるので、経済性を考慮してより好ましい含有量は0.
5〜2%の範囲である。
【0016】Cr:0.3〜5% CrはMnと同様に焼入性向上に有効である。またCr
は耐熱性を改善する元素でもある。更に、ばね特性とし
て重要な耐へたり特性を大幅に改善することが種々の検
討から明らかになった。こうした効果は0.3%以上含
有させることによって有効に発揮されるが、多過ぎると
焼入れ焼戻し後の靭性が低下する傾向があるので、上限
は5%と定めた。良好な強度−延性バランスを得る意味
からより好ましいCr量は0.3〜3.5%の範囲であ
る。
は耐熱性を改善する元素でもある。更に、ばね特性とし
て重要な耐へたり特性を大幅に改善することが種々の検
討から明らかになった。こうした効果は0.3%以上含
有させることによって有効に発揮されるが、多過ぎると
焼入れ焼戻し後の靭性が低下する傾向があるので、上限
は5%と定めた。良好な強度−延性バランスを得る意味
からより好ましいCr量は0.3〜3.5%の範囲であ
る。
【0017】Mo:0.1〜2% Moは炭化物生成元素であり、焼戻し時に微細な合金炭
化物を析出させ、2次硬化を促進させることによって耐
へたり特性および耐疲労特性を向上させる。0.1%未
満ではその効果が不十分であり、2%でそれらの効果は
飽和するので、それ以上含有させることは無駄である。
化物を析出させ、2次硬化を促進させることによって耐
へたり特性および耐疲労特性を向上させる。0.1%未
満ではその効果が不十分であり、2%でそれらの効果は
飽和するので、それ以上含有させることは無駄である。
【0018】V:0.1〜0.5% Vは結晶粒度を微細化して耐力比を高め、耐へたり特性
を改善するのに有効である。この効果を有効に発揮させ
るには0.1 %以上の添加が必要である。しかしながら
0.5%を超えて添加すると、焼入れ加熱時にオーステ
ナイト中に固溶されない合金炭化物量が増大し、大きな
塊状物となって残存することから疲労寿命を低下させ
る。
を改善するのに有効である。この効果を有効に発揮させ
るには0.1 %以上の添加が必要である。しかしながら
0.5%を超えて添加すると、焼入れ加熱時にオーステ
ナイト中に固溶されない合金炭化物量が増大し、大きな
塊状物となって残存することから疲労寿命を低下させ
る。
【0019】La:0.001〜0.1%,Ca:0.
001〜0.1%,Ce:0.001〜0.1%,W
:0.01〜1%よりなる群から選択される少なくと
も1種の元素 本発明における最も特徴的な添加合金元素であり、これ
らはいずれも耐孔食性を高めるために欠くことのできな
い元素であって、目的達成のためにはこれらの1種もし
くは2種以上を規定量含有させなければならず、不足す
る場合は満足のいく耐食性並びに腐食疲労特性を確保す
ることができなくなる。しかしながらLaが規定量を超
えると、酸化物系介在物量が増大して靭性を悪化させる
と共に、製鋼時の炉壁の溶損が著しくなり、生産性に悪
影響を及ぼす様になるので、0.1%を上限とした。
001〜0.1%,Ce:0.001〜0.1%,W
:0.01〜1%よりなる群から選択される少なくと
も1種の元素 本発明における最も特徴的な添加合金元素であり、これ
らはいずれも耐孔食性を高めるために欠くことのできな
い元素であって、目的達成のためにはこれらの1種もし
くは2種以上を規定量含有させなければならず、不足す
る場合は満足のいく耐食性並びに腐食疲労特性を確保す
ることができなくなる。しかしながらLaが規定量を超
えると、酸化物系介在物量が増大して靭性を悪化させる
と共に、製鋼時の炉壁の溶損が著しくなり、生産性に悪
影響を及ぼす様になるので、0.1%を上限とした。
【0020】またCa量が0.1%を超える場合も、酸
化物系介在物量の増大によって靭性を悪化させると共に
炉壁の溶損が著しくなり、Ce量が0.1%を超える場
合も同様に酸化物系介在物量の増大によって靭性に悪影
響を及ぼす。また、W添加による耐孔食性改善効果は1
%で飽和するので、それ以上の添加は無駄である。
化物系介在物量の増大によって靭性を悪化させると共に
炉壁の溶損が著しくなり、Ce量が0.1%を超える場
合も同様に酸化物系介在物量の増大によって靭性に悪影
響を及ぼす。また、W添加による耐孔食性改善効果は1
%で飽和するので、それ以上の添加は無駄である。
【0021】本発明の高強度ばね用鋼は、以上の元素を
基本成分とし、残部鉄および不可避不純物からなるもの
であるが、必要に応じてNb,Cu,Al,Coの各元
素を1種もしくは2種以上含有させることによって、そ
の特性を一段と高めることが可能であり、それら元素を
含有させる時の好ましい含有量は下記の通りである。
基本成分とし、残部鉄および不可避不純物からなるもの
であるが、必要に応じてNb,Cu,Al,Coの各元
素を1種もしくは2種以上含有させることによって、そ
の特性を一段と高めることが可能であり、それら元素を
含有させる時の好ましい含有量は下記の通りである。
【0022】Nb:0.05〜0.5% NbはVと同様に結晶粒度を微細化して耐力比を向上さ
せ、耐へたり性を改善する作用があり、その効果は0.
05%以上含有させることによって有効に発揮される。
しかし0.5%を超えて含有させてもそれ以上の効果は
得られず、むしろ焼入れ加熱時に粗大な炭窒化物が生成
して耐疲労寿命を劣化させる。
せ、耐へたり性を改善する作用があり、その効果は0.
05%以上含有させることによって有効に発揮される。
しかし0.5%を超えて含有させてもそれ以上の効果は
得られず、むしろ焼入れ加熱時に粗大な炭窒化物が生成
して耐疲労寿命を劣化させる。
【0023】Cu:0.1〜1% Cuは電気化学的に鉄より貴な元素であり、腐食環境中
で全面腐食を促進させることによって耐孔食性を高める
作用がある。こうした作用は0.1%以上の添加で有効
に発揮されるが、1%を超えて含有させてもそれ以上の
効果は得られず、むしろ熱間圧延時に素材の脆化を引き
起こす恐れが生じてくる。
で全面腐食を促進させることによって耐孔食性を高める
作用がある。こうした作用は0.1%以上の添加で有効
に発揮されるが、1%を超えて含有させてもそれ以上の
効果は得られず、むしろ熱間圧延時に素材の脆化を引き
起こす恐れが生じてくる。
【0024】Al:0.01〜0.1% Alは脱酸を容易にする元素であり、その効果は0.0
1%以上の添加によって有効に発揮される。しかし、
0.1%を超えて添加するとAl2 O3 の粗大介在物を
生成して耐疲労特性を低下させる。
1%以上の添加によって有効に発揮される。しかし、
0.1%を超えて添加するとAl2 O3 の粗大介在物を
生成して耐疲労特性を低下させる。
【0025】Co:0.1〜5% Coは固溶強化元素であり、且つ靭性も劣化させないと
いう特性があり、更には耐食性を高める作用も有してお
り、それらの作用は0.1%以上、より好ましくは1%
以上含有させることによって有効に発揮される。しかし
高価な元素であるため5%を一応の上限とした。また不
可避不純物として混入してくるO、N、P、Sは、非金
属介在物となって強度や疲労特性あるいは水素脆性を悪
化させるのでできるだけ少なく抑えることが好ましい
が、下記の量であれば実質的な障害は生じない。
いう特性があり、更には耐食性を高める作用も有してお
り、それらの作用は0.1%以上、より好ましくは1%
以上含有させることによって有効に発揮される。しかし
高価な元素であるため5%を一応の上限とした。また不
可避不純物として混入してくるO、N、P、Sは、非金
属介在物となって強度や疲労特性あるいは水素脆性を悪
化させるのでできるだけ少なく抑えることが好ましい
が、下記の量であれば実質的な障害は生じない。
【0026】O:15ppm 以下、N:100ppm 以下 Oは、疲労破壊の起点となる酸化物系介在物(特にAl
2 O3 )を生成して強度劣化の原因となるので、より高
強度化するには15ppm 以下、より好ましくは10ppm
以下に抑えることが望まれる。またNは、焼入れ焼戻し
後の延性や靭性を低下させるため100ppm 以下に抑え
るのがよい。
2 O3 )を生成して強度劣化の原因となるので、より高
強度化するには15ppm 以下、より好ましくは10ppm
以下に抑えることが望まれる。またNは、焼入れ焼戻し
後の延性や靭性を低下させるため100ppm 以下に抑え
るのがよい。
【0027】P:100ppm 以下,S:100ppm 以下 Pは粒界偏析を起こして素材を脆化させる元素であり、
特に水素脆化を助長し易いため、Pの含有量が多くなる
とその危険度が増大してくる。従ってより高強度化する
には、Pを100ppm 以下に抑えることが望まれる。ま
た、SもMnS系介在物等の生成により素材を脆化させ
る不純元素であり、100ppm 以下に抑えることが望ま
れる。
特に水素脆化を助長し易いため、Pの含有量が多くなる
とその危険度が増大してくる。従ってより高強度化する
には、Pを100ppm 以下に抑えることが望まれる。ま
た、SもMnS系介在物等の生成により素材を脆化させ
る不純元素であり、100ppm 以下に抑えることが望ま
れる。
【0028】ところで高強度ばねを製造するに当たって
は、上記の様な成分組成範囲および前記(1) 式や(2) 式
の関係を満足するばね用鋼を用い、焼入時の冷却終了温
度を50℃以下にし、引き続き焼戻し処理するのがよ
い。これによって希望する高強度・高靭性のばねを得る
ことができる。
は、上記の様な成分組成範囲および前記(1) 式や(2) 式
の関係を満足するばね用鋼を用い、焼入時の冷却終了温
度を50℃以下にし、引き続き焼戻し処理するのがよ
い。これによって希望する高強度・高靭性のばねを得る
ことができる。
【0029】尚通常のばね鋼の焼入れは、焼割れ発生防
止という観点から油焼入れが採用されており、油の粘性
等を考慮してその温度は70〜80℃とされており、通
常の油焼入れでは焼入れ時の冷却終了温度を50℃以下
にすることは難しい。しかしながら、焼入れ初期を油で
冷却し500℃以下の温度範囲を水冷する方法、或は水
に水溶性焼入れ剤等を添加することによって焼割れを防
ぐ方法等を採用することによって、上記の様な焼入れ条
件を達成することができる。
止という観点から油焼入れが採用されており、油の粘性
等を考慮してその温度は70〜80℃とされており、通
常の油焼入れでは焼入れ時の冷却終了温度を50℃以下
にすることは難しい。しかしながら、焼入れ初期を油で
冷却し500℃以下の温度範囲を水冷する方法、或は水
に水溶性焼入れ剤等を添加することによって焼割れを防
ぐ方法等を採用することによって、上記の様な焼入れ条
件を達成することができる。
【0030】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更
して実施することはいずれも本発明の技術的範囲に含ま
れるものである。
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更
して実施することはいずれも本発明の技術的範囲に含ま
れるものである。
【0031】
【実施例】表1、2に示すNo.1〜31の化学成分鋼を
溶製した後、鍛造で115mmの角ビレットを製作し、線
材圧延によって直径11mmの線材まで圧延した。焼鈍お
よび伸線加工を施した後、焼入れ焼戻し処理を行なっ
た。このとき焼入れ加熱温度は950℃として油焼入れ
を行ない、焼戻し温度は400℃とした。熱処理後のサ
ンプルから引張り試験片、残留剪断歪測定試験片、回転
曲げ疲労試験片および腐食試験片を準備し、夫々の試験
に供した。残留剪断歪測定試験、回転曲げ疲労試験およ
び腐食試験の各条件は下記の通りである。
溶製した後、鍛造で115mmの角ビレットを製作し、線
材圧延によって直径11mmの線材まで圧延した。焼鈍お
よび伸線加工を施した後、焼入れ焼戻し処理を行なっ
た。このとき焼入れ加熱温度は950℃として油焼入れ
を行ない、焼戻し温度は400℃とした。熱処理後のサ
ンプルから引張り試験片、残留剪断歪測定試験片、回転
曲げ疲労試験片および腐食試験片を準備し、夫々の試験
に供した。残留剪断歪測定試験、回転曲げ疲労試験およ
び腐食試験の各条件は下記の通りである。
【0032】[残留剪断歪測定試験] (ばね諸元) 材料の線径 :9.0mm コイル平均径:85mm 総巻き数 :7巻 有効巻き数 :5.5巻 自由高さ :320mm (セッチング応力) 最大剪断応力:10kgf/mm2 (試験条件) 締付け応力:130kgf/mm2 試験温度 :80℃ 試験時間 :72時間 (残留剪断歪の算出方法) τΔp=8DΔp/πd3 (3) τ=Gγ (4) (3) ,(4) 式より γΔp=τΔp/G×100 但し、τΔp:荷重損失量に相当するねじり応力(kgf/m
m2) d :経径(mm) D :コイル平均径 Δp:荷重損失量 G :横弾性係数(kgf/mm2) (8000kgf/mm2 を採
用)
m2) d :経径(mm) D :コイル平均径 Δp:荷重損失量 G :横弾性係数(kgf/mm2) (8000kgf/mm2 を採
用)
【0033】[回転曲げ疲労試験] (試験条件) 試験温度:室温 表面状態:ショットピーニング肌 (疲労限の判定) 107 回を2度クリヤーしたときの試験応力 [酸化物系介在物測定方法] 対象材:直径11mmの圧延材の縦断面 測定面積:160mm2 (表層から3mmまで) 測定装置:光学顕微鏡 平均粒子径:(長径+短径)/2 [腐食試験方法] 腐食条件:1サイクル 塩水噴霧×8hr→35℃,60
%RH×16hr サイクル数:14サイクル 孔食深さ測定法:レーザー顕微鏡による焦点深度法 試験結果を前記(1) 式および(2) 式の値、並びに酸化物
系介在物のうち被検面積160mm2 内における平均粒子
径20μm 以上のものの数と共に表3、表4に示す。
%RH×16hr サイクル数:14サイクル 孔食深さ測定法:レーザー顕微鏡による焦点深度法 試験結果を前記(1) 式および(2) 式の値、並びに酸化物
系介在物のうち被検面積160mm2 内における平均粒子
径20μm 以上のものの数と共に表3、表4に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】表1〜4より次の様に考察することができ
る。 C量が0.3%未満のもの(No. 21)では、強度不足で
200kgf/mm2 以上の引張強度が得られない。一方、C
量が0.5%を超えるもの(No. 22)では、引張強度
は200kgf/mm2 となるが、絞り値(RA)が大幅に悪
くなる。またSi,Mn,Ni,Cr,Moについても
夫々の含有量が不足するもの(No. 23,24,26,
28,29,30)でも、やはり200kgf/mm2 以上の
引張強度が得られない。またNo. 31のデータからも明
らかである様に、各元素量が規定要件を満たすものであ
っても、(1) 式の要件を欠くものでは焼入れが不十分と
なって熱処理後の強度が十分に上がらない。
る。 C量が0.3%未満のもの(No. 21)では、強度不足で
200kgf/mm2 以上の引張強度が得られない。一方、C
量が0.5%を超えるもの(No. 22)では、引張強度
は200kgf/mm2 となるが、絞り値(RA)が大幅に悪
くなる。またSi,Mn,Ni,Cr,Moについても
夫々の含有量が不足するもの(No. 23,24,26,
28,29,30)でも、やはり200kgf/mm2 以上の
引張強度が得られない。またNo. 31のデータからも明
らかである様に、各元素量が規定要件を満たすものであ
っても、(1) 式の要件を欠くものでは焼入れが不十分と
なって熱処理後の強度が十分に上がらない。
【0039】耐へたり性の指標となる残留剪断歪の値
を比較すると、本発明鋼は比較鋼に比べて高強度である
にもかかわらず優れた耐へたり特性を有していることが
分かる。またNo. 6に見られる様に、鋼中に適量のNb
を含有させると残留剪断歪が一段と小さくなり、耐へた
り性の向上に有効であることが分かる。
を比較すると、本発明鋼は比較鋼に比べて高強度である
にもかかわらず優れた耐へたり特性を有していることが
分かる。またNo. 6に見られる様に、鋼中に適量のNb
を含有させると残留剪断歪が一段と小さくなり、耐へた
り性の向上に有効であることが分かる。
【0040】回転曲げ疲労特性(疲労限:kgf/mm2 )
については、鋼中に存在する粗大な酸化物系介在物の影
響が顕著に表われている。即ち疲労強度は母材強度が高
くなるにつれて増加する傾向があるが引張強度200kg
f/mm2 レベル以上の高強度のものになると、酸化物系介
在物のうち被検面積160mm2 内における平均粒子径2
0μm以上の粗大物の数によって疲労特性は著しく変わ
り、その数が10個以上になると(No. 16,17,1
8,19,21,22,23,28,29,30)疲労
強度は明らかに悪くなっている。また平均粒子径が50
μmを超えるより粗大な酸化物系介在物は一層疲労亀裂
の起点となり易く、疲労特性を著しく劣化させることも
確認している。
については、鋼中に存在する粗大な酸化物系介在物の影
響が顕著に表われている。即ち疲労強度は母材強度が高
くなるにつれて増加する傾向があるが引張強度200kg
f/mm2 レベル以上の高強度のものになると、酸化物系介
在物のうち被検面積160mm2 内における平均粒子径2
0μm以上の粗大物の数によって疲労特性は著しく変わ
り、その数が10個以上になると(No. 16,17,1
8,19,21,22,23,28,29,30)疲労
強度は明らかに悪くなっている。また平均粒子径が50
μmを超えるより粗大な酸化物系介在物は一層疲労亀裂
の起点となり易く、疲労特性を著しく劣化させることも
確認している。
【0041】尚図1は表1〜4におけるNo. 1の本発明
鋼とNo. 18,19の比較鋼(平均粒子径20μm以上
の酸化物系介在物の個数を変えたもの)についての回転
曲げ疲労試験結果をグラフ化して示したもの、図2〜4
は同じくNo. 1,18,19の各鋼における酸化物系介
在物の平均粒子径とその分布を示したものであり、これ
らの図からも、粗大な酸化物系介在物が存在することに
よって、疲労特性に顕著な悪影響が表われることが分か
る。
鋼とNo. 18,19の比較鋼(平均粒子径20μm以上
の酸化物系介在物の個数を変えたもの)についての回転
曲げ疲労試験結果をグラフ化して示したもの、図2〜4
は同じくNo. 1,18,19の各鋼における酸化物系介
在物の平均粒子径とその分布を示したものであり、これ
らの図からも、粗大な酸化物系介在物が存在することに
よって、疲労特性に顕著な悪影響が表われることが分か
る。
【0042】次に腐食試験結果については、La,C
a,Ce,Wの添加効果が端的に表われている。即ちN
o. 1〜4の鋼種は、No. 20の比較鋼に対して適量の
La,Ca,Ce,Wを夫々添加したものであり、孔食
深さが一段と小さくなっていることが分かる。更に、前
記(2) 式の要件を満たす様に成分調整を行なったものも
の(No. 9,10,11,12,13)は一段と優れた
耐孔食性を示しており、耐腐食特性に優れたものである
ことが分かる。
a,Ce,Wの添加効果が端的に表われている。即ちN
o. 1〜4の鋼種は、No. 20の比較鋼に対して適量の
La,Ca,Ce,Wを夫々添加したものであり、孔食
深さが一段と小さくなっていることが分かる。更に、前
記(2) 式の要件を満たす様に成分調整を行なったものも
の(No. 9,10,11,12,13)は一段と優れた
耐孔食性を示しており、耐腐食特性に優れたものである
ことが分かる。
【0043】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、20
0kgf/mm2レベル以上の引張強度を示し、しかも耐疲労特
性、耐へたり特性および耐腐食疲労特性の非常に良好な
高強度ばねを得ることのできるばね用鋼を提供し得るこ
とになった。
0kgf/mm2レベル以上の引張強度を示し、しかも耐疲労特
性、耐へたり特性および耐腐食疲労特性の非常に良好な
高強度ばねを得ることのできるばね用鋼を提供し得るこ
とになった。
【図1】実験例で得たばね用鋼の回転曲げ試験結果を示
すグラフである。
すグラフである。
【図2】実験No.1のばね用鋼に含まれる酸化物系介
在物の平均粒子径とその分布を示すグラフである。
在物の平均粒子径とその分布を示すグラフである。
【図3】実験No.18のばね用鋼に含まれる酸化物系
介在物の平均粒子径とその分布を示すグラフである。
介在物の平均粒子径とその分布を示すグラフである。
【図4】実験No.19のばね用鋼に含まれる酸化物系
介在物の平均粒子径とその分布を示すグラフである。
介在物の平均粒子径とその分布を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永松 孝彦 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所神戸製鉄所内 (72)発明者 下津佐 正貴 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所神戸製鉄所内
Claims (4)
- 【請求項1】 C :0.3〜0.5%(重量%の意味、以下同じ) Si:1〜4% Mn:0.2%以上0.5%未満 Ni:0.5〜4% Cr:0.3〜5% Mo:0.1〜2% V :0.1〜0.5%を夫々含有し、 550-333[C]-34[Mn]-20[Cr]-17[Ni]-11[Mo]≧300 (但し、[元素]は各元素の重量%を表す)の関係を満
足すると共に、 La:0.001〜0.1% Ca:0.001〜0.1% Ce:0.001〜0.1% W :0.01〜1%よりなる群から選択される少なく
とも1種の元素を含有し、残部鉄および不可避不純物か
らなり、且つ鋼材の中心を含む圧延方向断面における表
面から3mmまでの被検面積160mm2 内において平均
粒子径50μm以上の酸化物系介在物を含まず、平均粒
子径20μm以上の酸化物系介在物が10個未満である
ことを特徴とする疲労強度の優れた高強度ばね用鋼。 - 【請求項2】C :0.3〜0.5% Si:1〜4% Mn:0.2%以上0.5%未満 Ni:0.5〜4% Cr:0.3〜5% Mo:0.1〜2% V :0.1〜0.5%を夫々含有する他、 Nb:0.05〜0.5% Cu:0.1〜1% Al:0.01〜0.1% Co:0.1〜5%よりなる群から選択される少なくと
も1種の元素を含有し、 550-333[C]-34[Mn]-20[Cr]-17[Ni]-11[Mo]≧300 (但し、[元素]は各元素の重量%を表す)の関係を満
足すると共に、更に La:0.001〜0.1% Ca:0.001〜0.1% Ce:0.001〜0.1% W :0.01〜1%よりなる群から選択される少なく
とも1種の元素を含有し、残部鉄および不可避不純物か
らなり、且つ鋼材の中心を含む圧延方向断面における表
面から3mmまでの被検面積160mm2 内において平均
粒子径50μm以上の酸化物系介在物を含まず、平均粒
子径20μm以上の酸化物系介在物が10個以下である
ことを特徴とする疲労強度の優れた高強度ばね用鋼。 - 【請求項3】 酸素が15ppm 以下、窒素が100ppm
以下、燐が100ppm 以下、硫黄が100ppm 以下に制
限されたものである請求項1または2に記載の高強度ば
ね用鋼。 - 【請求項4】 C、Si、NiおよびCrの各含有量が 50[Si]+25[Ni]+40[Cr]-100[C] ≧230 (但し、[元素]は各元素の重量%を表す)の関係を満
たし、耐食性の改善されたものである請求項1〜3のい
ずれかに記載の高強度ばね用鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30438893A JPH07157846A (ja) | 1993-12-03 | 1993-12-03 | 高強度ばね用鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30438893A JPH07157846A (ja) | 1993-12-03 | 1993-12-03 | 高強度ばね用鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07157846A true JPH07157846A (ja) | 1995-06-20 |
Family
ID=17932423
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP30438893A Withdrawn JPH07157846A (ja) | 1993-12-03 | 1993-12-03 | 高強度ばね用鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07157846A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100325706B1 (ko) * | 1997-12-24 | 2002-06-28 | 이구택 | 저합금형고응력스프링용강및그제조방법 |
WO2007114490A1 (ja) * | 2006-03-31 | 2007-10-11 | Nippon Steel Corporation | 高強度ばね用熱処理鋼 |
CN104805381A (zh) * | 2015-05-14 | 2015-07-29 | 贾现书 | 中铬多元素自润滑合金钢及其制备方法 |
RU2617070C1 (ru) * | 2016-04-25 | 2017-04-19 | Федеральное государственное бюджетное учреждение науки Институт металлургии и материаловедения им. А.А. Байкова Российской академии наук (ИМЕТ РАН) | Высокопрочная низколегированная конструкционная сталь |
CN110055459A (zh) * | 2019-04-22 | 2019-07-26 | 日照市产品质量监督检验所 | 中合金超高强韧稀土钢及其制备方法 |
CN115335545A (zh) * | 2020-02-21 | 2022-11-11 | 日本制铁株式会社 | 阀门弹簧 |
-
1993
- 1993-12-03 JP JP30438893A patent/JPH07157846A/ja not_active Withdrawn
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100325706B1 (ko) * | 1997-12-24 | 2002-06-28 | 이구택 | 저합금형고응력스프링용강및그제조방법 |
WO2007114490A1 (ja) * | 2006-03-31 | 2007-10-11 | Nippon Steel Corporation | 高強度ばね用熱処理鋼 |
US8845825B2 (en) | 2006-03-31 | 2014-09-30 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | High strength spring-use heat treated steel |
CN104805381A (zh) * | 2015-05-14 | 2015-07-29 | 贾现书 | 中铬多元素自润滑合金钢及其制备方法 |
RU2617070C1 (ru) * | 2016-04-25 | 2017-04-19 | Федеральное государственное бюджетное учреждение науки Институт металлургии и материаловедения им. А.А. Байкова Российской академии наук (ИМЕТ РАН) | Высокопрочная низколегированная конструкционная сталь |
CN110055459A (zh) * | 2019-04-22 | 2019-07-26 | 日照市产品质量监督检验所 | 中合金超高强韧稀土钢及其制备方法 |
CN110055459B (zh) * | 2019-04-22 | 2021-06-11 | 日照市产品质量监督检验所 | 中合金超高强韧稀土钢及其制备方法 |
CN115335545A (zh) * | 2020-02-21 | 2022-11-11 | 日本制铁株式会社 | 阀门弹簧 |
CN115335545B (zh) * | 2020-02-21 | 2023-08-11 | 日本制铁株式会社 | 阀门弹簧 |
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