JP3401473B2 - 凹凸を有する立体繊維構造物 - Google Patents

凹凸を有する立体繊維構造物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は凹凸を有する立体繊
維構造物に関し、更に詳しくは発汗時などのベタツキや
不快感を解消した凹凸を有する立体繊維構造物に関す
る。
【0002】
【従来の技術】表裏の地組織とそれを連結する連結糸よ
りなる立体繊維構造物は、その優れた反発性、クッショ
ン性、通気性などから、多岐の分野にわたって利用され
ている。衣料分野においても例外ではなく、一般衣料や
スポーツ衣料、インナーに用いられ、また、自動車シー
トや椅子、家具などのシート材料などとしても広く利用
されている。この場合、繊維構造物の肌側の表面に凹凸
を設けることで、肌に接触する面積が小さくなり、更に
通気性や、肌触りなどを向上させることができる。
【0003】織編物の表面に凹凸を形成する方法はいく
つか提案されており、例えば特公平1−40135号公
報では、織編物に高圧液流を打ち当ててウネ状スジ模様
を形成させている。また特開平4−146246号公報
では、編地をカレンダーロール等で加熱プレスする事に
より柄模様を形成させている。その他にも熱収縮糸を用
いて熱処理により立体模様を形成する方法なども提案さ
れている。(特開平4−222260号、特開平4−3
27259号) しかしながら、高圧液流によるウネ形成方法は、そのウ
ネ形状を長期間保持することが難しく、また加熱プレス
による方法は、編地がつぶれたり、表面が硬化する事に
より風合いが悪くなる。熱収縮糸を用いる方法では、高
低差が少なく、凹凸感に乏しい物になってしまうという
問題があった。
【0004】この様な後処理によるのではなく、編地を
編成するときに太さの異なる2本の糸を用いて凹凸を形
成させる方法もある。特開平4−41751号公報で
は、この方法により凹凸を有する吸水性編地を得てい
る。しかしながら、この方法は水や汚れの拭き取り性向
上を目的としたタオルやフキンを得るための方法であ
り、我々が目的とする、特に夏季におけるムレや発汗時
のベタツキなどによる不快感を解消するための通気性、
肌触りを達成するに十分ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を
解決し、特にインナーとして適する通気性、肌触りを持
ち、発汗時におけるベタツキ感、ムレを解消した凹凸を
有する立体繊維構造物を提供することを目的とし、ま
た、自動車シート、椅子、家具として使用する場合も、
軽量、高空隙で高圧縮弾性、高通気性、柔らかい肌触り
を持ち、特に長時間着座したときにおけるムレ、ベタツ
キ感を解消した凹凸を有する快適構造の立体繊維構造物
を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、表裏の地組織
と、地組織を連結する連結糸からなる立体繊維構造物に
おいて、表裏少なくとも一面の地組織を構成する糸条が
トータルデシテックス数比で1:2〜1:6を満たす太
さの異なる2種からなり、且つ該糸条の振り巾が1:2
〜1:6を満たすことを特徴とする凹凸を有する立体繊
維構造物である。その太いトータルデシテックス数を持
つ糸条の振り巾が、細いトータルデシテックス数を持つ
糸条の振り巾以上であることが好ましい条件である。さ
らに本発明の凹凸を有する立体繊維構造物は、凹部の表
面積が凸部1に対して1〜5であり、糸条のトータルデ
シテックス数が20〜660デシテックスであること、
その糸条の振り巾が1〜6針であることが好ましい。
【0007】本発明は、図1に示すような6枚筬ダブル
ラッセル機を使用して編成することができる。その場
合、筬L1及び筬L2は表面(裏面)の地組織を、筬L
5、筬L6は裏面(表面)の地組織を形成する。これら
表裏の地組織を筬L3及び筬L4が連結して立体繊維構
造物を形成する。この筬L5、L6(あるいはL1、L
2)の糸条のどちらか一方の配列を変えることで凹凸を
形成し、さらに糸条の太さ、振り巾を変えることにより
本発明は達成されるわけである。
【0008】表裏地組織や連結糸の素材は特に限定され
るものではなく、用途に応じて選択すればよい。肌触り
の点から木綿100%を使用しても良いが、立体的な例
えばブラジャーカップ材とした場合などは、保型性の点
から100%ポリエステルやナイロン及びそれらの割合
が高い混繊糸の素材が使用されることが好ましい。
【0009】ダブルラッセルに代表される本発明におけ
る立体繊維構造物は、表裏地組織と、それらを連結する
連結糸からなっており、繊維構造内部に空隙を有してい
ることから、通気性の非常によいものである。そしてさ
らにその表面に凹凸を設けることで、肌に密着しにくく
なり、通気性は向上し、ムレ、ベタツキなどを解消する
効果がより一層顕著となる。凹凸を形成させるのは、表
裏の地組織のうち、どちらか一面でよく、衣料とした場
合、少なくとも肌側(肌に接する面)を凹凸構造とする
ことが必須である。また両面に凹凸を形成し、立体模様
とすれば意匠性を付与することもできる。自動車シー
ト、椅子、家具などに使用した場合も同様で、肌側(着
座面)を凹凸構造とする。また、凹凸部に特殊プリント
加工をほどこすことで、様々な立体的な意匠性を付与す
ることも可能になる。例えばこの凹凸表面に特殊なプリ
ント、たとえばラテックス系の艶の有る樹脂をコーティ
ングするラバープリントや発泡樹脂層で柄を構成する発
泡プリント、金属粉末や雲母などの光り物を表面に見せ
るアクセントプリントなどがある。いずれの場合も凹凸
表面に特殊プリント手法を付与することで立体的な柄表
現を得ることができる。
【0010】地組織を構成する糸条の太さの比は、トー
タルデシテックス数比で1:2〜1:6であり、同じ糸
の太さでは我々が目的とする高低差を有する凹凸を得る
ことはできず、1:6以上の比とすると通気性や肌触り
などが悪くなり好ましくない。またトータルデシテック
ス数は、厚みや通気性、剛性の点から20〜660デシ
テックスとするのが好ましい。さらに編み機のゲージ数
は、同じ理由から16〜30ゲージ/インチとすること
が好ましく、糸の太さはこのゲージ数を考慮して20〜
660デシテックスの範囲内で選択すればよい。
【0011】しかし糸条の太さの違いだけでは凹凸の表
現に限界があり、高低差の大きい凹凸を得ようとして
も、上記のように厚みや通気性、剛性または編み機のゲ
ージ数などにより、糸条の太さは制限されてしまう。そ
こでこの糸条の振り巾を変化させることで、より多様な
凹凸を形成させることを本発明の特徴としている。つま
り、糸条の振り巾を大きくすると、その部分において複
数の糸条が重なることになり、この重なる糸条の数は振
り巾を大きくすればするほど多くなる。そして原糸が複
数重なった部分は盛り上がり、凸部が形成される。当
然、重なった糸条の数が多いほど凸部の高さは高くな
る。この様に糸条の振り巾を変えることによっても凹凸
を表現することができるのである。
【0012】その糸条の振り巾比は1:2〜1:6、振
り巾は6針までとすることが好ましく、特に3〜4針ま
でとすることが好ましい。これ以上の振り巾比にした
り、振り巾を6針以上とすると、立体繊維構造物自体が
重くなり好ましくない。このとき太い方の原糸の振り巾
を大きくすれば、より高低差のある凹凸を得ることがで
き好ましい。このように地組織を構成する糸条の太さ、
振り巾を変化させることで、表面凹凸構造の凸部の高さ
が設定される。凹凸部の高低差は0.2mm以上とする
ことが好ましく、それ以下では凹凸を形成したことによ
る効果はあまり見られない。
【0013】凹凸の形状としては特に限定されず、地組
織の配列を変化させることで、リブ、ドット、市松模様
などとすることができ、用途や意匠性などを考慮した形
状とすればよい。多量に汗をかく部分や夏季に用いられ
る場合などは、水分の流れをつくり、はけを良くするリ
ブ形状が好ましく用いられる。
【0014】このように表面を凹凸としたことで、肌に
密着する面積が小さくなり、ベタツキ感が抑えられる。
さらに肌と繊維の間に新たな空隙が生じるため、通気性
がより向上する効果をもたらす。従って、肌に密着する
面積はできるだけ小さい方がよいが、発汗などによる水
分を吸い上げる能力を考慮すると凹部の表面積比は凸部
1に対して1〜5程度が好ましい。この凹凸の面積比
は、地組織を形成する2枚の筬のどちらか一方の配列に
より変化させることができる。
【0015】本発明の凹凸を有する立体繊維構造物は、
衣料分野、特にインナー、ブラジャーカップ材、水着、
肩パットだけでなく、その優れた通気性や肌触り、クッ
ション性を生かしてシーツなどの寝装品や自動車シー
ト、椅子、家具などに用いることができ、その他にも広
い用途に応用可能である。また衣料に用いる場合は、表
裏地組織を連結する連結糸にマルチフィラメント、特に
単糸あたり5〜10デシテックス程度のマルチフィラメ
ントを用いると、連結糸が地組織の隙間から表出して肌
を刺激することが抑えられるためより好ましい。
【0016】
【実施例】編機:カールマイヤー社製ダブルラッセル編
機RD6PLM−22Gを使用した。
【0017】評価法 <通気性>KES通気度抵抗値より、以下の評価基準に
従って評価した。 ◎: 〜0.03(kpa’s/m) ○: 0.03〜0.05 △: 0.05〜0.08 ×: 0.08〜
【0018】<吸水性>JIS L−1096 B(バ
イレック法)により、以下の評価基準に従って評価し
た。 ◎: 150〜 (mm) ○: 100〜150 △: 50〜100 ×: 〜 50
【0019】<着用感>実施例、比較例で作成した立体
繊維構造物を用いてランニングシャツを縫製し、10人
に着用してもらい、軽いランニングを20分間行った。
その後、肌触りやベタツキ感などを総合的に判断しても
らい、以下の評価基準に従って評価した。一番人数の多
かった評価を立体繊維構造物の評価とした。 ◎: 大変快適である ○: 快適である △: やや不快である ×: 不快である
【0020】<外観変化>実施例、比較例で作成した立
体繊維構造物を用いて、JIS L−1096103に
従い洗濯50回処理後、外観変化を以下の評価基準に従
って評価した。 ◎: 変化無し ○: 若干シワあり △: シワあり ×: シワ、形状崩れあり
【0021】<着座感>実施例、比較例で作成した立体
繊維構造物を用いて座席シートを作成し、10人に着座
してもらい1時間後、肌触りや長時間着座したことによ
るベタツキ感などを総合的に判断してもらい、以下の評
価基準に従って評価した。一番人数の多かった評価を立
体繊維構造物の評価とした。 ◎: 大変快適である ○: 快適である △: やや不快である ×: 不快である
【0022】
【実施例1】図2に示した設計に基づき、立体繊維構造
物を作成した。凹凸はリブ形状とした。得られた立体繊
維構造物を190℃で1分間プレセットした後、130
℃にて染色、乾燥し、150℃で1分間仕上げセットし
て、全厚3.2mm、編密度45コース/インチ、25
ウェール/インチの立体繊維構造物を得た。得られた立
体繊維構造物について上記評価法に従い評価した。結果
を表1に示す。
【0023】
【実施例2】図3に示した設計に基づき、立体繊維構造
物を作成した。凹凸はリブ形状とした。得られた立体繊
維構造物を190℃で1分間プレセットした後、130
℃にて染色、乾燥し、150℃で1分間仕上げセットし
て、全厚3.0mm、編密度44コース/インチ、25
ウェール/インチの立体繊維構造物を得た。得られた立
体繊維構造物について上記評価法に従い評価した。結果
を表1に示す。
【0024】
【0025】
【実施例3】図4に示した設計に基づき、立体繊維構造
物を作成した。凹凸はリブ形状とした。得られた立体繊
維構造物を190℃で1分間プレセットした後、130
℃にて染色、乾燥し、150℃で1分間仕上げセットし
て、全厚4.0mm、編密度42コース/インチ、25
ウェール/インチの立体繊維構造物を得た。得られた立
体繊維構造物について上記評価法に従い評価した。結果
を表1に示す。
【0026】
【実施例4】実施例で得られた立体繊維構造物にアク
リル樹脂 30部(大日本インキ化学工業:ボンコート
350)、酢酸ビニル・エチレン樹脂 40部(大日本
インキ化学工業株式会社:エバティックEP−1)、発
泡剤 13部(松本油脂製薬株式会社:マツモトマイク
ロスフェアーF−100)、粘度調整剤 3部(第一工
業製薬株式会社:ファインガムHE)、水性顔料 10
部(東洋インキ株式会社:ブラックK−7)、水 4部
を加えてトータル100部とした。粘度は20,000
cps(B型粘度計:No4×12rpm)であった。
上記処方にてロータリースクリーンプリント機を用いて
発泡プリントを実施し、乾燥、キュアリングの工程を経
て立体繊維構造物を得た。付着量は、80g/m2であ
った。得られた立体繊維構造物について上記評価法に従
い評価した。結果を表1に示す。またこの立体繊維構造
物は、より立体的な柄表現を有し、意匠性に優れたもの
であった。
【0027】
【比較例1】図に示した設計に基づき、立体繊維構造
物を作成した。凹凸はリブ形状とした。得られた立体繊
維構造物を190℃で1分間プレセットした後、130
℃にて染色、乾燥し、150℃で1分間仕上げセットし
て、全厚2.9mm、編密度45コース/インチ、26
ウェール/インチの立体繊維構造物を得た。得られた立
体繊維構造物について上記評価法に従い評価した。結果
を表1に示す。
【0028】
【比較例2】図に示した設計に基づき、立体繊維構造
物を作成した。凹凸はリブ形状とした。得られた立体繊
維構造物を190℃で1分間プレセットした後、130
℃にて染色、乾燥し、150℃で1分間仕上げセットし
て、全厚3.2mm、編密度44コース/インチ、25
ウェール/インチの立体繊維構造物を得た。得られた立
体繊維構造物について上記評価法に従い評価した。結果
を表1に示す。
【0029】
【比較例3】比較例2で得られた立体繊維構造物にアク
リル樹脂 30部(大日本インキ化学工業:ボンコート
350)、酢酸ビニル・エチレン樹脂 40部(大日本
インキ化学工業株式会社:エバティックEP−1)、発
泡剤 13部(松本油脂製薬株式会社:マツモトマイク
ロスフェアーF−100)、粘度調整剤 3部(第一工
業製薬株式会社:ファインガムHE)、水性顔料 10
部(東洋インキ株式会社:ブラックK−7)、水 4部
を加えてトータル100部とした。粘度は20,000
cps(B型粘度計:No4×12rpm)であった。上
記処方にてロータリースクリーンプリント機を用いて発
泡プリントを実施し、乾燥、キュアリングの工程を経て
立体繊維構造物を得た。付着量は、80g/mであっ
た。得られた立体繊維構造物について上記評価法に従い
評価した。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】原糸の糸の太さや振り巾をある特定の範
囲とし、立体繊維構造体表面に凹凸構造を形成させるこ
とで、通気性を大幅に向上させることができ、吸水性も
高くなる。また肌に触れる面積が小さくなることから肌
触りがよく、汗をかいてもベタツキ感がなくなり、特に
夏季の不快感を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダブルラッセル機の編成主要部分を示す概略図
である。
【図2】実施例1の組織を示す図である。
【図3】実施例2の組織を示す図である。
【図4】実施例、実施例の組織を示す図である。
【図5】比較例1の組織を示す図である。
【図6】比較例2、比較例3の組織を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 山田 和則 福井県福井市毛矢1丁目10番1号 セー レン株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−144163(JP,A) 特開 昭62−53454(JP,A) 特開 平9−137380(JP,A) 特開 平9−143842(JP,A) 実開 平2−118782(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D04B 1/00 - 21/20

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表裏の地組織と、地組織を連結する連結
    糸からなる立体繊維構造物において、表裏少なくとも一
    面の地組織を構成する糸条がトータルデシテックス数比
    で1:2〜1:6を満たす太さの異なる2種からなり、
    且つ該糸条の振り巾比が1:2〜1:6を満たし、且つ
    凹凸部の高低差が0.2mm以上であることを特徴とす
    る凹凸を有する立体繊維構造物。
  2. 【請求項2】 太いトータルデシテックス数を持つ糸条
    の振り巾が、細いトータルデシテックス数を持つ糸条の
    振り巾以上であることを特徴とする請求項1記載の立体
    繊維構造物。
  3. 【請求項3】 糸条のトータルデシテックス数が20〜
    660デシテックスであることを特徴とする請求項1又
    は2項記載の立体繊維構造物。
  4. 【請求項4】 糸条の振り巾が1〜6針であることを特
    徴とする請求項1〜いずれか1項記載の立体繊維構造
    物。
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