JP3399783B2 - 非導電性多孔質体の総表面の処理方法及び総表面の処理装置 - Google Patents

非導電性多孔質体の総表面の処理方法及び総表面の処理装置

Info

Publication number
JP3399783B2
JP3399783B2 JP12172297A JP12172297A JP3399783B2 JP 3399783 B2 JP3399783 B2 JP 3399783B2 JP 12172297 A JP12172297 A JP 12172297A JP 12172297 A JP12172297 A JP 12172297A JP 3399783 B2 JP3399783 B2 JP 3399783B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
porous body
conductive porous
electrodes
electrode
dielectric layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP12172297A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH1053657A (ja
Inventor
康 竹内
雅章 川部
洋昭 山崎
和哉 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Vilene Co Ltd
Original Assignee
Japan Vilene Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Vilene Co Ltd filed Critical Japan Vilene Co Ltd
Priority to JP12172297A priority Critical patent/JP3399783B2/ja
Publication of JPH1053657A publication Critical patent/JPH1053657A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3399783B2 publication Critical patent/JP3399783B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Treatments Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Physical Or Chemical Processes And Apparatus (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非導電性多孔質体
の総表面の処理方法及び総表面の処理装置に関する。本
発明によれば、例えば、非導電性多孔質体の総表面に親
水性、疎水性、又は接着性を付与したり、親水性、疎水
性、又は接着性を向上させたり、あるいは非導電性多孔
質体の総表面に粗面加工を施したりすることができる。
【0002】
【従来の技術】従来、放電による非導電性材料(多孔質
体であるか否かを問わず)の表面処理方法としては、例
えば、交流コロナ放電又は直流コロナ放電を利用する方
法、低圧グロー放電を利用する方法、及び大気圧グロー
放電を利用する方法などが知られていた。交流コロナ放
電を利用する方法は、平板電極などの対電極(誘起電
極)の表面上に面接触して設けた誘電体表面上に、被処
理体を接触させ、前記被処理体と所定間隔(通常は約1
mm〜数mm)を隔てて、ワイヤー電極又は針状電極な
どの放電極を配置し、空気中又は所定の気体中で、前記
放電極と前記対電極との間に交流高電圧を印加し、放電
極から発生する線状コロナの作用により前記被処理体の
表面処理を行なう方法である。発生する線状コロナを安
定化するために、被処理体と対電極との間に誘電体を挿
入することが一般的である。前記気体は、被処理体の表
面に導入する官能基の種類に応じて適宜選択する。交流
高電圧の代わりに直流高電圧を印加することにより発生
する直流コロナ放電を利用しても、被処理体の表面処理
を行なうことができる。
【0003】この方法では、コロナ放電を発生させるた
めに、放電極と対電極との間に或る一定以上の電界強
度、すなわち、コロナ開始電圧以上の高電圧を印加する
必要があるが、あまり高電圧にしすぎると、被処理体の
弱い箇所を通じて電極間でスパーク放電に至り、被処理
体に大きな穴を開けるなどの損傷を生じることがある。
また、凹凸のある被処理体を処理する場合には、均一に
放電することができず、処理むらが生じたり、被処理体
に穴が開くなどの損傷を生じることがある。更には、放
電の安定性は使用する気体に大きく依存するので、使用
する気体の種類によっては、安定した放電を発生させる
ことができず、この方法では表面処理を行なうことがで
きない場合がある。
【0004】低圧グロー放電を利用する方法は、減圧す
ることができる放電容器の内部に、対向する一対の電極
を設け、それらの電極間に被処理体を配置し、減圧装置
により放電容器内の空気又は所定の気体の気圧を約10
-2〜約10Torr程度に保った状態で、前記電極間に
通常、数KHz〜数MHzの交流電圧を印加し、それら
の電極間に発生するグロー放電の作用により前記被処理
体の表面処理を行なう方法である。この方法において
は、被処理体は、電極と接触しないように配置された状
態で、あるいは一方の電極のみと接触するように配置さ
れた状態で交流電圧を印加される。この方法では、パッ
シェンの法則から、低圧下の放電は電極間の距離を或る
程度あけた方が起こりやすいため、交流コロナ放電を利
用する前記の方法に比べて電極間の間隔を広くとること
ができる。しかも、低圧においては電離化学種が失活し
にくく、火花放電も起こしにくいので、放電に使用する
ことのできる気体の種類も多い。
【0005】しかし、放電容器内の気圧を低圧にするた
めの減圧装置を必要とし、連続加工には不向きである。
また、被処理体が、揮発性物質、例えば、水又は可塑剤
などを含む場合には、圧力コントロールが難しい。更に
は、低圧グロー放電を用いて多孔質体を処理する場合に
は、圧力や気体の種類にもよるが、小さな孔(例えば、
孔径が0.1mm未満)の内部では、パッシェンの法則
により放電が生じないので、このような多孔質体の総表
面を処理することはできない。
【0006】大気圧グロー放電を利用する方法〔例え
ば、工業加熱,第27巻,第1号(1990)に記載〕
は、密封することのできる放電容器の内部に、所定間隔
(通常は数mm)を隔てて対向する一対の電極を設け、
希ガス、特に、ヘリウムを主成分とし、官能基導入のた
めに使用される所定の反応性気体を同時に含む混合ガス
を放電容器に供給しながら、前記電極間に通常、数KH
z〜数十MHzの交流電圧を印加し、それらの電極間に
発生するグロー放電の作用により被処理体の表面処理を
行なう方法である。この方法においては、発生するグロ
ー放電を安定化するために、いずれか一方の電極の表面
に誘電体を接触して設けることが一般的である。被処理
体は、電極及び/又は誘電体のいずれとも接触しないよ
うに配置された状態で、あるいは誘電体又は電極のいず
れか一方とのみ接触するように配置された状態で交流電
圧を印加される。
【0007】この方法では、安定に放電を発生すること
のできる気体として高価な希ガスを必要とし、更に、官
能基導入のために使用する反応性気体の量を多くすると
放電が不安定になるため、気体の量も制限される。一般
的には反応性ガスは10%程度までしか混入することが
できない。また、ガスの流れている部分しか放電するこ
とができないため、多孔質体を処理する場合に、反応性
ガスが入り込むことの困難な被処理体内部の空隙の表面
を処理することが難しく、従って、多孔質体の総表面を
均一に処理することは難しい。
【0008】大気圧グロー放電を利用する方法として、
対向する両電極の表面に誘電体を配設してなる誘電体被
覆電極を用いる方法が、特開平4−74525号公報に
開示されている。しかし、この方法は、電極及び/又は
誘電体のいずれとも接触しないように配置された状態
で、あるいは誘電体又は電極のいずれか一方とのみ接触
するように配置された状態で交流電圧を印加するもので
あり、この公報には、誘電体のそれぞれと被処理体とが
直接接触するように配置された状態で交流電圧を印加す
る方法は記載されていない。また、この方法も、空気中
で処理することができず、安定に放電を発生することの
できる気体として高価な希ガスを必要とする。なお、多
孔質体を処理する場合には、大気圧グロー放電では反応
性ガスの流れている部分で放電するので、反応性ガスが
入り込むことの困難な多孔質体内部の空隙の表面を処理
することが難しく、多孔質体の総表面を均一に処理する
ことは難しい。
【0009】大気圧グロー放電を利用する別の方法とし
て、セラミックス(厚さ=0.5mm〜2mm)で覆わ
れた一対の円筒状電極を平行に配設してなる放電処理装
置が、特開平7−119021号公報に開示されてい
る。この処理装置においても、高価な希ガス(ヘリウム
とアルゴンとからなる混合ガスを主成分とする雰囲気ガ
ス)を必要とし、安定な放電を得る観点から、安定に放
電を発生することのできる気体の種類が制限され(好適
酸素濃度は0.5%以下である)、空気中で処理するこ
とができない。また、この装置においても、反応性ガス
と接触している部分しか処理することができないため、
多孔質体を処理する場合に、反応性ガスが入り込むこと
の困難な被処理体内部の空隙の表面を処理することが難
しく、従って、多孔質体の総表面を均一に処理すること
は難しい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、多孔質体の外側表面だけでなく、多孔質内部の空隙
表面を処理することができ、しかも、スパーク放電等に
よる被処理体の損傷が起こりにくく、任意の種類の気体
を利用することができ、連続的に処理することが可能
な、放電による非導電性多孔質体の総表面を処理する手
段を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記の目的は、本発明に
よる、それぞれの対向表面側に誘電体層を設けて対向し
て配置した一対の電極の間に、前記の一対の電極とはそ
れぞれ直接に接触しないが前記誘電体層のそれぞれと外
側表面が直接に接触するように非導電性多孔質体を配置
し、周波数が0.1KHz〜100KHzである低周波
交流電圧を前記両電極間に印加して、両電極間に挟まれ
た前記非導電性多孔質体の内部空隙で放電を発生させる
ことを特徴とする、非導電性多孔質体の総表面の処理方
法によって達成することができる。また、前記の目的
は、本発明による、(1)対向して配置した一対の電
極、(2)前記電極の各対向表面側に配置した誘電体
層、及び(3)前記両電極に電気的に接続して、両電極
間に、周波数が0.1KHz〜100KHzである低周
交流電圧を印加することのできる手段を含むことを特
徴とする、非導電性多孔質体の総表面の処理装置によっ
ても達成することができる
【0012】本明細書において、「総表面」とは、処理
対象である非導電性多孔質体の外側表面と、非導電性多
孔質体の内側表面との両方を含む概念である。「外側表
面」とは、非導電性多孔質体に外接する平滑表面を有す
る仮想立体と接する非導電性多孔質体の表面を意味す
る。また、「内側表面」とは、非導電性多孔質体の前記
仮想立体の内部に含まれるすべての内部空隙の全表面を
意味する。従って、内側表面とは、発泡体型多孔質体に
おいては各気泡(cell)の表面であり、フィルム型
多孔質体においては凹部構造(例えば、くぼみ又は溝な
ど)又は貫通孔の表面であり、繊維質型多孔質体におい
ては構成繊維によって形成される内部空間の表面、すな
わち、各構成繊維の全表面が含まれる。また、気泡に
は、開放気泡(open−cell)及び独立気泡(c
losed−cell)の両方が含まれる。また、本明
細書において、「露出表面」とは、被処理体の総表面の
内、X線光電子分光法により分析することができる表面
を意味し、「内部表面」とは、被処理体の総表面の内、
露出表面以外の表面を意味する。
【0013】本明細書において、「総表面の処理」と
は、処理対象である非導電性多孔質体の総表面の少なく
とも一部を化学的又は物理的に処理することを意味す
る。化学的処理とは、非導電性多孔質体の総表面を化学
的に変性することを意味し、例えば、非導電性多孔質体
を構成する化合物に所望の官能基を導入する処理を挙げ
ることができ、非導電性多孔質体の総表面に親水性、疎
水性、又は接着性を付与するか、あるいは親水性、疎水
性、又は接着性を向上させることができる。所望の官能
基を導入することができる表面処理用ガスの存在下に
て、非導電性多孔質体の前記仮想立体の内部に含まれる
内部空隙で放電を発生させることによって、所望の官能
基を導入する化学的処理を行なうことができる。例え
ば、親水性は、空気、酸素ガス、二酸化炭素ガス、又は
一酸化炭素ガスから、酸素原子を含む官能基を導入する
ことにより、そして、例えば、疎水性は、テトラフルオ
ロメタンなどからフッ素原子を含む官能基を導入するこ
とによって、それぞれ付与又は向上させることができ
る。
【0014】物理的処理とは、非導電性多孔質体の総表
面を物理的に変性することを意味し、例えば、プラズマ
処理による粗面加工を挙げることができる。粗面加工
は、空気などの表面処理用ガス中で放電を発生させるこ
とによって実施することができる。なお、化学的処理と
物理的処理とを同時に実施することができる。例えば、
表面処理用ガスとして空気を用いると、非導電性多孔質
体の親水性を向上させると共に粗面加工を行なうことが
できる。一般に物理的処理を行なう場合には、化学的処
理も同時に伴って起きるが、化学的処理を選択的に実施
することが必要である場合には、処理条件、例えば、印
加電圧、印加時間、及び/又は表面処理用ガスの種類な
どを総表面の処理の目的に応じて適宜選択することによ
って、化学的処理を主として実施することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に沿って本発明を
説明する。本発明の基本的原理を図1に示す。図1に示
すように、平板状電極などからなる一対の電極21,2
2を対向するように配置する。電極21は、その対向表
面側に面接触する誘電体層41を担持し、電極22も、
その対向表面側に面接触する誘電体層42を担持する。
更に、両電極21,22のいずれとも接触しないが、誘
電体層41,誘電体層42のそれぞれと外側表面が直接
接触するように、誘電体層41と誘電体層42との間
に、非導電性多孔質体11を配置する。この際に、電極
21と電極22とを、適当な圧力で押圧することによ
り、電極21と誘電体層41、誘電体層41と非導電性
多孔質体11、非導電性多孔質体11と誘電体層42、
及び誘電体層42と電極22のそれぞれの間に、実質的
に空間が形成しないように面接触させる。電極21及び
電極22の大きさを、それぞれが接触する誘電体層41
及び誘電体層42の大きさよりも小さくなるようにする
と、両電極21,22の端部間でスパークが生じないの
で好ましい。また、電極21又は電極22の大きさが、
それぞれが接触する誘電体層41又は誘電体層42の大
きさと同じ場合には、電極の周囲に誘電性材料からなる
被覆材(例えば、ビニールテープ)などを設けることに
より、両電極21,22の端部間のスパークを防ぐこと
ができる。電極21を交流電源51に接続し、電極22
をアースする。
【0016】交流電源51から交流高電圧を印加する
と、非導電性多孔質体11の内部空隙で放電し、プラズ
マが生成される。非導電性多孔質体11の内部空隙で発
生したプラズマが、非導電性多孔質体11の内側表面に
作用することにより、非導電性多孔質体11の内側表面
の改質が行われる。このときには、非導電性多孔質体1
1の外側表面は誘電体層41又は誘電体層42と接して
いるので、非導電性多孔質体11の内部空隙で発生した
プラズマは、理論的には非導電性多孔質体11の外側表
面の誘体層との接触点には作用しない。しかし、実際
には、接触点は外側表面の面積と比べて非常に小さい面
積であるため、実質的にはすべての外側表面が処理され
ているものと言うことができる。しかも、非導電性多孔
質体はプラズマだけでなく、プラズマによって生じたラ
ジカルによっても処理されるので、多孔質体と誘電体層
とが分離した時、失活せずに残ったラジカルによって接
触点も処理される。なお、本発明では、非導電性多孔質
体の内部空隙で放電が発生するので、スパーク放電等に
よる被処理体の損傷が起こりにくい。
【0017】本発明において、交流電源により放電を発
生させるために印加する交流電圧の下限は、誘電体層を
含めた電極間の距離やガスの種類に依存するので、特に
限定されるものではないが、好ましくは0.25KVp
以上、より好ましくは0.5KVp以上である(KVp
は、交流電圧の最大値ピークから0までの電圧差を示
す)。電圧が0.25KVp未満になると実質的に放電
が起こらなくなるからである。また、交流電圧の上限
も、非導電性多孔質体の損傷が生じることのない電圧で
ある限り、特に限定されるものではない。
【0018】前記交流電圧の周波数の上限は、特に限定
されるものではないが、好ましくは100KHz、より
好ましくは50KHzである。周波数が100KHzを
越えると、誘電加熱により非導電性多孔質体が過熱状態
になって破壊するおそれが生じることがあるからであ
る。また、周波数を50KHz以下とすると、誘電体及
び電極が加熱されにくいので、長時間、安定して処理す
ることができる点でより好ましい。周波数の下限は、好
ましくは0.1KHz、より好ましくは0.5KHz、
更に好ましくは1KHzである。周波数が0.1KHz
未満になると、放電による処理効率が低下することがあ
るからである。周波数を1KHz以上とすると、処理効
率が高く、処理時間が短くなるので、より好ましい。
【0019】前記交流の出力は、各電極の形状、又は使
用する誘電体層若しくは被処理体の素材又は厚さなどに
依存するので特に限定されるものではないが、一対の電
極が、非導電性多孔質体を一定の領域で挟んで処理する
場合(例えば、後記の図1又は図4参照)には、0.5
〜5W/cm2 であることが好ましい。また、一対の電
極が、非導電性多孔質体を線状に挟んで処理する場合
(例えば、後記の図2、図3、図5、又は図6参照)に
は、前記交流の出力は、0.1〜9W/cmであること
が好ましく、0.1〜6W/cmであることがより好ま
しい。なお、非導電性多孔質体を線状に挟んで処理する
場合であって、複数本の電極を使用する場合(例えば、
後記の図3、図5、又は図6参照)には、前記の交流出
力の範囲は、電極一本当たりの値を意味する。
【0020】本発明において、交流の出力が前記範囲よ
り低い場合(すなわち、非導電性多孔質体を一定の領域
で挟んで処理する場合に0.5W/cm2 未満である
か、あるいは、非導電性多孔質体を線状に挟んで処理す
る場合に0.1W/cm未満である場合)には、非導電
性多孔質体の放電しやすい場所で主に放電が生じるの
で、総表面を均一に処理することができないことがあ
る。また、交流の出力が前記範囲より高い場合(すなわ
ち、非導電性多孔質体を一定の領域で挟んで処理する場
合に5W/cm2 を越えるか、あるいは、非導電性多孔
質体を線状に挟んで処理する場合に9W/cmを越える
場合)には、アーク放電により非導電性多孔質体に穴が
あくことがある。
【0021】印加電圧の波形は、特に限定されるもので
はなく、例えば、正弦波、三角波、又は矩形波などを挙
げることができ、発熱又は火花放電を抑制しやすい点
で、パルス波(例えば、図10に示すパルス波)である
ことが好ましい。前記パルス波においては、電圧波の立
ち上がり時間(例えば、図10における時間t)が、1
マイクロ秒以下であることが好ましく、0.5マイクロ
秒以下であることがより好ましい。また、電圧パルス幅
(半値幅)(例えば、図10における幅w)が、10マ
イクロ秒以下であることが好ましく、2マイクロ秒以下
であることがより好ましい。なお、パルス波を用いる場
合の周波数(例えば、図10における波長λを1周期と
したときの周波数)の好適範囲も限定されるものではな
いが、前記と同様の理由により、その上限は、好ましく
は100KHz、より好ましくは50KHzであり、そ
の下限は、好ましくは0.1KHz、より好ましくは
0.5KHz、更に好ましくは1KHzである。このよ
うなパルス波を使用することにより、火花放電により穴
の空きやすい非導電性多孔質体(例えば、メルトブロー
不織布)であっても、穴をあけることなく総表面処理を
実施することができる。なお、放電を発生させるために
印加する交流に関するこれらの値は、各電極の形状や非
導電性多孔質体の材質や放電電圧波形、更には処理時間
にも大きく依存するので、前記範囲からはずれて使用さ
れることもある。
【0022】図1には、電極21に交流電源51を接続
し、電極22をアースする態様を示したが、本発明にお
いては、逆に、電極22に交流電源51を接続し、電極
21をアースしてもよい。
【0023】本発明に用いることのできる電極の材質と
しては、比抵抗が、好ましくは103 Ω・cm以下、よ
り好ましくは100 Ω・cm以下の導電体を用いること
ができ、例えば、金属(例えば、ステンレススチール、
アルミニウム、若しくはタングステン等)、導電性金属
酸化物、カーボン、又は導電体(例えば、金属粉末若し
くはカーボン粉末等)とゴムとを複合した導電性ゴムな
どを用いることができる。また、電極の形状としては、
例えば、シート状電極、板状電極、又は円柱状電極を用
いることができる。後記の図2〜図6に示す態様のよう
に、非導電性多孔質体と電極とが相対的に移動する場合
には、非導電性多孔質体の表面に傷をつけにくくなるよ
うに、非導電性多孔質体の平行移動に同期して、その円
柱中心軸を回転軸としてそれ自体が回転することのでき
る円柱状電極が好ましい。
【0024】本発明において、両電極間にかける押圧の
下限は、電極と誘電体層との間、及び誘電体層と非導電
性多孔質体との間の面接触を保証し、実質的に空間を形
成させない圧力である。また、その上限は、被処理体で
ある非導電性多孔質体の形状を破壊することのない圧力
である。
【0025】本発明に用いることのできる誘電体層は、
全体が非多孔質であるか、あるいは、その一部に多孔質
部分を含むことができる。なお、誘電体層として、全体
が多孔質部分からなる誘電体層を用いると、被処理体及
び誘電体の多孔質部分の内部で火花放電が発生すること
がある。従って、本発明では、そのような誘電体層を使
用するのは好ましくない。また、同様の理由により、誘
電体層として、厚さ方向に連続した多孔質部分を含む誘
電体層を用いるのも好ましくない。被処理体との接触面
に多孔質部分を有する誘電体層を用いると、全体が非多
孔質からなる誘電体層を用いた場合に比べて、誘電体層
と被処理体との接触面が減少するので、被処理体の外側
表面をより効率的に処理することができる。
【0026】本発明に用いることのできる誘電体層の材
料としては、例えば、ガラス、セラミック(例えば、ア
ルミナ等)、ゴム(例えば、合成ゴム、例えば、シリコ
ーンゴム、クロロプレンゴム、若しくはブタジエンゴ
ム、又は天然ゴム等)、又は熱可塑性樹脂(例えば、ポ
リテトラフルオロエチレン若しくはポリエステル等)な
どを挙げることができる。被処理体である非導電性多孔
質体と接触する誘電体層、特にはその接触面には、弾性
に優れている点でゴム又は熱可塑性樹脂を用いることが
好ましく、弾性に優れており、被処理体との密着性に優
れている点で、ゴムを使用することがより好ましい。特
に、被処理体の表面に傷をつけにくいゴム、又は絶縁破
壊に強いポリテトラフルオロエチレンを使用することが
好ましい。誘電体層の厚さは、特に限定されるものでは
ないが、0.05〜5mm程度であることが好ましい。
5mmより厚いと、放電させるのに非常に高い電圧が必
要であり、0.05mm未満では機械的強度が低下し、
絶縁破壊が生じやすくなるからである。
【0027】本発明により総表面を処理することのでき
る非導電性多孔質体としては、任意の非導電性の有機材
料又は無機材料からなる多孔質体を用いることができ
る。有機材料としては、各種の有機高分子化合物、例え
ば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィ
ン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニ
ル、フッ素化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はフッ化ビニリ
デン−トリフルオロエチレン共重合体等を挙げることが
できる。無機材料としては、各種セラミックス(例え
ば、アルミナ、シリカ、若しくはシリカアルミナ等)、
又はガラス類(例えば、ソーダガラス若しくはシリカガ
ラス等)などを挙げることができる。
【0028】前記各種材料からなる多孔質体としては、
例えば、繊維質型多孔質体、フィルム型多孔質体、又は
発泡体型多孔質体などを挙げることができる。繊維質多
孔体は、例えば、織物、編物、繊維状ポーラスフィル
ム、又は不織布からなる。不織布としては、例えば、乾
式不織布(水流絡合不織布、ニードルパンチ不織布、バ
インダ接着不織布、若しくは熱融着不織布)、スパンボ
ンド不織布、メルトブロー不織布、又は湿式不織布など
を挙げることができる。また、発泡体としては、例え
ば、ポリオレフィン系、ポリエステル系、又はポリウレ
タン系などの樹脂からなる開放気泡型発泡体又は独立気
泡型発泡体などを挙げることができる。また、フィルム
型多孔質体としては、凹凸構造をもつフィルムや穴あき
フィルムなどを挙げることができる。
【0029】本発明は、特に非導電性の有機材料からな
る繊維質型多孔質体の処理に適用することができ、例え
ば、不織布シート、特にはアルカリ電池用セパレータと
して使用することのできる不織布シートの処理に適用す
ることができる。アルカリ電池用セパレータとして使用
することのできる不織布としては、これに限定されるわ
けではないが、例えば、ポリオレフィン系繊維、すなわ
ち、ポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレ
ン、プロピレン系共重合体、ポリブテン、ブテン系共重
合体、ポリメチルペンテン、又はペンテン系共重合体を
樹脂成分として1つ以上含む繊維からなり、例えば、水
流絡合、熱融着、若しくはメルトブロー、又はこれらを
併用して形成される不織布を使用することができる。
【0030】本発明により総表面を処理することのでき
る非導電性多孔質体の形状は、非導電性多孔質体の外側
表面と誘電体層とが接触した際に、多孔質体内部に空隙
を有する形状であれば、特に限定されない。本発明によ
り総表面を処理することのできる非導電性多孔質体の空
隙率(処理時の状態の空隙率)は、0%より高く、しか
も、99%未満である。特に空隙率が95%以下の非導
電性多孔質体の内側表面は、従来のグロー放電によって
は処理することが困難であったが、本発明では処理する
ことができる。
【0031】内部空隙の大きさの上限は特に限定される
ものではないが、好ましくは空隙の平均孔径が1mm以
下である。特に、空隙の平均孔径が0.1mm以下、特
には30μm以下の非導電性多孔質体の内側表面は、従
来のグロー放電によっては処理することが困難であった
が、本発明では処理することができる。なお、繊維質型
多孔質体の平均孔径は、例えば、コールターポロメータ
ーII(コールター社製)により測定することができる。
平均孔径が1mmを越えると、アーク放電が起きて多孔
質体を損傷する場合があるからである。ただし、平均孔
径が1mmを越えていても、処理時に圧縮して平均孔径
を1mm以下にできるものであればよい。平均孔径が
0.1mm以下であると、スパークが生じにくい。内部
空隙の大きさの下限は、非導電性多孔質体の内部空隙で
放電を発生させることができる大きさであれば、特に限
定されるものではない。
【0032】非導電性多孔質体の厚さ(両誘電体層に挟
まれた状態での厚さ)も、誘電体層の厚さや多孔質体の
種類などによって好適な厚さが変化するので、特に限定
されるものではないが、10mm以下であることが好ま
しく、1mm以下であることがより好ましい。10mm
を越えると、アーク放電を起こしやすくなるとともに高
い放電電圧が必要となるからである。厚さが1mm以下
であると、スパークが生じにくく、熱に弱い素材であっ
ても処理が可能である。なお、非導電性多孔質体の厚さ
が10mmを越えていても、処理時に圧縮して厚さを1
0mm以下にすることができるものであればよい。ま
た、厚さが0.1mm以上の非導電性多孔質体の内側表
面は、従来のグロー放電によっては処理することが困難
であったが、本発明を用いると、処理することができ
る。また、非導電性多孔質体の通気度は、特に限定され
るものではない。通気度が0.5〜200ml/cm2
・秒、特には1〜150ml/cm2 ・秒である非導電
性多孔質体の内側表面は、従来のグロー放電によっては
処理することが困難であったが、本発明を用いると、処
理することができる。
【0033】空隙率が95%以下である非導電性多孔質
体、内部空隙の平均孔径が0.1mm以下である非導電
性多孔質体、厚さ0.1〜10mmの非導電性多孔質体
(圧縮してこの範囲内となるものを含む)、又は通気度
が0.5〜200ml/cm2 ・秒である非導電性多孔
質体は、グロー放電によってはその内部表面を処理する
ことが困難であったのに対して、本発明を用いると、前
記の各非導電性多孔質体(特には、そのすべての条件を
満たす非導電性多孔質体、すなわち、空隙率、内部空隙
の平均孔径、厚さ、及び通気度が前記範囲内にある非導
電性多孔質体)の総表面を処理することができる。
【0034】本発明は、開放系、すなわち、大気圧下
で、一般的には空気の存在下で実施することができ、閉
鎖系、例えば、気密性の容器中で実施する必要はない
が、非導電性多孔質体の内部空隙に、空気以外の表面処
理用ガスを供給しながら、放電を発生させることもでき
る。なお、本発明は、従来の大気圧グロー放電において
安定に放電を発生させるために必要であった不活性ガス
(例えば、希ガス)を、必要としない。非導電性多孔質
体の内部空隙に表面処理用ガスを供給する手段として、
例えば、非導電性多孔質体内部に表面処理用ガスを強制
的に送り込む方法、非導電性多孔質体及びその近傍に表
面処理用ガスを噴き付ける方法、又は非導電性多孔質体
の周囲を表面処理用ガスの雰囲気にする方法などを挙げ
ることができ、これらを開放系又は閉鎖系で実施するこ
とができる。
【0035】例えば、ガス供給管などを用いて、表面処
理用ガスを非導電性多孔質体の内部空隙に供給しなが
ら、交流高電圧を印加させることにより放電を発生させ
ると、非導電性多孔質体の内部空隙に発生したプラズマ
の作用により、非導電性多孔質体の内側表面と表面処理
用ガスとが反応し、非導電性多孔質体の内側表面の改
質、例えば、所望の官能基を導入することができる。
【0036】なお、空気以外の表面処理用ガスを非導電
性多孔質体の内部の空隙に供給する場合には、非導電性
多孔質体及びその近傍を特定のガスで充満させ、空気と
の接触が起きないようにし、目的外の反応が生じないよ
うにすることが好ましい。また、非導電性多孔質体の周
囲を表面処理用ガスの雰囲気にする場合には、例えば、
非導電性多孔質体、電極、及び誘電体層を気密性の容器
中に配置し、その中に表面処理用ガスを封入した状態
で、放電処理を行なってもよい。この場合には、処理領
域を特定のガスで充満させることができ、空気との接触
が起きないので好ましい。
【0037】本発明で用いることのできる「表面処理用
ガス」は、特に限定されず、公知の表面処理用ガスの内
から所望の表面処理に応じて適宜選択することができ
る。非導電性多孔質体に親水性を付与するか、又は親水
性を向上させる表面処理を行なう場合には、例えば、空
気、酸素ガスを用いることができ、非導電性多孔質体に
疎水性を付与するか、又は疎水性を向上させる表面処理
を行なう場合には、例えば、テトラフルオロメタン(C
4 )を用いることができる。また、表面処理用ガスの
濃度も、特に限定されず、所望の総表面処理に応じて適
宜選択することができる。更には、表面処理用ガスの種
類及び/又は濃度は、変化させずに一定の条件下で、あ
るいは経時的に変化させて、非導電性多孔質体の総表面
処理を実施することができる。
【0038】非導電性多孔質体の総表面に物理的処理、
例えば、粗面加工を施す場合には、表面処理用ガスを供
給しながら放電処理を行なう化学的処理のみの場合に比
べて、より高い電圧の交流電圧を印加することが好まし
く、また、放電処理時間を長くすることが好ましい。な
お、特に非導電性多孔質体の撥水性を保ったままで粗面
加工を行なう場合には、表面処理用ガスとして撥水性を
付与するガス(例えば、テトラフルオロメタン)を供給
しながら処理を行なうことが好ましい。
【0039】また、本発明によれば、非導電性多孔質体
は、一対の電極に挟まれた部分の総表面のみが実質的に
処理されるので、少なくとも一方の電極の形状を調整す
ることによって、被処理領域の形状を任意に調整するこ
とができる。例えば、電極の一方を平板状電極とし、電
極のもう一方を所望の形状の電極、例えば、網状電極又
は線状電極とすることにより、所望の形状と同じパター
ン、例えば、網状パターン又は線状パターンに非導電性
多孔質体を選択的に処理することができる。
【0040】従来のグロー放電を利用する表面処理方法
により表面改質を実施した多孔質改質体では、被処理体
の表層部領域の更に内部の空隙には充分量のガス状活性
化学種が到達せず、それらの内側表面を外側表面と同じ
程度まで処理することはできないので、表面処理の程度
は、外側表面から内側表面に向かうのに従って急激に低
下し、内側表面はほとんど処理されていない。それに対
して、本発明では、内部空隙において放電が発生し、そ
の放電によって表面が処理されるので、総表面を均一に
処理することが可能である。但し、露出表面における表
面処理の程度は、それ以外の総表面(すなわち、内部表
面)における表面処理の程度に比べて低いことがある。
なぜなら、被処理体の露出表面の一部は、内部空隙で放
電を発生させる際に誘電体層と接触しているため、理論
的には内部空隙で発生するプラズマが作用せず、その接
触面は、誘電体層と被処理体とを分離した際に、接触面
の近傍に存在する残存プラズマ自体又はそのプラズマに
よって生じるラジカルにより主に処理されるしかないか
らである。
【0041】本発明の非導電性多孔質改質体は、例え
ば、本発明方法を用いて、非導電性多孔質体の総表面の
少なくとも一部を化学的に処理して、所望の特性を付与
又は向上させることができる官能基を被処理面に導入す
ることにより調製することができる。前記非導電性多孔
質体としては、先に示した、本発明により総表面を処理
することのできる種々の非導電性多孔質体を用いること
ができる。特に従来のグロー放電によっては処理するこ
との困難な非導電性多孔質体、例えば、空隙率が95%
以下である非導電性多孔質体、内部空隙の平均孔径が
0.1mm以下である非導電性多孔質体、厚さ0.1〜
10mmの非導電性多孔質体(圧縮してこの範囲内とな
るものを含む)、又は通気度が0.5〜200ml/c
2 ・秒である非導電性多孔質体、特にそのすべての条
件を満たす非導電性多孔質体、すなわち、空隙率、内部
空隙の平均孔径、厚さ、及び通気度が前記範囲内にある
非導電性多孔質体の内側表面を、本発明により処理する
ことができる。
【0042】本発明の非導電性多孔質改質体において
は、官能基が導入された露出表面における官能基導入効
率[以下、露出表面導入効率(A)と称する]と、官能
基が導入された内部表面における官能基導入効率[以
下、内部表面導入効率(B)と称する]との関係におい
て、内部表面導入効率(B)に対する露出表面導入効率
(A)の比である導入効率比(A/B)が、1未満(A
/B<1)であり、好ましくは0.3以上かつ0.95
以下(0.3≦A/B≦0.95)であり、より好まし
くは0.4以上かつ0.85以下(0.4≦A/B≦
0.85)である。誘電体層として、その対向表面側表
面の少なくとも一部に多孔質誘電体部分を含む誘電体層
を用いると、前記導入効率比を1に近づけることができ
る。なぜなら、この場合には、被処理体の外側表面と誘
電体層との接触面(理論的には、放電により発生するプ
ラズマが作用することができない面)の割合が、非多孔
質誘電体層を用いる場合に比べて、少なくなるからであ
る。なお、従来のグロー放電を利用して表面処理した場
合には、内部表面はほとんど処理されないので、導入効
率比は1よりも大きい。
【0043】表面処理された各表面、すなわち、官能基
が導入された各表面における官能基導入効率は、それぞ
れの表面における官能基の導入の程度を客観的に比較す
ることのできる値として表現することができる指標であ
れば、特に限定されるものではなく、導入の程度は、導
入する官能基に応じて適当な原子団又は原子を適宜選択
して比較することができる。例えば、被処理体である非
導電性多孔質体が有機材料からなる場合には、官能基導
入効率として、「官能基を導入された表面における、炭
素原子に対する導入された官能基の数の比」、又は「官
能基を導入された表面における、炭素原子に対する、導
入された官能基に含まれる特定原子の数の比」などを用
いることができる。
【0044】導入効率として、「官能基を導入された表
面における、炭素原子に対する、導入された官能基に含
まれる特定原子の数の比」を用いる場合には、例えば、
X線光電子分光法を用いて、対象表面における炭素原子
のピーク面積と、導入された官能基に含まれる特定原子
の、前記対象表面におけるピーク面積とをそれぞれ測定
し、光イオン化断面積補正を加えることにより、対象表
面における導入効率を求めることができる。露出表面に
おける導入効率は、X線光電子分光法を用いて、改質体
をそのまま直接に測定することにより求めることがで
き、内部表面における導入効率は、その内部表面を露出
させる処理、例えば、改質体の内部の一部分(例えば、
繊維など)を取り出したり、あるいは、改質体をスライ
スした後に、X線光電子分光法を用いることにより求め
ることができる。
【0045】例えば、親水性を付与するか、又は親水性
を向上させる目的で、本発明を用いて非導電性多孔質体
を空気中で処理すると、被処理面に酸素原子が導入され
た本発明の多孔質改質体を得ることができる。この場合
には、例えば、X線光電子分光法を用いて、露出表面及
び内部表面における炭素原子及び酸素原子のピーク面積
をそれぞれ測定し、光イオン化断面積補正を加えること
により、露出表面及び内部表面における各導入効率(す
なわち、炭素原子に対する導入された酸素原子の数の
比)を求めることができ、更には導入効率比を求めるこ
とができる。
【0046】本発明による非導電性多孔質改質体は、改
質(処理)の検出と、露出表面及び内部表面における物
性の差の検出とにより同定することができる。例えば、
改質の検出及び物性の差の検出に、ぬれ指数を用いる場
合を、以下に示す。
【0047】(1)或る多孔質体試料を赤外線分析計な
どの手段を用いて分析し、総表面に属さない部分の構成
材料を決定する。総表面に属さない部分としては、試料
がフィルム型多孔質体又は発泡型多孔質体である場合に
は、例えば、充実した緻密(solid)体部分を挙げ
ることができ、試料が繊維質型多孔質体である場合に
は、例えば、構成繊維の内部部分を挙げることができ
る。決定した構成材料からなる多孔質体のぬれ指数を、
「ポリエチレン及びポリプロピレンフィルムのぬれ試験
方法」(JIS K 6768-1977 )に従って決定す
る。複数の構成成分からなる場合には、ぬれ指数の小さ
い方の構成成分のぬれ指数を決定する。このぬれ指数を
有する材料を濡らして着色することのできる指示薬を選
択する。
【0048】(2)前記工程(1)で決定したぬれ指数
の指示薬(着色剤含有)の液中に、試料を浸漬した後、
引き上げると、試料の表面の状態に応じて、試料の表面
の着色状態は、次の状態(a)〜(c)のいずれかに当
てはまる: (a)着色した部分(非処理領域)と着色しない部分と
が現われる。着色しない部分は、疎水化処理されている
ことがわかる。この場合には、続いて、後述する工程
(4)を実施する。 (b)試料全体が着色しない。試料の全体が疎水化処理
されていることがわかる。この場合には、続いて、後述
する工程(4)を実施する。 (c)試料全体が着色する。試料の一部又は全体が親水
化処理されている場合と、表面処理を実施していない場
合とが考えられ、この場合には、続いて、次の工程
(3)を実施する。
【0049】(3)前記工程(2)で使用した指示薬よ
りも高いぬれ指数の指示薬の液中に、試料を浸漬した
後、引き上げる。なお、指示薬としては、はじめは前記
工程(2)で使用した指示薬よりもわずかに高いぬれ指
数の指示薬を使用し、順次、更に高いぬれ指数の指示薬
を使用し、前記操作を繰り返すことが好ましい。試料の
表面の状態は、次の状態(d)〜(f)のいずれかに当
てはまる: (d)前記工程(2)で使用した指示薬よりもわずかに
高いぬれ指数の指示薬を使用した場合に、試料全体が着
色しない。この試料には、表面処理を全く施していない
ことがわかる。 (e)前記工程(2)で使用した指示薬よりもわずかに
高いぬれ指数の指示薬を使用した場合に、着色しない部
分(非処理領域)と着色した部分とが現われる。着色し
た部分は、親水化処理されていることがわかる。この場
合には、続いて、後述する工程(4)を実施する。 (f)前記工程(2)で使用した指示薬よりも高いぬれ
指数の指示薬を順次、使用した場合に、或るぬれ指数ま
では試料全体が着色し、そのぬれ指数よりもわずかに高
いぬれ指数の指示薬を使用した場合に、試料全体が着色
しない。試料全体が親水化処理されていることがわか
る。この場合には、続いて、次の工程(4)を実施す
る。 以上の工程(1)〜工程(3)により、改質(処理)の
有無を検出することができる。改質が行なわれている場
合には、続いて、露出表面及び内部表面における物性の
差の検出を実施する。
【0050】(4)処理領域の露出表面及び内部表面に
おける炭素原子に対する導入した官能基のそれぞれの数
の比を、例えば、X線光電子分光法によって求める。表
面処理が親水化処理である場合[試料表面が前記状態
(e)又は前記状態(f)である場合]には、前記官能
基の特定原子、例えば、酸素原子などを選択することが
でき、表面処理が疎水化処理の場合[試料表面が前記状
態(a)又は前記状態(b)である場合]には、官能基
の特定原子、例えば、フッ素原子を選択することができ
る。導入効率比、すなわち、露出表面における前記数の
比(A)と内部表面における前記数の比(B)との比
(A/B)が、1より小さければ、その試料は本発明の
多孔質改質体である。
【0051】本発明においては、非導電性多孔質体を静
止させた状態で放電を発生させる図1に示す態様に限定
されず、非導電性多孔質体を移動させながら、連続的に
非導電性多孔質体の表面処理を行なうこともできる。こ
のような本発明の別の態様を図2に示す。
【0052】この態様では、円柱状の電極21と円柱状
の電極22とを対向するように配置する。電極21及び
電極22は、その表面が誘電体層41及び誘電体層42
にそれぞれ覆われている。電極21及び電極22は、そ
の円柱中心軸を回転軸としてそれ自体が回転することが
できるものであることもできるし、回転せずに固定され
ているものであることもできる。非導電性多孔質体が移
動する際に、非導電性多孔質体の表面に傷をつけにくく
なる点で、その円柱中心軸を回転軸としてそれ自体が回
転することができる電極であることが好ましい。
【0053】電極21を交流電源51に接続し、電極2
2をアースする。非導電性多孔質体11は、両電極2
1,22の上流に設けた移送手段(例えば、一対の送出
ローラー:図示せず)によって、電極21及び電極22
の表面上にそれぞれ担持された誘電体層41及び誘電体
層42の間に、矢印Aで示す方向に所定速度で連続的に
供給され、それらと接触しながら両誘電体層41,42
の間を通過する。両誘電体層41,42の間を通過した
非導電性多孔質体11は、両電極21,22の下流に設
けた移送手段(例えば、一対の送出ローラー:図示せ
ず)によって、所定速度で連続的に移送される。非導電
性多孔質体11を移送する駆動力を供給する駆動手段
(例えば、モータ)は、前記の送出ローラー及び/又は
回転自在な電極に連結することができる。
【0054】非導電性多孔質体11の前記供給速度及び
前記移送速度は、特に制限されず、一定速度、又は周期
的若しくは不規則に変化する速度であることができる。
これらの速度は、一定速度であって、非導電性多孔質体
の表面処理時間が0.1秒以上になるような速度である
ことが好ましい。この速度より速いと十分な総表面処理
効果が得られないことがあるからである。
【0055】非導電性多孔質体11が、両誘電体層4
1,42の間をそれらと接触しながら通過する際に、交
流電源51から交流高電圧を印加すると、誘電体層41
及び誘電体層42のそれぞれと非導電性多孔質体11と
の接触面の間に挟まれた非導電性多孔質体11の内部空
隙に放電が発生し、プラズマが生成する。非導電性多孔
質体11の内部空隙に発生したプラズマの作用により、
非導電性多孔質体11の内側表面の改質が行なわれる。
このとき、誘電体層41及び誘電体層42のそれぞれと
非導電性多孔質体11との接触面には、非導電性多孔質
体11の内部空隙で発生したプラズマは作用しない。し
かし、非導電性多孔質体11は所定速度で連続的に移送
されているので、前記接触面であった非導電性多孔質体
11の外側表面は、誘電体層41及び誘電体層42から
次々と分離し、分離した直後にその近傍の内部空隙に発
生したプラズマの作用により、非導電性多孔質体11の
外側表面の改質が行われる。
【0056】非導電性多孔質体11は所定速度で連続的
に移送されているので、未処理の非導電性多孔質体11
が両誘電体層41,42の間に連続的に供給される一
方、総表面の改質が行なわれた非導電性多孔質体11が
両誘電体層41,42の間から連続的に供出され、非導
電性多孔質体11の総表面処理を連続的に行なうことが
できる。
【0057】図2に示す態様においても、交流電源によ
り放電を発生させるために印加する交流電圧は、特に限
定されるものではないが、図1に示す態様で説明したの
と同様の理由により、前記の交流電圧及び周波数と同様
の範囲であることが好ましい。また、図2に示す態様
は、電極21に交流電源51を接続し、電極22をアー
スするものであるが、逆に、電極22に交流電源51を
接続し、電極21をアースしてもよい。図2に示す態様
は、開放系、すなわち、大気圧下で一般的には空気の存
在下で実施することができるが、所望の総表面処理に応
じて空気以外の表面処理用ガスを使用する必要がある場
合には、表面処理用ガスを処理領域に供給しながら、放
電を発生させることができる。
【0058】図2に示す態様では、その表面に誘電体層
41を担持する円柱状の電極21を1個だけ設けるもの
であるが、電極21の数は特に限定されるものではな
く、1個又は複数個設けることができる。非導電性多孔
質体の外側表面上の任意の一点が、電極の表面に担持さ
れる誘電体層と複数回接触することができるように、誘
電体層を担持する電極を複数個設けることが、処理効果
を高め、処理速度を上げることができる点で好ましい。
【0059】その表面に誘電体層を担持する直径が小さ
な円柱状の電極5個を、直径が大きな円柱状の電極表面
に担持される誘電体層の表面に沿って所定の間隔を設け
て平行に配置した、本発明の更に別の態様を図3に示
す。5個の円柱状の電極21(非導電性多孔質体の流れ
方向の上流側から21a,21b,21c,21d,及
び21eと称することがある)を、それらの電極よりも
直径が大きな円柱状の電極22の表面に担持する誘電体
層42の表面に沿って所定の間隔を設けて平行に配置
し、5個の電極21a〜21eと電極22とが対向する
ように配置する。5個の電極21a〜21eは、それぞ
れ誘電体層41a〜41e(以下、併せて誘電体層41
と称することがある)で覆われている。
【0060】電極21及び電極22は、その円柱中心軸
を回転軸としてそれ自体が回転することができるもので
あっても、回転せずに固定されているものであってもよ
く、非導電性多孔質体11と電極21及び電極22とが
相対的に移動する際に、非導電性多孔質体の表面に傷を
つけにくくなる点で、その円柱中心軸を回転軸としてそ
れ自体が回転することができる電極であることが好まし
い。
【0061】5個の電極21a〜21eを1個の共通の
交流電源51に接続し、電極22をアースする。なお、
電極21a〜21eが同一の交流電源と接続されている
場合には、或る電極と、それに隣接する電極とが接触す
るように、各電極を配置することができる。図3に示す
態様は、5個の電極21a〜21eを1個の共通の交流
電源51に接続し、5個の電極21a〜21eのすべて
に同一の交流高電圧を印加するものであるが、異なる電
極を異なる交流電源に接続することによって、異なる交
流高電圧を電極に印加してもよい。ただし、異なる電極
を異なる交流電源に接続する場合には、電極同士が接触
しないように十分離して配置する必要がある。
【0062】非導電性多孔質体11は、電極21及び電
極22の上流に設けた移送手段(例えば、一対の送出ロ
ーラー81a,81b)によって、電極21及び電極2
2の表面上にそれぞれ担持された誘電体層41及び誘電
体層42の間に、矢印Aで示す方向に所定速度で連続的
に供給され、一方の表面を電極22の表面に担持される
誘電体層42と連続的に接触し、同時にそれとは反対の
表面を5個の誘電体層41a,41b,41c,41
d,41eと順次接触しながら、誘電体層41eと誘電
体層42との間を通過する。誘電体層41と誘電体層4
2との間を通過した非導電性多孔質体11は、電極21
及び電極22の下流に設けた移送手段(例えば、一対の
送出ローラー82a,82b)によって、所定速度で連
続的に移送される。非導電性多孔質体11を移送する駆
動力を供給する駆動手段(例えば、モータ)は、前記の
送出ローラー及び/又は回転自在な電極に連結すること
ができる。
【0063】非導電性多孔質体11の前記供給速度及び
前記移送速度は、特に制限されず、一定速度、又は周期
的若しくは不規則に変化する速度であることができる。
図3に示す態様では、一定速度であって、非導電性多孔
質体の表面処理時間の合計が0.1秒以上になるような
速度であることが好ましい。この速度より速いと十分な
総表面処理効果が得られないからである。
【0064】図3に示す態様においても、非導電性多孔
質体11が、誘電体層41と誘電体層42との間をそれ
らと接触しながら通過する際に、交流電源51から交流
高電圧を印加すると、誘電体層41及び誘電体層42の
それぞれと非導電性多孔質体11との接触面の間に挟ま
れた非導電性多孔質体11の内部空隙に放電が発生し、
プラズマが生成する。図2に示す態様で説明したよう
に、非導電性多孔質体11の内部の空隙に発生したプラ
ズマの作用により、非導電性多孔質体11の内側表面及
び外側表面の改質が行なわれる。
【0065】図3に示す態様では、非導電性多孔質体1
1の外側表面上の任意の一点が、電極の表面に担持する
誘電体層と複数回接触することができるように、5個の
電極21a〜21eを設けている。5個の電極21a〜
21eは、それぞれ、その表面を誘電体層41a〜41
eで覆われている。従って、電極21aの表面に担持さ
れる誘電体層41aと、誘電体層42とにより総表面の
改質が行なわれた非導電性多孔質体11は、矢印Aで示
す方向に移送され、電極21bの表面に担持される誘電
体層41bと、誘電体層42との間に供給され、再び誘
電体層41bと誘電体層42とにより総表面の改質が行
なわれ、以下、誘電体層41c,誘電体層41d,及び
誘電体層41eと順次供給されて、総表面の改質が行な
われ、誘電体層41eと誘電体層42との間から供出さ
れる。
【0066】非導電性多孔質体11は所定速度で連続的
に移送されているので、未処理の非導電性多孔質体11
が誘電体層41aと誘電体層42との間に連続的に供給
される一方、表面の改質が行なわれた非導電性多孔質体
11が誘電体層41eと誘電体層42との間から連続的
に供出され、非導電性多孔質体11の総表面処理を連続
的に行なうことができる。
【0067】図3に示す態様も、図2に示す態様と同様
に、開放系又は閉鎖系で実施することができる。表面処
理用ガスを供給することのできるガス供給管を設ける場
合には、ガス供給管の数は、処理領域に充分にガスを供
給することができるのであれば特に限定されず、例え
ば、1組の電極及び誘電体層に対して1個ずつ設けて
も、又は複数組の電極及び誘電体層に対して1個ずつ設
けてもよい。また、ガス供給管毎に供給する表面処理用
ガスの種類及び/又は濃度を変えて、総表面処理を行な
うことができる。更には、前記ガスの種類及び/又は濃
度を経時的に変化させて総表面処理を実施してもよい。
表面処理用ガスの種類及び/又は濃度を変化させると、
総表面処理の状態(例えば、親水性又は疎水性の状態)
やその程度を制御することができる。
【0068】図3に示す5組の電極21a〜21e及び
誘電体層41a〜41eの代わりに、電極層と誘電体層
とのベルト状積層体、例えばベルト状のアルミニウム蒸
着フィルムを用いる本発明の更に別の態様を図4に示
す。4個の固定ローラー91a,91b,91c,91
dを軸方向が相互に平行になるように、かつ4個の固定
ローラーが、軸方向から見て、長方形の各頂点の位置に
くるように配置する。固定ローラー91aは、誘電体層
42に近接して設け、固定ローラー91bは、固定ロー
ラー91aの下流で、しかも誘電体層42に近接して設
ける。2個の固定ローラー91c,91dは、誘電体層
42から離して配置する。
【0069】ポリエステル製誘電体フィルム層43の一
方の表面にアルミニウムを蒸着させることによってアル
ミニウム層23を形成させた、エンドレスベルト状のア
ルミニウム蒸着フィルム31を、4個の固定ローラー9
1a,91b,91c,91dの外側を通過するように
配置する。この際、アルミニウム蒸着フィルム31のア
ルミニウム層23を内側に(すなわち、4個の固定ロー
ラー91a,91b,91c,91dと接触することが
できるように)、かつポリエステル製誘電体フィルム層
43が外側になるように(すなわち、固定ローラー91
aと固定ローラー91bとの間を通過するアルミニウム
蒸着フィルム31のポリエステル製誘電体フィルム層4
3と、円柱状の電極22の表面に担持される誘電体層4
2とが対向するように)配置する。
【0070】一方、その表面に誘電体層42を担持する
電極22は、固定ローラー91aから固定ローラー91
bまでの間の全領域で、エンドレスベルト状アルミニウ
ム蒸着フィルム31と誘電体層42とが連続的に面接触
するように配置する。なお、本態様においては、必ずし
も固定ローラー91aから固定ローラー91bまでの間
の全領域で面接触する必要はなく、エンドレスベルト状
アルミニウム蒸着フィルム31と電極22との距離を調
整することによって、固定ローラー91aから固定ロー
ラー91bまでの間の少なくとも一部の領域と誘電体層
42とが接触していればよい。
【0071】電極22は、その円柱中心軸を回転軸とし
てそれ自体が回転することができる。また、4個の固定
ローラー91a,91b,91c,91dも、その円柱
中心軸を回転軸としてそれ自体が回転することができる
ので、その外側に配置したアルミニウム蒸着フィルム3
1は一方向(例えば、矢印Bで示す方向)に移行するこ
とができる。アルミニウム蒸着フィルム31のアルミニ
ウム層23を交流電源51に接続し、電極22をアース
する。図4に示す態様は、アルミニウム層23に交流電
源51を接続し、電極22をアースするものであるが、
逆に、電極22に交流電源51を接続し、アルミニウム
蒸着フィルム31をアースしてもよい。
【0072】非導電性多孔質体11は、固定ローラー9
1a及び電極22の上流に設けた移送手段(例えば、一
対の送出ローラー81a,81b)によって、電極22
の表面上に担持された誘電体層42と固定ローラー91
aとの間に、矢印Aで示す方向に所定速度で連続的に供
給され、一方の表面を電極22に担持される誘電体層4
2と連続的に接触し、同時にそれとは反対の表面をポリ
エステル製誘電体フィルム層43と連続的に接触しなが
ら、誘電体層42と固定ローラー91bとの間を通過す
る。誘電体層42と固定ローラー91bとの間を通過し
た非導電性多孔質体11は、固定ローラー91b及び電
極22の下流に設けた移送手段(例えば、一対の送出ロ
ーラー82a,82b)によって、所定速度で連続的に
移送される。非導電性多孔質体11を移送する駆動力を
供給する駆動手段(例えば、モータ)は、前記の固定ロ
ーラー、送出ローラー及び/又は回転自在な電極に連結
することができる。
【0073】図4に示す態様においても、図3に示す態
様と同様にして非導電性多孔質体11の総表面処理を連
続的に行なうことができる。図4に示す態様は、図3に
示す態様よりも更に放電面積が大きいので、処理効果を
高め、処理速度を上げることができる。また、図4に示
す態様においても、図3に示す態様と同様に、開放系又
は閉鎖系で実施することができる。なお、図4に示す態
様で用いることのできる電極層と誘電体層とのベルト状
積層体としては、ベルト状アルミニウム蒸着フィルムの
他に、前記ベルト状積層体の電極としては、例えば、金
属箔、金属シート、又は導電性物質を含む導電性樹脂シ
ートなどを挙げることができ、前記ベルト状積層体の誘
電体としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂シート、又
はゴムシートなどを挙げることができ、それらを適宜積
層して使用することができる。また、当然、アルミニウ
ム以外の金属蒸着フィルムを用いることもできる。
【0074】1組の電極及び誘電体層として、平板状の
電極22及び誘電性搬送体44aを用いる本発明の更に
別の態様を図5に示す。所定の間隔を隔てて配置される
一対の搬送体駆動ローラー92a,92bにより、一定
方向(矢印Aで示す方向)に非導電性多孔質体11を搬
送することができる誘電体からなる誘電性搬送体44a
と、その誘電性搬送体44aの表面に沿って所定の間隔
を設けて平行に配置する5個の円柱状の電極21(非導
電性多孔質体11の流れ方向の上流側から21a,21
b,21c,21d,及び21eと称することがある)
とを、対向するように配置する。5個の電極21a〜2
1eは、それぞれ、誘電体層41a〜41e(以下、併
せて誘電体層41と称することがある)で覆われてい
る。
【0075】電極21は、その円柱中心軸を回転軸とし
てそれ自体が回転することができるものであっても、回
転せずに固定されているものであってもよく、非導電性
多孔質体と電極とが相対的に移動する際に、非導電性多
孔質体の表面に傷をつけにくくなる点で、その円柱中心
軸を回転軸としてそれ自体が回転することができる電極
であることが好ましい。誘電性搬送体44aに対して、
電極21の反対側に電極21と対向するように平板状電
極などからなる電極22を配置する。
【0076】5個の電極21a〜21eを1個の共通の
交流電源51に接続し、電極22をアースする。図5に
示す態様は、5個の電極21a〜21eを1個の共通の
交流電源51に接続し、5個の電極21a〜21eのす
べてに同一の交流高電圧を印加するものであるが、異な
る電極を異なる交流電源に接続することによって、異な
る交流高電圧を各電極に印加することもできる。また、
図5に示す態様は、5個の電極21a〜21eに共通の
交流電源51を接続し、電極22をアースするものであ
るが、逆に、電極22に交流電源を接続し、5個の電極
21a〜21eをアースしてもよい。
【0077】非導電性多孔質体11は、電極21及び電
極22の上流に設けた移送手段(例えば、一対の送出ロ
ーラー81a,81b)によって誘電性搬送体44a上
に移送され、その誘電性搬送体44aにより電極21a
と電極22との間に矢印Aで示す方向に所定速度で連続
的に供給され、一方の表面を誘電性搬送体44aと常時
接触し、同時にそれとは反対の表面を5個の誘電体41
a,41b,41c,41d,41eと順次接触しなが
ら、電極21eと電極22との間を通過する。電極21
eと電極22との間を通過した非導電性多孔質体11
は、誘電性搬送体44a上を移送され、電極21及び電
極22の下流に設けた移送手段(例えば、一対の送出ロ
ーラー82a,82b)によって、所定速度で連続的に
移送される。非導電性多孔質体11を移送する駆動力を
供給する駆動手段(例えば、モータ)は、前記の搬送体
駆動ローラー、送出ローラー、及び/又は回転自在な電
極に連結することができる。
【0078】図5に示す態様においても、図3に示す態
様と同様にして非導電性多孔質体11の総表面処理を連
続的に行なうことができる。この態様では、誘電性搬送
体を使用することによって、通常の平板状電極を誘起電
極として用いることができる。図5に示す態様は、図3
に示す態様と同様に、開放系又は閉鎖系で実施すること
ができる。図5に示す態様では、電極と誘電体層との組
合せとして、平板状の電極22と誘電性搬送体44aと
の組合せ、5組の電極21a〜21eと誘電体層41a
〜41eとの組合せを用いているが、そのいずれか一
方、又は両方に代えて、図4に示す電極層と誘電体層と
のベルト状積層体を使用することができる。
【0079】図5に示す平板状の電極22及び誘電性搬
送体44aの組合せに代えて、電極層と誘電体層とのベ
ルト状積層体を使用する態様を図6に示す。図6に示す
態様では、ポリエステル製誘電体フィルム層44、アル
ミニウム層23、及び搬送体43からなる三層積層体を
用いる。前記三層積層体は、アルミニウム層23及びポ
リエステル製誘電体フィルム層44からなるアルミニウ
ム蒸着フィルムと、搬送体43とを積層することにより
調製することができる。このポリエステル製誘電体フィ
ルム層44を、一方の面でアルミニウム層23と接触さ
せ、同時に、非導電性多孔質体11と接触させる。この
態様では、アルミニウム層23とポリエステル製誘電体
フィルム層44とからなる二層積層体を用いることもで
きるが、搬送体43が、電極層としてのアルミニウム層
23の耐久性を向上させることができる。
【0080】誘電体層として、誘電体層の被処理体への
対向表面全体が多孔質誘電体層からなる誘電体層、すな
わち、被処理体への対向表面側の多孔質誘電体層と、電
極側の非多孔質誘電体層とからなる誘電体層を用いた本
発明の別の態様を図7に示す。図7に示すように、平板
状電極などからなる一対の電極21,22を対向するよ
うに配置する。第1電極である電極21は、その対向表
面側に誘電体層45を担持し、誘電体層45は、電極2
1の側の非多孔質誘電体層46と、対向表面側の多孔質
誘電体層47とからなる。第2電極である電極22は、
その対向表面側に非多孔質誘電体層42を担持する。
【0081】両電極21,22のいずれとも接触しない
が、多孔質誘電体層47及び非多孔質誘電体層42のそ
れぞれと外側表面が直接接触するように、多孔質誘電体
層47と非多孔質誘電体層42との間に、非導電性多孔
質体11を配置する。この際に、電極21と電極22と
を、適当な圧力で押圧することにより、多孔質誘電体層
47と非導電性多孔質体11との間、及び非導電性多孔
質体11と非多孔質誘電体層42との間に、実質的に空
間(隙間)が形成されないように面接触させる。誘電体
層と被処理体との間に空間が形成されると、放電が均一
に発生しなくなり、被処理体に穴があくことがある。一
方の電極、例えば、電極21を交流電源51に接続し、
他方の電極、例えば、電極22をアースする。電極22
に交流電源51を接続し、他方の電極21をアースして
もよい。
【0082】交流電源51から交流高電圧を印加する
と、被処理体である非導電性多孔質体11の内部空隙だ
けでなく、多孔質誘電体層47の内部空隙でも放電が起
こり、プラズマが生成される。非導電性多孔質体11の
内部空隙で発生したプラズマが、被処理体の内側表面及
び外側表面に作用すると同時に、多孔質誘電体層47の
内部空隙で発生したプラズマも、被処理体の内側表面及
び外側表面に作用し、非導電性多孔質体11の総表面の
改質が行なわれる。なお、このときには、非導電性多孔
質体11の外側表面の内、多孔質誘電体層47と接して
いる箇所は、理論的には、多孔質誘電体層47の内部空
隙で発生したプラズマによって、改質されない。しか
し、実際には、接触点は外側表面の面積と比べて非常に
小さい面積であるため、実質的にはすべての外側表面が
処理されているものと言うことができる。
【0083】本発明においては、誘電体層の両方を、そ
の対向表面側表面の少なくとも一部に多孔質誘電体部分
を含む誘電体層に代えることができる。また、図2〜図
6に示す態様においても、誘電体層の一方又は両方を、
その対向表面側表面の少なくとも一部に多孔質誘電体部
分を含む誘電体層に代えることができる。
【0084】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1 被処理体としては、ポリプロピレン/ポリエチレン分割
繊維を湿式抄造した後、水流絡合処理により分割繊維を
分割させると共に絡合させて調製した不織布(厚さ=
0.3mm,空隙率=80%,平均孔径=9μm,通気
度=15.3ml/cm2 ・秒)を用いた。総表面処理
装置としては、図1に示す装置と同様の装置を用いた。
すなわち、アルミニウム製電極21,22上に、ポリエ
ステルフィルムからなる誘電体層41,42を担持させ
た。各電極の大きさを100mm×150mmとし、不
織布の大きさもこれと同じ大きさにした。ポリエステル
フィルムからなる誘電体層41,42の間に、前記不織
布シート11を挟み、電極21,22に交流電源51か
ら電圧4KVp、電流25mA、及び周波数3KHzの
交流を印加して放電を発生させた。処理は大気中で30
秒間行った。処理前の不織布は水に非常に濡れにくかっ
たが、処理後の不織布は水に漬けると、内部まで瞬時に
濡れた。
【0085】実施例2 被処理体としては、実施例1と同じ不織布を用いた。総
表面処理装置としては、図6に示す装置と同様の装置を
用いた。すなわち、片面にアルミニウム蒸着層23を担
持したポリエステルフィルム44をアルミニウム蒸着面
が内側となるように、厚さ2mmのクロロプレンゴムシ
ート(搬送体)43に積層して製造したエンドレスシー
トを、間隔を隔てて配置した一対のローラー92a,9
2bに配置した。一方、ポリテトラフルオロエチレン層
41aで被覆した回転可能な直径12mmの円柱状金属
棒21aを配置し、更に、被処理体の流れ方向の下流側
に、同様の構造のポリテトラフルオロエチレン層で被覆
した円柱状金属棒7本を配置した。なお、図6に示す装
置では、それぞれ誘電体層41a〜41eを担持した5
本の円柱状電極21a〜21eを配置しているが、本実
施例では、それぞれポリテトラフルオロエチレン層で被
覆した円柱状金属棒8本を配置した。ポリテトラフルオ
ロエチレン層41でそれぞれ被覆した8本の円柱状金属
棒21とポリエステルフィルム44との間に、ポリテト
ラフルオロエチレン被覆層41とポリエステルフィルム
44とに接触させながら、送り速度0.1m/分で不織
布シート11(幅=18cm)を通し、大気中で処理を
行った。なお、交流電源51により、電圧4KVp、電
流25mA、及び周波数3KHzの交流を印加して放電
を発生させて処理した。処理前の不織布は水に非常に濡
れにくかったが、処理後の不織布は水に漬けると、内部
まで瞬時に濡れた。
【0086】実施例3 被処理体としては、実施例1と同じ不織布を用いた。総
表面処理装置としては、片面にアルミニウム蒸着層23
を担持したポリエステルフィルム44に代えて、片面に
アルミニウム層23をメッシュ状に付着したポリエステ
ルフィルム44を用いたこと以外は、実施例2と同様の
装置を用いた。ポリテトラフルオロエチレン層41でそ
れぞれ被覆した8本の円柱状金属棒21とポリエステル
フィルム44との間に、ポリテトラフルオロエチレン被
覆層41とポリエステルフィルム44とに接触させなが
ら、送り速度0.1m/分で不織布シート11(幅=1
8cm)を通し、大気中で処理を行った。なお、交流電
源51により、電圧4KVp、電流25mA、及び周波
数3KHzの交流を印加して放電を発生させて処理し
た。処理前の不織布は水に非常に濡れにくかったが、処
理後の不織布は水に漬けると、メッシュ状に付着したア
ルミニウムからなる電極の形状に対応したメッシュ状の
部分だけが瞬時に濡れた。
【0087】実施例4 被処理体としては、ポリプロピレン/ポリエチレン分割
繊維を湿式抄造した後、水流絡合処理により分割繊維を
分割させると共に絡合させて調製した不織布(厚さ=2
00μm,空隙率=70%,平均孔径=7μm)を3枚
積層した積層体(通気度=5.56ml/cm2 ・秒)
を用いた。総表面処理装置としては、図1に示す装置と
同様の装置を用いた。各電極21,22として、平板状
ステンレススチール電極(大きさ=150mm×300
mm)を使用し、各誘電体層41,42としてポリテト
ラフルオロエチレン(PTFE)膜(厚さ=0.2m
m)を用いた。両PTEF膜41,42の間に、前記不
織布積層体11を挟み、インパルス電源51から電圧6
KVp、周波数13KHz、及び出力800Wの交流を
電極に印加して放電を発生させた。処理は大気中で1分
間行った。
【0088】処理した不織布積層体を、元の3枚の不織
布シートに分け、積層時に外側に位置した不織布シート
の表面(放電処理の際にPTFE膜と接触していた
面)、及び積層時に内側に位置した不織布シートの表面
における酸素原子数と炭素原子数との比(O/C比)
を、X線光電子分光計(アルバックファイ社製,モデル
558UP;励起源=Mg−Kα,出力=300W,電
圧=15KV,取出角=60°)によりそれぞれ求めた
ところ、外側に位置した不織布シートのO/C比
(A4 )は0.113であり、内側に位置した不織布シ
ートのO/C比(B4 )は0.266であり、導入効率
比(A4 /B4 )は0.42であった。なお、X線光電
子分光計による測定は、アルゴンスパッタ後に測定し
た。
【0089】実施例5 電極21,22として平板状ステンレススチール電極
(大きさ=150mm×300mm)を使用する代わり
に、凸部(縦=2mm,横=2mm)を縦方向及び横方
向に2mm間隔で有するステンレススチール板(縦=1
50mm,横=300mm)を用いること以外は、実施
例4の操作を繰り返した。処理された不織布シートは、
ステンレススチール電極の凸部で挟まれた領域のみが処
理され、それ以外の領域は処理されなかった。処理した
不織布積層体を、元の3枚の不織布シートに分け、積層
時に外側に位置した不織布シートの表面(放電処理の際
にPTFE膜と接触していた面)、及び積層時に内側に
位置した不織布シートの表面における処理領域及び非処
理領域のO/C比を、実施例4と同様に、X線光電子分
光計によりそれぞれ求めた。処理領域については、外側
に位置した不織布のO/C比(A5 )は0.120であ
り、内側に位置した不織布のO/C比(B5 )は0.2
57であり、導入効率比(A5 /B5 )は0.47であ
った。また、非処理領域については、外側に位置した不
織布のO/C比も内側に位置した不織布のO/C比も0
であった。
【0090】実施例6 被処理体としては、実施例4で用いた被処理体、すなわ
ち、不織布シートを3枚積層した積層体を用いた。総表
面処理装置としては、図3に示す装置と同様の装置を用
いた。誘電体層42を担持する直径が大きな円柱状電極
22として、その表面に酸化アルミニウム層(厚さ=5
00μm)を担持し、更にその上をシリコーンゴム層
(厚さ=2mm)で被覆した円柱状ステンレススチール
22(直径=217mm,長さ=500mm)を配置し
た。すなわち、図3に示す装置では、電極22が1層か
らなる誘電体層42を担持するが、本実施例で用いた装
置では、電極22が2層からなる誘電体層42を担持す
る。誘電体層41aを担持する直径が小さな円柱状電極
21aとして、その表面に酸化アルミニウム層41a
(厚さ=200μm)を設けた円柱状ステンレススチー
ル電極21a(直径=20mm,長さ=520mm)を
配置し、更に、被処理体の流れ方向の下流に、同様の構
造の酸化アルミニウム層を担持する円柱状ステンレスス
チール電極9本を配置した。なお、図3に示す装置で
は、誘電体層41a〜41eを担持する5本の円柱状電
極21a〜21eを配置しているが、本実施例では、酸
化アルミニウム層(厚さ=200μm)を担持する円柱
状ステンレススチール電極10本を配置した。電極2
1,22の間に、不織布積層体11を0.5m/分の速
度で供給しながら、交流高圧電源51から電圧6KV
p、周波数20KHz、及び出力1KWの交流を電極に
印加して放電を発生させた。処理は大気中で行った。
【0091】処理した不織布積層体を、元の3枚の不織
布シートに分け、積層時に外側に位置した不織布シート
の表面(放電処理の際にシリコーンゴムと接触していた
面)、及び積層時に内側に位置した不織布シートの表面
における酸素原子数と炭素原子数との比(O/C比)
を、実施例4と同様に、X線光電子分光計によりそれぞ
れ求めたところ、外側に位置した不織布のO/C比(A
6 )は0.203であり、内側に位置した不織布のO/
C比(B6 )は0.250であり、導入効率比(A6
6 )は0.81であった。
【0092】実施例7 被処理体としては、実施例4で用いた被処理体、すなわ
ち、不織布シートを3枚積層した積層体を用いた。総表
面処理装置としては、図7に示す装置と同様の装置を用
いた。すなわち、ポリテトラフルオロエチレンシート
(幅=200mm,長さ=250mm、厚さ=0.1m
m)を担持し、更にその上にガラス不織布シート(幅=
200mm,長さ=250mm,厚さ=0.2mm,厚
さ方向の空隙高さ≦100μm)を担持するステンレス
スチール電極(幅=160mm,長さ=210mm)を
配置した。ポリテトラフルオロエチレンシート(幅=2
00mm,長さ=250mm、厚さ=0.1mm)を担
持するステンレススチール電極(幅=160mm,長さ
=210mm)を配置した。両電極21,22の間に不
織布積層体11を挟み、インパルス電源51から電圧6
KVp、周波数13KHz、及び出力800Wの交流を
電極に印加して放電を発生させた。処理は大気中で1分
間行った。
【0093】処理した不織布積層体を、元の3枚の不織
布シートに分け、積層時に外側に位置した不織布シート
の表面(放電処理の際にガラス不織布シートと接触して
いた面)、及び積層時に内側に位置した不織布シートの
表面における酸素原子/炭素原子の数の比(O/C比)
を、実施例4と同様に、X線光電子分光計によりそれぞ
れ求めたところ、外側に位置した不織布のO/C比(A
7 )は0.138であり、内側に位置した不織布のO/
C比(B7 )は0.255であり、導入効率比(A7
7 )は0.54であった。
【0094】実施例8 被処理体としては、ポリプロピレンからなるメルトブロ
ー不織布(面密度=78g/m2 ,厚さ=0.85m
m,平均繊維径=1.8μm,大きさ=100mm×1
50mm,空隙率90%,内部空隙の平均孔径7μm,
通気度=7ml/cm2 ・秒)を用いた。総表面処理装
置としては、図1に示す装置と同様の装置を用いた。各
電極21,22として、平板状アルミニウム電極(大き
さ=100mm×150mm)を、誘電体層41として
ガラス板(厚さ=1mm)を、誘電体層42としてポリ
エステルフィルム(厚さ=50μm)をそれぞれ用い
た。両誘電体層41,42の間に前記不織布シート11
を挟み、パルス電源51から交流[電圧パルス幅(半値
幅)=1マイクロ秒,立ち上がり時間=約0.4マイク
ロ秒,周波数15KHz,電圧波高値8KVp,出力4
00W]を電極に印加して放電を発生させた。処理は大
気中で30秒間行った。被処理体に穴をあけることな
く、親水化処理することができた。
【0095】実施例9 被処理体としては、実施例1と同じ不織布を用いた。放
電処理は、図1に示す装置と同様の装置を用いて実施し
た。電極21,22として、平板状ステンレススチール
電極(幅=150mm,長さ=300mm)を使用し、
誘電体層41,42として、ポリテトラフルオロエチレ
ンシート(幅180mm,長さ=350mm,厚さ=
0.1mm)を用いた。インパルス電源51(周波数=
13KHz)を用いて、800Wの交流を1分間印加し
て、大気中で放電処理を実施した後、不織布シートを水
洗し、乾燥させた。得られた不織布シートをアルカリ電
池用セパレータとして用いる円筒型ペースト・ペースト
式密閉ニッケル水素電池(電池容量=1700mAh)
を作製した。正極として水酸化ニッケルを発泡ニッケル
支持体に充填したものを、負極として水素吸蔵合金(メ
ッシュメタルMmNi5 型)を発泡ニッケル支持体に充
填したものを、電解液として7.2N水酸化カリウム/
1.0N水酸化リチウム水溶液5gをそれぞれ使用し
た。セパレータとして用いた前記不織布は、電解液吸収
性が良好で、電池作製における作業性に優れていた。
【0096】20℃恒温漕中で、前記の電池を、510
mAhで4時間充電し(0.3C,理論容量に対して1
20%)、終止電圧1Vになるまで510mAhで放電
することからなる充放電操作を1サイクルとして、電池
活性用充放電を5サイクル実施した。電池活性用充放電
を5サイクル実施した電池を用いて、20℃恒温漕中
で、1700mAhで1.5時間充電し(1.0C,理
論容量に対して150%)、終止電圧0.8Vになるま
で1700mAhで放電することからなる充放電操作を
1サイクルとする寿命試験を実施した。各サイクル終了
後の電池放電容量を図8に、各サイクルにおける充電平
均電圧を図9にそれぞれ示す。図8から明らかなよう
に、充放電操作を450サイクル実施しても、放電容量
の低下が見られなかった。また、図9から明らかなよう
に、充電電圧の上昇が少なかったので、内部抵抗の上昇
が少ない(すなわち、セパレータの液枯れが少ないもの
と考えられる。本発明方法で処理した不織布をセパレー
タとして用いることにより、サイクル寿命の長い電池を
作製することができる。
【0097】
【発明の効果】本発明によれば、多孔質体の外側表面だ
けでなく、多孔質内部の空隙表面を処理することがで
き、しかも、スパーク放電等による被処理体の損傷が起
こりにくく、任意の種類の表面処理用ガスを利用するこ
とができ、連続的に非導電性多孔質体の総表面処理を行
なうことが可能である。また、本発明によれば、希ガス
などを使用する必要がなく、1気圧の大気中で被処理体
を処理することができる。また、本発明によれば、非導
電性多孔質体は、一対の電極に挟まれた部分の総表面の
みが実質的に処理されるので、電極の一方を平板状電極
とし、もう一方の電極を所望の形状の電極、例えば、網
状電極又は線状電極とすることにより、所望の形状と同
じパターンに、非導電性多孔質体の表面を選択的に処理
することができる。本発明は、非導電性の有機材料から
なる繊維質型多孔質体の処理に適用することができ、特
にはアルカリ電池用セパレータとして使用することので
きる不織布シートの処理に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的原理を模式的に示す断面図であ
る。
【図2】本発明の一態様を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の別の一態様を模式的に示す断面図であ
る。
【図4】本発明の更に別の一態様を模式的に示す断面図
である。
【図5】本発明の更に別の一態様を模式的に示す断面図
である。
【図6】本発明の更に別の一態様を模式的に示す断面図
である。
【図7】本発明の更に別の一態様を模式的に示す断面図
である。
【図8】本発明により製造したアルカリ電池用セパレー
タを用いたニッケル水素電池の寿命試験における電池放
電容量のサイクル変化を示すグラフである。
【図9】本発明により製造したアルカリ電池用セパレー
タを用いたニッケル水素電池の寿命試験における充電平
均電圧のサイクル変化を示すグラフである。
【図10】本発明において使用することのできるパルス
波の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
11・・非導電性多孔質体;21,22・・電極;23
・・アルミニウム層;31・・アルミニウム蒸着フィル
ム;41,42・・非多孔質誘電体層;43・・搬送
体;44・・ポリエステル製誘電体フィルム層;44a
・・誘電性搬送体;45・・誘電体層;46・・非多孔
質誘電体層;47・・多孔質誘電体層;51・・交流電
源;81a,81b,82a,82b・・送出ローラ
ー;91a,91b,91c,91d・・固定ローラ
ー;92a,92b・・ローラー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 和哉 茨城県猿島郡総和町大字北利根7番地 日本バイリーン株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−337675(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 7/00 - 7/18

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 それぞれの対向表面側に誘電体層を設け
    て対向して配置した一対の電極の間に、前記の一対の電
    極とはそれぞれ直接に接触しないが前記誘電体層のそれ
    ぞれと外側表面が直接に接触するように非導電性多孔質
    体を配置し、周波数が0.1KHz〜100KHzであ
    る低周波交流電圧を前記両電極間に印加して、両電極間
    に挟まれた前記非導電性多孔質体の内部空隙で放電を発
    生させることを特徴とする、非導電性多孔質体の総表面
    の処理方法。
  2. 【請求項2】 少なくとも一方の電極の形状が、処理す
    べき非導電性多孔質体の被処理領域の形状と一致する、
    請求項1に記載の処理方法。
  3. 【請求項3】 交流の出力が0.5〜5W/cm 2 であ
    る、請求項1又は2に記載の処理方法。
  4. 【請求項4】 印加電圧の波形が、正弦波、三角波、矩
    形波、又はパルス波である、請求項1〜3のいずれか一
    項に記載の処理方法。
  5. 【請求項5】 非導電性多孔質体が、アルカリ電池用セ
    パレータとして使用することのできる不織布シートであ
    る、請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理方法。
  6. 【請求項6】 開放系で実施する、請求項1〜5のいず
    れか一項に記載の処理方法。
  7. 【請求項7】 不活性ガスの不存在下で実施する、請求
    項1〜6のいずれか一項に記載の処理方法。
  8. 【請求項8】 空気、酸素ガス、二酸化炭素ガス、又は
    一酸化炭素から、酸素原子を含む官能基を導入して親水
    性を付与又は向上させる、請求項1〜7のいずれか一項
    に記載の処理方法。
  9. 【請求項9】 (1)対向して配置した一対の電極、
    (2)前記電極の各対向表面側に配置した誘電体層、及
    び(3)前記両電極に電気的に接続して、両電極間に、
    周波数が0.1KHz〜100KHzである低周波交流
    電圧を印加することのできる手段を含むことを特徴とす
    る、非導電性多孔質体の総表面の処理装置。
  10. 【請求項10】 少なくとも一方の電極の形状が、処理
    すべき非導電性多孔 質体の被処理領域の形状と一致す
    る、請求項9に記載の処理装置。
JP12172297A 1996-04-25 1997-04-24 非導電性多孔質体の総表面の処理方法及び総表面の処理装置 Expired - Lifetime JP3399783B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12172297A JP3399783B2 (ja) 1996-04-25 1997-04-24 非導電性多孔質体の総表面の処理方法及び総表面の処理装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8-129159 1996-04-25
JP12915996 1996-04-25
JP12172297A JP3399783B2 (ja) 1996-04-25 1997-04-24 非導電性多孔質体の総表面の処理方法及び総表面の処理装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1053657A JPH1053657A (ja) 1998-02-24
JP3399783B2 true JP3399783B2 (ja) 2003-04-21

Family

ID=26459012

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP12172297A Expired - Lifetime JP3399783B2 (ja) 1996-04-25 1997-04-24 非導電性多孔質体の総表面の処理方法及び総表面の処理装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3399783B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3846065B2 (ja) * 1998-10-22 2006-11-15 コニカミノルタホールディングス株式会社 放電処理用の電極と該電極を用いた放電処理方法及び放電処理装置
JP2000301711A (ja) * 1999-02-15 2000-10-31 Konica Corp 表面処理方法、インクジェット記録媒体の製造方法及びインクジェット記録媒体
JP2001043843A (ja) * 1999-05-21 2001-02-16 Oji Paper Co Ltd アルカリ電池用セパレータの製造方法
JP4497675B2 (ja) * 1999-08-12 2010-07-07 日本バイリーン株式会社 非導電性成形体の表面処理装置及び表面処理方法
JP4694050B2 (ja) * 2001-06-22 2011-06-01 浜松ホトニクス株式会社 表面処理装置
JP4778674B2 (ja) * 2003-08-28 2011-09-21 積水化学工業株式会社 アルカリ電池用セパレーターの製造方法
JP3846503B2 (ja) * 2005-01-06 2006-11-15 コニカミノルタホールディングス株式会社 放電処理用の電極と該電極を用いた放電処理方法及び放電処理装置
KR20190135140A (ko) * 2018-05-28 2019-12-06 한국기초과학지원연구원 통기성 부재의 내면을 플라즈마 처리하는 방법 및 이의 장치
KR20220083082A (ko) * 2020-12-11 2022-06-20 한국핵융합에너지연구원 통기성 부재의 내면을 플라즈마 처리하는 방법 및 이의 장치

Also Published As

Publication number Publication date
JPH1053657A (ja) 1998-02-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5792517A (en) Process for treating the outer-inner surfaces of a porous non-conductor
Morent et al. Study of the ageing behaviour of polymer films treated with a dielectric barrier discharge in air, helium and argon at medium pressure
RU2402374C2 (ru) Способ и устройство для плазменной обработки пористого тела
US6441553B1 (en) Electrode for glow-discharge atmospheric-pressure plasma treatment
JP3399783B2 (ja) 非導電性多孔質体の総表面の処理方法及び総表面の処理装置
JP3571180B2 (ja) 非導電性多孔質体の総表面の処理方法
US6616988B1 (en) Sulfur containing atomic group introduced porous article, process for introducing a sulfur containing atomic group onto the outer-inner surfaces of a porous article, and a battery separator
JP3592872B2 (ja) 総表面の処理方法及び総表面の処理装置
JP3511439B2 (ja) 非導電性多孔質体の表層部表面の処理方法
CN108269957B (zh) 具有高浸润性、高热稳定性的锂电池隔膜及其制备方法
EP2888029B1 (en) Method of treating a porous substrate and manufacture of a membrane
JP4132354B2 (ja) 新規のイオウ含有原子団導入多孔質体、多孔質体の総表面へのイオウ含有原子団導入方法、及び電池用セパレータ
JP3212822B2 (ja) 多孔チューブ状被処理基材及びその処理方法並びに多孔チューブ状被処理基材の処理装置
GB2098636A (en) Separator for electrochemical energy-storage units and a process for its manufacture
JP3558320B2 (ja) パターン形成方法及びパターン形成装置
JP3799159B2 (ja) 改質多孔質体の製造方法
JP2001332238A (ja) アルカリ電池用セパレーター
JP3792929B2 (ja) 多孔質体の親水化方法及びアルカリ電池用セパレータの製造方法
JP3721261B2 (ja) 表面改質方法
JPH0857225A (ja) フィルターの製造方法
JP2019106395A (ja) 圧電素子シートおよびその製造方法
JP4175850B2 (ja) 非導電性多孔質体改質体の製造方法及び製造装置
JP2000086785A (ja) 多孔質体の放電処理方法
JP2005336659A (ja) プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
JP2000173573A (ja) アルカリ電池用セパレータ及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080221

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090221

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100221

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100221

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110221

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120221

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130221

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130221

Year of fee payment: 10

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130221

Year of fee payment: 10

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130221

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140221

Year of fee payment: 11

EXPY Cancellation because of completion of term