JP4497675B2 - 非導電性成形体の表面処理装置及び表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非導電性成形体の表面処理装置及び表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
非導電性材料からなる多孔質体(例えば、不織布)又は非導電性フィルムの表面における、例えば、親水性、疎水性又は接着性を向上させたり、或いはこれらの特性を新たに付与する表面処理方法の1つとして、交流コロナ放電を利用する方法が知られている。この交流コロナ放電として、対向して配置した一対の電極間に被処理体を配置し、前記両電極間にパルス電圧を印加することにより、前記両電極間にコロナ放電を発生させ、その作用により被処理体の表面処理を実施する方法があり、パルス電圧を印加する方法としては、種々の方法が用いられている。
【0003】
前記の交流コロナ放電を利用する表面処理方法において、パルス電圧を印加する方法として、例えば、(1)半導体スイッチ及びトランスを併用する方法(例えば、米国特許第3,736,492号明細書など)、(2)トランスを必要とせず、直列配置した複数の半導体スイッチを用いる方法(例えば、特開平10−108480号公報、特開平11−60759号公報など)、或いは(3)ギャップスイッチを用いる方法(例えば、特開平6−336529号公報など)が知られている。
【0004】
前記米国特許第3,736,492号明細書に記載の方法は、直流電圧を半導体スイッチ(サイリスタ)によりスイッチングし、得られた低電圧又は中電圧のパルス電圧を、トランスで昇圧し、得られた高電圧のパルス電圧を電極に印加する方法である。しかしながら、この方法によると、パルス電圧の立ち上がり特性は半導体スイッチのターンオン時間及びトランスの特性に制限されるため、パルス電圧の立ち上がり時間は数百ナノ秒が限界であり、耐アーク性の低い被処理体(例えば、不織布)に適用した場合には、被処理体に穴が開いたり、溶けてしまうなどの弊害があった。このような弊害は、特に、負荷(すなわち、電極)の静電容量が大きい場合に顕著であった。また、同様の弊害は両電極の形状が平板状電極である場合にも顕著であった。前記平板状電極を用いる態様は連続的かつ高速に表面処理を実施できるため、工業生産上、有利であるものの、前記弊害があるため、実用的な大きさの平板状電極で放電処理を実施することは困難であった。
【0005】
また、前記特開平10−108480号公報及び特開平11−60759号公報に記載の方法は、複数の半導体スイッチを直列に配置することにより半導体スイッチの耐電圧性を向上させるものであり、これにより高電圧直流を直接スイッチングすることを可能にしたものである。しかしながら、この方法においても、半導体スイッチを用いているため、前記方法と全く同様の問題があった。
【0006】
一方、前記特開平6−336529号公報に記載の方法は、半導体スイッチを用いる前記方法とは異なり、コンデンサに充電された高電圧を、ギャップスイッチ(火花放電スイッチ)により瞬時に短絡させる方法である。この方法では、パルス電圧の立ち上がり特性は十分であるものの、負荷抵抗、充電抵抗又は回転体等を使用する必要があるため、高周波化が困難で、放電処理速度を上げることが困難であった。更に、この方法では、ギャップスイッチの消耗が激しく、ギャップスイッチの寿命が短いという欠点があった。
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、電極に印加するパルス高電圧の立ち上がりが速く(即ち、パルス高電圧の立ち上がり時間が短く)、前記パルス高電圧の高周波化が可能で、装置寿命の長い、非導電性成形体の表面処理装置及び表面処理方法を提供することを目的とする。
【発明を解決するための手段】
本発明の非導電性成形体の表面処理装置は、(1)対向して配置した一対の電極、(2)直流高圧源、半導体スイッチ及び磁気スイッチを含み、前記直流高圧源から得られる直流高電圧が前記半導体スイッチのスイッチングによりパルス高電圧に変換され、この変換されたパルス高電圧を直接磁気スイッチに供給でき、この供給されたパルス高電圧が前記磁気スイッチにより、電圧の立ち上がり及び立ち下がりが急峻化されたパルス高電圧に変換され、この変換された電圧の立ち上がり及び立ち下がりが急峻化されたパルス電圧を、前記の両電極間に印加することのできるパルス電源、並びに(3)前記両電極の間に形成され、表面処理を実施すべき非導電性成形体を配置し、前記非導電性成形体の表面処理を実施する表面処理空間を含むものである。本発明は、特定のパルス電源を用いると、パルス高電圧の立ち上がりが速く(即ち、パルス高電圧の立ち上がり時間が短く)、かつ高周波化されたパルス高電圧を一対の電極に印加して、放電を発生させることができ、しかもこの特定のパルス電源は寿命の長いことを見い出したものである。
【0007】
本発明の非導電性成形体の表面処理方法は、上記の表面処理装置を用いる非導電性成形体の表面処理方法であり、前記表面処理装置の表面処理空間に非導電性成形体を配置する工程、並びに前記表面処理装置のパルス電源により、電圧の立ち上がり及び立ち下がりが急峻化されたパルス高電圧を、前記の両電極間に印加して前記表面処理空間に放電を発生させ、表面処理を実施する工程を含む方法である。そのため、耐アーク性の低い非導電性成形体であっても、穴を開けたり溶かすことがなく、連続的かつ高速に表面処理を実施することができる方法である。なお、本発明において利用することのできる放電としては、例えば、コロナ放電、沿面放電、低圧グロー放電、大気圧グロー放電、或いは無声放電などがある。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明により表面処理することのできる非導電性成形体として、任意の非導電性の有機材料又は無機材料からなる多孔質体又は非多孔質体(例えば、フィルム)を挙げることができる。この非導電性の有機材料としては、各種有機高分子化合物、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、フッ素化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体などを挙げることができる。他方、非導電性の無機材料としては、各種セラミックス(例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナなど)又はガラス類(例えば、ソーダガラス、シリカガラスなど)などを挙げることができる。
【0009】
このような各種材料からなる多孔質体としては、例えば、繊維質型多孔質体、発泡体型多孔質体又はフィルム型多孔質体などを挙げることができる。繊維質型多孔質体としては、例えば、織物、編物、不織布などがある。この不織布としては、例えば、乾式不織布(例えば、水流絡合不織布、ニードルパンチ不織布、バインダ接着不織布、熱融着不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布など)、湿式不織布或いはこれらの組み合せなどを挙げることができる。また、発泡体型多孔質体としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系又はポリウレタン系などの樹脂からなる開放気泡型発泡体などを挙げることができる。また、フィルム型多孔質体として、例えば、穴あきフィルム、微孔フィルムなどを挙げることができる。
【0010】
以下、添付図面に沿って本発明を説明する。図1は本発明による非導電性成形体の表面処理装置の一態様を示す回路図であり、図2は図1に示す非導電性成形体の表面処理装置に被処理体である非導電性成形体(例えば、非導電性多孔質体)を配置した状態の一態様を模式的に示す断面図である。本発明においては、パルス電源の出力側に容量性負荷として作用する一対の電極(例えば、平板状電極)を接続する。
【0011】
対向して配置した一対の電極3a、3bのうち、電極3aはその対向表面側に面接触する誘電体4aを固定して担持し、電極3bもその対向表面側に面接触する誘電体4bを固定して担持している。両電極3a、3bは図2に示すように、それらの電極間に被処理体である非導電性成形体を配置可能な表面処理空間を設けるように対向して配置する。非導電性成形体は図2に示すように、一方の誘電体4bにのみ非導電性成形体の外側表面が接触するように表面処理空間に配置されている。
【0012】
図2に示す一対の電極3a、3bは、その対向表面側に面接触する誘電体4a、4bを担持しているが、本発明においては、前記一対の電極3a、3bの対向表面側に設ける誘電体4a、4bの有無は、例えば、被処理体である非導電性成形体の形状(特には、多孔質体であるか否か)に応じて適宜決定することができる。すなわち、本発明においては、図2に示すように、一対の電極3a、3bの両方に誘電体4a、4bを設けることもできるし、一方の電極3a、3bにのみ誘電体を設けることもできるし、或いはどちらの電極3a、3bにも誘電体を設けないこともできる。例えば、被処理体が非導電性多孔質体の場合には、少なくとも一方の電極3a、3bの対向表面側に誘電体を設けるのが好ましい。また、被処理体が非導電性非多孔質体(例えば、フィルム)である場合にも、少なくともいずれか一方の電極3a、3bの対向表面側に誘電体を設けるのが好ましい。なお、この場合に、被処理体が絶縁破壊を起さないようなフィルムである場合には、被処理体自体が誘電体として機能することができるため、特に誘電体を設ける必要はない。
【0013】
更に、本発明においては、被処理体である非導電性成形体5を配置する際の、非導電性成形体5と電極又は誘電体との接触の有無も、例えば、利用する放電の種類に応じて適宜決定することができる。すなわち、非導電性成形体5の両表面が電極又は誘電体と接触するように配置(両面接触)することもできるし、非導電性成形体5の両表面とも電極又は誘電体と接触しないように配置(両面非接触)することもできるし、非導電性成形体5の一方の表面のみが電極又は誘電体と接触するように配置(片面接触)することもできる。
【0014】
図1におけるパルス電源2は、(1)充電器J及びコンデンサCからなる直流高圧源、(2)直流高圧源から得られる直流高電圧を半導体スイッチSW1のスイッチングによりパルス高電圧に変換するパルス形成回路、(3)磁気スイッチ(過飽和リアクトル)MSにより、電圧の立ち上がり及び立ち下がりが急峻化されたパルス高電圧に磁気パルス圧縮する磁気パルス圧縮回路、とを含んでいる。このようなパルス電源2においては、まず充電器Jから直流電圧が供給され、コンデンサCに蓄積された直流高電圧は、半導体スイッチSW1のスイッチングによりパルス高電圧に変換されて磁気スイッチMSに供給される。当初、磁気スイッチMSはオフの状態にあり、磁性体の働き(高インダクタンス)により、パルス高電圧が容量性負荷(電極3a、3b)へ転送されるのを阻止する。その後、電圧時間積が磁気スイッチMSの設定値を越えると、磁気スイッチMSの磁性体が飽和して低インダクタンス化し、半導体スイッチSW1のスイッチングにより得られたパルス高電圧よりも更に立ち上がりが急峻化された形のパルス高電圧が容量性負荷(電極3a、3b)へと転送される。このようにしてパルス高電圧の立ち上がり特性が改善されると同時に高周波化も可能となった。なお、このパルス形成回路においては、同種又は異種の半導体スイッチを2つ以上、直列及び/又は並列に接続することができる。
【0015】
また、パルス電源が更にコンデンサを含んでおり、前記磁気スイッチに加えて前記コンデンサを使用することにより、更に電圧の立ち上がり及び立ち下がりを急峻化できるため好ましい態様である。この好ましい態様を図6に示す。図6の態様は、磁気スイッチMSの充電器J側直前にコンデンサC2を設けることにより、パルス高電圧の立ち上がりを更に急峻化することができる。
更に、パルス電源が磁気スイッチを2段以上併用し、少なくとも二段目以降の磁気スイッチの充電器側にコンデンサを設けることにより、更に電圧の立ち上がり及び立ち下がりを急峻化できるため好ましい態様である。この好ましい態様を図7に示す。図7の態様は、磁気スイッチを2段用いる方法であり、半導体スイッチSW1のスイッチングによる電圧の立ち上がりを、前段の磁気スイッチMS1により磁気アシストして立ち上がりを急峻化し、次いで、後段の磁気スイッチMS2により立ち上がりを更に急峻化することができる。なお、この態様においては、前段の磁気スイッチMS1の前にコンデンサを導入することにより、パルス高電圧の立ち上がりを更に急峻化することができる。
以上説明した回路図はパルス電源2の基本回路図であり、パルス波形を整えたり、回路動作を安定化させるために、抵抗等を挿入することができる。例えば、図1、図6或いは図7の回路図において、スイッチSW2の充電器J側に抵抗を入れたり、SW2と並列に抵抗を入れることができる。
【0016】
本発明の半導体スイッチSWとしては、一般的にパルス電源に使用されている半導体スイッチを使用することができ、例えば、FET素子、IGBT素子、GTO素子などを使用することができる。また、磁気スイッチの作動領域(すなわち電圧時間積)或いは飽和前後のインダクタンスは、例えば、容量性負荷の負荷容量又は印加電圧範囲などに応じて適宜決定することができる。例えば、急峻な立ち上がりを得るためには、飽和前のインダクタンスが大きく、飽和後のインダクタンスができるだけ小さいのが好ましい。このようにする方法として、磁気スイッチの磁性体コアの断面積を小さくし、コアに巻く負荷までの高圧リード線の巻数を多くするなどの、通常用いられている方法を採用することができる。また、コアは市販のものを使用することができるが、不飽和から飽和に至る特性変化が急峻であるもの程好ましい。
【0017】
本発明においては、前記磁気パルス圧縮回路を構成するコンデンサとは別に容量性負荷と並列にコンデンサを設けることができる。容量性負荷と並列にコンデンサを設けることにより、磁気スイッチからの漏れ電流を防ぐことができるので、漏れ電流による放電前の電圧変化を小さくすることができる。
【0018】
本発明において容量性負荷(電極)に印加するパルス高電圧としては、例えば、図3に示す両極性パルス波又は図4に示す単極性パルス波などを挙げることができる。本発明において、「電圧の立ち上がり及び立ち下がりが急峻化されたパルス高電圧」とは、立ち上がり時間及び立ち下がり時間がそれぞれ300ナノ秒以下であるパルス高電圧、好ましくは250ナノ秒以下であり、更に好ましくは200ナノ秒以下であるパルス高電圧を意味する。なお、「立ち上がり時間」とは、磁気スイッチが作動(すなわち、磁気スイッチが電源側から負荷の方向にオフの状態からオンの状態に変化すること)してからピーク電圧に達するまでの時間(例えば、図3又は図4に示すt1)を意味する。また、「立ち下がり時間」とは、磁気スイッチが反対方向に作動(すなわち、磁気スイッチが負荷の方向から電源側にオフの状態からオンの状態に変化すること)して逆ピーク電圧に達するまでの時間(例えば、図3又は図4に示す時間t2)を意味する。
【0019】
本発明においては、容量性負荷(電極)に印加するパルス波が、磁気スイッチの作動(すなわち、磁気スイッチがオフの状態からオンの状態に変化すること)から最初の放電開始までの時間が短いパルス波であるのが好ましい。より具体的には、磁気スイッチが作動してから最初の放電が始まるまでの時間が50ナノ秒以下であることが好ましく、40ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。なお、立ち上がりから立ち下がりまでのパルス幅は放電処理の効果には特に関与せず、このパルス幅は半導体スイッチSW2の動作のタイミングのとり方によって自由に設定できる。
【0020】
前述のようなパルス電源2から急峻化されたパルス高電圧が容量性負荷として作用する一対の電極3a、3b間に印加されると、誘電体4aと非導電性成形体との間の空間、場合により非導電性成形体(多孔質の場合)の内部空隙で放電する。放電により生成した電子又はラジカル等の作用により、非導電性成形体の改質が行われる。このように、本発明においては、立ち上がりが速く(更に好ましくは磁気スイッチの作動から最初の放電開始までの時間も短く)、かつ高周波化されたパルス高電圧を容量性負荷(電極)に印加できるので、均一な放電を発生させることができ、耐アーク性の低い非導電性成形体(例えば、不織布)であっても、非導電性成形体を損傷することなく、表面処理を実施することができる。また、このような弊害が顕著であった負荷の静電容量が大きい場合或いは両電極3a、3bの形状が平板状である場合にも、十分な工業生産速度で表面処理を実施することができる。
【0021】
本発明においては、例えば、対向して配置する一対の電極の形状、或いは被処理体である非導電性成形体と電極又は誘電体との接触の有無などは、例えば、利用する放電の種類、被処理体である非導電性成形体の形状或いは非導電性成形体の配置方法などに応じて適宜決定することができる。例えば、図2に示す表面処理装置1においては、一対の電極3a、3bがどちらも平板状電極であり、非導電性成形体5を表面処理空間に配置した状態で放電を発生させる態様であるが、本発明において用いる前記の一対の電極の形状は、例えば、利用する放電の種類或いは非導電性成形体の配置方法などに応じて、適宜決定することができる。例えば、コロナ放電又は沿面放電を利用する場合には、放電極として針状電極、線状電極又は円柱状電極を使用し、誘起電極として平板状電極を用いることができる。また、無声放電を利用し、長尺状の非導電性成形体をその長さ方向に移動させながら、連続的に表面処理を行う場合には、図5に示すように、一対の円柱状電極を用いることができる。
【0022】
図5に示す態様においては、円柱状の電極3aと円柱状電極3bとを対向するように配置する。電極3a及び電極3bはその表面が誘電体4a及び誘電体4bにそれぞれ覆われている。電極3a及び電極3bはその円柱中心軸を回転軸としてそれ自体が回転できるものでも良いし、回転せずに固定されたものでも良い。非導電性成形体5(例えば、非導電性多孔質体)が移動する際に、非導電性成形体5の表面に傷をつけにくくなる点で、その円柱中心軸を回転軸として回転することができる電極であるのが好ましい。この態様においては、電極3a及び電極3bをパルス電源2に接続する。非導電性成形体は両電極3a、3bの上流に設けた移送手段(例えば、一対の搬送ロール、図示せず)によって両電極3a、3bの表面上にそれぞれ担持された誘電体間に、矢印Aで示す方向に所定速度で連続的に供給され、それら誘電体と接触しながら誘電体間を通過する。誘電体間を通過した非導電性成形体は両電極3a、3bの下流に設けた移送手段(例えば、一対の搬送ロール、図示せず)によって、所定速度で連続的に移送される。非導電性成形体を移送する駆動力を供給する駆動手段(例えば、モータ)は、前記の搬送ロール及び/又は回転自在な電極3a、3bに連結することができる。このような一対の電極3a、3bを使用した場合、非導電性成形体が両誘電体4a、4bと接触しながら通過する際に、パルス電源2から立ち上がりが急峻化されたパルス高電圧を印加すると、非導電性成形体の外側表面と誘電体4a、4bとの間に形成されるギャップ、場合により非導電性成形体(多孔質の場合)の内部空隙で放電が発生する。この放電により生成した電子又はラジカル等の作用により、非導電性成形体の改質が行われる。
【0023】
本発明においては、所望により、被処理体である非導電性成形体5を表面処理空間に配置することのできる配置手段を設けることができる。前記配置手段は、被処理体を表面処理空間に搬送することができ、表面処理工程において表面処理空間の所定位置に維持することができ、表面処理工程終了後に表面処理空間から搬送することができる限り、特に限定されるものではないが、例えば、表面処理空間の上流側及び下流側にそれぞれ配置した搬送ロールやベルトコンベアなどを挙げることができる。本発明において前記配置手段を設ける場合には、配置工程と表面処理工程とを適宜、制御可能な制御手段を設けるのが好ましい。
【0024】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
【実施例】
(実施例1)
本実施例は図1及び図2に示す表面処理装置を用いて実施した。つまり、厚さ1mmのアルミナ誘電体4a、4bを対向表面側にそれぞれ担持する平板状電極(大きさ:10cm×75cm)2枚を、誘電体対向表面間の間隔が2mmとなるように間隔(表面処理空間)をあけ、対向させて配置した。そして、前記表面処理空間に、前記アルミナ誘電体4bのみと接触した状態で、ポリプロピレン繊維及びポリエチレン繊維のみからなる湿式不織布(面密度:74g/m2、厚さ:0.21mm)を配置した。
【0026】
次いで、直流高圧源(48nFのコンデンサCを使用)、半導体スイッチ(SW1として、IGBT(耐圧2800V、300A)を10個直列に接続、SW2として、IGBT(耐圧2800V、300A)を10個直列に接続)、磁気スイッチMS(コア断面積:254mm2)、及び半導体スイッチSW2の負荷側に電圧振動抑制のための抵抗(20Ω、図示せず)を、図1のように配線したパルス電源2に、前記両電極3a、3bを接続した。
【0027】
次いで、前記両電極間に、図4に示す波形を有する単極性パルス高電圧(ピーク電圧(図4のVp)=約18KV、パルス立ち上がり時間(図4に示す時間t1)=約200ナノ秒、パルス立ち下がり時間(図4に示す時間t2)=約200ナノ秒、パルス頻度=2500パルス/秒、パルス幅=約30μ秒)を約10秒間印加して放電処理を実施した。この印加は1気圧の空気中で実施した。この放電時の波形から、磁気スイッチMSの作動から最初の放電開始までの時間は約30ナノ秒程度と考えられ、極めて高速であった。また、放電処理後の不織布に損傷は全くなく、しかも水に浮かべると瞬時に浸水し、高い改質効果が確認された。
【0028】
(実施例2)
本実施例は図7に示す基本回路を有するパルス電源2を備えた、図2に示す表面処理装置を用いて実施した。つまり、厚さ1mmのアルミナ誘電体4a、4bを対向表面側にそれぞれ担持する平板状電極(大きさ:10cm×75cm)2枚を、誘電体対向表面間の間隔が2mmとなるように間隔(表面処理空間)をあけ、対向させて配置した。そして、前記表面処理空間に、前記アルミナ誘電体4bのみと接触した状態で、ポリプロピレン繊維及びポリエチレン繊維のみからなる湿式不織布(面密度:74g/m2、厚さ:0.21mm)を配置した。
【0029】
次いで、直流高圧源(19.2nFのコンデンサC1を使用)、半導体スイッチ(SW1として、IGBT(耐圧2800V、300A)を10個直列に接続、SW2として、IGBT(耐圧2800V、300A)を10個直列に接続)、磁気スイッチMS1(コア断面積:508mm2、巻き数:7)、磁気スイッチMS2(コア断面積:254mm2、巻き数:20)、コンデンサC2(19.2nF)、半導体スイッチSW2の充電器J側直前に20Ωの抵抗(図示せず)、及び半導体スイッチSW2と並列に20KΩの抵抗(図示せず)を、図7のように配線したパルス電源2に、前記両電極3a、3bを接続した。
【0030】
次いで、コンデンサC1における充電電圧を13KVとして試験したところ、パルス立ち上がり時間(図4に示す時間t1)、パルス立ち下がり時間(図4に示す時間t2)ともに100nsec以下と極めて急峻で、安定した放電を得ることができた。また、この時の立ち上がりから立ち下がりまでのパルス幅は1μsec未満で、単極性パルス高電圧のピーク電圧は16KVであった。
この結果から、大容量の負荷でも急峻なパルス電圧を安定して印加でき、表面処理に有効であることがわかった。
【0031】
(比較例1)
実施例1で用いたパルス電源に代えて、半導体スイッチ(IGBT素子)及び前記半導体スイッチのスイッチングにより得られるパルス電圧を昇圧するためのトランスを備えたパルス電源を用いたことを除いて、実施例1に記載の手順を繰り返した。なお、このパルス電源を用いて得られるパルス電圧は、ピーク電圧=±13KV、正電圧側のパルス幅=約1マイクロ秒、正電圧側のパルス立ち上がり時間=400〜500ナノ秒、正電圧側のパルス立ち下がり時間=400〜500ナノ秒、負電圧側のパルス幅=約1.5マイクロ秒、負電圧側のパルス立ち上がり時間=600ナノ秒、負電圧側のパルス立ち下がり時間=約800ナノ秒、周波数=250パルス/秒であった。放電処理後の湿式不織布には、ピンホールが多数みられ、満足のいくものは得られなかった。また、この場合、急峻な立ち上がり波形は観察されなかった。
【0032】
(比較例2)
実施例1で用いたパルス電源に代えて、直流高圧源(48nFのコンデンサCを使用)及び半導体スイッチ(SW1として、IGBT(耐圧2800V、300A)を10個直列に接続、SW2として、IGBT(耐圧2800V、300A)を10個直列に接続)のみからなる、図1のように配線したパルス電源(磁気スイッチMSは未使用)を用いたことを除いて、実施例1に記載の手順を繰り返した。このパルス電源を用いて得られるパルス電圧は磁気スイッチを用いた実施例1のような急峻な立ち上がりは見られず、処理した湿式不織布もピンホールが多数ある、満足のいくものではなかった。
【発明の効果】
本発明の非導電性成形体の表面処理装置は、特定のパルス電源を用いることにより、パルス高電圧の立ち上がりが速く(即ち、パルス高電圧の立ち上がり時間が短く)、かつ高周波化されたパルス高電圧を一対の電極に印加して、放電を発生させることができるものである。しかもこの特定のパルス電源は寿命の長いものである。
【0033】
本発明の非導電性成形体の表面処理方法は、耐アーク性の低い非導電性成形体であっても、穴を開けたり溶かすことがなく、連続的かつ高速に表面処理を実施することができる方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の非導電性成形体の表面処理装置の基本的原理を示す回路図
【図2】 図1に示す非導電性成形体の表面処理装置に、被処理体である非導電性成形体を配置した状態を模式的に示す断面図
【図3】 パルス波形状の一例
【図4】 パルス波形状の他例
【図5】 非導電性成形体の表面処理装置の態様を模式的に示す斜視図
【図6】 本発明の非導電性成形体の表面処理装置の基本的原理を示す別の回路図
【図7】 本発明の非導電性成形体の表面処理装置の基本的原理を示す更に別の回路図
【符号の説明】
1 表面処理装置
2 パルス電源
3 電極
4 誘電体
5 非導電性成形体
J 充電器
C コンデンサ
SW 半導体スイッチ
MS 磁気スイッチ
Claims (4)
- (1)対向して配置した一対の電極、(2)直流高圧源、半導体スイッチ及び磁気スイッチを含み、前記直流高圧源から得られる直流高電圧が前記半導体スイッチのスイッチングによりパルス高電圧に変換され、この変換されたパルス高電圧を直接磁気スイッチに供給でき、この供給されたパルス高電圧が前記磁気スイッチにより、電圧の立ち上がり及び立ち下がりが急峻化されたパルス高電圧に変換され、この変換された電圧の立ち上がり及び立ち下がりが急峻化されたパルス電圧を、前記の両電極間に印加することのできるパルス電源、並びに(3)前記両電極の間に形成され、表面処理を実施すべき非導電性成形体を配置し、前記非導電性成形体の表面処理を実施する表面処理空間を含むことを特徴とする、非導電性成形体の表面処理装置。
- 対向して配置した一対の電極が、それぞれ対向表面側に誘電体を担持した平板状電極であることを特徴とする、請求項1に記載の非導電性成形体の表面処理装置。
- パルス電源が、更にコンデンサを含んでおり、前記磁気スイッチに加えて前記コンデンサにより、電圧の立ち上がり及び立ち下がりが急峻化されたパルス高電圧を、前記の両電極間に印加することのできるパルス電源を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の非導電性成形体の表面処理装置。
- 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面処理装置を用いる非導電性成形体の表面処理方法であり、前記表面処理装置の表面処理空間に非導電性成形体を配置する工程、並びに前記表面処理装置のパルス電源により、電圧の立ち上がり及び立ち下がりが急峻化されたパルス高電圧を、前記の両電極間に印加して前記表面処理空間に放電を発生させ、表面処理を実施する工程を含むことを特徴とする、非導電性成形体の表面処理方法。
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