JP3396081B2 - 合成樹脂製保持器の製造方法 - Google Patents
合成樹脂製保持器の製造方法Info
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- F16C33/00—Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
- F16C33/30—Parts of ball or roller bearings
- F16C33/46—Cages for rollers or needles
- F16C33/4617—Massive or moulded cages having cage pockets surrounding the rollers, e.g. machined window cages
- F16C33/4623—Massive or moulded cages having cage pockets surrounding the rollers, e.g. machined window cages formed as one-piece cages, i.e. monoblock cages
- F16C33/4635—Massive or moulded cages having cage pockets surrounding the rollers, e.g. machined window cages formed as one-piece cages, i.e. monoblock cages made from plastic, e.g. injection moulded window cages
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- F16C2220/00—Shaping
- F16C2220/02—Shaping by casting
- F16C2220/04—Shaping by casting by injection-moulding
Description
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】この発明は、転がり軸受に使用さ
れる合成樹脂製の保持器を、射出成形により製造する方
法に関するものである。 【０００２】 【従来の技術】合成樹脂製の保持器は通常は環状である
が、環状ではシャフト等の部材に組み込めない場合があ
る。その場合には図５に示すように、環状の本体９１
に、複数個のポケット９２を設けるとともに、当該本体
９１の１個所に割り溝９３を形成して環を分断した形状
の合成樹脂製保持器Ｃが使用される。当該保持器Ｃは、
割り溝９３の部分で開くことができるので、他部材への
組み込みが容易である。 【０００３】上記合成樹脂製保持器Ｃは、通常、とくに
寸法精度等を維持するために、当該保持器Ｃの形状に対
応したキャビティを有する金型（いずれも図示せず）の
複数箇所（図では３個所）に設けたゲートＧ（破線で示
す）を通して、キャビティ内に合成樹脂を注入すること
で製造される（いわゆる多点ゲート方式）。なお、上記
多点ゲート式の成形では、各ゲートＧから注入された合
成樹脂が合流する位置に発生する、ほぼ環の軸方向に沿
うウエルドライン（以下「縦のウエルドライン」とい
う）Ｗが、図中一点鎖線で示すように、ポケット９２間
の柱部９５に位置するように、ゲートＧの数や位置、あ
るいは各ゲートＧからの合成樹脂の注入条件等が適宜調
整される。これは、上記縦のウエルドラインＷがポケッ
ト９２の上下のブリッジ部９４に位置すると、当該ブリ
ッジ部９４の強度を弱めるからである。 【０００４】 【発明が解決しようとする課題】ところが、とくに各種
のエンジニアリングプラスチック、たとえばナイロン６
６等のポリアミド樹脂やポリフェニレンサルファイド
（ＰＰＳ）など、比較的硬質の合成樹脂材料を使用した
場合には、縦のウエルドラインＷを柱部９５に位置させ
ているにも拘らず、他部材への組み込みのために保持器
Ｃを割り溝９３の部分で開くと、上記縦のウエルドライ
ンＷの付近で白化が生じて、白化部分の強度が大きく低
下したり、あるいは縦のウエルドラインＷに沿って割れ
等が生じて、保持器Ｃが破損したりするという問題があ
った。 【０００５】これは、上記縦のウエルドラインＷの部分
では強化繊維の配向が均一でなく、その配向に乱れがあ
るため、とくに硬質で柔軟性の少ない、上記各種の合成
樹脂を使用した場合には、保持器Ｃを割り溝９３の部分
で開いた際の強度低下が、他の部分に比べて著しく大き
くなることが原因と考えられる。この発明の目的は、他
部材への組み込みのために割り溝の部分で開いた際に、
白化や割れ等が生じない合成樹脂製保持器を製造するた
めの製造方法を提供することにある。 【０００６】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の、この発明の合成樹脂製保持器の製造方法は、環状
で、かつ環の１個所が割り溝によって分断された形状の
合成樹脂製保持器を、当該保持器の形状に対応したキャ
ビティを有する金型を用いた射出成形により製造するに
際し、上記キャビティの、割り溝の近傍に対応する位置
に臨ませた１個所のゲートを通して、当該キャビティ内
に合成樹脂を注入することを特徴とする。 【０００７】 【作用】上記構成からなる、この発明の合成樹脂製保持
器の製造方法によれば、割り溝の近傍に対応する位置に
臨ませた１個所のゲートから、金型のキャビティ内に合
成樹脂を注入する、いわゆる１点ゲート方式により合成
樹脂製保持器を成形するので、従来の多点ゲート方式の
ように、ポケットの上下のブリッジ部や、あるいはポケ
ット間の柱部に、保持器を割り溝の部分で開いた際の強
度低下の原因となる縦のウエルドラインは発生しない。
したがってこの発明によれば、他部材への組み込みのた
めに割り溝の部分で開いた際に、白化や割れ等が生じな
い合成樹脂製保持器を製造することができる。 【０００８】 【実施例】以下にこの発明の製造方法を、図１に示す形
状を有する、たとえば針状ころ軸受や円筒ころ軸受等に
使用される合成樹脂製保持器を製造する場合を例にとっ
て説明する。図１の合成樹脂製保持器Ｃは、環状の本体
１に、複数個（図では８個）の断面矩形状のポケット２
を設けるとともに、本体１の１個所に、環の軸方向に沿
う割り溝３を形成して環を分断したものである。 【０００９】上記合成樹脂製保持器Ｃを射出成形により
成形するための金型は、当該保持器Ｃの形状に対応した
キャビティ（図示せず）と、このキャビティの、割り溝
３に隣接する柱部５ａに対応する位置に臨ませた、１個
所のゲートＧ（図中破線で示す）とを備えている。そし
て、上記１個所のゲートＧを通して、溶融した合成樹脂
をキャビティ内に注入することで、本発明の製造方法が
実施され、合成樹脂製保持器Ｃが製造される。 【００１０】上記製造方法によれば、前述したように、
ポケット２の上下のブリッジ部４や、あるいはポケット
２間の柱部５に縦のウエルドラインが発生することが防
止される。このため、製造された合成樹脂製保持器Ｃ
は、他部材への組み込みのために割り溝３の部分で開い
た際に白化や割れ等が生じない、特性にすぐれたものと
なる。 【００１１】なお上記製造方法では、ポケット２間の柱
部５に、図中一点鎖線で示すように、ほぼ環の周方向に
沿うウエルドライン（以下「横のウエルドライン」とい
う）ωが生じる可能性がある。しかし上記横のウエルド
ラインωは、縦のウエルドラインのように、保持器Ｃを
割り溝３の部分で開いた際に白化や割れ等を生じること
がなく、保持器Ｃの特性に影響を及ぼさないので、ある
程度の発生は許容される。 【００１２】断面矩形状のポケット２を有する図１の保
持器Ｃの場合、ゲートＧの位置は、同図に示すように、
割り溝３に隣接する柱部５ａに対応する範囲内に限定さ
れる。なぜなら、図２(c) に示すように柱部５ａの範囲
を外れて、割り溝３から少し離れたブリッジ部４に対応
する位置にゲートＧを配置した場合には、当該ゲートＧ
から注入された合成樹脂が、図中二点鎖線の矢印で示す
ようにキャビティ内を流れて、ポケット２を挟んで反対
側のブリッジ部４の部分で合流するため、上記ブリッジ
部４に、縦のウエルドラインＷが生じてしまう。このた
め、保持器Ｃを他部材への組み込みのために割り溝３の
部分で開いた際に、上記縦のウエルドラインＷの部分で
白化や割れ等が生じるおそれがある。 【００１３】これに対し図２(a)(b)に示すように、割り
溝３に隣接する柱部５ａに対応する範囲内にゲートＧを
配置した場合には、多少その位置が上下しても、ゲート
Ｇから注入された合成樹脂は、図中二点鎖線の矢印で示
すようにキャビティ内を流れて、ポケット２間の柱部５
で上下から合流するため、両図中にそれぞれ一点鎖線で
示すように柱部５に横のウエルドラインωが生じるだけ
で、ブリッジ部４や柱部５には、白化や割れ等の原因と
なる縦のウエルドラインは発生しない。このため、保持
器Ｃの特性に影響が生じない。 【００１４】よって、断面矩形状のポケット２を有する
合成樹脂製保持器Ｃの場合は、ゲートＧを、割り溝３に
隣接する柱部５ａに対応する位置に臨ませて配置しなけ
ればならないのである。なお、断面矩形状以外の断面形
状のポケットを有する保持器の場合は、樹脂の流れが違
ってくるので、ゲートの位置は、以上で説明した位置に
は限定されない。要するにゲートは、ポケットの形状等
に応じて、少なくとも割り溝の近傍で、しかも、白化や
割れ等の原因となる縦のウエルドラインを生じるおそれ
のない位置に配置されていればよい。 【００１５】横のウエルドラインωは、前記のように、
保持器Ｃの特性にはほとんど影響を及ぼさないが、でき
れば発生させないのがよい。そのためには、ゲートＧか
ら合成樹脂を注入する際の樹脂温度や金型温度、あるい
は射出圧力等の成形条件を、従来の多点ゲート方式の場
合に比べてより高めに設定することが望ましい。合成樹
脂製保持器Ｃの原料である合成樹脂としては、保持器に
使用される従来公知の種々の合成樹脂が、いずれも使用
可能であるが、とくに機械的特性や耐熱性等にすぐれる
とともに、通常の製造方法では、保持器を割り溝の部分
で開いた際に白化や割れ等が生じるおそれのある硬質の
合成樹脂が好適に使用される。 【００１６】上記硬質の合成樹脂の例としては、これに
限定されるものではないが、たとえばナイロン６６、ナ
イロン４６等のポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルフ
ァイド（ＰＰＳ）、ポリエーテルエーテルケトン（ＰＥ
ＥＫ）、ポリエーテルサルフォン（ＰＥＳ）、ポリエー
テルニトリル（ＰＥＮ）、芳香族ポリアミド等のエンジ
ニアリングプラスチック類があげられる。 【００１７】また上記合成樹脂に配合される強化繊維と
しては、たとえばガラス繊維、炭素繊維、繊維状の珪石
灰（ウォラストナイト）、炭化けい素繊維、ボロン繊
維、アルミナ繊維、Si−Ti−Ｃ−Ｏ繊維、金属繊維
（銅、鋼、ステンレス鋼等）、芳香族ポリアミド（アラ
ミド）繊維、チタン酸カリウムウィスカー、グラファイ
トウィスカー、炭化けい素ウィスカー、窒化けい素ウィ
スカー、アルミナウィスカー等があげられる。 【００１８】強化繊維の配合割合はとくに限定されない
が、全成分中の１０〜４０重量％であるのが好ましい。
強化繊維の配合割合が上記範囲未満では、保持器の機械
的特性や耐熱性等が不十分になるおそれがあり、逆に強
化繊維の配合割合が上記範囲を超えた場合には、他部材
への組み込みのために割り溝の部分で開くのが困難にな
り、無理に開いた場合にはブリッジ部等に白化や割れ等
が発生しやすくなるおそれがある。 【００１９】合成樹脂には、上記強化繊維以外にも、た
とえば充填材や安定剤等の各種の添加剤を添加してもよ
い。上記各成分が添加され、溶融、混練された合成樹脂
は、従来と同様に、ペレット状、粉末状等の、成形材料
として使用可能な形状にした後、成形に使用される。 【００２０】具体例 全成分の３２重量％のガラス繊維を添加したナイロン６
６を、図１に示す形状（但しポケット数は８個でなく１
６個）を有する合成樹脂製保持器Ｃを成形するための、
当該保持器Ｃに対応したキャビティ内に、このキャビテ
ィの、割り溝３に隣接する柱部５ａに対応する位置に臨
ませた１個所のゲートＧから、射出成形により注入し
て、上記合成樹脂製保持器Ｃを製造した。保持器Ｃの各
部の寸法は、以下のとおりである。 ・外形 外径：２４ｍｍ 内径：２０ｍｍ 高さ：１７ｍｍ ・ポケット 個数：８個 高さ：１３ｍｍ 幅：２ｍｍ ・割り溝 幅：１ｍｍ 得られた保持器Ｃの外観を観察したところ、柱部５に横
のウエルドラインωが観察されたが、ブリッジ部４や柱
部５に縦のウエルドラインは観察されなかった。 【００２１】比較例 全成分の３２重量％のガラス繊維を添加したナイロン６
６を、図５に示す形状（但しポケット数は８個でなく１
６個）を有する合成樹脂製保持器Ｃを成形するための、
当該保持器Ｃに対応したキャビティ内に、このキャビテ
ィの３個所のゲートＧから、射出成形により注入して、
上記合成樹脂製保持器Ｃを製造した。保持器Ｃの各部の
寸法は、具体例と同じとした。 【００２２】得られた保持器Ｃの外観を観察したとこ
ろ、柱部９５の、図５に一点鎖線で示す２個所に、縦の
ウエルドラインＷが観察された。強度試験 上記具体例、比較例で製造した合成樹脂製保持器Ｃの割
り溝を、図３に黒矢印で示す方向に一定速度で開き、そ
の開き量（図中Ｓ）と、荷重との関係を測定したとこ
ろ、比較例の保持器は、割り溝の開き量が６．５ｍｍ
（荷重０．５kgｆ）の段階で、前記縦のウエルドライン
Ｗに沿って割れが発生したので、測定を中止した。 【００２３】これに対し具体例の保持器は、図４に示す
ように、割り溝の開き量が２６ｍｍの段階で試験を終了
するまで、当該開き量と荷重とがほぼ比例関係を示し
た。また強度試験中に具体例の保持器を観察したとこ
ろ、試験終了までの間に白化や割れはみられなかった。
そして試験終了後に具体例の保持器を試験装置から外し
たところ、自身の弾性によって元の形状に戻るのが観察
された。 【００２４】具体例の保持器は、各ポケットにころを装
着した状態で割り溝を開くと、その開き量が１７ｍｍの
段階でころ落ちが発生するので、上記のように、割り溝
の開き量が２６ｍｍになるまで破損しないということ
は、実用可能な割り溝の開き量の範囲（１７ｍｍ以下）
では、十分な耐性を有するものであることがわかった。 【００２５】 【発明の効果】以上、詳述したようにこの発明の合成樹
脂製保持器の製造方法によれば、保持器に、白化や割れ
の原因となる縦のウエルドラインを発生させることな
く、環状で、かつ環の１個所が割り溝によって分断され
た形状の合成樹脂製保持器を製造することができる。よ
ってこの発明によれば、上記特殊な形状を有し、またと
くに硬質で柔軟性の少ない合成樹脂からなり、しかも、
他部材への組み込みのために割り溝の部分で開いた際に
白化や割れ等が生じない合成樹脂製保持器を、通常の射
出成形により製造できるという特有の作用効果を奏す
る。
れる合成樹脂製の保持器を、射出成形により製造する方
法に関するものである。 【０００２】 【従来の技術】合成樹脂製の保持器は通常は環状である
が、環状ではシャフト等の部材に組み込めない場合があ
る。その場合には図５に示すように、環状の本体９１
に、複数個のポケット９２を設けるとともに、当該本体
９１の１個所に割り溝９３を形成して環を分断した形状
の合成樹脂製保持器Ｃが使用される。当該保持器Ｃは、
割り溝９３の部分で開くことができるので、他部材への
組み込みが容易である。 【０００３】上記合成樹脂製保持器Ｃは、通常、とくに
寸法精度等を維持するために、当該保持器Ｃの形状に対
応したキャビティを有する金型（いずれも図示せず）の
複数箇所（図では３個所）に設けたゲートＧ（破線で示
す）を通して、キャビティ内に合成樹脂を注入すること
で製造される（いわゆる多点ゲート方式）。なお、上記
多点ゲート式の成形では、各ゲートＧから注入された合
成樹脂が合流する位置に発生する、ほぼ環の軸方向に沿
うウエルドライン（以下「縦のウエルドライン」とい
う）Ｗが、図中一点鎖線で示すように、ポケット９２間
の柱部９５に位置するように、ゲートＧの数や位置、あ
るいは各ゲートＧからの合成樹脂の注入条件等が適宜調
整される。これは、上記縦のウエルドラインＷがポケッ
ト９２の上下のブリッジ部９４に位置すると、当該ブリ
ッジ部９４の強度を弱めるからである。 【０００４】 【発明が解決しようとする課題】ところが、とくに各種
のエンジニアリングプラスチック、たとえばナイロン６
６等のポリアミド樹脂やポリフェニレンサルファイド
（ＰＰＳ）など、比較的硬質の合成樹脂材料を使用した
場合には、縦のウエルドラインＷを柱部９５に位置させ
ているにも拘らず、他部材への組み込みのために保持器
Ｃを割り溝９３の部分で開くと、上記縦のウエルドライ
ンＷの付近で白化が生じて、白化部分の強度が大きく低
下したり、あるいは縦のウエルドラインＷに沿って割れ
等が生じて、保持器Ｃが破損したりするという問題があ
った。 【０００５】これは、上記縦のウエルドラインＷの部分
では強化繊維の配向が均一でなく、その配向に乱れがあ
るため、とくに硬質で柔軟性の少ない、上記各種の合成
樹脂を使用した場合には、保持器Ｃを割り溝９３の部分
で開いた際の強度低下が、他の部分に比べて著しく大き
くなることが原因と考えられる。この発明の目的は、他
部材への組み込みのために割り溝の部分で開いた際に、
白化や割れ等が生じない合成樹脂製保持器を製造するた
めの製造方法を提供することにある。 【０００６】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の、この発明の合成樹脂製保持器の製造方法は、環状
で、かつ環の１個所が割り溝によって分断された形状の
合成樹脂製保持器を、当該保持器の形状に対応したキャ
ビティを有する金型を用いた射出成形により製造するに
際し、上記キャビティの、割り溝の近傍に対応する位置
に臨ませた１個所のゲートを通して、当該キャビティ内
に合成樹脂を注入することを特徴とする。 【０００７】 【作用】上記構成からなる、この発明の合成樹脂製保持
器の製造方法によれば、割り溝の近傍に対応する位置に
臨ませた１個所のゲートから、金型のキャビティ内に合
成樹脂を注入する、いわゆる１点ゲート方式により合成
樹脂製保持器を成形するので、従来の多点ゲート方式の
ように、ポケットの上下のブリッジ部や、あるいはポケ
ット間の柱部に、保持器を割り溝の部分で開いた際の強
度低下の原因となる縦のウエルドラインは発生しない。
したがってこの発明によれば、他部材への組み込みのた
めに割り溝の部分で開いた際に、白化や割れ等が生じな
い合成樹脂製保持器を製造することができる。 【０００８】 【実施例】以下にこの発明の製造方法を、図１に示す形
状を有する、たとえば針状ころ軸受や円筒ころ軸受等に
使用される合成樹脂製保持器を製造する場合を例にとっ
て説明する。図１の合成樹脂製保持器Ｃは、環状の本体
１に、複数個（図では８個）の断面矩形状のポケット２
を設けるとともに、本体１の１個所に、環の軸方向に沿
う割り溝３を形成して環を分断したものである。 【０００９】上記合成樹脂製保持器Ｃを射出成形により
成形するための金型は、当該保持器Ｃの形状に対応した
キャビティ（図示せず）と、このキャビティの、割り溝
３に隣接する柱部５ａに対応する位置に臨ませた、１個
所のゲートＧ（図中破線で示す）とを備えている。そし
て、上記１個所のゲートＧを通して、溶融した合成樹脂
をキャビティ内に注入することで、本発明の製造方法が
実施され、合成樹脂製保持器Ｃが製造される。 【００１０】上記製造方法によれば、前述したように、
ポケット２の上下のブリッジ部４や、あるいはポケット
２間の柱部５に縦のウエルドラインが発生することが防
止される。このため、製造された合成樹脂製保持器Ｃ
は、他部材への組み込みのために割り溝３の部分で開い
た際に白化や割れ等が生じない、特性にすぐれたものと
なる。 【００１１】なお上記製造方法では、ポケット２間の柱
部５に、図中一点鎖線で示すように、ほぼ環の周方向に
沿うウエルドライン（以下「横のウエルドライン」とい
う）ωが生じる可能性がある。しかし上記横のウエルド
ラインωは、縦のウエルドラインのように、保持器Ｃを
割り溝３の部分で開いた際に白化や割れ等を生じること
がなく、保持器Ｃの特性に影響を及ぼさないので、ある
程度の発生は許容される。 【００１２】断面矩形状のポケット２を有する図１の保
持器Ｃの場合、ゲートＧの位置は、同図に示すように、
割り溝３に隣接する柱部５ａに対応する範囲内に限定さ
れる。なぜなら、図２(c) に示すように柱部５ａの範囲
を外れて、割り溝３から少し離れたブリッジ部４に対応
する位置にゲートＧを配置した場合には、当該ゲートＧ
から注入された合成樹脂が、図中二点鎖線の矢印で示す
ようにキャビティ内を流れて、ポケット２を挟んで反対
側のブリッジ部４の部分で合流するため、上記ブリッジ
部４に、縦のウエルドラインＷが生じてしまう。このた
め、保持器Ｃを他部材への組み込みのために割り溝３の
部分で開いた際に、上記縦のウエルドラインＷの部分で
白化や割れ等が生じるおそれがある。 【００１３】これに対し図２(a)(b)に示すように、割り
溝３に隣接する柱部５ａに対応する範囲内にゲートＧを
配置した場合には、多少その位置が上下しても、ゲート
Ｇから注入された合成樹脂は、図中二点鎖線の矢印で示
すようにキャビティ内を流れて、ポケット２間の柱部５
で上下から合流するため、両図中にそれぞれ一点鎖線で
示すように柱部５に横のウエルドラインωが生じるだけ
で、ブリッジ部４や柱部５には、白化や割れ等の原因と
なる縦のウエルドラインは発生しない。このため、保持
器Ｃの特性に影響が生じない。 【００１４】よって、断面矩形状のポケット２を有する
合成樹脂製保持器Ｃの場合は、ゲートＧを、割り溝３に
隣接する柱部５ａに対応する位置に臨ませて配置しなけ
ればならないのである。なお、断面矩形状以外の断面形
状のポケットを有する保持器の場合は、樹脂の流れが違
ってくるので、ゲートの位置は、以上で説明した位置に
は限定されない。要するにゲートは、ポケットの形状等
に応じて、少なくとも割り溝の近傍で、しかも、白化や
割れ等の原因となる縦のウエルドラインを生じるおそれ
のない位置に配置されていればよい。 【００１５】横のウエルドラインωは、前記のように、
保持器Ｃの特性にはほとんど影響を及ぼさないが、でき
れば発生させないのがよい。そのためには、ゲートＧか
ら合成樹脂を注入する際の樹脂温度や金型温度、あるい
は射出圧力等の成形条件を、従来の多点ゲート方式の場
合に比べてより高めに設定することが望ましい。合成樹
脂製保持器Ｃの原料である合成樹脂としては、保持器に
使用される従来公知の種々の合成樹脂が、いずれも使用
可能であるが、とくに機械的特性や耐熱性等にすぐれる
とともに、通常の製造方法では、保持器を割り溝の部分
で開いた際に白化や割れ等が生じるおそれのある硬質の
合成樹脂が好適に使用される。 【００１６】上記硬質の合成樹脂の例としては、これに
限定されるものではないが、たとえばナイロン６６、ナ
イロン４６等のポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルフ
ァイド（ＰＰＳ）、ポリエーテルエーテルケトン（ＰＥ
ＥＫ）、ポリエーテルサルフォン（ＰＥＳ）、ポリエー
テルニトリル（ＰＥＮ）、芳香族ポリアミド等のエンジ
ニアリングプラスチック類があげられる。 【００１７】また上記合成樹脂に配合される強化繊維と
しては、たとえばガラス繊維、炭素繊維、繊維状の珪石
灰（ウォラストナイト）、炭化けい素繊維、ボロン繊
維、アルミナ繊維、Si−Ti−Ｃ−Ｏ繊維、金属繊維
（銅、鋼、ステンレス鋼等）、芳香族ポリアミド（アラ
ミド）繊維、チタン酸カリウムウィスカー、グラファイ
トウィスカー、炭化けい素ウィスカー、窒化けい素ウィ
スカー、アルミナウィスカー等があげられる。 【００１８】強化繊維の配合割合はとくに限定されない
が、全成分中の１０〜４０重量％であるのが好ましい。
強化繊維の配合割合が上記範囲未満では、保持器の機械
的特性や耐熱性等が不十分になるおそれがあり、逆に強
化繊維の配合割合が上記範囲を超えた場合には、他部材
への組み込みのために割り溝の部分で開くのが困難にな
り、無理に開いた場合にはブリッジ部等に白化や割れ等
が発生しやすくなるおそれがある。 【００１９】合成樹脂には、上記強化繊維以外にも、た
とえば充填材や安定剤等の各種の添加剤を添加してもよ
い。上記各成分が添加され、溶融、混練された合成樹脂
は、従来と同様に、ペレット状、粉末状等の、成形材料
として使用可能な形状にした後、成形に使用される。 【００２０】具体例 全成分の３２重量％のガラス繊維を添加したナイロン６
６を、図１に示す形状（但しポケット数は８個でなく１
６個）を有する合成樹脂製保持器Ｃを成形するための、
当該保持器Ｃに対応したキャビティ内に、このキャビテ
ィの、割り溝３に隣接する柱部５ａに対応する位置に臨
ませた１個所のゲートＧから、射出成形により注入し
て、上記合成樹脂製保持器Ｃを製造した。保持器Ｃの各
部の寸法は、以下のとおりである。 ・外形 外径：２４ｍｍ 内径：２０ｍｍ 高さ：１７ｍｍ ・ポケット 個数：８個 高さ：１３ｍｍ 幅：２ｍｍ ・割り溝 幅：１ｍｍ 得られた保持器Ｃの外観を観察したところ、柱部５に横
のウエルドラインωが観察されたが、ブリッジ部４や柱
部５に縦のウエルドラインは観察されなかった。 【００２１】比較例 全成分の３２重量％のガラス繊維を添加したナイロン６
６を、図５に示す形状（但しポケット数は８個でなく１
６個）を有する合成樹脂製保持器Ｃを成形するための、
当該保持器Ｃに対応したキャビティ内に、このキャビテ
ィの３個所のゲートＧから、射出成形により注入して、
上記合成樹脂製保持器Ｃを製造した。保持器Ｃの各部の
寸法は、具体例と同じとした。 【００２２】得られた保持器Ｃの外観を観察したとこ
ろ、柱部９５の、図５に一点鎖線で示す２個所に、縦の
ウエルドラインＷが観察された。強度試験 上記具体例、比較例で製造した合成樹脂製保持器Ｃの割
り溝を、図３に黒矢印で示す方向に一定速度で開き、そ
の開き量（図中Ｓ）と、荷重との関係を測定したとこ
ろ、比較例の保持器は、割り溝の開き量が６．５ｍｍ
（荷重０．５kgｆ）の段階で、前記縦のウエルドライン
Ｗに沿って割れが発生したので、測定を中止した。 【００２３】これに対し具体例の保持器は、図４に示す
ように、割り溝の開き量が２６ｍｍの段階で試験を終了
するまで、当該開き量と荷重とがほぼ比例関係を示し
た。また強度試験中に具体例の保持器を観察したとこ
ろ、試験終了までの間に白化や割れはみられなかった。
そして試験終了後に具体例の保持器を試験装置から外し
たところ、自身の弾性によって元の形状に戻るのが観察
された。 【００２４】具体例の保持器は、各ポケットにころを装
着した状態で割り溝を開くと、その開き量が１７ｍｍの
段階でころ落ちが発生するので、上記のように、割り溝
の開き量が２６ｍｍになるまで破損しないということ
は、実用可能な割り溝の開き量の範囲（１７ｍｍ以下）
では、十分な耐性を有するものであることがわかった。 【００２５】 【発明の効果】以上、詳述したようにこの発明の合成樹
脂製保持器の製造方法によれば、保持器に、白化や割れ
の原因となる縦のウエルドラインを発生させることな
く、環状で、かつ環の１個所が割り溝によって分断され
た形状の合成樹脂製保持器を製造することができる。よ
ってこの発明によれば、上記特殊な形状を有し、またと
くに硬質で柔軟性の少ない合成樹脂からなり、しかも、
他部材への組み込みのために割り溝の部分で開いた際に
白化や割れ等が生じない合成樹脂製保持器を、通常の射
出成形により製造できるという特有の作用効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の製造方法によって製造される合成樹
脂製保持器の一例と、その製造のための樹脂注入用のゲ
ートの位置とを示す斜視図である。 【図２】同図(a) 〜(c) はそれぞれ、ゲートの位置とウ
エルドラインの発生位置との関係を説明する展開側面図
である。 【図３】合成樹脂製保持器を割り溝の部分で開いた際の
強度を測定する方法を説明する平面図である。 【図４】上記測定方法によって測定した、具体例の保持
器の、割り溝の部分の開き量と、その際の荷重との関係
を示すグラフである。 【図５】従来の製造方法によって製造される合成樹脂製
保持器の一例と、その製造のための樹脂注入用のゲート
の位置とを示す斜視図である。 【符号の説明】 Ｃ 合成樹脂製保持器 Ｇ ゲート ３ 割り溝
脂製保持器の一例と、その製造のための樹脂注入用のゲ
ートの位置とを示す斜視図である。 【図２】同図(a) 〜(c) はそれぞれ、ゲートの位置とウ
エルドラインの発生位置との関係を説明する展開側面図
である。 【図３】合成樹脂製保持器を割り溝の部分で開いた際の
強度を測定する方法を説明する平面図である。 【図４】上記測定方法によって測定した、具体例の保持
器の、割り溝の部分の開き量と、その際の荷重との関係
を示すグラフである。 【図５】従来の製造方法によって製造される合成樹脂製
保持器の一例と、その製造のための樹脂注入用のゲート
の位置とを示す斜視図である。 【符号の説明】 Ｃ 合成樹脂製保持器 Ｇ ゲート ３ 割り溝
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 芦田 重孝
大阪市中央区南船場三丁目５番８号 光
洋精工株式会社内
(56)参考文献 特開 平３−180313（ＪＰ，Ａ)
特開 昭62−98029（ＪＰ，Ａ)
(58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名)
F16C 33/38
B29C 45/26
B29L 31:04
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】環状で、かつ環の１個所が割り溝によって
分断された形状の合成樹脂製保持器を、当該保持器の形
状に対応したキャビティを有する金型を用いた射出成形
により製造する方法において、上記キャビティの、割り
溝の近傍に対応する位置に臨ませた１個所のゲートを通
して、当該キャビティ内に合成樹脂を注入することを特
徴とする合成樹脂製保持器の製造方法。
Priority Applications (1)
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|---|---|---|---|
| JP11290294A JP3396081B2 (ja) | 1994-05-26 | 1994-05-26 | 合成樹脂製保持器の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP11290294A JP3396081B2 (ja) | 1994-05-26 | 1994-05-26 | 合成樹脂製保持器の製造方法 |
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| JPH07317773A JPH07317773A (ja) | 1995-12-08 |
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Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP11290294A Expired - Fee Related JP3396081B2 (ja) | 1994-05-26 | 1994-05-26 | 合成樹脂製保持器の製造方法 |
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|---|---|
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-
1994
- 1994-05-26 JP JP11290294A patent/JP3396081B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| US20150300409A1 (en) * | 2012-11-06 | 2015-10-22 | Ntn Corporation | Retainer for tapered roller bearing |
| US9556907B2 (en) * | 2012-11-06 | 2017-01-31 | Ntn Corporation | Retainer for tapered roller bearing |
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| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH07317773A (ja) | 1995-12-08 |
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