JP3391586B2 - セルロースエステル溶液および成形品の製造方法 - Google Patents

セルロースエステル溶液および成形品の製造方法

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JP3391586B2 JP30826294A JP30826294A JP3391586B2 JP 3391586 B2 JP3391586 B2 JP 3391586B2 JP 30826294 A JP30826294 A JP 30826294A JP 30826294 A JP30826294 A JP 30826294A JP 3391586 B2 JP3391586 B2 JP 3391586B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、セルロースエステル成
形品を製造する上で原液として適したセルロースエステ
ル溶液、およびそれを用いた成形品の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】セルロースエステルは、慣用の合成樹脂
に比べて、寸法安定性および耐熱性が高く、粘着性であ
るという特色を有している。そのため、セルロースエス
テルは、プラスチック、ラッカーなどの材料として利用
されるとともに、種々の成形品、例えば、フィルム、繊
維などに成形されている。また、セルロースエステルの
うち、セルローストリアセテートは、光学用フィルムの
支持体などとして広く利用されている。
【0003】一方、セルロースエステルフィルムは、セ
ルロースエステル溶液を流延することにより製造されて
いる。このセルロースエステル溶液の溶媒には、例え
ば、塩化メチレン、塩化エチレンなどの塩化炭化水素
類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、アセト
ン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ニトロメタ
ン、ニトロプロパンなどのニトロ化化合物、これらの混
合溶媒が使用されている。特に、セルローストリアセテ
ートを用いる場合には、溶解性が高く、しかも低沸点で
溶媒の除去が容易な塩素系溶媒(特に塩化メチレン)
が、前記セルロースエステルの主たる溶媒として使用さ
れている。
【0004】しかし、塩化メチレンなどの塩素系溶媒
は、環境および人体に対する悪影響が懸念され、その使
用が規制されつつある。このような問題は、前記フィル
ム成形のみならず、セルロースアセテートドープの紡糸
による繊維の製造においても同様である。
【0005】一方、セルローストリアセテートに対する
溶解性の高い溶媒は、メチルセロソルブアセテートなど
のように一般に高沸点であ。そのため、このような高沸
点溶媒を用いると、乾燥速度の低下に伴なって、溶媒の
除去効率および成型品の生産性などが低下し易く、塩化
メチレンなどの塩素系溶媒の代替溶媒として好ましくな
い。さらに、セルローストリアセテートに対する溶解性
の高い溶媒を用いると、一般に溶液粘度が高くなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、非塩素系溶媒を用いたセルロースエステル溶液およ
びその製造方法を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、溶媒の除去効率が高
く、セルロースエステル成形品を効率よく得ることがで
きるセルロースエステル溶液およびその製造方法を提供
することにある。
【0008】本発明のさらに他の目的は、前記セルロー
スエステル溶液を簡単な操作で効率よく得ることができ
るとともに、前記溶液の低粘度化が可能な方法を提供す
ることにある。
【0009】本発明の他の目的は、前記セルロースエス
テル溶液から効率よく成形品を形成できる方法を提供す
ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意検討の結果、フルオロアルコールが
セルロースアセテート、セルロースプロピオネートなど
のセルロースエステルを溶解し、塩素系溶媒を用いるこ
となく、溶媒の除去効率の高いセルロースエステル溶液
が得られること、前記セルロースエステルを貧溶媒で処
理した後、フルオロアルコールと混合すると、セルロー
スエステルの溶解効率を高めることができるとともに低
粘度化できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】すなわち、本発明のセルロースエステル溶
液は、セルロースエステルと、このセルロースエステル
に対する良溶媒と、このセルロースエステルに対する貧
溶媒とを含む混合液であって、前記良溶媒がフルオロア
ルコール、前記貧溶媒が沸点80℃以下の非ハロゲン系
溶媒で構成されている。フルオロアルコールには炭素数
1〜10程度のアルコールが含まれ、沸点80℃以下で
ある場合が多い。
【0012】前記貧溶媒には、例えば、沸点80℃以下
の非塩素系溶媒(例えば、アルコール類、ケトン類、エ
ステル類など)が含まれる。良溶媒と貧溶媒との割合
は、広い範囲で選択でき、例えば、前者/後者=25/
75〜97/3(重量比)程度である。
【0013】前記セルロースエステル溶液は、種々の方
法、例えば、セルロースエステルを貧溶媒で処理した
後、フルオロアルコールと混合することにより製造でき
る。
【0014】さらに本発明の成形品の製造方法では、前
記セルロースエステル溶液を用い、セルロースエステル
成形品(例えば、フィルム)を製造する。
【0015】以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】前記セルロースエステルとしては、例え
ば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セ
ルロースプロピオネートなどの脂肪族カルボン酸エステ
ル、フタル酸半エステルなどの芳香族カルボン酸エステ
ル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロー
スなどの無機酸エステル;セルロースアセテートプロピ
オネート、セルロースアセテートブチレート、セルロー
スアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混
酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セル
ロースアセテートなどのセルロースエステル誘導体など
が例示される。これらのセルロースエステルは、単独で
または二種以上混合して使用できる。
【0017】セルロースエステルの平均置換度は、例え
ば、平均置換度1〜3程度である。好ましいセルロース
エステルには、脂肪族有機酸エステル(例えば、炭素数
2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースア
セテートが含まれる。セルロースアセテートの酢化度
は、30〜62%程度の範囲で適当に選択でき、43〜
62%程度である場合が多い。特に、フィルム、繊維な
どの成形品などの用途に利用する場合には、酢化度50
〜62%のセルロースアセテート、なかでも酢化度57
〜62%(例えば、59.5〜61.5%)程度のセル
ローストリアセテートを用いる場合が多い。
【0018】セルロースエステルの平均重合度は、例え
ば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好
ましくは200〜800程度である。
【0019】本発明の特色は、セルロースエステル溶液
が、良溶媒としてフルオロアルコールを含む点にある。
このようなフルオロアルコールは、セルロースエステ
ル、特に良溶媒として塩化メチレンなどの塩素系溶媒が
使用されている平均置換度2〜3のセルロースエステル
(特にセルローストリアセテート)に対する溶解性が高
いだけでなく、非塩素系溶媒を構成でき、安全衛生上好
ましい。そのため、フルオロアルコールを含む溶媒系
は、平均置換度2〜3のセルロースエステル、特にセル
ロースアセテート、なかでもセルローストリアセテート
の溶媒として有用である。
【0020】フルオロアルコールは、加熱などにより溶
媒の除去が容易であり、かつセルロースエステルに対す
る溶解性の高いアルコールであればよい。このようなフ
ルオロアルコールには、炭素数1〜10程度、好ましく
は2〜10程度のフルオロアルコールが含まれる。ま
た、フルオロアルコールは、α位、すなわちヒドロキシ
ル基の位置する炭素原子以外の炭素原子にフッ素原子が
結合している場合が多い。このようなフルオロアルコー
ルとしては、例えば、トリフルオロエタノール、パーフ
ルオロエタノール、トリフルオロ−1−プロパノール、
テトラフルオロ−1−プロパノール、ヘキサフルオロ−
1−プロパノール、パーフルオロ−1−プロパノール、
トリフルオロ−2−プロパノール、テトラフルオロ−2
−プロパノール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、
パーフルオロ−2−プロパノール、テトラフルオロブタ
ノール、ヘキサフルオロブタノール、オクタフルオロブ
タノール、パーフルオロブタノール、テトラフルオロ−
s−ブタノール、ヘキサフルオロ−s−ブタノール、オ
クタフルオロ−s−ブタノール、パーフルオロ−s−ブ
タノール、テトラフルオロ−t−ブタノール、ヘキサフ
ルオロ−t−ブタノール、オクタフルオロ−t−ブタノ
ール、パーフルオロ−t−ブタノールなどが含まれる。
これらのフルオロアルコールは一種又は二種以上使用で
きる。
【0021】これらのフルオロアルコールのうち、入手
が比較的容易なフルオロアルコールとしては、炭素数2
又は3のアルコール、特にトリフルオロエタノールおよ
びヘキサフルオロ−2−プロパノールなとが挙げられ
る。
【0022】フルオロアルコールの沸点は、溶媒を効率
よく除去し、成形品の生産効率を高めるため、90℃以
下(例えば、30〜90℃)、好ましくは80℃以下
(例えば、40〜80℃程度)である。
【0023】なお、フルオロアルコール、例えば、トリ
フルオロエタノールおよびヘキサフルオロプロパノール
は、繁用されている塩化メチレンに比べて、経口毒性お
よび吸入毒性が著しく小さい。例えば、トリフルオロエ
タノールの経口毒性は、LD50=240mg/kg(ラ
ット)、LD50=366mg/kg(マウス)であり、
吸入毒性は、LC50=2900mg/m3 (マウス)で
ある。また、ヘキサフルオロ−2−プロパノールの経口
毒性は、LD50=600mg/kg(マウス)であり、
吸入毒性は、LC50=3200ppm/4h(ラット)
程度である。なお、塩化メチレンの吸入毒性は、LC50
=88mg/m3 /0.5h(ラット)程度である。
【0024】セルロースエステル溶液の溶媒は、前記良
溶媒としてのフルオロアルコールと貧溶媒との混合溶媒
であってもよい。セルロースエステルの溶解度は、置換
基の種類、置換度などにより大きく異なるので、貧溶媒
はセルロースエステルの種類に応じて選択できる。セル
ロースエステルに対する貧溶媒としては、セルロースエ
ステルの置換度や酢化度などに応じて、例えば、メタノ
ール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、
s−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール
などのアルコール類;ヘキサン、オクタン、シクロヘキ
サンなどの脂肪族又は脂環族炭化水素類;ベンゼン、ト
ルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;トリフルオ
ロ酢酸などの有機酸;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メ
チル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プ
ロピオン酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチル
エチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン
類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピル
エーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテ
ル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエ
ーテル類;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパ
ンなどのニトロ化化合物;メチルセロソルブ、エチルセ
ロソルブ、メチルセロソルブアセテートなどのセロソル
ブ類;およびこれらの混合溶媒などから適当に選択でき
る。
【0025】また、貧溶媒の沸点は、溶媒の除去効率を
高めるため、90℃以下(例えば30〜85℃程度)、
好ましくは80℃以下(例えば、35〜78℃程度)で
あるのが好ましい。セルロースエステルがセルロースト
リアセテートである場合、このような低沸点の貧溶媒に
は、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ヘキ
サン、シクロヘキサンなどの脂肪族又は脂環族炭化水素
類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセト
ン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジメチルエー
テル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テ
トラヒドロフランなどのエーテル類;およびこれらの混
合溶媒が含まれる。貧溶媒としては、メタノール、エタ
ノール、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸メチル、
酢酸エチルを用いる場合が多い。
【0026】さらに、環境汚染や破壊を防止するととも
に、安全性などを高めるためには、貧溶媒も非塩素系溶
媒であるのが好ましい。
【0027】好ましい貧溶媒には、前記フルオロアルコ
ールとの相溶性を有するとともに、セルロースエステル
を湿潤、特に膨潤する溶媒が含まれる。このような溶媒
には、アルコール類(例えば、溶解性パラメーターδ
(cal /cc)1/2 が12〜14.5程度のアルコー
ル)、ケトン類(例えば、溶解性パラメーターが8〜1
0程度のケトン)およびエステル類(例えば、溶解性パ
ラメーターが8.7〜9.7程度のエステル)から選択
された少なくとも一種の溶媒が含まれる。特にセルロー
スエステルがセルローストリアセテートである場合に
は、溶解作業性を高めるとともに低粘度化するために
は、これらの貧溶媒が好都合である。
【0028】良溶媒と貧溶媒との割合は、セルロースエ
ステルの重合度や種類などに応じて広い範囲、例えば、
1/99〜99/1(重量比)程度、好ましくは5/9
5〜95/5(重量比)程度の範囲から選択できる。良
溶媒と貧溶媒との割合は、通常、前者/後者=25/7
5〜97/3(重量比)、好ましくは30/70〜95
/5(重量比)程度であり、40/60〜90/10
(重量比)程度である場合が多い。
【0029】なお、前記セルロースエステル溶液は、用
途に応じて、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外
線吸収剤などの老化防止剤;可塑剤;カオリン、タル
ク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウ
ム、酸化チタン、アルミナなどの無機微粉末;カルシウ
ム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱
安定化剤;帯電防止剤;難燃剤;滑剤;着色剤;油剤な
どを含んでいてもよい。
【0030】溶媒が良溶媒と貧溶媒とで構成された前記
セルロースエステル溶液は、種々の方法、例えば、良溶
媒でセルロースエステルを溶解した後、貧溶媒を添加混
合する方法、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒でセルロース
エステルを溶解する方法などにより製造できる。好まし
い方法では、セルロースエステルを混合などにより貧溶
媒で処理した後、フルオロアルコールと混合し、セルロ
ースエステル溶液を製造する方法が含まれる。
【0031】良溶媒と貧溶媒との組合、特にセルロース
エステルを貧溶媒と混合して処理した後、さらに良溶媒
と混合すると、セルロースエステルが塊状になるののを
抑制でき、セルロースエステルを効率よく短時間に溶解
できるとともに、貧溶媒との併用により次のような利点
が生じる。
【0032】低沸点の貧溶媒を用いることにより、溶
媒の除去時間を短縮できる 低粘度の溶液を形成する貧溶媒を用いることにより、
セルロースエステル溶液の粘度を低減できる 良溶媒と、沸点の異なる貧溶媒との割合を調整するこ
とにより、溶媒の除去時間をコントロールできる 安価な汎用の貧溶媒との併用により溶媒をコストダウ
ンできる 貧溶媒で予め処理することにより、セルロースエステ
ルを短時間内に溶解できる。
【0033】セルロースエステルは、粉末状、粒状、繊
維状、破砕物などの種々の形状で使用できる。セルロー
スエステルに対する貧溶媒の処理量は、セルロースエス
テルの塊状化を抑制できる範囲で選択でき、例えば、セ
ルロースエステル100重量部に対して25〜1000
重量部、好ましくは50〜800重量部、さらに好まし
くは100〜700重量部程度である。貧溶媒によるセ
ルロースエステルの処理は、慣用の方法、例えば、浸
漬、混合などにより行なうことができる。
【0034】前記貧溶媒による処理は、必要に応じて加
温又は加熱下で行なってもよく、セルロースエステルが
湿潤状態又は膨潤状態となるまで行なう場合が多い。こ
のようなセルロースエステルに良溶媒を添加すると、湿
潤又は膨潤したセルロースエステルへの良溶媒の浸透速
度および溶解速度を高めることができる。良溶媒との混
合は、慣用の混合機を用いて行なうことができ、必要に
応じて、溶媒の沸点以下の温度に加熱しながら混合して
もよい。
【0035】なお、セルロースエステルの処理に際して
は、溶解作業性を損わない範囲であれば、貧溶媒ととも
に良溶媒を併用してもよい。また、セルロースエステル
の処理に際しては、溶液の混合溶媒を構成する貧溶媒の
全てを使用する必要はなく、混合溶媒を構成する貧溶媒
の一部を用いてもよい。
【0036】このようにして溶解したセルロースエステ
ルの濃度は、用途に応じて調整でき、例えば、1〜30
重量%、好ましくは5〜25重量%程度である場合が多
い。なお、最終的なセルロースエステル溶液の溶媒組成
は、前記のような良溶媒と貧溶媒の割合に調整される。
【0037】良溶媒としてトリフルオロエタノール(T
FE)又はヘキサフルオロ−2−プロパノール(HF
P)を用い、貧溶媒としてアセトン又はエタノールを用
いた場合、セルロースアセテートの酢化度(%)と、好
ましい溶媒組成は、例えば、次の通りである。
【0038】 セルロースアセテート 良溶媒 貧溶媒 好ましい溶媒の重量組成 の酢化度(%) (良溶媒/貧溶媒) (1) 61.5 TFE アセトン >90/10 (2) 60.9 HFP アセトン >80/20 (3) 60.2 TFE アセトン >60/40 (4) 60.9 TFE エタノール >80/20 (5) 60.2 HFP アセトン >50/50 上記の溶媒組成のセルロースエステル溶液を用いてフィ
ルムを形成する場合、溶液中のセルロースエステル濃度
は、上記(1)及び(5)の溶媒では5〜15重量%程
度、上記(2)の溶媒では5〜10重量%程度、上記
(3)および(4)の溶媒では5〜20重量%程度であ
る。
【0039】このようにして得られたセルロースエステ
ル溶液は、前記のように溶媒が非塩素系溶媒であるにも
拘らず、溶媒の除去を短時間に行なうことができるとと
もに、粘度が低いので、ラッカー、絶縁材料などの種々
の材料に利用できるとともに、種々の成形品、例えば、
フィルムや繊維などを得る上で有用である。
【0040】前記セルロースエステルフィルムは、慣用
の方法、例えば、セルロースエステル溶液を平滑面又は
粗面を有する平板状又はドラム状基材に流延などにより
適用し、乾燥することにより得ることができる。なお、
セルロースエステル溶液は、使用に先立って、通常、金
網やネルなどの濾材を用いて瀘過し、不純物を除去する
場合が多い。
【0041】セルロースエステル溶液の適用は、流延、
バーコート、グラビアコート、カーテンフローコート、
ロールコート、スピンコートなどの種々の塗布手段によ
り行なうことができる。また、セルロースエステル溶液
を均一な厚さに適用した後、通常、熱風で乾燥し(1次
乾燥)、基材からフィルムを剥離し、さらに熱風で完全
に乾燥(2次乾燥)する場合が多い。乾燥条件は溶媒組
成により異なるとともに、フィルムの厚みなどに応じて
適当に選択できる。1次乾燥の熱風温度は、例えば、7
0〜200℃程度(好ましくは80〜150℃程度)、
乾燥時間10秒〜10分程度、2次乾燥の熱風温度は、
例えば、80〜250℃(好ましくは100〜170℃
程度)、乾燥時間1分〜2時間程度であってもよい。セ
ルロースエステルフィルムの厚みは、用途に応じて0.
1〜250μm程度の範囲から選択できる。例えば、I
Cマスクの保護などのために用いられる光学用薄膜で
は、厚み0.1〜3μm程度の薄膜フィルムが使用で
き、包装材用フィルムでは、厚み10〜50μm程度の
フィルムが使用でき、写真用などの光学用フィルムで
は、厚み50〜250μm程度のフィルムが使用でき
る。
【0042】また、前記セルロースエステル繊維は、慣
用の方法、例えば、セルロースエステル溶液(ドープ)
を紡糸し、溶媒を除去することにより製造できる。セル
ロースエステル繊維の繊度は、1〜16デニール、好ま
しくは1〜10デニール、さらに好ましくは2〜8デニ
ール程度である。セルロースエステル繊維の断面形状
は、特に制限されず、例えば、円形、楕円形、異形(た
とば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状
などのいずれであってもよい。さらに、セルロースエス
テル繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維で
あってもよい。なお、溶媒の除去は、前記フィルムの製
造と同様の加熱条件、例えば、70〜200℃程度の温
度で行なうことができる。
【0043】
【発明の効果】本発明は、フルオロアルコールを良溶媒
として含んでいるため、非塩素系溶媒を用いたセルロー
スエステル溶液を形成できる。また、フルオロアルコー
ルは比較的沸点が低いため、溶媒の除去効率が高く、セ
ルロースエステル成形品を効率よく得ることができる。
さらに、良溶媒と貧溶媒とを組合せて溶媒系を構成する
と、セルロースエステル溶液を簡単な操作で効率よく得
ることができるとともに、前記溶液の低粘度化が可能で
ある。
【0044】本発明の方法では、前記の如きセルロース
エステル溶液を用いるので、セルロースエステル成形品
を効率よく形成できる。
【0045】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定され
るものではない。
【0046】実施例1 酢化度60.2%のセルローストリアセテート13重量
部と貧溶媒としてのメタノール7重量部とを10分間混
合撹拌し、セルローストリアセテートを湿潤させた。ト
リフルオロメタノール80重量部を混合し、3時間撹拌
することにより、13重量%のセルローストリアセテー
ト溶液を得た。
【0047】実施例2 実施例1で作製したセルローストリアセテート溶液を金
網とネルを用いて濾過し、未反応繊維、未溶解のセルロ
ーストリアセテートおよび不純物を除去した。濾液を平
らなガラス板上に約800μmの均一な厚さに流延した
後、60℃の熱風で20分間乾燥し、溶媒を50重量%
含むゲル状膜(フィルム)を形成した。膜をガラス板か
ら注意深く剥離し、温度100℃のオーブン中に50分
間保持し、残留溶媒を十分に除去することにより、97
μmの均一厚さのセルローストリアセテートフィルムを
得た。

Claims (15)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロースエステルと、このセルロース
    エステルに対する良溶媒と、このセルロースエステルに
    対する貧溶媒とを含む混合液であって、前記良溶媒がフ
    ルオロアルコールであり、前記貧溶媒が、沸点80℃以
    下の非ハロゲン系溶媒であるセルロースエステル溶液。
  2. 【請求項2】 フルオロアルコールの沸点が80℃以下
    である請求項1記載のセルロースエステル溶液。
  3. 【請求項3】 フルオロアルコールが、炭素数1〜10
    のアルコールである請求項1又は2記載のセルロースエ
    ステル溶液。
  4. 【請求項4】 フルオロアルコールが、フルオロエタノ
    ール、フルオロ−1−プロパノール又はフルオロ−2−
    プロパノールである請求項1〜3のいずれかの項に記載
    のセルロースエステル溶液。
  5. 【請求項5】 貧溶媒が、アルコール類、ケトン類およ
    びエステル類から選択された少なくとも一種の溶媒であ
    る請求項1〜4のいずれかの項に記載のセルロースエス
    テル溶液。
  6. 【請求項6】 良溶媒と貧溶媒との割合が、前者/後者
    =25/75〜97/3(重量比)である請求項1〜5
    のいずれかの項に記載のセルロースエステル溶液。
  7. 【請求項7】 セルロースエステルがセルロースアセテ
    ートである請求項1記載のセルロースエステル溶液。
  8. 【請求項8】 セルロースエステルが、酢化度50〜6
    2.5%のセルロースアセテートである請求項1又は7
    記載のセルロースエステル溶液。
  9. 【請求項9】 セルロースエステルが酢化度57〜6
    2.5%のセルロースアセテートである請求項1,7又
    は8記載のセルロースエステル溶液。
  10. 【請求項10】 セルロースエステルと非塩素系溶媒と
    を含む溶液であって、前記セルロースエステルが酢化度
    57〜62.5%のセルロースアセテートであり、前記
    非塩素系溶媒が、沸点80℃以下および炭素数2又は3
    のフルオロアルコールから選択された良溶媒と、メタノ
    ール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ギ
    酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチルおよび酢酸エチル
    ら選択された少なくとも一種の貧溶媒とで構成され、前
    記良溶媒と貧溶媒との割合が、前者/後者=30/70
    〜95/5(重量比)であるセルロースエステル溶液。
  11. 【請求項11】 セルロースエステルが酢化度59〜6
    2.5%のセルロースアセテートである請求項10記載
    のセルロースエステル溶液。
  12. 【請求項12】 フルオロアルコールが、トリフルオロ
    エタノール、又はヘキサフルオロ−2−プロパノールで
    ある請求項10又は11記載のセルロースエステル溶
    液。
  13. 【請求項13】 セルロースエステルを貧溶媒として沸
    点80℃以下の非ハロゲン系溶媒で処理した後、フルオ
    ロアルコールと混合するセルロースエステル溶液の製造
    方法。
  14. 【請求項14】 請求項1〜12のいずれかの項に記載
    のセルロースエステル溶液を用いセルロースエステル成
    形品を製造する方法。
  15. 【請求項15】 成形品がフィルムである請求項14記
    載の成形品の製造方法。
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