JP2001342257A - セルロース系ポリマーの製造方法 - Google Patents

セルロース系ポリマーの製造方法

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JP2001342257A
JP2001342257A JP2000165070A JP2000165070A JP2001342257A JP 2001342257 A JP2001342257 A JP 2001342257A JP 2000165070 A JP2000165070 A JP 2000165070A JP 2000165070 A JP2000165070 A JP 2000165070A JP 2001342257 A JP2001342257 A JP 2001342257A
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cellulose
polymer
pressure
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JP2000165070A
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English (en)
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Mitsuyuki Matsuoka
光進 松岡
Tadahisa Sato
忠久 佐藤
Kazuyoshi Yamakawa
一義 山川
Hiroshi Onishi
弘志 大西
Tadahiro Tsujimoto
忠宏 辻本
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安全性が高く、環境負荷も小さく、更に設備
投資的負荷も低減しうる、易溶解性のセルロース系ポリ
マー粉体の製造方法と安全性の維持、環境負荷の問題に
対応した、溶解状態の極めて優れる、セルロース系ポリ
マー溶液の製造方法を提供する。 【解決手段】 セルロース系ポリマーの粉体を製造する
に当り、原料ポリマーを有機溶媒に10kgf/cm2
未満の圧力下で溶解させた後、溶媒を除去する該ポリマ
ーの易溶解性粉体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はセルロース系ポリマ
ーの製造方法に関し、詳しくは溶媒に易溶解性のセルロ
ース系ポリマーの粉体、およびセルロース系ポリマーが
高い濃度で溶解した溶液の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】セルロース系ポリマー、とりわけセルロ
ースエステルは汎用合成樹脂に比べて、寸法安定性およ
び耐熱性が高く、粘着性であるという特色を有してい
る。そのためプラスチック、ラッカーなどの材料として
利用されると共に、種々の成形品、例えばフイルムや繊
維などに成形されている。セルロースエステルフイルム
は代表的な写真感光材料の支持体であり、またその光学
的等方性から液晶表示装置の部材(偏光板の保護フイル
ム、光学補償シートの支持体、カラーフィルターなど)
としても使用されている。さらに、環境保護の観点から
生分解性ポリマーのニーズは近年益々高まっており、そ
の結果セルロース系ポリマーの重要性が再認識されてき
ている。
【0003】したがって、セルロースエステルに代表さ
れるセルロース系ポリマーは今後も重要性が増してくる
と思われるが、従来それをフイルムなどに成形する際の
溶液化には溶媒として塩化メチレン等の塩素系溶媒がこ
れまで多用されてきた。その理由は溶解性が高く、かつ
低沸点で溶媒の除去が容易であるためである。しかしな
がら、塩素系溶媒は発癌性などの毒性がある物質であっ
たり、オゾン層破壊に代表される環境有害物質であるこ
とから使用が非常に制限されてきている。塩化メチレン
は後者の理由で大気への放出が厳しく制限されている。
【0004】そこで、近年これらの問題を解決するため
の研究が活発に行われており、一部その技術が公開され
ている。例えば1,3−ジオキサンや1,3−ジオキソ
ランなどの環状ジエーテルを用いる方法(特開平8−1
43708号、同8−323785号など)、トリフル
オロエタノールなどのフルオロアルコールを用いる方法
(特開平8−143709号、同11−60807号な
ど)が提案されている。しかしながら前者の環状ジエー
テルは必ずしも安全性の維持が万全でなく、可燃性が高
いなどの点で十分満足できるものではなかった。また後
者のフルオロアルコールはコストが高く、ポリマー成形
用という大量使用の溶媒としては実用的でない。
【0005】そこで、安全で出来るだけ廉価な溶剤の使
用が検討されているが、そのような溶媒にセルロースエ
ステルなどのセルロース系ポリマーを生産性上必要とさ
れる所定濃度で溶解することは単なる混合では困難であ
る。そこで、溶解度を上げるための手段が種々検討され
ている。それらの方法を具体的に挙げれば、(1)冷却
溶解法(Makromol. Chem.,143, 105(1971))という方法
を用いた方法(特開平9−95538号、同9−955
44号など)、(2)有機溶媒中、超高圧をかける方法
(特開平11−322946号)、(3)超音波を用い
る方法(特開平11−71463号)、(4)アセトン
もしくはエタノールと二酸化炭素等との高圧下二成分系
混合流体を用いる方法(特開平8−232115号、Jo
urnal ofSupercritical Fluids,13,135(1998))、などで
ある。
【0006】上記(1)〜(4)の方法は、確かに溶解
度の改良には効果的であるが、工業的製法という観点で
見た場合にはそれぞれ問題がある。すなわち、(1)の
方法において十分な溶解度を得るためには−70℃以下
の極低温が必要であり、そのための設備化には高額な投
資が必要である。(2)の方法において短時間で十分な
溶解度を得るためには100MPa(約1000気圧)
近い超高圧が必要であり、やはり設備的に工業的実用化
は難しい。(3)の方法においては工業的規模で使用で
きる超音波発生装置を開発する必要があり、現時点では
実用化はかなり困難である。(4)の方法においては、
高圧下加熱した混合流体にセルロース系ポリマーを溶か
した状態で、その溶液を成形工程に用いることは二酸化
炭素ガスの発生によりほとんど不可能である。このよう
に、環境等に有害な塩素系溶媒を用いずにセルロース系
ポリマーを溶解して成形(フイルム化)する技術で、安
全で設備投資額が小さく工業的に実用可能な方法は未だ
無いと言って良く、新しい方法の開発が強く望まれてい
るのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、安全性が高
く、環境負荷も小さく、更に設備投資的負荷も小さい
(すなわち安価に)、易溶解性のセルロース系ポリマー
粉体の製造方法を提供することを目的とする。また本発
明の目的は、上記のような、安全性の維持、環境負荷の
問題に対応した、溶解状態の極めて優れる、セルロース
系ポリマー溶液の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の目的
達成のため種々検討を重ねた結果、セルロース系ポリマ
ーを有機溶媒に分散攪拌し、ある温度・圧力に曝すと該
ポリマーは極めてよく溶解すること、そしてその溶液を
常温常圧に戻しても該ポリマーは析出しないこと、そし
て更には一度溶解した該ポリマーは、溶媒を除去して粉
体とした後もこの処理を受けていない該ポリマーに比べ
て優れた易溶解性を示すことを見出した。本発明はこれ
らの新しい知見に基づきなされたものである。すなわ
ち、(1)セルロース系ポリマーの粉体を製造するに当
り、原料ポリマーを有機溶媒に10kgf/cm2未満
の圧力下で溶解させた後、溶媒を除去することを特徴と
する該ポリマーの易溶解性粉体の製造方法、及び(2)
セルロース系ポリマーの溶液を製造するに当り、原料ポ
リマーを有機溶媒に10kgf/cm2未満の圧力下で
溶解させることを特徴とする該ポリマー溶液の製造方法
によって達成された。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳しく説明
する。
【0010】本発明に用いられる原料セルロース系ポリ
マーとしてはセルロースエステルまたはセルロースエー
テルなどが挙げられる。セルロースエステルについて詳
しく述べれば、セルロースアセテート、セルロースブチ
レートもしくはセルロースプロピオネートなどの脂肪族
カルボン酸エステル、フタル酸半エステルなどの芳香族
カルボン酸エステル、硝酸セルロース、硫酸セルロース
もしくはリン酸セルロースなどの無機酸エステル、セル
ロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテー
トブチレート、セルロースアセテートフタレートもしく
は硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル、またはポリ
カプロラクトングラフト化セルロースアセテートなどの
セルロースエステル誘導体である。セルロースエーテル
について詳しく述べれば、メチルセルロース、エチルセ
ルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ベンジルセル
ロースもしくはカルボキシメチルセルロースなどであ
る。
【0011】好ましいセルロース系ポリマーはセルロー
スエステルであり、特に好ましくはセルロースアセテー
ト(アセチルセルロース)である。
【0012】セルロースエステルの置換度は、アシル基
がセルロース分子の水酸基に反応した度合いを表し、全
水酸基に反応した場合を3.00として表す。これはセ
ルロース分子の最小単位のグルコース単位の3個の水酸
基に3個のアシル基が置換されたことを意味する。本発
明に使用されるセルロースエステルの平均置換度は1〜
3であり、好ましくは2〜3である。
【0013】セルロースエステルにおいて重合度(粘度
平均;DP)は、オストワルド粘度計により測定される
固有粘度[η]からDP=[η]/Km(Km=6×1
-4)の式を用いて求められる。本発明で用いられるセ
ルロースエステルの重合度は10〜1000であり、好
ましくは50〜900である。特に好ましくは200〜
800である。
【0014】セルロースアセテートの場合、反応度を表
す方法として酢化度またはアセチル化度が用いられる。
酢化度は、セルロースの水酸基がアセチル化された時に
反応した酢酸(CH3COOH)を質量%として表した
ものであり、最大酢化度は62.5%になる。アセチル
化度は反応したアセチル基(CH3CO)を質量%とし
て表したものであり、最大アセチル化度は44.8%に
なる。酢化度の方が良く用いられるが、本発明に用いら
れるセルロースアセテートの酢化度は30〜62.5%
の範囲であり、好ましくは43%以上である。特に好ま
しくは55%以上の酢化度のセルロースアセテートであ
る。
【0015】次に使用される有機溶媒について説明す
る。本発明に用いられる有機溶媒は、好ましくはエステ
ル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン
系溶媒、炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、アミン系溶
媒またはフッ素原子置換炭化水素系溶媒を主成分とする
溶媒であるが、これらを詳しく説明すると、炭素数2な
いし12のエステル系溶媒、炭素数1ないし6のアルコ
ール系溶媒、炭素数4ないし12のエーテル系溶媒、炭
素数3ないし20のケトン系溶媒、炭素数5ないし12
の炭化水素系溶媒、炭素数2ないし12のニトリル系溶
媒、炭素数3ないし12のアミン系溶媒または炭素数5
以上のフッ素原子置換炭化水素系溶媒を主成分とする溶
媒である。これらの溶媒は分子内に環状構造を有してい
ても良い。
【0016】更に詳しく述べれば、ギ酸メチル、ギ酸エ
チル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸
エチル、酢酸ブチル、炭酸ジメチルもしくはγ−ラクト
ンなどのエステル系溶媒、メタノール、エタノール、プ
ロパノール、イソプロパノール、エトキシエタノール、
エチレングリコール、シクロヘキサノールもしくは2,
2,2,−トリフルオロエタノールなどのアルコール系
溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t
−ブチルメチルエーテル、ジメトキシメタン、ジエトキ
シメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、
1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、フラン、
アニソールもしくはフェネトールなどのエーテル系溶
媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、
イソプロピルメチルケトン、ジイソブチルケトン、シク
ロペンタノン、シクロヘキサノン、4−メチルシクロヘ
キサノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロ
ヘキサノン、メトキシアセトンまたはペルフルオロアセ
トンなどのケトン系溶媒、ペンタン、シクロペンタン、
シクロヘキサンもしくはトルエンなどの炭化水素系溶
媒、アセトニトリル、プロピオニトリルもしくはイソプ
ロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、プロピルアミ
ン、ジエチルアミン、トリメチルアミンもしくはトリエ
チルアミンなどのアミン系溶媒またはパーフルオロヘキ
サン、パーフルオロシクロヘキサン、フルオロベンゼン
もしくはトリフルオロメチルベンゼンなどのフッ素原子
置換炭化水素系溶媒を主成分とする溶媒である。
【0017】より好ましい有機溶媒は、炭素数2ないし
6のエステル系、炭素数1ないし4のアルコール系また
は炭素数3ないし5のケトン系溶媒を主成分とする溶媒
であり、特に好ましくは炭素数2ないし6のエステル系
溶媒を主成分とする溶媒である。エステル系溶媒の中で
特に好ましくは酢酸メチルもしくは酢酸エチルのエステ
ル系溶媒を主成分とする溶媒である。
【0018】本発明において、溶媒の「主成分」の意味
は、該溶媒の単一溶媒(純度99質量%以上)であるこ
と、または2種類以上の溶媒の混合溶媒中で該溶媒が最
も比率(溶媒中の質量%)が高いことを意味する。混合
溶媒の場合、主成分以外の溶媒は本発明に規定する溶媒
でも良いし、本発明に規定する溶媒以外の他の溶媒でも
良い。本発明に規定する溶媒以外の溶媒として代表的な
ものを挙げれば、水である。
【0019】本発明に用いられる溶媒が混合溶媒の場
合、主成分の溶媒の比率は30質量%以上であることが
好ましく、80質量%以上が特に好ましい。また混合溶
媒の一部が水の場合、水の比率は5質量%以下が好まし
く、特に好ましくは2質量%以下である。
【0020】本発明に用いられる溶媒は塩化メチレンの
ような塩素系溶媒を実質的に含まないことが好ましい。
「実質的に含まない」とは、溶媒中の塩素系溶媒の割合
が5質量%未満(好ましくは2質量%未満、特に好まし
くは0質量%)であることを意味する。
【0021】本発明において、原料セルロース系ポリマ
ーに対して用いられる溶媒量は、通常原料ポリマー1に
対する質量比で1〜200倍(ポリマー濃度0.5〜5
0質量%)であり、好ましくは4〜20倍(ポリマー濃
度5〜20質量%)である。
【0022】本発明によりセルロース系ポリマーの粉体
および溶液を製造する際、可塑剤、劣化防止剤、紫外線
吸収剤、または/およびライトパイピング防止染料を添
加しても良い。可塑剤としてはリン酸エステルまたはカ
ルボン酸エステルが主に用いられ、具体例を挙げればト
リフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、
もしくはビフェニルジフェニルホスフェートなどのリン
酸エステル、またはジエチルフタレート、ジオクチルフ
タレート、ジエチルヘキシルフタレート、クエン酸アセ
チルトリエチル、クエン酸トリブチル、オレイン酸ブチ
ル、もしくはセバチン酸ジブチルなどのカルボン酸エス
テルである。
【0023】劣化防止剤の具体例は、特開平5−197
073号に記載の化合物である。紫外線吸収剤の具体例
は、特開平7−11056号に記載の化合物である。ラ
イトパイピング防止染料は、フィルムベースを着色して
ライトパイピングを防止できる有機溶媒可溶性染料であ
り、具体的にはスピリットブラック(中央化学社製)や
ニグロシンベースEX(オリエント化学工業社製)が挙
げられる。
【0024】本発明では、原料セルロース系ポリマーを
前記溶媒を主成分とする有機溶媒に10kgf/cm2
未満の圧力下で溶解することを特徴とするが、好ましく
は加熱して溶解する。加熱する意味は室温以上にする意
味であり、詳しくは20℃以上、好ましくは50℃以上
にすることを意味する。尚、10kgf/cm2=1.
013MPaである。
【0025】本発明において溶解は10kgf/cm2
未満で行われるが、それが重要な理由を以下に説明す
る。溶解の際の加熱温度が系に含まれる有機溶媒の沸点
以上の場合にはオートクレーブを用いる必要がある。そ
の際反応系は加圧状態となる。温度を上げれば上げるほ
ど内部圧力が上がるが、高い内部圧力の場合は十分安全
性が確保できる部品や材質を用いたオートクレーブを必
要とする。一般に安全性の点から広く用いられているオ
ートクレーブは内部圧力が10kgf/cm2未満で使
用するように設計されたオートクレーブ(低圧用)であ
る。このタイプのオートクレーブは広く普及しており、
設備的に安価で容易に使用できる。
【0026】しかし、10kgf/cm2以上の内部圧
力が生ずる場合、それほど容易でなくなる。安全性が落
ちるという問題があるため、装置自身のコストが高くな
ると同時に、日本では「高圧ガス取締法」の規制対象と
なるため様々な規制が入り、そのためにかかるコストが
膨大になる。該取締法では常用の温度で10kgf/c
2以上になる圧縮ガスを「高圧ガス」として規制して
いる。
【0027】このような事情により、10kgf/cm
2未満で溶解が可能かどうかは、セルロース系ポリマー
の溶解の場合のように大スケールの装置が必要な場合は
特に重要である。そこで、内部圧力10kgf/cm2
未満で溶解する方法を鋭意検討した結果、有機溶媒と温
度の選択により、それが可能であることを見出し本発明
をなすに至ったわけである。
【0028】本発明に用いられる有機溶媒は、内部圧力
を低圧用オートクレーブの許容範囲の10kgf/cm
2未満に収めるためにあまり沸点が低くない方が良い。
ただし、セルロース系ポリマーを加工するためには揮発
性のあまりないような沸点が高い有機溶媒では実用的で
ない。好ましい有機溶媒の沸点は40℃〜120℃であ
り、特に好ましくは50℃〜70℃である。
【0029】本発明において、セルロース系ポリマーを
有機溶媒に溶解する際の温度は、低圧用オートクレーブ
にて許容される圧力の範囲内に内部圧力が収まる温度で
あると同時に、セルロース系ポリマーの酢化度や重合度
が変化しない範囲であることが好ましい。ただし、溶解
したポリマーの利用目的がそのような変化を問題にしな
い場合はその限りではない。
【0030】好ましい溶解温度は90〜250℃であ
り、特に好ましくは120〜200℃である。また、好
ましい内部圧力は、4kgf/cm2以上10kgf/
cm2未満であり、特に好ましくは6kgf/cm2以上
10kgf/cm2未満である。
【0031】具体的操作手順の代表例を次に示し本発明
を説明する。オートクレーブ中の内圧は、装置の容積と
導入した溶媒量、および温度で決まる。一般のオートク
レーブの容積は連続的に可変できるものではなく固定さ
れているので、目的の温度と圧力を達成するにはオート
クレーブに導入する溶媒量を調整することが必要であ
る。オートクレーブ装置中にまず溶解させたいセルロー
ス系ポリマーを必要量入れ、装置の蓋を閉じる。次に装
置内の酸素を除くため真空ポンプで十分に減圧するか、
十分に窒素ガスでパージしてバルブを閉める。次に溶媒
の導入口のバルブを開け、使用する溶媒の必要量を装置
内に導入する。溶媒導入終了後バルブを閉め、外部から
加熱して内部圧力変化を圧力ゲージで、内部温度変化を
センサーで観測しながら目的の温度・圧力に調節する。
【0032】目的の温度・圧力に到達後、完全に溶解す
るために撹拌する時間は通常1分〜100時間であり、
好ましくは30分〜30時間である。特に好ましくは3
0分〜10時間である。また、本発明によるセルロース
ポリマーは易溶解性であり、そのままで高濃度液の調製
ができるが、溶液調製後さらに有機溶媒を蒸発などによ
り除き、さらに濃縮することもできる。
【0033】次に粉体を得るには、上記のようにして得
たセルロース系ポリマーの溶液から溶媒を除去して、常
法により行うことができる。より具体的には、バンド式
乾燥機にかけ、溶媒を完全に除去した後、クラッシャー
(粉砕機)により粉末化する方法、または該有機溶媒溶
液をノズルから高圧噴射することによって微細粉末化す
る方法など、通常行われる方法で行うことができ、目的
により適宜使い分けるのが一般的である。
【0034】
【実施例】以下に実施例に基づき本発明を説明するが、
本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものでは
ない。 (実施例1)酢化度と重合度の異なるセルロースアセテ
ート粉体を秤量(表1に示した量)し、内容積200m
lの覗き窓付きのオートクレーブ容器に入れ、蓋をし
た。蓋の導入口にはそれぞれにバルブが設置された二股
管を接続し、一方を容器内空気を除くために真空ポンプ
に、もう一方を酢酸メチル98gを入れたボンベに接続
した。まずオートクレーブ容器内を脱気するために真空
ポンプを接続した管のバルブを開き、容器内を約200
Paの減圧にした後バルブを閉めた。次に溶媒をいれた
ボンベに接続した管のバルブを開け、溶媒を容器内に導
入し、バルブを閉めた。このようにして試料1〜3を作
成した。次に各試料を酢酸メチルの沸点以上である内温
453K(180℃)に加熱した。この時オートクレー
ブ容器内圧力は7.9kgf/cm2(0.8MPa)
であった。加熱前はいずれのセルロースアセテート溶液
も膨潤スラリー状態であったが510Kに加熱した後は
全試料が均一透明溶液となった。453Kで約30分攪
拌後、加熱を止め、徐々に室温に冷却した。室温に冷却
し、大気圧下にこの溶液を放置しても、全試料が均一溶
液状態を維持した。結果を表1にまとめた。
【0035】
【表1】
【0036】(実施例2)実施例1で得られた試料1〜
3を適当な粘性になるまで減圧濃縮し、次にバンド式乾
燥機にかけ、溶媒を完全に除去した後、クラッシャーに
かけ、セルロースアセテート粉体を得た。これらを試料
4〜6とした。これらを再度酢酸メチルに溶解したとこ
ろ、実施例1の処理をしない場合(加熱前のもの)に比
べて著しく高い溶解度を示した。結果を表2に示した。
【0037】
【表2】
【0038】(実施例3)実施例1に示した方法におい
て、セルロースアセテート粉体の量(表3に記載)と溶
媒をギ酸メチル70gに変更する以外は全く同様にして
試料7〜9を作成した。次に各試料をギ酸メチルの沸点
以上である内温433K(160℃)に加熱した。この
時オートクレーブ容器内圧力は8.9kgf/cm
2(0.9MPa)であった。加熱前はいずれのセルロ
ースアセテートも膨潤スラリー状態であったが433K
に加熱した後は全試料が均一透明溶液となった。433
Kで約20分攪拌後、加熱を止め、徐々に室温に冷却し
た。室温に冷却し、大気圧下にこの溶液を放置しても、
全試料が均一溶液状態を維持した。結果を表3にまとめ
た。
【0039】
【表3】
【0040】(実施例4)実施例3で得られた試料7〜
9を実施例2に示した方法で処理してセルロースアセテ
ート粉体を得た。これらを試料10〜12とした。これ
らを再度ギ酸メチルに溶解したところ、実施例3の処理
をしない場合はほとんど解けなかったが、それに比べて
高い溶解度を示した。また試料10〜12の酢酸メチル
への溶解度も見てみたが、やはり溶解度は向上してい
た。結果を表4に示した。
【0041】
【表4】
【0042】(実施例5)実施例1に示した方法におい
て、セルロースアセテート粉体の量(表5に記載)と溶
媒をジイソプロピルエーテル108gに変更する以外は
全く同様にして試料13〜15を作成した。次に各試料
をジイソプロピルエーテルの亜臨界領域温度である42
3K(150℃;内温)に加熱した。この時オートクレ
ーブ容器内圧力は6.9kgf/cm2(0.7MP
a)であった。この状態で約30分攪拌すると、加熱前
はいずれのセルロースアセテート溶液も一部溶解状態で
あったが全試料が均一透明溶液となった。加熱を止め、
徐々に室温に冷却し、その後大気圧下にこの溶液を放置
しても、全試料が均一溶液状態を維持した。結果を表5
にまとめた。
【0043】
【表5】
【0044】(実施例6)実施例1に示した方法におい
て、溶媒を酢酸メチル100gとメタノール12gの混
合溶媒に変更する以外は全く同様にして試料16〜18
を作成した。次に各試料を混合溶媒の亜臨界領域温度で
ある443K(170℃;内温)に加熱した。この時オ
ートクレーブ容器内圧力は8.9kgf/cm2(0.
9MPa)であった。この状態で約30分攪拌すると、
加熱前はいずれのセルロースアセテート溶液も膨潤スラ
リー状態であったが全試料が均一透明溶液となった。加
熱を止め、徐々に室温に冷却し、その後大気圧下にこの
溶液を放置しても、全試料が均一溶液状態を維持した。
結果を表6にまとめた。
【0045】
【表6】
【0046】(実施例7)実施例1に示した方法におい
て、溶媒を酢酸メチル34gとメタノール5.5g、n
−ブタノール0.9gの混合溶媒に変更し、窒素パージ
する以外は全く同様にして試料19〜21を作成した。
次に各試料を混合溶媒の亜臨界領域温度である453K
(180℃;内温)に加熱した。この時オートクレーブ
容器内圧力は8.9kgf/cm2(0.9MPa)で
あった。この状態で約20分攪拌すると、加熱前はいず
れのセルロースアセテート溶液も膨潤スラリー状態であ
ったが全試料が均一透明溶液となった。加熱を止め、徐
々に室温に冷却し、その後大気圧下にこの溶液を放置し
ても、全試料が均一溶液状態を維持した。結果を表7に
まとめた。
【0047】
【表7】
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、各種有機溶媒への溶解
性が優れたセルロース系ポリマーの粉体を製造すること
ができ、また、濃度の高い溶解状態の良い安定なセルロ
ース系ポリマー溶液を製造することができる。これによ
り環境負荷や毒性の大きい塩化メチレンのような塩素系
溶媒を用いることなく、フイルムなどの成形材料を安価
かつ安全に製造することが可能である。したがって本発
明は、生分解性ポリマー等にセルロース系ポリマーを利
用する可能性をも拡大するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08J 3/09 CEP C08J 3/09 CEP // C08L 1:00 C08L 1:00 (72)発明者 山川 一義 神奈川県南足柄市中沼210番地 富士写真 フイルム株式会社内 (72)発明者 大西 弘志 神奈川県南足柄市中沼210番地 富士写真 フイルム株式会社内 (72)発明者 辻本 忠宏 神奈川県南足柄市中沼210番地 富士写真 フイルム株式会社内 Fターム(参考) 4C090 AA03 BA25 BA26 BA27 BD03 CA05 CA18 CA19 DA28 DA32 4F070 AA02 AC32 AC34 AC36 AC38 AC39 AC43 AC45 AC46 AE28 CA12 CB11 DA27 DA44 DA48

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロース系ポリマーの粉体を製造する
    に当り、原料ポリマーを有機溶媒に10kgf/cm2
    未満の圧力下で溶解させた後、溶媒を除去することを特
    徴とする該ポリマーの易溶解性粉体の製造方法。
  2. 【請求項2】 セルロース系ポリマーの溶液を製造する
    に当り、原料ポリマーを有機溶媒に10kgf/cm2
    未満の圧力下で溶解させることを特徴とする該ポリマー
    溶液の製造方法。
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