JPH08143708A - セルロースエステル溶液および成形品の製造方法 - Google Patents

セルロースエステル溶液および成形品の製造方法

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JPH08143708A
JPH08143708A JP30826194A JP30826194A JPH08143708A JP H08143708 A JPH08143708 A JP H08143708A JP 30826194 A JP30826194 A JP 30826194A JP 30826194 A JP30826194 A JP 30826194A JP H08143708 A JPH08143708 A JP H08143708A
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cellulose ester
solvent
cellulose
ester solution
solution according
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JP30826194A
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English (en)
Inventor
Hiroyuki Takemoto
博之 武本
Shu Shimamoto
周 島本
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Daicel Corp
Original Assignee
Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 非ハロゲン系溶媒を用い、溶媒の除去効率が
高く、成形品を効率よく得ることができるセルロースエ
ステル溶液を製造する。 【構成】 セルロースエステル溶液は、セルローストリ
アセテートなどのセルロースエステルと、良溶媒として
の沸点110℃以下の環状ジエーテル(1,3−ジオキ
ソランなど)とを含んでいる。前記良溶媒は、貧溶媒、
例えば、沸点80℃以下の非ハロゲン系溶媒(例えば、
アルコール類、ケトン類、エステル類など)と組合せて
もよく、両者の割合は前者/後者=25/75〜90/
10(重量比)程度である。セルロースエステルを貧溶
媒で処理した後、環状ジエーテルと混合すると、セルロ
ースエステルの溶解効率を高めることができるとともに
低粘度化できる。前記セルロースエステル溶液は、種々
の成形品、例えば、流延によりフィルムを製造する上で
有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、セルロースエステル成
形品を製造する上で原液として適したセルロースエステ
ル溶液、およびそれを用いた成形品の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】セルロースエステルは、慣用の合成樹脂
に比べて、寸法安定性および耐熱性が高く、粘着性であ
るという特色を有している。そのため、セルロースエス
テルは、プラスチック、ラッカーなどの材料として利用
されるとともに、種々の成形品、例えば、フィルム、繊
維などに成形されている。また、セルロースエステルの
うち、セルローストリアセテートは、光学用フィルムの
支持体などとして広く利用されている。
【0003】一方、セルロースエステルフィルムは、セ
ルロースエステル溶液を流延することにより製造されて
いる。このセルロースエステル溶液の溶媒には、例え
ば、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化
水素類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、ア
セトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ニトロメ
タン、ニトロプロパンなどのニトロ化化合物、これらの
混合溶媒が使用されている。特に、セルローストリアセ
テートを用いる場合には、溶解性が高く、しかも低沸点
で溶媒の除去が容易なハロゲン化炭化水素(特に塩化メ
チレン)が、前記セルロースエステルの主たる溶媒とし
て使用されている。
【0004】しかし、塩化メチレンなどのハロゲン化炭
化水素は、環境および人体に対する悪影響が懸念され、
その使用が規制されつつある。このような問題は、前記
フィルム成形のみならず、セルロースアセテートドープ
の紡糸による繊維の製造においても同様である。
【0005】一方、セルローストリアセテートに対する
溶解性の高い溶媒は、メチルセロソルブアセテートなど
のように一般に高沸点であ。そのため、このような高沸
点溶媒を用いると、乾燥速度の低下に伴なって、溶媒の
除去効率および成型品の生産性などが低下し易く、塩化
メチレンなどのハロゲン化炭化水素の代替溶媒として好
ましくない。さらに、セルローストリアセテートに対す
る溶解性の高い溶媒を用いると、一般に溶液粘度が高く
なる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、非ハロゲン系溶媒を用いたセルロースエステル溶液
およびその製造方法を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、溶媒の除去効率が高
く、セルロースエステル成形品を効率よく得ることがで
きるセルロースエステル溶液およびその製造方法を提供
することにある。
【0008】本発明のさらに他の目的は、前記セルロー
スエステル溶液を簡単な操作で効率よく得ることができ
るとともに、前記溶液の低粘度化が可能な方法を提供す
ることにある。
【0009】本発明の他の目的は、前記セルロースエス
テル溶液から効率よく成形品を形成できる方法を提供す
ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意検討の結果、セルロースエステルに
対する良溶媒として環状ジエーテルを用いると、ハロゲ
ン系溶媒を用いることなく、溶媒の除去効率の高いセル
ロースエステル溶液が得られること、前記セルロースエ
ステルを貧溶媒で処理した後、環状ジエーテルと混合す
ると、セルロースエステルの溶解効率を高めることがで
きるとともに低粘度化できることを見いだし、本発明を
完成した。
【0011】すなわち、本発明のセルロースエステル溶
液は、セルロースエステルと、このセルロースエステル
に対する良溶媒とを含む混合液であって、前記良溶媒が
環状ジエーテルで構成されている。環状ジエーテルには
1,3−ジオキソランなどの4〜7員環を有する化合物
が含まれる。
【0012】前記良溶媒は、セルロースアセテートなど
のセルロースエステルに対する貧溶媒と組合せて使用し
てもよい。貧溶媒には、例えば、沸点80℃以下の非ハ
ロゲン系溶媒(例えば、アルコール類、ケトン類、エス
テル類など)が含まれる。良溶媒の割合は、溶媒全体の
20重量%以上である場合が多い。良溶媒と貧溶媒との
割合は、広い範囲で選択でき、例えば、前者/後者=2
5/75〜90/10(重量比)程度である。
【0013】前記セルロースエステル溶液は、種々の方
法、例えば、セルロースエステルを貧溶媒で処理した
後、環状ジエーテルと混合することにより製造できる。
【0014】さらに本発明の成形品の製造方法では、前
記セルロースエステル溶液を用いることによりセルロー
スエステル成形品(例えば、フィルム)を製造する。
【0015】以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】前記セルロースエステルとしては、例え
ば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セ
ルロースプロピオネートなどの脂肪族カルボン酸エステ
ル、フタル酸半エステルなどの芳香族カルボン酸エステ
ル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロー
スなどの無機酸エステル;セルロースアセテートプロピ
オネート、セルロースアセテートブチレート、セルロー
スアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混
酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セル
ロースアセテートなどのセルロースエステル誘導体など
が例示される。これらのセルロースエステルは、単独で
または二種以上混合して使用できる。
【0017】セルロースエステルの平均置換度は、例え
ば、平均置換度1〜3程度である。好ましいセルロース
エステルには、脂肪族有機酸エステル(例えば、炭素数
2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースア
セテートが含まれる。セルロースアセテートの酢化度
は、30〜62%程度の範囲で適当に選択でき、43〜
62%程度である場合が多い。特に、フィルム、繊維な
どの成形品などの用途に利用する場合には、酢化度50
〜62%のセルロースアセテート、なかでも酢化度57
〜62%(例えば、59.5〜61.5%)程度のセル
ローストリアセテートを用いる場合が多い。
【0018】セルロースエステルの平均重合度は、例え
ば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好
ましくは200〜800程度である。
【0019】本発明の特色は、セルロースエステル溶液
が、良溶媒として環状ジエーテルを含む点にある。この
ような環状ジエーテルは、セルロースエステル、特に良
溶媒として塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素が使
用されている平均置換度2〜3のセルロースエステル
(特にセルローストリアセテート)に対する溶解性が高
いだけでなく、非ハロゲン系溶媒を構成でき、安全衛生
上好ましい。そのため、環状ジエーテルを含む溶媒系
は、平均置換度2〜3のセルロースエステル、特にセル
ロースアセテート、なかでもセルローストリアセテート
の溶媒として有用である。
【0020】環状ジエーテルとしては、4〜7員環化合
物、例えば、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン
などの6員環化合物、1,3−ジオキソラン、2−メチ
ル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオ
キソラン、2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−エ
チル−1,3−ジオキソランなどの置換基を有していて
もよい5員環化合物などが含まれる。これらの環状ジエ
ーテルは単独で又は二種以上組合せて使用できる。前記
環状ジエーテルのうち、1,4−ジオキサンなどの6員
環化合物、特に1,3−ジオキソランなどの5員環化合
物が好ましい。
【0021】環状ジエーテルの沸点は、溶媒を効率よく
除去し、成形品の生産効率を高めるため、110℃以下
(例えば、60〜102℃)、好ましくは100℃未満
(例えば、70〜85℃程度)である。
【0022】なお、1,4−ジオキサンおよび1,3−
ジオキソランは、繁用されている塩化メチレンに比べ
て、経口毒性および吸入毒性が著しく小さい。例えば、
1,4−ジオキサンの経口毒性は、LD50=5700m
g/kg(マウス)、LD50=3150mg/kg(モ
ルモット)であり、吸入毒性は、LC50=37g/m3
/2h(マウス)、TCLo=470ppm又は550
0ppm/1分(ヒト)である。また、1,3−ジオキ
ソランの経口毒性は、LD50=3000mg/kg(ラ
ット)、LD50=3200mg/kg(マウス)であ
り、吸入毒性は、LC50=20650mg/m3 /4h
(ラット)、LC50=10550mg/m3/2h(マ
ウス)程度である。なお、塩化メチレンの吸入毒性は、
LC50=88mg/m3 /0.5h(ラット)、LC50
=14400ppm/7h(マウス)程度である。
【0023】セルロースエステル溶液の溶媒は、前記良
溶媒としての環状ジエーテル単独で構成してもよいが、
環状ジエーテル単独では、溶媒の沸点が高くなり、溶媒
の除去効率が塩化メチレンよりも低下し、溶液粘度も高
くなり易い。例えば、酢化度60.2%のセルロースト
リアセテートの溶媒として1,4−ジオキサン単独を用
いると、1,4−ジオキサンの沸点が102℃であり、
製膜などの成形工程での溶媒除去効率の点で塩化メチレ
ンよりも不利である。また、溶液粘度が塩化メチレンよ
りも高い。しかし、例えば、1,4−ジオキサン50重
量%およびアセトン50重量%の組成の混合溶媒のよう
に、良溶媒と貧溶媒とを組合せると、溶媒の除去時間を
短縮できるとともに、溶液粘度も低減できる。
【0024】そのため、セルロースエステル溶液の溶媒
は、セルロースエステルに対する良溶媒と、セルロース
エステルに対する貧溶媒とで構成されているのが好まし
い。また、このような混合溶媒系は非ハロゲン系溶媒を
構成するのが好ましい。
【0025】セルロースエステルの溶解度は、置換基の
種類、置換度などにより大きく異なるので、貧溶媒はセ
ルロースエステルの種類に応じて選択できる。セルロー
スエステルに対する貧溶媒としては、セルロースエステ
ルの置換度や酢化度などに応じて、例えば、メタノー
ル、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、s
−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノールな
どのアルコール類;ヘキサン、オクタン、シクロヘキサ
ンなどの脂肪族又は脂環族炭化水素類;ベンゼン、トル
エン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;トリフルオロ
酢酸などの有機酸;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチ
ル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロ
ピオン酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエ
チルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエー
テル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テ
トラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル
類;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパンなど
のニトロ化化合物;メチルセロソルブ、エチルセロソル
ブ、メチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ類;
およびこれらの混合溶媒などから適当に選択できる。
【0026】また、貧溶媒の沸点は、溶媒の除去効率を
高めるため、90℃以下(例えば30〜85℃程度)、
好ましくは80℃以下(例えば、35〜78℃程度)で
あるのが好ましい。セルロースエステルがセルロースト
リアセテートである場合、このような低沸点の貧溶媒に
は、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ヘキ
サン、シクロヘキサンなどの脂肪族又は脂環族炭化水素
類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセト
ン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジメチルエー
テル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テ
トラヒドロフランなどのエーテル類;およびこれらの混
合溶媒が含まれる。貧溶媒としては、メタノール、エタ
ノール、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸メチル、
酢酸エチルを用いる場合が多い。
【0027】さらに、環境汚染や破壊を防止するととも
に、安全性などを高めるためには、貧溶媒も非ハロゲン
系溶媒であるのが好ましい。
【0028】好ましい貧溶媒には、前記環状ジエーテル
との相溶性を有するとともに、セルロースエステルを湿
潤、特に膨潤する溶媒が含まれる。このような溶媒に
は、アルコール類(例えば、溶解性パラメーターδ(ca
l /cc)1/2 が12〜14.5程度のアルコール)、ケ
トン類(例えば、溶解性パラメーターが8〜10程度の
ケトン)およびエステル類(例えば、溶解性パラメータ
ーが8.7〜9.7程度のエステル)から選択された少
なくとも一種の溶媒が含まれる。特にセルロースエステ
ルがセルローストリアセテートである場合には、溶解作
業性を高めるとともに低粘度化するためには、これらの
貧溶媒が好都合である。
【0029】良溶媒と貧溶媒との割合は、セルロースエ
ステルの重合度や種類などに応じて広い範囲、例えば、
1/99〜99/1(重量比)程度、好ましくは10/
90〜95/5(重量比)程度の範囲から選択でき、良
溶媒の割合は、溶媒全体の20重量%以上である場合が
多い。良溶媒と貧溶媒との割合は、通常、前者/後者=
25/75〜90/10(重量比)、好ましくは30/
70〜90/10(重量比)、さらに好ましくは40/
60〜90/10(重量比)程度である。
【0030】なお、前記セルロースエステル溶液は、用
途に応じて、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外
線吸収剤などの老化防止剤;可塑剤;カオリン、タル
ク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウ
ム、酸化チタン、アルミナなどの無機微粉末;カルシウ
ム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱
安定化剤;帯電防止剤;難燃剤;滑剤;着色剤;油剤な
どを含んでいてもよい。
【0031】溶媒が良溶媒と貧溶媒とで構成された前記
セルロースエステル溶液は、種々の方法、例えば、良溶
媒でセルロースエステルを溶解した後、貧溶媒を添加混
合する方法、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒でセルロース
エステルを溶解する方法などにより製造できる。好まし
い方法では、セルロースエステルを混合などにより貧溶
媒で処理した後、環状ジエーテルと混合し、セルロース
エステル溶液を製造する方法が含まれる。
【0032】良溶媒と貧溶媒との組合、特にセルロース
エステルを貧溶媒と混合して処理した後、さらに良溶媒
と混合すると、次のような利点が生じる。
【0033】貧溶媒で予め処理することによりセルロ
ースエステルが塊状になるのを抑制でき、良溶媒により
セルロースエステルを効率よく短時間内に溶解できる セルロースエステル溶液の粘度を低減できる 良溶媒と貧溶媒との割合を調整することにより、溶媒
の除去速度をコントロールできる 貧溶媒との併用により溶媒をコストダウンできる。
【0034】セルロースエステルは、粉末状、粒状、繊
維状、破砕物などの種々の形状で使用できる。セルロー
スエステルに対する貧溶媒の処理量は、セルロースエス
テルの塊状化を抑制できる範囲で選択でき、例えば、セ
ルロースエステル100重量部に対して5〜1000重
量部、好ましくは50〜800重量部、さらに好ましく
は100〜700重量部程度である。貧溶媒によるセル
ロースエステルの処理は、慣用の方法、例えば、浸漬、
混合などにより行なうことができる。
【0035】前記貧溶媒による処理は、必要に応じて加
温又は加熱下で行なってもよく、セルロースエステルが
湿潤状態又は膨潤状態となるまで行なう場合が多い。こ
のようなセルロースエステルに良溶媒を添加すると、湿
潤又は膨潤したセルロースエステルへの良溶媒の浸透速
度および溶解速度を高めることができる。良溶媒との混
合は、慣用の混合機を用いて行なうことができ、必要に
応じて、溶媒の沸点以下の温度に加熱しながら混合して
もよい。
【0036】なお、セルロースエステルの処理に際して
は、溶解作業性を損わない範囲であれば、貧溶媒ととも
に良溶媒を併用してもよい。また、セルロースエステル
の処理に際しては、溶液の混合溶媒を構成する貧溶媒の
全てを使用する必要はなく、混合溶媒を構成する貧溶媒
の一部を用いてもよい。
【0037】このようにして溶解したセルロースエステ
ルの濃度は、用途に応じて調整でき、例えば、1〜30
重量%、好ましくは5〜25重量%程度である場合が多
い。なお、最終的なセルロースエステル溶液の溶媒組成
は、前記のような良溶媒と貧溶媒の割合に調整される。
【0038】より具体的には、例えば、セルローストリ
アセテート溶液の調製に際し、良溶媒として1,3−ジ
オキソラン50重量%以下、貧溶媒としてアセトン50
重量%以上の混合溶媒により、酢化度60.2%のセル
ローストリアセテート溶液を調製する場合、1,3−ジ
オキソランの重量と等量又はそれ以下(50重量%以
下)の量のアセトンとセルローストリアセテートとを混
合し、セルローストリアセテートを膨潤させ、1,3−
ジオキソランと混合撹拌することにより、セルロースト
リアセテートを効率よく溶解できる。この場合、残存す
るアセトン全量を最終的に混合することにより、目的と
する溶媒組成のセルローストリアセテート溶液を得るこ
とができる。
【0039】良溶媒として1,3−ジオキソランを用
い、貧溶媒としてアセトン又はエタノールを用いた場
合、セルロースアセテートの酢化度(%)と、好ましい
溶媒組成は、例えば、次の通りである。
【0040】 セルロースアセテート 貧溶媒 好ましい溶媒の重量組成 の酢化度(%) (良溶媒/貧溶媒) 61.5 アセトン >90/10 61.5 エタノール >90/10 60.9 アセトン >80/20 60.9 エタノール >80/20 60.2 アセトン >50/50 60.2 エタノール >80/20 このようにして得られたセルロースエステル溶液は、前
記のように溶媒が非ハロゲン系溶媒であるにも拘らず、
溶媒の除去を短時間に行なうことができるとともに、粘
度が低いので、ラッカー、絶縁材料などの種々の材料に
利用できるとともに、種々の成形品、例えば、フィルム
や繊維などを得る上で有用である。
【0041】前記セルロースエステルフィルムは、慣用
の方法、例えば、セルロースエステル溶液を平滑面又は
粗面を有する平板状又はドラム状基材に流延などにより
適用し、乾燥することにより得ることができる。なお、
セルロースエステル溶液は、使用に先立って、通常、金
網やネルなどの濾材を用いて瀘過し、不純物を除去する
場合が多い。
【0042】セルロースエステル溶液の適用は、流延、
バーコート、グラビアコート、カーテンフローコート、
ロールコート、スピンコートなどの種々の塗布手段によ
り行なうことができる。また、セルロースエステル溶液
を均一な厚さに適用した後、通常、熱風で乾燥し(1次
乾燥)、基材からフィルムを剥離し、さらに熱風で完全
に乾燥(2次乾燥)する場合が多い。乾燥条件は溶媒組
成により異なるとともに、フィルムの厚みなどに応じて
適当に選択できる。1次乾燥の熱風温度は、例えば、3
0〜200℃程度(好ましくは35〜150℃程度)、
乾燥時間10秒〜10分程度、2次乾燥の熱風温度は、
例えば、80〜250℃(好ましくは100〜170℃
程度)、乾燥時間1分〜2時間程度であってもよい。セ
ルロースエステルフィルムの厚みは、用途に応じて0.
1〜250μm程度の範囲から選択できる。例えば、I
Cマスクの保護などのために用いられる光学用薄膜で
は、厚み0.1〜3μm程度の薄膜フィルムが使用で
き、包装材用フィルムでは、厚み10〜50μm程度の
フィルムが使用でき、写真用などの光学用フィルムで
は、厚み50〜250μm程度のフィルムが使用でき
る。
【0043】また、前記セルロースエステル繊維は、慣
用の方法、例えば、セルロースエステル溶液(ドープ)
を紡糸し、溶媒を除去することにより製造できる。セル
ロースエステル繊維の繊度は、1〜16デニール、好ま
しくは1〜10デニール、さらに好ましくは2〜8デニ
ール程度である。セルロースエステル繊維の断面形状
は、特に制限されず、例えば、円形、楕円形、異形(た
とば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状
などのいずれであってもよい。さらに、セルロースエス
テル繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維で
あってもよい。なお、溶媒の除去は、前記フィルムの製
造と同様の加熱条件、例えば、70〜200℃程度の温
度で行なうことができる。
【0044】
【発明の効果】本発明は、環状ジエーテルを良溶媒とし
て含んでいるため、非ハロゲン系溶媒を用いたセルロー
スエステル溶液を形成できる。また、本発明に用いる環
状ジエーテルは比較的沸点が低いため、溶媒の除去効率
が高く、セルロースエステル成形品を効率よく得ること
ができる。さらに、良溶媒と貧溶媒とを組合せて溶媒系
を構成すると、セルロースエステル溶液を簡単な操作で
効率よく得ることができるとともに、前記溶液の低粘度
化が可能である。
【0045】本発明の方法では、前記の如きセルロース
エステル溶液を用いるので、セルロースエステル成形品
を効率よく形成できる。
【0046】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定され
るものではない。
【0047】実施例1 酢化度60.2%のセルローストリアセテート13重量
部とアセトン56重量部とを20分間混合撹拌し、セル
ローストリアセテートを膨脹させた。1,3−ジオキソ
ラン76重量部を混合し、室温で3時間撹拌することに
より、13重量%のセルローストリアセテート溶液を得
た。
【0048】実施例2 実施例1で作製したセルローストリアセテート溶液を金
網とネルを用いて濾過し、未反応繊維、未溶解のセルロ
ーストリアセテートおよび不純物を除去した。濾液を平
らなガラス板上に約600μmの均一な厚さに流延した
後、60℃の熱風で15分間乾燥し、溶媒を50重量%
含むゲル状膜(フィルム)を形成した。膜をガラス板か
ら注意深く剥離し、温度100℃のオーブン中に20時
間保持し、残留溶媒を十分に除去することにより、74
μmの均一厚さのセルローストリアセテートフィルムを
得た。
【0049】実施例3 良好溶媒として1,3−ジオキソラン、貧溶媒としてア
セトン、エチノール又はメタノールを用い、セルロース
アセテートとして酢化度60.2%又は60.9%のセ
ルローストリアセテートを用い、溶媒組成による溶液粘
度(10重量%濃度溶液の落球粘度(ポイズ))を測定
した。結果を下表に示す。
【0050】
【表1】 表1に示されるように、良溶媒を単独で用いても溶液粘
度が小さいだけでなく、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒を
用いると、溶液粘度をさらに低減できる。

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロースエステルと、このセルロース
    エステルに対する良溶媒とを含む混合液であって、前記
    良溶媒が環状ジエーテルであるセルロースエステル溶
    液。
  2. 【請求項2】 環状ジエーテルの沸点が110℃以下で
    ある請求項1記載のセルロースエステル溶液。
  3. 【請求項3】 環状ジエーテルの沸点が100℃未満で
    ある請求項1記載のセルロースエステル溶液。
  4. 【請求項4】 環状ジエーテルが4〜7員環を有する請
    求項1〜3のいずれかの項に記載のセルロースエステル
    溶液。
  5. 【請求項5】 環状ジエーテルが1,3−ジオキソラン
    である請求項1記載のセルロースエステル溶液。
  6. 【請求項6】 溶媒が、セルロースエステルに対する良
    溶媒と、セルロースエステルに対する貧溶媒とで構成さ
    れている請求項1〜5のいずれかの項に記載のセルロー
    スエステル溶液。
  7. 【請求項7】 貧溶媒が、沸点80℃以下の非ハロゲン
    系溶媒である請求項6記載のセルロースエステル溶液。
  8. 【請求項8】 貧溶媒が、アルコール類、ケトン類およ
    びエステル類から選択された少なくとも一種の溶媒であ
    る請求項6又は7記載のセルロースエステル溶液。
  9. 【請求項9】 良溶媒の割合が、溶媒全体の20重量%
    以上である請求項6〜8のいずれかの項に記載のセルロ
    ースエステル溶液。
  10. 【請求項10】 セルロースエステルがセルロースアセ
    テートである請求項1記載のセルロースエステル溶液。
  11. 【請求項11】 セルロースエステルが、酢化度50〜
    62.5%のセルロースアセテートである請求項1又は
    10記載のセルロースエステル溶液。
  12. 【請求項12】 セルロースエステルが、酢化度57〜
    62.5%のセルロースアセテートである請求項1,1
    0又は11記載のセルロースエステル溶液。
  13. 【請求項13】 セルロースエステルと非ハロゲン系溶
    媒とを含む溶液であって、前記セルロースエステルが酢
    化度57〜62.5%のセルロースアセテートであり、
    前記非ハロゲン系溶媒が、沸点100℃以下の環状ジエ
    ーテルから選択された良溶媒と、アルコール類、ケトン
    類およびエステル類から選択された少なくとも一種の貧
    溶媒とで構成され、前記良溶媒と貧溶媒との割合が、前
    者/後者=30/70〜90/10(重量比)であるセ
    ルロースエステル溶液。
  14. 【請求項14】 セルロースエステルが、酢化度59〜
    62.5%のセルロースアセテートである請求項13記
    載のセルロースエステル溶液。
  15. 【請求項15】 環状ジエーテルが1,3−ジオキソラ
    ンである請求項13又は14記載のセルロースエステル
    溶液。
  16. 【請求項16】 セルロースエステルを貧溶媒で処理し
    た後、環状ジエーテルと混合するセルロースエステル溶
    液の製造方法。
  17. 【請求項17】 請求項1〜15のいずれかの項に記載
    のセルロースエステル溶液を用いセルロースエステル成
    形品を製造する方法。
  18. 【請求項18】 成形品がフィルムである請求項17記
    載の成形品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH1060170A (ja) * 1996-08-20 1998-03-03 Fuji Photo Film Co Ltd セルロースエステル溶液の調製方法およびセルロースエステルフイルムの製造方法
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