JP3391115B2 - クロム−酸素合金薄膜の製造法 - Google Patents

クロム−酸素合金薄膜の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クロム-酸素合金薄膜
の製造法に関する。更に詳しくは、歪ゲージ用薄膜など
として有効に用いられるクロム-酸素合金薄膜の製造法
に関する。
【0002】
【従来の技術】圧力センサ、加速度センサ等の各種力学
的センサには、歪による電気抵抗変化を利用するための
歪ゲージ用薄膜が用いられている。かかる歪ゲージ用薄
膜は、クロム系などの合金材料または半導体材料から形
成されたものがそれぞれ知られており、後者は温度変化
の影響を受け易いという欠点がみられる。
【0003】一方、クロム系合金材料の内、Ni-Cr系合
金薄膜の場合には、歪感度を示すゲージ率が小さい(K=
1.6〜2.1程度)という問題があり、またCr-O-Si系合金薄
膜の場合には、酸素の含有率は2〜30原子%、好ましくは
15〜20原子%とされており(特開平2-76201号公報)、この
ような比較的高含有率の酸素を含有せしめることは、本
来高いゲージ率を有し、従って歪に対して高い感度を有
するクロムの特性を必要以上に低下せしめることにな
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、本来
高いゲージ率、即ち歪に対する高い感度を有するという
クロムの特性を必要以上に低下させることなく、換言す
れば低い酸素含有率でしかも温度変化に対して影響を受
け難い低抵抗温度係数を有し、従って歪ゲージ用薄膜な
どとして有効に使用し得るクロム-酸素合金薄膜の製造
法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、
クロムをターゲットとして、10-4〜10-2Paオーダーの酸
素ガス分圧のアルゴン-酸素混合ガス雰囲気中で薄膜化
手段を適用し、酸素含有率が0.1〜1.9原子%のクロム-酸
素合金薄膜を製造することによって達成される。
【0006】クロムをターゲットとし、アルゴン-酸素
混合ガス雰囲気中での薄膜化手段としては、任意の物理
的あるいは化学的蒸着法を用いることができ、例えば真
空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法な
ども用いることはできるが、好ましくは高周波スパッタ
リング法が用いられる。高周波スパッタリング法は、例
えば図1に示されるような成膜装置を用いて行われる。
【0007】この成膜装置の成膜チャンバー1の内部に
は、クロムターゲット(純度99.9%)2およびこれと対向
位置の基板3が取り付けられており、ガラス、アルミ
ナ、ポリイミド樹脂等の絶縁物あるいは鋼、アルミニウ
ム、チタン、シリコン等の導体または半導体の表面に絶
縁性薄膜を形成させたもの等からなる基板の背面は、赤
外線ランプ4等によって約80〜200℃の温度に加熱さ
れ、その際膜厚および温度の均一性を図るため、基板は
成膜操作中回転させておくことが好ましい。
【0008】高周波スパッタリング雰囲気を形成させる
アルゴンガスおよび酸素ガスは、それぞれボンベ5およ
び6よりマスフロ-コントローラ7,8により流量を調節
した上で、成膜チャンバー1内に供給される。この流量
比を調節することにより、アルゴン-酸素混合ガス中の
酸素ガス分圧が10-4〜10-2Paオーダー、好ましくは10-3
Paオーダーに設定される。
【0009】混合ガスの供給に先立って、成膜チャンバ
ー1内は真空ポンプ10によって約10-3Pa以下に減圧排気
される。また、成膜を開始する直前に、不純物の混入を
防止するためのターゲット表面および基板表面のスパッ
タエッチングも行われる。
【0010】成膜は、圧力約1×10-1〜6×10-1Paの条件
下で、高周波電源9から発生させる約200〜1500W、好ま
しくは約500〜1500Wの有効電力で、クロムターゲット2
を高周波スパッタリングすることによって行われる。こ
のときの成膜速度は有効電力によって異なり、例えば有
効電力500Wの場合には約10nm/分程度であり、基板上に
は約50〜1000nm、好ましくは約200〜400nmの膜厚で薄膜
が形成される。形成された合金薄膜は、約200〜500℃で
約1〜5時間程度熱処理し、均質化させることが望まし
い。
【0011】このようにしてクロム-酸素合金薄膜を形
成させた基板上には、この薄膜に接続された電極が公知
の任意の方法によって付設され、歪ゲージを構成させ
る。
【0012】
【作用】および
【発明の効果】アルゴン-酸素混合ガス中の酸素ガス分
圧を調節することで、形成される薄膜の酸素含有率をコ
ントロールすることができ、それによって薄膜の特性、
特に薄膜抵抗の温度依存性を調整することができる。よ
り具体的には、形成された薄膜中に占める酸素含有率が
低くなる程ゲージ率は高くなり、一方薄膜抵抗の温度依
存性を示す抵抗温度係数(TCR)は、10-3Paオーダーで最
も低くなる。
【0013】このように、特定の酸素ガス分圧のアルゴ
ン-酸素混合ガス雰囲気中で薄膜化して得られる本発明
のクロム-酸素合金薄膜は、酸素含有率が0.1〜1.9原子%
という少ない酸素含有率であり、従ってクロムが本来有
する高ゲージ率、換言すれば歪に対する高い感度を必要
以上に低下させず、しかも温度変化の影響を受け難い低
抵抗温度係数を有しているため、歪ゲージ用薄膜材料と
して望ましい特性を有しているといえる。
【0014】
【実施例】図1に示される成膜装置を用いて、前述の如
き方法でのスパッタリング薄膜の製造が行われた。基板
には、有機溶剤およびアルカリ洗剤で洗浄されたホウけ
い酸ガラスプレート(厚さ1mm)が130℃に加熱して用いら
れ、混合ガス導入前に成膜チャンバー内は8×10-4Paに
減圧排気された。成膜は、種々の流量比(酸素ガス分圧)
のアルゴン-酸素混合ガスを供給しながら、圧力2.5×10
-1Pa、有効電力500Wの条件下で約40分間行われ、膜厚約
400nmのクロム-酸素合金薄膜を基板上に形成させた。
【0015】基板上に形成させたクロム-酸素合金薄膜
は、レジストを用いたフォトリソグラフ法とエッチング
法を適用することにより、ゲージパターンを形成させ、
その後金を高周波スパッタリングして電極を付設させ、
試験片を作成した。図2に示される試験片11において、
12は基板であり、13はゲージ部、また14,14´は電極で
ある。なお、試験片は作製後、300℃の大気中で4時間熱
処理が行われた。
【0016】この試験片を用いて、ゲージ率および抵抗
温度係数(TCR)の測定が行われた。ゲージ率の測定は、
図3に示されるような4点曲げの方法を用い、歪と抵抗
変化量との関係からゲージ率を求めた。ここで、11は試
験片であり、15,16は4点曲げ台、17は変位検出器、18
は抵抗計である。
【0017】また、抵抗温度係数は、-40,0,25,75お
よび130℃の各温度での抵抗を測定し、抵抗変化量から
算出した。更に、薄膜の組成は、光電子分光分析法によ
り測定したが、測定に先立ち膜表面の酸化物をイオンガ
ンにより除去し、膜内部の組成を測定した。
【0018】以上の各項目の測定結果は、次の表に示さ
れる。No. 酸素ガス分圧(Pa) ゲージ率 TCR(ppm/K) 抵抗率(Ω・m) 酸素含有率(原子%) 1 2.0×10-4 13.5 860 3.3×10-7 0.6 2 2.0×10-3 12.0 720 4.5×10-7 0.8 3 3.8×10-3 11.5 400 7.1×10-7 1.2 4 5.9×10-3 8.5 70 1.3×10-6 1.1 5 6.1×10-3 8.2 -30 1.7×10-6 1.9 6 1.1×10-2 6.3 -300 4.2×10-6 1.7 7 1.5×10-2 5.7 -540 7.8×10-6 2.5 以上の結果から、10-3Paオーダーの酸素ガス分圧のアル
ゴン-酸素混合ガスを用い、特に酸素含有率を1.1〜1.9
原子%とした薄膜については、高ゲージ率(8.2〜8.5)に
して低抵抗温度係数(±100ppm/K以内)というすぐれた特
性のものが得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に用いられる成膜装置の概要図であ
る。
【図2】ゲージ率および抵抗温度係数の測定に用いられ
る試験片の概要図である。
【図3】ゲージ率測定方法の概要図である。
【符号の説明】
1 成膜チャンバー 2 クロムターゲット 3 基板 5 アルゴンガスボンベ 6 酸素ガスボンベ 9 高周波電源
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 14/58 C23C 16/00 - 16/56 G01B 7/16 G01L 1/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロムをターゲットとし、10-4〜10-2Pa
    オーダーの酸素ガス分圧のアルゴン-酸素混合ガス雰囲
    気中で薄膜化手段を適用することを特徴とする、酸素含
    有率が0.1〜1.9原子%のクロム-酸素合金薄膜の製造法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の方法で得られた、酸素含
    有率が0.1〜1.9原子%のクロム-酸素合金薄膜よりなる歪
    ゲージ用薄膜。
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