JP3388067B2 - 処理浴安定性に優れたクロメート処理浴および、その処理浴によって製造されたクロメート処理金属板 - Google Patents

処理浴安定性に優れたクロメート処理浴および、その処理浴によって製造されたクロメート処理金属板

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JP3388067B2 JP19136495A JP19136495A JP3388067B2 JP 3388067 B2 JP3388067 B2 JP 3388067B2 JP 19136495 A JP19136495 A JP 19136495A JP 19136495 A JP19136495 A JP 19136495A JP 3388067 B2 JP3388067 B2 JP 3388067B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、処理浴安定性に優
れたクロメート処理浴、およびその浴を使用して製造し
たクロメート処理金属板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】クロメート処理は、鋼板、亜鉛系めっき
鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム板ある
いはアルミニウム合金板の防錆処理として従来から知ら
れており、現在使用されているものには、大別して3価
クロムを主成分とする電解クロメート処理、反応型クロ
メート処理と6価クロムを含有し、塗布後水洗すること
なく乾燥される塗布型クロメート処理がある。近年、ク
ロメート処理金属板が家電、建材、自動車などの用途に
広く使用されるようになり、需要家から種々の性能を要
求される様になった。例えば外観均一性、耐指紋性、塗
料との密着性、裸使用における平板材の耐蝕性、および
加工部、傷付部での耐蝕性、アルカリ脱脂における耐ク
ロム溶出性などがあげられる。6価クロムを多く含む塗
布型クロメートの耐クロム溶出性に関しては、環境負荷
物低減を目的とした環境保全の見地から、一層の向上を
めざすべき重要課題であると考えられる。
【0003】クロメート皮膜の耐クロム溶出性を向上さ
せる技術としては、例えば特開平3−215683号公
報に見られる様に、クロメート皮膜の加熱を板温300
℃という比較的高温で行う方法が知られている。しかし
ながらこの方法によると、乾燥時に6価クロムが還元さ
れて3価クロムとなり、6価クロムが皮膜中に殆ど残存
しなくなる。そのため加工部および傷付部における耐蝕
性は、可溶性の6価クロムを含むクロメートに比べて大
きく劣る。特開平5−287548号公報および特開平
4−358082号公報では、ポリアクリル酸等の樹脂
やアルコール類等の還元剤を添加することによって6価
のクロムは還元、固定し、3価クロムを樹脂中で架橋さ
せる方法がとられている。この方法は、クロメート皮膜
のバリア効果により耐蝕性は向上する。しかし、加工部
および傷付部などのクロメート皮膜が損傷した部位にお
いては、6価クロムの自己修復作用が殆ど機能しないた
め、加工部および傷付部における耐蝕性の問題が残る。
【0004】特開昭61−23767号公報では、アク
リル酸エステル系モノマーとアクリル酸系モノマーとの
共重合エマルジョン、および6価クロム酸塩との共存皮
膜を達成させている。これによって加工部および傷付部
などクロメート皮膜が損傷した部位において、6価クロ
ムの自己修復作用を機能させ、加工部および傷付部にお
ける耐蝕性の問題を解決している。しかしながら、ポリ
アクリル酸のカルボキシル基は、親水性であるがゆえ、
皮膜の吸水率は高くなるため、塗膜二次密着性およびア
ルカリ脱脂性を考慮すると、添加量の最適化という問題
が残る。
【0005】これを克服するために、特開平5−230
666号公報では、ビニル系有機共重合水性エマルジョ
ン中に水酸基含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有
ビニルモノマーを共重合させて、二次密着性及びアルカ
リ脱脂性能の向上をはかっている。しかし、この方法で
は、エマルジョン中に水酸基が多量に含有しているため
に、エマルジョン中の水酸基が6価クロムの還元剤とな
って最終的にゲル化に至る。
【0006】又、特開昭61−23767号公報および
特開平5−230666号公報は、ビニル系有機共重合
水性エマルジョンに共重合されているモノマーは、低p
Hにおいて加水分解してアルコールを生成するアクリル
酸メチルの様なモノマーも含まれる。加水分解によって
生成したアルコールは、6価クロムを還元して3価のク
ロムを生成するため、長期的に見ると処理浴はゲル化す
る可能性がある。処理浴の長期安定性を考慮すると、低
pHで加水分解しやすいアクリル酸エステルの適用には
注意が必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の問題
点を解決して、処理浴安定性に優れたクロメート処理浴
およびそのクロメート処理浴を用いて製造したクロメー
ト金属板を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、二次密着性、
自己修復機能等の機能を有するクロメート処理金属板を
製造するための安定な処理浴を提供するために、さまざ
まなビニル系有機共重合水性エマルジョン樹脂、添加剤
等を添加し、さまざまのpHに調製したクロメート処理
浴の浴安定性を検討した。さらに、浴安定性が劣ってい
たため生成したゲルの組成も、鋭意解析した。その結
果、 クロメート浴中の6価クロムを還元することが出来
る、ビニル系有機共重合水性エマルジョンに共重合され
ている水酸基含有モノマーと、水酸基含有添加剤と、p
H2以下で加水分解してアルコールを生成するエステル
系添加剤のうち、少なくとも1種類以上が含まれている
時の総濃度を制限すること。 6価および3価クロム濃度と、処理浴のpHを調整す
ること。 ビニル系有機共重合水性エマルジョンに共重合されて
いる(メタ)アクリル酸エステルの組成を最適化するこ
と。 によって、目的であるクロメート処理浴安定性の達成
は、可能であることを見いだし、到達したものである。
また、当該処理浴を金属板に塗布して形成した皮膜表面
の水酸基/カルボキシル基の比が、最適範囲に有る場
合、塗膜一次および二次密着性能が優れていることも見
いだした。
【0009】本発明の要旨は、 (a)6価クロム還元性物質が0.001mol/l以
上0.30mol/l以下、 (b)全Cr濃度が0.02mol/l以上0.35m
ol/l以下、 (c)Cr(III)/Cr(VI)=25/75以上
75/25以下、 (d)無機酸濃度が0.15mol/l以上0.9mo
l/l未満、 (e)CH 2 =CR 1 COOR 2 (R 1 は水素またはメチル
基、R 2 はアルキル基)で示される(メタ)アクリル酸
エステルモノマーが少なくとも1種類以上共重合されて
いるビニル系有機共重合水性エマルジョンであり、か
つ、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸
エステルモノマー濃度の合計に対する、アルキル基の炭
素数が3以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー濃
度合計の比率が1以下、からなる浴組成で、浴全体のp
Hが2以下である処理浴安定性に優れたクロメート処理
浴である。そして、当該処理浴を塗布乾燥させて形成し
たクロメート皮膜表面の水酸基/カルボキシル基の比が
2.5以下である塗膜一次および二次密着性能に優れた
クロメート処理金属板である。
【0010】以下本発明を詳細に説明する。6価および
3価クロム混合水溶液に、水酸基含有ビニル系有機共重
合エマルジョン樹脂を添加するとゲル化する。その機構
は以下の様に考えられる。6価クロムによって、樹脂中
の水酸基はアルデヒド基、更にカルボキシル基に酸化さ
れる。この時生成された3価クロムカチオンが、カルボ
キシルアニオンと塩を形成することによって、架橋構造
を形成し、ゲルが生成する。しかしながら6価および3
価クロム混合水溶液にあらかじめ燐酸、硫酸等の無機酸
を添加し、pH2以下に処理浴が調製されていると、水
酸基の酸化速度は増加するにもかかわらず、ゲル化速度
は低下するか又はゲル化しなくなる。それは、この様な
低pHではカルボキシル基は殆ど解離していないためと
考えられる。
【0011】更に、ゲル中の3価クロムの組成をX線光
電子分光法(XPS)によって分析した結果、ゲル化以
前に比べてゲル化後は、浴中にクロム水酸化物が多く生
成していることが分かった。クロメート浴中において3
価クロム、6価クロム、燐酸等は、複核錯体を形成して
いると考えられ、この中にOH- が配位していると考え
られる。従って、ゲルを形成する架橋構造は、樹脂、ク
ロム複核錯体が水素結合等で架橋することによって、形
成していると考察した。つまり、水酸基含有エマルジョ
ン樹脂がゲル化の直接的原因ではなく、6価クロムが3
価クロムに還元されpHが上昇し、クロム水酸化物が増
加したことが直接の原因であると結論付けた。したがっ
て、クロメート処理浴のゲル化を抑制するには、水酸化
クロムが増加しない様にpHを調整し、6価および3価
クロム濃度、6価クロムを還元できるすべての有機物濃
度を、最適範囲に制限する必要がある。
【0012】又、アルコール成分由来のアルキル基がメ
チル基、エチル基、プロピル基であるアクリル酸エステ
ルモノマーがビニル系有機共重合水性エマルジョンに共
重合されていると、クロメート処理浴がpH2以下で
は、これらが多く加水分解して、それぞれ6価クロムを
還元できるメチルアルコール、エチルアルコール、プロ
ピルアルコールを生成しやすくなる。つまり、加水分解
はエステル基のアルコール成分の分子量が小さい程、生
じやすい。従って、これらのアクリル酸エステルモノマ
ーの濃度を制限するか、使用せず他の非加水分解性モノ
マーで代替することが必要である。
【0013】6価クロム還元性有機物濃度は、0.00
1mol/l以上、0.30mol/l以下であること
が必須条件である。この濃度が0.30mol/lを超
えると、6価クロム還元物質が多すぎるため、多くの3
価クロムが生成して処理浴安定性は著しく低下し、ゲル
化に至る。また、0.001mol/l未満の低い濃度
では、ビニル系有機共重合水性エマルジョンに共重合さ
れる水酸基含有ビニル系モノマーにおいては密着性能、
水酸基含有添加剤および、pH2以下で加水分解してア
ルコールを生成するエステル系添加剤においては酸化防
止、靱性向上等の皮膜形成後に期待される本来の機能が
十分発揮出来ない。
【0014】総クロム濃度として0.02mol/l以
上、0.35mol/l以下が好ましい。より好ましく
は、0.03mol/l以上、0.30mol/l以下
である。総クロム濃度が0.02mol/l未満では、
6価クロムが少ないため、自己修復機能による傷付部の
耐蝕性が期待出来なくなる。他方、0.35mol/l
を超えると、樹脂によってクロムを捕捉しきれなくな
り、耐クロム溶出性が低下する。
【0015】6価/3価クロムの比は25/75以上7
5/25以下が好ましい。より好ましくは30/70以
上70/30以下である。6価/3価クロムの比が、2
5/75未満であると僅かのpH上昇により、クロム水
酸化物の量が増加して、処理浴は不安定になりゲル化す
る。他方75/25を超えると、添加した殆どのビニル
系有機共重合エマルジョンの水酸基をカルボキシル基ま
で酸化してしまい、塗布後、二次密着性が確保出来なく
なる。6価および3価クロムは、無水クロム酸をでんぷ
ん、アルコール等で予め部分還元することによって調製
することが出来る。
【0016】無機酸の濃度は0.15mol/l以上
0.9mol/l未満が好ましい。0.15mol/l
未満であると、pHが高くなり、クロム水酸化物が生成
して処理浴はゲル化する。0.9mol/l以上である
と、クロム化合物が潮解するため、乾燥皮膜を形成する
ことが出来ない。無機酸には硫酸、ポリ燐酸、硝酸、燐
酸等がある。処理浴全体のpHは2以下が好ましい。よ
り好ましくはpH1.5以下である。pH2を超える
と、クロム水酸化物が増加して処理浴は不安定となり、
ゲル化する。
【0017】6価クロムは、水酸基含有有機物が酸化さ
れることによって、3価クロムに還元される。従って、
添加量を制限する6価クロム還元性物質は、水酸基含有
ビニル系モノマーが共重合されたビニル系有機共重合エ
マルジョンおよびオリゴマー、未反応残留モノマーや水
酸基含有又はpH2以下で加水分解するエステル系の界
面活性剤、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤に分類され
る。水酸基含有ビニル系モノマーには、(メタ)アクリ
ル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロ
キシルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブ
チル、アクリル酸2,2−ビス(ヒドロキシメチル)エ
チル、(メタ)アクリル酸2,3−ヒドロキシプロピ
ル、(メタ)アクリル酸−3−クロル−2−ヒドロキシ
プロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル、
アリルアルコール、N−メチロールアクリルアミド類の
水酸基を含有するモノマーがある。
【0018】可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタ
ル酸ジエチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、ア
セチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチ
ル、ジエチレンフタレート等がある。これらは、クロメ
ート皮膜の塗膜二次密着性向上等を目的として共重合す
る。酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p
−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6
−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、アクリル−
β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート、2,2−メチレンビス(4−メチ
ル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビ
ス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等があ
る。
【0019】界面活性剤としてはノニオン系界面活性が
対象である。例えば、ポリオキシエチレン2級アルコー
ルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエー
テル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオ
キシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、
プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリビニルアル
コール等がある。ビニル系有機共重合水性エマルジョン
に共重合されるCH2=C(R1 )COOR2 (R1
水素またはメチル基、R2 はアルキル基)で示される
(メタ)アクリル酸エステルモノマーにおいて、アルキ
ル基の炭素数が3以下は、(メタ)アクリル酸メチル、
(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピ
ルがある。アルキル基の炭素数が4以上は、(メタ)ア
クリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メ
タ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル
酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)ア
クリル酸ステアリル等がある。これらのアクリル酸エス
テルは皮膜の伸び、固さ等の機械特性等をバランスさせ
るために、共重合する。
【0020】ビニル系有機共重合水性エマルジョンに共
重合される、アルキル基の炭素数4以上の(メタ)アク
リル酸エステルモノマー総濃度に対するアルキル基の炭
素数3以下の(メタ)アクリル酸エステル総濃度の比率
は、1以下が好ましい。またアルキル基の炭素数3以下
のアクリル酸エステルが共重合されてなくても良い。こ
の比率が1を超えると、多くのアルキル基の炭素数3以
下のアクリル酸エステルが加水分解してアルコールを発
生することになり、6価クロムが3価クロムに還元され
て、処理浴は不安定になる。
【0021】エステル基を含有しない非加水分解性ビニ
ル系モノマーは、スチレン、αメチルスチレン、ビニル
トルエン、アクリロニトリル等がある。これらのモノマ
ーは皮膜の固さ増加、耐熱性向上を目的に共重合する。
ビニル系有機共重合エマルジョンに共重合される非加水
分解性ビニル系モノマー濃度は、0.5mol/l以下
が好ましい。0.5mol/lを超えると、この種のモ
ノマーは、ガラス転移温度が常温より高いため、皮膜に
した時の靱性が低く、加工部の耐蝕性が低下する。
【0022】ビニル系有機共重合エマルジョンに共重合
されるカルボキシル基含有ビニルモノマーは、0.01
mol/l以上、1.0mol/l以下が好ましい。
0.01mol/l未満であると分散安定性が低下し
て、エマルジョンは凝集する。又1.0mol/lを超
えると、分散安定性は向上するが、塗膜二次密着性が低
下し、アルカリ脱脂を行うと、皮膜が溶解する。カルボ
キシル基含有ビニルモノマーにはアクリル酸、メタクリ
ル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール
酸等がある。これらのモノマーは、ビニル系有機共重合
水性エマルジョンの分散安定性の向上、皮膜形成時の密
着性向上を目的に共重合する。
【0023】耐蝕性、皮膜固さを向上させるために処理
浴に、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア等の無
機酸化物ゾルを添加しても良い。耐蝕性に優れた親水性
コロイダルシリカが好ましい。又、親水性コロイダルシ
リカ中に、疎水性シリカが添加されていてもかまわな
い。添加量は30g/l以下が好ましい。30gを超え
ると、樹脂とコロイダルシリカとの相溶性が低下して、
皮膜が脆くなる。
【0024】さらに本発明者らは、上記処理液を塗布乾
燥させた皮膜表面において、水酸基はカルボキシル基よ
りも濃化していることも見いだした。この水酸基、カル
ボキシル基は、それぞれビニル系有機共重合性エマルジ
ョンに共重合された水酸基含有ビニル系モノマー、カル
ボキシル基含有ビニル系モノマーに対応している。水酸
基はカルボキシル基に対して親水性が低いため、表面に
水酸基含有成分が相分離するものと考えられる。本発明
における処理浴から形成されたクロメート皮膜表面上の
水酸基/カルボキシル基比は2.5以下が好ましい。
2.5を超えると一次密着性は向上するが、二次密着性
は低下する。クロメート皮膜の厚さは3μm以下が好ま
しい。3μmを超えると、皮膜間の電気抵抗が増加する
ため、このクロメート処理金属板をスポット溶接する
と、当該溶接機の電極が消耗しやすくなり経済的でな
い。また、溶接面の仕上がり等も低下する。
【0025】金属板へのクロメート処理法としては、ロ
ールコーターによる塗布、リンガーロールによる塗布、
浸漬およびエアナイフ絞りによる塗布等が使用可能であ
る。なお、本発明が適用可能な金属板としては、亜鉛め
っき鋼板、亜鉛・ニッケルめっき鋼板、亜鉛・鉄めっき
鋼板、亜鉛・クロムめっき鋼板、亜鉛・チタンめっき鋼
板、亜鉛・マグネシウム鋼板、亜鉛・マンガンめっき鋼
板、亜鉛・アルミニウムめっき鋼板などの亜鉛系の電気
めっきおよび溶融めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼
板、さらにこれらのめっき層に少量の異種金属元素ある
いは不純物として、例えばコバルト、モリブデン、タン
グステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、
マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、アンチモン、すず、
銅、カドミウム、砒素等を含有しためっき鋼板、さらに
これらのめっき層にシリカ、アルミナ等の無機物を分散
させためっき鋼板、あるいはアルミニウム板およびこれ
に合金元素あるいは不純物としてシリコン、銅、マグネ
シウム、鉄、マンガン、クロム、チタン、亜鉛などを添
加したアルミニウム合金板、あるいは冷延鋼板等であ
る。
【0026】
【実施例】
実施例1 各種クロメート浴について以下のような浴安定性評価を
行った。 処理浴安定性 (1)ビニル系有機共重合水性エマルジョン樹脂:アク
リル系ソープフリーエマルジョン樹脂を用いた。添加量
は有機共重合水性エマルジョン合成時に仕込んだモノマ
ー量を、処理浴中における濃度に換算した。共重合させ
たモノマーは下記の通り。 A;水酸基含有ビニル系モノマーとして、OH含有アク
リル酸系モノマー B;カルボキシル基含有ビニル系モノマーとしてアクリ
ル酸系モノマー C;加水分解性アクリル酸エステルモノマーとしてアル
キル基の炭素数3以下のアクリル酸エステル D;難加水分解性アクリル酸エステルモノマーとしてア
ルキル基の炭素数4以上のアクリル酸エステル E:非加水分解性ビニル系モノマーとして芳香族系ビニ
ルモノマーを用いた。
【0027】また、合成したエマルジョン中の残留モノ
マー量を、ガスクロマトグラフ装置によって測定した。 (2)クロム酸の種類:無水クロム酸をでんぷんにより
部分還元したものを用いた。 (3)添加物: F;6価クロムアルコール系還元性添加剤として、ブタ
ノール(BuOH)を用いた。 (4)無機酸:燐酸を用いた (5)無機ゾル:親水性コロイダルシリカを用いた
【0028】(6)浴安定性評価法:調製したクロメー
ト処理液をガラスびんに入れ、50℃に調温した恒温槽
に静置し、1日おきに目視により、沈殿またはゲル状態
に到達するまでの日数を確認した。 ◎:30日以上安定 〇:20日以上30日未満でゲル化または凝集 △:10日以上20日未満でゲル化、または凝集 ×:10日以下でゲル化または凝集
【0029】その結果を表1に示す。本発明の実施例に
おいて、6価クロム還元物質濃度、全Cr濃度、Cr
(III)/Cr(VI)比、無機酸濃度および、pHが適正
範囲に入っているものは、処理浴が20日以上経過して
も、ゲル化または凝集せず安定性が高い。大量にクロメ
ート処理金属を製造するためには、少なくとも、処理浴
は20日以上安定であることが必要である。
【0030】
【表1】
【0031】実施例2 実施例1で評価した処理浴の内、10日以上安定であっ
た処理浴を用いて各種めっき金属板にクロメート処理を
施し、その特性評価を行った。 (1)金属板の種類:クロメート処理を行う金属板とし
て以下を用いた。 GI;溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量90g/m
2 ) EG;電気亜鉛めっき鋼板(めっき付着量20g/m
2 ) Zn−Al;溶融亜鉛−アルミニウムめっき鋼板(めっ
き付着量90g/m2 Al/Zn=55/45 (2)処理浴:実施例1にて建浴した、処理浴のうち、
10日以上安定であった処理浴を選定し、建浴10日後
に塗布した。 (3)塗布方法:ロールコーターを使用して塗布処理し
た。乾燥後のクロメート皮膜の厚みは0.5μmとし
た。
【0032】(4)性能評価方法 クロム溶出量:沸騰水に処理金属板を30分間浸漬
し、浸漬前の全Cr量から、浸漬後の全Cr量を測定
し、下記式により溶出量の程度を確認した。なお、Cr
量は蛍光X線による金属Cr換算値である。 溶出率=(浸漬前Cr量−浸漬後Cr量)/(浸漬前C
r量)×100〔%〕 ◎:5%未満 〇:5%以上15%未満 △:15%以上30%未満 ×:30%以上
【0033】加工部耐蝕性:供試材を高さ7mmまで
エリクセン加工した後、JISZ2371に準拠した塩
水噴霧試験を72時間行い、加工部における錆発生の程
度を評価した。 ◎:錆発生なし 〇:白錆5%以下 △:白錆5%以上15%未満 ×:白錆15%超
【0034】一次密着性:供試材にメラミンアルキッ
ド系塗料を20ミクロン塗装し、所定条件で乾燥した
後、JISK5400に準拠してカッターナイフで1m
mの碁盤目を塗装面に入れ、セロハンテープで剥離し
て、塗膜の剥離面積を調べた。 ◎:剥離なし 〇:剥離率3%未満 △:剥離率3%以上10%未満 ×:剥離率10%超
【0035】二次密着性:供試材にメラミンアルキッ
ド系塗料を20ミクロン塗装し、所定条件で乾燥した
後、50℃の温水に3時間浸漬してからJISK540
0に準拠してカッターナイフで1mmの碁盤目を塗装面
に入れ、セロハンテープで剥離して、塗膜の剥離面積を
調べた。 ◎:剥離なし 〇:剥離率10%未満 △:剥離率10%以上30%未満 ×:剥離率30%超
【0036】(5)皮膜表面組成解析(水酸基/カルボ
キシル基比) XPSによる炭素由来のナロースキャンをクロメート皮
膜に適用し、得られたスペクトルのCOO- 、≡CO−
について波形分離し、対応スペクトルの積分強度を濃度
に換算して、その濃度比を水酸基/カルボキシル基比と
した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】実施例3 下記の金属板を用いて、実施例2と同様に処理、評価を
行った。なお、加工部耐蝕性評価において、塩水噴霧試
験は144時間行った。 (1)金属板の種類:クロメート処理を行う金属板とし
てJIS8642H−HDAlに規定されているアルミ
ニウムめっき板を用いた。その結果を表3に示す。本発
明の実施例において、6価クロム還元物質濃度、全Cr
濃度、Cr(III )/Cr(VI)比、無機酸濃度およ
び、pHが適正範囲に入っているものは、処理浴の安定
性が高いとともに、クロメート処理金属板とした時の特
性も優れている。また、浴寿命が、10日以上20日未
満の処理浴で製造したクロメート金属板の、加工部耐蝕
性は低い。これは処理浴が不安定であったことから、エ
マルジョン粒子が均一分散されておらず、緻密な皮膜が
形成出来ていなかったと類推され、これが原因となっ
て、加工に対して皮膜が追随できず、大きく損傷したた
めと考えられる。また、この不十分な皮膜形成は、クロ
ム溶出性、塗膜密着性にも影響を与えていると考えられ
る。さらに、残留モノマーが100ppm以下になる
と、残存モノマー由来のピンホール等の欠陥が少なくな
るためか、加工部耐蝕性も向上した。クロメート皮膜表
面の水酸基/カルボキシル基比が適正範囲に入っている
ものは、一次および二次密着性も良好である。さらに、
その他性能においても良好であり、比較例と比べて、ど
の項目においても優れていることが分かる。
【0039】
【表3】
【0040】
【発明の効果】本発明により、長期間ゲル化、凝集する
ことなく、クロメート処理の本来の機能である加工部等
での耐蝕性を保持し、アルカリ脱脂時のクロム溶出量を
低減できる表面処理金属板を安定して製造出来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C23C 22/30 C23C 22/30 (72)発明者 藤岡 裕二 神奈川県川崎市中原区井田1618番地 新 日本製鐵株式会社 先端技術研究所内 (72)発明者 宮内 優二郎 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株 式会社 君津製鐵所内 (56)参考文献 特開 昭62−10280(JP,A) 特開 昭63−96275(JP,A) 特開 平5−287548(JP,A) 特開 平5−230666(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86 B05D 3/10 B05D 7/14 B05D 7/24 301

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 必須成分として、6価クロム還元性物質
    が0.001mol/l以上0.30mol/l以下、
    全Cr濃度が0.02mol/l以上0.35mol/
    l以下、Cr(III)/Cr(VI)=25/75以
    上75/25以下、無機酸濃度が0.15mol/l以
    上0.9mol/l未満、およびCH 2 =CR 1 COOR
    2 (R 1 は水素またはメチル基、R 2 はアルキル基)で示
    される(メタ)アクリル酸エステルモノマーが少なくと
    も1種類以上共重合されているビニル系有機共重合水性
    エマルジョンを含有し、アルキル基の炭素数が4以上の
    (メタ)アクリル酸エステルモノマー濃度の合計に対す
    る、アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸
    エステルモノマー濃度合計の比率が1以下であり、それ
    によって得られる浴全体のpHが2以下であることを特
    徴とする処理浴安定性に優れたクロメート処理浴。
  2. 【請求項2】 6価クロム還元性物質が、(a)ビニル
    系有機共重合水性エマルジョンに共重合されている水酸
    基含有ビニル系モノマー、(b)水酸基含有添加剤、
    (c)pH2以下で加水分解してアルコールを生成する
    エステル系添加剤、の少なくとも1種類以上であること
    を特徴とする請求項1記載のクロメート処理浴。
  3. 【請求項3】 CH2=C 1 COOR2(R1は水素また
    はメチル基、R2はアルキル基)で示される(メタ)ア
    クリル酸エステルモノマーが少なくとも1種類以上共重
    合されているビニル系有機共重合水性エマルジョンであ
    り、かつ、アルキル基の炭素数が以下の(メタ)アク
    リル酸エステルモノマーを共重合していないビニル系有
    機共重合水性エマルジョンであることを特徴とする請求
    項1記載のクロメート処理浴。
  4. 【請求項4】 エステル基を含有しない非加水分解性ビ
    ニル系モノマーが、少なくとも1種類以上共重合されて
    いる、ビニル系有機共重合水性エマルジョンであること
    を特徴とする請求項記載のクロメート処理浴。
  5. 【請求項5】 ビニル系有機共重合水性エマルジョンに
    共重合しているモノマーのうち、少なくとも1種類以上
    が、カルボキシル基含有ビニル系モノマーであることを
    特徴とする請求項1〜4記載のクロメート処理浴。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5記載のクロメート処理浴に
    よって製造されたクロメート処理金属板の、皮膜表面上
    有機物の水酸基/カルボキシル基比が、2.5以下であ
    ることを特徴とするクロメート処理金属板。
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