JP2929957B2 - 樹脂被覆表面処理鋼板 - Google Patents
樹脂被覆表面処理鋼板Info
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- JP2929957B2 JP2929957B2 JP2212095A JP2212095A JP2929957B2 JP 2929957 B2 JP2929957 B2 JP 2929957B2 JP 2212095 A JP2212095 A JP 2212095A JP 2212095 A JP2212095 A JP 2212095A JP 2929957 B2 JP2929957 B2 JP 2929957B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐食性、耐アルカリ
性、皮膜密着性、耐水性、潤滑性、耐ブロッキング性、
後塗装性に優れ、潤滑油を塗布せずに加工可能な良好な
加工性を有し、外観も良好な、めっき鋼板を母材とする
樹脂被覆表面処理鋼板に関する。
性、皮膜密着性、耐水性、潤滑性、耐ブロッキング性、
後塗装性に優れ、潤滑油を塗布せずに加工可能な良好な
加工性を有し、外観も良好な、めっき鋼板を母材とする
樹脂被覆表面処理鋼板に関する。
【0002】本発明の表面処理鋼板は無塗装および塗装
のいずれでも使用でき、その優れた耐食性その他の特性
によって、特に屋外で使用される鋼板材料、例えば、屋
根材、壁材などの建築用材料、農業用パイプ等の農業用
材料、エアコン室外機、自動販売機裏板等を含む家電用
材料、防音壁、ガードレール等の土木関連材料などとし
て有用である。
のいずれでも使用でき、その優れた耐食性その他の特性
によって、特に屋外で使用される鋼板材料、例えば、屋
根材、壁材などの建築用材料、農業用パイプ等の農業用
材料、エアコン室外機、自動販売機裏板等を含む家電用
材料、防音壁、ガードレール等の土木関連材料などとし
て有用である。
【0003】
【従来の技術】近年、建築用、家電用材料としての表面
処理鋼板の需要が拡大するとともに、そのニーズも多様
化してきている。建築用材料に関しては、特に塩害の厳
しい地域や工業地域において、従来の溶融亜鉛めっき鋼
板に替わり、亜鉛−アルミ系合金めっき鋼板の需要が拡
大している。
処理鋼板の需要が拡大するとともに、そのニーズも多様
化してきている。建築用材料に関しては、特に塩害の厳
しい地域や工業地域において、従来の溶融亜鉛めっき鋼
板に替わり、亜鉛−アルミ系合金めっき鋼板の需要が拡
大している。
【0004】現在実用化されている亜鉛−アルミ合金め
っき鋼板には、Zn-3.5〜5.5wt%Al合金めっき鋼板とZn-5
5wt%Al合金 (正確にはZn-55wt% Al-1.6wt%Si合金) めっ
き鋼板の2種類がある。Zn-3.5〜5.5wt%Al合金めっき鋼
板は、溶融亜鉛めっき鋼板の1.5〜2倍の耐食性を有
し、しかもめっき皮膜の延性に優れるため、プレコート
母材として適している。一方、Zn-55wt%Al合金めっき鋼
板は、Alのもつ高耐食性とZnのもつ犠牲防食性により、
溶融亜鉛めっき鋼板の3〜6倍という高耐食性である
上、めっき表面が銀白色で美麗なため、意匠性の点か
ら、表面に薄い透明有機皮膜を形成したクリヤーコート
品として使用されることが多い。
っき鋼板には、Zn-3.5〜5.5wt%Al合金めっき鋼板とZn-5
5wt%Al合金 (正確にはZn-55wt% Al-1.6wt%Si合金) めっ
き鋼板の2種類がある。Zn-3.5〜5.5wt%Al合金めっき鋼
板は、溶融亜鉛めっき鋼板の1.5〜2倍の耐食性を有
し、しかもめっき皮膜の延性に優れるため、プレコート
母材として適している。一方、Zn-55wt%Al合金めっき鋼
板は、Alのもつ高耐食性とZnのもつ犠牲防食性により、
溶融亜鉛めっき鋼板の3〜6倍という高耐食性である
上、めっき表面が銀白色で美麗なため、意匠性の点か
ら、表面に薄い透明有機皮膜を形成したクリヤーコート
品として使用されることが多い。
【0005】特にZn-55wt%Al合金めっき鋼板のクリヤー
皮膜に要求される性能として、下記を挙げることができ
る。 潤滑油を塗布せずにロール成形可能なロール成形性を
備えていること、 耐アルカリ性に優れること (Zn-55wt%Al合金めっき鋼
板は建材関係で多用されるスレート、コンクリート等か
らのアルカリ溶出によって黒変し易い性質があり、それ
を防止するため) 、 無色透明であり、めっきの銀白色の意匠性を害さない
こと、 平板部のみならず加工部の耐食性にも優れること、 耐水性に優れること (耐水性が悪いと結露し易く、屋
根材の場合、裏貼りされる断熱材と糊の接着性が悪くな
り、経時的に断熱材が浮いてくる) 。
皮膜に要求される性能として、下記を挙げることができ
る。 潤滑油を塗布せずにロール成形可能なロール成形性を
備えていること、 耐アルカリ性に優れること (Zn-55wt%Al合金めっき鋼
板は建材関係で多用されるスレート、コンクリート等か
らのアルカリ溶出によって黒変し易い性質があり、それ
を防止するため) 、 無色透明であり、めっきの銀白色の意匠性を害さない
こと、 平板部のみならず加工部の耐食性にも優れること、 耐水性に優れること (耐水性が悪いと結露し易く、屋
根材の場合、裏貼りされる断熱材と糊の接着性が悪くな
り、経時的に断熱材が浮いてくる) 。
【0006】また、家電用途を考えた場合、後塗装され
る場合があるため 後塗装性に優れること (特に、メラミンアルキッド系
塗料との密着性) が要求され、製造者の側から見た場
合、 コイル巻取り時に樹脂どうしが接着するブロッキング
を起こさないことも要求される。
る場合があるため 後塗装性に優れること (特に、メラミンアルキッド系
塗料との密着性) が要求され、製造者の側から見た場
合、 コイル巻取り時に樹脂どうしが接着するブロッキング
を起こさないことも要求される。
【0007】連続ラインでの工業的なクリアー皮膜の形
成は、母材の帯板状のめっき鋼板を、水系塗料の塗布工
程、オーブンでの焼付け工程を順に通過させた後、コイ
ルに巻取ることにより行われる。炉長に制限があるた
め、焼付け温度は最終到達板温(PMT) 70〜120 ℃程度で
行われ、オーブンから出て40〜70℃程度でコイルに巻取
られる。この時にクリアー皮膜同士が粘着する現象がブ
ロッキングである。一旦、ブロッキングすると、需要家
でコイルを開放する際、バリバリという大きな音がでる
上、表面処理鋼板としての性能が不十分となる。
成は、母材の帯板状のめっき鋼板を、水系塗料の塗布工
程、オーブンでの焼付け工程を順に通過させた後、コイ
ルに巻取ることにより行われる。炉長に制限があるた
め、焼付け温度は最終到達板温(PMT) 70〜120 ℃程度で
行われ、オーブンから出て40〜70℃程度でコイルに巻取
られる。この時にクリアー皮膜同士が粘着する現象がブ
ロッキングである。一旦、ブロッキングすると、需要家
でコイルを開放する際、バリバリという大きな音がでる
上、表面処理鋼板としての性能が不十分となる。
【0008】Zn-55wt%Al合金めっき鋼板に適用可能なク
リヤー皮膜に関する従来技術には次のものがある。な
お、これらの技術はいずれも水系樹脂、中でも乳化重合
で得られるエマルジョン樹脂を使用し、樹脂中に防錆剤
として6価クロムを含有させた点で共通する。
リヤー皮膜に関する従来技術には次のものがある。な
お、これらの技術はいずれも水系樹脂、中でも乳化重合
で得られるエマルジョン樹脂を使用し、樹脂中に防錆剤
として6価クロムを含有させた点で共通する。
【0009】(A) 特開昭60−145383号公報:皮膜中に5
〜50 mg/cm3 のクロム量で6価クロム化合物を含有す
る、水溶性樹脂またはエマルジョン樹脂から形成した樹
脂皮膜を 0.5〜4μm厚で形成することにより、湿潤条
件下での経時黒変を防止する。
〜50 mg/cm3 のクロム量で6価クロム化合物を含有す
る、水溶性樹脂またはエマルジョン樹脂から形成した樹
脂皮膜を 0.5〜4μm厚で形成することにより、湿潤条
件下での経時黒変を防止する。
【0010】(B) 特開昭60−197881号公報:酸価が10〜
200 の水分散性または水溶性樹脂に、樹脂に対する重量
比で 1/500〜1/10の6価クロムを配合し、 0.3〜5g/m2
の付着量で塗布することにより、ロール成形性、後塗装
性を付与する。
200 の水分散性または水溶性樹脂に、樹脂に対する重量
比で 1/500〜1/10の6価クロムを配合し、 0.3〜5g/m2
の付着量で塗布することにより、ロール成形性、後塗装
性を付与する。
【0011】(C) 特開平4−272844号公報:反応性乳化
剤を用いて得られた酸価が0〜9のアクリル系エマルジ
ョン樹脂に、樹脂100 重量部に対して 0.1〜2重量部の
6価クロムと、 0.5〜5重量部のワックス固形分と、5
〜50重量部の親水性溶剤とを配合し、pH6〜8に調整
した被覆組成物から付着量 0.5〜5g/m2の皮膜を形成し
て、ロール成形性、耐アルカリ性、後塗装性、耐食性、
耐ブロッキング性を改善する。
剤を用いて得られた酸価が0〜9のアクリル系エマルジ
ョン樹脂に、樹脂100 重量部に対して 0.1〜2重量部の
6価クロムと、 0.5〜5重量部のワックス固形分と、5
〜50重量部の親水性溶剤とを配合し、pH6〜8に調整
した被覆組成物から付着量 0.5〜5g/m2の皮膜を形成し
て、ロール成形性、耐アルカリ性、後塗装性、耐食性、
耐ブロッキング性を改善する。
【0012】(D) 特開平4−272903号公報:反応性乳化
剤を用いて重合した酸価が0〜15の水性樹脂分散体に、
1/1000〜1/10の6価クロムとワックスを含有させた、金
属との密着性に優れ、耐アルカリ性にも優れた被覆用樹
脂組成物。
剤を用いて重合した酸価が0〜15の水性樹脂分散体に、
1/1000〜1/10の6価クロムとワックスを含有させた、金
属との密着性に優れ、耐アルカリ性にも優れた被覆用樹
脂組成物。
【0013】また、溶融アルミニウムめっき鋼板に適用
するクリヤー皮膜に関しては次の技術が開示されてい
る。 (E) 特開昭61−99679 号公報:酸価が10〜200 のアクリ
ル系エマルジョン樹脂にシランカップリング剤または/
およびチタネートカップリング剤を配合し、さらに樹脂
100 重量部に対し6価クロムを 0.1〜50重量部、シリカ
ゾルを 0.5〜100 重量部含有させることにより耐食性、
ロール成形性を改善する。
するクリヤー皮膜に関しては次の技術が開示されてい
る。 (E) 特開昭61−99679 号公報:酸価が10〜200 のアクリ
ル系エマルジョン樹脂にシランカップリング剤または/
およびチタネートカップリング剤を配合し、さらに樹脂
100 重量部に対し6価クロムを 0.1〜50重量部、シリカ
ゾルを 0.5〜100 重量部含有させることにより耐食性、
ロール成形性を改善する。
【0014】(A) の技術では、皮膜中に5〜50 mg/cm3
のクロムを含有させる。しかし、Zn-55wt%Al合金めっき
鋼板の場合、その美麗な銀白色の表面を生かすようにス
キンパス圧延を行わないため、スパングル模様により、
深さが最大で6〜12μm、平均で 0.6〜1.5 μmの表面
凹凸が無数に存在するので、十分な耐食性を得るにはこ
の凹凸を完全に覆うように 1.5〜2.0 g/m2の樹脂付着量
が必要となる。従って、皮膜中に5〜50 mg/cm3 のクロ
ムを含有させると、Cr6+による黄色着色が強くなり、Zn
-55wt%Al合金めっき特有の銀白色の美麗な外観を損な
い、商品価値が低下する。
のクロムを含有させる。しかし、Zn-55wt%Al合金めっき
鋼板の場合、その美麗な銀白色の表面を生かすようにス
キンパス圧延を行わないため、スパングル模様により、
深さが最大で6〜12μm、平均で 0.6〜1.5 μmの表面
凹凸が無数に存在するので、十分な耐食性を得るにはこ
の凹凸を完全に覆うように 1.5〜2.0 g/m2の樹脂付着量
が必要となる。従って、皮膜中に5〜50 mg/cm3 のクロ
ムを含有させると、Cr6+による黄色着色が強くなり、Zn
-55wt%Al合金めっき特有の銀白色の美麗な外観を損な
い、商品価値が低下する。
【0015】(B) の技術では酸価が10〜200 の樹脂を用
いる。しかし、樹脂の酸価が高いため、耐水性や耐アル
カリ性が低下し、アルカリ成分と接触すると表面が黒く
なりやすい。また、結露しやすく、断熱材との接着性が
不十分であり、後塗装性に関しても、通常、家電で用い
られているメラミンアルキッド塗料では、温水2次密着
性が不十分である。
いる。しかし、樹脂の酸価が高いため、耐水性や耐アル
カリ性が低下し、アルカリ成分と接触すると表面が黒く
なりやすい。また、結露しやすく、断熱材との接着性が
不十分であり、後塗装性に関しても、通常、家電で用い
られているメラミンアルキッド塗料では、温水2次密着
性が不十分である。
【0016】(C) 、(D) の技術はともに、反応性乳化剤
を用いた低酸価の樹脂に、6価クロムを配合した、耐ア
ルカリ性に優れた樹脂皮膜を形成するものであるが、銀
白色の美麗な外観を保持するためには、6価クロムの添
加量の制限を受けるため、外観と耐食性の両立は困難で
ある。また、これらの技術では、加工部の性能と耐ブロ
ッキング性の両立を図ることも困難である。
を用いた低酸価の樹脂に、6価クロムを配合した、耐ア
ルカリ性に優れた樹脂皮膜を形成するものであるが、銀
白色の美麗な外観を保持するためには、6価クロムの添
加量の制限を受けるため、外観と耐食性の両立は困難で
ある。また、これらの技術では、加工部の性能と耐ブロ
ッキング性の両立を図ることも困難である。
【0017】(E) の技術はシリカゾルを樹脂100 重量部
に対して 0.5〜100 重量部添加したものであるが、酸価
が10〜200 の樹脂を用いる点で(B) の技術と類似してお
り、耐アルカリ性、断熱材との接着性が不十分である。
に対して 0.5〜100 重量部添加したものであるが、酸価
が10〜200 の樹脂を用いる点で(B) の技術と類似してお
り、耐アルカリ性、断熱材との接着性が不十分である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の従来
技術で成し得なかった、Zn-55wt%Al合金めっき鋼板のク
リヤー皮膜に要求される、前述した〜の性能を全て
満たすことができる樹脂皮膜を有する表面処理鋼板を提
供するものである。
技術で成し得なかった、Zn-55wt%Al合金めっき鋼板のク
リヤー皮膜に要求される、前述した〜の性能を全て
満たすことができる樹脂皮膜を有する表面処理鋼板を提
供するものである。
【0019】具体的には、潤滑性に優れ、潤滑油を塗
布せずにロール成形可能なロール成形性を備え、耐ア
ルカリ性に優れ、アルカリ溶出条件下でも黒変しにく
く、無色透明で、平板部のみならず加工部の耐食性
にも優れ、耐水性に優れ、断熱材との接着性が良好で
あり、後塗装性 (特に、メラミンアルキッド系塗料との
密着性) がよく、耐ブロッキング性にも優れた、樹脂
被覆表面処理鋼板を提供することが本発明の目的であ
る。
布せずにロール成形可能なロール成形性を備え、耐ア
ルカリ性に優れ、アルカリ溶出条件下でも黒変しにく
く、無色透明で、平板部のみならず加工部の耐食性
にも優れ、耐水性に優れ、断熱材との接着性が良好で
あり、後塗装性 (特に、メラミンアルキッド系塗料との
密着性) がよく、耐ブロッキング性にも優れた、樹脂
被覆表面処理鋼板を提供することが本発明の目的であ
る。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
のうち、とりわけ両立の難しいとを改善すべく鋭意
検討を行った結果、耐ブロッキング性と加工部の性能を
両立させるには、アクリル系エマルジョン樹脂の合成段
階において少量のコロイダルシリカを混合して、シリカ
変性アクリル系エマルジョン樹脂としておくことにより
解決できることを見出した。
のうち、とりわけ両立の難しいとを改善すべく鋭意
検討を行った結果、耐ブロッキング性と加工部の性能を
両立させるには、アクリル系エマルジョン樹脂の合成段
階において少量のコロイダルシリカを混合して、シリカ
変性アクリル系エマルジョン樹脂としておくことにより
解決できることを見出した。
【0021】また、特にZn-55wt%Al合金めっき鋼板では
表面外観の点より防錆剤としての6価クロム添加量に限
界があるが、その場合には、インヒビターと呼ばれる有
機系腐食抑制剤を併用することで、平面部のみならず曲
げ加工部の耐食性が大きく向上することを発見した。
表面外観の点より防錆剤としての6価クロム添加量に限
界があるが、その場合には、インヒビターと呼ばれる有
機系腐食抑制剤を併用することで、平面部のみならず曲
げ加工部の耐食性が大きく向上することを発見した。
【0022】本発明の表面処理鋼板は、亜鉛系めっき鋼
板、アルミニウム系めっき鋼板、およびこれらのめっき
鋼板をクロメート処理した鋼板から選ばれた母材鋼板の
表面に、シリカ変性アクリル系エマルジョン樹脂単独ま
たはアクリル系エマルジョン樹脂とシリカ変性アクリル
系エマルジョン樹脂との混合物からなるエマルジョン樹
脂、固体潤滑剤、および必要により6価クロム化合物を
含む防錆剤を含有する被覆組成物から形成された樹脂皮
膜を 0.5〜4.0 g/m2の付着量で有することを特徴とす
る、樹脂被覆表面処理鋼板である。
板、アルミニウム系めっき鋼板、およびこれらのめっき
鋼板をクロメート処理した鋼板から選ばれた母材鋼板の
表面に、シリカ変性アクリル系エマルジョン樹脂単独ま
たはアクリル系エマルジョン樹脂とシリカ変性アクリル
系エマルジョン樹脂との混合物からなるエマルジョン樹
脂、固体潤滑剤、および必要により6価クロム化合物を
含む防錆剤を含有する被覆組成物から形成された樹脂皮
膜を 0.5〜4.0 g/m2の付着量で有することを特徴とす
る、樹脂被覆表面処理鋼板である。
【0023】好適態様にあっては、前記エマルジョン樹
脂の酸価が20以下、ガラス転移温度が25〜55℃であり、
前記皮膜中のシリカ含有量がSiO2換算量で1〜5重量
%、固体潤滑剤の含有量が1〜30重量%、防錆剤の6価
クロム化合物の含有量がCr6+量で 0.1〜1.0 重量%であ
り、防錆剤はさらに有機系腐食抑制剤を皮膜中の含有量
が 0.5〜3.0 重量%となるように含有していてもよい。
脂の酸価が20以下、ガラス転移温度が25〜55℃であり、
前記皮膜中のシリカ含有量がSiO2換算量で1〜5重量
%、固体潤滑剤の含有量が1〜30重量%、防錆剤の6価
クロム化合物の含有量がCr6+量で 0.1〜1.0 重量%であ
り、防錆剤はさらに有機系腐食抑制剤を皮膜中の含有量
が 0.5〜3.0 重量%となるように含有していてもよい。
【0024】以下、本発明の表面処理鋼板について、そ
の構成要素ごとに説明する。
の構成要素ごとに説明する。
【0025】<母材>本発明は、主として建材用または
家電用に用いられるZn-55wt%Al合金めっき鋼板 (正確に
はZn-55wt% Al-1.6wt%Si合金) の樹脂被覆を対象として
検討することにより完成したものであるが、母材はこの
めっき鋼板に限定されるものではなく、Zn-3.5〜5.5wt%
Al合金めっき鋼板などの他の亜鉛−アルミ合金めっき鋼
板、さらには溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼
板、電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板等の亜鉛合金め
っき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム
合金めっき鋼板等に広く適用できるものである。即ち、
母材鋼板は亜鉛めっき鋼板と亜鉛合金めっき鋼板を含む
亜鉛系めっき鋼板、ならびにアルミニウムめっき鋼板と
アルミニウム合金めっき鋼板を含むアルミニウム系めっ
き鋼板から選択することができる。
家電用に用いられるZn-55wt%Al合金めっき鋼板 (正確に
はZn-55wt% Al-1.6wt%Si合金) の樹脂被覆を対象として
検討することにより完成したものであるが、母材はこの
めっき鋼板に限定されるものではなく、Zn-3.5〜5.5wt%
Al合金めっき鋼板などの他の亜鉛−アルミ合金めっき鋼
板、さらには溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼
板、電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板等の亜鉛合金め
っき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム
合金めっき鋼板等に広く適用できるものである。即ち、
母材鋼板は亜鉛めっき鋼板と亜鉛合金めっき鋼板を含む
亜鉛系めっき鋼板、ならびにアルミニウムめっき鋼板と
アルミニウム合金めっき鋼板を含むアルミニウム系めっ
き鋼板から選択することができる。
【0026】また、特に耐食性を必要とする用途に対し
ては、母材鋼板として、クロメート処理を施した前記め
っき鋼板を使用してもよい。クロメート皮膜は、一部6
価クロムが3価クロムに還元されたものや、コロイダル
シリカ、リン酸、フッ化物等を含む塗布型クロメート、
或いは反応型クロメート、電解クロメート等、従来のい
ずれのクロメート皮膜でもよい。。クロメート皮膜の付
着量は、一般にCr付着量で200 mg/m2 以下である。現在
の連続溶融めっきラインにおいて、化成処理として200
mg/m2 以上Crを付着させることは、クロメート液の建
浴、乾燥能力、表面外観等から現実的ではない。好まし
いクロメート皮膜の付着量は、Cr量で10〜70 mg/m2であ
る。
ては、母材鋼板として、クロメート処理を施した前記め
っき鋼板を使用してもよい。クロメート皮膜は、一部6
価クロムが3価クロムに還元されたものや、コロイダル
シリカ、リン酸、フッ化物等を含む塗布型クロメート、
或いは反応型クロメート、電解クロメート等、従来のい
ずれのクロメート皮膜でもよい。。クロメート皮膜の付
着量は、一般にCr付着量で200 mg/m2 以下である。現在
の連続溶融めっきラインにおいて、化成処理として200
mg/m2 以上Crを付着させることは、クロメート液の建
浴、乾燥能力、表面外観等から現実的ではない。好まし
いクロメート皮膜の付着量は、Cr量で10〜70 mg/m2であ
る。
【0027】<エマルジョン樹脂>樹脂皮膜のベース樹
脂として、水系のエマルジョン樹脂を採用するのは、必
要により防錆剤として使用する水溶性の6価クロム化合
物を溶解させることができ、かつ低温造膜性に優れ、ま
た有機溶剤の排出に伴う環境問題を避けることができる
からである。
脂として、水系のエマルジョン樹脂を採用するのは、必
要により防錆剤として使用する水溶性の6価クロム化合
物を溶解させることができ、かつ低温造膜性に優れ、ま
た有機溶剤の排出に伴う環境問題を避けることができる
からである。
【0028】本発明者らは、ベースエマルジョン樹脂系
を選定するに際し、アクリル系、アクリル−スチレン
系、アクリル−シリコーン系、ポリエステル系、アルキ
ッド系、およびウレタン系の各エマルジョン樹脂につい
て試験を行った。その結果、アクリル−スチレン系エマ
ルジョン樹脂とポリエステル系エマルジョン樹脂は耐ア
ルカリ性は良好であるが耐候性が悪く、アクリル−シリ
コーン系樹脂は耐アルカリ性、耐候性が不十分であり、
アルキッド系エマルジョン樹脂は耐アルカリ性が悪かっ
た。ウレタン系エマルジョン樹脂は、6価クロム化合物
の溶解性が悪く、十分な耐食性が得られなかった。
を選定するに際し、アクリル系、アクリル−スチレン
系、アクリル−シリコーン系、ポリエステル系、アルキ
ッド系、およびウレタン系の各エマルジョン樹脂につい
て試験を行った。その結果、アクリル−スチレン系エマ
ルジョン樹脂とポリエステル系エマルジョン樹脂は耐ア
ルカリ性は良好であるが耐候性が悪く、アクリル−シリ
コーン系樹脂は耐アルカリ性、耐候性が不十分であり、
アルキッド系エマルジョン樹脂は耐アルカリ性が悪かっ
た。ウレタン系エマルジョン樹脂は、6価クロム化合物
の溶解性が悪く、十分な耐食性が得られなかった。
【0029】これに対し、アクリル系エマルジョン樹脂
は、建材用途で必須条件となる耐候性がよく、耐アルカ
リ性、耐酸性についても優れていた。このため、本発明
では、ベース樹脂としてアクリル系エマルジョン樹脂を
使用する。
は、建材用途で必須条件となる耐候性がよく、耐アルカ
リ性、耐酸性についても優れていた。このため、本発明
では、ベース樹脂としてアクリル系エマルジョン樹脂を
使用する。
【0030】アクリル系エマルジョン樹脂は、アクリル
酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを主体と
し、これに必要により他のα, β−エチレン性不飽和モ
ノマーを配合したモノマー混合物を乳化重合させて得ら
れる水分散性樹脂である。アクリル系エマルジョン樹脂
には、次に例示するように多様な種類のモノマーを使用
できるので、要求される皮膜の性能に応じて1種または
2種以上、通常は2種以上のモノマーを使用する。アク
リル系樹脂皮膜は、周知の通り透明性に優れ、母材めっ
き鋼板の意匠性を害することがない点でも有利である。
酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを主体と
し、これに必要により他のα, β−エチレン性不飽和モ
ノマーを配合したモノマー混合物を乳化重合させて得ら
れる水分散性樹脂である。アクリル系エマルジョン樹脂
には、次に例示するように多様な種類のモノマーを使用
できるので、要求される皮膜の性能に応じて1種または
2種以上、通常は2種以上のモノマーを使用する。アク
リル系樹脂皮膜は、周知の通り透明性に優れ、母材めっ
き鋼板の意匠性を害することがない点でも有利である。
【0031】アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エ
ステルの例には、アクリル酸またはメタクリル酸のメチ
ルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2−エ
チルヘキシルエステルなどがある。
ステルの例には、アクリル酸またはメタクリル酸のメチ
ルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2−エ
チルヘキシルエステルなどがある。
【0032】これらと共重合可能なα, β−エチレン性
不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、
イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸;α位
で分岐した飽和カルボン酸のビニルエステル;重合性不
飽和基を2個以上有するジ (メタ) アクリレート化合
物、トリ (メタ) アクリレート化合物、ジアリル化合
物、トリアリル化合物、テトラアリル化合物等、例え
ば、ジビニルアジペート、エチレングリコールジ (メ
タ) アクリレート、1,3-ブチル (メタ) アクリレート、
トリエチレングリコールジ (メタ) アクリレート、トリ
メチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、ジアリ
ルフタレート、トリアリルジシアヌレート、テトラアリ
ルエトキシエタンなどが挙げられる。少量であれば、ス
チレン、α−メチルスチレンなどの芳香族モノマーも配
合できる。
不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、
イタコン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸;α位
で分岐した飽和カルボン酸のビニルエステル;重合性不
飽和基を2個以上有するジ (メタ) アクリレート化合
物、トリ (メタ) アクリレート化合物、ジアリル化合
物、トリアリル化合物、テトラアリル化合物等、例え
ば、ジビニルアジペート、エチレングリコールジ (メ
タ) アクリレート、1,3-ブチル (メタ) アクリレート、
トリエチレングリコールジ (メタ) アクリレート、トリ
メチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、ジアリ
ルフタレート、トリアリルジシアヌレート、テトラアリ
ルエトキシエタンなどが挙げられる。少量であれば、ス
チレン、α−メチルスチレンなどの芳香族モノマーも配
合できる。
【0033】また、樹脂に官能基を導入するために官能
性モノマーを配合することもできる。官能性モノマーと
して、N,N-ジメチルアミノエチル (メタ) アクリレー
ト、2-ヒドロキシアルキルアクリレート、2-アセトアセ
トキシエチル (メタ) アクリレート、アクリルアミド、
グリシジル (メタ) アクリレート、N-メチロールアクリ
ルアミドなどが例示される。
性モノマーを配合することもできる。官能性モノマーと
して、N,N-ジメチルアミノエチル (メタ) アクリレー
ト、2-ヒドロキシアルキルアクリレート、2-アセトアセ
トキシエチル (メタ) アクリレート、アクリルアミド、
グリシジル (メタ) アクリレート、N-メチロールアクリ
ルアミドなどが例示される。
【0034】本発明のような樹脂被覆表面処理鋼板は、
屋根材、壁材等の建材用途では、多くは無塗装で使用さ
れるが、家電用途ではエアコンの室外機等について後塗
装を行う場合がある。その場合、本発明の樹脂皮膜は、
アクリル系塗料に対しては同じアクリル系どうしである
ため密着性に問題を生じないが、メラミンアルキッド系
塗料に対しては密着性が不十分なことがある。前述した
ような官能性モノマーを1種もしくは2種以上配合する
ことによって、アクリル系エマルジョン樹脂中に官能基
(例、アミノ基、ヒドロキシル基、アセトアセトキシ基
などのβ−ケト基、エポキシ基、アミド基等) 導入する
と、メラミンアルキッド系塗料との皮膜の密着性を改善
できる。また、この官能基は金属との密着性も改善する
ため、官能基導入によって、母材のめっき鋼板と皮膜間
の密着性も改善される。
屋根材、壁材等の建材用途では、多くは無塗装で使用さ
れるが、家電用途ではエアコンの室外機等について後塗
装を行う場合がある。その場合、本発明の樹脂皮膜は、
アクリル系塗料に対しては同じアクリル系どうしである
ため密着性に問題を生じないが、メラミンアルキッド系
塗料に対しては密着性が不十分なことがある。前述した
ような官能性モノマーを1種もしくは2種以上配合する
ことによって、アクリル系エマルジョン樹脂中に官能基
(例、アミノ基、ヒドロキシル基、アセトアセトキシ基
などのβ−ケト基、エポキシ基、アミド基等) 導入する
と、メラミンアルキッド系塗料との皮膜の密着性を改善
できる。また、この官能基は金属との密着性も改善する
ため、官能基導入によって、母材のめっき鋼板と皮膜間
の密着性も改善される。
【0035】アクリル系エマルジョン樹脂の酸価は20以
下とすることが好ましい。酸価が20以下であると、生成
した皮膜は耐水性、耐アルカリ性、耐酸性が良好で、皮
膜−めっき鋼板間の密着性も実用上問題がなく、また皮
膜の疎水性が高く、結露しにくいため、結露時に問題と
なる糊つけタイプの断熱材の接着性も問題ない。これに
対し、樹脂の酸価が20を超えると、皮膜の耐水性、耐ア
ルカリ性、耐酸性が低下する傾向があり、結露環境下で
は皮膜と断熱材の接着剤との間で層間剥離が発生し易く
なる。
下とすることが好ましい。酸価が20以下であると、生成
した皮膜は耐水性、耐アルカリ性、耐酸性が良好で、皮
膜−めっき鋼板間の密着性も実用上問題がなく、また皮
膜の疎水性が高く、結露しにくいため、結露時に問題と
なる糊つけタイプの断熱材の接着性も問題ない。これに
対し、樹脂の酸価が20を超えると、皮膜の耐水性、耐ア
ルカリ性、耐酸性が低下する傾向があり、結露環境下で
は皮膜と断熱材の接着剤との間で層間剥離が発生し易く
なる。
【0036】樹脂の酸価は、樹脂1g (固形分) を中和
するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。
アクリル系エマルジョン樹脂では、モノマーとして配合
する不飽和カルボン酸により酸価が付与されるので、こ
の不飽和カルボン酸の配合量によって酸価を調整する。
アクリル系エマルジョン樹脂の酸価は、より好ましくは
2以上、10以下である。
するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。
アクリル系エマルジョン樹脂では、モノマーとして配合
する不飽和カルボン酸により酸価が付与されるので、こ
の不飽和カルボン酸の配合量によって酸価を調整する。
アクリル系エマルジョン樹脂の酸価は、より好ましくは
2以上、10以下である。
【0037】また、本発明の表面処理鋼板の加工部の性
能を平面部と同等にするためには、樹脂皮膜を軟らかく
する必要がある。そのため、アクリル系エマルジョン樹
脂のガラス転移温度 (Tg) を25〜55℃の範囲内にするこ
とが好ましい。ガラス転移温度は、モノマー種の選択に
よって調整できる。樹脂のガラス転移温度が25℃より低
いと、コイル巻取り時に樹脂皮膜が軟らすぎて、ブロッ
キングを生じ易くなる。一方、樹脂のガラス転移温度が
55℃を超えると、樹脂皮膜が硬くなりすぎ、加工部での
クラックの数が増え、加工部の性能が不十分となる上、
造膜も不十分となり、本来の性能が発現しにくくなる。
能を平面部と同等にするためには、樹脂皮膜を軟らかく
する必要がある。そのため、アクリル系エマルジョン樹
脂のガラス転移温度 (Tg) を25〜55℃の範囲内にするこ
とが好ましい。ガラス転移温度は、モノマー種の選択に
よって調整できる。樹脂のガラス転移温度が25℃より低
いと、コイル巻取り時に樹脂皮膜が軟らすぎて、ブロッ
キングを生じ易くなる。一方、樹脂のガラス転移温度が
55℃を超えると、樹脂皮膜が硬くなりすぎ、加工部での
クラックの数が増え、加工部の性能が不十分となる上、
造膜も不十分となり、本来の性能が発現しにくくなる。
【0038】アクリル系エマルジョン樹脂の乳化重合
は、一般に乳化剤とラジカル重合開始剤の存在下で行わ
れる。乳化剤は皮膜形成時に樹脂粒子間または皮膜−め
っき鋼板界面に移動して濃化するため、水や腐食成分に
より優先的に腐食される他、皮膜−めっき鋼板間の密着
性を低下させることが知られており、アクリル系樹脂皮
膜がもつ本来の性能を阻害する。従って、乳化重合時の
乳化剤の使用量を極力低減するか、または乳化重合時に
樹脂に結合される、重合性のある反応性乳化剤を使用す
る、或いは乳化剤を使用しないソープフリー乳化重合法
を採用することが好ましい。
は、一般に乳化剤とラジカル重合開始剤の存在下で行わ
れる。乳化剤は皮膜形成時に樹脂粒子間または皮膜−め
っき鋼板界面に移動して濃化するため、水や腐食成分に
より優先的に腐食される他、皮膜−めっき鋼板間の密着
性を低下させることが知られており、アクリル系樹脂皮
膜がもつ本来の性能を阻害する。従って、乳化重合時の
乳化剤の使用量を極力低減するか、または乳化重合時に
樹脂に結合される、重合性のある反応性乳化剤を使用す
る、或いは乳化剤を使用しないソープフリー乳化重合法
を採用することが好ましい。
【0039】しかし、ベース樹脂がアクリル系エマルジ
ョン樹脂単独では、前述した本発明の目的、即ち、〜
の性能を全て満たすことはできないことが判明した。
とりわけ、の耐ブロッキング性との加工部の性能を
両立させることが困難である。耐ブロッキング性は樹脂
のガラス転移温度を55℃より高くすると改善されるが、
そうなると樹脂皮膜が硬くなりすぎ、加工部の性能が低
下する。クロム酸の添加も耐ブロッキング性の向上に有
効であるが、表面黄色着色の問題よりクロム酸添加量は
制限を受けるため、クロム酸添加による改善にも限界が
ある。また、一般に耐食性向上を目的として添加される
コロイダルシリカも耐ブロッキング性の向上効果を示す
が、十分な効果を得るには樹脂固形分に対して20重量%
以上の量を添加する必要があり、かかる多量のコロイダ
ルシリカの添加は皮膜の耐アルカリ性を劣化させるた
め、採用できない。
ョン樹脂単独では、前述した本発明の目的、即ち、〜
の性能を全て満たすことはできないことが判明した。
とりわけ、の耐ブロッキング性との加工部の性能を
両立させることが困難である。耐ブロッキング性は樹脂
のガラス転移温度を55℃より高くすると改善されるが、
そうなると樹脂皮膜が硬くなりすぎ、加工部の性能が低
下する。クロム酸の添加も耐ブロッキング性の向上に有
効であるが、表面黄色着色の問題よりクロム酸添加量は
制限を受けるため、クロム酸添加による改善にも限界が
ある。また、一般に耐食性向上を目的として添加される
コロイダルシリカも耐ブロッキング性の向上効果を示す
が、十分な効果を得るには樹脂固形分に対して20重量%
以上の量を添加する必要があり、かかる多量のコロイダ
ルシリカの添加は皮膜の耐アルカリ性を劣化させるた
め、採用できない。
【0040】本発明者らは、アクリル系エマルジョン樹
脂の乳化重合時にコロイダルシリカ(水性シリカコロイ
ドまたはシリカゾルともいう) を添加して得たシリカ変
性アクリル系エマルジョン樹脂をベース樹脂に使用する
ことで、皮膜中のシリカ含有量が少量でも耐ブロッキン
グ性が極めて向上することを見出した。それにより、耐
アルカリ性を低下させずに、またガラス転移温度を55℃
以下として加工部の性能を保持したまま、耐ブロッキン
グ性を改善することができ、耐ブロッキング性と加工部
の性能の両立が可能となる。
脂の乳化重合時にコロイダルシリカ(水性シリカコロイ
ドまたはシリカゾルともいう) を添加して得たシリカ変
性アクリル系エマルジョン樹脂をベース樹脂に使用する
ことで、皮膜中のシリカ含有量が少量でも耐ブロッキン
グ性が極めて向上することを見出した。それにより、耐
アルカリ性を低下させずに、またガラス転移温度を55℃
以下として加工部の性能を保持したまま、耐ブロッキン
グ性を改善することができ、耐ブロッキング性と加工部
の性能の両立が可能となる。
【0041】シリカ変性アクリル系エマルジョンの形態
でシリカを用いると、アクリル系エマルジョン樹脂にコ
ロイダルシリカを添加した場合に較べて、少量で耐ブロ
ッキング性が向上する理由としては次のように考えられ
る。重合後のアクリル系エマルジョン樹脂にコロイダル
シリカを添加した場合には、均一にシリカ粒子が分散し
にくく、コロイダルシリカがクラスターを形成し易く、
最終的に得られる樹脂皮膜中のシリカの分布が不均一と
なるので、この不均一分布を克服するように多量のシリ
カの添加が必要である。これに対し、エマルジョン樹脂
の合成時にコロイダルシリカを添加した場合は、シリカ
粒子をアクリル系エマルジョン樹脂中に均一に分散させ
ることができ、最終的にシリカが極めて均一に分布した
樹脂皮膜が得られるため、少量のシリカでブロッキング
防止が可能となる。
でシリカを用いると、アクリル系エマルジョン樹脂にコ
ロイダルシリカを添加した場合に較べて、少量で耐ブロ
ッキング性が向上する理由としては次のように考えられ
る。重合後のアクリル系エマルジョン樹脂にコロイダル
シリカを添加した場合には、均一にシリカ粒子が分散し
にくく、コロイダルシリカがクラスターを形成し易く、
最終的に得られる樹脂皮膜中のシリカの分布が不均一と
なるので、この不均一分布を克服するように多量のシリ
カの添加が必要である。これに対し、エマルジョン樹脂
の合成時にコロイダルシリカを添加した場合は、シリカ
粒子をアクリル系エマルジョン樹脂中に均一に分散させ
ることができ、最終的にシリカが極めて均一に分布した
樹脂皮膜が得られるため、少量のシリカでブロッキング
防止が可能となる。
【0042】本発明では、ベース樹脂として、このシリ
カ変性アクリル系エマルジョン樹脂のみを使用するか、
或いはアクリル系エマルジョン樹脂にシリカ変性アクリ
ル系エマルジョン樹脂を混合して使用する。シリカ変性
アクリル系エマルジョン樹脂とアクリル系エマルジョン
樹脂のいずれも、1種または2種以上を使用できる。な
お、樹脂を2種以上混合して使用する場合には、エマル
ジョン樹脂の酸価およびガラス転移温度は、樹脂混合物
の酸価およびガラス転移温度を意味する。即ち、2種以
上の樹脂を混合した混合エマルション樹脂の酸価が20以
下、ガラス転移温度が25〜55℃であることが好ましい。
カ変性アクリル系エマルジョン樹脂のみを使用するか、
或いはアクリル系エマルジョン樹脂にシリカ変性アクリ
ル系エマルジョン樹脂を混合して使用する。シリカ変性
アクリル系エマルジョン樹脂とアクリル系エマルジョン
樹脂のいずれも、1種または2種以上を使用できる。な
お、樹脂を2種以上混合して使用する場合には、エマル
ジョン樹脂の酸価およびガラス転移温度は、樹脂混合物
の酸価およびガラス転移温度を意味する。即ち、2種以
上の樹脂を混合した混合エマルション樹脂の酸価が20以
下、ガラス転移温度が25〜55℃であることが好ましい。
【0043】シリカ変性アクリル系エマルジョン樹脂の
合成は、合成時の乳化重合反応系にコロイダルシリカを
添加する点を除いて、通常のアクリル系エマルジョン樹
脂と同様に実施できる。使用モノマー、乳化剤について
もアクリル系エマルジョン樹脂について前述した通りで
ある。コロイダルシリカは、好ましくは重合開始前の反
応系に添加する。例えば、反応媒体として使用する水中
にコロイダルシリカを添加して分散させ、このコロイダ
ルシリカを含有する分散液中でアクリル系エマルジョン
樹脂の乳化重合を行えばよい。コロイダルシリカとして
は、一般に用いられている粒径5〜100 nmのものを使用
できる。
合成は、合成時の乳化重合反応系にコロイダルシリカを
添加する点を除いて、通常のアクリル系エマルジョン樹
脂と同様に実施できる。使用モノマー、乳化剤について
もアクリル系エマルジョン樹脂について前述した通りで
ある。コロイダルシリカは、好ましくは重合開始前の反
応系に添加する。例えば、反応媒体として使用する水中
にコロイダルシリカを添加して分散させ、このコロイダ
ルシリカを含有する分散液中でアクリル系エマルジョン
樹脂の乳化重合を行えばよい。コロイダルシリカとして
は、一般に用いられている粒径5〜100 nmのものを使用
できる。
【0044】シリカ変性アクリル系エマルジョン樹脂
は、樹脂皮膜中のシリカ含有量が1〜10重量%の範囲内
となるように使用することが好ましい。皮膜中のシリカ
含有量が1重量%未満であると、耐ブロッキング性改善
効果が十分に得られず、10重量%を越えると、耐ブロッ
キング性は良好であるが、耐アルカリ性が低下する。こ
のシリカ含有量は、より好ましくは 1.5〜5重量%であ
る。
は、樹脂皮膜中のシリカ含有量が1〜10重量%の範囲内
となるように使用することが好ましい。皮膜中のシリカ
含有量が1重量%未満であると、耐ブロッキング性改善
効果が十分に得られず、10重量%を越えると、耐ブロッ
キング性は良好であるが、耐アルカリ性が低下する。こ
のシリカ含有量は、より好ましくは 1.5〜5重量%であ
る。
【0045】ベース樹脂がシリカ変性アクリル系エマル
ジョン樹脂のみである場合には、皮膜中のシリカ含有量
は、このシリカ変性樹脂のシリカ含有量に大きく依存す
るので、後述する潤滑剤その他の固形分を加えた被覆組
成物中の全固形分に対するシリカ量が上記範囲の所定値
になるように、使用するシリカ変性アクリル系エマルジ
ョン樹脂自体のシリカ含有量を調整することになる。一
方、ベース樹脂がアクリル系エマルジョン樹脂とシリカ
変性アクリル系エマルジョン樹脂との混合物である場合
には、シリカ含有量が高め (例、樹脂固形分に対して10
〜30重量%) のシリカ変性アクリル系エマルジョン樹脂
を合成しておき、これに混合するアクリル系エマルジョ
ン樹脂の配合量を変えることで、生成皮膜中のシリカ含
有量を自由に調整できるという利点がある。このように
アクリル系エマルジョン樹脂を混合しても、一旦コロイ
ダルシリカがシリカ変性アクリル系エマルジョン樹脂の
状態になっていると、このシリカ変性樹脂とアクリル系
エマルジョン樹脂とは均一混合するので、コロイダルシ
リカを混合後のエマルジョン樹脂中に均一に分散させる
ことができる。
ジョン樹脂のみである場合には、皮膜中のシリカ含有量
は、このシリカ変性樹脂のシリカ含有量に大きく依存す
るので、後述する潤滑剤その他の固形分を加えた被覆組
成物中の全固形分に対するシリカ量が上記範囲の所定値
になるように、使用するシリカ変性アクリル系エマルジ
ョン樹脂自体のシリカ含有量を調整することになる。一
方、ベース樹脂がアクリル系エマルジョン樹脂とシリカ
変性アクリル系エマルジョン樹脂との混合物である場合
には、シリカ含有量が高め (例、樹脂固形分に対して10
〜30重量%) のシリカ変性アクリル系エマルジョン樹脂
を合成しておき、これに混合するアクリル系エマルジョ
ン樹脂の配合量を変えることで、生成皮膜中のシリカ含
有量を自由に調整できるという利点がある。このように
アクリル系エマルジョン樹脂を混合しても、一旦コロイ
ダルシリカがシリカ変性アクリル系エマルジョン樹脂の
状態になっていると、このシリカ変性樹脂とアクリル系
エマルジョン樹脂とは均一混合するので、コロイダルシ
リカを混合後のエマルジョン樹脂中に均一に分散させる
ことができる。
【0046】<潤滑剤>本発明の表面処理鋼板の樹脂皮
膜には、潤滑性を向上させ、ロール成形性を付与する目
的で、固体潤滑剤を含有させる。好ましい固体潤滑剤と
しては、ポリオレフィン系ワックス、酸化ポリオレフィ
ン系ワックス、フッ素樹脂、ステアリン酸カルシウム、
ラウリン酸カルシウム、エシル酸アミド、パルミチン酸
カルシウムが挙げられ、これらの1種または2種以上を
使用することができる。
膜には、潤滑性を向上させ、ロール成形性を付与する目
的で、固体潤滑剤を含有させる。好ましい固体潤滑剤と
しては、ポリオレフィン系ワックス、酸化ポリオレフィ
ン系ワックス、フッ素樹脂、ステアリン酸カルシウム、
ラウリン酸カルシウム、エシル酸アミド、パルミチン酸
カルシウムが挙げられ、これらの1種または2種以上を
使用することができる。
【0047】建材分野では主としてロール成形が行われ
るが、皮膜が固体潤滑剤を含有しないと、表面の潤滑性
が不足し、樹脂皮膜とその下のめっき層がロールに擦り
とられ、黒い筋状の外観を呈するようになって、その部
分の性能が損なわれる上、商品価値も低減する。また、
擦り取られた皮膜片やめっき片がロール上に堆積し、成
形品の形状が出にくくなる。
るが、皮膜が固体潤滑剤を含有しないと、表面の潤滑性
が不足し、樹脂皮膜とその下のめっき層がロールに擦り
とられ、黒い筋状の外観を呈するようになって、その部
分の性能が損なわれる上、商品価値も低減する。また、
擦り取られた皮膜片やめっき片がロール上に堆積し、成
形品の形状が出にくくなる。
【0048】屋根や壁などの一般建材用途に対しては、
固体潤滑剤は皮膜中に1〜7重量%含有させると、ロー
ル成形加工部の外観が格段に向上する。屋根材として使
用する場合、固体潤滑剤の量が7重量%を越えると、滑
り過ぎて作業者が屋根から滑落する恐れがあるので、固
体潤滑剤を7重量%以下とすることが好ましい。
固体潤滑剤は皮膜中に1〜7重量%含有させると、ロー
ル成形加工部の外観が格段に向上する。屋根材として使
用する場合、固体潤滑剤の量が7重量%を越えると、滑
り過ぎて作業者が屋根から滑落する恐れがあるので、固
体潤滑剤を7重量%以下とすることが好ましい。
【0049】一方、家電等の分野で潤滑油を省略してプ
レス成形する用途に用いる場合には、成形条件が過酷な
ため、十分な潤滑性を確保するには、皮膜中に7〜30重
量%の固体潤滑剤を含有させることが好ましい。固体潤
滑剤の含有量が30重量%を越えると、樹脂皮膜の延性が
低下し、耐食性が劣化するようになる。
レス成形する用途に用いる場合には、成形条件が過酷な
ため、十分な潤滑性を確保するには、皮膜中に7〜30重
量%の固体潤滑剤を含有させることが好ましい。固体潤
滑剤の含有量が30重量%を越えると、樹脂皮膜の延性が
低下し、耐食性が劣化するようになる。
【0050】従って、皮膜中の固体潤滑剤の配合量は、
1〜30重量%の範囲内で用途、特に採用される成形条件
に応じて適当に選択することが好ましい。
1〜30重量%の範囲内で用途、特に採用される成形条件
に応じて適当に選択することが好ましい。
【0051】<防錆剤>本発明の表面処理鋼板の樹脂皮
膜中には、防錆剤として6価クロム化合物を含有させる
ことができる。6価クロムは少量で強力な防錆効果を発
揮するが、母材めっき鋼板がクロメート処理したもので
ある場合には、樹脂皮膜中に6価クロム化合物を含有さ
せなくても、母材のクロメート皮膜によって十分な防錆
効果を確保できる場合もある。従って、必要に応じて、
樹脂皮膜中に防錆剤として6価クロム化合物を含有させ
る。
膜中には、防錆剤として6価クロム化合物を含有させる
ことができる。6価クロムは少量で強力な防錆効果を発
揮するが、母材めっき鋼板がクロメート処理したもので
ある場合には、樹脂皮膜中に6価クロム化合物を含有さ
せなくても、母材のクロメート皮膜によって十分な防錆
効果を確保できる場合もある。従って、必要に応じて、
樹脂皮膜中に防錆剤として6価クロム化合物を含有させ
る。
【0052】皮膜中の6価クロム化合物の量は、Cr6+含
有量で 0.1〜1.0 重量%の範囲内とすることが好まし
い。6価クロム量が0.1 重量%未満では、耐食性の向上
効果が不十分であり、1.0 重量%を超えると、耐食性は
さらに向上するが、表面の黄色着色が目立つようにな
り、商品価値を損ねる。特に、銀白色の美麗な表面外観
を呈するZn-55wt%Al合金めっき鋼板の場合、黄色着色の
点から、好適範囲は 0.2〜0.5 重量%である。ただし、
用途または母材めっき鋼板の種類から着色が問題となら
ない場合には、6価クロム量を1.0 重量%以上とするこ
とも可能である。しかし、あまりに多量の6価クロム化
合物の添加はベースエマルジョン樹脂を不安定にするの
で、多くてもCr6+量で5重量%以下とする。
有量で 0.1〜1.0 重量%の範囲内とすることが好まし
い。6価クロム量が0.1 重量%未満では、耐食性の向上
効果が不十分であり、1.0 重量%を超えると、耐食性は
さらに向上するが、表面の黄色着色が目立つようにな
り、商品価値を損ねる。特に、銀白色の美麗な表面外観
を呈するZn-55wt%Al合金めっき鋼板の場合、黄色着色の
点から、好適範囲は 0.2〜0.5 重量%である。ただし、
用途または母材めっき鋼板の種類から着色が問題となら
ない場合には、6価クロム量を1.0 重量%以上とするこ
とも可能である。しかし、あまりに多量の6価クロム化
合物の添加はベースエマルジョン樹脂を不安定にするの
で、多くてもCr6+量で5重量%以下とする。
【0053】6価クロム化合物としては、無水クロム
酸、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、クロ
ム酸カルシウム、クロム酸亜鉛、クロム酸ストロンチウ
ムなどが使用できるが、好ましいのは不揮発性のアルカ
リ成分を含まない無水クロム酸やクロム酸アンモニウム
(アンモニアは造膜時に揮発し易い) である。
酸、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、クロ
ム酸カルシウム、クロム酸亜鉛、クロム酸ストロンチウ
ムなどが使用できるが、好ましいのは不揮発性のアルカ
リ成分を含まない無水クロム酸やクロム酸アンモニウム
(アンモニアは造膜時に揮発し易い) である。
【0054】特にZn-55wt%Al合金めっき鋼板では、上記
のように皮膜中の6価クロム量の好適範囲が限られ、6
価クロム化合物だけでは耐食性が不足する可能性もあ
る。その場合には、防錆剤として有機系腐食抑制剤を6
価クロム化合物と併用すると、6価クロム化合物の不足
を補って、皮膜の耐食性を向上させることができる。ま
た、この有機系腐食抑制剤の併用により、平面部の耐食
性が向上するばかりでなく、特に曲げ加工部や疵部の耐
食性、耐アルカリ性、耐酸性、耐候性が向上することも
判明した。母材がクロメート処理しためっき鋼板である
場合には、防錆剤としてこの有機系腐食抑制剤のみを配
合することもできる。
のように皮膜中の6価クロム量の好適範囲が限られ、6
価クロム化合物だけでは耐食性が不足する可能性もあ
る。その場合には、防錆剤として有機系腐食抑制剤を6
価クロム化合物と併用すると、6価クロム化合物の不足
を補って、皮膜の耐食性を向上させることができる。ま
た、この有機系腐食抑制剤の併用により、平面部の耐食
性が向上するばかりでなく、特に曲げ加工部や疵部の耐
食性、耐アルカリ性、耐酸性、耐候性が向上することも
判明した。母材がクロメート処理しためっき鋼板である
場合には、防錆剤としてこの有機系腐食抑制剤のみを配
合することもできる。
【0055】有機系腐食抑制剤は、有機インヒビターと
も呼ばれる、金属の腐食抑制に有効であることが知られ
ている各種有機化合物の中から選ぶことができる。これ
までに判明した中では、特にベンゾイミダゾール、ベン
ゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ジメルカプトチア
ゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾイソチア
ゾール、オクチン、ラウリルアミン、クエン酸アンモニ
ウムの防錆効果が高いので、これらから選んだ1種もし
くは2種以上を使用することが好ましい。
も呼ばれる、金属の腐食抑制に有効であることが知られ
ている各種有機化合物の中から選ぶことができる。これ
までに判明した中では、特にベンゾイミダゾール、ベン
ゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ジメルカプトチア
ゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾイソチア
ゾール、オクチン、ラウリルアミン、クエン酸アンモニ
ウムの防錆効果が高いので、これらから選んだ1種もし
くは2種以上を使用することが好ましい。
【0056】また、これらの有機系腐食抑制剤の併用
は、亜鉛−アルミ合金系めっき鋼板だけでなく、溶融亜
鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板等、亜鉛系めっき鋼
板全般に有効である。
は、亜鉛−アルミ合金系めっき鋼板だけでなく、溶融亜
鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板等、亜鉛系めっき鋼
板全般に有効である。
【0057】これらの有機系腐食抑制剤は、それ自体が
無色に近いため、黄色着色の問題はない。皮膜中の含有
量が30重量%を超えると、皮膜中にブツ状の抑制剤が混
入して皮膜欠陥となり、耐水性や耐アルカリ性、耐酸性
も低下する。一方、皮膜中の含有量が0.5 重量%未満で
は、無添加の場合と較べ、ほとんど効果が認められな
い。従って、皮膜中の有機系腐食抑制剤の含有量は 0.5
〜30重量%の範囲内が好ましく、より好ましくは1〜5
重量%である。
無色に近いため、黄色着色の問題はない。皮膜中の含有
量が30重量%を超えると、皮膜中にブツ状の抑制剤が混
入して皮膜欠陥となり、耐水性や耐アルカリ性、耐酸性
も低下する。一方、皮膜中の含有量が0.5 重量%未満で
は、無添加の場合と較べ、ほとんど効果が認められな
い。従って、皮膜中の有機系腐食抑制剤の含有量は 0.5
〜30重量%の範囲内が好ましく、より好ましくは1〜5
重量%である。
【0058】<被覆組成物>上記のシリカ変性アクリル
系エマルジョン樹脂またはこれとアクリル系エマルジョ
ン樹脂との混合物からなるベースエマルジョン樹脂に、
固体潤滑剤および必要により防錆剤 (6価クロム化合
物、またはこれと有機系腐食抑制剤) を配合し、均一に
混合することで、本発明で用いる被覆組成物が得られ
る。この被覆組成物の固形分濃度は、塗布に適した粘性
となるように調整する。
系エマルジョン樹脂またはこれとアクリル系エマルジョ
ン樹脂との混合物からなるベースエマルジョン樹脂に、
固体潤滑剤および必要により防錆剤 (6価クロム化合
物、またはこれと有機系腐食抑制剤) を配合し、均一に
混合することで、本発明で用いる被覆組成物が得られ
る。この被覆組成物の固形分濃度は、塗布に適した粘性
となるように調整する。
【0059】被覆組成物は、上記成分以外に、アクリル
系エマルジョン樹脂塗料に使用可能な他の添加剤を含有
していてもよい。本発明において特に好適な添加剤は、
造膜助剤と界面活性剤である。その他、着色顔料、染料
なども場合によって添加することができる。
系エマルジョン樹脂塗料に使用可能な他の添加剤を含有
していてもよい。本発明において特に好適な添加剤は、
造膜助剤と界面活性剤である。その他、着色顔料、染料
なども場合によって添加することができる。
【0060】前述したように、連続塗装ラインでの鋼板
の樹脂被覆では、炉長条件から焼付け温度が最終到達板
温で70〜120 ℃という比較的低温に制限されることが多
い。そのような場合、造膜を促進させるために、被覆組
成物に造膜助剤を添加することができ、それによって上
記温度範囲内でアクリル系エマルジョン樹脂の塗膜を十
分に焼付けることが可能となる。造膜助剤としては、ブ
チルセルソルブ、ブチルカルビトール等の親水性エーテ
ル類、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハ
ク酸ジメチル等の二塩基酸エステル類等の使用が可能で
ある。配合量は、樹脂固形分に対し1〜50重量%が一般
的である。
の樹脂被覆では、炉長条件から焼付け温度が最終到達板
温で70〜120 ℃という比較的低温に制限されることが多
い。そのような場合、造膜を促進させるために、被覆組
成物に造膜助剤を添加することができ、それによって上
記温度範囲内でアクリル系エマルジョン樹脂の塗膜を十
分に焼付けることが可能となる。造膜助剤としては、ブ
チルセルソルブ、ブチルカルビトール等の親水性エーテ
ル類、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハ
ク酸ジメチル等の二塩基酸エステル類等の使用が可能で
ある。配合量は、樹脂固形分に対し1〜50重量%が一般
的である。
【0061】また、特にZn-55wt%Al合金めっき鋼板で
は、前述のようにスキンパス圧延が施されないため、め
っき表面をSEMで観察すると、直径約5〜10μm、深
さ2〜5μmの凹みが無数に (10,000〜100,000 個/c
m2) 存在し、この表面凹凸によって、塗装や焼付き時に
1〜5μmのピンホールが発生しやすい。ピンホールは
耐食性の劣化を招くので、塗料とめっき表面の濡れ性を
向上させて、ピンホール発生を防止するために、界面活
性剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては、
アニオン系界面活性剤またはノニオン系界面活性剤が使
用でき、特に、微量添加で効果が大きく、耐食性の劣化
が小さい、フッ素系のノニオン系界面活性剤が好適であ
る。界面活性剤の添加量は、樹脂固形分に対して0.01〜
0.1 重量%の範囲内が好ましい。
は、前述のようにスキンパス圧延が施されないため、め
っき表面をSEMで観察すると、直径約5〜10μm、深
さ2〜5μmの凹みが無数に (10,000〜100,000 個/c
m2) 存在し、この表面凹凸によって、塗装や焼付き時に
1〜5μmのピンホールが発生しやすい。ピンホールは
耐食性の劣化を招くので、塗料とめっき表面の濡れ性を
向上させて、ピンホール発生を防止するために、界面活
性剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては、
アニオン系界面活性剤またはノニオン系界面活性剤が使
用でき、特に、微量添加で効果が大きく、耐食性の劣化
が小さい、フッ素系のノニオン系界面活性剤が好適であ
る。界面活性剤の添加量は、樹脂固形分に対して0.01〜
0.1 重量%の範囲内が好ましい。
【0062】<樹脂皮膜の形成>上記の被覆組成物の塗
装は任意の手段で実施できるが、連続塗装ラインの場合
にはロール塗装または噴霧塗装が一般的である。その
後、塗膜を乾燥させるが、通常は加熱による焼付けによ
り塗膜の乾燥を行う。前述したように、連続塗装ライン
では、炉長の関係から加熱条件は最終到達板温で70〜12
0 ℃の条件となることが多いが、焼付け条件は特にこれ
に限定されるものではない。
装は任意の手段で実施できるが、連続塗装ラインの場合
にはロール塗装または噴霧塗装が一般的である。その
後、塗膜を乾燥させるが、通常は加熱による焼付けによ
り塗膜の乾燥を行う。前述したように、連続塗装ライン
では、炉長の関係から加熱条件は最終到達板温で70〜12
0 ℃の条件となることが多いが、焼付け条件は特にこれ
に限定されるものではない。
【0063】焼付けにより形成された透明樹脂皮膜 (ク
リヤー皮膜) の付着量は 0.5〜4.0g/m2の範囲内とす
る。皮膜の付着量が0.5 g/m2未満では、耐食性、耐アル
カリ性、潤滑性が不十分となる。また4.0 g/m2を越える
と、6価クロムによる黄色着色が目立ち、コストアップ
も見逃せなくなる。好ましい付着量は 1.0〜2.5 g/m2で
ある。
リヤー皮膜) の付着量は 0.5〜4.0g/m2の範囲内とす
る。皮膜の付着量が0.5 g/m2未満では、耐食性、耐アル
カリ性、潤滑性が不十分となる。また4.0 g/m2を越える
と、6価クロムによる黄色着色が目立ち、コストアップ
も見逃せなくなる。好ましい付着量は 1.0〜2.5 g/m2で
ある。
【0064】次に、実施例により本発明をさらに例示す
るが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではな
い。なお、実施例中、%は特に指定のない限り、重量%
である。
るが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではな
い。なお、実施例中、%は特に指定のない限り、重量%
である。
【0065】
【実施例】表1に示す母材鋼板 (板厚はいずれも0.8 m
m) に被覆組成物を塗装して表面処理鋼板を作製した。
使用した被覆組成物は、いずれも不揮発分 (NV) が22
%であり、揮発分78%の内訳は、溶媒の水が72%、造膜
助剤のブチルセルソルブが6%であった。
m) に被覆組成物を塗装して表面処理鋼板を作製した。
使用した被覆組成物は、いずれも不揮発分 (NV) が22
%であり、揮発分78%の内訳は、溶媒の水が72%、造膜
助剤のブチルセルソルブが6%であった。
【0066】塗装はバーコーターにより行い、焼付けは
炉温350 ℃、16秒の条件 (最終到達鋼板温度90℃) で行
った。被覆組成物の各成分の種類と配合量 (全固形分に
対する固形分割合での量) 、ベース樹脂 (2種以上の樹
脂を使用した場合には、樹脂混合物) の酸価とガラス転
移温度 (Tg) 、焼付け後の皮膜の付着量は、表1に示す
通りである。
炉温350 ℃、16秒の条件 (最終到達鋼板温度90℃) で行
った。被覆組成物の各成分の種類と配合量 (全固形分に
対する固形分割合での量) 、ベース樹脂 (2種以上の樹
脂を使用した場合には、樹脂混合物) の酸価とガラス転
移温度 (Tg) 、焼付け後の皮膜の付着量は、表1に示す
通りである。
【0067】表1で使用した記号の意味を次に示す。 (鋼板) AZ:Zn-55wt% Al-1.6wt%Si合金めっき鋼板 (片面当た
り付着量80 g/m2)、AZC:Cr換算で20 mg/m2のクロメ
ート処理を行った上記AZ鋼板、EZ:電気亜鉛めっき
鋼板 (片面当たり付着量20 g/m2)、SZ:電気亜鉛−ニ
ッケル合金めっき鋼板 (片面当たり付着量20 g/m2)、C
R:Cr換算で20 mg/m2のクロメート処理を行った冷延鋼
板。
り付着量80 g/m2)、AZC:Cr換算で20 mg/m2のクロメ
ート処理を行った上記AZ鋼板、EZ:電気亜鉛めっき
鋼板 (片面当たり付着量20 g/m2)、SZ:電気亜鉛−ニ
ッケル合金めっき鋼板 (片面当たり付着量20 g/m2)、C
R:Cr換算で20 mg/m2のクロメート処理を行った冷延鋼
板。
【0068】(樹脂) A:アクリル系エマルジョン樹脂 (Tg: 50℃, 酸価8)、
B:アクリル系エマルジョン樹脂 (Tg: 50℃, 酸価1)、
C:アクリル系エマルジョン樹脂 (Tg: 50℃, 酸価23)
、D:アミン基含有アクリル系エマルジョン樹脂 (Tg:
50℃, 酸価35) 、E:水酸基含有アクリル系エマルジ
ョン樹脂 (Tg: 18℃、酸価8)、F:β−ケト基含有アク
リル系エマルジョン樹脂 (Tg: 24℃、酸価8)、G:エポ
キシ基含有アクリル系エマルジョン樹脂 (Tg: 70℃、酸
価8) 、H:アミド基含有アクリル系エマルジョン樹脂
(Tg: 85℃、酸価8)、I:シリカ変性アクリル系エマル
ジョン樹脂(SiO2:20%, Tg:10℃, 酸価8)、J:シリカ変
性アクリル系エマルジョン樹脂(SiO2=20%, Tg:34℃, 酸
価7)。
B:アクリル系エマルジョン樹脂 (Tg: 50℃, 酸価1)、
C:アクリル系エマルジョン樹脂 (Tg: 50℃, 酸価23)
、D:アミン基含有アクリル系エマルジョン樹脂 (Tg:
50℃, 酸価35) 、E:水酸基含有アクリル系エマルジ
ョン樹脂 (Tg: 18℃、酸価8)、F:β−ケト基含有アク
リル系エマルジョン樹脂 (Tg: 24℃、酸価8)、G:エポ
キシ基含有アクリル系エマルジョン樹脂 (Tg: 70℃、酸
価8) 、H:アミド基含有アクリル系エマルジョン樹脂
(Tg: 85℃、酸価8)、I:シリカ変性アクリル系エマル
ジョン樹脂(SiO2:20%, Tg:10℃, 酸価8)、J:シリカ変
性アクリル系エマルジョン樹脂(SiO2=20%, Tg:34℃, 酸
価7)。
【0069】(潤滑剤) a:ステアリン酸カルシウムエマルジョン、b:ポリエ
チレンワックスエマルジョン (分子量5000) 、c:酸化
ポリエチレンワックスエマルジョン (分子量5000) 、
d:フッ素樹脂エマルジョン、e:ラウリン酸カルシウ
ムエマルジョン、f:エシル酸アミドエマルジョン、
g:ポリエチレンワックスエマルジョン (分子量3000)
、h:パルミチン酸カルシウムエマルジョン。
チレンワックスエマルジョン (分子量5000) 、c:酸化
ポリエチレンワックスエマルジョン (分子量5000) 、
d:フッ素樹脂エマルジョン、e:ラウリン酸カルシウ
ムエマルジョン、f:エシル酸アミドエマルジョン、
g:ポリエチレンワックスエマルジョン (分子量3000)
、h:パルミチン酸カルシウムエマルジョン。
【0070】(防錆剤)6価クロム化合物 ア:クロム酸、有機系腐食抑制剤 イ:ベンゾイミダゾール、ウ:ベンゾトリアゾール、
エ:ベンゾチアゾール、オ:ジメルカプトチアヂアゾー
ル、カ:メルカプトベンゾチアヂアゾール、キ:ベンゾ
イソチアゾール、ク:オクチン、ケ:ラウリルアミン、
コ:クエン酸アンモニウム。
エ:ベンゾチアゾール、オ:ジメルカプトチアヂアゾー
ル、カ:メルカプトベンゾチアヂアゾール、キ:ベンゾ
イソチアゾール、ク:オクチン、ケ:ラウリルアミン、
コ:クエン酸アンモニウム。
【0071】得られた樹脂被覆表面処理鋼板の加工性、
作業性、耐アルカリ性、皮膜密着性、耐ブロッキング
性、耐食性、後塗装性、外観を下記の要領で評価した。
評価結果も表1に併せて示す。
作業性、耐アルカリ性、皮膜密着性、耐ブロッキング
性、耐食性、後塗装性、外観を下記の要領で評価した。
評価結果も表1に併せて示す。
【0072】(試験条件) 加工性:バウデン試験機により測定した摩擦係数により
評価。 摩擦係数: 0.20以下 ◎ 0.20〜0.35 ○ 0.35〜0.45 △ 上記範囲外 ×。
評価。 摩擦係数: 0.20以下 ◎ 0.20〜0.35 ○ 0.35〜0.45 △ 上記範囲外 ×。
【0073】作業性:バウデン試験機により測定した摩
擦係数により評価。 摩擦係数: 0.25以上 ◎ 0.15〜0.25 ○ 0.10〜0.15 △ 0.10以下 ×。
擦係数により評価。 摩擦係数: 0.25以上 ◎ 0.15〜0.25 ○ 0.10〜0.15 △ 0.10以下 ×。
【0074】耐アルカリ性:一部2T曲げしたした試験
片を、0.5 %NaOH水溶液に20℃で30分浸漬した後の加工
部と平板部の黒変率を目視により測定して評価。 黒変率:0〜1% ◎ 1〜5% ○ 5〜20% △ 20%以上 ×。
片を、0.5 %NaOH水溶液に20℃で30分浸漬した後の加工
部と平板部の黒変率を目視により測定して評価。 黒変率:0〜1% ◎ 1〜5% ○ 5〜20% △ 20%以上 ×。
【0075】密着性:0T密着曲げ加工部のセロテープ
剥離後にテープに付着した皮膜面積率により剥離率を評
価。 剥離率:0〜2% ◎ 2〜5% ○ 5〜20% △ 20%以上 ×。
剥離後にテープに付着した皮膜面積率により剥離率を評
価。 剥離率:0〜2% ◎ 2〜5% ○ 5〜20% △ 20%以上 ×。
【0076】耐ブロッキング性: 試験片2枚を重ねて
60℃で100 kg/cm2に24時間加圧後の引き離し状況により
評価。 密着無し ◎ 軽い密着有り ○ 密着有り △ 固い密着有り ×。
60℃で100 kg/cm2に24時間加圧後の引き離し状況により
評価。 密着無し ◎ 軽い密着有り ○ 密着有り △ 固い密着有り ×。
【0077】耐食性:耐アルカリ性試験と同様にプレス
成形した試験片を用いた塩水噴霧試験(35 ℃、500 時
間) 。 白錆発生率:0〜1% ◎ 1〜5% ○ 5〜20% △ 20%以上 ×。
成形した試験片を用いた塩水噴霧試験(35 ℃、500 時
間) 。 白錆発生率:0〜1% ◎ 1〜5% ○ 5〜20% △ 20%以上 ×。
【0078】塗装性:メラミンアルキッド塗料を20μm
厚に塗装した試験片について、碁盤目試験 (1mm碁盤目
100 個セロテープ剥離) により評価。 一次:塗装のままで碁盤目試験 二次:塗装試験片を沸騰水2時間浸漬後に基盤目試験 剥離率:0〜2% ◎ 2〜5% ○ 5〜20% △ 20%以上 ×。
厚に塗装した試験片について、碁盤目試験 (1mm碁盤目
100 個セロテープ剥離) により評価。 一次:塗装のままで碁盤目試験 二次:塗装試験片を沸騰水2時間浸漬後に基盤目試験 剥離率:0〜2% ◎ 2〜5% ○ 5〜20% △ 20%以上 ×。
【0079】外観 :目視評価。 黄み無し ◎ 薄い黄み有り ○ やや黄み有り △ 黄みあり ×。
【0080】
【表1】
【0081】表1からわかるように、アクリル系エマル
ジョン樹脂に潤滑剤と防錆剤を配合した、シリカ無添加
の被覆組成物から形成した比較例1および9の皮膜は、
耐ブロッキング性に劣り、耐アルカリ性や耐食性もやや
不十分であった。また、この樹脂組成物にコロイダルシ
リカを混合した比較例3では、耐ブロッキング性の改善
はわずかであり、シリカの添加により耐アルカリ性はさ
らに低下し、また耐食性の改善も全く得られなかった。
また、皮膜の付着量が範囲外の比較例、母材鋼板が冷延
鋼板の比較例、潤滑剤または防錆剤を配合しなかった比
較例でも、少なくとも1つ以上の性能が△以下であり、
試験した全部の性能を満たすことはできなかった。さら
に、樹脂被覆ではなく、多量のコロイダルシリカを含有
する塗布型クロメート処理を施した比較例5は、耐食
性、耐アルカリ性、耐水性、加工性に著しく劣ってい
た。
ジョン樹脂に潤滑剤と防錆剤を配合した、シリカ無添加
の被覆組成物から形成した比較例1および9の皮膜は、
耐ブロッキング性に劣り、耐アルカリ性や耐食性もやや
不十分であった。また、この樹脂組成物にコロイダルシ
リカを混合した比較例3では、耐ブロッキング性の改善
はわずかであり、シリカの添加により耐アルカリ性はさ
らに低下し、また耐食性の改善も全く得られなかった。
また、皮膜の付着量が範囲外の比較例、母材鋼板が冷延
鋼板の比較例、潤滑剤または防錆剤を配合しなかった比
較例でも、少なくとも1つ以上の性能が△以下であり、
試験した全部の性能を満たすことはできなかった。さら
に、樹脂被覆ではなく、多量のコロイダルシリカを含有
する塗布型クロメート処理を施した比較例5は、耐食
性、耐アルカリ性、耐水性、加工性に著しく劣ってい
た。
【0082】これに対し、本発明に従って、シリカ変性
アクリル系エマルジョン樹脂としてコロイダルシリカを
含有させた被覆組成物を用いて樹脂皮膜を形成すること
により、コロイダルシリカの含有量が少ないにもかかわ
らず、加工部の耐食性や耐アルカリ性を改善し、同時に
耐ブロッキング性を著しく改善することができた。ま
た、防錆剤の6価クロム化合物の含有量もCr6+量で1重
量%以下と少ないが、有機系腐食抑制剤を併用すること
で十分に耐食性を確保することができ、それにより外観
の悪化を防止することができた。なお、有機系腐食抑制
剤を併用しなくても、例えば、実施例6に示すように、
Cr6+量が0.9 重量%と多いと耐食性は非常によく、また
実施例12に示すようにCr6+量が0.1 重量%でも耐食性は
十分であった。
アクリル系エマルジョン樹脂としてコロイダルシリカを
含有させた被覆組成物を用いて樹脂皮膜を形成すること
により、コロイダルシリカの含有量が少ないにもかかわ
らず、加工部の耐食性や耐アルカリ性を改善し、同時に
耐ブロッキング性を著しく改善することができた。ま
た、防錆剤の6価クロム化合物の含有量もCr6+量で1重
量%以下と少ないが、有機系腐食抑制剤を併用すること
で十分に耐食性を確保することができ、それにより外観
の悪化を防止することができた。なお、有機系腐食抑制
剤を併用しなくても、例えば、実施例6に示すように、
Cr6+量が0.9 重量%と多いと耐食性は非常によく、また
実施例12に示すようにCr6+量が0.1 重量%でも耐食性は
十分であった。
【0083】
【発明の効果】本発明により、亜鉛系めっき鋼板または
アルミニウム系めっき鋼板を母材として、これにシリカ
変性アクリル系エマルジョン樹脂を含有するベース樹脂
に固体潤滑剤と少量の防錆剤とを配合した被覆組成物を
塗布して樹脂皮膜を形成することにより、外観を良好に
保持したまま加工部の性能と耐ブロッキング性を両立さ
せることが可能となり、耐食性、耐アルカリ性、皮膜密
着性、耐水性、潤滑性、耐ブロッキング性、後塗装性に
優れ、潤滑油を塗布せずに加工可能な良好な加工性を有
し、外観も良好な樹脂被覆表面処理鋼板を得ることがで
きる。
アルミニウム系めっき鋼板を母材として、これにシリカ
変性アクリル系エマルジョン樹脂を含有するベース樹脂
に固体潤滑剤と少量の防錆剤とを配合した被覆組成物を
塗布して樹脂皮膜を形成することにより、外観を良好に
保持したまま加工部の性能と耐ブロッキング性を両立さ
せることが可能となり、耐食性、耐アルカリ性、皮膜密
着性、耐水性、潤滑性、耐ブロッキング性、後塗装性に
優れ、潤滑油を塗布せずに加工可能な良好な加工性を有
し、外観も良好な樹脂被覆表面処理鋼板を得ることがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B32B 27/30 B32B 27/30 A (72)発明者 引野 真也 和歌山市湊1850番地 住友金属工業株式 会社和歌山製鉄所内 (72)発明者 相良 睦雄 和歌山市湊1850番地 住友金属工業株式 会社和歌山製鉄所内 (72)発明者 丸 俊一 大阪市城東区鴫野西4丁目1番24号 朝 日化学工業株式会社内 (72)発明者 木屋 敏夫 大阪市城東区鴫野西4丁目1番24号 朝 日化学工業株式会社内 (72)発明者 芦立 肇 大阪市城東区鴫野西4丁目1番24号 朝 日化学工業株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 15/08 B05D 7/14 B32B 27/18 B32B 27/20 B32B 27/30
Claims (7)
- 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム系めっ
き鋼板、およびこれらのめっき鋼板をクロメート処理し
た鋼板から選ばれた母材鋼板の表面に、シリカ変性アク
リル系エマルジョン樹脂またはアクリル系エマルジョン
樹脂とシリカ変性アクリル系エマルジョン樹脂との混合
物からなるエマルジョン樹脂、および固体潤滑剤を含有
する被覆組成物から形成された皮膜を 0.5〜4.0 g/m2の
付着量で有することを特徴とする、樹脂被覆表面処理鋼
板。 - 【請求項2】 前記被覆組成物がさらに6価クロム化合
物を含む防錆剤を含有する、請求項1記載の表面処理鋼
板。 - 【請求項3】 前記エマルジョン樹脂の酸価が20以下、
ガラス転移温度が25〜55℃であることを特徴とする、請
求項1または2記載の表面処理鋼板。 - 【請求項4】 前記皮膜中のシリカ含有量がSiO2換算量
で1〜10重量%であることを特徴とする、請求項1ない
し3のいずれかに記載の表面処理鋼板。 - 【請求項5】 前記皮膜中の固体潤滑剤の含有量が1〜
30重量%であることを特徴とする、請求項1ないし4の
いずれかに記載の表面処理鋼板。 - 【請求項6】 前記皮膜中の防錆剤の6価クロム化合物
の含有量がCr6+量で0.1〜1.0 重量%であることを特徴
とする、請求項2ないし5のいずれかに記載の表面処理
鋼板。 - 【請求項7】 前記防錆剤が有機系腐食抑制剤をさらに
含有し、皮膜中のその含有量が 0.5〜30重量%であるこ
とを特徴とする、請求項2ないし6のいずれかに記載の
表面処理鋼板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2212095A JP2929957B2 (ja) | 1995-02-09 | 1995-02-09 | 樹脂被覆表面処理鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2212095A JP2929957B2 (ja) | 1995-02-09 | 1995-02-09 | 樹脂被覆表面処理鋼板 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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