JP3386283B2 - 缶外面用水性樹脂組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、缶外面用水性樹脂組成
物、とくに缶外面用水性オーバープリントワニスまたは
缶外面用水性ホワイトコート剤に関し、さらに詳しく
は、耐水性、耐レトルト性に優れた缶外面用水性オーバ
ープリントワニスまたは缶外面用水性ホワイトコート剤
に関する。

【０００２】

【従来の技術】清涼飲料水や食品を詰める飲料缶および
食缶の外面には、直接もしくはホワイトコート剤を塗布
した後、内容物表示のため種々の工夫をこらしたデザイ
ンが印刷インキにより施され、その上には、缶材の腐食
を防止し、美的商品価値を高め、かつ食品殺菌処理時の
熱処理工程に耐えうるように塗膜が形成されている。

【０００３】従来このような金属缶の印刷においては、
金属缶の外面に直接もしくは白色顔料／アクリル／アミ
ノ系樹脂、白色顔料／ポリエステル／アミノ系樹脂など
の有機溶剤型のホワイトコート剤を塗布した後、アルキ
ッド樹脂、ポリエステル樹脂などのバインダー樹脂、ア
ミノ樹脂などの硬化剤、鉱物油やセロソルブ系溶剤から
なる油性の金属用印刷インキを印刷し、さらにアクリル
／アミノ系樹脂、ポリエステル／アミノ系樹脂などの有
機溶剤型オーバープリントワニスを塗工し、ガスオーブ
ンなどで焼付処理する方法が行われていた。

【０００４】しかし、近年、大気汚染の問題、印刷作業
環境における衛生面あるいは安全性の面から、金属印刷
の分野においても、溶剤型から水性型に移行する動きが
顕著になり、ホワイトコート剤としては、アクリル系、
ポリエステル系、アルキッド系などの水性樹脂、架橋剤
であるアミノ樹脂、白色顔料が混合されたもの、オーバ
ープリントワニスとしては、アクリル系、ポリエステル
系、アルキッド系などの水性樹脂、架橋剤であるアミノ
樹脂が混合されたものが使用されている。

【０００５】しかし、上記ホワイトコート剤、オーバー
プリントワニスを使用したものは、耐水性、密着性、耐
レトルト性などが欠ける問題があった。

【０００６】これを解決するために、エポキシ樹脂を導
入することが行われている。

【０００７】例えば、無水ポリカルボン酸によりカルボ
キシル基を導入したエポキシ樹脂を含有する缶外面用水
性塗料組成物、エポキシ樹脂とリン酸類とを反応させた
リン酸化エポキシ樹脂を含有する缶外面用水性塗料組成
物が提案されている。

【０００８】しかしながら、上記のような缶外面用水性
塗料組成物を使用しても、レトルトなどの殺菌処理を行
うと、耐水性、密着性、加工性などが低下し、未だ不十
分なものである。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来技術の課題を解決するためになされたものであり、
レトルトなどの殺菌処理に耐え得る耐水性、密着性、加
工性を有する塗膜を形成する缶外面用水性オーバープリ
ントワニスまたは缶外面用水性ホワイトコート剤を提供
することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく研究を重ねた結果、従来の缶外面用水性オ
ーバープリントワニスまたは缶外面用水性ホワイトコー
ト剤中に炭酸カルシウムおよび／または酸化亜鉛を含有
させることにより上記課題を解決できることを見出し、
本発明を完成するに至ったものである。

【００１１】即ち、本発明は、水性樹脂、アミノ樹脂、
揮発性塩基性化合物および水から主としてなる缶外面用
水性オーバープリントワニス中に、炭酸カルシウムおよ
び／または酸化亜鉛を当該缶外面用水性オーバープリン
トワニスの固形分に対して０．０１〜４重量％含有させ
ることを特徴とする缶外面用水性オーバープリントワニ
スに関する。

【００１２】また、本発明は、水性樹脂、アミノ樹脂、
揮発性塩基性化合物、白色顔料および水から主としてな
る缶外面用水性ホワイトコート剤中に、炭酸カルシウム
および／または酸化亜鉛を当該缶外面用水性ホワイトコ
ート剤の固形分に対して０．０１〜１０重量％含有させ
ることを特徴とする缶外面用水性ホワイトコート剤に関
する。

【００１３】

【作用および実施例】以下、本発明の缶外面用水性オー
バープリントワニスまたは缶外面用水性ホワイトコート
剤について詳しく説明する。

【００１４】本発明の缶外面用水性オーバープリントワ
ニスまたは缶外面用水性ホワイトコート剤に使用する水
性樹脂としては、水性媒体に可溶または分散可能でアミ
ノ樹脂と反応するものであれば使用できる。

【００１５】具体的には、α、β−不飽和カルボン酸、
そのアルキルエステルまたはヒドロキシアルキルエステ
ル、アクリルアミド誘導体などの少なくとも１種、およ
び必要に応じその他の共重合可能なビニル化合物を共重
合させてえられるカルボキシル基含有アクリル樹脂、フ
タル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸
などのジカルボン酸、トリメリット酸などの３価以上の
カルボン酸、またはこれらの酸無水物などの少なくとも
１種からなる酸成分とエチレングリコール、プロピレン
グリコール、ネオペンチルグリコール、３−メチル−
１、５−ペンタンジオールなどのグリコール、トリメチ
ロールプロパン、ペンタエリストールなどの３価以上の
多価アルコールなどの少なくとも１種からなるアルコー
ル成分とを重縮合してえられるオイルフリーのカルボキ
シル基含有ポリエステル樹脂、無水ポリカルボン酸によ
りカルボキシル基を導入したエポキシ樹脂など、および
これらの樹脂の混合物あるいは変性した樹脂が例示でき
る。

【００１６】また、本発明の缶外面用水性オーバープリ
ントワニスまたは缶外面用水性ホワイトコート剤に使用
するアミノ樹脂としては、アルキルエーテル化メラミン
樹脂、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、アル
キルエーテル化尿素樹脂、スピログアナミン樹脂、フェ
ニレン核に２個のトリアジン環の結合したジグアナミン
のアルキルエーテル化メラミン樹脂、アルキルエーテル
化グリコール樹脂などが例示でき、単独または２種以上
を混合して使用できる。このなかでも好ましいものは、
アルキルエーテル化メラミン樹脂、アルキルエーテル化
ベンゾグアナミン樹脂である。

【００１７】前記水性樹脂およびアミノ樹脂の好ましい
使用割合は、缶外面用水性オーバープリントワニスまた
は缶外面用水性ホワイトコート剤の樹脂固形分中、水性
樹脂８０〜２０重量％、アミノ樹脂２０〜８０重量％で
ある。

【００１８】アミノ樹脂が２０重量％未満であると、え
られる塗膜のレトルトなどの殺菌処理後の耐水性、塗膜
の硬度が低下し、８０重量％を超えると、えられる塗膜
の可撓性、加工性が低下する。

【００１９】本発明の缶外面用水性オーバープリントワ
ニスにおける樹脂成分（水性樹脂＋アミノ樹脂）の割合
は固形分に対して９４〜９９．９重量％程度が好まし
い。また本発明の缶外面用水性ホワイトコート剤におけ
る樹脂成分（水性樹脂＋アミノ樹脂）の割合は固形分に
対して３０〜６０重量％程度が好ましい。

【００２０】また、本発明の缶外面用水性オーバープリ
ントワニスまたは缶外面用水性ホワイトコート剤に使用
する揮発性塩基性化合物としては、水性樹脂のカルボキ
シル基を部分的に、或いは全部を中和して、水性樹脂を
水に可溶または水に分散できるものであればよい。

【００２１】具体的には、トリエチルアミン、トリエタ
ノールアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミン、
モノエタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタ
ノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエ
タノールアミンなどが例示できる。

【００２２】また、本発明の缶外面用水性ホワイトコー
ト剤に使用する白色顔料としては、酸化チタンが例示で
きる。

【００２３】白色顔料の配合量は、水性樹脂とアミノ樹
脂とからなる樹脂成分１００重量部に対して７０〜２０
０重量部の範囲が好ましく、これにより隠蔽力の優れた
缶外面用水性ホワイトコート剤がえられる。

【００２４】白色顔料の配合量が、７０重量部未満であ
ると、隠蔽力が低下し、２００重量部を超えると塗工性
が低下する問題を有する。

【００２５】また、本発明の耐水性、耐レトルト性を向
上させるため缶外面用水性オーバープリントワニスまた
は缶外面用水性ホワイトコート剤中に含有させる炭酸カ
ルシウムおよび／または酸化亜鉛の量は、缶外面用水性
オーバープリントワニスの場合は、缶外面用水性オーバ
ープリントワニスの固形分に対して０．０１〜４重量
％、好ましくは０．１〜３重量％、缶外面用水性ホワイ
トコート剤の場合は、缶外面用水性ホワイトコート剤の
固形分に対して０．０１〜１０重量％、好ましくは３〜
８重量％である。

【００２６】缶外面用水性オーバープリントワニスまた
は缶外面用水性ホワイトコート剤中に含有させる炭酸カ
ルシウムおよび／または酸化亜鉛の量が、缶外面用水性
オーバープリントワニスまたは缶外面用水性ホワイトコ
ート剤の固形分に対して前記範囲未満では、耐水性、耐
レトルト性が向上しない。

【００２７】また、缶外面用水性オーバープリントワニ
ス中に含有させる炭酸カルシウムおよび／または酸化亜
鉛の量が、缶外面用水性オーバープリントワニスの固形
分に対して前記範囲を超えると、えられる塗膜の透明性
が低下し、缶外面用水性ホワイトコート剤中に含有させ
る炭酸カルシウムおよび／または酸化亜鉛の量が、缶外
面用水性ホワイトコート剤の固形分に対して前記範囲を
超えると、えられる塗膜の白色度、光沢などが低下す
る。

【００２８】また、缶外面用水性オーバープリントワニ
スまたは缶外面用水性ホワイトコート剤には、必要に応
じて、硬化促進剤として、ｐ−トルエンスルホン酸、ド
デシルベンゼンスルホン酸、ジノニルジナフタレンジス
ルホン酸、またはこれらのアミン塩を、固形分１００重
量部に対して、０．１〜２．０重量部添加することがで
きる。

【００２９】また、従来公知の消泡剤、滑剤、レベリン
グ剤などを添加することもできる。

【００３０】本発明の缶外面用水性オーバープリントワ
ニスまたは缶外面用水性ホワイトコート剤の塗工方法と
しては、ロールコート、スプレー、刷毛塗りなど、公知
の塗工方法が利用できる。

【００３１】例えば、缶外面用水性ホワイトコート剤を
飲料缶または食缶の外面に塗工する方法としては、飲料
缶または食缶の外面上に、缶外面用水性ホワイトコート
剤を塗布量（固形分換算）が８０〜１５０ｍｇ／１００
ｃｍ²になるようにコーターなどで塗工する方法が利用
できる。また、缶外面用水性オーバープリントワニスを
飲料缶または食缶の外面に塗工する方法としては、金属
印刷インキ組成物を飲料缶または食缶の外面に直接、ま
たはホワイトコート剤が塗工されている面上に、塗布量
（固形分換算）が１０〜３０ｍｇ／１００ｃｍ²になる
ように、ドライオフセット印刷機またはオフセット印刷
機などで印刷し、インキがウエット状態にある間に、本
発明の缶外面用水性オーバープリントワニスを塗布量
（固形分換算）が３０〜８０ｍｇ／１００ｃｍ²になる
ようにコーターなどでオーバーコーティングする方法が
利用できる。

【００３２】また、本発明の缶外面用水性オーバープリ
ントワニスまたは缶外面用水性ホワイトコート剤の焼付
処理方法としては、焼付温度１３０〜２８０℃に応じ
て、処理時間を適宜設定して焼付する方法が利用でき
る。

【００３３】以下、実施例に基づき、本発明を具体的に
説明するが、これに限定されるものではない。以下にお
いて、部および％は、それぞれ重量部および重量％を示
す。

【００３４】＜水性樹脂組成物の合成＞攪拌機、窒素導
入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、ブチルセロソ
ルブ１００部を仕込み１１０℃に昇温し、そこへ、アク
リル酸１５部、ｎ−ブチルアクリレート３０部、２−ヒ
ドロキシエチルアクリレート２０部、メタクリル酸メチ
ル５部、スチレン３０部、ジターシャリーブチルパーオ
キサイド４部の混合物を４時間かけて滴下した。滴下終
了後さらに同温度で２時間攪拌して反応を続けた。反応
終了後６０℃まで冷却してジメチルエタノールアミン１
８．６部を添加し３０分攪拌した後に軟水３１．４部で
希釈し、不揮発分４０％の水性アクリル樹脂組成物をえ
た。

【００３５】＜缶外面用水性オーバープリントワニスお
よび缶外面用水性ホワイトコート剤の実施例および比較
例＞前記でえられた水性アクリル樹脂組成物、ベンゾグ
アナミン樹脂（サイメル１１２２、三井サイテック
（株）製）、炭酸カルシウム（Ｖｉｇｏｔ １５、白石
工業（株）製）、酸化亜鉛（微細亜鉛華、堺化学（株）
製）、酸化チタン（タイペーク、ＣＲ−５８、石原産業
（株）製）、パラトルエンスルホン酸を用い、表１に従
って、缶外面用水性オーバープリントワニスまたは缶外
面用水性ホワイトコート剤を調製した。表１における数
字は重量部数である。

【００３６】＜試験評価＞ ［缶外面用水性オーバープリントワニスの場合］ジルコ
ニウム処理したアルミ２ピース缶に、缶外面用水性オー
バープリントワニスをロールコータを用いて、固形分換
算約５０ｍｇ／１００ｃｍ²の塗膜量にてオーバープリ
ントし、その後２００℃で４分間焼付けを行い、塗膜性
状、塗膜耐性を評価した。その結果を表２に示す。

【００３７】［缶外面用水性ホワイトコート剤の場合］
ジルコニウム処理したアルミ２ピース缶に、缶外面用水
性ホワイトコート剤をロールコータを用いて、固形分換
算約１３０ｍｇ／１００ｃｍ²の塗膜量にて塗布し、そ
の後２００℃で１分間焼付けを行った。次いで、実施例
１の缶外面用水性オーバープリントワニスをロールコー
タを用いて、固形分換算約５０ｍｇ／１００ｃｍ²の塗
膜量にて全面にオーバープリントし、その後２００℃で
４分間焼付けを行い、塗膜性状、塗膜耐性を評価した。
その結果を表３に示す。

【００３８】評価方法 （１）塗膜の透明度 硬化塗膜の透明性を目視にて評価した。問題のないもの
を３、少し不透明なものを２、不透明なものを１として
評価した。

【００３９】（２）塗膜の白色度 硬化塗膜の白色度を目視にて評価した。問題のないもの
を３、少し白色度の低下するものを２、白色度のないも
のを１として評価した。

【００４０】（３）硬度 硬化塗膜について、ＪＩＳ−Ｋ５４１０に従って、鉛筆
硬度を評価した。

【００４１】（４）温水中硬度 硬化塗膜を８０℃の温水中に浸漬し、湯中でＪＩＳ−Ｋ
５４１０に従って、鉛筆硬度を評価した。

【００４２】（５）密着性 硬化塗膜について、１ｃｍ四方の部分に１ｍｍのマス目
をカッターナイフで１００個作り、セロハンテープをそ
の部分に密着させてすばやく剥がし、剥離しなかったも
のを３、１／１００〜５０／１００剥離したものを２、
５１／１００以上剥離したものを１として評価した。 （６）耐衝撃性 デュポン衝撃試験機を使用して、１／２インチの試料台
およびびポンチをセットし、硬化塗膜面を上にして、試
料台とポンチの間にはさみ、荷重５００ｇのおもりを２
０ｃｍから落下させ、硬化塗膜の変形部分の塗膜の剥離
の有無を、セロハンテープをその部分に密着させ剥が
し、剥離のないものを３、剥離傾向にあるものを２、剥
離したものを１として評価した。

【００４３】（７）レトルト試験 硬化塗膜を蒸気霧露中で１２５℃、１時間処理した後、
上記（３）〜（６）と同等の試験および外観の評価を行
った。レトルト後の外観は、硬化塗膜について、白化の
有無を目視で調べ、問題のないものを３、少し白化のあ
るものを２、白化のあるものを１として評価した。

【００４４】

【表１】

【００４５】

【表２】

【００４６】

【表３】

【００４７】

【発明の効果】本発明の缶外面用水性オーバープリント
ワニスまたは缶外面用水性ホワイトコート剤は、レトル
トなどの殺菌処理に耐え得る耐水性、密着性、加工性を
有する塗膜を形成することができる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 狩野 耕司 大阪市西区江戸堀一丁目23番37号 サカ タインクス株式会社内 (56)参考文献 特開 平７−9754（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−157984（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−323277（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−236279（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−235973（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C09D 1/00 - 201/10

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 水性樹脂、アミノ樹脂、揮発性塩基性化
   合物および水から主としてなる缶外面用水性オーバープ
   リントワニス中に、炭酸カルシウムおよび／または酸化
   亜鉛を当該缶外面用オーバープリントワニスの固形分に
   対して０．０１〜４重量％含有させたことを特徴とする
   缶外面用水性オーバープリントワニス。
2. 【請求項２】 水性樹脂、アミノ樹脂、揮発性塩基性化
   合物、白色顔料および水から主としてなる缶外面用水性
   ホワイトコート剤中に、炭酸カルシウムおよび／または
   酸化亜鉛を当該缶外面用水性ホワイトコート剤の固形分
   に対して０．０１〜１０重量％含有させたことを特徴と
   する缶外面用水性ホワイトコート剤。