JP3381730B2 - 擬似餌およびその製造方法 - Google Patents

擬似餌およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、擬似餌およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、魚や他の水棲生物を漁獲する場
合には、天然餌を用いるが、近年においては天然餌の供
給量不足を補ったり、一定品質の餌を得るために擬似餌
を用いることが盛んに行なわれている。
【0003】本出願人は、例えば特公平2−31633
号公報、特公平2−35032号公報等において、より
高品質な擬似餌とその製造方法を提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記公
報記載の製造法によれば、溶融状態にある擬似餌の素材
を冷却することによりゲル化させて擬似餌を製造するも
のであるために、次のような不都合があった。
【0005】例えば、ゲル化させるためには、擬似餌の
素材を冷凍室内において約−30℃で5〜10時間程度
保持する必要があるので、バッチ式の製造方法とせざる
を得ず、擬似餌を連続的に製造することができなかっ
た。
【0006】従って、擬似餌の製造コストが高くなり、
また擬似餌の供給量が需要量を満たさないという不都合
があった。
【0007】本発明はこれらの点に鑑みてなされたもの
であり、擬似餌を連続的に製造することができ、製造の
ライン化が可能であり、製造コストが低廉となり、擬似
餌の供給量を需要量に応じて自由に調整することのでき
る擬似餌およびその製造方法を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、請求項1に記載の本発明の擬似餌は、表面が加熱凝
固性物質からなる被膜とされている擬似餌であって、外
周側の凝固していない加熱凝固性物質と中央側の肉部の
素材とを成形手段より当該成形手段外の加熱媒体内へ同
時に連続的に送給して、前記加熱凝固性物質を加熱媒体
内において瞬時に凝固させることにより前記表面の被膜
を連続成型可能として形成されていることを特徴とす
る。
【0009】また、請求項2に記載の本発明の擬似餌の
製造方法は、凝固していない加熱凝固性物質を外周側と
し肉部の素材を中央側として成形手段より当該成形手段
外の加熱媒体内へ同時に連続的に送給して、前記加熱凝
固性物質を加熱媒体内において瞬時に凝固させることに
より表面に被膜を連続的に形成して、表面が加熱凝固性
物質からなる被膜とされている擬似餌を製造することを
特徴とする。
【0010】
【0011】
【0012】
【作用】本発明の擬似餌によれば、加熱凝固性物質を有
しているために、擬似餌の素材を加熱することにより、
前記加熱凝固性物質を凝固させて擬似餌を製造すること
ができる。従って、擬似餌を連続的に製造することがで
きる。
【0013】また、加熱凝固性物質により擬似餌の被膜
部分を形成すると、内部に柔らかい物質を収納した高品
質な擬似餌を得ることができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1から図4を参照
にして説明する。
【0015】図1は本発明の擬似餌の一実施例を示す。
【0016】本実施例の擬似餌1は砂蚕に似せて製せら
れており、内部の肉部2の外表面に薄皮膜3を形成して
形状を維持するようにされている。
【0017】この肉部2は水溶性高分子物質、溶媒、誘
引物質および可塑剤を主体とする素材の混合物によって
形成されている。
【0018】素材中の水溶性高分子物質は擬似餌の基体
となる素材であり、ポリビニールアルコール、ポリエチ
レンオキシド、ポリアクリル酸ソーダ等の合成品や、カ
ルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の半合
成品や、グアガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラ
チン等の天然品等のあらゆるものを用いることができ、
これらの中から1種もしくは複数種選出して用いるとよ
い。
【0019】また、溶媒は水溶性高分子物質を溶融し、
他の素材との混合を促進し、前記水溶性高分子物質に対
する量を調整することにより擬似餌の内部の柔らかさ等
を適宜に調整するものである。
【0020】また、誘引物質は魚等を臭いによって擬似
餌の方へ誘引するものであり、誘引成分を有するもので
あればよく、例えばKXと称するオキアミエキスあるい
は天然物から抽出されたエキス類およびまたは化学合成
による誘引物質等が挙げられ、これらから必要に応じて
1種または複数種選択して用いるとよい。
【0021】また、可塑剤は、水溶性高分子物質と混合
された時に擬似餌全体の肉質の柔らかさを保持するため
のものであり、素材中の溶媒を内部に保持するため溶媒
に不溶で揮発し難い性質を有する溶剤等を用いるとよ
い。このような性質を有する可塑剤であればどれでも用
いることができるが、例えば魚油等が挙げられる。
【0022】また、前記各素材は複数の素材の性質を兼
ね備えるものを用いてもよい。例えば、溶媒は可塑剤の
役目も果すものであり、誘引物質の一種であるKXには
NaCl等の金属塩を含むものもある。
【0023】また、薄皮膜3は加熱凝固性物質により形
成されている。この加熱凝固性物質としては、不可逆点
以上に加熱されるとゲル化して凝固するものであればよ
く、例えば、武田薬品工業株式会社製の商品名カードラ
ンと称される合成樹脂が挙げられる。このカードランの
不可逆温度は約80℃である。
【0024】次に、前記擬似餌1の製造方法を説明す
る。
【0025】先ず、擬似餌1の肉部2の素材である水溶
性高分子物質、溶媒、誘引物質、可塑剤およびゲル化促
進剤をそれぞれ製造すべき擬似餌の感触等の性質に応じ
た分量として混合し、混合しながら加熱したり、混合後
に加熱して、水飴状の溶融物を製する。その後、この高
温な溶融物を冷却して、成型に適した温度の溶融物を製
する。
【0026】これまでの工程において、擬似餌の構成各
素材が均一に混合され、可塑剤が混合物から溶媒の放散
を抑えるようにして、擬似餌の基体の柔らかさを保有さ
せ得るようにする。
【0027】一方、擬似餌1の薄皮膜3の素材である加
熱凝固性物質を溶融状態とさせておく。
【0028】次に、加熱媒体としての温度が80℃以上
の温水中に、図示しないノズルより、肉部2の素材を中
央とさせ、薄皮膜3の素材を外周部とさせるようにし
て、押出し機や射出成形等の適宜の手段を用いて、同時
に押出したり射出する。
【0029】これにより、温水中に押出された両素材の
うち、外周側の加熱凝固性物質が不可逆点以上に加熱さ
れると、瞬時にゲル化して、凝固して、薄皮膜3が形成
される。肉部2の素材は、柔らかい状態に保持されてい
る。
【0030】このようにして、両素材の押出しを連続的
に行なうことにより、図1に示すような長尺な擬似餌1
が連続的に製造される。
【0031】その後、長尺な擬似餌1を適当な長さに切
断して容器内に収納する。
【0032】本発明の擬似餌1は、水溶性高分子物質、
溶媒、誘引物質および可塑剤を含んでいるため、柔らか
さや弾力性などの感触が例えば砂蚕等の環形動物と酷似
しており、また外表面には難溶性の薄皮膜3が形成され
ているために、全体形状が海水中等において前記環形動
物と似た形状のままで比較的長時間維持され、また前記
薄皮膜3を通して内部に含有されている誘引物質が滲出
し魚等が強力に誘引され、更に魚等が擬似餌1の一部を
食い千切った時に薄皮膜3内の肉部2が海水中等へ溶け
出したり、誘引作用が一層強くなりあたかも天然餌のよ
うに魚等に感じさせることができる。
【0033】また、水溶性高分子物質に対する溶媒の量
およびまたは可塑剤の量をそれぞれコントロールするこ
とにより、肉部を自在に柔かくしたり、硬くすることも
でき、天然餌の性質および形状の変化に応じて擬似餌1
の性質および形状も変化させられる。
【0034】なお、加熱媒体としては、前記温水の他
に、水蒸気、加熱空気、加熱オイル等を利用することが
できる。
【0035】この時、加熱凝固性物質は加熱温度が高い
程、ゲル化の強度が高くなる性質を有するので、製造し
ようとする擬似餌1の性質に応じて、加熱温度を設定す
るとともに、その加熱温度を達成するために最適な加熱
媒体を前記媒体中より選択するとよい。
【0036】次に、本発明の他の製造方法を説明する。
【0037】前記方法と同様にして擬似餌1の肉部2の
素材と薄皮膜3の素材とを溶融状態とさせておき、次
に、これらの素材を射出成形機や押出し機等の適宜の手
段を用いて、加熱されている雌型内の例えば天然餌の形
状に似せたキャビティ内に、肉部2の素材を内側にし、
薄皮膜3の素材を外側にして充填して成型する。
【0038】これにより、キャビティ内に押出された両
素材のうち、外周側の加熱凝固性物質が不可逆点以上に
加熱されると、瞬時にゲル化して、凝固して、薄皮膜3
が形成される。肉部2の素材は、柔らかい状態に保持さ
れている。
【0039】その後、擬似餌1を雌型より取出す。
【0040】このようにして製造された擬似餌1も、前
記実施例と同様に高品質のものとなる。また、本実施例
の擬似餌1は、図2に示すように、端部を切断しなくて
すむので、薄皮膜3が全体に形成されているために、よ
り天然餌に似た形状および感触等が得られたものとな
る。
【0041】また、前記各実施例においては、擬似餌1
の薄皮膜3のみを加熱凝固性物質により形成したが、前
記肉部2の素材と加熱凝固性物質とを混合させて全体を
肉部2の素材とし、その後に加熱して加熱凝固性物質を
凝固させて、肉部2の全体に加熱凝固性物質を混合させ
た擬似餌1を製造するようにしてもよい。
【0042】また、肉部2の素材としては、前記各実施
例のものに限定されるものではなく、擬似餌1の用途等
に応じて公知の物質より適当なものを選択するとよい。
【0043】また、加熱凝固性物質のみにより擬似餌1
を形成するようにしてもよい。
【0044】この様に本実施例によれば、擬似餌を連続
的に製造することができ、製造のライン化が可能であ
り、製造コストが低廉となり、擬似餌の供給量を需要量
に応じて自由に調整することができる。
【0045】次に、本発明の具体的な実施例を説明す
る。
【0046】本実施例における内容成分および分量は次
の通りである。
【0047】肉部2の特性: 1) 水溶性高分子物質としてポリビニールアルコール
を約100g 2) 溶媒として沸騰水を約500g 3) 誘引物質としてオキアミエキスを約300〜35
0g、その他の誘引物質約9〜10.5g 4) 可塑剤として魚油を約60〜105g 5) その他海藻エキスを約15〜17.5g 薄皮膜3の特性: 1) 加熱凝固性物質としてカードランを用いた。
【0048】この中でオキアミエキスとしては、水が7
5重量%、アミノ酸が10重量%、NaClが15重量
%のものを用いた。
【0049】そして、これらの素材を用いて次のような
工程に従って擬似餌1を製した。
【0050】一方の肉部2については、先ず、ポリビニ
ールアルコールと沸騰水とを攪拌混合して水飴状液を製
すると同時に、別個に他の素材の混合液を製する。
【0051】次に、前記水飴状液および混合液を攪拌混
合させて全体を均一に混合する。
【0052】次に、この混合物を加熱しながら攪拌混合
して前記各素材を一層均一に混合させて溶融物を製す
る。この場合の加熱度合は、各素材が均一に混合される
ようにするものであり、混合具合を調べながら適当な温
度まで上昇させればよく必要な場合には溶融物を沸騰さ
せるとよい。本実施例では溶融物を沸騰させたが、乳化
剤を用いた場合、混合を良くすることができるので、必
ずしも沸騰させなくてもよい。
【0053】次に、加熱を停止し、溶融物を成型に適当
な約40℃まで冷却させ、その温度を維持させる。
【0054】他方の薄皮膜3については、カードランを
加熱して溶融状態にしておく。
【0055】その後、加熱媒体としての温度が80℃以
上の温水中に、図示しないノズルより、肉部2の素材を
中央とさせ、薄皮膜3の素材を外周部とさせるようにし
て、押出し機を用いて、同時に押出す。
【0056】これにより、温水中に押出された両素材の
うち、外周側の加熱凝固性物質が不可逆点以上に加熱さ
れて、瞬時にゲル化して、凝固して、薄皮膜3が形成さ
れる。肉部2の素材は、柔らかい状態に保持されてい
る。
【0057】このようにして、両素材の押出しを連続的
に行なうことにより、図1に示すような長尺な擬似餌1
が連続的に製造される。
【0058】このようにして製せられた本実施例の擬似
餌1は、肉部2が前記した各素材を含んでいるため、柔
らかさや弾力性などの感触および形状が砂蚕と酷似して
おり、また外表面には加熱凝固性物質であるカードラン
が凝固した薄皮膜3が形成されているために、全体形状
が海水中等において砂蚕と似た形状のままで比較的長時
間維持され、また前記薄皮膜3を通して内部に含有され
ている誘引物質が滲出し魚等が強力に誘引され、更に魚
等が擬似餌1の一部を食い千切った時に薄皮膜3内の柔
らかい状態の肉部2が海水中等へ溶け出したり、誘引作
用が一層強くなりあたかも天然餌の砂蚕のように魚等に
感じさせることができる。
【0059】更に、ポリビニールアルコールに対する溶
媒の量を多くすることにより肉部2を柔らかくしたり、
少なくすることにより肉部2を硬めにすることができ、
砂蚕の性質の変化に応じて擬似餌1の性質も変化させる
ことができる。
【0060】なお、前記実施例においては、ポリビニー
ルアルコールおよび溶媒と他の素材とをそれぞれ別個に
混合した後に全体を混合するようにしたが、全素材を初
めから一緒に混合するようにしても前記実施例と同様な
優れた擬似餌1を製することができた。
【0061】また、前記各実施例の擬似餌1は前記の各
素材の混合物の単一物で形成されているが、例えば図3
に示すように、内部に形状維持用の芯材4を入れ、図4
に示すように、他の誘引物質5等を内部に注入してもよ
い。なお、芯材4に誘引物質を含浸させたり、天然餌を
そのまま芯材として用いてもよい。図3の芯材4は、成
型時に同時に封入するようにしたり、図1の単一物中に
挿入するようにしてもよい。
【0062】また、加熱凝固性物質としては、前記カー
ドランの他に、加熱した後に乾燥することにより完全に
凝固するような物質を用いてもよい。
【0063】また、本発明は前記各実施例に限定される
ものではなく、必要に応じて変更することができる。
【0064】
【発明の効果】このように本発明の擬似餌およびその製
造方法は構成され作用するものであるから、擬似餌を連
続的に製造することができ、製造のライン化が可能であ
り、製造コストが低廉となり、擬似餌の供給量を需要量
に応じて自由に調整することができる等の効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の擬似餌の実施例を示す一部切断斜視図
【図2】本発明の擬似餌の他の実施例を示す一部切断斜
視図
【図3】本発明の擬似餌の他の実施例を示す一部切断斜
視図
【図4】本発明の擬似餌の更に他の実施例を示す一部切
断斜視図
【符号の説明】
1 擬似餌 2 肉部 3 薄皮膜 4 芯材 5 誘引物質
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01K 85/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面が加熱凝固性物質からなる被膜とさ
    れている擬似餌であって、外周側の凝固していない加熱
    凝固性物質と中央側の肉部の素材とを成形手段より当該
    成形手段外の加熱媒体内へ同時に連続的に送給して、前
    記加熱凝固性物質を加熱媒体内において瞬時に凝固させ
    ることにより前記表面の被膜を連続成型可能として形成
    されていることを特徴とする擬似餌。
  2. 【請求項2】 凝固していない加熱凝固性物質を外周側
    とし肉部の素材を中央側として成形手段より当該成形手
    段外の加熱媒体内へ同時に連続的に送給して、前記加熱
    凝固性物質を加熱媒体内において瞬時に凝固させること
    により表面に被膜を連続的に形成して、表面が加熱凝固
    性物質からなる被膜とされている擬似餌を製造すること
    を特徴とする擬似餌の製造方法。
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