JP4435937B2 - 釣用疑似餌の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は釣用疑似餌、及びその製造方法に関する。本発明は更に詳しくは、バス類を代表とする捕食性の肉食魚を対象とする釣用疑似餌、及びその製造方法に関する。本発明はまた、その製造方法に使用できる、釣用疑似餌の製造用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
ルアーフィッシングと呼ばれる釣りの分野において、釣り人はルアーと呼ばれる疑似餌を用いる。ルアーは通常硬質、軟質のプラスティック又はゴム製であり、硬質のものはハードルアー、柔らかさと弾力を持たせて水中での動きを生き餌により似せたものはワーム又はソフトルアーと呼ばれている。
ルアーフィッシングは生き餌を使う釣りに比べて、餌の保存、管理に手間がなく、特に女性や子供に抵抗なく使えるため、スポーツとして人気がある。
ところが近年、プラスチックやゴムのハードルアー、ワームは、鳥や魚が誤飲した場合の害や、難分解性であるため環境の汚染になるなどの理由で社会問題となっている。この解決策として最近生分解性プラスティックの応用が始められてはいるが、やはり鳥や魚が誤飲した場合に容易に消化できるものではなく、土壌中において完全に分解されるのに数年から数十年はかかるため、根本的な解決には至っていない。
【0003】
従来、釣用疑似餌の素材として種々のものが提案されていて、コンニャク(特開平10−28493号公報、特開平10−191840号公報、特開平11−243813号公報)、ジェランガム(特開平11−46626号公報)、生分解性プラスティック(特開平11−75625号公報、特開平11−137127号公報、特開平11−169025号公報)などがある。コンニャクはアルカリ凝固性であって、成形するのにpHが制限され、また、手の込んだ加工ができないという問題点がある。
【0004】
従来既存のワームに似た物性を有する食品素材として、ゼラチン、寒天、カラギーナンなどの冷却凝固性ゲル化剤、低メトキシルペクチン、カラギーナンに代表される2価陽イオン反応性ゲル化剤、卵白などの熱凝固性ゲル化剤があるが、いずれも以下の要件を同時に満足するものはなかった。
▲1▼熱不可逆性があり、夏の炎天下、冬の寒さ、レトルト殺菌、冷蔵(冷凍)などに耐えられること。▲2▼物性の軟らかさ、弾力、強さが適当であること。▲3▼製造工程が容易で普及した設備を応用できること。▲4▼量産が容易であること。▲5▼水に長時間浸けても膨潤して脆くならないこと。
このような状況下、上記要件を満足する釣用疑似餌が求められてられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ゴム又はプラスティック製の疑似餌の代替品として、環境や生物に害の少ない食品素材を用い、しかもゴムやプラスティックに比べてまったく遜色のない軟らかく弾力のある物性を有する釣用疑似餌、及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、上記の従来技術にある不都合を回避した釣用疑似餌、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、カードランを用いてゲル化させることで良好な釣用疑似餌が製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、ゲル化したカードランを含んでなる釣用疑似餌に関する。本発明はまた、水100質量部に対してカードランを1〜15質量部混合し、得られた混合物を加熱によりゲル化させることを特徴とする釣用疑似餌の製造方法に関する。
本発明はさらに、カードランを含む釣用疑似餌の製造用キットに関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
カードランは、微生物 Agrobacterium biovar によってブドウ糖から生成される発酵多糖類であり、工業的な生産もなされている。カードランの加熱ゲル性を生かして食品業界では広く利用されており、食品添加物として認可されている。カードランは極めて毒性の低いものである。
カードランは白色、無臭の粉末で、市販されており、本発明には市販品を使用することができる。カードランの市販品の具体例として、「カードラン」、「カードランN」(いずれも武田薬品工業(株)製)などがある。
カードランは加熱ゲル化性を有するとともに、その水分散液を約80℃以上に加熱したときに熱不可逆性のゲルを形成することが知られている。
【0008】
カードランの水分散液の製造には、水100質量部とカードランを1〜15質量部、好ましくは3〜10質量部混合する。カードランが15質量部よりも多いと製品の柔軟さに劣り、1質量部よりも少ないと保形性に劣り製品が壊れ易くなる。
このとき、任意にスターチ類、例えばコーンスターチなど1〜10質量部加えてもよく、及び/又は、集魚剤を1〜20質量部添加してもよい。集魚剤としては、アミノ酸、核酸(例えば5'-リボヌクレオチド2Na、5'-イノシン酸Naなど)、魚のすり身あるいは内臓、イカ肝油、さなぎ油、フィッシュ・ソリュブル、ニンニク粉、食塩、糖類などがある。
さらに、食用色素を添加して任意の色に着色してもよい。色素の添加量は水100質量部に対して0.001〜0.5質量部程度である。
カードラン、スターチ類、集魚剤、食用色素を水に添加してもよいし、これらの原料をあらかじめ一緒にしておいて水を加えてもよい。
【0009】
上記の成分の混合には、せん断ミキシングを採用するのが好ましい。具体的にカッターミキサー、ジューサーミキサー又はホモジナイザーなどで激しく混合し、カードランの粒子を十分に分散膨潤させる。例えば家庭用ジューサーミキサー東芝MX−L20GAの場合(100V、255W、50−60Hz)、2〜5分程度のミキシングが適当である。
最終的に得られる混合物の粘度を3〜25ポイズとするのが適当である。混合物の粘度は、カードランの添加量、その他の材料の添加量、ミキシングの強さ、ミキシングの時間を適宜選択することで調整できる。粘度の測定にはRIONビスコテスター VT-04 粘度計を使用することができる。
こうして得られた混合物を、以下、生地とも称する。
【0010】
上記のようにして得られた混合物を、加熱によりゲル化させる。加熱によってゲル化させる手段としては、焼成機を用いて成形し、同時に加熱及びゲル化させる態様がある。
焼成機としては、一般的に焼型といわれるものを使用することができる。上記生地を、表面温度を適当な温度に調整した焼型に落とし込み、成形と同時に加熱、ゲル化させる。具体的に焼成機として、焼成兼成形機として普及しているタイヤキまたは人形焼、たこ焼などの焼成機を利用することができる。
或いは、連続式焼型に生地デポジッターを付属した自動化ラインに、所望の形の焼型を装備したものを利用することもできる。
生地のゲル化は焼型の外側よりゆっくり起こるためタイヤキや人形焼同様、内部に任意のものをつめたり、2側面を合わせる成形、あるいはタコヤキのように焼型の中で反転させて成形することが可能である。
その他、焼型にあらかじめ食用銀箔、バーミキュライトなどを散布しておき、その上に生地を落とし込むことにより、疑似餌の表面に任意の飾りを施すことができる。また、例えば眼球様のアクセントとなるものを埋めることもできる。さらに、一色の生地に限らず、複数の色の生地を使うことにより、任意に模様のある疑似餌を作ることも可能である。生地を落とし込むのに、注射器(針をはずしたもの)を使うこともできる。
【0011】
加熱によってゲル化させる手段としては、上記のような成形と同時に加熱、ゲル化させる焼型を備えた焼成機に限らず、鉄板やホットプレートのような平らな面を有する焼成機を使うこともできる。その上に、生地を広げて加熱し、途中で反転させ、厚さ3〜20mm程度の平板状のゲルを作成し、それを任意の形状にナイフでカットしたり、型を使ってくりぬいたりして疑似餌を作ることができる。
この方法においても、疑似餌に飾りやアクセントを付けたり、複数の色の生地を使用できるのは、上記の方法と同様に可能である。
【0012】
また、ホットプレートを用いて、そこへ、注射器(針をはずしたもの)から生地を任意の形に押し出し、適当に加熱した後、反転し、例えばミミズ状の疑似餌を作ることもできる。或いは、ホットプレート上に任意の形の金属製抜き型を置いて、そこへ生地を注入して、成形、ゲル化させることもできる。
【0013】
使用する生地の粘度は、上述のとおり3〜25ポイズが適当である。25ポイズを超えると流動性がないため作業中生地切れが悪く、加熱する際に伸びが悪い。一方3ポイズ以下では作業中又はデポジッターに入れた際、たれ落ちが激しく作業性が悪い。
加熱温度や加熱時間は、必要十分なゲル化が起きるように選択することができるが、焼成機の表面温度は一般に90〜160℃とするのが適当で、好ましくは110〜140℃である。このような温度では、一般的に生地15gにつき3〜5分間ほどでゲル化が完了する。焼成機の表面温度が90℃よりも低いとゲル化が起こらないか、又はゲル化するのに時間がかかる。160℃よりも高温では、生地を落としたときに焼成機との接面で沸騰が起こり、製品表面が荒れてしまう。
製品焼成時の焦げ付きを防止するために、離型油や食用油脂をあらかじめ焼型や焼成機の表面に塗布するとよい。
本発明の方法により製造された釣用疑似餌は、常法によりフックなどを取り付けて、釣りに使用することができる。
【0014】
本発明はまた、カードランを含む、釣用疑似餌の製造用キットに向けられている。カードランはそのままで、あるいは容器に入れてキットに収めることができる。該キットには、カードラン単独を添付してもよいし、任意に、上記に説明したスターチ類、集魚剤及び食用色素から粉末状のものを選んで少なくとも1種を添加してもよい。この場合、カードラン1〜15質量部に対して、スターチ類1〜10質量部、集魚剤1〜20質量部、食用色素0.001〜0.5質量部が適当である。または、上記各原料を別包として添付してもよい。
本発明の釣用疑似餌の製造用キットにはその他、ピンセット、注射器、焼型等を含めることができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明の釣用疑似餌は、カードランの特性により熱不可逆性のゲルであるため、高温や冷蔵に対し安定している。また、長時間水に浸けても物性が安定している。また、環境や生物に害がなく、ゴムやプラスティック製に劣らない好ましい軟らかさ、弾力、強さなどを発揮する。本発明の釣用疑似餌の製造方法によれば、簡便に上記のような釣用疑似餌を量産することが可能である。さらに、本発明の釣用疑似餌の製造用キットによれば、簡便に良好な釣用疑似餌を家庭においても製造することができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって、より具体的に説明する。
【実施例1】
下記に示す組成をジューサーミキサーによって1分間、激しく攪拌し、粘度が12ポイズの生地を得た。
水 400g
カードラン 24g
グルタミン酸ナトリウム 8g
核酸(5'-リボヌクレオチド2Na) 0.2g
食塩 8g
ワキシーコーンスターチ 20g
【0017】
この生地を、焼き物用機械の表面温度130℃に調整した焼型に落とし込み焼成した。焼型は体長8cmの小魚型であって、タイヤキと同じく2側面を反転によって合わせる方式を採った。すなわち第一側面に生地を充填して5分間焼成後、第二側面に生地を充填し、直ちに焼成が終わった第一側面の生地を反転させて、まだゲル化していない第二側面の生地に重ね合わせる。そのまま第二側面を5分焼成し製品を焼型から取り出した。完成した製品はコンニャク様の弾力と柔軟さを有し、良好な物性であった。
【0018】
【実施例2】
実施例1の生地にさらに0.01gの食用ラック色素を用いて赤色の色を付けた生地を調製し、注射器に充填した。
実施例1で生地焼成中2側面を合わせ成形をする前に、注射器を用いてこの着色生地を頭部から尾部にかけ線状に注入した。できあがった疑似餌は、内部に赤色の線状模様のある製品となった。
【0019】
【実施例3】
実施例2と同様の作業途中、焼型に生地を落とし込んで直ちに小魚の目の位置にブラックペッパーの身を埋め込んだ。できあがった疑似餌は、眼球用のアクセントがある製品となった。
【実施例4】
実施例3と同様の作業中、焼型に生地を落とし込む前に、食用銀箔を焼型の上に散布した。できあがった疑似餌は、表面にうろこ状の光沢があるものであった。
【0020】
【実施例5】
あらかじめ以下の組成の粉末原料を混合し、混合物Aとした。
カードラン 24g
グルタミン酸ナトリウム 8g
核酸(5'-イノシン酸Na) 0.2g
食塩 8g
ワキシーコーンスターチ 20g
食用ラック色素 0.005g
混合物Aすべてをジューサーミキサーに投入し、400ccの水を加え、1分間混合した。
【0021】
できあがった生地を注射器にとり、あらかじめ130℃に調整したホットプレート上に5cm程の線状に押し出した。このまま3分間焼成し、生地を反転して更に2分間焼成したところ、ミミズ様の形状と、コンニャク状物性を有する疑似餌を得た。
また、ホットプレート上に5cmの小魚型の金属製抜き型をおき、その中に生地を注入しそのまま3分間焼成した。3分経過後、抜き型を外し、生地を反転させ、更に2分間焼成したところ、小魚の形状とコンニャク様の弾力を有する疑似餌を得た。
【0022】
【参考例】
実施例4と同様の工程で作られた疑似餌を神奈川県の丹沢湖に持ち込み、フィールドテストを行ったところ、以下の結果を得た。
フィールド条件(フィールドテスト時)
天候
表面水温:18℃前後
時間帯:午前6時〜同日午前10時
タックル
ロット:UFM SS−77
リール:アルテグラ3000
ライン:東レ ソラロームII 6 lb
フック:シングルフック
【0023】
疑似餌はノーシンカーにてテストした。丹沢湖は人造湖のため、ガレ場が多く、立ち木は少ない。特に減水が激しかったため、バックウォーターならびに急深なガレ場を中心に陸より行った。
釣果(体長)
30cm未満 1匹(26.3cm)
30cm以上35cm未満 2匹(34.1cm、33.7cm)
35cm以上40cm未満 0匹
40cm以上45cm未満 1匹(41.5cm)
45cm以上50cm未満 1匹(47.6cm)
50cm以上 0匹
Claims (4)
- 水100質量部に対してカードラン3〜10質量部を混合し、ビスコテスター粘度計により測定した粘度が3〜25ポイズである混合物を得て、該混合物を加熱によりゲル化させることを含み、該加熱に焼成機を用い、該焼成機の表面温度を110〜140℃とする、釣用疑似餌の製造方法。
- 水100質量部に対してカードラン6質量部を混合する、請求項1記載の釣用疑似餌の製造方法。
- 該焼成機が、焼型を備えた焼成機又はホットプレートである、請求項1又は2記載の釣用疑似餌の製造方法。
- 該焼型を備えた焼成機がタイヤキ、人形焼又はたこ焼きの焼成機である、請求項3記載の釣用疑似餌の製造方法。
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