JP3380346B2 - 半導体レーザ装置の共振器形成方法 - Google Patents

半導体レーザ装置の共振器形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体レーザ装置の作
製方法に関し、特に、半導体レーザ装置の共振器構造を
形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体レーザ装置は、例えば背面電極を
設けた基板結晶の表面上に、有機金属気相成長法、分子
線成長法などで半導体化合物結晶層を順にエピタキシャ
ル成長させ、この多層結晶から導波路を形成し、または
その上に例えばストライプ状となるように電極を形成し
半導体レーザ構造となし、その後、基板または多層結晶
の劈開を利用して導波路の両端の共振器を形成し、共振
器の端面保護層を形成して、作成される。
【0003】半導体レーザ装置の作製に用いられている
エピタキシャル成長したGaAs系結晶自体や、GaAsウェハ
ー基板は、明確な劈開性を有している。したがって、共
振器形成工程においては、レーザ構造が形成されたGaAs
ウェハーに、所望寸法(共振長)間隔に溝を掘り、それ
に応力を加え、溝に沿って割るだけで比較的容易に原子
レベルの精度の平行平滑な劈開面を得ることが可能であ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、大きいバンドキ
ャップ(3.4eV)を有するGaN系材料を半導体レーザ装置
として用いる試みがなされており、すでにLEDでは応用
されている。しかし、このGaN系材料を半導体レーザ装
置に用いるためには少なくとも2つの課題が残されてい
る。
【0005】第1に、GaN系材料は、その化学的安定性
が高いため、湿式及び乾式を問わずエッチング耐性が非
常に高く、またその硬度もかなり高いため、基板上での
機械加工が困難である。これは、リソグラフィ、エッチ
ングを用いたレーザ装置のような導波路素子や微細構造
の形成には難点となる。第2に、格子整合や欠陥防止の
ために、GaN系材料薄膜の成膜に用いられている基板の
多くがサファイヤであるが、サファイヤ基板に明確な劈
開性がなく、サファイヤの劈開による共振器の対向反射
鏡対の形成がほぼ不可能である。
【0006】すなわち、従来の劈開性を利用する共振器
形成方法では、基板及びその上のレーザ結晶共に劈開性
を備え、かつ基板の劈開方向とエピタキシャル成長によ
るレーザ結晶の劈開方向が一致するような状態で成長す
る組合せ以外は、共振器を構成できない。GaN系半導体
レーザ用の基板としては、今までのところ成膜された膜
の結晶の品質上ではサファイヤ基板が最も優れており、
現状ではサファイヤ基板を他の基板に替えることは難し
い。
【0007】本発明の目的は、基板及びその上のレーザ
結晶共に劈開性を用いることなく半導体レーザ装置の共
振器を形成できる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明の半導体
レーザ装置の共振器形成方法においては、基板上に形成
されかつ共振器を形成すべき端面を有した半導体レーザ
構造を、未硬化の樹脂で包埋し、前記樹脂を硬化させる
保護工程と、前記共振器を形成すべき端面を、硬化した
前記樹脂と共に研磨する研磨工程と、研磨された前記端
面上に薄膜を成膜する工程と、前記樹脂を除去する工程
と、を含むことを特徴とする。
【0009】さらに、本発明の半導体レーザ装置の共振
器形成方法は、基板上に形成されかつ共振器を形成すべ
き端面を有した半導体レーザ構造を、未硬化の樹脂で包
埋しかつ、ダミー基板により前記半導体レーザ構造と共
に前記基板を挟持し、前記樹脂を硬化させる保護工程
と、前記共振器を形成すべき端面を前記ダミー基板及び
硬化した前記樹脂と共に研磨する研磨工程と、研磨され
た端面上に薄膜を成膜する工程と、前記ダミー基板及び
前記樹脂を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】上記共振器形成方法における共振器を形成
すべき端面は、前記基板を、切断機によって、レーザ光
が導波すべき前記半導体レーザ構造の伸長方向と切断面
とが略垂直になるように、切断して形成される。上記共
振器形成方法における保護工程は、前記半導体レーザ構
造を前記未硬化の樹脂で包埋しつつ、同一寸法の前記基
板の複数枚を積層する工程や、さらに積層した前記基板
を前記ダミー基板により挟持する工程を含む。
【0011】
【作用】本発明の方法によれば、共振器を形成すべき研
磨端面を除きレーザ導波路の側面及び電極が樹脂によっ
て包埋され、包埋状態で、所定光学コート薄膜を当該端
面に成膜し、その後包埋用樹脂を除去することにより、
当該導波路側面への光学コートの回り込みのない端面鏡
コーティングを形成できる。さらに、基板及びその上の
レーザ構造の結晶に劈開性を有していなくとも共振器を
構成できる。
【0012】
【実施例】以下、本発明による実施例を図を参照しつつ
さらに詳細に説明する。サファイヤなどの基板ウェハー
上に複数のレーザ導波路を形成し、各レーザ導波路の伸
長方向に伸長する電流注入用の電極ストライプをパター
ニングした基板を用意する。
【0013】電極パターニング済のウェハーを、切断機
であるダイシングマシン(dicing machine)を用いて、
図1に示すように、基板1上にアレイ状にレーザ導波路
構造2が並置した例えば10×1×0.3mm3程度の大
きさのバーチップ3に研削、切断する。このとき、電極
ストライプまたは導波路の伸長方向(レーザ光が導波す
る方向)と切断面とが略垂直になるようにダイシングマ
シンを調整して、切断面として共振器を形成すべき端面
2aを形成する。このときの電極ストライプ2bの伸長方
向と切断面の端面2aとがなす垂直の研削精度は、ダイ
シングマシンの精度によって決定され、垂直から通常0.
01°程度の範囲が見込める。
【0014】次に、バーチップをダイシングマシンの切
削台座から取り外して洗浄する。洗浄においては、バー
チップの台座への固定にワックスや接着剤を用いた場合
には、それらを含め全ての汚れを有機溶剤や洗浄剤を用
いて除去する。一方、ダミー基板をバーチップと同一サ
イズに切り出し作成する。ダミー基板の材料には、研磨
レートが上記基板ウェハー及びレーザ導波路と大きく異
ならないような材料、例えばサファイヤ、セラミックス
などが用いられる。
【0015】次に、図2に示すように、2枚のダミー基
板4の間にバーチップ3を配し、未硬化の樹脂5をそれ
らの間に供給して、電極を含む半導体レーザ構造の共振
器を形成すべき端面2aが露出してダミー基板と面一と
なるように、図3に示すように、貼合わせる。すなわ
ち、共振器を形成すべき端面を有した半導体レーザ構
造、少なくとも当該端面以外の部分を未硬化の樹脂で包
埋する。このとき、図3に示すように、バーチップにお
けるレーザ導波路及び電極ストライプが形成された装置
面がダミー基板に樹脂を介して接するように、ダミー基
板4とバーチップ3とを貼り合わせ一体化する。バーチ
ップの保護のために装置面の裏面側もダミー基板と接着
し、一対のダミー基板によってバーチップを挾み込む様
にするのが望ましい。
【0016】未硬化の樹脂5は、ゴム系、エポキシ系、
アクリル系接着剤などの接着剤、または熱硬化樹脂、ま
たはワックスのような熱で溶解できる樹脂、さらにフォ
トレジストを含む光硬化樹脂などのように、乾燥、加
熱、感光などの手段により、液状樹脂が凝固する材料を
用いる。樹脂は、半導体結晶表面及び電極ストライプを
圧する部分でもあるので、それらを損傷させないよう
に、半導体結晶及び電極材料より硬度が低い範囲で、で
きるだけ高い硬化硬度の樹脂が好ましい。樹脂は、その
未硬化状態の粘度ができるだけ低く、バーチップに対す
る濡れ性が高いものが好ましい。未硬化樹脂を溶液形態
で用いる場合、その溶媒は、バーチップの剥離及び樹脂
の除去だけでなく、装置の洗浄にも関るので、通常の半
導体プロセスで洗浄に用いられるアセトン、エタノー
ル、IPA、トリクレン、無リン洗浄剤などが望まし
い。硬化した樹脂の溶解除去は、ダミー基板及びバーチ
ップの一体物を浸漬、加熱浸漬、超音波洗浄器による振
動の印加などの手法で硬化樹脂を溶媒中に溶解すること
で行うこともできる。このように、バーチップとの硬度
差を小さくする硬化強度、隙間を埋めるために必要な低
粘度及び高い濡れ度並びに、研磨液には侵食されず除去
溶媒への溶解度を有する条件を満たす樹脂が用いられ
る。具体的樹脂として例えば、メチルメタクリレート
(主成分)及びN,Nジメチルトルイジン(溶媒)からな
る樹脂剤(以下、BA剤という)を用いる。このBA剤
は、バーチップに対する接着性に富み乾燥による硬化が
速く、アセトンに可溶であるなど有利な特性を有してい
る。
【0017】また、バーチップの裏面は平滑面であるの
で、別のバーチップの装置面とこの裏面が接するよう
に、複数のバーチップを貼り合わせ、ダミー基板によっ
て複数バーチップを挾み込むことも可能であり、これに
より、一回の研磨で多くのバーチップが処理できる。次
に、上記手段により未硬化樹脂が硬化して固定した状態
で、ダミー基板とバーチップとが一体となったものを、
研磨装置を用いて研磨する。
【0018】図4に示すように、研磨装置の回転研磨定
盤の一対の研磨治具6間に、ダミー基板4及びバーチッ
プ3の一体物を、それら接着面と垂直方向に圧する状態
で固定する。この研磨治具6には、図4に示すように、
ダミー基板及びバーチップの削りしろ程度の処理部10
を外部に突出させ固定する。このために、研磨装置は、
研磨治具6を挟持して固定できる機構(図示せず)を有
する。
【0019】図5に示す研磨装置の回転式研磨定盤7
は、Fe,Cu,Sn,ステンレスなどの金属またはこ
れらの複合材若しくは化合物からなる円盤、または円盤
表面にナイロン、アクリルなどの合成繊維布を張りつけ
た円盤である。固定されたバーチップの一体物につい
て、光学研磨定盤と当たりをつけるため、研磨シート、
研磨砥石などを用い、粗研磨及び面出しなどの処理を行
う。ここで、ダミー基板によって樹脂5を介してバーチ
ップの装置面と裏面とを接着しているので、研磨治具6
によるバーチップ3の圧着時おける治具の僅かな歪みに
よる応力や選択成長部での膜厚差で生ずるバーチップへ
の圧力ムラを緩和し、バーチップの破壊を避けることが
できる。
【0020】図5に示すように、研磨砥粒液11を定盤
上に滴下しつつバーチップの一体物(破線)の突出する
処理部10の端面2aを回転研磨定盤7の表面へ接触さ
せて、光学研磨する。まず、研磨砥粒液11は無機質の
微粒子、ダイヤモンド、アルミナ、シリコンカーバイ
ド、セラミックなどの硬質材料の微粒子の砥粒(粒径1
0マイクロメートル以下)を水などの液体中に拡散した
溶液である。この研磨液の液体には、包埋用有機樹脂に
影響しない水、または潤滑油、または界面活性剤を用い
る。
【0021】定盤回転中、バーチップの処理部分10と
定盤7が接しその部分に圧力が加わるように研磨治具に
適当な重石他の負荷をかけ、バーチップの一体物が定盤
の回転に抗して定盤の一半径上の一定の位置に静止する
ように、一体物を保持する。研磨装置は、定盤の内周と
外周の線速度差に起因して研磨治具が定盤の回転に対し
て自転自在となるような自転機構12を有する。さら
に、研磨装置は研磨治具が定盤の半径内で中心付近と最
外周付近との間にて揺動する揺動機構を備えてもよく、
または自転機構及び揺動機構を備え、これらを併用する
ことは、定盤の偏摩耗抑止や研磨面の均一性の向上に有
効である。
【0022】定盤がその成分材料中に硬質材料の微粒子
すなわち砥粒が含有されているような場合は、その上に
水または界面活性剤を含む水を滴下して、上記と同様に
研磨できる。この場合、バーチップを水に曝すことが不
可である場合、水を用いなくとも適当な液体を選んで研
磨が可能となる。全研磨工程では、少なくとも2種類以
上の粒径の砥粒を用いることで工程に要する時間を短縮
できる。サファイヤもGaNもかなり硬度が高くダイヤモ
ンドとの硬度差が大きくないため、研磨中にそれらが衝
突する速度によっては大きくバーチップが欠けてしまい
処理端面が荒れてしまう。これを防止するためには、回
転定盤の回転速度は極めて低い速度で行わないと平滑面
は得られない。研磨定盤の回転は、GaNやサファイヤの
ような硬質材料のバーチップ端面の小さい領域を研磨す
る場合、バーチップと定盤の接触部での相対線速度は15
0cm/秒以下が好ましい。粒径 0.01〜数10マイクロメ
ートルの砥粒を使用する場合、相対速度範囲は3cm/秒
以上150cm/秒以下が適当である。
【0023】次に、光学顕微鏡で観察(200から1000倍
程度)して、研磨面2aに条痕が見られない状態にまで
仕上げが進んだら、そのままの状態で洗浄する。レーザ
導波路の研磨端面に垂直な側面は、いずれもBA剤によ
って覆われており、研磨端面だけが外部に露出してい
る。洗浄剤は、バーチップとダミー基板との貼合わせに
用いた硬化樹脂を溶解したり、侵食したりしないものを
用いる。このとき、超音波洗浄を併用することも可能で
ある。
【0024】さらに洗浄剤の付いた清浄な払拭布(ベン
コット)で研磨面の汚れを完全に除去する。特に、共振
器端面部については、顕微鏡を用いるなどして、端面の
清浄度を確認しておくことが好ましい。図9に示すよう
に、研磨工程終了時のダミー基板4に挟まれたバーチッ
プ3の一体物の共振器の端面2aは、鏡面の如き平滑面
となり、かつその端面と面一に周りが樹脂5で固められ
た状態となっている。図示するように、基板1上のレー
ザ導波路2及び電極ストライプ2bが樹脂5中に端面2a
を除き埋め込まれている。
【0025】研磨時の包埋用硬化樹脂とバーチップ端面
との同一平面性については、高低差はサブミクロンメー
トルオーダー程度有る場合もあるが、端面の面ダレはS
EM観察の結果では生じないことを確認している。研磨
面の平滑度は、プローブ接触式粗さ計での測定の結果で
は、実際に光が反射される活性層付近研磨面でその光の
波長の20分の1以下の値が確保され得る。ダミー基板
を用い研磨面積を広げることにより、処理後のバーチッ
プ長手方向と電極ストライプとの垂直度は90±0.0
2°で、導波路と研磨面の垂直度は90±0.5°以内
に収めることができる。レーザ装置の光を発生する活性
層は、端面エッジから数マイクロメートルのところにあ
るため、端面の面ダレは活性層の端面の有効反射率を低
下させるので、この面ダレはないことが好ましいが、本
発明によりこれを防止できる。
【0026】次に、図6に示すように、この端面2a及
び樹脂面に、酸化や光学的破壊から保護するための端面
保護コート、高反射コート若しくは無反射コートなどの
光学コート13を蒸着またはスパッタリングなどの方法
によって成膜する。研磨端面に垂直なレーザ導波路側面
は、いずれもBA剤5によって覆われているので、レー
ザ装置の特性悪化をもたらす端面コートの装置表面への
回り込みを完全になくすことができる。通常、コーティ
ングに用いる材料は、例えば、A1、Auなどの金属、
若しくはSiO2、TiO2などの酸化物である。
【0027】その後、図7に示すように、所定溶剤浴1
6内のレーザ導波路周りの包埋樹脂のみを溶解する有機
溶剤17内にダミー基板4に挟まれたバーチップ3の一
体物を浸漬することによって、樹脂5を溶かして除去
し、ダミー基板4をバーチップ3から分離する。樹脂が
例えばBA剤では有機溶剤のアセトンによって除去す
る。このとき、超音波洗浄を併用することも可能であ
る。
【0028】このようにして、鏡面処理が終了して、図
8に示すような、片端面に光学コート13を備えたレー
ザ装置を備えたバーチップを得る。共振器では、もう一
方の端面も鏡面処理する必要があるので、図4に示すよ
うに、ダミー基板及びバーチップの一体物を挾んでいる
研磨治具をどちらの側からでも固定でき反転できるよう
になし、処理部を両端に設けることで、バーチップを研
磨治具から取り外すことなく、片端面のコーティング直
後、ただちにバーチップ3を反転させ、もう一方の端面
の研磨処理に移行できる。
【0029】レーザ装置の共振器の両端面の鏡面処理を
終了後、洗浄剤で洗浄して処理終了となる。上記実施例
では、GaN系半導体レーザ装置について述べたものであ
るが、他の半導体レーザ装置や誘電体光学素子にも、条
件や使用材料を適切に選べば、適用可能である。
【0030】上記実施例では、ダミー基板を用いている
が、ダミー基板を用いずに半導体レーザ装置の共振器を
形成する他の方法もある。すなわち、研磨装置の研磨治
具の挟持面を柔らかい弾性体により形成して、バーチッ
プ基板上の共振器を形成すべき端面を有した半導体レー
ザ構造を未硬化の樹脂のみで包埋し、そのまま樹脂を硬
化させ、バーチップをかかる研磨治具により直接把持さ
せて前記端面を硬化樹脂と共に研磨することもできる。
また、バーチップの複数をその装置面側にて積層して、
複数の端面を研磨することもできる。研磨工程の後、前
記実施例と同様に、研磨された端面上に光学コート薄膜
を成膜し、硬化樹脂を除去することにより、レーザ装置
の共振器片端面の鏡面処理をなすことができる。
【0031】GaN系半導体レーザ装置の共振器を形成す
る方法において、従来の劈開方法と本実施例の光学研磨
方法とにより、得られたものの比較実験を行った。劈開
によって形成された共振器端面と本実施例の光学研磨に
よって得られた共振器端面との状態を図10及び図11
に示す。図10に示す劈開で得られた端面は、膜面に垂
直な方向にほぼ一定の幅で縞状の凹凸が残っており、共
振器鏡面として機能しないことが分かった。一方、本実
施例の光学研磨によって得られた共振器端面の研磨され
た面はかなり平滑であり、前者に比べ大幅に改善されて
いることが分かった。
【0032】本実施例の光学研磨によって得られた共振
器端面の平滑度を測定すると、平均粗さで33オングス
トロームでレーザ共振波長の10分の1以下の粗さで面
が形成されていることが分かった。共振器の寸法精度は
共振器鏡対の平行からのずれは0.05°共振器面と電極ス
トライプとの垂直からのずれは0.3°以内であって、共
振器としての動作には影響しなかった。また、共振器端
面のエッジに近い活性層の垂直度は0.5°以内であり、
有効反射率の低下には殆ど影響しない。
【0033】次に、同一半導体レーザ構造(Al0.2Ga0.8
N/Ga0.9In0.1N)のウエハーから、従来の劈開のみで作
製した共振器を有するGaN系半導体レーザ装置の場合
と、光学研磨及び90%−70%の高反射コーティング
を併用し作製した場合と、の光励起パワー(Excitation
Power(%))に対する発光強度(%)を比較した。その
結果を図12に示す。図示するように本実施例の光学研
磨によって得られた共振器の半導体レーザ(曲線A)
は、従来の劈開のみで作製した半導体レーザ(曲線B)
に比べて、出力効率の増加及びしきい値(曲線Aのしき
い値がa、曲線Bのしきい値がb)の低下が認められる。
【0034】一方、包埋用樹脂を介さずに複数のバーチ
ップを単に積層しただけでは、バーチップ装置面のレー
ザ導波路構造はエピタキシャルによる選択成長部がステ
ップ状凹凸であるため、バーチップ及びダミー基板間に
隙間が生じてしまい、そのまま光学コート薄膜を成膜し
た場合、間隙からレーザ導波路側面へ光学コート薄膜が
回り込むという問題が生じる。この光学コート薄膜の側
面への回り込みは、コート材料が電気伝導性をもつ場
合、電極と接触することで、注入キャリアがコートに流
れアノードとカソードが短絡すること、回り込んだコー
トの端面エッジ付近の形状が平面状ではなくなるため均
一コート厚が得難く、エッジ付近から出射される光を散
乱し、結合すべきファイバーなどへの結合効率を低下さ
せること、などのレーザ装置の性能へ悪影響をおよぼ
す。特に光学コートが多層膜では、膜厚が厚いこと、及
び要求膜厚精度が高いため、影響が顕著となる。
【0035】しかしながら、本発明によれば、包埋用樹
脂とともにバーチップ端面研磨を行っているので、光学
コート薄膜の回り込み成膜が防止される。さらにまた、
包埋用樹脂を介さずにバーチップ装置面を単に積層した
だけでは共振器を形成すべき端面のエッジ付近の面ダレ
の原因となるが、本発明によれば、上記の如くはほとん
ど面ダレが生じない。バーチップの隙間を埋める樹脂が
存在するからである。
【0036】このように、本発明は、レーザ構造が成膜
されるべき基板及びそれに担持されるレーザ構造の結晶
に明確な劈開性がなく、レーザ装置共振器構造の形成が
ほとんど不可能な構造に応用できる。すなわち、基板、
レーザ結晶共に劈開性を備え、かつそれらのエピタキシ
ャル関係が劈開方向が一致するような状態で成長する組
合せ以外は従来の方法で共振器を構成できないので、そ
のような場合、本発明の共振器形成方法が有効となる。
現在発光用の半導体材料として応用されている半導体結
晶は劈開性を備えているものが多いが、いずれかが劈開
性を有していても応用できることは明らかであり、劈開
を利用する共振器の形成に加えて、新たな共振器形成方
法が増えることは、形成材料の選択の自由を拡大させる
ことになる。
【0037】例えば、基板では、サファイヤ以外の非劈
開性基板として、IV族半導体材料としても知られている
六方晶系のSiCを基板とすることもできる。一般に六
方晶系結晶基板は明確に劈開性が現れないが、本発明に
よれば、この劈開性の弱い基板の装置であっても共振器
を形成できる。
【0038】
【発明の効果】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成
方法によれば、共振器を形成すべき研磨された端面を除
き樹脂によってレーザ導波路の側面及び電極を包埋し、
包埋状態で、所定光学コート薄膜を当該端面に成膜し、
その後包埋用樹脂を除去するので、研磨端面の面ダレ並
びに薄膜の当該側面への回り込みのない共振器端面鏡コ
ーティングを形成できる。さらに、基板及びその上のレ
ーザ構造の結晶に劈開性を有していなくとも共振器を構
成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成方法に
おけるバーチップの部分拡大斜視図である。
【図2】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成方法に
おけるバーチップ及びダミー基板の部分拡大斜視図であ
る。
【図3】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成方法に
おけるバーチップ及びダミー基板の一体物の部分拡大斜
視図である。
【図4】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成方法に
おけるバーチップ及びダミー基板の一体物が研磨治具に
挟持されたものの部分拡大斜視図である。
【図5】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成方法に
おけるバーチップ及びダミー基板の一体物が装着された
研磨装置の斜視図である。
【図6】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成方法に
おけるバーチップ及びダミー基板の一体物の部分拡大斜
視図である。
【図7】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成方法に
おけるバーチップ及びダミー基板の一体物が浸漬される
溶剤浴の斜視図である。
【図8】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成方法に
より得られた共振器を有するバーチップの部分拡大斜視
図である。
【図9】本発明の半導体レーザ装置の共振器形成方法に
おけるバーチップの研磨処理後の加工面の部分拡大図で
ある。
【図10】劈開によって形成された共振器端面を撮影し
た図面代用顕微鏡写真である。
【図11】本実施例の光学研磨によって得られた共振器
端面を撮影した図面代用顕微鏡写真である。
【図12】従来の劈開のみで作製した共振器を有するGa
N系半導体レーザ装置の場合と、本実施例の光学研磨及
び90%-70%の高反射コーティングを併用し作製し
た共振器を有するGaN系半導体レーザ装置の場合と、の
光励起パワーに対する発光強度の関係を示すグラフであ
る。
【主要部分の符号の説明】
1 基板 2 レーザ導波路 3 バーチップ 4 ダミー基板 5 樹脂 6 研磨治具 7 回転式研磨定盤 13 光学コート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 赤崎 勇 愛知県名古屋市西区浄心1丁目1番38− 805 (56)参考文献 特開 昭58−125886(JP,A) 特開 昭61−70780(JP,A) 特開 昭61−121486(JP,A) 特開 昭61−150395(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01S 5/00 - 5/50 JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体レーザ装置の共振器を形成する方
    法であって、基板上に形成されかつ共振器を形成すべき
    端面を有した半導体レーザ構造を、未硬化の樹脂で包埋
    し、前記樹脂を硬化させる保護工程と、前記共振器を形
    成すべき端面を、硬化した前記樹脂と共に研磨する研磨
    工程と、研磨された前記端面上に薄膜を成膜する工程
    と、前記樹脂を除去する工程と、を含むことを特徴とす
    る方法。
  2. 【請求項2】 前記共振器を形成すべき端面は、前記基
    板を、切断機によって、レーザ光が導波すべき前記半導
    体レーザ構造の伸長方向と切断面とが略垂直になるよう
    に、切断して形成されることを特徴とする請求項1記載
    の方法。
  3. 【請求項3】 前記保護工程は、前記半導体レーザ構造
    を前記未硬化の樹脂で包埋しつつ、同一寸法の前記基板
    の複数枚を積層する工程を含むことを特徴とする請求項
    1または2記載の方法。
  4. 【請求項4】 半導体レーザ装置面の共振器を形成する
    方法であって、基板上に形成されかつ共振器を形成すべ
    き端面を有した半導体レーザ構造を未硬化の樹脂で包埋
    しかつ、包埋された半導体レーザ構造を担持する前記基
    板の装置面に、半導体レーザ構造を担持する他の同寸法
    の基板の背面又は同寸法のダミー基板を、対向せしめる
    ように合わせて前記基板を挟持し、前記樹脂を硬化させ
    る保護工程と、前記共振器を形成すべき端面を前記ダミ
    ー基板及び硬化した前記樹脂と共に研磨する研磨工程
    と、研磨された端面上に薄膜を成膜する工程と、前記ダ
    ミー基板及び前記樹脂を除去する工程と、を含むことを
    特徴とする方法。
  5. 【請求項5】 前記共振器を形成すべき端面は、前記半
    導体レーザ構造を形成したウエハ基板を、切断機によっ
    て、レーザ光が導波すべき前記半導体レーザ構造の伸長
    方向と切断面とが略垂直になりかつ向い合う切断面が平
    行となるように切断され、形成されることを特徴とする
    請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記保護工程は、前記半導体レーザ構造
    を前記未硬化の樹脂で包埋しつつ、同一寸法の前記基板
    の複数枚を積層し、積層した前記基板を前記ダミー基板
    により挟持する工程を含むことを特徴とする請求項4ま
    たは5記載の方法。
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