JP3379938B2 - 圧延用スリーブロール - Google Patents

圧延用スリーブロール

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JP3379938B2
JP3379938B2 JP2000165400A JP2000165400A JP3379938B2 JP 3379938 B2 JP3379938 B2 JP 3379938B2 JP 2000165400 A JP2000165400 A JP 2000165400A JP 2000165400 A JP2000165400 A JP 2000165400A JP 3379938 B2 JP3379938 B2 JP 3379938B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は圧延用スリーブロー
ルに関し、より詳しくはシートパイル、アングル等の深
いカリバーを有する形鋼圧延用ロールやH形鋼圧延用ユ
ニバーサルミルロール等として用いることができる圧延
用スリーブロールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シートパイル、アングル等の製造
に用いる形鋼圧延用ロールには、強靭性に優れたアダマ
イト材料のロールが一般的に用いられていた。またH形
鋼圧延用ユニバーサルミルロールには、耐摩耗性に優れ
たハイクロム材料や強靭性に優れたアダマイト材料、耐
付着性を重視したNi−グレン材料が実用化されてい
る。一方、熱間薄板圧延用仕上ワークロール等の熱間圧
延用ロールや棒鋼圧延用ロールの分野においては、極め
て耐摩耗性に優れたハイス系複合ロールが実用化されて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記ハイス
系ロールの形鋼圧延分野への実用化は未だ十分には行わ
れていない。その理由の大きな1つは、シートパイル、
アングル等の形鋼圧延用ロールは大型で深いカリバーを
有するため、これをハイス系複合ロールで構成する場合
には外層であるハイス層の厚みを非常に厚くせねばなら
ず、よって遠心鋳造法や複合連続肉盛法等による容易な
製造法を用いて製造することは極めて困難となることで
ある。一方、外層部をハイス系材料とし内層部を黒鉛鋼
やダクタイル鋳鉄等の靭性のある材料とした複合スリー
ブロールをアーバーと組み合わせてなる組立て式ロール
も、一部で形鋼圧延用ロールとして用いられている。
が、このハイス系の複合スリーブロールでは外層部と内
層部との厚みのバランスが悪く、適切な内層厚さを確保
できないために、スリーブ割損が発生しやすいという問
題があった。またH形鋼圧延用ユニバーサルミル用の水
平スリーブロールにあっては、スリーブ側面でH形鋼の
フランジ部を圧延するため、複合スリーブロールの外層
部であるハイス層の厚みを厚くする必要があり、やはり
内層部と外層部のバランスが悪くなり、製造が困難であ
るという問題があった。以上のように、従来は深いカリ
バーを必要とする形鋼圧延用ロールやH形鋼圧延用のユ
ニバーサルミルロールには、その形状的な制約からハイ
ス系材料のロールを上手く実用化することができなかっ
た。
【0004】そこで本発明は上記従来の欠点を解消し、
ハイス系材料を用いたロールであって、深いカリバーを
有する形鋼圧延用ロールとして或いはH形鋼圧延用ユニ
バーサルミルロールとしても好ましく使用することがで
きる圧延用スリーブロールの提供を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の圧延用スリーブロールは、成分組成が重量%で、
C:0.8〜1.8%、Si:0.2〜1.5%、M
n:0.2〜1.5%、Ni:0.6%未満、Cr:
2.0〜10.0%、Mo:2.0〜8.0%、W:
2.0〜8.0%、V:2.0〜10.0%を含有する
と共に、残部が実質的にFeから成る材料を用い、鋳造
によって全体を単層に構成すると共に、更に圧延使用
焼入れ層としてショア硬度で70以上にし、且つ焼ば
め面若しくはスリーブ内面を焼入れの際に保温すること
で焼きの入っていないパーライト組織としてショア硬度
で60以下、引張り強さを550N/mm 以上、伸び
を0.3%以上にしてあることを第1の特徴としてい
る。また本発明の圧延用スリーブロールは、成分組成が
重量%で、C:1.0〜2.5%、Si:1.0〜4.
0%、Mn:0.2〜1.5%、Ni:1.0〜4.0
%、Cr:1.0〜8.0%、Mo:0.5〜8.0
%、W:3.0%以下、V:0.5〜1.5%を含有す
ると共に、残部が実質的にFeから成る材料を用い、C
a、Si、Ce、Mgの1種若しくは2種以上の合金に
て球状黒鉛晶出処理を施して鋳造すると共に、全体を単
層に構成し、更に圧延使用層を焼入れ層としてショア硬
度で70以上にし、且つ焼ばめ面若しくはスリーブ内面
を焼入れの際に保温することで焼きの入っていないパー
ライト組織としてショア硬度で60以下、引張り強さを
550N/mm 以上、伸びを0.3%以上にしてある
ことを第2の特徴としている。また本発明の圧延用スリ
ーブロールは、上記第1又は第2の特徴に加えて、1個
または2個以上がアーバーに対して焼ばめられることで
組立てロールとなることを第3の特徴としている。
【0006】上記本発明の第1の特徴においては、スリ
ーブロールの全体を単層構造としている。これを複合ス
リーブロールとした場合には、外層部をハイス材とし内
層部を黒鉛鋼又はダクタイル鋳鉄とすることになるが、
鋳造時に内外層の境界部に欠陥(巣穴、異物噛み、偏析
等)が発生しやすく、通常において境界部が最弱部にな
る。また高合金のハイス系外層部が内層部側に一部混入
し、内層部の強度を低下させる。更に焼入れ・焼戻し処
理により外層部はマルテンサイトまたはベイナイト組織
となり内層部はパーライト組織となるため、外層部には
圧縮、内層部には引張りの残留応力が生じ、前記最弱部
である内外層の境界部に残留応力が集中する。単層構造
にすることで上記複合ロールの問題点を全て解消するこ
とができる。また上記第1の特徴においては、スリーブ
ロールの全体に対して、圧延使用層を焼入れ層としてシ
ョア硬度で70以上に調整している。スリーブロールを
焼入れする際に、強靭性を必要とするスリーブ内面に
温材を施し、圧延使用層に焼きが入るようにし、少なく
ともスリーブ内面は焼きを入れないようにする。これに
より単層構造でありながら、圧延使用層は耐摩耗性に優
れたマルテンサイトまたはベイナイト組織となり、スリ
ーブ内面(アーバーに対して焼ばめられたりする)
靭性に優れたパーライト組織にすることができる。勿
論、上記複合スリーブの内外層の境界部等に弱部が生じ
ることも無い。また上記第1の特徴においては、成分組
成をハイス系の組成としているが、特にCの含有量を低
くし、強靭性を確保するようにしている。従来より用い
られている通常の熱間圧延用ハイスロールは2.0〜
2.5%のC値が一般的であるが、その成分系では一次
の粗大炭化物が多量に晶出するため、強靭性が確保でき
なくなる可能性があった。更に上記第1の特徴において
は、そこに示す成分組成を有する単層のスリーブロール
は、その焼ばめ面若しくはスリーブ内面(前記焼ばめ面
は通常スリーブ内面である)を焼入れの際に保温するこ
とにより、焼きの入っていないパーライト組織としてシ
ョア硬度で60以下、引張り強さを550N/mm
上、伸びを0.3%以上にしてあることで、十分な強靭
性を確保することができる。即ち、 単層構造のスリーブ
でありながら、複合構造のスリーブ並みの耐割損性を確
保することができるのである。
【0007】第1の特徴による圧延用スリーブロールの
成分組成における各成分元素の含有範囲の限定理由につ
いて以下に説明する。なお成分組成は全て重量%で示
す。
【0008】Cの含有量は0.8〜1.8%とする。
0.8%未満では一次炭化物の晶出が少なく、耐摩耗
性、耐焼付き性が低下する。1.8%を超えると一次炭
化物が粗大化し、強靭性を低下させる。好ましくは1.
2〜1.6%とするのがよい。
【0009】Siの含有量は0.2〜1.5%とする。
Siは湯流れ性確保等のために必要な元素である。一
方、材料の靭性向上には含有量が低いほどよい。従って
含有量は0.2〜1.5%とする。好ましくは0.4〜
1.0%とするのがよい。
【0010】Mnの含有量は0.2〜1.5%とする。
Mnは硬化能を増す働きがある。一方、材料の靭性向上
には含有量が低いほどよい。従って含有量は0.2〜
1.5%とする。好ましくは0.4〜1.0%とするの
がよい。
【0011】Niの含有量は0.6%未満とする。Ni
は焼入れ性を向上させる働きがある。一方、含有量が増
加すると焼入れ時にオーステナイトが残留しやすい問題
がある。従って含有量は0.6%未満とする。好ましく
は0.2〜0.4%とするのがよい。
【0012】Crの含有量は2.0〜10.0%とす
る。Crの一部は基地中に固溶し、基地を強化する。そ
の一方、高硬度のM型共晶炭化物を晶出しやす
い。そしてM型共晶炭化物が多くなると、クラッ
クが進展しやすくなる。従ってCrの含有量は2.0〜
10.0%とする。好ましくは3.0〜5.0%とする
のがよい。
【0013】Moの含有量は2.0〜8.0%とする。
MoはMC型、MC型の複合炭化物を形成し、常温
硬度、高温硬度を高め、耐摩耗性の向上に寄与する。ま
た焼入れ性を向上させる。2.0%未満ではMC型、
C型の複合炭化物の形成量が不足する一方、8.0
%を超えると、炭化物量が多くなりすぎて好ましくな
い。従ってMoの含有量は2.0〜8.0%とする。好
ましくは3.0〜6.0%をするのがよい。
【0014】Wの含有量は2.0〜8.0%とする。W
も同様にCと結合して、主としてM C型、MC型の
複合炭化物を形成し、常温硬度、高温硬度を高め、耐摩
耗性の向上に寄与する。また焼入れ性を向上させる。
2.0%未満ではMC型、M C型の複合炭化物量の
形成量が不足する一方、8.0%を超えると炭化物量が
多くなりすぎて好ましくない。従ってWの含有量は2.
0〜8.0%とする。好ましくは3.0〜5.0%とす
るのがよい。
【0015】Vの含有量は2.0〜8.0%とする。V
はCと容易に結合して、主としてMC型炭化物を形成
し、耐摩耗性の向上に寄与する。多すぎるとMC型炭化
物量が増えて靭性が低下するので好ましくない。従って
Vの含有量は2.0〜8.0%とする。好ましくは3.
0〜6.0%とするのがよい。
【0016】上記本発明の第2の特徴においては、スリ
ーブロールの全体を単層構造としている。また上記第2
の特徴においては、スリーブロールの全体に対して、圧
延使用層を焼入れ層としてショア硬度で70以上に調整
している。これらの構成による作用効果は、上記第1の
特徴の説明において既述した作用効果と同じである。加
えて第2の特徴においては、その組織中に黒鉛が晶出さ
れ、その潤滑作用により耐焼付き性が問題となるような
スタンドにも適用可能としたことである。更に黒鉛を球
状化することで、黒鉛晶出による強靭性の低下を防止す
ることができる。更に上記第2の特徴においては、上記
第1の特徴の場合と同様に、そこに示す成分組成を有す
る単層のスリーブロールは、その焼ばめ面若しくはスリ
ーブ内面(前記焼ばめ面は通常スリーブ内面である)を
焼入れの際に保温することにより、焼きの入っていない
パーライト組織としてショア硬度で60以下、引張り強
さを550N/mm 以上、伸びを0.3%以上にして
あることで、十分な強靭性を確保することができる。即
ち、単層構造のスリーブでありながら、複合構造のスリ
ーブ並みの耐割損性を確保することができるのである。
【0017】第2の特徴による圧延用スリーブロールの
成分組成における各成分元素の含有範囲の限定理由につ
いて以下に説明する。なお成分組成は全て重量%で示
す。
【0018】Cの含有量は1.0〜2.5%とする。黒
鉛を晶出させるためには上限近くが望ましいが、一次の
粗大炭化物の晶出を少なくし、強靭性を確保するため
に、Cの含有量は好ましくは1.8〜2.2%とする。
【0019】Siの含有量は1.0〜4.0%とする。
Siは黒鉛化促進元素である。少ないと黒鉛が晶出せ
ず、多すぎると材質を脆くする。Siの含有量は好まし
くは1.4〜2.5%とするのがよい。
【0020】Mnの含有量は0.2〜1.5%とする。
Mnは炭化物生成元素だが、本発明においては、MnS
を形成してSの害を防止する程度でよい。Mnの含有量
は好ましくは0.5〜0.8%とするのがよい。
【0021】Niの含有量は1.0〜4.0%とする。
Niは黒鉛化促進元素である。また組織の基地を強化
し、焼入れ性を向上させる。少ないと黒鉛が出難い。ま
た多すぎると残留オーステナイトが多くなり、割れやす
い。Niの含有量は好ましくは1.2〜2.5%とする
のがよい。
【0022】Crの含有量は1.0〜8.0%とする。
Crは炭化物生成元素である。少ないと炭化物晶出量が
不足し、多すぎると黒鉛の晶出を阻害する。Crの含有
量は好ましくは1.0〜4.0%とするのがよい。
【0023】Moの含有量は0.5〜8.0%とする。
Moは組織の基地を強化し、焼入れ性を向上させる。
2.0%以上含有させると硬質の一次炭化物が晶出し、
耐摩耗性を大幅に向上させる。Moの含有量は好ましく
は2.0〜5.0%とする。
【0024】Wの含有量は3.0%以下とする。Wは硬
質の複合炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる。Wは
Moと同様の炭化物生成作用を持つが、その効果はMo
の半分に相当するため、2Mo+Wの値で成分設定す
る。Wの含有量は好ましくは、0.5〜2.0%とす
る。
【0025】Vの含有量は0.5〜1.5%とする。V
は硬質のMC炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる。
少ないとその効果が少なく、1.5%を超えて含有させ
ると、一次の粗大炭化物が晶出して、黒鉛の晶出を大き
く阻害し、耐焼付き性と強靭性が低下する。基地中に微
細炭化物として分布させることが有効である。Vの含有
量は好ましくは0.8〜1.5%とする。
【0026】Ca、Si、Ce、Mgの1種若しくは2
種以上の合金にて、鋳込み直前に溶湯処理を実施するこ
とにより、黒鉛の晶出を安定化し、更に黒鉛を球状化す
ることができる。
【0027】上記本発明の第3の特徴において、本発明
のスリーブロールは、H形鋼圧延用水平ロールに適用さ
れる場合には、1個のスリーブロールをアーバーに焼ば
めて組立てロールとされる。また大型のアングル、チャ
ンネル、シートパイル等の形鋼圧延用大型ロールに適用
される場合には、そのロールのカリバー数に応じて、1
個または2個以上のスリーブロールをアーバーに焼ばめ
て組立てロールとされる。
【0028】
【0029】
【実施例】本発明の上記第1の特徴に係る単層のスリー
ブロールを、実施例1として鋳造にて構成した。また比
較例1として、複合(2層)スリーブロールを鋳造して
構成した。比較例1の複合スリーブロールは、内層材と
して黒鉛鋼を使用し、その外層厚を220mm、内層厚
を80mmとした。実施例1と比較例1の成分組成を表
1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】前記実施例1及び比較例1のスリーブロー
ルの寸法は、図1に示すように、胴径を1100mm、
内径を500mm、胴長750mmとし、深さ120m
mのアングル圧延用のカリバー加工を施した。実施例1
及び比較例1のロールに対して、焼入れ・焼戻し処理を
実施した。ただし、実施例1の単層スリーブロールに
は、焼入れ時にスリーブ内面及び両端面を保温材でカバ
ーした。一方、比較例1の複合スリーブロールには保温
材を使用しなかった。焼入れは1000℃以上のオース
テナイト化温度から圧延使用層及びその付近であるカリ
バー部付近のみを300℃/時間以上の速度で強制冷却
して行った。その後、500〜600℃の温度で3回の
焼戻し処理を施した。実施例1、比較例1の断面硬度分
布と機械的性質を測定した。その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】表2によれば、実施例1の単層スリーブも
比較例1の複合スリーブのカリバー部K2、K3(使用
層80mmまで)の硬度分布はショア硬度(以下、HS
とする)70以上と問題はなく、極めて耐摩耗性に優れ
たロールが期待できる。一方、前記使用層以外の部分の
硬度分布については、実施例1の単層スリーブの場合、
スリーブ内面I8、I9、I10及び両端面B5、B7
付近はHS40〜50程度と焼きの入っていない状態
(パーライト組織)となっている。が、比較例1の複合
スリーブにおいては、内層部(I8、I9、I10参
照)はHS40〜45程度となっているが、外層部(F
1、F4参照)は全体的に焼きが入ってしまっており、
マルテンサイトまたはベイナイト組織に変態しているこ
とがわかる。実施例1の場合は外面部F1、F4も硬度
がHS54〜58で、未だ焼きが入っておらず、靭性を
保持していることがわかる。実施例1と比較例1の機械
的性質について比較する。実施例1の単層スリーブの場
合には、引張り強さはほぼ硬度に比例し、伸びは逆に硬
度が高くなるほど低下する傾向にあることがわかる。一
方、比較例1の複合スリーブの場合には、内層部のスリ
ーブ内径(I8、I9、I10参照)付近は黒鉛鋼の持
つ優れた強靭性が確保されているが、内外層境界部付近
(B5、B6参照)の外層材の合金成分の混入と偏析等
の組織異常により、大幅な引張り強さの低下(強靭性の
低下)が認められる。比較例1の複合スリーブロールは
焼入れ・焼戻し処理中に割損したが、その原因は上記境
界部付近の強度不足と、内外層の厚さのバランスの悪
さ、外層の変態膨張が内層強度を上回ったためであると
される。実施例1の単層スリーブの残留応力分布は、硬
度分布と相関関係が有り、HS60付近を境にそれ以上
は変態膨張による圧縮残留応力、それ以下の部分は引張
り残留応力となり、比較例1の複合スリーブと比較し
て、残留応力分布のバランスが大きく改善されている。
また実施例1のスリーブロールは単層スリーブロールで
ありながら、焼ばめ面となるスリーブ内面付近は、複合
スリーブロールの内層材並みの強靭性が確保でき、焼ば
め時及び圧延中の耐割損性に問題が生じないことがわか
る。
【0034】本発明の上記第2の特徴に係る単層のスリ
ーブロールを、実施例2として鋳造により構成した。ま
た比較例2として単層スリーブロールを、比較例3とし
て複合(2層)スリーブロールをそれぞれ鋳造して構成
した。比較例3の複合スリーブロールは、内層材として
黒鉛鋼を使用し、その外層厚を175mm、内層厚を1
25mmとした。実施例2と比較例2、比較例3の成分
組成を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】前記実施例2、比較例2及び比較例3のス
リーブロールの寸法は、図2に示すように、胴径を13
50mm、内径を750mm、胴長460mmとした。
実施例2、比較例2及び比較例3のロールに対して、焼
入れ・焼戻し処理を実施した。ただし、実施例2の単層
スリーブロールには、焼入れ時にスリーブ内面(I6)
を保温材でカバーした。一方、比較例2の単層スリーブ
ロール及び比較例3の複合スリーブロールには保温材を
使用しなかった。焼入れは1000℃以上のオーステナ
イト化温度からスリーブ表面及び側面を300℃/時間
以上の速度で強制冷却して行った。その後、500〜6
00℃の温度で3回の焼戻し処理を施した。実施例2、
比較例2及び比較例3の硬度分布と機械的性質を測定し
た。その結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】実施例2、比較例2及び比較例3の各スリ
ーブロールはH形鋼圧延ユニバーサルミル用の水平ロー
ル(H500×500圧延用)として試作したもので、
アーバーに焼ばめ、組立てロールとした。比較例2の単
層スリーブロールの場合、前記焼ばめの際に割れが発生
した。この原因は、焼入れ時に保温材を使用しなかった
ことで、スリーブ内面(I6参照)まで焼きが入ってし
まい、靭性不足となったためである。また比較例3の複
合スリーブロールの場合、内層厚を125mm確保した
結果、割れは発生しなかったが、H500×500圧延
にはH形鋼フランジ部がスリーブ内層部にかかってしま
い、ロールとしては使用できない。一方、焼入れ時にス
リーブ内面に保温材を用いた実施例2の単層スリーブロ
ールの場合は、圧延テストを実施したところ、ヒートク
ラック、焼付きの発生も無く、且つ従来のアダマイト系
ロールと比較しても大幅な耐摩耗性の向上が見られた。
【0039】
【発明の効果】本発明は以上の構成、作用よりなり、請
求項1に記載の圧延用スリーブロールによれば、これま
ではハイス系材料の適用が困難とされていた、深いカリ
バーを有するシートパイル、アングル、チャンネル等の
形鋼圧延用ロール、或いはH形鋼圧延用ユニバーサルミ
ルロールに、耐摩耗性に十分優れたハイス材料を有する
圧延用スリーブロールを適用することが可能となった。
更に圧延使用層を焼入れ層としてショア硬度で70以上
にし、且つ焼ばめ面若しくはスリーブ内面を焼入れの際
に保温することで焼きの入っていないパーライト組織と
してショア硬度で60以下、引張り強さを550N/m
以上、伸びを0.3%以上にしてあるので、単層の
スリーブロールでありながら、圧延使用面は十分に硬
く、且つアーバーに嵌め合わされる部分等の内面は十分
な強靭性を確保することができ、よって組立てロールと
して必要な耐割損性を十分に向上させることができる。
また請求項2に記載の圧延用スリーブロールによれば、
Ni−グレン材料並みの耐ヒートクラック性、耐焼付き
性、及びハイス材料並みの耐摩耗性が期待でき、従来ハ
イスロールの実用化が困難とされていたH形鋼圧延用ユ
ニバーサルミルの水平ロール等のスタンドにも適用が可
能となり、ロール原単位の大幅な向上を図ることができ
る。更に上記請求項1の発明の場合と同様に、圧延使用
層を焼入れ層としてショア硬度で70以上にし、且つ焼
ばめ面若しくはスリーブ内面を焼入れの際に保温するこ
とで焼きの入っていないパーライト組織としてショア硬
度で60以下、引張り強さを550N/mm 以上、伸
びを0.3%以上にしてあるので、単層のスリーブロー
ルでありながら、圧延使用面は十分に硬く、且つアーバ
ーに嵌め合わされる部分等の内面は十分な強靭性を確保
することができ、よって組立てロールとして必要な耐割
損性を十分に向上させることができる。また請求項3に
記載の圧延用スリーブロールによれば、上記請求項1又
は2に記載の構成による効果に加えて、本発明に係る圧
延用スリーブロールの1個または2個以上をアーバーに
焼ばめることで、種々の形鋼圧延用のカリバーを有する
組立てロールを容易に構成し、良好な形鋼圧延を行うこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る圧延用スリーブロール
の断面図である。
【図2】本発明の実施例2に係る圧延用スリーブロール
の断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C21D 5/00 C21D 5/00 D C22C 33/10 C22C 33/10 37/04 37/04 Z 37/06 37/06 Z (56)参考文献 特開 平7−179945(JP,A) 特開2000−63976(JP,A) 特開 平7−233441(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 37/00 B21B 27/00 B21B 27/03 520 C21D 5/00 C22C 33/10 C22C 37/04 C22C 37/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成分組成が重量%で、 C : 0.8〜1.8% Si: 0.2〜1.5% Mn: 0.2〜1.5% Ni: 0.6%未満 Cr: 2.0〜10.0% Mo: 2.0〜8.0% W : 2.0〜8.0% V : 2.0〜10.0% を含有すると共に、残部が実質的にFeから成る材料を
    用い、鋳造によって全体を単層に構成すると共に、更に
    圧延使用層を焼入れ層としてショア硬度で70以上に
    、且つ焼ばめ面若しくはスリーブ内面を焼入れの際に
    保温することで焼きの入っていないパーライト組織とし
    てショア硬度で60以下、引張り強さを550N/mm
    以上、伸びを0.3%以上にしてあることを特徴とす
    る圧延用スリーブロール。
  2. 【請求項2】 成分組成が重量%で、 C : 1.0〜2.5% Si: 1.0〜4.0% Mn: 0.2〜1.5% Ni: 1.0〜4.0% Cr: 1.0〜8.0% Mo: 0.5〜8.0% W : 3.0%以下 V : 0.5〜1.5% を含有すると共に、残部が実質的にFeから成る材料を
    用い、Ca、Si、Ce、Mgの1種若しくは2種以上
    の合金にて球状黒鉛晶出処理を施して鋳造すると共に、
    全体を単層に構成し、更に圧延使用層を焼入れ層として
    ショア硬度で70以上にし、且つ焼ばめ面若しくはスリ
    ーブ内面を焼入れの際に保温することで焼 きの入ってい
    ないパーライト組織としてショア硬度で60以下、引張
    り強さを550N/mm 以上、伸びを0.3%以上に
    してあることを特徴とする圧延用スリーブロール
  3. 【請求項3】 1個または2個以上がアーバーに対して
    焼ばめられることで組立てロールとなることを特徴とす
    る請求項1又は2に記載の圧延用スリーブロール。
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