JP3729177B2 - 遠心鋳造製複合中間ロール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠心鋳造製複合中間ロールに関するものであり、具体的には6段式圧延機において鉄鋼等の金属材の冷間圧延又は熱間圧延を行うための中間ロールに好適に使用することができる遠心鋳造製の複合中間ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、6段式圧延機において鉄鋼等の金属材の冷間圧延又は熱間圧延を行うための中間ロールとしては、5% (本明細書においては特にことわりがない限り「%」は「質量%」を意味する) Cr系の鍛鋼製焼き入れ中間ロールが多用されている。また、特に耐摩耗性が要求される場合には冷間ダイス鋼相当の10%Cr系、又はMo、V等を少量添加したセミハイス系の鍛鋼製焼き入れ中間ロールが一部で使用されている。
【0003】
これらの鍛鋼製焼き入れ中間ロールは、大気溶解法又はエレクトロスラグ溶解法により製造された鋼塊に鍛造及び焼鈍処理を行い、一定の形状及び寸法に機械加工した後、定置誘導加熱焼き入れ又は連続移動誘導加熱焼き入れにより所定の硬さに硬化される。ここで、「定置誘導加熱焼き入れ」とはロール胴部の全体をカバーする長さを有するコイルを用いてロール胴部の表層を一辺に誘導加熱後焼き入れする方法であり、「連続移動誘導加熱焼き入れ」とはロール胴部の長さよりも短いコイルを胴片下部から胴片上部へ移動させながら焼き入れる方法である。
【0004】
10%Cr系及びセミハイス系の鍛鋼製焼き入れ中間ロールは、Cr、Mo、Vが形成する硬質な炭化物を鋼中に分散させて耐摩耗性を向上させるものであるが、鍛造素材である鋼塊全体、すなわち圧延材に直接的に接触しない部位にもこれらの高価な元素が含有されることのみならず、大気溶解法のみでは鋼塊内部の健全性が確保できないのでエレクトロスラグ溶解法を用いる必要があることや、難鍛造性であるため鍛造工数が多くなること等といった様々な理由により、5%Cr系鍛鋼製焼き入れ中間ロールに比較すると製造コストが著しく嵩んでしまうという問題があった。
【0005】
一方、ヨーロッパにおいては、1980年代前半から、竪型遠心鋳造機を用いて高Cr鋳鉄(2.7%C−18%Cr) の溶湯を外層として形成させた後に、安価な片状黒鉛鋳鉄又は球状黒鉛鋳鉄の溶湯を芯材として鋳込み、溶着接合して凝固させることにより製造された遠心鋳造製複合ロールが冷間圧延用ワークロールとして一部使用されている。また、特許文献1には、高Cr鋳鉄に替えて高Cr鋳鋼を外層とする冷間圧延用遠心鋳造製複合ワークロールが提案されている。
【0006】
これらの遠心鋳造製複合ワークロールは、焼鈍処理された鋳造品を一定の形状及び寸法に機械加工した後、全体加熱焼き入れにより外層の表面を硬化するものである。ここで、「全体加熱焼き入れ」とは、ロール全体をロール胴部の内部に過大な温度勾配を生じないように徐々に焼き入れ温度まで昇温加熱した後に焼き入れする方法である。したがって、製造コスト的には安価であり、所定の使用性能を確保できればエレクトロスラグ溶解法を用いた10%Cr系又はセミハイス系の鍛鋼製焼き入れ中間ロールを凌駕できるものと考えられる。
【0007】
しかし、遠心鋳造による複合ロールが6段式圧延機において鉄鋼等の金属材の冷間圧延又は熱間圧延を行うための中間ロールに実際に使用された例はない。
【0008】
【特許文献1】
特公平1−11707 号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
6段式圧延機において鉄鋼等の金属材の冷間圧延又は熱間圧延を行うための中間ロールは、大半がロール胴径が650 mm以下である小径ロールであり、胴部の表面硬さはワークロール及びバックアップロ−ルの硬さ等の使用条件に応じてショア硬さで72〜89の範囲に選定される。これは硬さが高過ぎると圧延材と直接接触するワークロールの疵入りや肌荒れを促進する等の不都合を生じ、逆に硬さが低過ぎると耐摩耗性が低下するのみならず耐転動疲労性も低下してスポーリングを発生し易くなる等の不都合を生じるからである。
【0010】
すなわち、中間ロールでは、ワークロールよりも長期間にわたって連続して使用されるため、耐摩耗性及び耐転動疲労性が重要な要求性能である。したがって、耐摩耗性及び耐転動疲労性に優れた中間ロール材としては、耐転動疲労性を考慮しながら、Cr、Mo、V、W等の元素が形成する硬質な炭化物を鋼中に多量に分散させて耐摩耗性を向上させる必要がある。
【0011】
しかしながら、Cr、Mo、V、W等の硬質な炭化物を形成する元素を多量に含有する溶湯を遠心鋳造により外層として形成した後に、球状黒鉛鋳鉄の溶湯を芯材として鋳込み溶着接合して凝固させることにより耐摩耗性及び耐転動疲労性に優れた遠心鋳造製複合中間ロールを製造することは、下記の理由により現実的には不可能であるとされている。
【0012】
まず、遠心鋳造法による複合ロールは、外層材の溶湯を大きな遠心力下でモールドの表面から内側に凝固させるため、溶湯と比重が異なる凝固前面の濃化溶湯又は初晶炭化物が未凝固溶湯中に移行して、結果的に凝固形成された外層の半径方向の成分分布が不均一に成り易いこと、及び外層の内側に溶着接合が困難なあるいは脆弱な炭化物富化層又は過共晶組成相を形成し易い。この現象は、外層材の溶湯がCr、Mo、V、W等の元素を多量に含有するほど、また用いる遠心力が大になるほど顕著になる。
【0013】
一方、芯材の溶湯の鋳込み時の外層と芯材との溶着接合の条件を一定にするためには、遠心力を大にしてモールド内の長さ方向の溶湯厚みの差異を極力小さくする必要があるが、遠心力は回転数の二乗と直径とに比例するため、モールドの内径(結局はロールの胴径)が小さくなるほど、また外層材の溶湯厚みが大きくなるほど、健全な境界部を得るためには遠心力を大きくする必要がある。
【0014】
したがって、ロール胴径が650mm 以下である小径ロールが大半を占める中間ロールにおいては、健全な境界部を得ようとしてモールド内の溶湯厚みの差異を小さくすれば、外層内の半径方向の成分分布が不均一になり、かつ外層内側に溶着接合の困難なあるいは脆弱な炭化物富化層又は過共晶組成相が形成し易くなるという不都合があった。逆に、遠心力を抑えて外層内の半径方向の成分分布を均一にしようとすれば、モールド内の溶湯厚みの差異が大きくなり、健全な境界部の確保が困難になるという不都合があった。
【0015】
また、遠心鋳造法による複合ロールの芯材を形成する球状黒鉛鋳鉄は、黒鉛を晶出させることによって靭性を確保するが、外層がCr、Mo、V、W等の白銑化傾向が強い元素を多量に含有していると、芯材の黒鉛化が阻害されて脆くなり易いという問題がある。すなわち、芯材の溶湯の鋳込み時に、外層の内面に未凝固溶湯が残留している場合には、その未凝固溶湯は芯材の溶湯と混合し、芯材の溶湯中に希釈する。また、凝固形成された外層の内面側には前記のように脆弱な炭化物富化層あるいは過共晶組成相が集中して発生しているので、これらを芯材の溶湯により溶融除去する必要がある。さらに、耐転動疲労性を考慮してC含有量の少ない高融点材料を外層に採用する場合には、凝固形成された外層の内側に収縮巣等の鋳造欠陥が発生し易いため、この鋳造欠陥の発生層も芯材の溶湯により溶融除去する必要がある。したがって、芯材の白銑化、脆弱化の程度は、外層の内面の未凝固の溶湯及び/又は外層の内面側に凝固して形成された除去すべき外層の厚み(量)、及びそれらに含まれるCr、Mo、V、W等の白銑化傾向の強い元素の量により決定されることとなる。
【0016】
このようなことから、Cr、Mo、V、W等の白銑化傾向の強い元素を多量に含有し、かつ内面側に収縮巣等の鋳造欠陥が発生し易い高融点材料を外層とする耐摩耗性及び耐転動疲労性に優れた中間ロールを製造する場合には、外層と芯材との溶着の接合強度を著しく低下させる炭化物富化層あるいは収縮巣等の鋳造欠陥を完全に除去しようとすると、芯材の白銑化及び脆弱化を生じ易いという問題がある。
【0017】
一方、外層成分の芯材の溶湯への混合希釈による芯材の白銑化及び脆弱化を低減する手段として、外層と芯材との間にアダマイトあるいは黒鉛鋼等の中間層を設けることが提案されている。
【0018】
しかし、この方法では、混合除去及び溶融除去された外層成分は、中間層に混合希釈され、形成した中間層は外層と類似した熱機械的特性を有することになり、結果的にロールの使用層としては活用できない外層厚みを増大させるに過ぎないこととなる。このようなことから、この方法には、ロール胴径が650mm 以下の小径ロールが大半を占める中間ロールにおいては、後述するように製造および使用時に大根割れ(胴部の芯材内部を起点とする折損)等の不都合を起し易いという問題がある。
【0019】
次に、芯材を球状黒鉛鋳鉄とする遠心鋳造製複合中間ロールには熱処理上でも大きな問題がある。
複合ロールの焼き入れに際しては、外層には変態膨張による大きな圧縮残留応力が発生し、それとバランスして芯材には大きな引張応力が発生して、芯材の引張強さよりも過大になると焼き入れ中に芯材が破断してしまう。この問題は、ロール胴径が小さくなるほど、すなわちロール胴部の横断面積に占める外層の横断面積の割合が相対的に大きくなるほど、芯材に発生する引張応力が増大するため、より発生し易くなる。したがって、ロール胴径が650mm 以下である小径ロールが大半を占め、かつ外層にCr、Mo、V、W等の白銑化傾向が強い元素を多量に含有することにより芯材の白銑化及び脆弱化が生じ易い、耐摩耗性及び耐転動疲労性に優れた中間ロールを製造する場合には、全体加熱焼き入れを採用して焼き入れ冷却時に芯材に発生する応力が過大にならないようにしても、焼き入れ中に芯材が破断してしまうことがあった。
【0020】
また、遠心鋳造製複合中間ロールに連続移動誘導加熱焼き入れを適用する場合には、胴片の下部から上部へ連続移動的に焼き入れ加熱及び冷却を行うため、焼き入れの際に、焼き入れの開始部の表面より外層に割れが発生するという問題や、芯材が局部的に急速加熱されて焼き入れ中に芯材が破断してしまうという問題があった。
【0021】
本発明の目的は、6段式圧延機において鉄鋼等の金属材の冷間圧延又は熱間圧延を行うための中間ロールに遠心鋳造製複合ロールを適用する場合に発生する、上述したような問題を解消することであり、具体的には、エレクトロスラグ溶解法を用いた10%Cr系又はセミハイス系の鍛鋼製焼き入れ中間ロールよりも製造コストが安価であって、同等以上の耐摩耗性及び耐転動疲労性を有する高性能の遠心鋳造製複合中間ロールを提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、回転軸の傾斜角が30度以下である遠心鋳造機により形成された外層と芯材とを備える複合ロールであって、外層が、C:0.50〜0.95%、Si:0.2〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:5.0〜10.0%、Mo:1.5〜5.5%、V:0.5〜2.5%W:0.1〜3.5%、残部 Fe 及び不可避的不純物からなる鉄系高合金であり、このロールの両軸部を構成する芯材が、C: 2.5 3.6 %、 Si 1.6 3.3 %、 Mn 0.2 0.8 %、 P 0.1 %未満、 S 0.05 %未満、 Ni 0.2 1.5 %、 Mg 0.02 0.08 %、 Cr Mo 、V、W:それぞれ 0.70 %以下、かつ(Cr+2V)量0.70%以下、残部 Fe 及び不可避的不純物からなる球状黒鉛鋳鉄であり、さらに、外層の表面が定置誘導加熱焼き入れによりショア硬さ72〜89に硬化されていることを特徴とする遠心鋳造製複合中間ロールである。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に係る遠心鋳造製複合中間ロールの実施の構成を、その実施の形態とともに詳細に説明する。まず、本発明に係る遠心鋳造製複合中間ロールの胴部の外層を構成する鉄系高合金の組成の限定理由を説明する。
【0024】
C: 0.50 0.95
Cは、基地中に固溶して焼き入れ性を高めるとともに、 Cr 、Mo、V、W等の元素と結合して硬質な炭化物を形成する。しかし、含有量が0.50%未満であると炭化物量が少なくなり、所望の耐摩耗性が得られない。逆に、C含有量が0.95%を超えると、炭化物量が多くなり過ぎ耐転動疲労性が劣化する。したがって、C含有量は0.50%以上0.95%以下と限定する。同様の観点から、C含有量の下限は0.55%、上限は0.90%と限定することが望ましい。
【0025】
Si 0.2 2.0
Siは、脱酸作用を目的として添加する。しかし、Si含有量が0.2 %未満であるとその効果が不十分であり、逆に2.0 %を超えるとミクロ偏析を助長して耐転動疲労性を劣化させる。したがって、Si含有量の範囲は0.2 %以上2.0 %以下と限定する。
【0026】
Mn 0.2 2.0
Mnは、脱酸及び脱硫作用を目的として添加する。Mn含有量が0.2 %未満であるとこの効果が不十分であり、逆に、2.0 %を超えると靱性を低下させるため、Mn含有量の範囲は0.2 %以上2.0 %以下と限定する。
【0027】
Ni 0.1 2.0
Niは、基地中に固溶して焼き入れ性を向上するため、0.1 %以上含有させるが、2.0 %を超えて含有させると、残留オーステナイトが安定化し過ぎて、硬さの確保が困難になる。したがって、Ni含有量の範囲は0.1 %以上2.0 %以下と限定する。同様の観点から、Ni含有量の下限は0.2 %であることが望ましく、上限は1.5 %であることが望ましい。
【0028】
Cr 5.0 10.0
Crは、基地中に固溶して焼き入れ性を高めて強化するとともに、Cと結合して硬質なCr炭化物を形成する。しかし、Cr含有量が5.0 %未満であるとこれらの効果が少なく、逆に、10.0%を超えると炭化物量が多くなり耐転動疲労性を劣化させる。したがって、Cr含有量の範囲は5.0 %以上10.0%以下と限定する。同様の観点から、Cr含有量の下限は5.5 %であることが望ましく、上限は9.5 %であることが望ましい。
【0029】
Mo 1.5 5.5
MoもCrと同様に基地中に固溶して焼き入れ性を高め強化するとともに、Cと結合して硬質な炭化物を形成する。したがって、基地強化のためには、1.5 %以上含有させるが、Mo含有量が5.5 %を超えると炭化物量が多くなり耐転動疲労性を劣化させる。したがって、Mo含有量の範囲は1.5 %以上5.5 %以下と限定する。同様の観点から、Mo含有量の下限は2.0 %であることが望ましく、上限は5.0 %であることが望ましい。
【0030】
V: 0.5 2.5
VはCと結合して最も硬質なMC炭化物を形成する重要な元素である。しかし、V含有量が0.5 %未満では炭化物量が不十分で所望の耐摩耗性を確保できず、逆にV含有量が2.5 %を超えるとC量が不足して所望の硬さが得られなくなる。したがって、V含有量の範囲は0.5 %以上2.5 %以下と限定する。同様の観点から、V含有量の下限は1.0 %であることが望ましく、上限は2.0 %であることが望ましい。
【0031】
W: 0.1 3.5
Wは、Moと同様に基地中に固溶して焼き入れ性を高め強化するとともに、Cと結合して硬質な炭化物を形成する。Wは基地強化のために0.1 %以上含有させるが、W含有量が3.5 %を超えると炭化物量が多くなり耐転動疲労性を劣化させる。したがって、W含有量の範囲を0.1 %以上3.5 %以下と限定する。同様の観点から、W含有量の下限は0.2 %であることが望ましく、上限は3.0 %であることが望ましい。
【0032】
また、本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールの胴部の外層を構成する鉄系高合金は、上述した主要な化学成分に加えて、さらに、Nb、Co、Ti等を添加してもよいが、耐摩耗性及び耐転動疲労性等をも考慮し、その添加の要否を適宜判断すればよい。
【0033】
次に、本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールの胴部の内部および両軸部を構成する芯材である球状黒鉛鋳鉄の主要化学成分の一例について説明する。
C: 2.5 3.6
Cは、2.5 %未満の含有量では黒鉛の量が少なくなり、球状黒鉛鋳鉄としての材質特性を充分に発揮できず、逆に3.6 %を超えて含有させると脆弱となるため、C含有量の範囲は2.5 %以上3.6 %以下と限定する。
【0034】
Si 1.6 3.3
Siは、1.6 %未満の含有量では黒鉛の量が少なくなり炭化物が多く析出するために脆くなる。一方、Si含有量が3.3 %を超えると、黒鉛の量が多くなり過ぎて強度の劣化をきたすため、Si含有量は1.6 %以上3.3 %以下と限定する。
【0035】
Mn 0.2 %〜 0.8
Mnは、Sの害を抑えるのに有効であるが、0.2 %未満の含有量ではその効果が充分でなく、逆に、0.8 %を超える含有量では材質を劣化させるので、Mn含有量の範囲は0.2 %以上0.8 %以下と限定する。
【0036】
P: 0.1 %未満
Pは、溶湯の流動性を増加させるが材質を脆弱にするため、P含有量は0.1 %未満と限定する。
【0037】
S: 0.05 %未満
Sは、黒鉛の球状化を阻害することから低く抑制する必要があるため、S含有量は0.05%未満と限定する。
【0038】
Ni 0.2 1.5
Niは、黒鉛化を促進させるが、0.2 %未満ではその効果が不十分であり、逆に1.5 %を超えて添加しても顕著な効果がない。そこで、Ni含有量は0.2 %以上1.5 %未満と限定する。
【0039】
Mg 0.02 0.08
Mgは、黒鉛の球状化を促進させる作用を有する。しかし、Mg含有量が0.02%未満ではその効果が不十分であり、逆に0.08%を超えて添加すると黒鉛化を阻害して鋳造欠陥を発生し易くなるため、Mgの含有量は0.02%以上0.08%以下と限定する。
【0040】
Cr Mo 、V、W:それぞれ 0.70 %以下
Cr、Mo、V、Wは、上述したように白銑化元素であるため、基本的には、本発明の芯材を形成するための球状黒鉛鋳鉄の溶湯には添加しない。しかしながら、本発明の複合ロールの外層にはCr、Mo、V、Wが多量に含有されるため、外層と芯材とを溶着接合する際に、それらの外層に含まれる元素が芯材に不可避的に混入する。また、溶解原料からも不可避的に混入する。何れも芯材に多く混入すると芯材の黒鉛の球状化が阻害され、かつ芯材を白銑化及び脆弱化するため、これらの白銑化元素の含有量はそれぞれ0.70%以下と限定する。
【0041】
(Cr +2V ) 量: 0.70 %以下
さらに、強力な白銑化元素であるCr及びVについては、 (Cr+2V) 量が0.70%を超えると、定置誘導加熱焼き入れ法を採用した熱処理を行っても、芯材の内部からの破壊が生じるため、 (Cr+2V) 量を0.70%以下と限定する。同様の観点から、 (Cr+2V) 量は0.65%以下であることが望ましい。
【0042】
また、本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールの胴部の内部及び両軸部を構成する芯材である球状黒鉛鋳鉄は、上述した主要な化学成分に加えて、さらにNb、Co、Ti等の外層に含まれる元素が不可避的に混入することがあるが、黒鉛の球状化および白銑化及び脆弱化等を勘案して、その混入の適否を適宜判断すればよい。
【0043】
また、本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールの外層の表面は、定置誘導加熱焼き入れにより、ショア硬さ72〜89に硬化されている。この定置誘導加熱焼き入れは、外層の有効使用径域を適正な焼き入れ加熱温度に保持でき、かつ焼き入れ冷却時には内部の温度が低く外層内部 (径小域) の硬化が容易であるという特徴を有している。さらに、残留応力の観点からも、加熱速度が速く芯材の温度を低く抑える、すなわち軸心部の引張残留応力を低くできるとともに、芯材の強靱性の劣化を防止することが可能であり、本発明の遠心鋳造製複合ロールの熱処理法として好適である。なお、この外層の表面のショア硬さは、この種の中間ロールに求められる、72〜89である。
【0044】
次に、本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールの外層は、回転軸の傾斜角が30度以下である遠心鋳造機により形成される。回転軸の傾斜角が30度以下であればモールドの両端部間における溶湯の厚みの差は15mm以下となり、芯材の溶湯の鋳込み時における外層と芯材との溶着接合条件をモールドの全長について略一定にすることができ、ロール胴部の全長に亘って健全な境界部を得ることができるからである。
【0045】
次に、本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールの構成を、その実施例を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0046】
【実施例】
(実施例1)
比較例及び本発明例として、回転軸の傾斜角が18度である傾斜型遠心鋳造機を用いて、製品時のロール胴径が610mm であって、ロール胴長が2250mmである複合ロールを5本製造した。これらの複合ロールは、以下に示す手順▲1▼〜▲4▼により製造した。
【0047】
▲1▼ロール胴部を形成するためのモールド(内径644mm 、長さ2600mm)と両軸部を形成するための軸鋳型とを組み立てて鋳型とし、遠心鋳造機に搭載した。なお、モールドの内面には2mm厚さで塗型を施工した。
【0048】
▲2▼モールドの内面の遠心力が120Gになるように鋳型を高速回転させてから、低周波誘導炉を用いて溶解した、表1に示す化学組成 (単位は質量%) の溶湯を外層材の溶湯として、モールドの長さ方向の中央の位置での厚みが71mmになるように、モールドの内部に1410℃で鋳込んだ。
【0049】
【表1】
Figure 0003729177
【0050】
▲3▼この外層材の溶湯が凝固した後に遠心鋳造機の回転を停止し、鋳型を垂直に立て、芯材として表2に示す化学組成の球状黒鉛鋳鉄の溶湯を、各ロールで異なる表3に示す外層材の溶湯鋳込開始からの経過時間を経て、各ロールで異なる表3に示す鋳込み温度で鋳込んだ。
【0051】
【表2】
Figure 0003729177
【0052】
【表3】
Figure 0003729177
【0053】
▲4▼冷却、鋳型解体及び焼鈍後に、得られた鋳放し品のロール胴部の表面を直径618mm に旋削加工し、超音波探傷を行って外層の厚み及び境界部の健全性を調査した。また、ロール胴部の両端部から試験片を採取し、これら試験片を使用して境界部の健全性及び芯材の白銑化状況を調査した。さらに、両軸部から試験片を採取し、これらの試験片を使用して芯材の白銑化状況及び化学組成を調査した。
【0054】
各ロールの超音波探傷により測定した外層の厚みから算出した芯材鋳込みにより除去された外層の厚み、超音波探傷による境界部の健全性、及び下側軸部から採取した試験片による芯材の白銑化状況及び化学組成の調査結果を、表4にまとめて示す。
【0055】
【表4】
Figure 0003729177
【0056】
なお、芯材の鋳込みにより除去された外層の厚みは、収縮率を1.01として算出した。境界部の健全性は探触子5Z20N 、探傷感度V15-90%+20dB の条件で探傷し、反射エコーの高さ及び検出位置で判定した。芯材の内部の白銑化状況は、芯材のCr含有量、V含有量等の化学組成がロール胴の両端部から採取した試験片の内部の芯材と鋳込み時の下側軸部とでほぼ同一であったことから、芯材鋳込み時の下側軸部の化学組成を用いて評価した。
【0057】
表4に示すように、境界部健全性は、比較例3を除いた4本のロールは境界部からの反射エコーの高さがいずれも100 %以下であり良好であったのに対し、比較例3には、境界部から第2波以上の反射エコーが検出される箇所が数箇所あるとともに、接合界面の近傍の外層側にも反射エコーが認められた。
【0058】
この比較例3は熱処理中及び/又は使用中に境界部を起点とした剥離事故を発生する可能性が大きかったので、熱処理を実施せずに切断調査を行った。その結果、これらの反射エコーが検出される箇所には接合不良および収縮巣の集合体があることが判明した。したがって、境界部健全性を確保するためには、凝固形成された外層内面を芯材鋳込みにより少なくとも直径方向に3mm以上、好ましくは5mm以上除去する必要がある。
【0059】
一方、下側軸部の芯材は、芯材鋳込みにより除去された外層の厚みが大であるほど、すなわち強力な白銑化元素であるCr及びVが芯材内に混入しているほど、炭化物量が増加し黒鉛量が減少するという白銑化傾向が認められた。芯材である球状黒鉛鋳鉄の白銑化防止のためには、混入するCr含有量及びV含有量が少ないほど好ましい。
【0060】
なお、図1は、3.5 %C−2.1 %Si−0.5 %Mn−0.9 %Ni−0.2 %Mo−0.03%Mg系の球状黒鉛鋳鉄に、Cr及びVを (Cr+2V) 量が1.0 %以下である範囲で添加した場合の、 (Cr+2V) 量と硬さとの関係をラボテストにより調査した結果を示すグラフである。同図にグラフで示すように、球状黒鉛鋳鉄は (Cr+2V) 量に比例して白銑化し、 (Cr+2V) 量が0.70%を超えると、著しく硬化すなわち脆弱化する。
【0061】
比較例3を除いた境界部の健全性が良好な4本のロールについては、焼き入れ寸法(ロール胴長2270mm)に旋削加工した後、熱処理を行った。その際、比較例1及び2にかかるロールには全体加熱焼き入れ法を採用し、その他の本発明例1及び2にかかるロールには定置誘導加熱法を採用した。
【0062】
なお、比較例1及び2において実施した全体加熱焼き入れは、特許文献1の実施例に準じて行った。すなわち、ロール全体をロール胴部の内部に過大な温度勾配が生じないように平均昇温速度15℃/hで1020℃まで昇温し、この温度で24時間保持した後、衝風空気焼入れを行い、520 ℃の温度で停止する。続いて、ロール温度を520 ℃に20時間維持し、次に空冷によりロールを室温まで冷却し、引き続きこのロールを530 ℃の温度で20時間の焼き戻しを2回行った。
【0063】
また、本発明例1及び2において実施した定置誘導加熱法は、ロール全体を400 ℃に予熱保持した後、定置誘導加熱装置によりロール胴部の表面を平均昇温速度650 ℃/hで1055℃まで昇温し、この温度で7分間保持した後、比較例1及び2と同様に焼入れ冷却−焼き戻しを行うことにより、行った。
【0064】
その後、ロール胴部の表面を旋削仕上加工して、超音波探傷によりロール胴部の内部の健全性を調査した。これらのロールの熱処理後に行った超音波探傷によるロール胴部の内部の健全性の調査結果を表5にまとめて示す。
【0065】
【表5】
Figure 0003729177
【0066】
表5に示すように、芯材の白銑化が著しい比較例1及び芯材がそれほど白銑化していない比較例2は、全体加熱焼き入れ法を採用して焼き入れ冷却時に芯材に発生する応力が過大にならないようにしても、芯材が破断(内部破壊)してしまった。
【0067】
一方、本発明例1、2は、本実施例のように、定置誘導加熱法を採用して焼き入れ冷却時に芯材に発生する応力を小さくすることにより、芯材の破断(内部破壊)もなく、所定の硬さであるショア硬さ82が得られた。したがって、定置誘導加熱法においても焼き入れ中の内部破断を防止するためには、両軸部の (Cr+2V) 量を0.70%以下に限定することが有効であり、 (Cr+2V) 量を0.65%以下に限定することがさらに有効であることが、わかる。
【0068】
なお、前述の全体加熱焼き入れ法および本発明で規定する定置誘導加熱法の他に、遠心鋳造製複合ロールの熱処理法として、ガスバーナー等により胴部表面を焼き入れ温度に加熱する方法もある。しかしながら、この加熱法には、(i) 焼き入れ加熱域を確保するために必要以上にロール表面温度を上げる必要があるので、外層表面の溶融が生じ易いこと、(ii)加熱速度が遅く芯材の温度が高くなるので熱応力型の軸心部引張残留応力が大になること、(iii) 芯材が脆弱化する等の不具合があること等により、本発明にかかる遠心鋳造製複合ロールの熱処理には用いることができない。
【0069】
一方、本発明で規定する定置誘導加熱法は、外層の有効使用径域を適正な焼き入れ加熱温度に保持でき、かつ内部の温度が低く(焼き入れ冷却時には)内部からの冷却も寄与するため、特に外層内部(径小域)の硬化が容易であるという特徴を有する。さらに、残留応力の観点からすれば、加熱速度が速く芯材の温度を低く抑えること、すなわち軸心部の引張残留応力を低くできるとともに、芯材の強靱性の劣化を防止することが可能であり、本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールの熱処理法として好適である。
【0070】
(実施例2)
遠心鋳造法は、遠心鋳造機の回転軸の方向(傾斜角)により、横型(傾斜角が0度)、傾斜型と竪型(傾斜角が90度)とに分類され、ヨーロッパ、米国等の日本を除く諸外国では竪型遠鋳機が、日本においては横型あるいは傾斜型が多く用いられている。
【0071】
実施例1の比較例及び本発明例では、傾斜角が18度である傾斜型遠心鋳造機により鋳造を行っているが、前述の特許文献1により提案された高Cr鋳鋼を外層とする冷間圧延用の遠心鋳造製複合ワークロールは竪型遠鋳機により鋳造されていると推量される。このようなことから、傾斜角が異なった場合の本発明ロールへの適用可否を検討する。
【0072】
図2は、内径、長さがそれぞれ565 mm、2600mmのモールドを用いて、芯材の鋳込み時の鋳込み側(あるいは鋳型の上側)のモールド端から200mm 位置における溶湯の厚みが62mmになるように外層材の溶湯を鋳込んだ時の、鋳造機の回転軸の傾斜角及び遠心力の大きさ(重力加速度、G No.)とモールドの両端部間における溶湯厚みの差との関係を示すグラフである。
【0073】
傾斜角が30度以下であれば120Gの遠心力であってもモールドの両端部間における溶湯の厚みの差は15mm以下であり、芯材の溶湯の鋳込み時における外層と芯材との溶着接合条件をモールドの全長について略一定にすることができ、ロール胴部の全長に亘って健全な境界部を得ることができる。それに対して、傾斜角が30度を超えると、芯材の溶湯の鋳込み時の外層の厚みの差が大きくなり、ロール胴部の全長に亘って健全な境界部を得ることができなくなる。
【0074】
特に、竪型では、外層内の半径方向の成分分布が不均一になる不具合を無視して、160Gの大きな遠心力を加えてもモールド両端部間における溶湯の厚みの差は20mmを超えるため、外層が完全に凝固した状態でモールドの中央から下部の接合条件に合わせて芯材の溶湯を鋳込んだ場合には、溶湯の厚みの小さな芯材の鋳込み側のモールド上端部は温度が低下し過ぎて溶着不良となる。
【0075】
一方、溶湯の厚みの小さな芯材の鋳込み側のモールドの上端部に接合条件を合わせて芯材の溶湯を鋳込んだ場合には、モールドの中央から下部は凝固が完了していないため、Cr、Mo、V、W等の白銑化傾向の強い元素が多量に含有した、表4に示す外層の厚みに換算すれば、20mm以上の厚さの未凝固溶湯が芯材の溶湯中に混入して芯材を著しく白銑化し、熱処理中及び/又は使用中に芯材を起点とした内部破壊が発生する。このような不具合は、程度の差異はあるが、傾斜角が30度を超えた遠心鋳造機を用いた場合にも発生する。
【0076】
なお、外層の内面の未凝固溶湯及び/又は外層の内面側に凝固形成された除去すべき外層の芯材の溶湯への混合希釈による芯材の白銑化、脆弱化を低減する手段として、芯材の鋳込み量を増加させる手段もあり得るが、これは製造コストの大幅なアップを招くため、本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールの目的にはそぐわず、好ましくない。
【0077】
以上のことから、外層にCr、Mo、V、W等の白銑化傾向が強い元素を多量に含有し、かつロール胴部の全長に亘って健全な境界部が要求される本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールの製造においては、遠心鋳造機の回転軸の傾斜角が30度以下を用い、好ましくは25度未満の遠心鋳造機を用いる。
【0078】
また、傾斜角が小さいほどモールドの両端部間における溶湯の厚みの差が小さくなるが、横型では、外層の溶湯のモールド内への充填に要する時間が長くなり、外層の凝固組織にロール胴長方向へのムラが生じ易くなるので、傾斜角は5度以上であることが好ましい。
【0079】
(実施例3)
表6に示す化学成分を有する、通常の工程で製造されている5%Cr系鍛鋼製焼き入れ中間ロール(大気溶解法)及びセミハイス系鍛鋼製焼き入れ中間ロール(エレクトロスラグ溶解法)の鍛造及び焼鈍後の胴端部から採取した従来材2種の素材と、抵抗式溶解炉で溶製し小型遠心鋳造試験機(モールド内径120mm)で鋳造した高Cr鋳鋼(比較材)および本発明材の素材とから、回転摩耗試験片及び転動疲労試験片を採取した。これらの試験片は、970 〜1055℃からの焼き入れ処理とさらに 150〜550 ℃での焼き戻しによりショア硬さ80〜83の範囲に調整した。
【0080】
【表6】
Figure 0003729177
【0081】
回転摩耗試験は、相手材:ショア硬さ93の5%Cr系鍛鋼製焼き入れワークロール材、潤滑:灯油、表面状態:ダル施工により表面粗度Raを2μm に調整、ヘルツの接触応力:1451 MPa、すべり率:5%、回転数:2×105 回の条件で試験を行い、摩耗減量を測定した。
【0082】
転動疲労試験は、相手材:ショア硬さ93の5%Cr系鍛鋼製焼き入れバックアップロール材、試験温度:常温、ヘルツの接触応力:1451 MPaの条件で試験を行い、スポーリングが発生するまでの回転数を求めた。
【0083】
表7に、本発明材、従来材及び比較材の回転摩耗試験による摩耗減量の測定結果、及び転動疲労試験によるスポーリングが発生するまでの回転数を示す。
【0084】
【表7】
Figure 0003729177
【0085】
表7に示すように、本発明材は従来材及び比較材に比較し、摩耗減量が少なくなっている。また、スポーリングが発生するまでの回転数も、従来材1及び比較材に比較して多くなっている。特に、比較材は本発明材よりもCr含有量が高いものであるが、摩耗減量が多く、かつ炭化物量が多いためにスポーリングが発生するまでの回転数も小さくなっている。すなわち、Crを多量に添加するよりもMoとともにV及びWを複合添加することにより、耐転動疲労性を確保しながら耐摩耗性を向上させることができる。
【0086】
実際の鉄鋼冷間圧延用中間ロールにおいては、通常の一回の使用回転数が2×105 〜2×106 の範囲であり、ヘルツの接触応力が常用で1150〜2100 MPaの範囲、最大では2600 MPaにも達するので、耐摩耗性を向上させて使用寿命(一回使用当たりの回転数)を増加させる場合には、耐転動疲労性が使用寿命を決定する重要な特性となる。
【0087】
このようなことから、本発明材は、冷間および熱間での圧延用複合中間ロールの外層材に適用した場合、その目的とする優れた耐摩耗性とともに優れた耐転動疲労性の作用効果を十分に奏することが明らかとなった。
【0088】
また、本発明ロールは、耐凹み性や研削性等への要求度合いが小さいショア硬さ89以下の冷間圧延用ワークロールに用いても、優れた耐摩耗性と耐転動疲労性とを発揮できることが明らかとなった。
【0089】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明にかかる遠心鋳造製複合中間ロールによれば、製造コストが安価で、かつエレクトロスラグ溶解法を用いた10%Cr系あるいはセミハイス系の鍛鋼製焼き入れ中間ロールと同等以上の耐摩耗性及び耐転動疲労性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 3.5 %C−2.1 %Si−0.5 %Mn−0.9 %Ni−0.2 %Mo−0.03%Mg系の球状黒鉛鋳鉄に、Cr及びVを (Cr+2V) 量が1.0 %以下である範囲で添加した場合の、 (Cr+2V) 量と硬さとの関係をラボテストにより調査した結果を示すグラフである。
【図2】内径、長さがそれぞれ565 mm、2600mmのモールドを用いて、芯材の鋳込み時の鋳込み側のモールド端から200mm 位置における溶湯の厚みが62mmになるように外層材の溶湯を鋳込んだ時の、鋳造機の回転軸の傾斜角及び遠心力の大きさ(重力加速度、G No.)とモールドの両端部間における溶湯の厚みの差との関係を示すグラフである。

Claims (1)

  1. 回転軸の傾斜角が30度以下である遠心鋳造機により形成された外層と芯材とを備える複合ロールであって、
    前記外層が、質量%で、C:0.50〜0.95%、Si:0.2〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:5.0〜10.0%、Mo:1.5〜5.5%、V:0.5〜2.5%W:0.1〜3.5%、残部 Fe 及び不可避的不純物からなる鉄系高合金であり、
    該ロールの両軸部を構成する前記芯材が、質量%で、C: 2.5 3.6 %、 Si 1.6 3.3 %、 Mn 0.2 0.8 %、 P 0.1 %未満、 S 0.05 %未満、 Ni 0.2 1.5 %、 Mg 0.02 0.08 %、 Cr Mo 、V、W:それぞれ 0.70 %以下、かつ(Cr+2V)量0.70%以下、残部 Fe 及び不可避的不純物からなる球状黒鉛鋳鉄であり、さらに
    前記外層の表面が定置誘導加熱焼き入れによりショア硬さ72〜89に硬化されていること
    を特徴とする遠心鋳造製複合中間ロール。
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