JP4372364B2 - 遠心鋳造製熱間圧延用単層スリーブロール - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば鉄鋼の熱間圧延に用いられ、特に耐摩耗性、耐肌荒れ性および耐割損性に優れた熱間圧延用スリーブロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、鉄鋼の熱間圧延分野においては、特にH形鋼等の形鋼圧延において、スリーブロールが多用されており、外層材には高C%アダマイト材、内層材としては、球状黒鉛鋳鉄、黒鉛鋼、アダマイト材が使用されてきた。また、圧延製品の品質向上の要求が高く、圧延用スリーブロールに対しても、高い耐摩耗性、耐肌荒れ性および耐クラック性等が求められてきている。これらの要求に対して、形鋼圧延用スリーブロールとしては、特公平5−14023号公報や特許第2601746号に開示されている。
【0003】
特公平5−14023号公報の技術内容は、外層材には従来から知られている高炭素アダマイト系の材料を、内層材には、焼ばめ芯力や圧延時の発生応力に耐え得るだけの強靱性を満足させるために、特殊鋳鋼材質を採用し、両者を溶着させた複合スリーブロールである。しかしながら、この技術では、内層材の方が低C材質となっているため、外層材より内層材の方が凝固点が高いことに起因する鋳造欠陥が、外内層境界部付近に発生する危険性が極めて高く、また、異種材料を組み合わせた複合構造となっているため、過大な残留応力が発生しやすい。従って、これらが原因で、圧延時にクラックが発生し、スリーブロールの割損に至るという問題がある。
【0004】
また、特許第2601746号の技術内容は、耐摩耗性を重視して、外層材にはVを3.0%以上含有させた高合金系の鋳鋼、鋳鉄を、内層材には強靱性に富む黒鉛鋼を適用した複合スリーブロールである。しかしながら、この特許第2601746号に開示されている複合スリーブロールは、外層材が耐摩耗性を重視してVを3.0%以上含有した高合金系の鋳鋼、鋳鉄材料であるため、強靱性が確保できず、特公平5−14023号公報の技術と同様に内層材に異種材料を組み合わせた複合構造となっている。さらに、外層材が高合金系の材料であるため、熱処理時の変態膨張量が大きく、極めて大きな残留応力が発生する。従って、鋼材の熱間圧延に使用すると、過大な残留応力と焼きばめ応力に圧延時に発生する熱応力と圧延応力が重畳した応力の合計がスリーブロールの材力を超過して、スリーブロールが割損に至る危険性が極めて高く、実際に、この技術は熱間圧延用スリーブロールとして、適用が殆ど進んでいない状況にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、複合スリーブロールの場合、その構造は、外内層境界近傍における鋳造欠陥と過大な残留応力が避け難い状況にあった。また、耐摩耗性を向上させるために外層材の高合金化を図ると、さらに残留応力が過大となる。従って、複合スリーブロールという構造では、外層材の高合金化による耐摩耗性、耐肌荒れ性の向上と耐割損性の両立には限界があった。
【0006】
本発明は、このような従来のスリーブロールが有する課題に鑑みてなされたものであり、CuおよびB,Alの微量複合添加とV,Nbを粒状MC共晶炭化物晶出範囲で適量添加することで、耐摩耗性、耐肌荒れ性および、従来の複合スリーブロールの内層材と同等の強靱性を兼備した材質を提供することにより、外内層を同一材質とした単層構造のスリーブロールの製造を可能とさせ、外内層境界に発生していた鋳造欠陥の完全な防止と、スリーブロールの径方向の硬度差をショア硬度換算で、10度以内とすることで、残留応力の大幅な低減を図り、耐割損性の大幅な向上と耐摩耗性、耐肌荒れ性の向上を両立させた熱間圧延用スリーブロールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述した問題を解消したもので、その発明の要旨とするところは、
(1)化学成分が質量%で、C:1.0〜2.5%、Si:0.2〜2.5%、Mn:0.2〜2.0%、Ni:0.2〜3.0%、Cr:0.5〜15.0%、Mo:0.1〜8.0%、B:0.001〜0.50%、Al:0.001〜0.50%、Cu;0.001〜0.50%を含有し、さらに、V:0.2〜1.9%、Nb:0.2〜3.0%の1種または2種、残部Fe及び不可避的不純物からなる単一材質のスリーブロールであって、焼入れ後のスリーブロールの径方向の硬度差をショア硬度で10度以内としたことを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用単層スリーブロール。
(2)化学成分としてさらに、質量%で、W:0.1〜10.0%、Ti:0.001〜0.50%、Co:0.1〜5.0%の1種または2種以上含有する請求項1記載の遠心鋳造製熱間圧延用単層スリーブロールにある。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
従来技術による熱間圧延用スリーブロールの外層材に適用されている高炭素アダマイト材のミクロ組織は、一般的に適度な熱処理を施してベイナイトもしくはパーライトとなったマトリックス組織と、M3 CあるいはM7 C3 型共晶炭化物で構成されている。本発明では、強度劣化の主因となっているM3 CあるいはM7 C3 型共晶炭化物の均一・微細分散化を図るために、B,Alを微量に複合添加することが有効であることを見出した。
【0009】
また、V,Nbの適量(各0.2〜3.0%)添加により、ネット状に晶出したM3 CあるいはM7 C3 型共晶炭化物の一部を、粒状のMC型共晶炭化物に置換させることで、耐摩耗性、耐肌荒れ性および強靱性を大きく向上させることが可能であることを見出した。さらに、Cuを微量に含有させることで、マトリックス組織の強化も図ることで、熱間圧延用スリーブロール材として、優れた耐摩耗性、耐肌荒れ性および強靱性を兼備させるものである。この材質のみで形成された単層の熱間圧延用スリーブロールは、耐摩耗性、耐肌荒れ性と耐割損性を兼備している。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る各化学成分の限定理由について述べる。
C:1.0〜2.5%
Cは、主として黒鉛およびFe,Cr,Mo,Nb,V,W等と結合して種々の炭化物を形成する。また、マトリックス中に固溶されベイナイトやマルテンサイト相を生成する。多量に含有させるほど、耐摩耗性の向上に有効であるが、2.5%を超えると本発明の特徴である、B,Alを微量に含有させても共晶炭化物が粗大に晶出し、均一・微細分散化が図れないことより、その上限を2.5%とした。また、1.0%未満になると、炭化物が少なく、耐摩耗性の劣化が起こるため下限をこの値にした。
【0011】
Si:0.2〜2.5%
Siは、脱酸作用を目的として添加する。しかし、0.2%未満であるとその効果が不十分であり、逆に、2.5%を超える添加は靱性を低下させるため、その範囲を0.2〜2.5%とする。
Mn:0.2〜2.0%
Mnは、脱酸、脱硫作用を目的として添加する。しかし、0.2%未満であるとその効果が不十分であり、また、2.0%を超えると靱性を低下させるため、その範囲を0.2〜2.0%とする。
【0012】
Ni:0.2〜3.0%
Niは、焼入性の向上と靱性の確保のために添加する。しかし、0.2%未満では、それらの効果が弱く、一方、3.0%を超えると焼入性および靱性の効果が飽和するので、この範囲を0.2〜3.0%とする。
Cr:0.5〜15.0%
Crは、焼入性の増加、硬度の増加、焼き戻し軟化抵抗の増加、炭化物硬度の安定化等のために添加する。しかし、15.0%を超えると共晶炭化物量が、増え過ぎ靱性が低下するため、その上限を15.0%とした。一方、0.5%未満だと前記添加する効果が得られない。従って、その範囲を0.5〜15.0%とする。
【0013】
Mo:0.1〜8.0%
Moは、マトリックス中に固溶されて焼入性、硬度、焼き戻し軟化抵抗等を増加させるとともに、Cと結合してM2 CやM6 C等の共晶炭化物を形成し耐摩耗性を向上させるために添加する。しかし、8.0%を超えると共晶炭化物が増え過ぎて靱性が低下するため、その上限を8.0%とした。一方、0.1%未満では前記添加する効果が得られない。
B:0.001〜0.50%
Bは、0.001%以上で、焼入れ性が高まり、また、靱性の低下を防ぐとともに、晶出する炭化物を均一微細分散化させる効果がある。しかし、過剰になると、靱性が低下するため、0.50%以下に抑える必要がある。従って、その範囲を0.001〜0.50%とする。
【0014】
Al:0.001〜0.50%
Alは、溶湯中で酸化物を生成して、溶湯中の酸素含有量を低下させ、製品の健全性を向上させる共に、生成した酸化物が結晶核として作用するために凝固組織の均一・微細化に効果がある。0.001%でその効果があるが、余り多く含有させると、介在物となって製品中に残存することになるため、その上限は0.50%となるようにする。
Cu:0.001〜0.50%
Cuは、基地組織を強化し高温硬度を向上させるため、前述したB,Al等と共に本発明の主要な化学成分である。0.001%以下では、その効果がなく、一方、0.50%を超えると、耐摩耗性、耐クラック性が低下すると共にロールの表面性状が劣化するため、その上限を0.50%とする。
【0015】
V:0.2〜1.9%
Vは、Cと結合して高硬度のMC型炭化物を形成する重要な元素である。しかし、1.9%未満の場合、晶出するMC型炭化物の形状が粒状となるため、ネット状に晶出したM3 CあるいはM7 C3 型共晶炭化物の一部を、この粒状MC型共晶炭化物に置換させることで、耐摩耗性、耐肌荒れ性および強靱性を大きく向上させることができる。また、マトリックスにも固溶して基地を強化する。基地強化のためには、最低0.2%以上の含有量が必要である。一方、1.9%を超えると、晶出するMC炭化物の形状が粗大なデンドライト状になるため、強靱性が劣化する。従って、その範囲を0.2〜1.9%とする。
【0016】
Nb:0.2〜3.0%
Nbは、マトリックス中に殆ど固溶されず、その殆どが高硬度で粒状のMC型炭化物を形成して、耐摩耗性と強靱性を向上させる。しかし、0.2%未満ではその効果は不十分であり、3.0%を超えて含有させた場合、MC型炭化物が初晶として粗大なデントライト状に晶出するため、強靱性が劣化する。従って、その範囲を0.2〜3.0%とする。
【0017】
また、焼入れ後のスリーブロールの径方向の硬度差をショア硬度で10度以内に限定することは、下記の理由による。本発明の熱間圧延用単層スリーブロールの用途としては、例えば、形鋼、熱延鋼板等の熱間圧延に使用される。その場合スリーブロールに要求される具備特性の一つとして、前記の通り耐摩耗性(耐肌荒れ性)があり、そのため鋳造後のロールは、焼入れを実施し、主として硬度の確保を図る。この場合、単層材質のスリーブロールであっても、径方向の硬度差がショア硬度で、10以上になると従来の複合スリーブロールの如き、ロールの内部で、引張りの残留応力が過大し、圧延使用時にロールが、割損することになる。従って、その上限は10とする。なお、本発明の焼入れ後のスリーブロールの径方向の硬度差は、その後の軸との嵌合のための内側の機械加工等を容易にするため10の範囲内で、ロールの内側の方を外側より低くすると良い。その焼き入れの方法としては、例えば、公知のミスト焼き入れ、ブロワー焼入れとすればよい。
【0018】
本発明材の基本成分は、上記の通りであるが、適用を対象とするロールのサイズ、要求されるロールの使用特性等により、その他の化学成分として、上記した本発明の化学成分に加えて、さらに、以下に記載する化学成分を適宜選択し含有してもよい。
W:0.1〜10.0%
Wは、Moと同様にマトリックス中に固溶されて基地を強化すると共に、Cと結合してM2 CやM6 C等の共晶炭化物を形成し耐摩耗性を向上させるために添加する。基地強化のためには、最低0.1%以上の含有が必要であるが、10.0%を超えると粗大炭化物が形成され靱性が低下する。Wの添加有無の選択については、例えば適用を対象とするロールサイズ、要求されるロールの使用特性等を考慮し、適宜判断するとよい。
【0019】
Ti:0.001〜0.50%
Tiは、Cと結合して高硬度のMC炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させるとともに、マトリックス中に固溶されて基地を強化する。基地強化のためには、最低0.001%以上の含有が必要であるが、0.50%を超えると、共晶のMC炭化物が粗大化しすぎて靱性の低下に繋がるとともに、溶湯の粘性が高まり鋳造性を阻害する。Tiの添加有無の選択については、例えば適用を対象とするロールサイズ、要求されるロールの使用特性等により、適宜判断するとよい。
【0020】
Co:0.2〜5.0%
Coは、その殆どがマトリックス中に固溶され基地を強化する。そのため、高温での硬度および強度を向上させる作用を有している。しかし、0.2%未満ではその効果は不十分であり、5.0%を超えてはその効果が飽和するため、経済性の観点からも5.0%以下が望ましい。Co添加の選択有無については、例えば、使用特性上の高温硬度や摩擦係数低減等を考慮し、その添加の要否を適宜判断するとよい。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を従来材と共に説明する。
(実施例1)
表1に示す化学成分の鋼を高周波誘導炉にて1550℃に溶解した後、該溶湯を、直径100mm、高さ100mmの砂型に1450℃で鋳造した。その後、1000℃からの焼入れ処理とさらに500〜550℃の焼戻し処理を施し熱間摩耗試験片を作成した。なお、前記試験材の製造において、表1に示す本発明例であるA〜N材、及び比較材であるO〜R材について、熱間摩耗試験および表面粗度試験を実施した。
【0022】
【表1】
【0023】
次に、図1に示す熱間回転摩耗試験機を用いて、比較試験を行った。なお、熱間回転摩耗試験機としては、図1に示すような加熱片1および試験片2を接触状態で回転させる転動装置3と、加熱片1および試験片2を囲み、これらを加熱する高周波誘導加熱コイル4と冷却装置5と、放射温度計6とを備えたディスク対ディスクタイプの試験機を使用した。その時の試験条件は、両ディスク間の最大接触応力は約250N/mm2 で、試験片2の周速度(回転数)は、720rpmとし、両ディスク間のすべり率は、4.5%で行った。また、熱間圧延材に相当する加熱片の温度は960℃とし、試験片の温度は650℃として500回転動させ、試験片の摩耗量を測定した。その後、該摩耗試験後の試験片の表面粗度を各々測定した。
【0024】
図2は本発明材A〜N材および比較材O〜R材の熱間回転摩耗試験による摩耗減量の測定結果を示す図である。また、図3は、本発明材、および比較材の熱間回転摩耗試験後の試験片の表面粗度の測定結果を示す図である。この図2及び図3から明らかなように、本発明材のA〜N材は比較材O〜Rに比較し、いずれもその摩耗減量が少なく、また、耐肌荒れ性の評価の指標となる表面粗度も小さくなっている。
以上の各種の試験結果により、本発明材は、実際の圧延ロールに適用した場合、その目的とする耐摩耗性と耐肌荒れ性の作用・効果を十分に奏することが明らかとなり、続いて、実際の圧延ロールに適用した結果について説明する。
【0025】
(実施例2)
低周波誘導炉を用いて溶解した表2に示す本発明ロール3本、従来例としての比較材ロール2本の化学組成の溶湯を、水平式の遠心鋳造機に組み込んだ内径1250mm、長さ1000mmの回転鋳型内に鋳造して、スリーブロール用素材を作製した。次に、粗削加工を行い、1000℃の焼入れと500〜550℃で数回の焼き戻し処理を実施した後、機械加工により、寸法が外径1200mm、内径560mm、幅500mmのスリーブロール本体を作製した。このスリーブロール本体の品質確性のために、▲1▼超音波探傷による内部性状検査、▲2▼ロールの径方向における硬度分布を10mmピッチで測定、▲3▼X線によりスリーブロール内面における残留応力の測定、さらに、▲4▼スリーブロール本体の機械的性質を調査するために、素材の余長部を利用して機械試験を実施した。以下にその結果について説明する。
【0026】
▲1▼超音波探傷による内部性状検査の結果、5本のスリーブロールは、何れも欠陥のない健全なものであることを確認した。▲2▼ロールの径方向における硬度分布の測定結果を図4に示す。この図から明らかなように、比較ロール1および2の径方向におけるショア硬度での硬度差は、25、30と大きく、一方、本発明ロール1、2、3では、その硬度差は、3、5、8と何れも10以下の小さなものとなっている。▲3▼X線によりスリーブロール内面における残留応力の測定結果を表2に示す。前記の硬度差の説明および表2より、ロールの径方向における硬度差がショア硬度で10度以内とした本発明ロール1、2、3では、何れもスリーブロール内面における残留応力は、周方向、軸方向ともに従来のスリーブロール1、2と比較して、約80%低減されており、単層のスリーブロールを採用した効果が極めて大きいことが確認できた。
【0027】
これは、従来の複合スリーブロールの場合、異種材料を金属結合させているため、焼入れ時に発生する変態膨張量が外内層で異なるため、その差が残留応力に加算され、結果的に大きな残留応力となっていたが、本発明の単層スリーブロールの場合、単一材質で形成されていることを特徴とするため、変態膨張量差が極めて少ないことに起因する効果である。
▲4▼スリーブ内面における機械的性質は、表2に示すように、引張強度、伸びともに、従来の複合スリーブロールの内層材並みに確保できており、本発明材は従来の複合スリーブロール内層材と同等以上の機械的性質を有することも確認できた。
【0028】
【表2】
【0029】
その後、別途作製した、例えば鋼製のロール軸に、本発明のスリーブロールを焼きばめ方式により取付け、一体型の圧延用ロールとして組み立てた後、実際の形鋼圧延に供した。その結果、従来のアマダイト複合スリーブロールに比べて、耐摩耗性および耐肌荒れ性の向上によりロールの原単位が、約3倍に向上するとともに、割損等のトラブルもなく、本発明材の効果が多大であることを確認した。なお、本発明スリーブロールは、形鋼圧延に限らず、例えばホットストリップミルの粗圧延用ロールやエッジャーロール等、鉄鋼の熱間圧延全般に適用してもよい。
【0030】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のスリーブロール用材質は、マトリックス組織を強化するために、Cuを微量に含有させるとともに、M3 CあるいはM7 C3 型共晶炭化物の均一・微細分散化を図るために、B,Alを微量に複合添加させ、さらに、V,Nbを粒状のMC型共晶炭化物が晶出する範囲内で、適量添加することにより、ネット状に晶出したM3 CあるいはM7 C3 型共晶炭化物の一部を、粒状のMC型共晶炭化物に置換させることで、耐摩耗性、耐肌荒れ性および強靱性を大きく向上させたものである。
【0031】
つまり、本発明のスリーブロール用材質は、優れた耐摩耗性、耐肌荒れ性とともに、従来の熱間圧延用複合スリーブロールの内層材と同等の強靱性を同時に確保させたものである。従って、本発明の材質を熱間圧延用スリーブロールに適用することにより、耐摩耗性および耐肌荒れ性の向上と同時に、スリーブロールの構造を従来の異種材質を組合せた複合構造から、本発明材のみで形成された単層構造とすることが可能となるため、外内層境界部に発生する鋳造欠陥の防止と残留応力の大幅な低減により、耐割損性を飛躍的に向上させることが可能となった。この結果、圧延ロールの長寿命化によるロール原単位の大幅な向上が達成できる。また、ロール性能の向上による圧延製品の品質改善にも、大幅に寄与する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間回転摩耗試験機の概要構成を示す説明図である。
【図2】本発明材及び比較材の回転摩耗試験による摩耗減量を示す図である。
【図3】本発明材及び比較材の回転摩耗試験後の表面粗度を示す図である。
【図4】スリーブロールの径方向における硬度分布の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1 加熱片
2 試験片
3 転動装置
4 高周波誘導加熱コイル
5 冷却装置
6 放射温度計
Claims (2)
- 化学成分が質量%で、
C:1.0〜2.5%、
Si:0.2〜2.5%、
Mn:0.2〜2.0%、
Ni:0.2〜3.0%、
Cr:0.5〜15.0%、
Mo:0.1〜8.0%、
B:0.001〜0.50%、
Al:0.001〜0.50%、
Cu;0.001〜0.50%、
を含有し、さらに、
V:0.2〜1.9%、
Nb:0.2〜3.0%、
の1種または2種、残部Fe及び不可避的不純物からなる単一材質のスリーブロールであって、焼入れ後のスリーブロールの径方向の硬度差をショア硬度で10度以内としたことを特徴とする遠心鋳造製熱間圧延用単層スリーブロール。 - 化学成分としてさらに、質量%で、
W:0.1〜10.0%、
Ti:0.001〜0.50%、
Co:0.1〜5.0%
の1種または2種以上含有する請求項1記載の遠心鋳造製熱間圧延用単層スリーブロール。
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