JP3376832B2 - 電池の最大充放電電力演算方法 - Google Patents

電池の最大充放電電力演算方法

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JP3376832B2
JP3376832B2 JP25858796A JP25858796A JP3376832B2 JP 3376832 B2 JP3376832 B2 JP 3376832B2 JP 25858796 A JP25858796 A JP 25858796A JP 25858796 A JP25858796 A JP 25858796A JP 3376832 B2 JP3376832 B2 JP 3376832B2
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discharge power
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電池の最大充放電
電力演算方法に関する。 【0002】 【従来の技術】電気自動車等の電池の放電電力および充
電電力は、それぞれ最大放電電力および最大充電電力以
下となるように制御される。これらの最大放電電力およ
び最大充電電力を算出する際に、次のような演算方法で
算出することが提案されている。従来、ある種の電池
(例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池)で
は電池の放電深度(以下、DOD(Depth of Discharge)
と呼ぶ)が浅い状態(0〜60%)では充電時と放電時
の内部抵抗がほぼ一致するとともに、充放電時のVI特
性の直線性がよい。そのため、放電中に測定された端子
電圧Vおよび放電電流Iに基づいてIV特性を直線回帰
演算することができ、さらに回帰直線を充電側および放
電側に延長することができる。図15はこの演算方法を
説明する図であり、放電中の電池のI,Vをサンプリン
グし、そのサンプリングデータから得られた回帰直線を
示したものである。図15では、上述した理由により回
帰直線を充電側に延長して示している。図中の×印はサ
ンプリングデータを表しており、放電中に測定された端
子電圧Vおよび放電電流Iに基づいてIV特性を直線回
帰演算する。 【0003】回帰直線は、次式(1)で表わすことがで
きる。 【数1】V=E0−I・R …(1) ここで、V軸切片E0は電池の開放電圧を表わし、回帰
直線の傾きが電池の内部抵抗Rを表わす。回帰直線と充
電時の許容最大電圧Vmaxとの交点Aの電流ICmaxは充
電許容値を与え、一方、放電時の放電停止電圧Vminと
の交点Bの電流Imaxは放電許容値を与える。そして、
最大放電電力Pmaxは、式(1)より 【数2】 Pmax=Vmin・Imax=Vmin・(E0−Vmin)/R …(2) で得られる。一方、最大充電電力PCmaxは、 【数3】 PCmax=Vmax・ICmax=Vmax・(E0−Vmax)/R …(3) で得られる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、精度の良い
回帰演算が行われるためには、広い電流範囲にわたって
サンプリングデータが得られる必要がある。すなわち、
図16(a)に示すようにIおよびVが変化する走行パ
ターンであれば、図16(b)のようなサンプリングデ
ータが得られ回帰直線L10を得ることができる。しか
しながら、一定速走行時や走行開始時には電池の放電電
力に適当な変動がなくIおよびVの変動は図17(a)
のようになる。そのためサンプリングデータは放電電流
Iに関して狭い範囲のデータしか得られず、このような
場合には回帰直線を得ることができないという欠点があ
った。 【0005】本発明の目的は、電気自動車等の電気車が
一定速走行時や走行開始時であっても、精度良く電池の
最大充放電電力を算出することができる最大充放電電力
演算方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明による最
大充放電電力演算方法は、電池の放電電力量と最大放電
電力との相関関係を予め算出し、電池の端子電圧および
電流値を用いた回帰演算により実最大放電電力を算出
し、最大放電電力に代えて実最大放電電力を用いること
により、相関関係から演算放電電力量を算出し、端子電
圧値および電流値を積算して放電電力積算量を算出し、
演算放電電力量および放電電力積算量に基づいて電池の
放電深度に応じた実効放電電力量を算出し、相関関係と
実効放電電力量とに基づいて最大放電電力および最大充
電電力の少なくともいずれかを算出することにより上述
の目的を達成する。 【0007】 【発明の効果】請求項1の発明によれば、演算放電電力
量の誤差特性と放電電力積算量の誤差特性の相違に着目
して算出される実効放電電力量に基づいて最大放電電力
や最大充電電力を求めるようにしたので、精度の向上し
た演算を行うことができる。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、図1〜図14を参照して本
発明の実施の形態を説明する。本発明では、上述したよ
うに電気車が電力変動のほとんど無い一定速走行状態に
あったり走行開始時に、回帰演算による最大放電電力P
maxの演算が不可能となって最大放電電力Pmaxが求まら
ない場合には、以下に述べるような方法で最大放電電力
Pmaxを算出する。そして、その算出値Pmaxに基づいて
放電時の出力制限制御や回生充電時の回生制限制御等を
行う。 【0009】図1はPmaxの算出方法を説明する図であ
る。L1は電池の放電電力量Whと最大放電電力Pmax
との関係を表す特性曲線でありWh(P)と表す。ここ
で、Pは最大放電電力を表す変数であり横軸に取り、縦
軸を放電電力量Wh(P)とする。この特性式Wh
(P)は電池の初期特性等から周知の方法により求めら
れ、鉛酸電池,ニッケルイオン電池,Ni−MH電池等
ではPのN次式(大部分は2次または3次で近似でき
る)で近似することができる。そこで、PのN次式で表
される特性式Wh(P)の逆関数P(Wh)を求め、放
電電力量Whとして常時IVを実測積算して求められる
放電電力積算量WhRを代入することによって現在の最
大放電電力Pmaxを算出することができる。例えば、W
h(P)が次式(4) 【数4】 Wh(P)=aP3+bP2+cP+d …(4) のようにPの3次式で表される場合には、左辺を放電電
力積算量WhRとした式(5)をニュートン法等を用い
てPについて解くことにより放電電力量がWhRである
ときの最大放電電力Pmaxが得られる。 【数5】 WhR=aP3+bP2+cP+d …(5) ここで、係数a,b,c,dは初期電池特性から決定さ
れる。 【0010】次いで、Pmaxの第2の算出方法を説明す
る。この第2の方法では特性式Wh(P)を予め用意し
ておく代りに最大放電電力と放電電力量に関するテーブ
ルを用意しておき、前記放電電力量として放電電力積算
量WhRを用いてテーブルから直線補間計算してPmax
を算出する。このテーブルを使用する方法の場合、特性
式Wh(P)を用いる方法の場合に比べて次のような利
点がある。 (a)2次や3次の方程式をニュートン法により解く場
合に比べて演算時間の短縮が図れる。 (b)Wh(P)が2次または3次特性とならない場合
でも、補間演算の場合には用意に対応できる。 【0011】なお、上述した2つの方法では最大放電電
力Pmaxについて説明したが、最大充電電力PCmaxに関
しても同様な方法で求めることができる。 【0012】図2は、電気自動車の走行駆動機構の構成
を示すブロック図であり、この図を用いて上述した最大
放電電力Pmaxおよび最大充電電力PCmaxに基づく電気
自動車の出力制御および回生制御を説明する。図2にお
いて、電池11はインバータ12に直流電力を供給し、
インバータ12は直流電力を交流電力に変換して走行エ
ネルギーを発生する。また、回生時には車両の走行エネ
ルギーがモータ13およびインバータ12を介して電気
エネルギーに逆変換され、電池11が充電されるととも
に車両に回生ブレーキがかかる。電圧センサ14は電池
11の両端電圧Vを検出し、電流センサ15は電池11
に流れる電流Iを検出する。17は電池11の温度Tを
検出する温度センサである。なお、電流Iは、モータ駆
動時に電池11からインバータ12へ流れる方向を正と
し、回生充電時にインバータ12から電池11へ流れる
方向を負とする。コントローラ16は、電圧センサ14
および電流センサ15により検出された電圧Vと電流I
とに基づいて、電池11の最大放電電力と最大充電電力
を演算し、演算結果に基づいてインバータ12の出力制
御や回生制御などを行なう。 【0013】図3は、コントローラ16の処理を示すフ
ローチャートである。このフローチャートにより電気自
動車の出力制限制御および回生制限制御時の動作を説明
する。ステップS1では、V,Iをサンプリングしてサ
ンプリングデータを所定電流領域毎に分類してストック
する。このサンプリングは所定の放電電力量範囲毎に行
い、次のようにストックする。放電電流Iの範囲を複数
の領域に分割し、各領域ごとに所定個数のストックメモ
リを用意する。例えば、図4(a)に示すように放電電
流の範囲を5つの領域に分割し、各領域ごとに3個ずつ
ストックメモリを用意する。そして、所定の放電電力量
範囲内において電流inと電圧vn(nはサンプリング順
位を示す)とをサンプリングし各電流領域毎にストック
する。なお、各電流領域におけるデータが所定個数に達
したら、最も古いデータを消去して最新のデータをスト
ックする。このように各電流領域に関して所定個数まで
のデータしかストックしないので、特定の電流域に集中
したサンプリングデータに基づくIV特性の直線回帰が
避けられるとともに、コントローラ16に膨大なメモリ
容量を確保する必要もなくなる。 【0014】ステップS2は、狭い電流範囲における回
帰演算を防止して演算精度を上げるために3つ以上の分
割電流領域にサンプリングデータがストックされている
か否かを判断するステップである。図4(a)に示すよ
うに3つ以上の領域にデータがストックされていればス
テップS3へ進み、ストックされたサンプリングデータ
によりIV特性を直線回帰して電池の内部抵抗(回帰直
線の傾き)および開放電圧(回帰直線のV切片)を求め
ステップS4へ進む。ステップS4では、ステップS3
で求めた回帰直線から前述した式(2),(3)を用い
て最大放電電力Pmaxおよび最大充電電力PCmaxを算出
する。図4(b)は回帰直線を示す図であり、図中の番
号は図4(a)のデータのサンプリング順位nを示し、
電流i(横軸)を各電流領域に分割して示した。 【0015】一方、ステップS2において3つ以上の電
流領域にサンプリングデータがストックされていなかっ
た場合、すなわち所定放電電力量範囲の間にパワー演算
可能なサンプリングデータが得られなかった場合にはス
テップS7へ進んでN=N+1とする。ここで、Nはス
テップS1〜S3までの処理を何回行ったかを示す変数
であり、初期値は零である。ステップS8では処理回数
が規定回数以上となったか否かを判断するステップであ
り規定回数より小であるならばステップS1へ戻り、規
定回数以上の場合にはステップS9へ進んで本発明の方
法によるPmax,PCmaxの算出を行うパワー(最大放電
電力)演算補償の処理を実行する。このパワー演算補償
の処理は上述した2つの方法のいずれかで行われる。ス
テップS9の処理が終了してPmax,PCmaxが終了した
ならばステップS10に進んで変数Nを零にリセット
し、ステップS5へ進む。 【0016】ステップS5では、算出した最大放電電力
Pmaxと最大充電電力PCmaxをインバータ12へ出力し
て走行時の電力が最大放電電力Pmax以下になるように
出力制御を行なうとともに、回生時の電力が最大充電電
力PCmax以下になるように回生制御する。その後ステ
ップS6へ進んでストックデータを消去した後、ステッ
プS1へ戻る。コントローラ16は電気自動車の運行中
はこの処理を繰り返し実行する。 【0017】次いで、ステップS5の出力制御および回
生制御、すなわち、出力制限制御および回生制限制御に
ついて説明する。まず最初に出力制限制御について説明
する。算出された最大放電電力Pmaxは多少の誤差を含
むことがあり、車両の走行パターンに応じて最大出力が
要求され、最大放電電力Pmaxまで放電を行なった時に
最大放電電力Pmaxに誤差があると端子電圧Vが放電終
止電圧Vminを下回ってしまうおそれがある。そこで、
図5に示すように、端子電圧Vが予め定められた基準電
圧V1以下になった時に制限係数Kにより最大放電電力
Pmaxを補正して出力制限を行なう。この出力制限は所
定時間T2ごとに繰り返し、端子電圧Vが基準電圧V1
以上になるまで行なう。図5において、時刻t1で放電
を開始し、放電電力が最大放電電力Pmaxを越えたとす
る。端子電圧Vが基準電圧V1以下になった時刻t2
で、制限係数Kを1からkに更新する。制御遅延時間T
1後の時刻t3で、最大放電電力はk・Pmaxに制限さ
れる。この結果、放電電流Iが減少し、端子電圧Vが増
加する。 【0018】時刻t2からT2時間後の時刻t4におい
て、端子電圧Vと基準電圧V1を比較し、V<V1であれ
ば制限係数Kを更新して出力を制限し、V≧V1であれ
ば制限係数Kおよび最大放電電力Pmaxを変更しない。
この例では、時刻t4でV<V1であるから、制限係数
Kをk2とする。制御遅延時間T1後の時刻t5で、最
大放電電力がk2・Pmaxに制限され、放電電流Iが減少
し、端子電圧Vが増加する。次に、時刻t4からT2時
間後の時刻t6においても、V<V1であるから制限係
数Kをk3に更新する。制御遅延時間T1後の時刻t7
で、最大放電電力がk3・Pmaxに制限される。その結
果、放電電流Iが減少し、端子電圧Vが増加する。時刻
t6からT2時間後の時刻t8では、端子電圧Vが基準
電圧V1よりも高く、したがって制限係数Kを更新しな
い。 【0019】放電開始直後の時刻t1からt8までの期
間は、放電電力がオーバーシュートし、最大放電電力P
maxがT2時間ごとに頻繁に制限されている。上述した
ように、この放電開始直後の放電電力のオーバーシュー
トは最大放電電力Pmaxの演算誤差に起因するものであ
る。一方、定常状態になった時刻t9において、ふたた
びV<V1が検出され、制限係数Kがk4に更新される。
時刻t9の制御遅延時間T1後の時刻t10で、最大放
電電力がk4・Pmaxに制限され、放電電流Iが減少し、
端子電圧Vが増加する。この定常状態における放電電力
の超過は、上述したように長時間にわたって放電が継続
したためである。時刻t12において放電モードから回
生充電モードに切り換わると、端子電圧Vは急激に上昇
し、この時点において制限係数Kを1にリセットする。 【0020】なお、基準電圧V1は、 【数6】V1≧Vmin …(6) を満たす任意の値を選択することができる。また、出力
制限処理の繰り返し時間T2は制御遅延時間T1よりも
長い時間とし、定数kは放電電力のオーバーシュートが
所定の収束時間内に0になる最適な値を設定する。 【0021】図6は出力制限制御を行うための処理を示
すフローチャートである。ステップS21において、端
子電圧Vを基準電圧V1と比較し、V<V1であればステ
ップS22へ進み、V≧V1であればステップS28へ
進む。V≧V1の時は、ステップS28で電流Iが負
か、すなわち放電モードから回生充電モードに切り換わ
ったかどうかを確認する。放電モードのままであればス
テップS21へ戻り、回生充電モードに切り換わるとス
テップS27へ進む。ステップS27では、出力制限回
数を示す変数nに0を設定して処理を終了する。一方、
V<V1の時は、ステップS22で出力制限回数を示す
変数nをインクリメントする。なお、変数nの初期値は
0である。 【0022】ステップS23で制限係数Kを設定する。
第1回目の出力制限時にはn=1であるから、制限係数
Kはkである。ステップS24で、演算された最大放電
電力Pmaxに制限係数Kを乗じて補正する。ステップS
25では、タイマーにT2時間を設定してスタートさせ
る。このT2時間は、図6で説明した出力制限制御の繰
り返し時間である。ステップS26で、電流Iが負か、
すなわち放電モードから回生充電モードに切り換わった
かどうかを確認し、回生充電モードに切り換わったらス
テップS27へ進み、変数nに0を設定して処理を終了
する。一方、放電モードが継続している時はステップS
29へ進み、タイマーがタイムアップしてT2時間が経
過したかどうかを確認する。T2時間が経過したらステ
ップS21へ戻り、上記処理を繰り返す。 【0023】次いで、回生制限制御について説明する。
走行時と同様に回生充電時においても、車両の走行パタ
ーンによっては最大充電電力PCmaxを越える回生電力
が発生することがある。最大充電電力PCmaxは放電電
流の立ち上がりから比較的短時間の間にサンプリングさ
れたデータに基づいて演算された電力であり、短時間に
回生充電可能な電力ということができる。算出された最
大充電電力PCmaxは多少の誤差を含むことがあり、車
両の走行パターンに応じて最大回生ブレーキ力が要求さ
れ、最大充電電力PCmaxで充電を行なった時に、最大
充電電力PCmaxに誤差があるとその分だけ端子電圧V
が許容最大電圧Vmaxを越えてしまう。 【0024】そこで、図7に示すように、端子電圧Vが
基準電圧V2を越えた時に制限係数Jにより最大充電電
力PCmaxを補正して回生制限を行なう。この回生制限
は所定時間T2ごとに繰り返し、端子電圧Vが基準電圧
V2以下になるまで行なう。図7において、時刻t1で
回生充電を開始し、充電電力が最大充電電力PCmaxを
越えたとする。端子電圧Vが基準電圧V2を越えた時刻
t2で、制限係数Jを1からjに更新する。制御遅延時
間T1後の時刻t3で、最大充電電力PCmaxがj・P
Cmaxに制限される。この結果、充電電流Iおよび端子
電圧Vが減少する。時刻t2からT2時間後の時刻t4
において、端子電圧Vと基準電圧V2を比較し、V>V2
であれば制限係数Jを更新して出力を制限し、V≦V2
であれば制限係数Jおよび最大充電電力PCmaxを変更
しない。この例では、時刻t4でV>V2であるから、
制限係数Jをj2とする。制御遅延時間T1後の時刻t
5で、最大充電電力がj2・PCmaxに制限され、充電電
流Iおよび端子電圧Vが減少する。次に、時刻t4から
T2時間後の時刻t6においても、V>V2であるから
制限係数Jをj3に更新する。制御遅延時間T1後の時
刻t7で最大充電電力がj3・PCmaxに制限され、放電
電流Iおよび端子電圧Bが減少する。時刻t6からT2
時間後の時刻t8では、端子電圧Vが基準電圧V2より
も低く、したがって制限係数Jを更新しない。 【0025】回生充電開始直後の時刻t1からt8まで
の期間は、充電電力がオーバーシュートし、最大充電電
力PCがT2時間ごとに頻繁に制限されている。上述し
たように、この回生充電開始直後の充電電力のオーバー
シュートは最大充電電力PCmaxの演算誤差に起因する
ものである。一方、定常状態になった時刻t9におい
て、ふたたびV>V2が検出され、制限係数Jがj4に更
新される。制御遅延時間T1後の時刻t10で、最大充
電電力がj4・PCmaxに制限され、充電電流Iおよび端
子電圧Vが減少する。この定常状態における充電電力の
超過は、上述したように長時間にわたって充電が継続し
たためである。時刻t12において回生充電モードから
放電モードに切り換わると、端子電圧Vは急激に低下
し、この時点において制限係数Jを1にリセットする。 【0026】なお、基準電圧V2は、 【数7】V2≦Vmax …(7) を満たす任意の値を選択することができる。また、回生
制限処理の繰り返し時間T2は制御遅延時間T1よりも
長い時間とし、定数jは充電電力のオーバーシュートが
所定の収束時間内に0になる最適な値を設定する。 【0027】上述した出力制限制御と回生制限制御で
は、同一の時間間隔T2で制限処理を行なう例を示した
が、出力制限と回生制限においてそれぞれ別個の時間間
隔でそれぞれの制限処理を行なうようにしてもよい。 【0028】図8は上述した回生制限制御を説明するた
めの処理を示すフローチャートである。ステップS31
において、端子電圧Vを基準電圧V2と比較し、V>V2
であればステップS32へ進み、V≦V2であればステ
ップS38へ進む。V≦V2の時は、ステップS38で
電流Iが正か、すなわち回生充電モードから放電モード
に切り換わったかどうかを確認する。回生充電モードの
ままであればステップS31へ戻り、放電モードに切り
換わるとステップS37へ進む。ステップS37では、
回生制限回数を示す変数mに0を設定して処理を終了す
る。 【0029】一方、V>V2の時は、ステップS32で
回生制限回数を示す変数mをインクリメントする。な
お、変数mの初期値は0である。ステップS33で制限
係数Kを設定する。第1回目の出力制限時にはm=1で
あるから、制限係数Jはjである。ステップS34で、
演算された最大充電電力PCmaxに制限係数Jを乗じて
補正する。ステップS35では、タイマーにT2時間を
設定してスタートさせる。このT2時間は、図7で説明
した回生制限制御の繰り返し時間である。ステップS3
6で、電流Iが負か、すなわち回生充電モードから放電
モードに切り換わったかどうかを確認し、放電モードに
切り換わったらステップS37へ進み、変数mに0を設
定して処理を終了する。一方、回生充電モードが継続し
ている時はステップS39へ進み、タイマーがタイムア
ップしてT2時間が経過したかどうかを確認する。T2
時間が経過したらステップS31へ戻り、上記処理を繰
り返す。 【0030】[Wh−P特性の温度補正および劣化補
正]上述したように、IV特性を直線回帰して最大放電
電力Pmax,最大充電電力PCmaxをパワー演算により算
出できない場合には、Wh−P特性を表す特性式Wh
(P)やWh−P特性テーブルに基づいてPmax,PCm
axを算出したが、これら特性式Wh(P)やWh−P特
性テーブルに電池の温度補正および劣化補正を施すこと
により、より正確なPmax,PCmaxを算出することがで
きる。以下では、これら温度補正および劣化補正につい
て説明する。 【0031】図9(a)〜9(c)は温度補正および劣
化補正を説明する図であり、特性式Wh(P)を示して
いる。図9(a)の曲線L2は初期電池の特性から求め
られる初期特性式Wh0(P)を示す。ここで、Wh
0(P)が次式(8)で近似することができるリチウム
イオン電池の場合について説明する。 【数8】 Wh0(P)=aP3+bP2+cP+d …(8) 【0032】次に、図9(b)に示すように式(8)に
対して温度補正を行う。初期特性式Wh0(P)に対す
る温度補正係数をαとすると、温度補正後の式は次式
(9)のように表され、 【数9】 Wh(P)=Wh0(P/α) =a(P/α)3+b(P/α)2+c(P/α)+d …(9) 図9(b)の曲線L3のようになる。図からも分かるよ
うにαはパワーに対する比例分であって、温度補正式の
P切片PrefはPref=P0×αとなる。なお、αは電池
の内部抵抗変化を表すパラメータであり、温度に応じた
テーブル参照値である。また、P0は式(8)のP切片
である。 【0033】さらに、温度補正された式(9)に対して
式(10)で表されるような劣化補正を行うことによっ
て、温度補正および劣化補正が行われた関係式Wh
(P)が求められる。 【数10】 Wh(P)=Wh0(P/αγ)×β =aβ(P/αγ)3+bβ(P/αγ)2+cβ(P/αγ)+dβ …(10) ここで、γは電池の内部抵抗変化を、βは電気容量変化
を表すパラメータであり、β=γを基本とするが、実際
には温度に応じた補正係数η(テーブル参照値)を用い
て、または、βとγの相関関係をηとしてβ=γ×ηで
与えられる。式(10)で表されるWh(P)は図9
(c)の曲線L4のようになる。なお、上述した方法は
放電電力量と最大放電電力との間に上記のような相関が
あれば適用可能であり、鉛酸,Ni−MHなどの電池種
を問わず使用できる。ただし、温度補正,劣化補正をど
の係数(α、β、γ)に当てはめるかについては各電池
毎に検討をする必要がある。 【0034】ここで、劣化補正係数γの算出方法につい
て説明する。劣化補正係数γは、電池の満充電定義区間
(図9(c)のEで示す区間)においてパワー演算値が
得られる度に次式(11)を用いて演算し、バックアッ
プメモリ(例えば、EEPROM)に蓄積しておく。 【数11】 γ=Pful/Pref=Pful/(P0×α) …(11) ここで、Pfulは満充電定義区間で得られたパワー演算
値の平均値である。蓄積した複数の演算値の平均処理を
行い、さらに前回劣化補正式を算出したときに得たγの
値との平均を算出し更新する。 【0035】[WhRにおけるパワー演算方式とWh積
算方式の併用]上述した最大放電電力Pmaxおよび最大
充電電力PCmaxを算出する方法では、放電電力積算量
WhRと特性式Wh(P)またはWh−P特性テーブル
に基づいてPmax,PCmaxを求めた。ところで、放電電
力量を算出する方法としては、上述したようなWhRを
求めるWh積算方式および特性式Wh(P)を用いたパ
ワー演算方式がある。そして、Wh積算方式では放電電
力測定時の電流,電圧誤差の累積が誤差の要因となるた
め、Wh演算値が大きくなるにつれて(すなわち放電深
度DODが深くなるにつれて)誤差が大きくなり、一
方、パワー演算方式の場合には、Wh演算値が小さい
(放電深度が浅い)ところで誤差が大きく、Wh演算値
が大きくなるにつれて誤差が小さくなる。そこで、パワ
ー演算方式とWh積算方式を併用し、放電深度DODに
応じて誤差の小さい方に重み付けすることにより放電電
力積算量WhRの誤差を小さくすることができる。その
結果、算出される最大放電電力Pmaxおよび最大充電電
力PCmaxの精度が向上するという利点がある。 【0036】パワー演算方式とWh積算方式とを併用し
て放電電力量を算出する際には、重み付けや切り換えの
要因として以下の2つの要因が考えられる。1つ目の要
因はパワー演算方式を用いた場合の誤差に関係してお
り、図10を用いて説明する。パワー演算方式では、電
池の電流変化を捉えて電流Iおよび電圧Vを測定し、測
定した複数のI,Vから図10(a)に示すようにIV
特性を一次回帰演算してその回帰直線と放電終止電圧V
minとの交点からその時の電池の最大出力Pmaxを算出す
る。そのため、電圧Vに±ΔVの誤差が生じると図10
(b)のように回帰直線から得られる電流Imaxに誤差
±ΔImaxが生じることになり、その結果、最大出力Pm
axに誤差ΔP=Vmin×ΔImaxが生じる。図10(b)
において、直線B1で示される電池の内部抵抗Rは、直
線B2で示される電池の内部抵抗Rより小さく電池性能
が良いが、図からもわかるように内部抵抗Rが小さいほ
ど誤差±ΔImaxが大きくなる。誤差±ΔImaxが生じる
と、図10(c)に示すようにWh−P特性から得られ
る放電電力にもΔPに応じて誤差ΔWhが生じる。ここ
で、放電深度DODが浅い領域C1でとDODが深い領
域C2とを比較すると、DODが浅い方が誤差ΔWhが
大きいことが分かる。 【0037】次に、切り換えに関する2つ目の要因は、
電池種によって電池特性が異なることに関係している。
図11は図10(c)と同様の特性式Wh(P)を示す
図であるが、(a)はリチウムイオン電池の場合、
(b)は鉛酸電池の場合を表したもである。なお、わか
りやすいように横軸をDODで示した。図7(a)のリ
チウムイオン電池の場合には最大放電電力と放電深度D
OD(放電電力量Wh(P))とが一対一で対応してい
るが、図10(b)の鉛酸電池の場合には、図のような
放電電力Piでは二つの放電深度DOD(放電電力量W
h(P))が対応している。そのため、リチウムイオン
電池のような特性を有する電池では放電深度DODの全
域でパワー演算方式が使用可能であるが、鉛酸電池のよ
うに図11(b)のような特性を有する電池ではDOD
が図のFより深くなったところ(Fより図示右側)でし
かパワー演算方式が使えない。よって、パワー演算方式
とWh積算方式を併用する際には、放電深度DODが浅
い領域ではWh積算方式の割合を大きくし、逆に、放電
深度DODが深くなる放電末期にはパワー演算方式の割
合を大きくする。 【0038】なお、ここで放電深度CAPDODを次式
(12)で定義し、以下の説明ではこの放電深度CAP
DODを用いて説明する。 【数12】 CAPDOD=WhR/Wh(Pmin) …(12) 式(12)において、WhRは放電電力積算量、Wh
(Pmin)は電池のフル容量であって車両として最低限
必要な最低保証出力Pminを保証できる絶対容量であ
り、Wh(Pmin)は特性式Wh(P)にPminを代入し
た値である。図12は、電池の残存容量を示す残存容量
計の原点(EMPTY)とCAPDODとの関係を示す
図である。放電電力積算量WhRが大きくなるにつれて
CAPDODは0%から増加する。そして、CAPDO
Dが100%になる前に残存容量計はEMPTYを表示
する。この時点で、車両は出力がPminとなるCAPD
OD100%まで走行可能である。すなわち、残存容量
計がEMPTYを表示しても図に示すΔWhだけの余裕
を備えている。 【0039】上述したように2つの方式へ重み付けをし
た場合、Wh積算方式で求められた放電電力積算量Wh
Rとパワー演算方式で算出された演算放電電力量Wh
(Pmax)とを併用して算出される実効放電電力量Wh
Eは次式(13)のように表される。 【数13】 WhE=WhR×M(CAPDOD)+Wh(Pmax)×{1−M(CAPDOD)} …(13) ここで、重みM(CAPDOD)は放電深度CAPDODの関
数である。例えば、 【数14】 M(CAPDOD)=1−CAPDOD …(14) とすれば、図13(a)に示すように重みMは放電深度
CAPDODが深くなるにつれて1から零へと小さくな
り、図13(b)のように実効放電電力量WhEはWh
RからWh(Pmax)へと移行する。また、図13
(c)は所定の放電深度CAPDODでWh積算方式か
らパワー演算方式に切り換えた場合のCAPDODとM
(CAPDOD)の関係を示したものである。 【0040】このようにして得られた実効放電電力量W
hEを式(5)のWhRの代りに用いる。ただし、演算
放電電力量Wh(Pmax)はパワー演算によって算出さ
れる量であるため、一定速走行時のようにパワー演算が
行えない領域では、その領域のみWh積算方式で放電電
力積算量WhRを算出する。図14(a)はその一例を
示す特性式Wh(P)の図であり、領域D1およびD3
ではパワー演算可能で領域D2ではパワー演算不可能で
あると仮定する。そこで、図13(a)で示すような重
みMの代りに図14(b)で示すような重みMを用い
る。図14(b)では、図14(a)の領域D1,D
2,D3に対応する放電深度CAPDODの領域はそれ
ぞれD1’,D2’,D3’であり、領域D2’では重
みMは1となり式(13)のWhEは次式(15)とな
る。 【数15】WhE=WhR …(15) 【0041】以上説明した発明の実施の形態と特許請求
の範囲の要素との対応において、特性式Wh(P)およ
びWh−P特性テーブルは相関関係に対応している。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による最大放電電力Pmaxの算出方法を
説明する図。 【図2】電気自動車の走行駆動機構の構成を示すブロッ
ク図。 【図3】コントローラ16の処理を示すフローチャー
ト。 【図4】コントローラ16の動作を説明する図であり、
(a)はサンプリングデータのストック方法を説明する
図、(b)は(a)のデータによる回帰直線を示す図。 【図5】出力制限制御を説明する図。 【図6】出力制限制御の処理を示すフローチャート。 【図7】回生制限制御を説明する図。 【図8】回生制限制御の処理を示すフローチャート。 【図9】温度補正および劣化補正を説明する図であり、
(a)は初期特性式を示し、(b)は温度補正をした場
合、(c)は(b)に加えて劣化補正をした場合をそれ
ぞれ示す。 【図10】パワー演算方式とWh積算方式の併用を説明
する図であり、(a)は回帰直線を示し、(b)および
(c)は誤差の発生を説明する図。 【図11】Wh−P特性を説明する図であり、(a)は
リチウムイオン電池の場合を、(b)は鉛酸電池の場合
を示す。 【図12】放電深度CAPDODと残存容量計の原点
(EMPTY)との関係を示す図。 【図13】平均処理を説明する図であり、(a)は放電
深度CAPDODと重みMとの関係を示し、(b)はW
hEの変化を定性的に示す図、(c)は放電深度CAP
DODと重みMとの関係の他の例を示す。 【図14】パワー演算方式とWh積算方式の併用の一例
を示す図であり、(a)は特性式Wh(P)を示し、
(b)は重みMを示す図である。 【図15】直線回帰演算を説明する図。 【図16】回帰演算可能な場合を説明する図であり、
(a)は端子電圧Vおよび放電電流Iの時間的変化を示
し、(b)は(a)の場合の回帰直線を示す。 【図17】回帰演不可能な場合を説明する図であり、
(a)は端子電圧Vおよび放電電流Iの時間的変化を示
し、(b)は(a)の場合の回帰直線を示す。 【符号の説明】 11 電池 12 インバータ 13 モータ 14 電圧センサ 15 電流センサ 16 コントローラ 17 温度センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01R 31/36 H01M 10/42 - 10/48 H02J 7/00 - 7/12

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 電池の放電電力量と最大放電電力との相
    関関係を予め算出し、 電池の端子電圧および電流値を用いた回帰演算により実
    最大放電電力を算出し、 前記最大放電電力に代えて前記実最大放電電力を用いる
    ことにより、前記相関関係から演算放電電力量を算出
    し、 前記端子電圧値および電流値を積算して放電電力積算量
    を算出し、 前記演算放電電力量および放電電力積算量に基づいて電
    池の放電深度に応じた実効放電電力量を算出し、 前記相関関係と前記実効放電電力量とに基づいて最大放
    電電力および最大充電電力の少なくともいずれかを算出
    することを特徴とする電池の最大充放電電力演算方法。
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