JP3375629B2 - 筆記装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【技術分野】 本発明は、長時間の作業による筆記者の疲労を軽減す
ることができ、また、指の運動機能減少症に罹った人、
又は、後天的あるいは先天的な少なくとも１本の指がな
い人が使用することができ、更に、就学前の子供が書き
方を習得することを可能とする筆記装置に関する。

【背景の技術】

通常は中空円筒形のロッドの形状の本体を備え、該本
体の中に筆記要素（例えば、ボールペンの軸、ペン、鉛
筆の芯等）を装着する筆記装置が今日広く使用されてい
る。しかしながら、そのような装置を長時間使用した後
に筆記者の手は疲労し勝ちであり、この現象は以下のよ
うに説明できる。上記装置における支点は、筆記者の３
本の指が本体を掴んでいる位置にある。そのような装置
を用いた場合に、筆記中の指で行う操作は、本体を掴む
力（静的な力）、及び、本体の端部を移動させる力（動
的な力）を与えることである。現在においては、筆記中
に与える静的な力を部分的に減少させることのできる多
くの筆記装置が開発されている。しかしながら、筆記中
に筆記装置を掴まなければならないことが大きな問題と
なる人々が多数存在する。そのような人々の例として
は、関節炎の患者、指の運動機能減少症の人、又は指が
部分的に欠損した人が挙げられる。また、筆記中にペン
を握らなければならないことは、早い時期に書き方の習
得を始める子供に何等かの困難性を与える。 当業界の現状においては、手書き作業を容易にするこ
とのできる筆記装置が知られており、そのような装置は
本体を備え、この本体は、その一端部に筆記要素を担持
し、また、その他端部のネジ付きのロッドに取り付けら
れたある形状のレストを有しており、このレストは、人
差し指の付け根の掌の形状に従っている（米国特許第2,
826,175号：国際分類Ｂ 43 Ｋ 23/00、国内分類401
−６、1958年を参照）。上記装置は、スラスト荷重を掌
に与え、これにより、筆記要素を紙に押し当てる力を指
ではなく掌に伝えるようにすることにより、静的な荷重
を減少させることができる。また、上記装置の構造は、
筆記者が指だけではなく手全体で筆記装置を移動させる
助けをし、これにより、指の疲労を少なくすると共に、
読み易い手書きを行えるようにする。 しかしながら、上記筆記装置を用いると、筆記装置の
本体を掌に圧し当てる必要があるので、筆記者の指は静
的な負荷を受ける。従って、文字間若しくは単語間で休
んで力を緩めることができる時でも、指は緊張したまま
の状態にある。 現在、他の筆記装置（試作品と考えられる）が周知で
あり、この筆記装置は、本体と、該本体を筆記者の指に
保持させるリングと、筆記要素とを備えている。本体に
装着されるリングの適所にスリーブが固定されている
（ドイツ特許第3,801,333号；国際分類Ｂ 43 Ｋ 23/
00、1988年）。上述の構成により、リングが上記本体を
手に保持させ、筆記者が他の部分すなわち部位でその保
持を行うそれ以上の努力を必要としないので、筆記者の
指にかかる静的な負荷が減少する。 しかしながら、筆記要素を紙に押し付ける間に指は静
的な負荷を受け、一方、リングは、本体に沿って上記ス
リーブ上で動けるので、スラスト荷重を受けることがで
きない。リングの構造は、筆記装置の本体が筆記者の指
の周囲で回転するのを防止しないので、指には追加の定
常的な負荷が作用する。これらの事柄は総て、上述の如
き障害を有する人々が筆記装置を実際的に使用すること
の障害となる。

【発明の開示】

本発明の基本的な目的は、筆記中の指から静的な応力
を排除し、これにより、関節炎又は指の運動機能減少症
に罹った高齢者、一部の指が欠損している人々の手書き
作業を極めて容易にし、更に、子供が早い時期に書き方
を習得することができるようにする筆記装置を提供する
ことである。本筆記装置は、長時間にわたって迅速に筆
記作業を行う必要のある職業の人々、例えば、学生、新
聞記者、コンピュータの使用者、速記タイピスト等の人
々の手の職業病を予防する役割を果たすものでなければ
ならない。 上述の目的は、ここに提案する筆記装置によって達成
され、該筆記装置は、本体と、該本体を筆記者の指に保
持させるためのリングと、筆記要素とを備え、上記リン
グは、上記本体の延長部であって該本体と一体に形成さ
れており、上記リングの穴は楕円形であり、上記筆記要
素の先端と上記楕円の上記筆記要素に最も近い点とを結
ぶ直線は、その点において上記楕円の長軸と交わってい
る。このような構造により、筆記中における支点を、人
差し指の節骨と掌側の手首の靭帯との接合部へ移動させ
ることができ、これにより、指の静的な負荷を解放する
ことができる。支点が移動する上記点は、筆記要素の先
端と筆記要素に最も近い楕円の点とを結ぶ直線が上記楕
円の長軸と交わる点である。これにより、筆記中の筆記
装置の安定性を増し、また、筆記装置を保持する指に作
用する静的な力を排除することができる。 本筆記装置は、上記筆記装置とは反対側にある上記リ
ングに設けられる平衡錘を備えることができる。この平
衡錘は、上記リングに位置する突出部の形状とすること
ができる。上記突出部は、上記リングの平面に対してあ
る角度をなして配列される。本装置に上記平衡錘を設け
ることにより、支点を重心に一致させることができる。
この場合には、筆記装置の安定性が極めて高くなり、ま
た、筆記中に筆記装置を移動させる力が極めて少なくな
る。本体は、保持する指を受け入れる滑り止め領域及び
／又は凹所を備えることができる。筆記装置はまた、上
記筆記要素に最も近い本体の端部に位置するループを備
えることができる。このループは、筆記装置を装着する
指先を固定するためのものである。そのような構造によ
り、筆記装置を一本の指だけで使用することが可能とな
る。本体及びリングは、それぞれ別個の弾性を有する材
料から形成することができる。 ［図面の簡単な説明］ 図１は、筆記装置の平面図である。 図２は、図１の線１−１に沿って取った断面図である。 図３は、平衡錘が設けられた筆記装置の代替実施例を示
す平面図である。 図４は、突出部として形成された平衡錘の代替実施例を
示す平面図である。 図５は、図４の線11−11に沿って取った断面図である。 図６は、湾曲した本体を備えた筆記装置の代替実施例を
示す平面図である。 図７及び図８は、本発明の筆記装置の最適な実施例を示
す斜視図である。 図９は、指先を固定するための輪状体を備えた筆記装置
の代替実施例を示す斜視図である。 図10は、本筆記装置の最適的な変形例が筆記の際に保持
される様子を示す斜視図である。 図11は、本筆記装置が、関節炎の患者に使用される様子
を示す斜視図である。 図12乃至図16は、本筆記装置が、１又はそれ以上の指を
失うか、あるいは、運動機能減少症に罹った身体障害者
に使用される様子を示す斜視図である。 図17は、コンピュータのモニタ・スクリーン上に書くた
めの、あるいは、コンピュータのキーボードの代用とな
る面を押圧するための、本発明の代替実施例を示す斜視
図である。

【発明の実施例】

筆記装置は本体１を備えており、該本体は、一端部に
筆記要素２を有し、他端部にリング３を担持しており、
該リングは本体１と一体に形成されている。リングの穴
は楕円形である。筆記要素２の先端と楕円の筆記要素に
最も近い点４とを結ぶ直線は、上記最も近い点において
ある角度で楕円の長軸と交わっているが、その角度は、
使用者が指で筆記装置を最も都合良く保持するために、
28゜乃至35゜であるのが極めて好ましい（図１、図
２）。筆記要素２は、本体１に形成された溝５の中に設
けられている（図２）。筆記要素は、リング３に取り付
けられたカウンタウエートすなわち平衡錘６を備えるこ
とができ、この平衡錘は、筆記要素２とは反対側のリン
グの端部を肥厚させることにより形成することができる
（図３）。平衡錘６はまた、リング３に接合された突出
部７として形成することができる（図４）。突出部７
は、リング３の平面に対してある角度をなして配列され
ている（図５）。本体１は湾曲させることができる（図
６）。本体１は、作業者の指のための凹所８及び／又は
滑り止め領域を備えることができる（図７）。筆記装置
は、指先を固定するためのループ部すなわち輪状部９を
備えることができる（図９）。本体１及びリング３は、
それぞれ弾性の異なる材料から形成することができ、例
えば、リングの材料は、本体の材料よりも大きな弾性を
有することができる。 筆記装置は以下のように機能する。使用者は、人差し
指をリング３の中に入れ、支点がその人差し指と掌との
間の関節に位置するようにし、これと同時に、その人差
し指で本体１を上方から保持して親指及び中指を本体の
両側に置き、これにより、本体を保持する（図10）。筆
記中に指に要求されることは、本体の端部を移動させる
ことだけであり、従って、通常のペン又は鉛筆を用いる
場合のように、指で本体１を保持することは必要とされ
ない。平衡錘を用いた場合には、支点が重心に一致する
ので、筆記中における本筆記装置の高い安定性が得られ
る。その一致する点は、図１、図２、図３及び図６に参
照符号４で示されている。高い安定性が得られ、また、
指で本体を保持する必要がないことにより、本装置は、
運動機能減少症に罹った人々（図11）、並びに、１又は
それ以上の指がない身体障害者（図12乃至図16）が使用
することを可能とする。本装置は、右手あるいは左手の
いずれでも保持することができる。使用者の指が１本し
かない場合でも、ループ部９を本筆記装置に装着するこ
とにより、指先を固定することができる（図16）。 本発明の筆記装置は、長時間の筆記作業の間に筆記者
が筋肉の痙攣を起こすのを防止することができる。これ
が可能となる理由は、筆記中に筆記装置を保持する指は
本体１を握らず、指の筋肉は力を加えた後如に弛緩する
からである。この特徴は、本発明の筆記装置による筆記
作業を、例えば鉛筆又は伝統的なボールペンのように、
指の筋肉を定常的に緊張させる従来の筆記装置による筆
記作業とは異なったものとする。すなわち、筆記者の筋
肉の痙攣は、筆記中常に筋肉が弛緩されないことにより
生ずるのである。 従って、本筆記装置を使用することにより、筆記者の
筋肉を痙攣させる危険性が完全に排除され、筆記中の疲
労を大幅に低減され、更に、より迅速に筆記することが
可能となる。従って、本筆記装置は一方では、新聞記
者、速記者あるいは速記タイピスト、コンピュータの使
用者、学生、並びに生徒が効率的に使用することを可能
とする。また、本筆記装置を用いるとペンを握る必要が
ないので、子供が早い時期に書き方を習得することがで
き、更に、短期間での手書きさえ可能となることも分か
った。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−142696（ＪＰ，Ａ) 実開 昭64−44178（ＪＰ，Ｕ) 実公 昭50−34106（ＪＰ，Ｙ２) 実公 昭14−16242（ＪＰ，Ｙ１) 米国特許1652072（ＵＳ，Ａ) 米国特許4127338（ＵＳ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B43K 3/00 B43K 23/00 - 23/016 B43L 15/00

Claims (7)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】本体（１）と、該本体を指に保持させるリ
   ング（３）と、筆記要素（２）とを備える筆記装置にお
   いて、前記リング（３）は前記本体（１）まで伸長して
   該本体と一体に形成され、前記リング（３）の穴は楕円
   形状であり、前記筆記要素（２）の先端を該筆記要素に
   最も近い前記楕円の点と結ぶ直線が、前記点（４）にお
   いて前記楕円の長軸と交わることを特徴とする筆記装
   置。
2. 【請求項２】請求項１の筆記装置において、前記筆記要
   素（２）とは反対側の前記リング（３）の側部に設けら
   れる平衡錘（６）を備えることを特徴とする筆記装置。
3. 【請求項３】請求項２の筆記装置において、前記平衡錘
   は、突出部（７）として形成され、前記リング（３）の
   平面に対してある角度をなすことを特徴とする筆記装
   置。
4. 【請求項４】請求項１の筆記装置において、前記本体
   （１）が湾曲していることを特徴とする筆記装置。
5. 【請求項５】請求項１の筆記装置において、前記本体に
   は、保持する指のための凹所（８）及び／又は滑り止め
   領域が設けられることを特徴とする筆記装置。
6. 【請求項６】請求項１の筆記装置において、指を固定す
   るためのループ部（９）が、前記筆記要素（２）のある
   側の前記本体（１）の端部に設けられることを特徴とす
   る筆記装置。
7. 【請求項７】請求項１の筆記装置において、前記本体
   （１）及びリング（３）はそれぞれ異なった弾性を有す
   る材料から形成されることを特徴とする筆記装置。