JP3371494B2 - プラズマアドレス表示装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は中間シートを介して互い
に重ねられた表示セル及びプラズマセルを備えたプラズ
マアドレス表示装置に関する。より詳しくは、プラズマ
セルに形成された放電電極の形状に関する。

【０００２】

【従来の技術】プラズマアドレス表示装置は例えば特開
平４−２６５９３１号公報に開示されている。本発明の
背景を明らかにする為、図７を参照して従来のプラズマ
アドレス表示装置の構造を簡潔に説明する。図示する様
に、プラズマアドレス表示装置は表示セル１０１とプラ
ズマセル１０２と両者の間に介在する中間シート１０３
とを積層したフラットパネル構造を有する。表示セル１
０１は上側のガラス基板１０４を用いて構成されてお
り、その内表面には透明導電膜からなる信号電極Ｄが互
いに平行に形成されている。ガラス基板１０４はスペー
サ１０５を用いて所定の間隙を介し中間シート１０３に
接着されている。間隙内には電気光学材料である液晶層
１０６が充填されている。一方プラズマセル１０２は下
側のガラス基板１０７を用いて構成されている。ガラス
基板１０７の内表面には信号電極Ｄに直交する放電電極
１０８がストライプ状に形成されている。この放電電極
１０８は交互にアノードＡ及びカソードＫとして機能す
る。放電電極１０８の上に沿って隔壁１０９が形成され
ている。隔壁１０９の頂部は中間シート１０３に当接し
ておりスペーサとしての役割を果たす。ガラス基板１０
７はフリットシール材１１０を用いて中間シート１０３
に接合されている。両者の間には気密封止された空隙が
形成される。この空隙は隔壁１０９によって分割あるい
は区画されており個々に走査単位となる放電チャネル１
１１を構成する。各放電チャネル１１１の内部にはイオ
ン化可能なガスが封入されている。ガス種は例えばヘリ
ウム、ネオン、アルゴンあるいはこれらの混合気体から
R>選ぶ事ができる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上述したプラズマアド
レス表示装置を駆動する為には、放電チャネル１１１を
線順次で選択走査するとともに、これと同期して信号電
極Ｄに所定の画像信号を供給する。各放電チャネルを選
択する際には、アノードＡとカソードＫの間に高電圧を
印加しプラズマ放電を発生させる。この際、放電チャネ
ル１１１内に生ずる電界は平行平板型コンデンサの様な
平等電界ではなく、放物線状の不平等電界となる。特に
放電電極のエッジ部分は原理的に電界が集中する。加え
て放電電極をスクリーン印刷等により形成した場合電極
端に多数の突起を有する形状となる為、著しい不平等電
界が生じて局所的な電流の集中が起り易い。その結果、
部分的なアーク放電が発生し易く、均一で安定なグロー
放電が得られない。通常、電極端でのブレークダウンが
起らない様に放電チャネル内のガス圧力と印加電圧を設
定し、ある程度電極端から内側の電極表面を利用する事
により、均一で安定な放電が得られる様にしているが、
必ずしも十分ではない。又、隔壁を構成する誘電体の存
在も放電の不均一性の原因となる。この為、放電電極の
露出面積が小さくなると構造的に見て安定放電は得にく
くなる。従来電極露出幅については十分な考慮が払われ
ていなかった為、プラズマアドレス表示装置の動作を安
定化する事ができないという課題があった。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上述した従来の技術の課
題を解決する為以下の手段を講じた。即ち、本発明にか
かるプラズマアドレス表示装置は基本的な構成として、
中間シートを介して互いに重ねられた表示セル及びプラ
ズマセルを備えている。プラズマセルは中間シートに対
して空隙を介し接合した基板を用いて構成されている。
この基板はストライプ状の比較的広幅な放電電極と、そ
の上に沿って配置した比較的狭幅な隔壁とを有してい
る。各隔壁の頂部が中間シートに当接して空隙を仕切
り、互いに隣り合う隔壁の間に放電チャネルを形成す
る。本発明の特徴事項として、各放電チャネルに属する
一対の放電電極は２５０μｍより小さな幅寸法を有する
とともに、対応する隔壁の底部から幅方向に４０μｍ以
上露出している。かかる放電電極及び隔壁は、例えば同
一のスクリーンマスクを用いて重ね印刷された広幅導電
パタン及び狭幅絶縁パタンからなり、広幅導電パタンは
低粘度のペーストで印刷し、狭幅絶縁パタンは高粘度の
ペーストで印刷する。

【０００５】

【作用】放電電極の露出幅と放電状態との間には明確な
相関関係がある。放電電極露出幅の広い方が放電し易く
且つ安定である。放電に関してカソード側の電極露出幅
の方が支配的であり、アノード側の電極露出幅よりも重
要である。カソード側電極露出幅が４０μｍ以上であれ
ば安定したプラズマ放電が得られる。カソード側電極露
出幅が４０μｍ以下であると、アークが発生し安定なプ
ラズマ放電が得られなくなる。又、アノード側電極露出
幅についても４０μｍ以下ではプラズマ放電が不安定に
なる。

【０００６】

【実施例】以下図面を参照して本発明の好適な実施例を
詳細に説明する。図１は本発明にかかるプラズマアドレ
ス表示装置の基本的な構成を示す模式的な部分断面図で
ある。図示する様に、プラズマアドレス表示装置は中間
シート１を介して互いに重ねられた表示セル２及びプラ
ズマセル３を備えている。プラズマセル３は中間シート
１に対して空隙を介し接合したガラス基板４を用いて構
成されている。ガラス基板４はストライプ状の比較的広
幅な放電電極５と、その上に沿って配置した比較的狭幅
な隔壁６とを有している。各隔壁６の頂部が中間シート
１に当接して空隙を仕切り、互いに隣り合う隔壁の間に
放電チャネル７を形成する。放電チャネル７の内部には
イオン化可能なガスが所定の圧力で封入されている。各
放電チャネル７に属する一対の放電電極５は各々アノー
ドＡ及びカソードＫとして機能し、両者の間に高電圧を
印加する事によりプラズマ放電が発生する。本発明の特
徴事項として、各放電チャネル７に包含された一対の放
電電極は対応する隔壁６の底部から幅方向に４０μｍ以
上露出している。即ち、アノード側電極露出幅Ｗａ及び
カソード側電極露出幅Ｗｋはともに４０μｍ以上であ
る。かかる配置関係を有する放電電極５及び隔壁６は、
例えば同一のスクリーンマスクを用いて重ね印刷された
広幅導電パタン及び狭幅絶縁パタンからなる。なお、放
電電極５の全幅寸法は例えば２１０μｍ程度に設定さ
れ、配列ピッチは４００μｍ程度に設定され、厚みは１
５μｍ程度に設定されている。又隔壁６の高さ寸法は２
００μｍ程度に設定され、幅寸法は１１０μｍ程度に設
定されている。さらに中間シート１は例えば極薄のガラ
ス板からなり０．０５mm程度の厚みを有する。ガラス基
板４は例えば１．１mm程度の厚みを有する。

【０００７】放電電極の露出幅が小さくなると不平等電
界による局所的で不均一な放電が起り易くなり、部分的
に電流密度の高いアーク放電の発生が見られる。安定で
均一な放電を得る為の電極露出幅必要最小条件は４０μ
ｍ程度である。この点を確認する為、３個のプラズマセ
ルサンプルを作成し実験を行なったので以下に説明す
る。各サンプルの平面形状を図２ないし図４に示す。何
れのサンプルにおいても放電電極と隔壁の寸法及び位置
を故意に変化させてあり、その程度は３個のサンプルに
ついて夫々異なっている。又、放電電極と隔壁の配列ピ
ッチも互いにずれている為、同一プラズマセル内におい
ても位置関係が徐々にシフトしており、従って放電電極
露出幅は０〜２６０μｍ程度まで変化している。放電電
極は左端から右端に向って順にカソードＫ、アノード
Ａ、カソードＫ、アノードＡ、と交互に並んでいる。図
２に示したプラズマセルサンプルは放電電極と隔壁のず
れが比較的少なく、従って電極露出幅の大きなプラズマ
放電セルである。図示する様に最低でも約８０μｍ以上
の電極露出幅が確保されている。このサンプルではプラ
ズマ放電が正常に発生した。なお、各放電チャネル内に
封入されたイオン化可能なガスの圧力は２５Torr程度で
あり、アノード／カソード間に印加された高電圧は３０
０〜３８０Ｖ程度である。

【０００８】図３に示したサンプルはある程度放電電極
と隔壁の位置ずれが大きくなっており、右端側では最悪
２９μｍの露出幅しかない。又左端側では４８μｍの露
出幅が確保されている。左端側におけるずれの比較的小
さい方の数ラインではプラズマ放電が生ずるが、それ以
外のずれの大きなラインでは殆どプラズマ放電が発生し
ない。アーク放電にまでは至らないが非常に不安定であ
る。又、放電しているラインでも、カソード側電極露出
幅が大きくアノード側電極露出幅の小さい偶数ラインだ
けが放電し、アノード側電極露出幅が大きくカソード側
電極露出幅の小さい奇数ラインは放電しない。ここで、
アノードとカソードを反転すると、今度は奇数ラインだ
けが放電した。

【０００９】図４に示すサンプルは最も位置ずれの大き
なプラズマセルであり、各放電電極の片側露出幅は４０
μｍ未満である。このサンプルではグロー放電の中にア
ークが走り、図２及び図３に示したサンプルとは明らか
に放電の様子が異なる。このプラズマセルではガス圧力
と印加電圧を調整しても正常な放電は得られなかった。
なお、これらのプラズマセルサンプルにおいて、一部隔
壁の除去された領域は、隔壁の存在する領域よりも放電
電流密度が大きく、放電の均一性及び安定性も優れてい
る。即ち、隔壁の存在が放電を不安定化しており、特に
アノード側電極上に隔壁のあるプラズマセルは隔壁のな
いセルと比較して放電が不安定である。アノード側放電
電極上に隔壁のあるプラズマセルは、印加電圧を上げる
と最初明るくなるが徐々に暗くなってある時点で落ち着
き、さらに電圧を上げていくと同様の現象を繰り返し
て、ネガティブなフィードバックがかかっている様に見
える。この原因は電界に加速されてアノード側放電電極
上をオーバラップした電子がアノード側電極上の隔壁に
衝突してチャージアップさせる結果、放電電界を打ち消
す様な電界を形成する為であると推定される。この様
に、放電電極上に沿って隔壁が形成されたプラズマセル
構造では、安定な放電を確保する為特に放電電極露出幅
を４０μｍ以上確保する事が極めて重要である。

【００１０】次に、放電電極の所望の露出幅を確保する
為に好適な製造方法を説明する。この方法の理解を容易
にする為、先ず従来の製造方法の不具合点を簡潔に説明
する。図５に示す様に、従来ストライプパタンを有する
スクリーンマスクを用いて放電電極５及び隔壁６を印刷
していた。放電電極５と隔壁６は本来同一の配列ピッチ
Ｐを有するが、異なるパタン幅Ｗ１，Ｗ２を有してい
る。従って、従来放電電極５の形成に用いるスクリーン
マスクと隔壁６の形成に用いるスクリーンマスクは異な
るものが用いられていた。この場合放電電極５と隔壁６
を互いに整合させる為、両方のスクリーンマスクは互い
に等しいストライプパタンピッチを有し且つ互いに正確
にアライメントされなければならない。スクリーンマス
クはフレームにスクリーンメッシュをテンションをかけ
て張ったものである。感光材の塗布されたスクリーンメ
ッシュに対してフォトリソグラフィを用い所定のストラ
イプパタンを形成する。しかしながらテンションがかか
っている為、異なるスクリーンマスクの間でストライプ
パタンのピッチＰを完全に同一に設定する事は困難であ
り、実際には一定のピッチ誤差ΔＰが含まれている。加
えて厚膜印刷を行なう際にはスキージによりスクリーン
マスクに圧力が加わり変形する。個々のスクリーンマス
クにより変形の度合いが微妙に異なり実際に印刷された
ストライプパタンのピッチは目標値から偏る。この為、
下層及び上層のストライプパタンを正確に整合する事は
実際上困難であり、所謂ピッチずれが生じる。

【００１１】そこで新たに採用した方法では、放電電極
と隔壁を同一のスクリーンマスクを用いて作成した。こ
の方法では、低粘度のペーストを表面の平滑なガラス基
板上に印刷するとペーストのだれが大きい為印刷線幅が
太くなり、一方高粘度のペーストを表面の粗い下地上に
印刷するとペーストのだれが少ない為線幅が細くなると
いう性質を利用している。具体的な方法を図６を参照し
て詳細に説明する。先ず最初に（Ａ）に示す工程で、ガ
ラス基板の表面に引き出し電極１０をスクリーン印刷で
形成する。外部回路との電気的な接続に用いられる引き
出し電極１０については、別のスクリーンマスクを用い
て印刷する事になるが、この部分は単に導通が確保され
れば良い為、アライメントのマージンは十分に大きい。
次に（Ｂ）に示す工程において、所定のストライプパタ
ン１１が形成されたスクリーンマスクを用いて、粘度の
低い導電ペーストを表面の平滑なガラス基板上に印刷し
て、ペーストのだれを利用し太い放電電極５を得る。最
後に（Ｃ）に示す工程において、粘度の高い絶縁ペース
トを表面の粗い放電電極５上に同一のスクリーンマスク
を用いて印刷すると、ペーストのだれが少ない為線幅の
細い隔壁６を得る事ができる。なお所望の隔壁高さを得
る為にスクリーン印刷を繰り返し行なう。この後所定の
温度プロファイルで焼成を行なう事により印刷されたペ
ーストが硬化する。この様にして同一のスクリーンマス
クを用いて広幅な放電電極と狭幅な隔壁を印刷する事が
でき、図１に示した様なプラズマセル構造を得る事が可
能である。実験によれば、１２０μｍ幅のストライプパ
タンを有するスクリーンマスクを用いて、２５０μｍ幅
の放電電極と１１０μｍ幅の隔壁とを、位置ずれなく重
ね印刷により形成する事ができ、各隔壁の両側に５０μ
ｍ以上の放電電極露出幅が確保できる事が確認された。
なお、従来の方法では、放電電極は１４０〜１７０μｍ
幅のストライプパタンを有するスクリーンマスクを用い
て印刷し、約２８０〜３００μｍ幅に形成していた。一
方、隔壁については１２０μｍ幅のストライプパタンを
有するスクリーンマスクを用いて約１１０μｍ幅に形成
していた。上述した方法の特徴点を以下の表１に掲げて
おく。

【表１】

【００１２】上記の方法を用いて同一スクリーンマスク
で放電電極と隔壁を印刷する事により、放電電極と隔壁
のピッチずれやアライメント誤差は皆無となり、プラズ
マセル全面に渡って十分な放電電極露出幅を得る事がで
きる為、放電不良がなくなり歩留りが改善される。結果
として、従来は電極露出幅の制約によりアライメントマ
ージンがおよそ±２５μｍ以内に制限されていたもの
が、同一スクリーン印刷法を用いる事により±２２５μ
ｍ以内と１オーダー程緩和され、十分に現在のスクリー
ン印刷技術で対応できる様になった。以上により、メー
トルサイズの大型プラズマアドレス表示装置の量産も可
能になった。

【００１３】

【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、各
放電チャネルに属する一対の放電電極は対応する隔壁の
底部から幅方向に４０μｍ以上露出して形成されてい
る。これにより放電不良が略完全に除去され均一で安定
な放電チャネルの線順次走査が可能になるという効果が
得られる。放電不良が除去された結果、プラズマアドレ
ス表示装置の製造歩留りが向上するという効果が得られ
る。又、同一のスクリーンマスクを用いて放電電極及び
隔壁を形成する事により、アライメントエラーが解消で
き位置ずれを見込んだアライメントマージンを縮小でき
る。その結果、放電電極幅を小さくできる為、プラズマ
アドレス表示装置の開口率が改善できるという効果があ
る。さらには、メートルサイズの大型プラズマアドレス
表示装置の量産が容易になるという効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかるプラズマアドレス表示装置の基
本的な構成を示す模式的な部分断面図である。

【図２】本発明の評価に用いられたプラズマセルサンプ
ルの平面図である。

【図３】同じくプラズマセルサンプルの平面図である。

【図４】同じくプラズマセルサンプルの平面図である。

【図５】従来の製造方法の問題点の説明に供する模式的
な斜視図である。

【図６】放電電極及び隔壁の製造工程図である。

【図７】従来のプラズマアドレス表示装置の一般的な構
成を示す断面図である。

【符号の説明】

１ 中間シート ２ 表示セル ３ プラズマセル ４ ガラス基板 ５ 放電電極 ６ 隔壁 ７ 放電チャネル

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中間シートを介して互いに重ねられた表
   示セル及びプラズマセルを備えたプラズマアドレス表示
   装置であって、 該プラズマセルは、該中間シートに対して空隙を介し接
   合した基板を用いて構成され、 該基板はストライプ状の比較的広幅な放電電極と、その
   上に沿って配置した比較的狭幅な隔壁とを有しており、 各隔壁の頂部が該中間シートに当接して該空隙を仕切り
   互いに隣り合う隔壁の間に放電チャネルを形成し、 各放電チャネルに属する一対の放電電極は２５０μｍよ
   り小さな幅寸法を有するとともに、対応する隔壁の底部
   から幅方向に４０μｍ以上露出している事を特徴とする
   プラズマアドレス表示装置。
2. 【請求項２】 前記放電電極及び隔壁は、同一のスクリ
   ーンマスクを用いて重ね印刷された広幅導電パタン及び
   狭幅絶縁パタンからなり、広幅導電パタンは低粘度のペ
   ーストで印刷し、狭幅絶縁パタンは高粘度のペーストで
   印刷した事を特徴とする請求項１記載のプラズマアドレ
   ス表示装置。