JP3364781B2 - ラッチング・サーキュレータ用磁性体 - Google Patents

ラッチング・サーキュレータ用磁性体

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JP3364781B2 JP32059596A JP32059596A JP3364781B2 JP 3364781 B2 JP3364781 B2 JP 3364781B2 JP 32059596 A JP32059596 A JP 32059596A JP 32059596 A JP32059596 A JP 32059596A JP 3364781 B2 JP3364781 B2 JP 3364781B2
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行弘 矢作
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ波、ミリ
波帯の信号の切替器等に用いられるラッチング・サーキ
ュレータ用磁性体に関する。
【0002】
【従来の技術】マイクロ波、ミリ波帯信号の切替器とし
て、導波管内のフェライトに励磁電流を流すコイルを形
成したサーキュレータが用いられている。この種のサー
キュレータのうち、コイルに流すパルス電流の向きを変
えることによって、RF信号の進行方向を切替えてスイ
ッチ動作を行うものを内磁路形ラッチング・サーキュレ
ータという。このラッチング・サーキュレータは、導波
管内に三角形状のフェライトが配置され、フェライトの
各側面同士を結ぶように三本の巻線用穴が形成されてい
る。また、各巻線用穴を貫通するように、ウレメット線
等の励磁巻線が巻かれている。
【0003】一般にフェライトを用いたサーキュレータ
では、永久磁石又は電磁石によりフェライトを磁化する
が、ラッチング・サーキュレータでは、ヒステリシス特
性を有するフェライトトロイドに励磁巻線を施して保磁
力の数倍の磁界を発生させる電流パルスを与えて磁化を
行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記フェライトの動作
周波数等の特性は、励磁巻線により囲まれる領域の形状
により大きく左右されるので、巻線用穴の形成には高い
精度が要求される。しかし、フェライトは加工性に難点
があり、穴開けの際に所望の精度をだすことは困難であ
った。さらに、従来技術においては、巻線作業も手作業
で行う必要があるので、巻線状態が一定とはならず、こ
れに起因する電気特性にばらつきが生じていた。
【0005】さらに、巻線は所定の位置に固定されてい
るわけではないので、振動や温度変動といった外部環境
の変化によって巻線に微妙な変動が生じる場合がある。
従って、その電気特性も変動してしまうので、安定した
特性を得ることが困難であるという難点もあった。
【0006】ラッチング・サーキュレータ用磁性体にお
ける巻線用穴を精度良く形成するための手法としては、
例えば特開平4−105702号公報に記載された技術
が知られている。これは、磁性体を、その巻線用穴を含
む平面を張り合わせ面として二分割することで、二つの
磁性体を張り合わせて磁性体を形成するものである。こ
の技術においては、上記二つの磁性体それぞれの張り合
わせ面に断面半円の溝部を形成し、この溝に励磁巻線を
配設している。また、磁性体に直接穴を形成するのでは
なく、断面半円の溝を二つの磁性体それぞれに形成して
両者を張り合わせることで、穴を形成している。溝部の
加工は、穴を直接磁性体に加工することに比較して容易
であり、加工精度も向上する。従って、この技術によれ
ば、ラッチング・サーキュレータ用磁性体の電気的特性
が向上し、歩留まりも高くなるという効果が得られてい
る。
【0007】しかし、この技術においても、穴開け精度
は向上するものの、巻線作業自体は手作業のままであ
り、作業時間が長く、かつ個々の巻線状態の違いによる
電気特性のばらつきが残るおそれがある。また、巻線自
体は依然として断面円形の巻線用穴に巻かれるだけであ
り、特別な巻線の固定手段があるわけでもないので、振
動や温度変動による巻線の微妙な変動、及びそれに伴う
電気特性の変化が生じる点は解決されていない。さら
に、上記のように、巻線用穴は、二つの磁性体のそれぞ
れに形成された対応する溝部を合わせることで形成され
るので、上記溝部の位置あわせには非常に高い精度が要
求されることになってしまう。
【0008】そこで本発明の課題は、製造誤差による特
性のばらつきを抑え、振動や温度に対しても安定した特
性が得られるラッチング・サーキュレータ用磁性体を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のラッチング・サ
ーキュレータ用磁性体は、導線により囲まれる内部領域
とこの内部領域外の領域である外部領域とを張り合わせ
た磁性体を有し、前記導線が前記内部領域に形成された
導線配置領域に配置されていることを特徴とする。前記
導線配置領域は、張り合わせにより形成されるものでは
ないので、外部領域と内部領域とを張り合わせる際に、
両者の間に多少のずれが生じても、導線配置領域自体に
は特段の影響はない。従って、二つの別個の磁性体を張
り合わせて巻線用穴を形成していた従来技術に比較し
て、内部領域と外部領域との張り合わせにおける許容誤
差を大きくとることが可能となる。
【0010】導線は、例えば前記内部領域の側面に形成
された溝部内に巻回されるようにする。このようにすれ
ば、簡素な構成によって、導線配置領域が形成される。
【0011】また、溝部を螺旋溝とし、この螺旋溝に沿
って導線が配置されるようにする。このようにすれば、
導線を複数回磁性体に巻回させることが必要な場合で
も、螺旋溝自体を、必要な巻数分だけ形成すればよくな
るので、溝の内部で導線を複数回巻回することによる難
点、例えば巻回された導線相互の振動やねじれやずれに
よる相対位置の変化等が発生することはなく、ラッチン
グ・サーキュレータ用磁性体の特性も安定する。
【0012】さらにまた、前記内部領域に、前記導線配
置領域と前記導線とを兼ねるエッチングによる螺旋状の
導体パターン線を形成してもよい。このように構成する
と、導体パターン線は、直接内部領域に形成されるの
で、温度変化や振動により導体の状態が変化するおそれ
が殆どなくなる。従って、安定性が非常に高いラッチン
グ・サーキュレータ用磁性体が得られる。また、手作業
による巻線作業も必要とはならないので、巻線作業時
間、及び人為的に巻線を行うことによる個々の巻線状態
の差も生じることはない。さらに、磁性体に溝や穴を開
けるための機械的作業も不要となる。従って、個々の巻
具合のばらつきが生じることもなく、振動や温度変動等
に起因する巻線位置のずれ等の巻線の微妙な状態変化も
抑えられ、電気特性の変化も防止される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。本発明では、フェライトに穴をあ
けて励磁巻線を施す代わりに、フェライトを、巻線で囲
まれる領域となる内部領域と外部領域とに分離する。特
に、三角形のフェライトに対しては、該三角形の各頂点
をそれぞれ頂角とする小さい3つの三角形を外部領域と
し、中心部に残されている逆三角形に近い形状の六角形
の領域を内部領域とする。この内部領域(または各外部
領域)の周囲の少なくとも一部に、励磁巻線となる導線
用の導線配置領域を形成する。
【0014】具体的には、図1(a)の概略構造説明
図、図1(b)の側部断面図、及び図1(c)の外観図
に示すように、フェライト磁性体を、励磁線により囲ま
れる領域である内部領域、即ち内部フェライト2bと、
外部領域即ち外部フェライト2aとに分離して、内部フ
ェライト2bの側面部に、コイルを形成する励磁線を設
けてラッチング・サーキュレータを構成する。励磁線
は、内部フェライト2bの側面部に、導線配置領域とし
ての溝部を形成し、この溝部に導線である励磁線3(本
実施形態においてはウレメット線)を巻き付ける構成と
してもよい。この場合、励磁線3は、通常は複数回巻き
付けることになる。
【0015】この実施形態においては、励磁線3を巻き
付ける作業は依然として必要であるが、溝部は内部フェ
ライトにのみ形成されており、外部フェライト2aには
形成されない。このように内部フェライト2bに励磁線
を設けた後に、外部フェライト2aを元通りに内部フェ
ライトに張り合わせて、ラッチング・サーキュレータ用
磁性体が完成される。
【0016】一方、本実施形態に対応する従来のラッチ
ング・サーキュレータの概略構造図を図2(a)に示
す。また、その側部断面図を図2(b)に示す。これら
の図に示されるように、従来のラッチング・サーキュレ
ータは、3ポートの導波管の中央に、励磁線3により形
成されるコイルによって励磁可能な磁性体、すなわちフ
ェライト12が配置されている。この励磁線3により形
成されるコイルに電流が流されると、フェライト12が
磁化され、図示しない入力端子から入力されたRF信号
は、図示しない信号出力端子a、bのいずれかにのみ出
力される。上記コイルに流す電流の向きを変えることに
より、信号出力端子(a,b)が入れ替わり、信号の切
替動作が行われる。この動作は、基本的には本実施形態
と同様である。上記従来例においては、磁性体の側面に
コイルを巻くための貫通穴13を3ヶ所開け、その貫通
穴13にウレメット線等の細い導線を手作業で巻き付け
てコイルを構成し、外部の駆動回路によってウレメット
線に電流パルスを供給していた。しかし、フェライト1
2の大きさは周波数に依存し、周波数が高くなるほど小
さくなる。例えば、30GHzの周波数では、一辺が3.
4mm程度となり、フェライト12に貫通穴13を開け
る際に、貫通穴13の位置の精度を確保することは困難
になっている。
【0017】これに対し、図1(a)〜(c)に示され
るうに、本実施形態では、フェライトに貫通穴を形成す
るのではなく、内部フェライト2bの側面部に励磁線を
設けているので、位置精度の確保が困難である穴開け処
理を行う必要はない。また、励磁線形成領域は、内部フ
ェライト2bにのみ存在するので、内部フェライト2b
と外部フェライト2aとの張り合わせ処理においては、
位置合わせにおいて厳しい精度が要求されることはな
い。
【0018】本発明の他の実施形態では、内部フェライ
ト2bに螺旋状の溝を設け、励磁線3をこの溝に沿って
配置させる。通常、励磁線3は、内部フェライト2bに
複数回巻回する必要があるが、この実施形態では、溝自
体が螺旋状になっているため、励磁線3を溝に沿って巻
回させるだけでよくなる。また、従来のラッチング・サ
ーキュレータでは、一本の溝内に励磁線が複数回巻回さ
れるので、励磁線同士の相互作用や温度変化や振動によ
って溝内の励磁線の巻具合が変化する場合があったが、
この実施形態の場合、このような難点は存在しない。
【0019】さらに他の実施形態においては、内部フェ
ライト2bに、上述した溝部に代えてエッチングによる
導体のパターン線2cを螺旋状に形成し、この螺旋状の
パターンの両端に、励磁線3を接続する。このようなラ
ッチング・サーキュレータで、導体のパターン線2c
は、内部フェライト2bに直接形成されているので、温
度変化や振動により励磁線の巻具合が変化するおそれは
殆どない。従って、安定性が非常に高いラッチング・サ
ーキュレータが得られる。また、手作業による巻線作業
も必要とはならないので、巻線作業時間、及び人為的に
巻線を行うことによる個々の巻線状態の差も生じること
もなくなる。
【0020】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
では、磁性体に穴を形成するのではなく、磁性体の内部
領域の側面部に導線を設けているので、位置精度の確保
が困難である穴開け処理を行う必要がなくなる。また、
励磁線形成領域は、内部領域にのみ存在するので、内部
領域と外部領域との張り合わせのときに、厳しい位置合
わせ精度が要求されることもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係るラッチング
・サーキュレータの正面断面図、(b)は側部断面図、
(c)は磁性体の外観図。
【図2】(a)は従来のラッチング・サーキュレータの
正面断面図、(b)は側部断面図。
【符号の説明】
1 導波管 2a 外部フェライト 2b 内部フェライト 2c パターン線 3 励磁線 12 従来のフェライト 13 貫通穴

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導線により囲まれる内部領域とこの内部
    領域外の領域である外部領域とを張り合わせて形成され
    た磁性体を有し、 前記内部領域には導線配置領域が形成されており、 前記導線配置領域に前記内部領域の側面に沿う螺旋溝
    が形成されており、 前記導線は、この螺旋溝に沿って配置されていることを
    特徴とするラッチング・サーキュレータ用磁性体。
  2. 【請求項2】 導線により囲まれる内部領域とこの内部
    領域外の領域である外部領域とを張り合わせて形成され
    た磁性体を有し、 前記内部領域には、導線配置領域と前記導線とを兼ね
    る、エッチングによる螺旋状の導体パターン線が形成さ
    れていることを特徴とするラッチング・サーキュレータ
    用磁性体。
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