JP3589008B2 - 誘電体共振器及びそれを用いたフィルタ、共用器、ならびに通信機装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波帯やミリ波帯等で使用される誘電体共振器、フィルタ、共用器、通信機装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、移動体通信システムの需要の急速な増加およびマルチメディア化に対応して大容量で且つ高速な通信システムが要求されている。このような通信すべき情報量の拡大に伴って、マイクロ波帯からミリ波帯へ使用周波数帯域が拡大されようとしている。このようなミリ波帯でも、従来から知られている円柱形状の誘電体からなるTE01δ モード誘電体共振器をマイクロ波帯と同様に使用することが可能である。この時、TE01δ モード誘電体共振器の共振周波数は円柱形状の誘電体の外形寸法で決定されており、厳しい加工精度が必要となっていたが、誘電体の外周と高さは研磨により設定していたため、ミリ波帯になるとさらに厳密な精度が必要であり、共振周波数に対して厳密な寸法に設定することができなかった。
【0003】
また、TE01δ モード誘電体共振器を複数個、所定間隔を隔てて金属ケース内に配置することによって誘電体フィルタを構成した場合、金属ループ等の入出力手段と誘電体共振器、または、誘電体フィルタと誘電体共振器との結合は、相互間の距離によって決定されるため、高い位置精度で配置されることが必要であった。
【0004】
そこで本願出願人は特願平7−62625号においてこれらの問題を解消した加工精度に優れた誘電体共振器及び位置精度に優れた誘電体フィルタを提案している。
【0005】
上記出願に係る誘電体フィルタの基本的な構成を図6に示す。図6は上記出願に係る誘電体フィルタの分解斜視図である。
【0006】
図6に示すように、誘電体フィルタ101は、誘電体基板102と上下導体ケース103、104から構成されている。
【0007】
誘電体基板102は一定の比誘電率を有する基板であり、その一方主面には2つの所定寸法の円形の開口部102cを除いて全面に電極102aが形成されており、その他方主面には2つの所定寸法の円形の開口部102dを除いて全面に電極102bが形成されている。両主面の2つの開口部102c、102dは互いに対向している。
【0008】
上導体ケース103は、金属により形成されており、下面開口の箱形形状をしている。また、上導体ケース103は電極102aの開口部102c付近で、誘電体基板102から間隔をおいて配置されている。
【0009】
下導体ケース104は、誘電体により形成されており、上面開口の箱型形状で側面に鍔が突出した形状となっている。また、下導体ケース104の内周面には遮蔽導体106が形成されており、電極102bの2つの開口部102dのうち両端の開口部102dに対向する位置に入出力電極105a、105bが遮蔽導体106と絶縁されて形成されている。入出力電極105a、105bは下導体ケース104の側面に形成された孔104a、104bから導出されている。
【0010】
さらに、下導体ケース104内には、遮蔽導体106が形成された下導体ケース104の内部底面と誘電体基板102を一定の間隔に保つためのスペーサ107が配置されている。このスペーサ107は、上下導体ケース内103、104の電磁界を乱さないように低誘電率の誘電体材料で形成される。
【0011】
このような構造にすることで、電極102a、102bの対向する2つの開口部102c、102dに挟まれた部分付近の誘電体基板102に電磁界エネルギーが閉じ込められて2つのTE010 モード共振器として働くため、2段の共振器を有する誘電体フィルタとなる。
【0012】
この構成により、共振領域を電極の開口部の大きさで規定できるので、製造時にエッチング等の手法を用いることができ、共振周波数に対する共振器の寸法精度及び共振器間の位置精度を極めて正確に再現した誘電体フィルタを作成することができるようになった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この誘電体フィルタ101は、電磁界エネルギーの閉じ込め性が非常に高いため、隣接する共振器間での結合が弱いものしか得られなかった。したがって、誘電体フィルタ101を構成した場合、隣接する共振器間の結合が弱いため、狭帯域のフィルタ特性しか得られなかった。
【0014】
すなわち、誘電体基板102として、10mm×6mm角、基板厚1mmで比誘電率24の誘電体セラミック基板を用い、電極102a、102bに金を用い、開口部102c、102dの直径を3.5mm、隣接する開口部102c同士の距離または隣接する開口部102d同士の距離(ギャップ)を0.1mm、上導体ケース103の内側天井面から誘電体基板102の上面までの距離を1mm、誘電体基板102の下面から下導体ケース104の内側底面までの距離を1mmとして、中心周波数25GHzの誘電体フィルタ101を作製したところ、その結合係数は1.5%未満で比通過帯域幅が300MHz程度の狭帯域な帯域通過フィルタしか得られなかった。
【0015】
このようなフィルタを広帯域にするために、共振器間距離(隣接する開口部102c同士の距離または隣接する開口部102d同士の距離、すなわち、ギャップ)を小さくして結合係数を高くすることが可能であるが、共振器間距離(ギャップ)を小さくすることにも限界があり、実際に作成するには共振器間距離(ギャップ)は0.01mmが限界であり、この場合でも結合係数は2%程度であり、比通過帯域幅が400MHz程度までしか得ることができなかった。
【0016】
また、共振器間距離を小さくするということは、隣接する開口部102c同士の距離または隣接する開口部102d同士の距離を小さくすることであるから、電極102aまたは電極102bのパターニングがそれだけ困難なものとなるという問題もあった。
【0017】
また、入出力電極105a、105bと共振器との外部結合も弱いため、必要な外部結合を取るために、誘電体基板102の他方主面の電極102bに形成された2つの開口部102dと誘電体ストリップ105a、105bとの位置関係を最適な位置に配置する必要があり、この設計が困難であった。
【0018】
本発明は、これらの問題点を鑑みてなされたもので、入出力手段等との結合が取りやすい共振器及び結合係数3%以上の広帯域な特性を有するフィルタを提供することを目的としている。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そこで、請求項1に係る誘電体共振器は、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記開口部付近に形成される共振領域と、を有している。
【0020】
このように誘電体基板の両主面の電極に形成された開口部を多角形状にしたことにより、従来の円形開口部の場合に生じていたTE010 モードとは異なるスロットモードの電磁界が生じる。
【0021】
また、請求項2に係る誘電体共振器、請求項6に係るフィルタ、請求項11に係る共用器、請求項16に係る通信機装置は、前記開口部の形状を矩形としている。
【0022】
これにより、矩形を構成する一辺からこれに平行な他の一辺に向かって生じる電界を有するモード、すなわち矩形スロットモードが生じる。このとき、誘電体基板の上下面で同じ電界方向の矩形スロットモードが生じる。
【0023】
さらに、請求項3に係る誘電体共振器、請求項7に係るフィルタ、請求項12に係る共用器、請求項17に係る通信機装置は、開口部の隅部の一つが他の隅部と異なっている。
【0024】
これにより、垂直に交差する2つの矩形スロットモードを結合させることができる。
【0025】
請求項4に係る誘電体共振器、請求項8に係るフィルタ、請求項13に係る共用器、請求項18に係る通信機装置は、開口部の隅部が面取りされた形状となっている。
【0026】
これにより、開口部の隅部に生じる電流集中を緩和する事ができる。
【0027】
請求項5に係るフィルタは、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記開口部付近に形成される共振領域と、
前記共振領域に結合する入出力手段とを有している。
【0028】
これにより、外部結合が大きいフィルタが得られる。
【0029】
請求項9に係る共用器は、少なくとも第1のフィルタと第2のフィルタを有し、前記第1のフィルタは、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記開口部付近に形成される共振領域と、前記共振領域に結合する入出力手段とを有し、前記第2のフィルタは、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記開口部付近に形成される共振領域と、前記共振領域に結合する入出力手段とを有し、前記第1のフィルタの入出力手段のうちの一つと第2のフィルタの入出力手段のうちの一つとを接続した共通の入出力手段を有している。
【0030】
これにより、外部結合が大きい共用器が得られる。
【0031】
請求項10に係る共用器は、第1のフィルタの誘電体基板と第2のフィルタの誘電体基板とに同一の誘電体基板を用いている。
【0032】
このように同一誘電体基板上に第1のフィルタと第2のフィルタを形成したので、第1のフィルタ及び第2のフィルタの誘電体基板両主面の電極の開口部を、一度にパターニングすることができる。
【0033】
請求項14に係る通信機装置は、少なくとも共用器と送信回路及び受信回路とアンテナとを有し、前記共用器は、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記開口部付近に形成される共振領域と、前記共振領域に結合する入出力手段とを有する送信フィルタと、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記誘電体基板の前記開口部に挟まれた部分に形成される共振領域と、前記共振領域に結合する入出力手段とを有する受信フィルタと、前記第1のフィルタの入出力手段のうちの一つと第2のフィルタの入出力手段のうちの一つとを接続した共通入出力手段とからなり、
前記送信フィルタに送信回路が接続され、前記受信フィルタに受信回路が接続され、前記共通入出力手段にアンテナが接続されている。
【0034】
これにより、広帯域に送受信できる通信機装置を得ることができる。
【0035】
請求項15に係る通信機装置は、送信フィルタの誘電体基板と受信フィルタの誘電体基板とに同一の誘電体基板を用いている。
【0036】
このように同一誘電体基板上に送信フィルタと受信フィルタを形成したので、送信フィルタ及び受信フィルタの誘電体基板両主面の電極の開口部を、一度にパターニングすることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1に示すように、誘電体フィルタ1は、両主面に電極を形成した誘電体基板2と上下導体ケース3、4から構成されている。
【0038】
誘電体基板2は、一定の比誘電率を有する基板であり、その一方主面には2つの矩形状の開口部2cを有する電極2aが形成され、その他方主面には2つの矩形状の開口部2dを有する電極2bが形成されている。この開口部2c、2dは互いに対向するように配置されている。
【0039】
上導体ケース3は、金属により形成されており、下面開口の箱形形状をしている。また、上導体ケース3は、電極2aの開口部2c付近で誘電体基板2から一定の間隔が生じるように下面開口の凹部が形成されている。
【0040】
下導体ケース4は、誘電体により形成されており、上面開口の箱型形状で側面に鍔が突出した形状となっている。また、下導体ケース4の内周面には遮蔽導体6が形成されており、電極2bの2つの開口部2dに対向する位置にそれぞれ入出力電極5a、5bが遮蔽導体6と絶縁されて形成されている。入出力電極5a、5bは下導体ケース4の側面に形成された孔4a、4bから外方に導出されている。
【0041】
さらに、下導体ケース4内には、遮蔽導体6が形成された下導体ケース4の内部底面と誘電体基板2を一定の間隔に保つためのスペーサ7が配置されている。このスペーサ7は、上下導体ケース3、4内の電磁界を乱さない位置に配置され、誘電体または金属で形成される。
【0042】
このように誘電体基板2の両主面の電極2a、2bの開口部2c、2dの形状を矩形にすると、矩形を構成する四辺のうち互いに対向する2辺の間に生じる電界を有するスロットモードを利用することが可能となり、このスロットモードでは磁界が開口部2cの上及び開口部2dの下に広がるため、隣接する共振器同士の結合や入出力電極等の入出力手段との結合を強くすることができる。
【0043】
この効果を確認するために、誘電体基板2として、5.9mm×3.9mm角、基板厚0.6mm、比誘電率24の誘電体セラミック基板を用い、電極2a、2bに金を用い、開口部2c、2dを1.2mm×1.6mmの長方形に形成し、上導体ケース103の内側天井面から誘電体基板2の電極2aまでの距離1mmにし、下導体ケース104の内側底面から誘電体基板2の電極2bでの距離を1mmとして、中心周波数25GHzのフィルタを作成した。この時、利用するスロットモードとしては、開口部2c、2dの1.6mmの長辺間を伝搬する電界を有するスロットモードを利用している。なお、1.2mmの短辺間を伝搬するスロットモードは、長辺間を伝搬するスロットモードよりも中心周波数が高くなるため、ここでは利用していない。この周波数差は磁界と平行な方向の寸法に差があるためである。
【0044】
このフィルタの共振器間距離(隣接する開口部2c同士の距離または隣接する開口部2d同士の距離、すなわち、ギャップ)を変化させて、その結合の強さの変化を見た結果、共振器間距離0.5mmで1.75%、共振器間距離0.1mmで8.24%、共振器間距離0.05mmで10.7%、共振器間距離0.02mmで12.8%の強い結合度が得られた。
【0045】
また、比通過帯域幅はそれぞれ共振器間距離0.5mmで300MHz、共振器間距離0.1mmで1500MHz、共振器間距離0.05mmで2000MHz、共振器間距離0.02mmで2500MHzというように従来に比べて、広帯域なフィルタを得ることができる。
【0046】
また、従来の円形開口部からなるTM010 モード共振器と比べると、同じ誘電率で同じ基板厚の誘電体基板を用いて同じ中心周波数の共振器を作成した場合、従来のTE010 モード共振器が直径3.5mmの円形開口部が必要であったのに対して、本発明のスロットモード共振器では1.2mm×1.6mmの長方形開口部で良いので、平面方向の面積が約1/5と小さくなっている。すなわち、本発明の構造は、同じ周波数であれば従来の構造に比べて小型化が可能である。
【0047】
次に、第2の実施の形態について図2を用いて説明する。なお、図1で説明した第1の実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施の形態では、第1の実施形態と比べて、矩形の開口部の隅部に丸みをつけた点で異なる。
【0049】
すなわち、図2に示すように、誘電体フィルタ11では、誘電体基板12の両主面に形成された電極12a、12bの開口部12c、12dの形状を、R面取り加工を施したような隅部を丸めた矩形状としている。なお、本発明でいう面取りとは、実際に角を削り落とす加工をいうのではなく、電極に形成された穴である開口部それ自体の形状が丸みを帯びた形状になっていることをいう。
【0050】
このような構成にすると、開口部12c、12dの内周部分である電極12a、12bの開口部側縁端部に流れる電流が開口部の角の部分に集中することがなくなり、無負荷Qを向上させることができる。
【0051】
なお、本実施の形態では開口部の形状を隅部を丸めたR面取り形状にすることにより、隅部への電界の集中を緩和したが、これに限るものではなく、例えば、開口部の隅部をC面取り形状にすることにより、開口部を略八角形状にしても、R面取り形状程ではないが、同様の効果が得られる。
【0052】
次に、第3の実施の形態について図3を用いて説明する。なお、図1で説明した第1の実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施の形態では、第1の実施形態と比べて、開口部の形状を正方形の4つの隅部のうち一つをC面取り形状にした略五角形状に形成し、開口部間をつなぐ結合線路22eを形成した点で異なる。
【0054】
すなわち、図6に示すように、誘電体基板22は、一定の比誘電率を有する基板であり、その一方主面には正方形の4つの隅部のうち一つをC面取り形状にした略五角形状の開口部22cを2つ有する電極22aが形成され、その他方主面には正方形の4つの隅部のうち一つをC面取り形状にした略五角形状の開口部22dを2つ有する電極22bが形成されている。この開口部22c、22dは互いに対向するように配置されている。
【0055】
本実施の形態では開口部22c、22dの形状を正方形にすることにより、対向する1つの共振器を二重モード共振器としている。すなわち、正方形の場合、これを構成する4つの辺の長さが等しいため、2組の対向する辺間に生じるスロットモードは同じ中心周波数を有している。この時、正方形の4つの隅部のうち1つを他の3つの隅部とは異なる形状にすることにより、2組の対向する辺間に生じるスロットモードを結合させることができる。ここでは、正方形の4つの隅部のうち1つを面取り形状にすることで他の隅部と形状を異ならせている。
【0056】
さらに、図3に示すように、誘電体基板22の上面、すなわち、電極22aが形成されている側の面には、コプレナー線路からなる結合線路22eが2つの開口部22cをつなぐように開口部22c間に形成されている。誘電体基板22の下面、すなわち、電極22bが形成されている側の面には、コプレナー線路からなる結合線路22fが2つの開口部22dをつなぐように開口部22d間に形成されている。結合線路22eと結合線路22fは誘電体基板22を挟んで対向している。
【0057】
このような結合線路22e、22fにより、一方の開口部22cと一方の開口部22dが構成する一方の共振器と、他方の開口部22cと他方の開口部22dが構成する他方の共振器とを結合させている。
【0058】
すなわち、誘電体フィルタ21は、高周波信号が入出力電極5aに入力され、入出力電極5aが、この入出力電極5aと間隔をおいて対向する開口部22dを有する共振器と磁界結合する。この時、入出力電極5aと磁界結合するスロットモードは入出力電極5aの伸長方向に平行な電界を有するスロットモード(以下、第1のスロットモードと呼ぶ。)である。第1のスロットモードは同じ共振器内で入出力電極5aの伸長方向に垂直な電界を有するスロットモード(以下、第2のスロットモードと呼ぶ。)と結合する。そして、第2のスロットモードは結合線路22e、22fを介して、隣接する共振器において第2のスロットモードと同方向の電界を有するスロットモード(以下、第3のスロットモードと呼ぶ。)と電界結合する。この第3のスロットモードは、隣接する共振器において第3のスロットモードの電界と垂直な方向に電界を有するスロットモード(以下第4のスロットモードと呼ぶ。)と結合する。この第4のスロットモードは入出力電極5bと磁界結合し、出力される。
【0059】
このように動作することによって、第1〜第4のスロットモードを利用した4段のフィルタを作成することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、コプレナー線路により共振器間の結合を強くしたがこれに限るものではなく共振器間にスロットや誘電体等を介在させることにより、共振器間の結合を強くしてもよい。また、本実施の形態では、結合線路は両面に形成しているが、結合が本実施形態よりも弱くてもよい場合は、片面のみに形成しても良い。
【0061】
次に第4の実施の形態に係る共用器31について図4を用いて説明する。
【0062】
すなわち、図4に示すように、誘電体基板32は、一定の比誘電率を有する基板であり、その一方主面には正方形の4つの隅部のうち一つをC面取り形状にし、他の隅部をR面取り形状にした略五角形状の開口部32cを2つ有する電極32aが形成され、その他方主面には正方形の4つの隅部のうち一つをC面取り形状にし、他の隅部をR面取り形状にした略五角形状の開口部32dを2つ有する電極32bが形成されている。この開口部32c、32dは互いに対向するように配置されている。
【0063】
本実施の形態では開口部32c、32dの形状を正方形にすることにより、対向する1つの共振器を二重モード共振器としている。すなわち、正方形の場合、これを構成する4つの辺の長さが等しいため、2組の対向する辺間に生じるスロットモードは同じ中心周波数を有している。この時、正方形の4つの隅部のうち1つを他の3つの隅部とは異なる形状にすることにより、2組の対向する辺間に生じるスロットモードを結合させることができる。ここでは、正方形の4つの隅部のうち1つをC面取り形状にし、他の隅部をR面取り形状にすることで形状を異ならせている。
【0064】
さらに、図3に示すように、上導体ケース33は、金属等により形成されており、下面開口の箱形形状をしている。また、上導体ケース33は、電極32aの開口部32c付近で誘電体基板32から一定の間隔が生じるように下面開口の凹部が形成されている。
【0065】
下導体ケース34は、誘電体により形成されており、上面開口の箱型形状で側面に鍔が突出した形状となっている。また、下導体ケース34の内周面には遮蔽導体36が形成されており、電極32bの2つの開口部32dに対向する位置にそれぞれ入出力電極35a、35b、35cが遮蔽導体36と絶縁されて形成されている。入出力電極35a、35b、35cは下導体ケース34の側面に形成された孔34a、34b、34cから外方に導出されている。
【0066】
さらに、下導体ケース34内には、遮蔽導体36が形成された下導体ケース34の内部底面と誘電体基板32を一定の間隔に保つためのスペーサ37が配置されている。このスペーサ37は、上下導体ケース33、34内の電磁界を乱さない位置に配置され、誘電体または金属で形成される。
【0067】
上記のように誘電体基板32の両主面の電極32a、32bの開口部32c、32dの形状を矩形にすると、矩形を構成する四辺のうち互いに対向する2辺の間に生じる電界を有するスロットモードを利用することが可能となり、このスロットモードでは磁界が開口部32cの上及び開口部32dの下に広がるため、隣接する共振器同士の結合や入出力電極等の入出力手段との結合を強くすることができる。
【0068】
また、開口部32c、32dの形状である正方形の隅部の一つをC面取り形状にして他の隅部と形状を異ならせたので、正方形の四辺のうち互いに対向する2辺の間で生じる2つのスロットモードを結合させることができる。
【0069】
さらに開口部32c、32bの形状である正方形の残る三つの隅部をR面取り形状にしたので、開口部32c、32dの内周部分である電極32a、32bの開口部側縁端部に流れる電流が開口部の角の部分に集中することがなくなり、無負荷Qを向上させることができる。
【0070】
以下に、この共用器31の動作を説明する。
すなわち、アンテナに接続される入出力電極35cから受信信号が入力され、入出力電極35cが、この入出力電極35cと間隔をおいて対向するの開口部32dを有する共振器の一方と磁界結合する。この時、入出力電極35cと磁界結合するスロットモードは入出力電極35cの伸長方向に平行な電界を有するスロットモード(以下、第1のスロットモードと呼ぶ。)である。第1のスロットモードは同じ共振器内で入出力電極35cの伸長方向に垂直な電界を有するスロットモード(以下、第2のスロットモードと呼ぶ。)と結合する。そして、第2のスロットモードは入出力電極35aと磁界結合し、受信回路に出力される。
【0071】
一方、送信回路に接続される入出力電極35bから送信信号が入力され、入出力電極35bが、この入出力電極35bと間隔をおいて対向するの開口部32dを有する共振器と磁界結合する。この時、入出力電極35bと磁界結合するスロットモードは入出力電極35bの伸長方向に平行な電界を有するスロットモード(以下、第3のスロットモードと呼ぶ。)である。第3のスロットモードは同じ共振器内で入出力電極35bの伸長方向に垂直な電界を有するスロットモード(以下、第4のスロットモードと呼ぶ。)と結合する。そして、第4のスロットモードは入出力電極35cと磁界結合し、アンテナに出力される。
【0072】
このように動作することによって、第1、第2のスロットモードを有する受信フィルタと第3、第4のスロットモードを有する送信フィルタからなる共用器となる。
【0073】
なお、本発明では、入出力電極35aを受信回路に、入出力電極35bを送信回路に接続したがこれに限るものではなく、入出力電極35aを送信回路に、入出力電極35bを受信回路に接続してもよい。
【0074】
また、送信フィルタを構成する誘電体基板32両主面の電極32a、32bの開口部32c、32dの大きさと受信フィルタを構成する誘電体基板32両主面の電極32a、32bの開口部32c、32dの大きさを異ならせることによって送信フィルタの通過帯域と受信フィルタの通過帯域を異ならせるようにしてもよい。
【0075】
次に、第5の実施の形態に係る通信機装置41について図5を用いて説明する。図5に示すように、通信機装置41はアンテナ42、伝送線路43、共用器部44と受信回路45及び送信回路46から構成されている。
【0076】
共用器部44は受信フィルタ44aと送信フィルタ44bから構成されており、受信フィルタ44aの一方の入力端と送信フィルタ44bの出力端が共通に接続されている。この共通に接続された入出力端が伝送線路43を介してアンテナ42に接続され、高周波信号を送受信している。また、受信フィルタ44aの出力端は受信回路45に接続され、送信フィルタ44bの入力端は送信回路46に接続されている。
【0077】
共用器部44には、第4の実施の形態で説明した共用器31を用いてもよいし、第1〜第3の実施の形態で説明したフィルタ1、11、21を受信フィルタ44aや送信フィルタ44bにそれぞれ用いてもよい。
【0078】
なお、第1〜第5の実施の形態ではすべて帯域通過フィルタを用いて説明したが、これに限るものではなく、例えば、帯域阻止フィルタやトラップフィルタ等にも本発明は適用できるものである。
【0079】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、開口部を多角形状にしたことにより、従来の円形開口部の場合に生じていたTE010 モードとは異なるスロットモードの電磁界が生じるので、このスロットモードを利用することができる。このスロットモードは、従来のTE010 モードに比べると電磁界の広がりが大きいため、入出力手段や他の共振器、あるいは別の回路と結合させる際に強い結合を得ることができる。例えば、フィルタや共用器を構成した場合、入出力手段との結合を強くすることができる。特に、多段のフィルタや共用器を構成した場合、共振器間の結合を強くすることができるので、広帯域な周波数特性を有するフィルタや共用器を得ることができる。このように本発明の共振器、フィルタ、共用器は広帯域な特性を有するので、通信機装置に好適である
また、本発明では、開口部の形状を矩形にしたことにより、矩形を構成する一辺からこれに平行な他の一辺に向かって生じる電界を有するモード、すなわち、矩形スロットモードが生じるので、このスロットモードを利用することができる。矩形スロットモードは、4つの辺のうち対向する2辺間で生じるモードであり、その周波数は磁界と平行な方向の寸法によって決定されるため、この方向を規定するだけで容易に中心周波数を決定することができる。
【0080】
特に、開口部の隅部のうち1つを他の隅部と異なる形状にすれば、多重モード共振器を作成することができる。1個の共振器を複数段の共振器として利用することができるので、従来の円形の開口部や正方形以外の多角形状の開口部に比べると半分の大きさで同等の特性を有する誘電体フィルタ、共用器を得ることができる。
【0081】
さらに、本発明では、開口部の隅部を面取り形状にして隅部の電流を集中を緩和しているので、電流の集中することによる損失が低減され、誘電体共振器自体の無負荷Qを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態を説明するための誘電体フィルタの分解斜視図である。
【図2】第2の実施の形態を説明するための誘電体フィルタの分解斜視図である。
【図3】第3の実施の形態を説明するための誘電体フィルタの分解斜視図である。
【図4】第4の実施の形態を説明するための共用器の分解斜視図である。
【図5】第5の実施の形態を説明するための通信機装置のブロック図である。
【図6】本願出願人が先に提案した誘電体フィルタの分解斜視図である。
【符号の説明】
1 誘電体フィルタ
2 誘電体基板
2a、2b 電極
3 上導体ケース
4 下導体ケース
4a、4b 孔
5a、5b 入出力電極
6 遮蔽導体
7 スペーサ
Claims (18)
- 誘電体基板と、
前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、
前記電極に形成される多角形状の開口部と、
前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、
前記開口部付近に形成される共振領域と、
を有することを特徴とする誘電体共振器。 - 前記開口部の形状は矩形であることを特徴とする請求項1記載の誘電体共振器。
- 前記開口部は、隅部の一つが他の隅部と異なることを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘電体共振器。
- 前記開口部は、隅部が面取りされた形状であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の誘電体共振器。
- 誘電体基板と、
前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、
前記電極に形成される多角形状の開口部と、
前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、
前記開口部付近に形成される共振領域と、
前記共振領域に結合する入出力手段と、
を有することを特徴とするフィルタ。 - 前記開口部の形状は矩形であることを特徴とする請求項5記載のフィルタ。
- 前記開口部は、隅部の一つが他の隅部と異なることを特徴とする請求項5または請求項6記載のフィルタ。
- 前記開口部は、隅部が面取りされた形状であることを特徴とする請求項5、請求項6または請求項7記載のフィルタ。
- 少なくとも第1のフィルタと第2のフィルタを有し、
前記第1のフィルタは、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記開口部付近に形成される共振領域と、前記共振領域に結合する入出力手段とを有し、
前記第2のフィルタは、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記開口部付近に形成される共振領域と、前記共振領域に結合する入出力手段とを有し、
前記第1のフィルタの入出力手段のうちの一つと第2のフィルタの入出力手段のうちの一つとを接続した共通の入出力手段を有することを特徴とする共用器。 - 前記第1のフィルタの誘電体基板と前記第2のフィルタの誘電体基板とが同一の誘電体基板であることを特徴とする請求項9記載の共用器。
- 前記開口部の形状は矩形であることを特徴とする請求項9または請求項10記載の共用器。
- 前記開口部は、隅部の一つが他の隅部と異なることを特徴とする請求項9、請求項10または請求項11記載の共用器。
- 前記開口部は、隅部が面取りされた形状であることを特徴とする請求項9、請求項10、請求項11または請求項12記載の共用器。
- 少なくとも共用器と送信回路及び受信回路とアンテナとを有し、
前記共用器は、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記開口部付近に形成される共振領域と、前記共振領域に結合する入出力手段とを有する送信フィルタと、誘電体基板と、前記誘電体基板の両主面に形成される電極と、前記電極に形成される多角形状の開口部と、前記誘電体基板から間隔を隔てて配置される上下導体と、前記誘電体基板の前記開口部に挟まれた部分に形成される共振領域と、前記共振領域に結合する入出力手段とを有する受信フィルタと、前記第1のフィルタの入出力手段のうちの一つと第2のフィルタの入出力手段のうちの一つとを接続した共通入出力手段とからなり、
前記送信フィルタに送信回路が接続され、前記受信フィルタに受信回路が接続され、前記共通入出力手段にアンテナが接続されたことを特徴とする通信機装置。 - 前記送信フィルタの誘電体基板と前記受信フィルタの誘電体基板とが同一の誘電体基板であることを特徴とする請求項14記載の通信機装置。
- 前記開口部の形状は矩形であることを特徴とする請求項14または請求項15記載の通信機装置。
- 前記開口部は、隅部の一つが他の隅部と異なることを特徴とする請求項14、請求項15または請求項16記載の通信機装置。
- 前記開口部は、その隅部が面取りされた形状であることを特徴とする請求項14、請求項15、請求項16または請求項17記載の通信機装置。
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