JP3362624B2 - 重ね溶接継手の疲労特性向上方法 - Google Patents
重ね溶接継手の疲労特性向上方法Info
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Description
労特性向上方法に関し、特に自動車等に用いられる薄鋼
板の溶接継手の疲労特性向上方法に関する。
使用される鋼板には強度が要求され、中でも疲労強度が
重要視される。疲労強度については、一般に母材の疲労
強度が母材強度の上昇に伴って上昇しても、溶接部の疲
労強度はほとんど上昇しないことが知られている。この
原因としては、溶接継手部には形状的に応力集中する箇
所が存在し、かつ高い引張残留応力が発生することが挙
げられる。したがって、このような原因を取り除いて溶
接部の疲労強度を向上させることが望まれている。
手部で応力集中する溶接止端部の形状を滑らかにする方
法が挙げられ、そのような方法としては、グラインダー
等の研削工具で止端部を研削する方法、特開昭59−1
10490号公報に開示されているTIG溶接による再
溶融方法がある。
として、特開平4−371287号公報に開示された方
法、および特開平8−112688号公報に開示された
方法がある。前者は、溶接部近傍に置きビードを施した
後、グラインダーで置きビードを削除して平滑に仕上げ
る方法であり、後者は溶接部近傍をアセチレンガス炎で
線状加熱する方法である。
をグラインダー等の研削工具で研削する方法では、切削
工具を作業者が保持して研削しなければならず、そのた
めの作業能率は非常に低く、単位作業時間当たりに処理
することができる溶接長は短くならざるを得ない。さら
に、安定して一様に研削することは困難であり、研削工
具により鋼板表面を傷つけてかえって疲労強度を低下さ
せる危険性さえある。
開示されているTIG溶接による再溶融方法では、疲労
強度の向上度が再溶融される位置およびその際の入熱と
いった溶接条件に大きく依存し、さらにこれらを一定条
件で溶融したとしても溶融金属の流動状態により止端部
の形状が大きくばらつくため、安定した効果を得ること
が困難である。
のうち、特開平4−371287号公報に開示された方
法では、グラインダーで置きビードを研削する際に鋼板
表面を傷つけることもありかえって疲労強度を低下させ
る危険性がある。また、研削に時間がかかるため、大量
生産される自動車部品では生産性が極端に低下する。
た方法は、造船等に用いられる厚板を対象とするもので
あり、自動車用薄鋼板に用いられる鋼板厚さでは、昇温
領域が広くなりやすく、目的のところのみを特定の温度
域に加熱する局部加熱には不向きであり、かつ加熱部周
辺の温度勾配が緩やかになるため、局部加熱による溶接
止端部近傍の残留応力低減の効果が低く、疲労特性向上
に十分な効果が得られない。さらに、ガス炎は熱の集中
がさほど高くないため、加熱部を目的の温度まで加熱す
る際に時間がかかり、効率が悪い。
のであって、自動車用鋼板等の薄鋼板の溶接継手におい
て、必要な箇所のみの残留応力を効果的かつ効率的に低
減することができ、もって疲労特性を向上させることが
できる方法を提供することを目的とする。
に、本発明では、TIGアーク、プラズマアーク、また
はレーザービームを熱源として用い、重ね溶接継手を構
成する下側鋼板の溶接部近傍位置を、溶接部と平行に、
鋼板が溶融しない程度に加熱することを特徴とする重ね
溶接継手の疲労特性向上方法を提供する。
ク、またはレーザービームを熱源として用いることによ
り、自動車用鋼板のような薄い鋼板の溶接継手において
も局部加熱が可能となる。このため、重ね溶接継手を構
成する下側鋼板の溶接止端部近傍の必要な箇所のみを局
部的に加熱してその部分の残留応力を効果的にかつ効率
的に低減することができ、疲労特性を有効に向上させる
ことができる。また、これらの熱源は熱の集中が良好で
あるため、加熱効率が高い。
溶接止端部から12.5mm以上20mm以内であり、
加熱温度が500℃以上800℃以下であることが好ま
しい。これにより、一層残留応力を低減することがで
き、疲労特性を向上させる効果を大きくすることができ
る。
明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一
実施形態の実施状態を示す斜視図である。上側鋼板1と
下側鋼板2とが重ねられた状態で、押さえ治具3により
固定されている。鋼板1、2は、自動車用鋼板等の薄鋼
板である。ここでは、この状態でアーク溶接して重ね隅
肉溶接継手が形成されている。参照符号6は溶接部であ
り、7は溶接止端部である。
移動することが可能であり、この熱源発生部4から、熱
源5としてTIGアーク、プラズマアーク、またはレー
ザービームが射出される。熱源発生部4を移動させるこ
とにより、熱源5は溶接部6の近傍位置、すなわち、溶
接止端部7から距離a離れた位置を溶接部6と平行に移
動し、その部分を局部的に加熱することができる。この
場合の熱源5の出力は、下側鋼板2が溶融しない程度に
調節される。
IGアーク、プラズマアーク、レーザービームは、加熱
箇所を絞り込むことができ、この例のような薄鋼板の溶
接継手の場合にも昇温領域が広くならずに局部的な加熱
が可能である。したがって、このように溶接止端部近傍
の特定の部分を局部的に加熱してその部分の残留応力を
効果的にかつ効率的に低減することができる。ここで、
残留応力を一層低減するためには、上記距離aを12.
5〜20mmにし、加熱温度を500〜800℃にする
ことが好ましい。また、熱源5として用いるTIGアー
ク、プラズマアーク、レーザービームは、エネルギーが
高いため、効率的に加熱することができる。このように
して残留応力が低減されることにより、溶接継手の疲労
特性が向上するのである。
こでは、鋼板として厚さ2.6mmおよび3.2mmの
ものを準備した。各厚さについて、幅60mm、長さ3
00mmに切断した鋼板2枚を、重ね代10mmで、前
述した図1に示すように重ね、上側鋼板1の端部を10
0mm間隔で仮止めした後、押さえ治具3で鋼板を固定
し、仮止めした上側鋼板1の端部に沿って入熱2.53
kJ/cmでMAG溶接し、重ね隅肉溶接継手を作製し
た。この際の条件は、溶接電流220A、電圧23V、
および溶接速度120cm/minであった。
た後、熱源5としてTIGアークを用い、入熱および下
側鋼板の溶接止端部7からの距離aを種々変化させ、溶
接部6と平行にTIGアークを移動させて下側鋼板2を
加熱した。そして、溶接部近傍の残留応力の測定および
疲労試験を実施した。
1のようにして形成された溶接継手の下側鋼板2の溶接
止端部7の近傍に5連ひずみゲージ8を貼り付け、ひず
みゲージ貼り付け箇所を切り出して残留ひずみを解放
し、そのひずみ量から残留応力を算出した。なお、重ね
隅肉溶接継手での疲労強度において問題となる残留応力
は溶接方向と垂直方向の残留応力であることから、本実
施例で対象とする残留応力は溶接方向と垂直方向とし
た。また、疲労試験は、図3に示す試験片で片振り平面
曲げを実施した。
る。溶接ままでの下側鋼板の溶接止端部近傍の残留応力
は、図4に示すような状態であり、板厚2.6mmの鋼
板を用いた溶接継手、および3.2mmの鋼板を用いた
溶接継手とも、溶接止端部には100MPa以上の高い
残留応力が発生していた。
5mm離れた位置を溶接部と平行に加熱温度が650℃
になるようにTIGアーク加熱した溶接継手において
は、図5に示すように、その残留応力状態は、図4に示
した溶接ままの継手の残留応力状態から大きく変化し、
溶接止端部の残留応力が除去されるか、さらには圧縮残
留応力までになった。
置でTIGアーク加熱した時の溶接止端部の残留応力を
測定した。その結果、図6に示すように、加熱温度が4
00〜900℃でかつ加熱位置を溶接継手の下側鋼板の
溶接止端部から12.5〜35mmとする条件におい
て、TIGアーク加熱後の残留応力σRS*と溶接ままで
の残留応力σRS0との比σRS*/σRS0が、σRS*/σRS0
<1となり残留応力低減効果がみられた。さらに、加熱
温度が500〜800℃でかつ加熱位置を下側鋼板の溶
接止端部〜12.5〜20mmとする条件において、σ
RS*/σRS0≦0となり、引張残留応力が除去されるか、
さらには圧縮残留応力となる効果が見出された。
および上記TIGアーク加熱条件(下側鋼板の溶接止端
部から15mm離れた位置を溶接部と平行に加熱温度が
650℃になるようにTIGアーク加熱する)で加熱処
理を行った溶接継手から試験片を採取して、それら試験
片を用いて実施した。その結果、図7に示すように、T
IGアーク加熱することにより、疲労特性が向上するこ
とが確認された。具体的には、破断寿命が2×106回
におけるTIGアーク加熱したものの疲労強度は溶接ま
まに比べて約1.6倍となっており、疲労強度が大きく
向上していることが認められた。
でTIGアーク加熱した時の、疲労寿命が2×106回
における溶接継手疲労強度と、溶接ままでの同様の疲労
強度とを比較した。その結果を図8に示す。この図に示
すように、加熱温度を500〜800℃とし、かつ加熱
位置を重ね継手の下側鋼板の溶接止端部から12.5〜
20mmとする条件において、 (TIG加熱後の疲労強度)/(溶接ままでの疲労強
度)≧1.5 となり、疲労強度が大きく向上することが確認された。
TIGアーク、プラズマアーク、またはレーザービーム
を熱源として用いることにより、自動車用鋼板のような
薄い鋼板の溶接継手においても局部加熱が可能となる。
このため、重ね溶接継手を構成する下側鋼板の溶接止端
部近傍の必要な箇所のみを局部的に加熱してその部分の
残留応力を効果的にかつ効率的に低減することができ、
疲労特性を有効に向上させることができる。また、これ
らの熱源は熱の集中が良好であるため、加熱効率が高
く、効率的に残留応力の低減して疲労特性を高めること
ができる。
図。
応力状態を示す図。
板の溶接止端部近傍の残留応力状態を示す図。
加熱した時の溶接止端部の残留応力を測定した結果を示
す図。
接継手の疲労特性を比較して示す図。
加熱した時の、疲労寿命が2×106回における溶接継
手疲労強度と、溶接ままでの同様の疲労強度とを比較し
た結果を示す図。
Claims (2)
- 【請求項1】 TIGアーク、プラズマアーク、または
レーザービームを熱源として用い、重ね溶接継手を構成
する下側鋼板の溶接部近傍位置を、溶接部と平行に、鋼
板が溶融しない程度に加熱することを特徴とする重ね溶
接継手の疲労特性向上方法。 - 【請求項2】 前記下側鋼板の加熱位置が、その溶接止
端部から12.5mm以上20mm以内であり、加熱温
度が500℃以上800℃以下であることを特徴とする
請求項1に記載の疲労特性向上方法。
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JP01324397A JP3362624B2 (ja) | 1997-01-10 | 1997-01-10 | 重ね溶接継手の疲労特性向上方法 |
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JPH10193164A JPH10193164A (ja) | 1998-07-28 |
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JP01324397A Expired - Fee Related JP3362624B2 (ja) | 1997-01-10 | 1997-01-10 | 重ね溶接継手の疲労特性向上方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20210276126A1 (en) * | 2018-06-29 | 2021-09-09 | Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho (Kobe Steel, Ltd.) | Joining structure and method for manufacturing same |
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1997
- 1997-01-10 JP JP01324397A patent/JP3362624B2/ja not_active Expired - Fee Related
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