JP3356933B2 - 皮膜形成能に優れる焼鈍分離剤とそれを用いた方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

皮膜形成能に優れる焼鈍分離剤とそれを用いた方向性電磁鋼板の製造方法

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JP3356933B2
JP3356933B2 JP21150696A JP21150696A JP3356933B2 JP 3356933 B2 JP3356933 B2 JP 3356933B2 JP 21150696 A JP21150696 A JP 21150696A JP 21150696 A JP21150696 A JP 21150696A JP 3356933 B2 JP3356933 B2 JP 3356933B2
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幸司 山崎
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は方向性電磁鋼板の製
造に際し、グラス皮膜形成能に優れ、均一で極めて優れ
たグラス被膜を有すると同時に塗布作業性の優れる焼鈍
分離剤とそれを用いた方向性電磁鋼板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】通常、方向性電磁鋼板は4%以下のSi
を含有する素材を熱延し、焼鈍と1回叉は焼鈍を挟む2
回以上の冷間圧延により最終板厚にされる。次いでN2
+H2又はH2 等の雰囲気ガス中でPH2 O/PH2
制御して脱炭焼鈍を行い、一次再結晶、脱炭及びSiO
2 を主成分とする酸化膜の形成処理を行う。
【0003】その後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤
をスラリー状にしてコーティングロール等で塗布し、最
終焼鈍を行い、二次再結晶、純化、グラス被膜形成を行
った後、通常は張力付与型の絶縁被膜剤を塗布し、連続
ライン中で焼き付け処理を行い製品とされる。更に、高
磁束密度方向性電磁鋼板の場合、特に板厚0.27mm以
下の様な薄手材に於いては、レーザー、プレスロール、
歯型ロール、ケガキ等によって線状疵を付与する磁区細
分化処理を行って鉄損改善が施される。
【0004】この方向性電磁鋼板は<001>軸をもつ
(110)<001>結晶が高温の仕上げ焼鈍(二次再
結晶焼鈍)で優先的に成長する現象を利用している。こ
の二次再結晶過程で低表面エネルギーをもつ(110)
面結晶が優先的に成長し、鋼中のインヒビターとして微
細に分散しているAlN,MnS等により成長を抑えら
れている他の結晶を浸食するために優先的に成長するも
のと考えられている。従って、優れた方向性電磁鋼板を
製造するためには、鋼中のAlN,MnS等の分散制御
とこれらの分解までの制御が重要である。
【0005】最終焼鈍に於けるインヒビターの変化は、
脱炭焼鈍で形成する酸化膜、焼鈍分離剤及び最終仕上げ
焼鈍の熱サイクルや雰囲気条件により影響を受けること
は知られている。これらの中でとりわけ焼鈍分離剤のM
gOの性状や添加剤はグラス被膜形成開始時期、形成速
度、被膜の質、量等に大きい影響力をもつためインヒビ
ターへの影響が大きい。
【0006】焼鈍分離剤MgOは、脱炭焼鈍で形成され
るSiO2 主体の酸化膜と反応して、通常、グラス被膜
と呼ばれるフォルステライト主体の被膜を形成する(2
MgO+SiO2 →Mg2 SiO4 )。このグラス被膜
形成に於いては、従来のMgOパウダーを使用する場
合、グラス被膜形成に於ける反応性制御の問題から、M
gOの性状として特に粒度、純度、活性度の他、鋼板へ
の塗布時における水への分散性、水和量、塗布量、塗布
膜の均一性、鋼板面への密着性等の影響が大きい。更
に、前記グラス被膜形成の反応促進剤として添加される
添加剤の種類、添加量及びMgO表面と鋼板表面への分
散状態が被膜形成の形成開始温度、形成速度、形成量等
に影響を及ぼす。これらの、焼鈍分離剤における種々の
MgO特性の違いが最終製品の被膜特性のみならず磁気
特性を左右する結果をもたらすのである。
【0007】一般的に、焼鈍分離剤として用いるMgO
は水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸
マグネシウム等の原料を平均粒径数百〜数千オングスト
ローム程度のサイズの微粒子結晶に調整し、700〜1
200℃程度の高温で焼成して0.2〜5μm程度のM
gOの微細な結晶粒子を得て用いられる。この際、Mg
Oや添加剤は製造段階での焼結や焼成から使用段階まで
の保存時の吸湿による経時変化による粒子の凝集や水に
懸濁させる段階での粒子同士の強い凝集反応により、鋼
板面に塗布される段階では、数ミクロン〜数十ミクロン
の粗大粒子となり反応性低下を引き起こす。特に従来の
MgOでは、低水和MgOを得ようとすると、高温焼成
での製造が必須であり、この様な場合にはMgOの焼
結、凝集等の反応が一段と強まる。このため、塗布乾燥
後の鋼板表面では、MgO粒子の接触面積が低下、塗布
膜密度の低下、鋼板面に対する密着性の低下、塗膜の均
一性の低下等が生じる。
【0008】また、MgOにグラス被膜の反応促進剤と
して添加剤を配合して使用する場合にも、添加剤自体も
製造時の焼結やスラリー中の凝集が生じ、粗大粒子のま
まで塗布膜中あるいは鋼板酸化膜上に存在する。特に、
凝集性の強いMgOに添加する場合には、更にこの現象
が顕著になる。その結果、反応促進効果が弱まったり、
不均一反応を生じることになり、均一で、良好なグラス
被膜が得られ難く、これによる磁気特性の劣化を引き起
こす。したがって、分散性が良く、微粒子で反応性の良
い焼鈍分離剤の開発は重要な課題である。反面、高活性
で反応性の良いMgOを得ようとすると水和水分が増加
する傾向があり、同時にスラリーの粘性が増加して高速
ラインでの塗布作業において均一な塗布性が得られなく
なる問題がある。
【0009】反応性の優れる焼鈍分離剤MgOの製造技
術として、特開平02−267278号公報では、焼成
したMgOを100℃以上の水蒸気含有雰囲気中を通過
させ、MgO表面にOH化学吸着層をH2 O換算でMg
O量にもとずいて0.8〜2.5%形成したMgOを含
む焼鈍分離剤を脱炭焼鈍後の鋼板に塗布し、仕上げ焼鈍
する技術が提案されている。これにより、均一なグラス
被膜を有し、磁気特性の優れる方向性電磁鋼板が得られ
ることが述べられている。
【0010】また、特開平7−310188には、本発
明者らによって〔Mgl-X3+ X 〕O,〔Mgl-X2+
X 〕O,〔Mgl-X2+ X13+ X2〕Oの一般式で表され
る複合金属酸化物が提案されている(M2+;Be,C
a,Ba,Sr,Sn,Mn,Fe,Co,Ni,C
u,Zn,M3+;Al,Fe,Cr,Co,B,Ti,
Sb 0.01≦x≦0.40,x=x1+x2)。こ
の発明ではMgの一部を前記2価、3価或いは両者によ
って置換固溶し、複合金属酸化物により低融点化し、均
一で高張力のグラス皮膜が得られるものである。この技
術は、いずれも焼鈍分離剤の塗布時におけるMgO粒子
の凝集の解決法として、焼鈍後のMgO表面を高温での
特殊な表面処理を行って改質したり、MgOの複合化
(固溶体)によって融点を低下させたりするものであ
る。また、微粒子のMgOを得てグラス皮膜形成反応を
向上させるものであり、かなりの改善効果が得られてい
る。
【0011】しかしながら、MgOの製造条件からもた
らされる焼結、OH化学吸着層の安定性、MgO製造か
ら使用までの経時変化による凝集、水和水分、塗布作業
工程における粘性制御の問題からもたらされる不均一塗
布等の問題は完全に解決されたわけではなく、脱炭焼鈍
において形成される酸化膜の品質によっては被膜や磁気
特性のトラブル等回避出来ない問題が残った。このた
め、更に低水和で且つ高反応性且つ現場塗布工程におけ
る塗布作業性の優れるMgOの開発が望まれた。
【0012】本発明では、上述した従来技術における問
題解決策として、焼鈍分離剤の塗布性とグラス皮膜形成
反応の問題を解決することを主眼としてなされた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、方向性電
磁鋼板製造時に於ける焼鈍分離剤の塗布に際し、従来の
MgOに於けるグラス被膜形成に於ける反応性向上と低
融点化の限界の問題及び焼鈍分離剤スラリーの水和性、
粘性の問題がもたらす高速ラインにおける不均一塗布の
問題を新規な焼鈍分離剤を適用することにより解決を図
る。これにより、均一なグラス皮膜形成と良好な磁気特
性を得る方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを目
的としてなされる。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は方向性電磁
鋼板の脱炭焼鈍〜最終仕上げ焼鈍過程までのグラス被膜
形成工程において、均一なグラス被膜を有し、磁気特性
の優れる製品の製造方法について検討した。この研究に
おいては、特に焼鈍分離剤として使用するMgOの反応
性向上と塗布作業時におけるスラリー性状に着目して研
究を行った。
【0015】焼鈍分離剤として、通常は、MgOと反応
促進剤としてTi化合物等の添加剤が用いられる。この
ような従来技術においては、MgOの性状がグラス被膜
形成、主として反応性や被膜の安定性に対して影響し、
被膜のみならず、磁気特性に多大な影響を及ぼすため、
添加剤による補助効果の方がむしろ重要なためである。
【0016】本発明者らは新規な高反応性焼鈍分離剤と
して、複合酸化物MgOについて膨大な研究と実験を行
って検討した。その結果、前記問題を解決する新規な焼
鈍分離剤として、MgOの一部にCa,Ti,V,C
r,Mn,Fe,Sr,Co,Zr,Sbの1種又は2
種以上およびAlを一定量を含有し、且つ、Alとのモ
ル比を一定範囲とすることにより、焼鈍分離剤の水和水
分や粘性が改善された微粒子の高反応性酸化物が得られ
る。その結果、現場高速通板の塗布作業が容易で、更に
広範囲の他の工程条件においてグラス皮膜の安定化が得
られ、磁性改善効果が得られる技術の開発に至ったもの
である。
【0017】本発明は、方向性電磁鋼板の製造において
脱炭焼鈍後の鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布するに際し、
適用される新規な焼鈍分離剤とそれを用いた方向性電磁
鋼板に関するものである。その要旨は以下のとおりであ
る。 (1)モル比でMg;100に対し、Ca,Ti,V,
Cr,Mn,Fe,Sr,Co,Zr,Sbの中から選
ばれる1種又は2種以上およびAlを合計で0.05〜
10からなる酸化物で、且つ、(Al以外の元素のモル
比のトータル数)/(Alのモル数)比率が0.5〜1
0であり、かつ前記元素の合計の20%以上がMgO結
晶の中で置換固溶されており、BET比表面積が10〜
100m2/g、水和水分が0.5〜6.0%であるこ
とを特徴とする皮膜形成能に優れる方向性電磁鋼板用焼
鈍分離剤。 (2)最終板厚に冷間圧延した方向性電磁鋼板コイルを
脱炭焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布乾燥後、仕上げ焼鈍し、
絶縁皮膜剤を塗布焼き付けすることからなる工程におい
て、脱炭焼鈍後の鋼板表面に(1)の焼鈍分離剤を塗布
乾燥後仕上げ焼鈍を行うに際し、昇温時の雰囲気ガスを
2 10〜90%、残部をH2 とし、PH2 O/PH2
を0.01〜0.4として焼鈍することを特徴とするグ
ラス皮膜の優れる方向性電磁鋼板の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明では、モル比でMg100
重量部に対し、Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,S
r,Co,Zr,Sbの中から選ばれる1種又は2種以
上およびAlを0.05〜10からなる酸化物で且つこ
れらのAl以外の元素のトータルモル数/Alのモル数
が0.5〜10であり、更に、酸化物性状としてBET
比表面積10〜100m2 /g、水和水分が0.5〜
6.0%であることが特徴であり、これにより、高速ラ
インでの優れた塗布作業性とグラス皮膜形成効果が得ら
れる。
【0019】本発明のMg化合物においては、Alを一
定量含有することが必須である。Alは通常のMgO製
造過程における水酸化物の段階で添加される。このAl
はMgO主体の水酸化物の結晶の成長を抑制すると同時
に、この水酸化物を焼成して得られる酸化物のシンタリ
ングを極めて効果的に抑制する効果がある。この結果、
非常に微細な酸化物が得られる。Alはモル比でMg1
00に対し、0.05〜10の割合で添加される。0.
05以下の添加では水酸化物の結晶成長抑制やシンタリ
ング抑制の効果が極めて低下する。一方、10以上にな
ると焼成後のMgO主体の酸化物が活性過ぎて高水和化
が避けられず、また、スラリーの粘度が高くなりすぎて
高速通板での均一な塗布作業が困難になる。更に、これ
らによりグラス皮膜の不均一性、皮膜欠陥を生じたり、
磁気特性の劣化をもたらすため好ましくない。本発明に
おいて、前記、Al添加と共に重要なのは同時に添加さ
れるCa,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Sr,Co,
Zr1種又は2種以上のトータル量とAl量の比であ
る。これらの他の添加元素はMg主体の酸化物の融点を
低下する一方で酸化物を不活性化する働きを有する。こ
の比率がモル比で0.5〜10の場合、酸化物の微粒子
化効果を保ちつつ低水和の酸化物が得られる。この結
果、通常のMgOに比較して低水和で、極めて高反応性
の酸化物が得られる。また、スラリーの粘性がこの比率
によって自由に制御出来るため、製造ラインの条件に合
った適切な酸化物が得られる。比率が0.5未満では、
この不活性化による低水和化効果が得られない。また、
スラリーの粘性制御効果も得られにくい。一方、比率が
10以上になるとその作用が強すぎて、微粒化効果を減
少し、グラス皮膜形成反応性の低下を引き起こすため好
ましくない。
【0020】次に、Alを一定量含有し、Ca,Ti,
V,Cr,Mn,Fe,Sr,Co,Zr,Sb等の他
の元素をモル比で一定割合で含有する本発明の酸化物に
おいてはそれらの割合で制御される酸化物の比表面積に
特徴がある。本発明の様な工程で製造する酸化物におい
ては、特にAl含有Mg化合物の場合、前述のような理
由から、極めて微細な酸化物が得られるのが特徴であ
る。通常のMgOの場合、製造工程条件によって異なる
が本発明のAlによる微細化効果がないため、高々10
〜20m2 /g程度の比表面積のしか得られない。しか
し、本発明の場合、従来のMgOでは得られないような
著しく比表面積の大きいMg化合物が得られるのが特徴
である。また、従来のMgOと同様な比表面積でも低融
点で高反応性が得られるのが特徴である。これにより、
グラス被膜形成における反応性が向上し、極めて優れる
被膜と磁気特性を有する方向性電磁鋼板が得られる。比
表面積の範囲は10〜100m2 /gの範囲であれば本
発明の目的とする低水和、高反応性、スラリー粘度適正
化効果がもたらされる。
【0021】本発明によれば、BET比表面積10m2
/g未満では、本発明の成分酸化物を以てしてもグラス
形成向上効果が小さくなる為好ましくない。一方、10
0m 2 /g以上では、粘性が高くなりすぎ高速ラインで
の塗布が困難になる。また、水和水分の抑制が困難にな
り、脱炭焼鈍や仕上げ焼鈍条件によっては安定したグラ
ス皮膜が得られなくなる。
【0022】次に本発明の酸化物の場合、水和水分は
0.5〜6.0%である。本発明においては、Mgに対
し一定割合で添加されるAlと他の金属元素による酸化
物粒子の微粒化や反応性向上による皮膜形成反応向上効
果が得られる。しかしながら、0.5%未満では、仕上
げ焼鈍昇温過程での鋼板間の雰囲気がドライになり過ぎ
て、脱炭酸化膜の変質が生じ、グラス皮膜の厚みが薄く
なったり、密着性の低下、張力の低下が生じる。一方、
6.0%超では、本発明の高反応性焼鈍分離剤をもって
しても、過酸化状の皮膜欠陥として、シモフリ、ガスマ
ーク、スケール等が特に、大型コイルにおいては生じ易
くなるため制限される。
【0023】本発明においては、この様に通常のMgO
を用いる場合に比較して低水和域から高水和域までグラ
ス皮膜形成が優れるのが一つの特徴である。通常MgO
によるグラス皮膜形成反応は、MgOの水和によって生
じるMg(OH)2 の仕上げ焼鈍昇温過程に分解し、鋼
板間をウエット化する効果を主に利用にしている。これ
に対し、本発明の場合、前述の如く、Al等の添加元素
による微粒子化と反応性向上効果により、水分の作用を
それほど必要としない。このため、低水和域で反応性が
良く、且つ低温でグラス皮膜形成が生じるため、高温で
の追加酸化を抑制出来るため、水分の影響を受け難くな
っている為である。
【0024】次に、本発明におけるMgと共に用いられ
る添加元素のCa,Ti,V,Cr,Mn,Fe,S
r,Co,Zr,Sbから選ばれる1種又は2種以上の
合計およびAlは20%以上がMgOの結晶に固溶状態
であることが好ましい。これらの添加元素は水酸化物構
造とされた後、焼成により酸化物とされる。このため、
水酸化物生成条件や焼成条件によっては固溶型の複合酸
化物構造を呈する。固溶量が20%未満では、グラス皮
膜形成向上効果が弱く、脱炭焼鈍や仕上げ焼鈍条件によ
っては不安定になるため制限される。
【0025】次に、本発明の酸化物を焼鈍分離剤に用い
る場合、好ましい仕上げ焼鈍条件は雰囲気ガスがN2
0〜90%、残部H2 とし、PH2 O/PH2 が0.0
1〜0.4である。本発明の焼鈍分離剤では、その高反
応性から比較的ドライ雰囲気でも良好なグラス皮膜が形
成される。雰囲気ガスのN2 比率は主に二次再結晶の安
定性の面で制限される。N2 10%未満では、昇温時に
脱炭酸化膜の還元が生じ、グラス皮膜形成反応の低下を
もたらす一方、インヒビターとしてAlNを用いる場
合、脱インヒビターが早まり、二次再結晶不安定化をも
たらす。一方、N 2 90%超では、鋼板への窒化が生じ
てAlNの量や形態に影響をもたらす。この場合にも、
磁気特性の低下が生じるため好ましくない。雰囲気ガス
のPH2 O/PH2 が0.01未満の場合には、昇温時
に脱炭酸化膜の還元反応が生じて、グラス皮膜形成反応
を低下する。この場合も脱インヒビターが早まって磁性
の不安定化をもたらす。一方、0.4超の場合には、昇
温中に高温域で不均一な追加酸化が生じ、本発明の焼鈍
分離剤をもってしても均一なグラス皮膜が得られない。
特にコイル外周部やエッジ部に欠陥が生じ易くなる。こ
の場合にも、過剰酸化により脱インヒビターが生じ磁性
の低下が見られる。0.01〜0.4の範囲ではこの様
な問題がなく、良好なグラス皮膜と磁気特性が得られ
る。
【0026】図1に本発明の(A)焼鈍分離剤として、
実施例2−本発明4を使用した場合と(B)実施例2−
比較例1のAlのみ添加した場合、(C)実施例1の比
較例2の従来のMgOを焼鈍分離剤として使用した場合
のグラス被膜形成反応を仕上げ焼鈍過程で解析した結果
を示す。この実験に於いては適用した方向性電磁鋼板サ
ンプルは、実施例2と同一の素材である。
【0027】図1に示される如く、本発明によるものは
仕上げ焼鈍昇温過程でより低温からグラス被膜が形成さ
れ、最終的な形成量も比較例より多いことが確認され
た。しかし、Alのみを添加した比較例ではやや反応性
が劣るため皮膜形成量が少なく、また、従来のMgOを
用いた場合には極端に皮膜形成量が少ないことが確認さ
れた。
【0028】
【実施例】
<実施例1>重量%でC;0.054,Si;3.0
0,Mn;0.060,S;0.024,Al;0.0
07、残部を不可避の不純物とFeよりなる方向性電磁
鋼板素材を公知の方法で熱延と焼鈍を挟む2回の冷間圧
延により最終板厚0.34mmとした。この後、炉温85
0℃、N2 25%+H2 75%、露点66℃の雰囲気ガ
ス中で脱炭焼鈍し、脱炭と表面にSiO2 主体の酸化層
を形成し、表1に示す組成の焼鈍分離剤を液温度5℃で
プロペラ状の攪拌装置をもうけたタンク内で1500rp
m ×120min.攪拌後、塗布し、乾燥後20Tコイルに
巻取り1200℃×20Hrの最終焼鈍を行った。この
後、20%コロイダルシリカ:100ml,50%リン酸
Al:50ml,CrO3 :4gからなる絶縁被膜剤を乾
燥後の重量で2.5g/m2 の重量になる様に塗布し8
50℃でヒートフラットニングと焼き付け処理を行っ
た。この試験に於ける仕上げ焼鈍後のグラス被膜の形成
状態、絶縁被膜処理焼き付け後の被膜特性を表2に示
す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】 この実験の結果、本発明によるものは何れもコイル全長
に渡って、厚く、光沢のあるグラス被膜がコイル全面に
わたって形成され、絶縁被膜処理後の被膜の密着性が良
好であった。一方、比較例の焼鈍分離剤に通常のMgO
や添加元素のAlに対する他の元素の割合が少ない本発
明外の場合には、グラス皮膜が薄かったり、ガスマーク
状のムラが鋼板のエッジ部に生じ、密着性も本発明に比
較してかなり劣る結果となった。又、磁気特性に於いて
も、本発明の焼鈍分離剤の場合、磁気特性が安定して良
好で、特に、鉄損が極めて良好な値を示したのに対し、
比較例は磁束密度、鉄損共かなり劣る結果となった。
【0031】<実施例2>重量%でC;0.080,S
i;3.30,Mn;0.075,S;0.025,C
u;0.08,Sn;0.06,Al;0.028,
N;0.0079残部を不可避の不純物とFeからなる
高磁束密度方向性電磁鋼板素材スラブを公知の方法で熱
延−焼鈍−酸洗−冷間圧延により最終板厚0.225mm
とした。この鋼板をN2 25%+H2 75%、露点68
℃の湿潤雰囲気ガス中で850℃×120秒間脱炭焼鈍
を行った。次いで、表3に示す組成の酸化物を主成分と
する焼鈍分離剤(*1)を液温10℃で実施例と同一の攪拌
装置を用いて1000rpm ×60分間攪拌した。次い
で、乾燥後の重量で12g/m2 になる様に塗布し、乾
燥後1200℃×20Hrの最終仕上げ焼鈍を行った。そ
の後、絶縁被膜剤として実施例1と同一組成の被膜剤を
乾燥・焼き付け後の重量で5g/m2 になるように塗布
し、炉温850℃でヒートフラットニングと焼き付け処
理を行った。このときの被膜特性と磁気特性の結果を表
4に示す。
【0032】この試験の結果、本発明の酸化物を焼鈍分
離剤として用いたものは、いずれもグラス被膜がコイル
の全長、全面にわたって均一に形成され、グラス被膜の
張力、密着性とも良好であった。又、磁気特性に於いて
も本発明のものは、何れも極めて良好な磁束密度と鉄損
特性が得られた。これに対し、比較例のAl単独添加
や、Al以外の他の元素の添加の少ない物は水和水分、
スラリー粘度が高く、均一に塗布が出来ず、皮膜磁性、
磁気特性共不良であった。また、Alの添加のない場合
には、焼成時にシンタリングが生じ、グラス皮膜の形成
及び磁気特性がやや劣る結果となった。
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【発明の効果】以上、詳述した様に、本発明は新規な焼
鈍分離剤として、MgO製造過程において、モル比でM
g100に対しAlを0.05〜10とCa,Ti,
V,Cr,Fe,Mn,Co,Zr,Sb等をAlに対
し0.5〜10の割合で添加し製造した酸化物を用いる
ことにより、低融点化効果と反応性向上効果が得られ、
更に、塗布工程におけるスラリー調整時に粘性が容易に
制御されて高速ラインにおいても均一な塗布が実現でき
る。この結果、グラス皮膜がコイル全面に渡って均一に
形成され、インヒビターの変質、弱体化を防止して良好
な磁気特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の(A)焼鈍分離剤として、実施例2−
本発明4を使用した場合と(B)実施例2−比較例1の
Alのみ添加した場合、(C)実施例1の比較例2の従
来のMgOを焼鈍分離剤として使用した場合のグラス被
膜形成反応を仕上げ焼鈍過程で解析した結果を示す図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 紀宏 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1−1 新 日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (72)発明者 田中 収 福岡県北九州市戸畑区大字中原46番地の 59 日鐵プラント設計株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−35014(JP,A) 特開 平7−310188(JP,A) 特開 平7−278676(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 501 C21D 1/70 C23C 22/00 H01F 1/16

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 モル比でMg;100に対し、Ca,T
    i,V,Cr,Mn,Fe,Sr,Co,Zr,Sbの
    中から選ばれる1種又は2種以上およびAlを合計で
    0.05〜10からなる酸化物で、かつ、(Al以外の
    元素のモル比のトータル数)/Alのモル数)比率が
    0.5〜10であり、かつ前記元素の合計の20%以上
    がMgO結晶の中で置換固溶されており、BET比表面
    積が10〜100m2 /g、水和水分が0.5〜6.0
    %であることを特徴とする皮膜形成能に優れる方向性電
    磁鋼板用焼鈍分離剤。
  2. 【請求項2】 最終板厚に冷間圧延した方向性電磁鋼板
    コイルを脱炭焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布乾燥後、仕上げ
    焼鈍し、絶縁皮膜剤を塗布焼き付けすることからなる工
    程において、脱炭焼鈍後の鋼板表面に請求項1記載の焼
    鈍分離剤を塗布乾燥後仕上げ焼鈍を行うに際し、昇温時
    の雰囲気ガスをN2 10〜90%、残部をH2 とし、P
    2 O/PH2 を0.01〜0.4として焼鈍すること
    を特徴とするグラス皮膜の優れる方向性電磁鋼板の製造
    方法。
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