JP3353632B2 - 鋼中Alの態別分析方法 - Google Patents

鋼中Alの態別分析方法

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JP3353632B2 JP01525597A JP1525597A JP3353632B2 JP 3353632 B2 JP3353632 B2 JP 3353632B2 JP 01525597 A JP01525597 A JP 01525597A JP 1525597 A JP1525597 A JP 1525597A JP 3353632 B2 JP3353632 B2 JP 3353632B2
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燿一 石橋
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、鋼中に含まれる
Alを状態別に酸可溶Al又は酸不溶Alとしてレザー
気化分析法を用いて定量する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】レーザー気化分析法は、レーザー光照射
により試料の一部を蒸発させ、これを搬送ガスで定量分
析装置に送り分析する方法で、試料の形状や導電性の有
無を問わず種々の試料を分析することが可能な技術であ
る。高密度のレーザー光が試料表面に集光して照射され
るので、照射部では瞬時に試料が蒸発する。この照射部
に不活性な搬送ガスを流していると、蒸発した試料は試
料外物質との反応が防がれ、冷却されて微粒子となり搬
送ガスで分析装置に運ばれる。
【0003】パルスレーザー光を用いて、瞬時の照射を
繰り返すと試料代表性のよい微粒子試料が連続して得ら
れ、定量分析装置として原子吸光装置やプラズマ発光分
光分析装置或いはプラズマ励起質量分析装置等を用いる
と高精度の成分分析結果が得られる。これらの分析装置
では、成分濃度の指標としてその成分の吸光度或いは発
光強度が測定値として得られる。そして、一般にはその
成分の吸光度或いは発光強度と含有率が圧倒的に大きい
マトリックス即ちFeの吸光度或いは発光強度との比を
その成分の強度と呼ぶ。
【0004】従来、レーザ気化分析法を開示した例とし
て、特開平7−72047号公報があり、パルスレーザ
ー光の照射条件を適切に選ぶことにより、試料代表性の
よい微粒子試料が採取され、精度の高い成分分析が行わ
れることが記載されている。しかし、この方法では、即
時に元素の定量分析結果を得ることはできるが、鋼中に
存在する元素を状態別に測定することはできなかった。
言い換えれば、製鋼過程で脱酸のために用いられるAl
は、Feに固溶した状態と酸化物を形成した状態とで鋼
中に存在するが、これらの状態別にその量を求めること
はできなかった。
【0005】鋼中Alは化学分析により態別定量が行わ
れる。Feに固溶しているAlは鋼試料を酸で溶かす際
に一緒に溶解するが、酸化物として存在するAlは溶解
しないので、酸溶解により互いに分離される。前者は酸
可溶Alと呼ばれ、後者は酸不溶Alと呼ばれる。そし
て、この方法は正確な分析値が求まるので、標準値を求
める基準法として知られている。
【0006】しかし、化学分析法では分離操作の所要時
間が数時間にも達することから、従来、放電発光分光法
が検討された。放電発光分光法では、放電の選択性と発
光強度の偏りを利用して態別定量を行う。
【0007】放電発光分光法では、発光スペクトルを得
るためのエネルギーを放電により分析試料に投入する
が、粒状となっている酸不溶Alに放電され易く放電に
選択性がある。更に、酸不溶Al粒に放電した場合は、
酸可溶Alが存在する固溶部に放電した場合よりも、大
きな発光強度が得られる。この現象を利用して、発光強
度の分布を解析し、両者を状態別分析することが行われ
てきた。
【0008】例えば、特公昭55−15657号公報に
は、次の方法が記載されている。各放電毎の発光強度を
測定しその出現度数分布を求めると正規分布からのずれ
が見られ、分布曲線は出現度数最大の強度より大なる方
へ裾野を広げている。このずれは酸不溶Alに起因する
ものとみなし、出現度数最大の強度より小なる分布曲線
に従う正規分布を想定し、この正規分布の中心発光強度
から酸可溶Al濃度を求め、正規分布から外れた部分の
中心強度から酸不溶Al濃度を求める。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、測定強
度には必ず変動が伴われているが、放電発光分光法では
放電に選択性があるためこの変動を把握することができ
ず、態別分離の正確さに欠け充分な分析精度が得られな
かった。
【0010】この発明はこの問題を解決するために行わ
れたもので、選択性のない試料採取を行い、微小領域に
ついての測定強度を得て、これらの測定強度に含まれる
変動を把握して測定強度を解析する。これにより、正確
度の高い鋼中Alの態別分析法を提供することを目的と
する。
【0011】
【課題を解決するための手段】この目的を達成する手段
は、次の発明である。
【0012】分析試料にパルスレーザー光を集光して照
射し、発生する微粒子を定量分析装置に搬送して前記微
粒子の成分測定を行うレーザー気化分析を用い、鉄鋼試
料表面上に照射するレーザー光の集光点をで移動させな
がら微小領域毎に微粒子を微少時間で採取し、前記微粒
子に含まれるAl成分の強度の測定を順次行い、Al成
分の強度の平均値とその累積度数分布の任意位置の測定
強度とから、強度測定に伴う変動と酸不溶Alの粒度分
布に起因する変動とを考慮することにより、酸可溶Al
の濃度及び酸不溶Alの濃度を求める鋼中Alの態別分
析方法である。
【0013】レーザー気化分析では、レーザー光照射に
より発生する微粒子は搬送されて分析装置で成分量が測
定されるが、この発明では分析する位置を連続的に移動
させながら、微少時間毎に測定を順次行う。分析する位
置を連続的に移動させながら、微少時間の測定強度を得
るので、測定強度はその微少時間内に移動した範囲の微
小領域についての値となる。
【0014】集光点を移動させるのは、試料を代表する
に足りる広い範囲から微粒子を採取するためである。移
動速度が小さ過ぎ採取面が局所的になると試料全体を代
表する微粒子採取が行われず分析精度が低下する。移動
は毎秒0.5mm程度以上の平均速度で行うのが適切であ
る。
【0015】成分分析が分析面全域について一つの情報
を得るのに対して、この分析法では各微小域についての
情報とその総和である全域の情報とが得られる。微小時
間の測定強度は微小域についての情報であり、これらの
平均値は全域についての情報である。又、酸不溶Al中
のAl濃度は数十%と大きく、酸可溶Alでは一般に数
ppm から数百ppm と小さい。このため、選択性なく微粒
子が採取されるレーザー気化法では、微小領域内に存在
する量が多いほどその微小時間の測定強度は大きくな
る。
【0016】測定強度を小さい順番に並べ、小さい方か
ら累積した測定値数の全測定値数に対する率と測定強度
との関係を整理すると累積度数分布が得られる。即ち、
累積率を横軸に、測定強度を縦軸に示すと、累積率と測
定強度との関係を示す分布曲線が得られる。図1に示し
た曲線はその一例である。
【0017】この分布曲線に基づいて、酸可溶Alの強
度と酸不溶Alの強度を分離して求めるのであるが、測
定強度には酸可溶Alの強度と酸不溶Alの強度の他
に、変動分が含まれている。この変動分を左右するもの
に、一般的に測定に伴われる変動に加えて、酸不溶Al
のような粒状物を含む場合に特有の試料内変動即ち微小
領域間の成分量の相違に基づく変動分とがある。
【0018】後者の試料内変動について詳述すると、全
ての酸可溶Al粒子の大きさが充分に小さくどの微小領
域にも同じ量だけ含まれていれば、試料内変動は起こら
ず、変動は測定に伴われる変動のみを考えればよい。し
かし、一般に粒子の中には大きいものと小さいものとが
ある。そして、この粒子の粒度分布はどの微小領域でも
同じではない。例えば、大きな粒子を含む微小領域と含
まない微小領域とが存在するのが普通である。
【0019】前述したように、酸不溶Al中のAl濃度
は酸可溶Al中のそれよりかなり高いので、大きな粒子
が入っている微小領域ではAl強度は平均値よりずっと
大きい強度を示す。反対に小さな粒子しか含まない微小
領域ではAl強度は平均値より小さい強度を示す。この
ため、各々の測定強度は一般に平均値と隔たった値を示
す。これが試料内変動である。この隔たりは粒度が不均
一であるほど大きく、試料内変動は酸不溶Alの粒度分
布に起因するものである。
【0020】任意の測定強度には、測定に伴われる変動
と試料内変動とが含まれている。このうち、測定に伴わ
れる変動はAl成分として酸不溶Alを含まず酸可溶A
lのみを含む試料の測定強度の変動から推定することが
できる。酸可溶Alは均一に固溶しているので、その強
度はどの微小領域でも等しく試料内変動は無く、測定強
度の平均値との隔たりは、全て測定に伴われる変動とみ
なすことができる。
【0021】試料内変動は、前述したように、酸不溶A
lの粒度分布に起因して生じるものである。この酸不溶
Alの粒度分布は、試料履歴即ち溶解プロセスによって
異なり、履歴が同じであればよく一致するので、試料履
歴から推定することができる。
【0022】ここで、測定強度の平均値及び任意の測定
強度について考えると、平均値では変動分は相殺されて
いるので、これには変動分が含まれていない。したがっ
て平均値は酸可溶Alの強度と酸不溶Alの強度の和で
ある。そして、任意の測定強度は、酸可溶Alの強度と
上記した測定に伴われる変動及び酸不溶Alの強度と上
記した酸不溶Alの粒度分布に起因する変動の総和であ
る。
【0023】したがって、変動について前述のように推
定すると、測定強度の平均値と累積度数分布の任意位置
の測定強度とから、酸可溶Alの強度及び酸不溶Alの
強度を分離して求めることができる。これらの強度は鋼
中のAl濃度と測定強度との関係を示す検量線により各
々の濃度に換算される。
【0024】
【発明の実施の形態】累積度数分布の解析手順を具体的
に示すことにより、この発明の実施の形態を説明する。
微小時間の測定強度は、時間系列では大小が入り乱れて
出現する。先ず、得られたこれらの測定強度を小さい順
に並び変える。次に、小さい方から累積した測定値数の
全測定値数に対する率と測定強度との関係を整理すると
測定強度の累積度数分布が得られる。この場合度数は%
である。
【0025】図1に、累積度数分布図を太い実線で示
す。測定強度の平均値はIm である。測定強度の平均値
m は全Al濃度に対応するものであり、酸可溶Alの
強度と酸不溶Alの強度の和である。即ち、Im は、酸
可溶Alの強度をIS とし酸不溶Alの強度をIi とす
ると、式(1)で表される。
【0026】
【数1】
【0027】累積率を任意に定めて、この点を累積点と
しその測定強度を累積度数分布図から求める。この累積
点は、後述する別に求められた測定に伴われる変動を、
この試料に適用するために定めるもので、任意の累積率
の点を定めればよいが、酸不溶Alの少ない範囲即ち累
積率の小さい域に定めると、変動の大きい測定強度を選
ぶことになるので、変動の推定精度が高くなる。図1
で、定めた累積点はN%で、累積点強度はI1 である。
【0028】次に、測定に伴われる変動を求める。酸可
溶Alを含み酸不溶Alを含まない標準試料のAl成分
の微少時間測定を行うと、酸可溶Alの強度のみの測定
強度が得られる。これらの測定強度の累積度数分布を求
めると、酸可溶Al測定強度の変動の分布が得られる。
測定強度の累積度数分布のパターンを図2に示す。測定
強度の平均値Js は酸可溶Alの標準濃度に対応する。
累積点をN%とすると累積点強度はJ1 である。
【0029】この累積点強度J1 は、酸可溶Alについ
て、測定強度の平均値Js が変動を伴ってJ1 と測定さ
れたものである。累積点強度J1 と測定強度の平均値J
s との比をβとすると、βは測定に伴われる変動の程度
を示す。
【0030】ここで、図1の測定試料の累積点強度I1
について考えると、累積点強度I1は測定強度の平均値
m が変動を伴ってI1 と測定されたものである。レー
ザー気化法では、試料採取に選択性がないので酸不溶A
lの存在に関係なく、酸可溶Alについての変動の程度
は標準試料で得られたβである。しかし、酸不溶Alに
ついてはこの段階では全く情報が得られていない。
【0031】I1 には酸不溶Alの強度とその粒度分布
に起因する変動分も含まれている。粒度分布に起因する
変動の程度をαとすると、累積点強度I1 は(2)式で
表される。
【0032】
【数2】
【0033】累積点強度I1 をβで除すと、測定強度I
1 の測定に伴われる変動が補正され、補正累積点強度が
得られる。この補正累積点強度をI2 で示す。式で示す
と(3)式である。
【0034】
【数3】
【0035】累積点強度I1 に酸不溶Alの強度(Ii
α)が含まれず酸可溶Alの強度(IS β)のみであれ
ば、補正累積点強度は酸可溶Alの強度IS と一致する
が、酸不溶Alについての強度が含まれるので両者の間
にはIi α/βだけの相違がある。
【0036】このことを考慮し、測定強度の平均値Im
から補正累積点強度I2 を差し引いて仮の酸不溶Alの
強度(Im −I2 )を求める。
【0037】図1に、測定試料の酸可溶Alの強度の仮
想される累積度数分布を細実線で示すとIS が求める酸
可溶Alの強度である。そして、仮の酸不溶Alの強度
(I m −I2 )は(4)式で表される。
【0038】
【数4】
【0039】(1)式から、Im とIS の差はIi であ
るから、(4)式は(5)式のように書き換えられる。
【0040】
【数5】
【0041】即ち、仮の酸不溶Alの強度(Im
2 )と酸不溶Alの強度Ii との間には比例関係があ
り、この比例定数はβとαとで決定される。この比例定
数の逆数を補正係数Kとし、仮の酸不溶Alの強度(I
m −I2 )にKを乗ずれば、酸不溶Alの強度Ii が求
まる。Kは(6)式で示される。
【0042】
【数6】
【0043】βは酸可溶Alのみを含む標準試料から推
定されるが、αは粒度分布に起因する変動であり、この
粒度分布は精錬過程でのAlの反応させ方や酸不溶Al
の浮上させ方等精錬履歴によって異なる。このため、試
料履歴により層別し、実験によって補正係数Kを定めて
おき、これを用いる。酸不溶Alの強度Ii が求まる
と、これを測定教の平均値Im から差し引いて酸可溶A
lの強度IS を求める。
【0044】上記したように、微小時間の測定強度の累
積度分布に基づいて、測定強度に含まれる変動を除い
て、酸不溶Alの強度及び酸可溶Alの強度IS を各々
分離して求めることができる。
【0045】
【実施例】
実施例1.Ar気流中で、転炉で採取した鉄鋼試料にパ
ルスレーザ光を集光点を移動させながら照射し、発生す
る微粒子をICP分析装置に搬送し微少時間毎に測定
し、得られた測定強度の累積度数分布から鋼中の酸可溶
Al濃度と酸不溶Al濃度とを求めた。
【0046】パルスレーザー光の周波数は2kHzであ
り、ビーム径を200μm に集光し、微少時間は100
msecであった。集光点の移動は、反射鏡の回転と集光レ
ンズの平行移動を組み合わせて行った。パルスレーザー
光の周波数は50Hz以上が望ましく、ビーム径は50
μm 程度から0.5mm程度に集光し、微少時間は全測定
時間の100分の1から1000分の1程度の範囲で選
ぶのが適切である。
【0047】レーザー光の照射は、図5に示すように、
レーザー光1の方向を反射鏡2で調整し、集光レンズ3
で試料4の表面に集光して行ったが、照射に際して、反
射鏡2を微小角往復回転させながら、集光レンズ3を回
転方向と垂直にこれも往復平行移動させて集光点の移動
を行った。移動速度は2mm/sec であった。微粒子は、
試料4にプローブ5を密着させ、これにArガスを流し
ICP分析装置6に搬送して分析した。
【0048】微小領域の測定強度を図3に示す。測定強
度はICP分析によるAlの発光強度とFeの発光強度
との比であり、測定時間は30sec であった。図では、
100msec毎の微小時間の測定強度300点が連なって
いる。微小時間の測定強度を把握して、これを解析する
ために、ICP分析装置にはパルス毎の強度を測定して
微小時間分だけ積算し測定強度として記憶する回路と、
これらの測定強度を呼び出して解析する演算回路とを新
たに設けた。
【0049】これらの300点の測定強度を並び替え、
発光強度の小さい方から順に横に並べて行くと図4に示
す累積度数分布が得られた。図で、横軸は測定数の累積
率であり、縦軸はAlの測定強度である。測定強度の平
均値Im は0.866であった。
【0050】累積率10%の点を累積点と定め、累積点
強度I1 は0.727であった。一方、酸可溶Alのみ
を含む標準試料について、予め求めておいた累積度数分
布では、測定強度の平均値Js が1.217、累積率1
0%の点の測定強度J1 が1.183で、これらの比β
は0.972であった。
【0051】累積点強度I1 (0.727)を比β
(0.972)で除して補正累積点強度I2 (0.74
8)を得、測定強度の平均値Im (0.866)から補
正累積点強度I2 (0.748)を差引いて仮の酸不溶
Alの強度(0.118)を得た。
【0052】この場合、試料採取位置は転炉であり、補
正係数Kは2.0が求められおり、仮の酸不溶Alの強
度(0.118)にこれを乗じて、酸不溶Alの強度I
i (0.236)を得、これを測定強度の平均値I
m (0.866)から差し引いて酸可溶Alの強度IS
(0.630)を得た。
【0053】これらの強度を、測定強度と鋼中濃度との
関係を示す検量線により各々の濃度に換算し、全Al濃
度0.033wt%、酸可溶Al濃度0.025wt%、酸
不溶Al濃度0.008wt%を得た。
【0054】なお、微小時間の測定強度の解析に際して
用いる酸可溶Alのみを含む標準試料の累積度数分布
は、試料採取位置に関係なく共通して使用するが、試料
採取位置による補正係数Kは他の採取位置では異なり、
例えばタンデイッシュではK=2.9となる。
【0055】実施例2.Ar気流中で、タンデイッシュ
で採取した鉄鋼試料に周波数1kHz、出力10Wのパ
ルスレーザ光を集光点をビーム径200μm に集光し、
集光点の移動速度を10mm/秒とし、発生する微粒子を
ICP分析装置に搬送し微少時間毎に測定を行い、得ら
れた測定強度を解析し鋼中の酸可溶Al濃度と酸不溶A
l濃度とを求めた。
【0056】測定強度の平均値は0.837、累積率1
0%の点を累積点と定め、累積点強度は0.779であ
った。
【0057】J1 /Js は0.972であるから、補正
累積点強度は0.779を0.972で除して0.80
1であった。測定強度の平均値0.837から補正累積
点強度801を差引いて仮の酸不溶Alの強度は0.0
36であった。
【0058】試料採取位置がタンデイッシュであるか
ら、補正係数Kは2.9で、仮の酸不溶Alの強度0.
029にこれを乗じて、酸不溶Alの強度は0.104
であった。これを測定強度の平均値0.837から差し
引いて酸可溶Alの強度0.733を得た。
【0059】これらの強度から、全Al濃度0.032
wt%、酸可溶Al濃度0.029wt%、酸不溶Al濃度
0.003wt%を得た。得られた濃度を化学分析値と比
較してみると、上記の分析値は全Al濃度が+0.00
1wt%、酸可溶Al濃度が±0.000wt%、酸不溶A
l濃度が+0.001wt%であり、両者の分析値は非常
に良く一致していた。
【0060】実施例3 試料6本について、この発明の方法で分析した分析値を
化学分析により測定した分析値と比較し、その正確さを
調べた。なお、調査は従来の放電発光法についても行い
比較した。
【0061】調査の結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】この発明の実施例では、化学分析値との差
は酸可溶Alで最大0.004wt%、特に集光点の移動
速度を0.5mm/秒以上の試料No. 1〜6では0.00
2wt%以下であり、酸不溶Alで0.001wt%以下で
ある。これに対して、従来例では、化学分析値との差は
酸可溶Alで最大0.009wt%、酸不溶Alで0.0
03wt%であった。このように、この発明による分析値
の正確度は高く充分に信頼できるものであった。
【0064】
【発明の効果】以上に述べてきたように、この発明によ
れば、集光したパルスレーザー光を連続的に移動させな
がら鉄鋼試料から適切な範囲にわたって微粒子を採取
し、微少時間毎に測定強度を得て、この測定強度の分布
状態に基づいて酸可溶Al及び酸不溶Alの各濃度を得
る。この測定強度には、酸可溶Alの強度と酸不溶Al
の強度の他に測定に伴われる変動と酸不溶Alの粒度分
布に起因する変動による強度とが含まれているが、パル
スレーザでは選択性のない試料採取が行われるので、上
記の変動を把握して解析することができ、高い精度で鋼
中Alを態別分析することができる。このようにして、
鉄鋼精錬過程で刻々変化するAlの状態を高精度で迅速
に測定することを可能にしたこの発明の効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】測定強度解析の形態を説明するための測定強度
の累積度数分布図である。
【図2】酸可溶Alのみを含む標準試料の測定強度の累
積度数分布図である。
【図3】実施例で得られた測定強度のグラフである。
【図4】実施例で得られた測定強度の累積度数分布図で
ある。
【図5】発明の方法を実施するための態別分析装置の概
念図である。
【符号の説明】
1 レーザー光 2 反射鏡 3 集光レンズ 4 試料 5 プローブ 6 ICP分析装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 望月 正 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−184592(JP,A) 特開 昭62−191763(JP,A) 特開 平7−72047(JP,A) 特公 昭55−15657(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/20 JICSTファイル(JOIS)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分析試料にパルスレーザー光を集光して
    照射し、発生する微粒子を定量分析装置に搬送して前記
    微粒子の成分測定を行うレーザー気化分析方法におい
    て、鉄鋼試料表面上に照射するレーザー光の集光点を移
    動させながら微小領域毎に微粒子を微少時間で採取し、
    前記微粒子に含まれるAl成分の強度の測定を順次行
    い、該Al成分の強度の平均値および累積度数分布の任
    意位置の強度とから、該強度測定に伴う変動と酸不溶A
    lの粒度分布に起因する変動とを考慮することにより、
    酸可溶Alの濃度及び酸不溶Alの濃度を求めることを
    特徴とする鋼中Alの態別分析方法。
JP01525597A 1997-01-29 1997-01-29 鋼中Alの態別分析方法 Expired - Fee Related JP3353632B2 (ja)

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