JP3964594B2 - 金属試料中の非金属介在物組成及び/又は粒径の分析法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄鋼あるいは非鉄金属中に存在する非金属介在物の組成及び/又は粒径をレーザー励起−ICP分析法を用いて迅速に測定する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属中に存在する非金属介在物は、引張強度の低下や転動疲労等の様な機械的性質への悪影響、及び腐食や水素誘起割れ等の様な金属素材の化学的性質への悪影響を引き起こす原因となる。また、表面疵の原因ともなる。従って、金属中に存在する非金属介在物の組成及び粒径を把握することは、金属製品の品質評価の為、あるいは非金属介在物を減少させる精錬方法の評価の為に非常に重要であり、非金属介在物の組成及び粒径の高精度且つ迅速な測定方法の確立が求められている。
【0003】
従来、非金属介在物の組成及び粒度を調べるに当たっては、化学的処理法で金属成分を溶解して、非金属介在物を抽出した後に、該介在物の化学成分組成は化学分析法で、また粒径は光学顕微鏡観察で夫々調べられているが、通常2〜3日もの長時間を要するという欠点がある。また、対象とする金属の化学成分組成によっては、炭化物等が溶解せずに残る為、非金属介在物のみを抽出することができないという問題もある。
【0004】
一方、非金属介在物の組成及び粒度を同時に迅速に測定する方法として、X線マイクロアナライザーと画像解析装置とを組み合わせる方法があるが、高真空下で測定する必要があること、及び金属試料の大きさが著しく制約されること等の問題がある。またこの方法では、測定できる介在物は素材表面に露出した介在物のみであり、金属内部の介在物は測定できない為、測定結果の代表性の点で問題がある。
【0005】
Reinholdssonらは、学術誌ISIJ International、37巻、1997年、第6号、637〜639頁において、発光分光光度装置を用いた方法を示している。しかし、発光分光光度装置の制約から、測定範囲約1mm以内に存在する複数の介在物は1個とみなされて評価されること、介在物の組成によって励起効率が異なるため各介在物組成に応じた検量線が必要なこと、及び素材表面に露出した介在物のみが測定対象であることから、全ての鋼種・非鉄金属への適用は困難であると思われる。
【0006】
秋吉は、特開平9−68500号公報において、レーザー励起−ICP発光分光光度法により鋼鋳片の組成を迅速に測定する方法を提案している。しかし、この方法では、ICP発光分光光度法の定量下限の制約から極微量の溶質成分の定量は行えない。また介在物組成の定量については言及していない。
【0007】
勝又と古谷は、材料とプロセス、12巻、1999年、第6号、P−55において、レーザー励起−ICP質量分析法を用いて鋼中に固溶したアルミニウムとアルミナ介在物の濃度比を測定しているが、それらの絶対濃度を求めることはできていない。彼らのレーザー励起法は、レーザー光の一点照射を多数の試料部位について繰り返すものであり、測定対象が1ミクロン程度の微小な酸化物系介在物に限られる上に、迅速性に問題がある。また、アルミナ介在物が励起されてAlO+が生成すると考えているが、アルミナ介在物からのAl3+イオンの発生は考慮していない。彼らは、鋼中に固溶した元素と鉄マトリックスとのマススペクトル強度比、及びその元素の酸化物と鉄マトリックスとのマススペクトル強度比を測定して頻度解析を行うことで、微細介在物の粒径とその量を測定できることを予測しているが、手法についの記述は全くない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記いずれの方法においても、非金属介在物の組成及び広範囲にわたる粒径を、十分な精度をもって迅速に測定することは現実には困難であり、現場での生産効率向上の面から迅速分析法の確立が極めて重要な課題となっている。
【0009】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鉄鋼及び非鉄金属中に存在する非金属介在物の組成及び粒径を、十分な精度をもって迅速に測定する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の非金属介在物の組成及び/又は粒径の分析法とは、金属表面及び/又は内部に存在する非金属介在物の組成及び/又は粒径を、レーザー励起−ICP分析法により定量することを要旨とする。
【0011】
上記非金属介在物の組成及び/又は粒径の分析は、金属試料表面にレーザー光を照射して、介在物の組成及び/又は粒径をICP分析法により定量することが好ましい。
【0012】
以下、上記レーザー励起−ICP分析法により非金属介在物の組成及び粒径を測定する原理を説明する。レーザー励起−ICP分析法とは、鉄鋼及び非鉄金属表面にレーザー光を照射して介在物を蒸発させ、これをキャリアガスにより搬送し、高温の誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、以下「ICP」と略す)中でイオン化させて、生成したイオンの個数を質量分析法、あるいは生成したイオンの発光強度を発光分光光度法で計測する方法である。一般に発光分光光度法より質量分析法の方が分析精度が高い為、質量分析法を用いる方が好ましい。
【0013】
また、本発明法では、分析用試料上にレーザー光を走査させ、前記レーザー励起−ICP分析法により得られるスペクトル強度の時間曲線の積分値を用いて非金属介在物の組成及び粒径を測定することが好ましい。以下、図1に示す様に、鋼表面に、A元素及びB元素を含有する酸化物系介在物であるAB酸化物系介在物1が存在する場合、及び鋼内部の表面近傍に存在するAB酸化物系介在物1’が存在する場合を例に説明する。
【0014】
図1に示す様に、鋼試料の部位2から部位3までレーザー光を走査して照射した場合、鋼試料のうち4で示す部分が励起されて蒸発する。この際、AB酸化物系介在物1及び1’も励起されて蒸発する。励起・蒸発する鋼試料部分4の幅及び深さは、レーザー出力が高いほど、また走査速度が低いほど大きくなる。例えば、レーザー出力が2mJ、走査速度0.02mm/sの場合、励起された鋼試料部分4の幅は約50ミクロン、深さは約50ミクロンである。また、レーザー光の焦点を故意に偏倚させることで、鋼試料の蒸発部分4の幅を広く、且つ深さを浅くすることも可能である。
【0015】
蒸発した試料は、高流量のアルゴンキャリアガスにより高速でICP部に搬送され、ICP部19(図3参照)でイオン化され、質量分析装置20(図3参照)でイオンの個数が計測される。A元素及びB元素は、それぞれ図1の時間曲線5及び6に示される様にマススペクトルとして表わされる。また、質量分析装置の代わりに発光分光光度計を用いた場合には、図1の時間曲線5及び6は、A元素イオン及びB元素イオンの特定波長における発光強度として表される。
【0016】
図1に示すピーク7及び8は介在物1に対応し、ピーク9及び10は介在物1’に対応している。ピーク7〜10の斜線部分をそれぞれ積分して得られたピーク面積値を用いて、検量線から介在物1及び1’中のA及びB元素の量をそれぞれ求めることができる。さらに、(%AO)+(%BO)=100であるから、計算により介在物1及び1’の組成(割合)を求めることができる。
【0017】
本発明法は、介在物が、上述の様なA元素,B元素及び酸素からなるAO及びBOの2成分系酸化物である場合に限らず、例えば、3成分系以上の酸化物、2成分系以上の硫化物、あるいは2成分系以上のりん化物の場合にも適用することができる。
【0018】
介在物1及び1’の粒径に対するピーク7と9及びピーク8と10との比較から明らかな様に、介在物の粒径はピーク面積値に比例する。即ち、介在物の粒径を、上記ピーク面積値から求めることができる。以下、アルミナを例に挙げて詳述する。
【0019】
まず、検量線の作成例について以下に示す。日本粉体工業技術協会で頒布しているJIS試験用白色溶融アルミナ粉体を、更にふるい分けして得られた狭い粒度分布範囲の粉末を、純鉄微粉末と混合し、ホットプレスで焼結した。得られた試料を研磨し、レーザー励起−ICP質量分析法でアルミニウムについてのマススペクトル曲線を求めた。多数のピークについて積分を行ってピーク面積値を得た後、アルミナ粒度との関係を求め、検量線として用いる図2を得た。
【0020】
次に、実試料としてアルミナ介在物が存在する鋼試料を用い、レーザー励起−ICP質量分析法によりアルミニウムのマススペクトル曲線を求める。ピーク曲線を積分して得られたピーク面積値を用いて、図2の検量線からアルミナ介在物の粒径(球相当径)を求めることができる。
【0021】
図1において、介在物が存在しない部位をレーザー励起した場合、マススペクトル曲線あるいは発光強度曲線は、元素Aでは11、元素Bでは12の強度を示す。これらの強度は、マトリックス中に溶存しているA及びB元素の濃度に対応している為、A及びB元素の溶存濃度とピーク高さとの関係を示す検量線を用いることによって、マトリックス試料中のA及びB元素の溶存濃度も求めることができる。
【0022】
尚、上記の方法では、例えば、レーザー出力が2mJ、レーザー光の走査速度が0.02mm/sの場合には、鉄鋼及び非鉄金属表面から深さ約50ミクロンまでの領域に存在する介在物が測定される。この測定深さは、レーザー出力が大きい場合には更に大きくなる。また、レーザー光の走査速度を小さくする場合に更に大きくなる。
【0023】
また、金属試料から抽出した非金属介在物粒子にレーザー光を照射して、介在物の組成及び/又は粒径をレーザー励起−ICP分析法により定量することも好ましい。
【0024】
出力の大きなレーザー装置を用いれば、数十g以上の大きな金属試料中の介在物を測定することができるが、レーザー出力の小さい装置を用いる場合であっても、化学的処理法で金属成分を溶解して抽出された介在物にレーザー励起−ICP分析法を適用することで、より高精度に非金属介在物の組成及び粒径を評価することができる。上記方法を用いることによって、大量の金属試料中の介在物を短時間で測定することもできる。
【0025】
介在物の抽出法については、何ら限定するものではなく、介在物の化学的安定性に応じて、酸抽出法、ハロゲン−アルコール抽出法、定電位電解法、定電流電解法等を用いればよい。これらの化学的抽出法により抽出された介在物は、例えば、ろ過操作を行うことによりろ紙上に残存する。
【0026】
ろ紙上の介在物にレーザー光を照射した場合、ろ紙が容易に溶融、燃焼するので、介在物の飛散、あるいはレーザー光の焦点の偏倚が起こり、介在物をレーザー光によって効率よく励起することができない。従って、ろ紙、樹脂等の有機物を用いずに介在物を固定することが好ましい。
【0027】
本発明法では、金属試料から抽出した非金属介在物粒子を溶融ガラス表面に移行させた後、ガラスを凝固させて分析用試料とすることが推奨される。
【0028】
詳しくは、化学的処理で抽出した後にろ過して得られた介在物粒子が存在するろ紙の裏面に、銅等の金属円柱を付着させ、この金属円柱を溶融ガラスに押し付け、ろ紙上の介在物を溶融ガラス表面に食い込ませる方法が推奨される。金属円柱を溶融ガラスに押し付ける際に、金属円柱によって溶融ガラスから抜熱が起こり、金属円柱を押し付けた部分の溶融ガラスは速やかに凝固するので、介在物と溶融ガラスとの間で反応は進行しない。
【0029】
金属円柱の材質としては、例えば、銅やステンレス鋼が用いられ、その材質及び大きさを適宜変更することで、金属円柱を押し付けた部分の溶融ガラスの凝固速度をコントロールすることが可能である。つまり、金属円柱として熱伝導性の高い金属を用い、且つ円柱の体積(溶融ガラスとの接触面積)を大きくして、金属円柱による溶融ガラスからの抜熱量を多くすることで、溶融ガラスの熱による有機物ろ紙の溶解・燃焼を防ぐことが可能である。また、逆に、金属円柱として熱伝導性の低い金属を用い、円柱の体積(溶融ガラスとの接触面積)を小さくして、金属円柱による溶融ガラスからの抜熱量を少なくすることで、有機物ろ紙の適度な溶解・燃焼を起こさせ、ろ過操作段階でろ紙の中に食い込んだ介在物をガラス表面に固着させることができる。
【0030】
介在物を固着させるガラスの成分は、測定する介在物の成分を含まず、且つ低融点であることが望ましく、例えば、Li2O−SiO2−B2O3系、Li2O−Al2O3−B2O3系、Na2O−SiO2−B2O3系ガラスを用いることができる。
【0031】
上記本発明法では、炭化物等の析出物と介在物がろ紙上に混在する場合にも適用できる。即ち、金属の化学成分組成によっては、化学的な処理で金属成分を溶解した場合に多量の炭化物等の析出物が溶解されずに残り、金属の溶解液をろ過した後、ろ紙上で非金属介在物が析出物の中に埋もれて観察できない状態となることがある。例えば、約1wt%の炭素を含有する軸受鋼等の高炭素鋼を、10v/v%アセチルアセトン−1w/v%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノールを用いた定電位電解法により溶解した場合、多量の鉄炭化物が溶解されずに残るため、事実上介在物の選択的な抽出は不可能であった。しかし、本発明法では、炭化物等の析出物と介在物がろ紙上に混在する場合でも、両者をそのまま溶融ガラス上に付着させてレーザー励起−ICP分析法を行うことで、介在物を構成する元素は正確に測定できるため、精度の高い介在物の測定が可能である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるレーザー励起−ICP分析法による非金属介在物の組成及び粒径の迅速分析法の実施形態を、図3〜5を用いて詳細に説明する。尚、ここでは質量分析装置を用いた場合を例示する。
【0033】
図3は、本発明の実施の形態を模式的に示す説明図である。切り出された鉄鋼、又は非鉄金属試料、又は介在物が表面に固着したガラス試料13を、上面が透明ガラスである容器14に入れ、キャリアガスとしてアルゴンガスを流しながらレーザー光15を試料上部から照射する。レーザー光が照射している間に、あらかじめ設定された移動パターンで容器14を水平方向に移動させる。試料の上面16において、レーザー光照射による励起痕は例えば17のごとく現れる。前述したと同様に、励起された試料部分(レーザー照射痕)17の幅及び深さは、レーザー出力が高いほど、走査速度が低いほど大きくなる。例えば、出力が大きいレーザー光の照射装置を用いることでレーザー光の照射幅及び深さは大きくなるため、走査速度を高くして、広い試料範囲を迅速に測定することが可能になる。また、微細な介在物が多数存在する場合には、レーザー光の照射幅を小さくし、走査速度を低くすることで、個々の介在物についての正確な組成及び粒径を測定することができる。
【0034】
大きな塊状の鉄鋼又は非鉄金属試料13’に本発明を適用する場合には、上面が透明ガラスである小型容器14’を通してレーザー光15を照射する。この場合もキャリアガスとしてアルゴンガスを流す。小型容器14’内でレーザー光15の照射により蒸発した元素をICP部19に十分導入させる為、大きな塊状の鉄鋼または非鉄金属試料13’と小型容器14’とを、例えばゴム製等の密着用シール材18で密着する。小型容器14’とレーザー光15とを、あらかじめ設定された移動パターンで同時に移動させる。この場合のレーザー光照射による励起痕も、大きな塊状の鉄鋼または非鉄金属試料13’の表面において、例えば17のごとく現れる。
【0035】
レーザー光の照射により励起された蒸気は、アルゴンキャリアガスによって高速でICP部19に連続的に導入され、蒸気中の各元素はイオン化される。各元素のイオン数は、質量分析装置20により遂次計測され、各元素のマススペクトルの時間曲線として表示される。これをデータ処理装置21を用いて処理し、個々の介在物の組成及び粒径は、数値及びグラフとして出力される。更に、介在物以外のマトリックス部分についての測定結果から、鉄鋼または非鉄金属試料13及び13’についてのマトリックス部分の組成を求めることができる。
【0036】
切り出された鉄鋼または非鉄金属試料13について測定を行う場合には、試料13を容器14に設置し、測定箇所の位置決めがなされた後、直ちに分析が開始される。分析時間は、レーザー光の照射出力、測定する試料範囲、及び目的とする介在物の粒径によって変動するが、例えば、走査速度0.2mm/s、励起された鋼試料部分4の幅が約100ミクロンの場合には、10分間の測定で12mm2の面積を測定することができる。これに対し、EPMAと画像解析装置を用いて同程度の面積を測定を行う場合には、2ないし3日が必要であることから、本発明法の迅速性が明らかである。また、EPMAによる測定では、ほぼ試料表面に限定されるのに対し、本発明法では数十ミクロンから数百ミクロンの深さまで測定できる点でも優れている。
【0037】
化学処理により抽出された介在物をガラス表面に固着させた試料について本発明の方法を適用する場合、鉄鋼または非鉄金属試料からの介在物の抽出操作に時間を要するものの、切り出された鉄鋼または非鉄金属試料13、または大きな塊状の鉄鋼または非鉄金属試料13’について測定する場合と比較して、はるかに広範囲の試料を測定することが可能となる。即ち、例えば鋼試料1gから介在物を抽出した場合、鋼の体積は約140mm3であることから、深さ50ミクロンとして換算すると測定面積は2800mm2になる。
【0038】
この様な試料から抽出した介在物を表面に固着させたガラス試料13を測定する場合も、ガラス試料13を容器14に設置し、所定の位置に位置決めされた後、直ちに分析が開始される。介在物がガラス表面のみに存在するため、レーザー光による介在物の励起は容易になされ、例えば、走査速度0.5mm/s、ガラス試料13の励起された部分の幅が約20ミクロンの場合、20〜30分間で測定が終了する。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(実施例1)
C含有量が0.89mass%の合金鋼塊から31mm×31mm×4mmの試料を切り出し、片面を鏡面研磨して、試料面全体について非金属介在物の粒径を光学顕微鏡観察で測定した。測定には約30時間を要した。
【0041】
さらに、本発明法であるレーザー励起−ICP質量分析法で、非金属介在物の粒径(球相当径)及び組成を求めた。レーザー励起条件は、レーザー出力が2mJ、走査速度0.02mm/s、走査時間20分である。
【0042】
光学顕微鏡観察法及びレーザー励起−ICP質量分析法による粒径分布の比較を図4に示す。光学顕微鏡観察法と比べて、レーザー励起−ICP質量分析法による観察面積は小さいにもかかわらず、レーザー励起−ICP質量分析法による粒径分布の方が2〜4ミクロンの微小介在物の存在割合が高く、また、10〜15ミクロン、20〜30ミクロン及び70〜80ミクロンの介在物が検出されている。この結果より、光学顕微鏡観察法では、試料表面に露出している介在物断面部分のみが観察され、試料内に隠れた部分についての情報は得られず、また、微小な介在物ほど、観察するのが困難であるのが分かる。これに対し、本発明であるレーザー励起−ICP質量分析法では、深さ約50ミクロンまで測定できることから、介在物を3次元的に測定することが可能である。すなわち、試料内に隠れた介在物部分及び完全に埋没して光学顕微鏡では認識されない介在物粒子も検出対象となっている。
【0043】
(実施例2)
C含有量が0.89mass%の合金鋼塊から31mm×31mm×4mmの試料を切り出し、本発明法であるレーザー励起−ICP質量分析法で、非金属介在物の粒径及び組成を求めた。レーザー励起条件は、レーザー出力が2mJ、走査速度0.05mm/s、走査時間20分である。
【0044】
同じ鋼試料についてX線マイクロアナライザーで非金属介在物の組成を求めた。また、同じ鋼試料中の介在物を抽出して測定を行った。詳しくは、非水有機溶媒系電解液として10v/v%アセチルアセトン−1w/v%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノールを用いた定電位電解法で、0.502gの鋼試料を溶解し、介在物を抽出した後、ろ過して集めた介在物の化学分析を行った。これらの結果を表1に示す。X線マイクロアナライザー測定の所要時間は6時間、化学分析の所要時間は5時間であった。
【0045】
【表1】
【0046】
化学分析では個々の介在物の組成を求めることはできない。X線マイクロアナライザーによる結果と、本発明法であるレーザー励起−ICP質量分析法による結果とは、同様の結果となっているが、X線マイクロアナライザーによる測定は、長時間を要しており、本発明法の迅速性が明らかである。
【0047】
(実施例3)
C含有量が1.0mass%の合金鋼塊の表面を研磨し、図3に示した小型容器14’を用いて、本発明であるレーザー励起−ICP質量分析法により、非金属介在物の粒径及び組成を求めた。レーザー励起条件は、レーザー出力が2.5mJ、走査速度0.1mm/s、走査時間20分である。
【0048】
また、同じ試料中の介在物を抽出して測定を行った。詳しくは、同じ合金鋼塊から25mm×25mm×4mmの試料を切り出し、非水有機溶媒系電解液として10v/v%アセチルアセトン−1w/v%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノールを用いた定電位電解法で、0.411gの鋼試料を溶解し、介在物を抽出した。次にろ紙上の介在物をLi2O−B2O3系ガラス表面に固着させ、本発明であるレーザー励起−ICP質量分析法により、非金属介在物の粒径及び組成を求めた。レーザー励起条件は、レーザー出力が2.0mJ、走査速度0.05mm/s、走査時間15分である。合金鋼塊及び抽出した介在物について、粒径測定の結果を図5に、組成の結果を表2に与える。粒径に関しては、抽出した介在物を光学顕微鏡と画像解析装置を組み合わせた方法によっても測定を行った。その結果を図5の下図に示す。尚、光学顕微鏡と画像解析装置を組み合わせた方法による測定の所要時間は、2時間であった。
【0049】
【表2】
【0050】
図5及び表2より、鋼塊を直接測定した場合の粒径分布及び介在物組成の測定結果は、介在物を抽出した場合の測定結果と良く一致している。また、介在物を抽出した場合、及び本発明であるレーザー励起−ICP質量分析法から求めた結果(図5の中図)は、光学顕微鏡と画像解析装置を組み合わせた方法による結果(図5の下図)と良く一致している。
【0051】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、金属表面及び/又は内部に存在する非金属介在物の組成及び/又は粒径を、レーザー励起−ICP分析法により定量することにより、鉄鋼及び非鉄金属中に存在する非金属介在物の粒径及び組成を迅速に測定することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】介在物を含有する金属にレーザー光を照射したときの模式図、及び得られるスペクトル強度の時間曲線を表わす説明図である。
【図2】Al3+のマススペクトル曲線の積分値(ピーク面積値)とアルミナ粒径との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図4】実施例1において、光学顕微鏡観察法及び本発明の方法で求めた合金鋼試料中の介在物粒径分布を比較したグラフである。
【図5】実施例3において、塊状合金鋼に直接レーザーを照射して本発明のレーザー励起−ICP分析法を適用して得られた介在物粒径分布のグラフ、抽出した介在物についてレーザー励起−ICP分析法を適用して得られた介在物粒径分布のグラフ、及び抽出した介在物について光学顕微鏡と画像解析装置を組み合わせた方法で求めた介在物粒径分布のグラフである。
【符号の説明】
1、1’ 非金属介在物
2 レーザー照射開始点
3 レーザー照射終了点
4 蒸発する鋼試料部分
5 A元素のスペクトルの時間曲線
6 B元素のスペクトルの時間曲線
7 非金属介在物1によるA元素のスペクトルピーク
8 非金属介在物1によるB元素のスペクトルピーク
9 非金属介在物1’によるA元素のスペクトルピーク
10 非金属介在物1’によるB元素のスペクトルピーク
11 マトリックス中のA元素のスペクトル強度
12 マトリックス中のA元素のスペクトル強度
13 切り出し鉄鋼または非鉄金属試料
13’ 塊状の鉄鋼または非鉄金属試料
14、14’ 小型容器
15 レーザー光
16 上から見た鉄鋼または非鉄金属試料
17 レーザー照射痕
18 密着用シール材
19 誘導結合プラズマ装置
20 質量分析装置
21 データ処理装置
Claims (2)
- 金属試料から抽出した非金属介在物粒子を溶融ガラス表面に固定させた後、ガラスを凝固させた分析用試料の非金属介在物粒子にレーザー光を照射して、金属表面及び/又は内部に存在する非金属介在物の組成及び/又は粒径を、レーザー励起−ICP分析法により定量することを特徴とする非金属介在物の組成及び/又は粒径の分析法。
- 分析用試料上にレーザー光を走査させ、前記レーザー励起−ICP分析法により得られるスペクトル強度の時間曲線の積分値を用いて非金属介在物の組成及び/又は粒径を測定する請求項1に記載の非金属介在物の組成及び/又は粒径の分析法。
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