JP3350367B2 - 隠し蝶番及びそれを用いた筐体 - Google Patents

隠し蝶番及びそれを用いた筐体

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隆則 中島
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筐体に対し開閉自
在な扉に設けられ、筐体表面に蝶番が表出しない隠し蝶
番及びそれを用いた筐体に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、筐体に対し開閉自在に扉を設
けて筐体に対し扉が手前側に開く構成としたときには、
筐体の表面側に蝶番が設けられる。しかしながら、筐体
の表面に蝶番を設けるとこの蝶番部分が突起になるた
め、美観上好ましくない。また、この表出した蝶番を破
壊することによって、扉が開放される恐れがある。この
ため、筐体の内部に蝶番を設けた隠し蝶番がある。
【0003】この扉が開閉する部分の筐体は開口形成さ
れることとなるが、この場合、筐体と扉との隙間からド
ライバ等の細い治具が差し込める状態となり、不正に前
面扉がこじ開けられる恐れがある。このため、扉を閉じ
たときの扉の周縁が筐体の開口部の周縁に対してできる
だけ近づいて接した状態とする必要がある。
【0004】図6は、従来の隠し蝶番を示す平断面図で
ある。(a)は扉が閉じた状態、(b)は扉が開いた状
態である。筐体40に設けられた前面扉41は、筐体4
0の内部に設けられた隠し蝶番42により、この前面扉
41表面での突起がなくなり美観を得ることができ、ま
た、前面が面状であり前面扉41の不正な開放が防止で
きる。
【0005】この隠し蝶番42は、筐体40及び前面扉
41にそれぞれアングル43,44を設け、これらアン
グル43,44間にそれぞれ2本づつ計4本の支持軸4
5,46を設けてこれら支持軸45,46同士間を2枚
のリンク板47a,47bで連結した構成である。
【0006】この隠し蝶番42は、前面扉41が前方に
移動しながら回動する構成であるため、前面扉41の周
縁部を筐体40の開口部に密に接することができる大き
さに形成することができ、隙間を小さくできる。また、
筐体40における前面扉41の開口部全周には、挿入防
止用に図示の如く段差部40bを設けることができ、前
記隙間から無理に治具が差し込まれた場合であっても差
し込み量が少なくでき、前面扉41を無理に開口できな
い程度に抑えることができるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前者のように、筐体の
裏面側に蝶番を設けただけの構成としたときには、その
扉の回動中心である軸も筐体の内側に位置することとな
るため、扉を閉じた状態のときに、軸を中心として開閉
する扉の基端部と筐体の開口部(特に扉の自由端と反対
の端面)との間に隙間が生じることになる。この隙間か
ら異物が挿入されやすく、扉がこじあげられやすくな
る。この隙間を小さくしようとすると、逆に扉の開放角
度が小さくなる欠点がある。これらの問題は前記隠し蝶
番42で解消することができる。
【0008】しかしながら、隠し蝶番42は、各部品の
調整が必要でありコスト高であった。また、筐体40内
部でのアングル43,44の奥行き寸法が大きくなり、
内部の収容スペースが狭くなる欠点がある。さらに、図
6(b)に示すように、構造上、前面扉41の回動角度
が90度以下となるため、筐体内部に収納されたものを
スライドして取り出すとき等にこの前面扉41の自由端
に引っかけやすく、互いを損傷させたり操作者が怪我す
る恐れもあった。
【0009】また、この隠し蝶番42を用いた前面扉4
1は、隠し蝶番42を中心として前方に回動する構成で
あるため、この前面扉41を筐体40に固定する箇所
(ロック機構49の位置)は、自由端側にしか設けるこ
とができない。よって、この前面扉41は、自由端と隠
し蝶番42の両端部分しか筐体40に固定することがで
きず、中央部分は筐体40に接するだけであるため、こ
の中央部分が撓むとこの部分から無理にこじ開けられや
すい問題があった。
【0010】本発明は、上記課題を解決するためになさ
れたものであり、奥行を取らず小型化でき回動角度を大
きく取れるとともに、扉を筐体に対して強固に固定でき
る隠し蝶番及びそれを用いた筐体を提供することを目的
としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の隠し蝶番は、筐体20の開口部20aの一
側部裏面側に設けられる固定体3と、前記固定体内でス
ライド自在なスライド体4と、該スライド体に設けら
れ、前記筐体の開口部に対し開閉自在な扉1を軸支する
軸体5aと、を具備し、前記固定体にはロック片3gが
設けられ、前記スライド体4には、スライド時に前記ロ
ック片に係合する付勢力が付与されたストッパ部材11
が設けられ、前記扉には、該扉が閉じた状態で前記スト
ッパ部材に係合する解除片1cが形成され、前記扉が開
かれた状態で前記スライド体のストッパ部材が固定体の
ロック片に係合してスライド体を固定保持し、前記扉が
閉じられることにより前記スライド体をスライド可能に
構成したことを特徴としている。
【0012】また、請求項2記載のように、請求項1記
載の隠し蝶番を用いた筐体として、前記扉1及び前記筐
体20には、それぞれ前記スライド体4のスライドによ
り互いに係合させる係合片1e,1fと係合孔20e、
20fが設けられた構成としてもよい。
【0013】
【0014】前面扉1は、スライドさせることによっ
て、基端部1aに設けられた回動中心の軸体5aの位置
を筐体20の開口部20aから離すことができる。これ
によって、前面扉1はスライド後に1本の軸体5aを中
心として回動でき、回動角度も大きくとれる。また、前
面扉1がスライドする構成であるため、前面扉1が閉じ
られた状態で上下に設けられた係合片1e,1fが筐体
20の係合孔20e,20fにそれぞれ係合するため、
前面扉1を閉じた状態において係合固定箇所を増加で
き、より強固な状態で閉じることができる。また、スラ
イド後に前面扉1が開いた状態では、ストッパ部材11
が固定体3のロック片3gに係合し、スライド状態が固
定されるため、前面扉1を開いたままスライドすること
がなく、前面扉1表面を傷つけることがない。
【0015】
【発明の実施の形態】図1(a),(b)は、本発明の
隠し蝶番を示す平面図及び正面図、図2は同分解斜視図
である。これらの図では、筐体を不図示とし前面扉1と
蝶番機構2のみを記載してある。
【0016】前面扉1の基端部1aに設けられる蝶番機
構2は、筐体に固定される固定体3と、この固定体3内
でスライド自在に構成され前面扉1の基端部1aを軸支
するスライド体4で構成される。固定体3は、枠体状に
形成され、上下に折曲部3aが折曲されたものであり、
この折曲部3aにはスライド方向に沿って所定長さの長
穴3bが2か所づつ開口されている。
【0017】この固定体3は、筐体に対し折曲部3aか
ら延出された固定片3d部分がネジ等を用いて固定され
る。また、縦枠部3e部分は、スライド方向の半部が開
口部3fとして開口形成されており、この縦枠部3eの
略中央部には、所定長さでL字状に突出するロック片3
gが形成されている。
【0018】スライド体4は、上下に折曲部4aを有し
縦枠部4bで連結された構成であり、これら上下の折曲
部4a同士間には、2本の軸体5a,5bが固定されて
いる。この軸体5a,5bの配置間隔は、固定体3の長
穴3bのピッチに一致して形成され、これら軸体5a,
5bの両端部は長穴3bに挿通状態でリング等により抜
止めされており、スライド体4は長穴3bの長さの範囲
でスライド自在である。
【0019】軸体5aには、前面扉1の基端部1a上下
に設けられた支持片1bが軸支されている。軸体5bの
中途位置において、ロック片3gの高さ位置部分には、
ロックアングル7が設けられ、このロックアングル7は
スライド体4に固定されている。ロックアングル7の上
下には、それぞれスライド方向の端部に施錠用片7aが
突出形成され、この施錠用片7aには施錠用の開口部7
bが開口形成されている。この開口部7bは、筐体に設
けられた錠前10の施錠用突起10aに係合自在であ
る。
【0020】このロックアングル7の施錠用片7a,7
a間の軸体5b部分には、ストッパ部材11が回動自在
に軸支されている。ストッパ部材11は、ロック片3g
方向に係合片11aが折曲形成されてなる。このストッ
パ部材11部分の軸体5bにはねじりバネ12が挿通さ
れており、このねじりバネ12の一端はロックアングル
7に係止され、他端がストッパ部材11に取り付けられ
ており、このストッパ部材11はねじりバネ12によっ
て常時ロック片3g方向に回動付勢されている。
【0021】このストッパ部材11は、前面扉1の基部
1aから延出された解除片1cに係合自在であり、前面
扉1が閉じているときストッパ部材11に係合してねじ
りバネ12の抗力に反しロック片3gから離れる方向に
回動させる。
【0022】上記蝶番機構2に基端部1aが取り付けら
れた前面扉1は、把手部1d部分でスライド自在である
とともに、軸体5aを中心として回動自在である。この
前面扉1の裏面上部位置には、複数(図では2個)の係
合片1eが設けられ、この係合片1eは前面扉1の上部
縁から上部に突出することなく、前面扉1の裏面に隠れ
ている。同様に、前面扉1の裏面下部位置にも複数(図
では2個)の係合片1fが設けられ、この係合片1fは
前面扉の裏面に隠れて設けられる。
【0023】図3は、この前面扉1が設けられた筐体2
0を示す斜視図である。筐体20は、前面扉1の回動部
分が開口部20aとして開口形成されており、この開口
部20aの縁部分には、前面扉1の基端部1aを除く3
方向に段差部20cが形成されている。段差部20c
は、前面扉1の厚み分だけ筐体20表面に対する凹部と
して形成されている。
【0024】この段差部20cには、前面扉1裏面の係
合片1e,1fに対応する箇所にそれぞれ係合孔20
e,20fが形成されており、係合片1e,1fに係合
自在である。
【0025】次に、上記構成による前面扉1の開閉動作
について説明する。図4(a)は、前面扉1を閉じた状
態を示す平断面図である。この状態でスライド体4のロ
ックアングル7に設けられた施錠用片7aは、錠前10
の施錠用突起10aに係合され、前面扉1は筐体20の
開口部20aを閉じた状態で筐体20に施錠されてい
る。
【0026】このとき、前面扉1の係合片1e,1fは
筐体20の係合孔20e,20f側部の段差部20cに
係合状態にあり、錠前10による施錠のみならず、前面
扉1の上下複数箇所で筐体20に係合固定されており、
前面扉1を筐体20により強固に固定できる。また、前
面扉1を閉じた状態で、前面扉1裏面における全周縁は
段差部20cに接しており、前面扉1と筐体20の開口
部20aとの間の隙間は直線状に連続したものではなく
形成されている。これにより、開口部1aに前面扉1の
周縁から治具等を差し込んでも、段差部20cで止めら
れ、治具をそれ以上筐体20の内部に挿入できないよう
になっており、前面扉1をこじ開けることができないよ
うになっている。
【0027】この前面扉1を開くときには、錠前10の
施錠を解除して施錠用突起10aをロックアングル7の
施錠用片7aから外す。次に、前面扉1の把手部1dに
指をかけてこの前面扉1を図中A方向にスライドさせ
る。
【0028】これにより、図4(b)に示すように、ス
ライド体4が固定体3の長穴3b内で軸体5a,5bが
同A方向に移動する。このスライドは、前面扉1が閉じ
られたまま行われるから、前面扉1基端部1aに設けら
れた解除片1cは、ストッパ部材11に係合したままの
状態であり、係合片11aはロック片3gに係合しない
状態のままである。また、この移動により、前面扉1の
係合片1e,1fは筐体20の段差部20cから係合が
外れ、係合孔20e,20f部分に位置する状態とな
る。
【0029】この後、図5に示すように前面扉1は軸体
5aを中心として図中B方向に開くことができる。同状
態は図3にも示されている。そして、前面扉1はスライ
ド後において、このスライドした1本の軸体5aを中心
として回動する構成であるから、回動角度を図示のよう
に90度以上開くことができ、筐体20の開口部20a
を広く開放させることができる。これにより、筐体20
内部にあるユニット等をこの開口部20aから引き出す
ときにこの前面扉1が邪魔にならず、着脱作業を容易に
行えるようになる。
【0030】また、この回動により、解除片1cは、固
定体3の開口部3f部分に移動し、ストッパ部材11と
の係合を解除する。ストッパ部材11は、この係合解除
によりねじりバネ12の付勢力でロック片3g方向に回
動し係合片11aがロック片3gに係合する。この係合
によりスライド体4はスライド状態にある同位置で固定
保持される。したがって、前面扉1が開かれた状態で
は、スライド体4が初期位置に移動することが禁止さ
れ、移動することによって筐体20の開口部20a縁部
に前面扉1の表面が接して傷付けるということがなく、
前面扉1の表面の美観を保つことができる。
【0031】この後、前面扉1を筐体20に施錠すると
きには前記動作を逆に行えばよく、前面扉1を閉じた
後、この前面扉1をスライドさせて錠前10で施錠す
る。これにより図4(a)に示す如く、前面扉1は筐体
20に固定した状態で施錠できる。
【0032】上記実施の形態では、前面扉1側に係合片
1e,1fを設け、筐体20側に係合孔20e,20f
を設けた構成としたが、前面扉1側に係合孔を設け、筐
体20側に係合片を設ける構成としてもよい。また、こ
れら係合片と係合孔は、前面扉1及び筐体20の開口部
20aの上下にそれぞれ2か所以上設けて、より強固な
固定を行うよう構成することもできる。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、扉を軸支する軸体がス
ライド自在であり、スライド後に扉を開閉自在に構成し
たので、小型化でき奥行寸法をとらず、また、扉の回動
角度を大きくすることができるようになる。また、扉は
スライド後に開閉する構成であるから、このスライドに
よって、筐体と扉の係合固定することができるようにな
り、扉の上下の複数箇所で筐体と固定することができ、
扉を筐体に対しより強固に固定できるようになる。ま
た、ストッパ部材により扉が開かれた状態ではスライド
が禁止される構成であり、扉の開放状態でスライドして
扉表面が傷付くことが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の隠し蝶番の実施の形態を示す図。
(a)は平面図、(b)は正面図。
【図2】同隠し蝶番を示す分解斜視図。
【図3】隠し蝶番が適用された筐体の斜視図。
【図4】同隠し蝶番の動作を示す図。(a)は扉を閉じ
た状態、(b)は扉をスライドさせた状態。
【図5】同隠し蝶番の動作を示す図(扉を開いた状態)
【図6】従来の隠し蝶番を示す平断面図。(a)は扉が
閉じた状態、(b)は扉が開いた状態。
【符号の説明】
1…前面扉、1a…基端部、1c…解除片、1e,1f
…係合片、3…固定体、3g…ロック片、4…スライド
体、5a,5b…軸体、7…ロックアングル、10…錠
前、11…ストッパ部材、11a…係合片、20…筐
体、20a…開口部、20c…段差部、20e,20f
…係合孔。
フロントページの続き (72)発明者 森口 賢治 東京都港区南麻布五丁目10番27号 アン リツ株式会社内 (72)発明者 桑原 照雄 東京都新宿区西新宿三丁目19番2号 日 本電信電話株式会社内 (72)発明者 中島 隆則 東京都新宿区西新宿三丁目19番2号 日 本電信電話株式会社内 (72)発明者 高橋 誠司 東京都目黒区下目黒二丁目2番3号 株 式会社田村電機製作所内 (72)発明者 北澤 忍 東京都目黒区下目黒二丁目2番3号 株 式会社田村電機製作所内 (56)参考文献 特開 平8−77437(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E05D 7/081 H05K 5/03

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筐体(20)の開口部(20a)の一側
    部裏面側に設けられる固定体(3)と、 前記固定体内でスライド自在なスライド体(4)と、 該スライド体に設けられ、前記筐体の開口部に対し開閉
    自在な扉(1)を軸支する軸体(5a)と、を具備し、 前記固定体にはロック片(3g)が設けられ、 前記スライド体(4)には、スライド時に前記ロック片
    に係合する付勢力が付与されたストッパ部材(11)が
    設けられ、 前記扉には、該扉が閉じた状態で前記ストッパ部材に係
    合する解除片(1c)が形成され、 前記扉が開かれた状態で前記スライド体のストッパ部材
    が固定体のロック片に係合してスライド体を固定保持
    し、前記扉が閉じられることにより前記スライド体をス
    ライド可能に構成した ことを特徴とする隠し蝶番。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の隠し蝶番を用いた筐体で
    あって、 前記扉(1)及び前記筐体(20)には、それぞれ前記
    スライド体(4)のスライドにより互いに係合させる係
    合片(1e,1f)と係合孔(20e、20f)が設け
    られたことを特徴とする隠し蝶番を用いた筐体。
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