JP3349086B2 - 光学活性トランス−3−置換グリシッド酸エステルの製造方法 - Google Patents

光学活性トランス−3−置換グリシッド酸エステルの製造方法

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JP3349086B2
JP3349086B2 JP04572398A JP4572398A JP3349086B2 JP 3349086 B2 JP3349086 B2 JP 3349086B2 JP 04572398 A JP04572398 A JP 04572398A JP 4572398 A JP4572398 A JP 4572398A JP 3349086 B2 JP3349086 B2 JP 3349086B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬化合物の合成
中間体として有用なトランス−3−置換または非置換フ
ェニルグリシッド酸エステル類の光学異性体を製造し、
使用する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】塩酸ジルチアゼム(化学名:(2S,3
S)−3−アセトキシ−5−[2−(ジメチルアミノ)
エチル]−2,3−ジヒドロ−2−(4−メトキシフェ
ニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン
塩酸塩)はカルシウムチャンネル遮断薬として、狭心
症、本態性高血圧症の治療に広く使用されている医薬化
合物である(メルク・インデックス(Merck Index)1
2版541頁)。
【0003】この化合物の合成法としては、ラセミ型ト
ランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸エ
ステルを用い、のちの工程で光学分割する方法が従来か
ら知られている(特公昭46−16749号公報、同5
3−18038号公報、同61−52142号公報)。
【0004】また、ラセミ型トランス−グリシッド酸エ
ステル化合物を光学分割してえられた(2R,3S)−
3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエス
テルを用いる方法が見出され(特開昭60−13776
号公報)、種々ラセミ型トランス−グリシッド酸エステ
ル化合物を製造する方法が検討されており、たとえば、
つぎのような方法が知られている。
【0005】(a)ラセミ型トランス−3−(4−メト
キシフェニル)グリシッド酸メチルエステルを加水分解
してアルカリ金属塩としたのち、光学分割剤(たとえ
ば、(−)−メチルベンジルアミン)とのジアステレオ
マー塩を形成させ、これを分割後、再度、エステル化す
る方法(特開昭61−145174号公報、特開平2−
231480号公報)。
【0006】(b)不斉エステル残基(たとえば(−)
−メンチル基、(−)−2−フェニルシクロヘキシル
基、(−)−8−フェニルメンチル基)を有するクロロ
酢酸エステルと4−メトキシアニスアルデヒドとをダル
ツェンス(Darzens)反応させる方法(特開昭61−26
8663号公報、特開平2−17170号公報、同2−
17169号公報)。
【0007】(c)ラセミ型トランス−3−(4−メト
キシフェニル)グリシッド酸メチルエステルの(2S,
3R)−異性体を酵素的に不斉加水分解し、残存する
(2R,3S)−異性体を取得する方法(特開平2−1
09995号公報、同3−15398号公報、特表平4
−501360号公報)。
【0008】(d)トランス−4−メトキシケイ皮酸メ
チルエステルを不斉触媒の存在下、オスミウム酸化して
光学活性ジオール体を製造し、これを分子内閉環して
(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニル)グリシ
ッド酸メチルエステルを不斉合成する方法(国際公開第
89/02428号パンフレット(1989)、同第8
9/10350号パンフレット(1989))。
【0009】(e)ラセミ型トランス−3−(4−メト
キシフェニル)グリシッド酸メチルエステルの(2S,
3R)−異性体をブタノールで酵素的に不斉エステル交
換し、(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニル)
グリシッド酸メチルエステルをうる方法(特開平4−2
28095号公報、同6−78790号公報)。
【0010】また、ジルチアゼム以外の1,5−ベンゾ
チアゼピン誘導体にも、優れた薬理活性を有する化合物
が知られており、特開昭60−202871号公報など
にはジルチアゼムと2位および3位の絶対配置が逆のベ
ンゾチアゼピン誘導体が血小板凝集抑制作用などを有す
ることが開示されており、この化合物の合成に使用する
(2S,3R)−3−(4−メチルフェニル)グリシッ
ド酸メチルエステルをラセミ型トランス−3−(4−メ
チルフェニル)グリシッド酸メチルエステルの酵素的不
斉加水分解により製造する方法も知られている(特開平
3−175995号公報)。
【0011】さらに、ラセミ型トランス−3−(4−メ
トキシフェニル)グリシッド酸メチルエステルの(2
S,3R)−異性体をブタノールで酵素的に不斉エステ
ル交換し、未交換の(2R,3S)−3−(4−メトキ
シフェニル)グリシッド酸メチルエステルをえたのち、
エステル交換により生成する(2S,3R)−3−(4
−メトキシフェニル)グリシッド酸ブチルエステルを化
学的にエステル交換してメチルエステルに戻すことによ
り、両異性体を光学純度良くうる方法も知られている
(特開平8−259552号公報)。
【0012】また、特開平4−217969号公報に
は、トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシッ
ド酸メチルエステルのラセミ体((2R,3S)−異性
体と(2S,3R)−異性体の等量混合物)および(2
R,3S)−異性体を溶媒であるt−ブチルメチルエー
テルに加えて加熱溶解し、これに(2R,3S)−異性
体の結晶核を接種して晶析することにより、ラセミ体と
ともに溶解した(2R,3S)−異性体よりもわずかに
多い(2R,3S)−異性体結晶をうる方法が開示され
ている。
【0013】また、特開平5−301864号公報に
は、トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシッ
ド酸4−クロロ−3−メチルフェニルエステルのラセミ
体((2R,3S)−異性体と(2S,3R)−異性体
との等量混合物)をテトラヒドロフランに加熱溶解した
のち、30℃で(2R,3S)−異性体の結晶を接種す
ることにより、ラセミ体とともに溶解させた(2R,3
S)−異性体よりもわずかに多い(2R,3S)−異性
体結晶をうる方法が開示されている。
【0014】さらに、特開平8−259552号公報に
は、トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシッ
ド酸メチルエステルのラセミ体((2R,3S)−異性
体と(2S,3R)−異性体との等量混合物)のうち、
(2S,3R)−異性体をブタノールで酵素的に不斉エ
ステル交換し、(2S,3R)−ブチルエステル/(2
S,3R)−メチルエステルをモル比で7.8/1にし
たのち、生成物から(2R,3S)−異性体結晶を晶析
させることが記載されている。
【0015】しかし、この晶析法においては、少量残存
する(2S,3R)−3−(4−メトキシフェニル)グ
リシッド酸メチルエステルが晶析・混入しないように、
晶析後の母液中に(2R,3S)−3−(4−メトキシ
フェニル)グリシッド酸メチルエステルがエステル交換
されなかった(2S,3R)−異性体よりも多く残って
いる段階で、晶析を中止している。
【0016】このため、このエステル交換反応で(2
R,3S)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド
酸メチルエステルは殆どエステル交換されておらず、ま
た、(2S,3R)−異性体のエステル交換転換率が高
いにもかかわらず、結晶としてえられる(2R,3S)
−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエ
ステルの収率は充分とはいえない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、トランス−
3−フェニルグリシッド酸エステル類の光学異性体混合
物を含む溶液から、所望の光学異性体の結晶を純度良
く、かつ、母液中の所望の光学異性体の濃度が従来法よ
りもはるかに低くなるまで結晶化させうる方法を提供す
ること、およびラセミ型トランス−3−フェニルグリシ
ッド酸エステル類を酵素で不斉エステル交換後、反応生
成物から所望の光学異性体を純度良く、かつ、母液中の
所望の光学異性体の濃度が従来法よりもはるかに低くな
るまで結晶化させうる方法を提供することを目的とす
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは従来技術の
問題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、トラン
ス−3−フェニルグリシッド酸エステル類のラセミ体溶
液に、その一方の異性体とエステル残基のみが異なり、
かつ、溶解性が高い化合物が共存するばあいには、その
共存化合物と同じ絶対配置を有する異性体の結晶化が阻
害されることを見出し、本発明の方法を完成した。
【0019】本発明はつぎの方法に関する。
【0020】一般式(I):
【0021】
【化8】
【0022】(式中、環Aは置換または非置換のベンゼ
ン環、R1はエステル残基を示す)で表わされるトラン
ス−3−置換グリシッド酸エステルの2位、3位不斉炭
素に基づく、1つの光学異性体(A)、他の光学異性体
(B)および光学異性体(B)とエステル残基のみが異
なるエステル(B′)を溶解した溶液[ただし、光学異
性体(B)のエステル残基がメチル基またはエチル基で
あり、エステル(B′)のエステル残基が光学異性体
(B)のエステル残基よりも炭素数が多い直鎖または分
枝鎖アルキル基、アルコキシ基(これらの基はハロゲン
原子で置換されていてもよい)、アリールアルキル基
(この基は直鎖もしくは分枝鎖低級アルキル基、直鎖も
しくは分枝鎖低級アルコキシ基またはハロゲン原子で置
換されていてもよい)、シクロヘキシル基である]
ら、エステル(B′)が存在しなければ光学異性体
(B)が析出するが、エステル(B′)が存在するため
光学異性体(A)は析出するが光学異性体(B)は析出
しない状態となるまで、光学異性体(A)の結晶化を行
ない単離することを特徴とする光学異性体(A)の製造
方法(請求項1)、光学異性体(A)、光学異性体
(B)およびエステル(B′)以外に、さらに光学異性
体(A)とエステル残基のみが異なり、エステル
(B′)と同じエステル残基を有するエステル(A′)
を少量含んでいてもよい溶液から光学異性体(A)の結
晶化を行なう請求項1記載の製造方法(請求項2)、
液において光学異性体(A)/光学異性体(B)がモル
比で4/6〜10/1で、エステル(B′)/光学異性
体(B)がモル比で5/3〜10/1である請求項1記
載の製造方法(請求項)、溶液においてエステル
(A′)/光学異性体(A)のモル比がエステル
(B′)/光学異性体(B)のモル比の9/35以下で
ある請求項2記載の製造方法(請求項)、光学異性体
(A)の製造に使用する溶媒が、アルコール系溶媒、エ
ーテル系溶媒、ハロゲン原子で置換されていてもよい芳
香族炭化水素系溶媒、ハロゲン原子で置換されていても
よい脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒である請求
項1、2、3または記載の製造方法(請求項)、光
学異性体(A)の結晶化を行ない単離する際の温度が−
30〜+15℃、結晶化前の溶液における光学異性体
(A)の濃度が0.5〜4モル/Lである請求項1、
2、3、4または記載の製造方法(請求項)、エス
テル(B′)を形成するアルコールを含み、かつ、光学
異性体(A)および光学異性体(B)を溶解させた溶液
中、立体選択的にエステル交換する能力を有する酵素の
存在下で光学異性体(B)のエステル交換反応を行なっ
てえられた溶液(溶媒を交換した溶液であってもよい)
を、光学異性体(A)の結晶化および単離を行なう溶液
として使用する請求項1、2、3、4、5または記載
の製造方法(請求項)、酵素が、転換率10%におけ
るエステル交換反応についてのE値が20以上の酵素で
ある請求項記載の製造方法(請求項)、エステル
(B′)を形成するアルコールを含み、かつ、光学異性
体(A)および光学異性体(B)を溶解させた溶液中、
立体選択的にエステル交換する能力を有する酵素の存在
下でエステル(B′)/光学異性体(B)がモル比で5
/3〜10/1になるようにエステル交換反応を行なっ
てえられた溶液(溶媒を交換した溶液であってもよい)
を光学異性体(A)の結晶化および単離を行なう溶液と
して使用する請求項記載の製造方法(請求項)、光
学異性体(A)の絶対配置が(2R,3S)、光学異性
体(B)の絶対配置が(2S,3R)である請求項1、
2、3、4、5、6、7、8または記載の製造方法
(請求項10)、環Aが4−メトキシフェニル基であ
り、光学異性体(B)のエステル残基がメチル基であ
り、エステル(B′)のエステル残基がn−ブチル基で
ある請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または
10記載の製造方法(請求項11)、一般式(I):
【0023】
【化9】
【0024】(式中、環Aは置換または非置換のベンゼ
ン環、R1はエステル残基を示す)で表わされるトラン
ス−3−置換グリシッド酸エステルの2位、3位不斉炭
素に基づく1つの光学異性体(A)および他の光学異性
体(B)を、光学異性体(B)とエステル残基のみが異
なるエステル(B′)を形成するアルコールおよび立体
選択的にエステル交換する能力を有する酵素の存在下で
エステル(B′)/光学異性体(B)がモル比で13/
7〜7.8/1になるようにエステル交換反応を行なっ
てえられた溶液[ただし、光学異性体(B)のエステル
残基がメチル基またはエチル基であり、エステル
(B′)のエステル残基が光学異性体(B)のエステル
残基よりも炭素数が多い直鎖または分枝鎖アルキル基、
アルコキシ基(これらの基はハロゲン原子で置換されて
いてもよい)、アリールアルキル基(この基は直鎖もし
くは分枝鎖低級アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖低級ア
ルコキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよ
い)、シクロヘキシル基であり、溶媒を交換した溶液で
あってもよいから光学異性体(A)の結晶化を行な
い、最初の光学異性体(A)の量に対して75%以上の
収率で光学純度99%以上の光学異性体(A)を単離す
ることを特徴とする光学異性体(A)の製造方法(請求
12)、酵素が、転換率10%におけるエステル交換
反応についてのE値が20以上の酵素である請求項12
記載の製造方法(請求項13)、光学異性体(A)の絶
対配置が(2R,3S)、光学異性体(B)の絶対配置
が(2S,3R)である請求項12または13記載の製
造方法(請求項14)、酵素がセラチア マルセッセン
ス由来のエステラーゼであり、エステル(B′)/光学
異性体(B)がモル比で2/1〜8/2であり、光学異
性体(A)の収率が80%以上である請求項12記載の
製造方法(請求項15)、環Aが4−メトキシフェニル
基であり、光学異性体(B)のエステル残基がメチル基
であり、エステル(B′)のエステル残基がn−ブチル
基である請求項121314または15記載の製造
方法(請求項16)、(a)一般式(I):
【0025】
【化10】
【0026】(式中、環Aは置換または非置換ベンゼン
環、R1はエステル残基を示す)で表わされるトランス
−3−置換グリシッド酸エステルの2位、3位不斉炭素
に基づく、1つの光学異性体(A)、他の光学異性体
(B)および光学異性体(B)とエステル残基のみが異
なるエステル(B′)を溶解した溶液[ただし、光学異
性体(B)のエステル残基がメチル基またはエチル基で
あり、エステル(B′)のエステル残基が光学異性体
(B)のエステル残基よりも炭素数が多い直鎖または分
枝鎖アルキル基、アルコキシ基(これらの基はハロゲン
原子で置換されていてもよい)、アリールアルキル基
(この基は直鎖もしくは分枝鎖低級アルキル基、直鎖も
しくは分枝鎖低級アルコキシ基またはハロゲン原子で置
換されていてもよい)、シクロヘキシル基である]を調
製し、 (b)この溶液から、エステル(B′)が存在しなけれ
ば光学異性体(B)が析出するが、エステル(B′)が
存在するため光学異性体(A)は析出するが光学異性体
(B)は析出しない状態となるまで、光学異性体(A)
の結晶化を行ない、 (c)光学異性体(A)の結晶を単離し、 (d)光学異性体(A)および光学異性体(B)ととも
に母液中に存在する、エステル(B′)を化学的にエス
テル交換して光学異性体(B)としたのち、光学異性体
(B)の結晶化を行ない単離し、 (e)一般式(I)で表わされるトランス−3−置換グ
リシッド酸エステルおよびエステル(B′)を母液に加
えて工程(b)の結晶化に供する溶液とし、 (f)前記工程(b)、(c)、(d)および(e)を
この順序で繰り返す ことを特徴とする光学異性体(A)および光学異性体
(B)の製造方法(請求項17)、工程(d)におい
て、さらに反応液に光学異性体(A)とエステル残基の
みが異なり、エステル(B′)と同じエステル残基を有
するエステル(A′)を加え、工程(e)において母液
に含まれるエステル(A′)を化学的にエステル交換し
て光学異性体(A)に戻す請求項17記載の製造方法
(請求項18)、工程(a)において、光学異性体
(A)、光学異性体(B)およびエステル(B′)以外
に、さらに光学異性体(A)とエステル残基のみが異な
り、エステル(B′)と同じエステル残基を有するエス
テル(A′)を少量含んでいてもよい溶液から光学異性
体(A)の結晶化を行なう請求項17または18記載の
製造方法(請求項19)、光学異性体(B)のエステル
残基がメチル基またはエチル基であり、エステル
(B′)のエステル残基が光学異性体(B)のエステル
残基よりも炭素数が多い直鎖または分枝鎖アルキル基、
アルコキシアルキル基(これらの基はハロゲン原子で置
換されていてもよい)、アリールアルキル基(この基は
直鎖もしくは分枝鎖低級アルキル基、直鎖もしくは分枝
鎖低級アルコキシ基またはハロゲン原子で置換されてい
てもよい)である請求項1718または19記載の製
造方法(請求項20)、工程(a)における溶液におい
て光学異性体(A)/光学異性体(B)がモル比で4/
6〜10/1で、エステル(B′)/光学異性体(B)
がモル比で5/3〜10/1である請求項17記載の製
造方法(請求項21)、工程(a)における溶液におい
て光学異性体(A)/光学異性体(B)がモル比で4/
6〜10/1で、エステル(B′)/光学異性体(B)
がモル比で5/3〜10/1であり、工程(d)におけ
るエステル(A′)の添加量が、溶液におけるエステル
(A′)/光学異性体(A)がモル比で5/3〜10/
1である請求項18記載の製造方法(請求項22)、工
程(a)における溶液においてエステル(A′)/光学
異性体(A)のモル比がエステル(B′)/光学異性体
(B)のモル比の9/35以下である請求項19記載の
製造方法(請求項23)、光学異性体(A)および光学
異性体(B)の製造に使用する溶媒が、アルコール系溶
媒、エーテル系溶媒、ハロゲン原子で置換されていても
よい芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン原子で置換されて
いてもよい脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒であ
る請求項171819202122または
記載の製造方法(請求項24)、工程(b)および工
程(c)における光学異性体(A)の結晶化を行ない単
離する際の温度が−30〜+15℃、結晶化前の溶液に
おける光学異性体(A)の濃度が0.5〜4モル/Lで
ある請求項17181920212223
または24記載の製造方法(請求項25)、請求項1、
2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、
13、14、15、16、17、18、19、20、2
1、22、23、24または25記載の方法で、光学異
性体(A)として、(2R,3S)−3−置換グリシッ
ド酸エステルを製造し、製造された(2R,3S)−3
−置換グリシッド酸エステルを用いて、一般式(II):
【0027】
【化11】
【0028】(式中、環Aおよび環Bはそれぞれ置換ま
たは非置換ベンゼン環、R2は−CH2CH2N(CH3
2または
【0029】
【化12】
【0030】を示す)で表わされる(2S,3S)−
1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその薬理的に許
容しうる塩製造する法(請求項26)、環Aが4−
メトキシフェニル基であり、環Bが非置換ベンゼン環で
あり、R2が−CH2CH2N(CH32である請求項
記載の製造方法(請求項27)、請求項1、2、3、
4、5、6、7、8、9、11、12、13、15、1
6、17、18、19、20、21、22、23、24
または25記載の方法で、光学異性体(A)として、
(2S,3R)−3−置換グリシッド酸エステルを製造
し、製造された(2S,3R)−3−置換グリシッド酸
エステルを用いて、一般式(III):
【0031】
【化13】
【0032】(式中、環Aおよび環Bはそれぞれ置換ま
たは非置換ベンゼン環を示す)で表わされる(2R,3
R)−1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその薬理
的に許容しうる塩製造する法(請求項28)、請求
項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、
12、13、14、15、16、17、18、19、2
0、21、22、23、24または25記載の方法で、
光学異性体(A)として、(2R,3S)−または(2
S,3R)−3−置換グリシッド酸エステルを製造し、
製造された(2R,3S)−または(2S,3R)−3
−置換グリシッド酸エステルを用いて、一般式:
【0033】
【化14】
【0034】(式中、環Aおよび環Bはそれぞれ置換ま
たは非置換ベンゼン環を示し、*は不斉炭素原子を示
す)で表わされる光学活性トレオ−ニトロカルボン酸化
合物製造する法(請求項29)。
【0035】かかる本発明の方法によれば、トランス−
3−置換グリシッド酸エステル(I)の光学異性体混合
物溶液から、高純度の光学異性体を母液中の所望の光学
異性体の濃度が従来法よりもはるかに低くなるまで結晶
化させ取得することができる。また、トランス−3−置
換グリシッド酸エステル(I)のラセミ体を酵素で不斉
エステル交換後、生成物から高純度の光学異性体を母液
中の所望の光学異性体の濃度が従来法よりもはるかに低
くなるまで結晶化させ取得することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】本発明においては、一般式
(I):
【0037】
【化15】
【0038】(式中、環Aは置換または非置換のベンゼ
ン環、R1はエステル残基を示す)で表わされるトラン
ス−3−置換グリシッド酸エステルの2位、3位不斉炭
素に基づく、1つの光学異性体(A)、他の光学異性体
(B)および光学異性体(B)とエステル残基のみが異
なるエステル(B′)を溶解した溶液(以下、溶液(A
BB′)ともいう)が使用される。また、光学異性体
(A)、光学異性体(B)およびエステル(B′)を溶
解した溶液には、これら以外に、さらに光学異性体
(A)とエステル残基のみが異なり、エステル(B′)
と同じエステル残基を有するエステル(A′)が少量含
まれていてもよい(さらにエステル(A′)が含まれた
溶液を、以下、溶液(AA′BB′)ともいう)。
【0039】前記トランス−3−置換フェニルグリシッ
ド酸エステル(I)(すなわち、光学異性体(A)およ
び(B))としては、一般式(I)において、環Aが置
換または非置換ベンゼン環であり、R1がトランス−3
−置換グリシッド酸エステル(I)を結晶化溶媒中で結
晶化可能とするエステル残基である化合物をあげること
ができる。
【0040】その具体例としては、環Aが(a)直鎖ま
たは分枝鎖低級アルキル基(たとえば、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s
ec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−
ヘキシル基、3−ヘキシル基)、(b)直鎖または分枝
鎖低級アルコキシ基(たとえば、メトキシ基、エトキシ
基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブ
トキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−
ヘキシルオキシ基、2−ヘキシルオキシ基、3−ヘキシ
ルオキシ基)、または(c)ハロゲン原子(たとえば、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)で置換
されていてもよいフェニル基であり、R1 がメチル基、
エチル基である化合物をあげることができる。
【0041】好ましい例としては、環Aがメチル基また
はメトキシ基で置換されたフェニル基であり、R1がメ
チル基、エチル基である化合物をあげることができ、と
りわけ、環Aがメチル基またはメトキシ基で4位が置換
されたフェニル基であり、R1がメチ ル基、エチル基で
ある化合物をあげることができる。
【0042】また、トランス−3−置換グリシッド酸エ
ステル(I)の光学異性体(B)とエステル残基のみが
異なる光学異性体(エステル(B′))のエステル残基
としては、トランス−3−置換グリシッド酸エステル
(I)の光学異性体よりも、結晶化に使用する溶媒中で
のエステル(B′)の溶解度を高くするエステル残基
あげられる
【0043】光学異性体(B)とエステル残基のみが異
なるエステル(B′)のエステル残基としては、たとえ
ば、つぎのものをあげることができる。
【0044】(a)置換基を有していてもよい、R1
りも炭素数の多い直鎖または分枝鎖アルキル基(たとえ
ば、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、se
c−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペ
ンチル基、3−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキ
シル基、3−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチ
ル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、n−オクチル
基、2−オクチル基、3−オクチル基、4−オクチル
基、n−ノニル基、、2−ノニル基、3−ノニル基、4
−ノニル基、5−ノニル基、n−デシル基、2−デシル
基、3−デシル基、4−デシル基、5−デシル基)、
(b)置換基を有していてもよいアルコキシアルキル基
(たとえば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プ
ロピルオキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプ
ロピル基、メトキシブチル基、エトキシエチル基、プロ
ピルオキシプロピル基)、(c)置換基を有していても
よいアリールアルキル基(たとえば、ベンジル基、フェ
ネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基)。
【0045】ここに、アルキル基、アルコキシアルキル
基の置換基としては、ハロゲン原子(たとえば、フッ素
原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)を、アリール
アルキル基の置換基としては、直鎖または分枝鎖低級ア
ルキル基(たとえば、メチル基、エチル基、プロピル
基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル
基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、
3−ヘキシル基)、直鎖または分枝鎖低級アルコキシ基
(たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ
基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、sec−
ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、
2−ヘキシルオキシ基、3−ヘキシルオキシ基)、ハロ
ゲン原子(たとえば、フッ素原子、塩素原子、臭素原
子、ヨウ素原子)をあげることができる。
【0046】光学異性体(B)とエステル残基のみが異
なるエステル(B′)のエステル残基の好ましい具体例
としては、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブ
チル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル
基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ベ
ンジル基、フェネチル基をあげることができる。
【0047】また、光学異性体(B)とエステル残基の
みが異なるエステル(B′)の絶対配置は、(2R,3
S)および(2S,3R)のいずれであってもよく、
(2R,3S)型のエステル(B′)を共存させれば
(2S,3R)型の光学異性体(A)を、(2S,3
R)型のエステル(B′)を共存させれば(2R,3
S)型の光学異性体(A)を高純度の結晶として、母液
中の光学異性体(A)の濃度が従来法よりもはるかに低
くなるまで結晶化させることができ、したがって、従来
法よりもはるかに収率よく取得することができる。
【0048】本発明の結晶化に使用する溶媒としては、
トランス−3−置換グリシッド酸エステル(I)の再結
晶に使用しうる溶媒をいずれも使用することができ、ア
ルコール系溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、
n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノー
ル)、エーテル系溶媒(たとえば、ジエチルエーテル、
t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、
テトラヒドロフラン、ジオキサン)、ハロゲン原子で置
換されていてもよい芳香族炭化水素系溶媒(たとえば、
ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジク
ロロベンゼン)、ハロゲン原子で置換されていてもよい
脂肪族炭化水素系溶媒(たとえば、ヘキサン、シクロヘ
キサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ジクロロメタ
ン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭
素)、エステル系溶媒(たとえば酢酸メチルエステル、
酢酸エチルエステル)などをあげることができる。これ
らは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】また、トランス−3−置換グリシッド酸エ
ステル(I)および光学異性体(B)とエステル残基の
みが異なるエステル(B′)のエステル残基およびトラ
ンス−3−置換グリシッド酸エステル(I)のフェニル
基上の置換基により、適切な溶媒を適宜選択して使用す
ることができ、トランス−3−置換グリシッド酸エステ
ル(I)の光学異性体(A)の溶解度が温度により大き
く変化し、かつ、光学異性体(B)とエステル残基のみ
が異なるエステル(B′)の溶解度が光学異性体(A)
の溶解度よりもはるかに大きい溶媒が好ましい。
【0050】たとえば、トランス−3−置換グリシッド
酸エステル(I)として、トランス−3−(4−メトキ
シフェニル)グリシッド酸メチルエステルを、光学異性
体(B)とエステル残基のみが異なるエステルとして、
そのn−ブチルエステルを使用するばあいには、メタノ
ール、エタノール、キシレンなどを使用するのが好まし
い。
【0051】また、トランス−3−置換グリシッド酸エ
ステル(I)の光学異性体(A)および(B)ならびに
これとエステル残基のみが異なるエステル(B′)を一
旦溶解することができ、かつ、溶液の温度を下げること
により、光学異性体(A)が晶析するような範囲内で溶
媒量を適宜定めることができる。このため、溶媒量は光
学異性体(A)および(B)ならびにこれとエステル残
基のみが異なるエステル(B′)の種類、これらの組
成、晶析温度などにより、実験的に適切な範囲を選択す
ることができる。一般に、光学異性体(A)および
(B)の溶解度が大きく、かつ、温度変化による溶解度
変化が大きい溶媒では溶媒量を少なくすることが可能で
ある。
【0052】たとえば、キシレン100mlに下記トラ
ンス−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸エス
テル組成物を溶解させて溶液を調製したのち、−10℃
に冷却させるばあいには、(2R,3S)メチルエステ
ルのみを効率的に、溶液中の(2R,3S)メチルエス
テル濃度<(2S,3R)メチルエステル濃度の範囲に
おいても晶析させることができる。
【0053】キシレン100mlに溶解させる組成物 (2R,3S)メチルエステル 49g (2S,3R)メチルエステル 14g (2S,3R)ブチルエステル 39g (2R,3S)メチルエステルを晶析させたのちの溶液
中の組成物組成 (2R,3S)メチルエステル 9g (2S,3R)メチルエステル 変化なし (2S,3R)ブチルエステル 変化なし また、晶析前の溶液における光学異性体(A)の濃度と
しては、光学異性体(A)の種類、溶媒の種類、晶析時
の温度などによっても異なるが、通常、0.5〜4モル
/Lが使用される。
【0054】本発明の方法におけるトランス−3−置換
グリシッド酸エステル(I)の光学異性体(A)および
(B)ならびに光学異性体(B)とエステル残基のみが
異なるエステル(B′)を含む溶液において、光学異性
体(A)と光学異性体(B)との比率は、エステル
(B′)によって結晶化が抑制された光学異性体(B)
よりも光学異性体(A)が結晶化しやすい範囲内にある
ことが必要であり、このばあいには本発明の方法により
光学異性体(A)を結晶として取得することができる。
【0055】しかし、光学異性体(A)が光学異性体
(B)よりも多く含まれるばあいには、エステル
(B′)によって光学異性体(B)の結晶化が抑制され
ることによってえられる光学異性体(A)の結晶に加え
て、初めから多く含まれる光学異性体(A)も取得でき
る点で好ましい。
【0056】また、エステル(B′)の光学異性体
(B)に対する比が大きくなるほど、光学異性体(B)
の結晶化抑制の程度が向上し、光学異性体(A)の結晶
をより多く取得できるため、エステル(B′)の光学異
性体(B)に対する比率が大きいほど好ましい。
【0057】これら異性体の比率は、光学異性体(A)
および(B)ならびにエステル(B′)のエステル残
基、結晶化に使用する溶媒の種類にもよるが、一般に、
光学異性体(A)/光学異性体(B)がモル比で4/6
〜10/1程度、エステル(B′)/光学異性体(B)
がモル比で5/3〜10/1程度であるのが好ましく、
とりわけ、光学異性体(A)/光学異性体(B)が1/
1〜4/1程度、エステル(B′)/光学異性体(B)
が2/1〜7.8/1程度であるのが好ましい。
【0058】また、本発明の方法では、光学異性体
(A)および(B)ならびにエステル(B′)以外に、
他の成分を含む溶液から結晶化を行なうこともできる。
たとえば、これら3成分以外に、光学異性体(A)とエ
ステル残基のみが異なる光学異性体(エステル
(A′))を含むものであってもよい。エステル
(A′)が含まれるばあい、エステル(A′)/光学異
性体(A)のモル比がエステル(B′)/光学異性体
(B)のモル比の9/35以下であるのが、エステル
(A′)の存在によって惹き起される光学異性体(A)
の結晶化阻害の影響が少なく、光学異性体(A)の結晶
を多く、しかも高純度でうることができる点で好まし
い。
【0059】すなわち、光学異性体(A)は、エステル
(A′)の存在により結晶化が抑制されるが、エステル
(B′)による光学異性体(B)の結晶化抑制により、
光学異性体(A)が先に結晶化するばあいも、本発明の
方法に含まれる。
【0060】このばあいには、溶液に含まれるエステル
(B′)による光学異性体(B)の結晶化阻害の程度が
エステル(A′)による光学異性体(A)の結晶化阻害
の程度より大きく、光学異性体(A)が光学異性体
(B)よりも結晶化しやすいばあいには、本発明の方法
により光学異性体(A)を取得することができる。
【0061】また、本発明の方法では、少なくとも光学
異性体(A)および(B)ならびにエステル(B′)の
3異性体が溶液中に存在することが必要であり、この点
で、光学異性体(A)および(B)のみからなる優先晶
析法とは明確に異なっている。また、本発明の方法はエ
ステル(B′)による光学異性体(B)の結晶化抑制を
利用するものであり、1回の晶析、単離で光学異性体
(A)を単離するものであるが、光学異性体(A)およ
び(B)のみを含む溶液に光学異性体(A)の種結晶を
接種し、光学異性体(A)を結晶化、ついで光学異性体
(B)の種結晶を接種して光学異性体(B)を結晶化さ
せる操作を繰り返して行なう優先晶析法とは、この点に
おいても明確に異なっているのである。さらに、本発明
の方法は、結晶化前の溶液中における光学異性体の濃度
が光学異性体(A)>>光学異性体(B)から光学異性
体(A)<光学異性体(B)までの広い範囲の任意の範
囲で光学異性体(A)の晶析、単離を行なう方法である
点でも、所望の光学異性体が他方の光学異性体よりも過
剰に含まれる溶液から各光学異性体を結晶化させて単離
する優先晶析法とは異なるのである。
【0062】なお、光学異性体(A)および(B)なら
びにエステル(B′)の溶液とともに光学異性体(A)
の結晶が共存する状態での晶析も本発明の方法の態様に
含まれる。一方、光学異性体(B)が含まれておらず、
またはエステル(B′)が含まれていないために、エス
テル(B′)による光学異性体(B)の晶析の抑制が生
じないばあいは、本発明の方法から除外される。
【0063】本発明の方法において結晶化を行なう温度
は、トランス−3−置換グリシッド酸エステル(I)の
光学異性体(A)は結晶化するが、光学異性体(B)、
エステル(B′)が結晶化しない温度(ただし、放置す
るとはじめて析出するばあい、析出がはじまるまでは析
出しない温度に含む)でなければならない。かかる結晶
化の温度はトランス−3−置換グリシッド酸エステル
(I)の種類、溶媒の種類、結晶化させる溶液の組成に
よって変わるが、トランス−3−置換グリシッド酸エス
テル(I)の光学異性体(A)のオキシラン環の安定性
からすれば、結晶化させる溶液を作製する際にあまり高
温に加熱して溶解することは好ましくないため、70℃
程度以下の温度で溶解させ、室温以下の低温で結晶化さ
せるのが好ましい。
【0064】また、一般に、溶媒量が多いばあい、低温
にしなければ光学異性体(A)の結晶化が進行せず、一
方、溶媒量を少なくすれば比較的高温でも光学異性体
(A)の結晶化が進行するため、工業化する際には、溶
媒量、設備面およびエネルギー面からは溶媒量を少なく
し、濃厚溶液から室温付近で結晶化させるのが好まし
い。
【0065】しかし、一般に溶媒量を少なくし、濃厚溶
液から結晶化させると不純物の含有率が高くなる傾向に
あるため、純度の面からは溶媒量を多くし、低温で結晶
化させるのが好ましい。
【0066】このため、光学異性体(A)の晶析を効率
的に行なうためには、トランス−3−置換グリシッド酸
エステル(I)の種類、エステル(B′)のエステル残
基、溶媒の種類、結晶化させる溶液の組成によって、実
験的に最適の温度範囲を設定する必要がある。
【0067】たとえば、光学異性体(A)および(B)
がメチルエステル、エステル(B′)がn−ブチルエス
テルであり、メタノールから晶析するばあいには、−3
0〜+15℃の範囲で行なうのが好ましい。他のばあい
も同様の温度が採用される。
【0068】なお、本発明の方法では、エステル
(B′)による光学異性体(B)の結晶化阻害が生じる
ため、溶解度が同じ光学異性体の晶析速度の差異を利用
する優先晶析法と異なり、非常に厳密な温度設定を行な
わなくても、光学異性体(B)の結晶を含まない光学異
性体(A)を純度良く取得することができ、優先晶析法
に比べ、温度の許容範囲が広い。
【0069】本発明の方法によれば、エステル(B′)
が共存することにより、光学異性体(B)の結晶化が阻
害され、また、光学異性体(B)が析出するばあいに
は、同じ絶対配置を有するエステル(B′)と混合した
アモルファスを形成して析出するため、光学異性体
(A)の晶析が生じている状態と外観上区別することが
できる。
【0070】なお、本発明の方法による光学異性体
(A)の結晶化は、光学異性体(A)、光学異性体
(B)およびエステル(B′)を溶解した溶液から、エ
ステル(B′)が存在しなければ光学異性体(B)が析
出する状態となるまで行なわれる。
【0071】前記状態に該当するか否かは溶解度による
ため、溶液の温度がかわれば前記状態に該当しない溶液
も該当するようになる。また、逆のばあいもある。
【0072】本発明における光学異性体(A)、光学異
性体(B)およびエステル(B′)を溶解した溶液か
ら、エステル(B′)が存在しなければ光学異性体
(B)が析出するが、エステル(B′)が存在するため
光学異性体(A)は析出するが光学異性体(B)は析出
しない状態を、本発明に使用する特定の溶液aについて
温度および時間を変数としたばあいの関係を示す図1に
したがって説明する。なお、図1に記載の溶液aは光学
異性体(A)、光学異性体(B)およびエステル
(B′)の比率ならびに溶媒、濃度が一定で光学異性体
(A)の濃度>光学異性体(B)の濃度、エステル
(B′)は光学異性体(B)の結晶化を抑制するのに充
分な量含有されているとする。
【0073】溶液aは完全に均一な溶液である。溶液a
を冷却させると点bにおいて光学異性体(A)の析出が
はじまる。さらに溶液の冷却をつづけると光学異性体
(B)よりも余分に溶解している光学異性体(A)は析
出しきり、光学異性体(A)/光学異性体(B)=1/
1の点cに到達する。
【0074】すなわち、点bから点cまで冷却する間に
光学異性体(A)の結晶を析出させることができるはず
であるが、点bから点cに向けて冷却すると、点cに近
づくにしたがって溶液中の光学異性体(B)の割合が増
加するため、溶液のゆらぎ(溶液における温度、濃度な
どの部分的な不均一さ)が光学異性体(B)の析出に影
響を与えるため、特開平8−259552号公報では、
晶析後の母液において光学異性体(A)/光学異性体
(B)=1.3/1程度までしか光学異性体(A)の結
晶化は行なわれていなかった。
【0075】点cの溶液は、光学異性体を光学異性体
(A)/光学異性体(B)=1/1の割合で含有するか
ら、点cよりも溶液を冷却することにより析出する結晶
は、本来、光学異性体(A)/光学異性体(B)=1/
1の結晶になるはずである。
【0076】ところが、本発明においては、エステル
(B′)が共存するため、光学異性体(B)の結晶化が
抑制され、点cよりもさらに溶液を冷却しても光学異性
体(A)は析出するが、光学異性体(B)は析出しない
ため光学異性体(A)の収量を増大させることができ
る。
【0077】点cをすぎて溶液をさらに低温になるよう
に冷却すると、ついには光学異性体(A)の析出だけで
なく、溶液全体が白濁し、光学異性体(A)のみなら
ず、光学異性体(B)およびエステル(B′)のアモル
ファス状物が析出する点dに到達する。したがって、本
発明の方法は、点dより高い温度で行なう必要がある。
【0078】なお、点cをすぎてさらに、たとえば点e
まで冷却した溶液をその温度で冷却しつづけると、時間
t後に点fに達し、溶液全体が白濁し、点dに到達した
のと同じ現象が生じ、エステル(B′)により結晶化が
抑制されていた光学異性体(B)がエステル(B′)と
ともにアモルファス状物として析出する。したがって、
本発明の方法は溶液が白濁するまでの時間tまでに行な
う必要がある。
【0079】以上のように、本発明の方法では、図1の
「本発明の方法が到達する状態」となるまで結晶化が行
なわれる。この状態は溶液を形成する光学異性体
(A)、(B)の種類、比率、濃度、エステル(B′)
の種類、濃度、溶媒の種類、量などによりかわるため、
条件がかわればそれぞれの条件に応じて適宜求めればよ
い。
【0080】たとえば、図1で用いた溶液における光学
異性体の割合が光学異性体(A)<光学異性体(B)に
なるばあい、光学異性体(A)の析出開始点は点cより
点d側になり、析出開始点から点dの間で光学異性体
(A)を結晶化させ単離することができる。
【0081】析出した結晶の単離は、デカンテーショ
ン、濾過などの通常の方法により行なうことができる。
処理量が多いばあいには時間がかかるが、少量のばあい
には短時間に行なうことができる(実験室的な単離のば
あい瞬間的に行なうことも可能)。単離に時間がかかる
ばあい、その時間を予め確保するために、たとえば図1
の点eで晶析を行ない、単離のための時間tを確保する
のが好ましい。
【0082】本発明の方法によれば、たとえば、ラセミ
型トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド
酸メチルエステルに、光学異性体(B)の析出を抑制す
ることができるのに充分な量の(2S,3R)−3−
(4−メトキシフェニル)グリシッド酸n−ブチルエス
テルを添加して晶析を行なえば、晶析後の母液における
(2S,3R)−3−(4−メトキシフェニル)グリシ
ッド酸メチルエステルが(2R,3S)−3−(4−メ
トキシフェニル)グリシッド酸メチルエステルの2倍以
上になるまで、(2R,3S)−3−(4−メトキシフ
ェニル)グリシッド酸メチルエステルを結晶化させるこ
とができ、かつ、えられる結晶の光学純度も99%以上
にすることができる。
【0083】このため、晶析後の母液において、光学異
性体(B)と光学異性体(A)の量が同じになるまで、
全く光学異性体(B)の晶析を生じさせることなく、光
学異性体(A)の晶析を行なうことができるとともに、
光学異性体(B)に比べ、光学異性体(A)の量が少な
くなるまで、光学異性体(A)を純粋な結晶の形で取得
することができる。
【0084】特開平8−259552号公報には、ラセ
ミ型トランス−3−(4−メトキシフェニル)グリシッ
ド酸メチルエステルをセラチア マルセッセンス(Se
rratia marcescens)由来のエステラ
ーゼで不斉エステル交換することにより、その(2S,
3R)−異性体の7.8/8.8(約88.6%)をn
−ブチルエステルとし、酵素を除去後、溶媒を減圧留去
し、i−プロパノールから晶析することにより光学純度
99%以上の(2R,3S)−3−(4−メトキシフェ
ニル)グリシッド酸メチルエステルを結晶の形で取得し
ている。
【0085】しかし、このばあいには、(2S,3R)
−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエ
ステルの結晶化などを避けて、光学純度の良い(2R,
3S)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド酸メ
チルエステルの結晶をうるために、晶析後の母液におい
て(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニル)グリ
シッド酸メチルエステルが(2S,3R)−3−(4−
メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステルの約
1.3倍程度となった段階で晶析を停止している。
【0086】これに対し、本発明の方法では、たとえ
ば、同じ組成物であっても晶析後の母液において(2
S,3R)−3−(4−メトキシフェニル)グリシッド
酸メチルが(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニ
ル)グリシッド酸メチルの約2倍程度になるまで、晶析
を行なうことができる。
【0087】光学異性体(A)の結晶化の程度は、トラ
ンス−3−置換グリシッド酸エステル(I)およびこれ
に含まれる光学異性体(B)とエステル残基のみが異な
るエステル(B′)の割合、結晶化溶媒、溶媒量、晶析
温度などによるが、光学異性体(A)結晶化の限界は、
光学異性体(B)およびエステル(B′)が混合したア
モルファス状物の析出が始まる段階で結晶化溶液に白濁
が生じるため、これを指標として知ることができる。
【0088】純度は、一般に晶析させるときの溶液濃度
(光学異性体に対する溶媒量)、光学異性体(A)と
(B)との比率、温度、晶析量などの影響をうけ、溶液
濃度が低く、光学異性体(A)と(B)との合計量中の
光学異性体(A)の比率が高く、晶析温度が高く、晶析
量が少ないばあい、すなわち光学異性体(A)、(B)
がともに析出しにくく、晶析量が少ないばあいに光学異
性体(A)の純度は高くなり、収率と相反する関係にあ
るが、本発明の方法のばあいには、エステル(B′)が
共存するために光学異性体(B)の析出が抑制されるこ
とにより、純度99%以上のものを好ましくは75%以
上の収率で取得することができる。また、その際の操作
も、光学異性体(A)、(B)およびエステル(B′)
を溶解した溶液から、エステル(B′)が存在しなけれ
ば光学異性体(A)と光学異性体(B)とがともに結晶
化するが、エステル(B′)が存在するため光学異性体
(A)は結晶化するが光学異性体(B)は結晶化しない
状態となるまで光学異性体(A)の結晶化を行ない、光
学異性体(B)およびエステル(B′)が析出しはじめ
る前に単離するという簡単な方法で、母液中の光学異性
体(B)の量>光学異性体(A)の量の範囲に到るまで
析出させ続けることができる。
【0089】従来法では、通常、光学異性体(A)およ
び光学異性体(B)(光学異性体(A)の含量>光学異
性体(B)の含量)を含む溶液(AB)から光学異性体
(A)結晶を析出させて単離するため、光学異性体
(A)は結晶化するが、光学異性体(B)は結晶化しな
い溶媒、温度、濃度をえらび、純度の高いものをうるに
は、収率をある程度犠牲にして光学異性体(A)を結晶
化させる方法がとられてきた。しかしながら、本発明の
方法で光学異性体(A)を析出させるばあいには、従来
法ではエステル(B′)が存在しなければ光学異性体
(A)と光学異性体(B)とがともに結晶化する状態と
なるまで光学異性体(A)結晶を析出させることができ
る。
【0090】つぎに溶液(ABB′)および溶液(A
A′BB′)の調製方法について説明する。
【0091】エステル(A′)は光学異性体(A)の収
率を低下させる方向に使用する化合物であるから、溶液
中には含まれていない方が好ましい。したがって、溶液
の製造時に不可避的に混入するばあいを除き、積極的に
加えられるものではないから、溶液(ABB′)および
溶液(AA′BB′)のうちの溶液(ABB′)が好ま
しい。
【0092】溶液(ABB′)の製法としては、溶液
(AB)にエステル(B′)を加える方法、光学異性体
(A)および光学異性体(B)に、エステル交換用アル
コール(R3−OH)および立体選択的にエステル交換
する能力を有する酵素、要すれば有機溶媒を加えてエス
テル交換反応を行なってうる方法などがあげられる。酵
素を用いるエステル交換反応によるばあい、酵素の立体
選択性が100%のばあいにはじめて溶液(ABB′)
がえられ、立体選択性が100%未満のばあいには溶液
(AA′BB′)がえられる。したがって立体選択性の
よい酵素を用いるのが好ましい。
【0093】溶液(AB)は、通常、化学合成によって
えられるが、不斉合成のばあいを除き、ラセミ体溶液で
ある。
【0094】エステル(B′)は、本発明の方法におい
て光学異性体(A)結晶を単離した溶液中に高含有率で
残存しており、必要であれば取り出すことができる。ま
た、エステル(B′)はエステル(A′)およびエステ
ル(B′)の混合物から酵素を用いてエステル(A′)
を選択的に加水分解することによってもうることができ
る。
【0095】通常ラセミ体の溶液(AB)にエステル
(B′)を加え、エステル(B′)が存在するため光学
異性体(A)は結晶化するが光学異性体(B)は結晶化
しない条件を満足する溶液(ABB′)を製造すること
ができる。
【0096】エステル(B′)を加える溶液は、ラセミ
体の溶液に限られず、たとえば不斉合成法(たとえば、
特開昭61−268663号公報、特開平2−1717
0号公報、同2−17169号公報、国際公開第89/
02428号パンフレット(1989)、同第89/1
0350号パンフレット(1989)など)により製造
されたはじめから光学異性体(A)および(B)の割合
が偏った溶液、酵素を用いた加水分解法(たとえば、特
開平2−109995号公報、同3−15398号公
報、特表平4−501360号公報など)または化学分
割法(たとえば、特開昭61−145174号公報、特
開平2−231480号公報など)により分解したのち
または分解途中のものをエステル化したものを含む溶液
に加えて、本発明の方法を適用してもよい。このように
従来からの不斉合成法、光学分割法と本発明の方法とを
組み合わせて実施してもよく、このばあいには、従来法
による不斉誘導、光学分割法による不斉収率が不充分な
ばあいであっても、収率よく、高純度の光学異性体
(A)を回収することができる。
【0097】また、エステル(B′)を加えるかわりに
酵素を用いてエステル交換反応を行なわせ、本発明の方
法を適用してもよい。
【0098】たとえば、ラセミ型トランス−3−(4−
メトキシフェニル)グリシッド酸メチルエステルの(2
S,3R)−異性体をブタノールで酵素的に不斉エステ
ル交換し、(2R,3S)−3−(4−メトキシフェニ
ル)グリシッド酸メチルエステルをうる方法(特開平4
−228095号公報、同6−78790号公報、同8
−259552号公報)などに、本発明の方法を適用し
てもよい。
【0099】本発明の光学異性体の製造方法の応用には
様々なものが考えられるが、たとえば、(a)トランス
−3−置換グリシッド酸エステル(I)の2位、3位不
斉炭素に基づく、1つの光学異性体(A)、他の光学異
性体(B)および光学異性体(B)とエステル残基のみ
が異なるエステル(B′)を溶解した溶液を調製し、
(b)この溶液から、エステル(B′)が存在しなけれ
ば光学異性体(B)が析出するが、エステル(B′)が
存在するため光学異性体(A)は析出するが光学異性体
(B)は析出しない状態となるまで、光学異性体(A)
の結晶化を行ない、(c)光学異性体(A)の結晶を単
離し、(d)光学異性体(A)および光学異性体(B)
とともに母液中に存在する、エステル(B′)を化学的
にエステル交換して光学異性体(B)としたのち、光学
異性体(B)の結晶化を行ない単離し、(e)一般式
(I)で表わされるトランス−3−置換グリシッド酸エ
ステルおよびエステル(B′)を母液に加えて工程
(b)の結晶化に供する溶液とし、(f)前記工程
(b)、(c)、(d)および(e)をこの順序で繰り
返す循環プロセスを行なうことにより、光学異性体
(A)および光学異性体(B)をいずれも高純度で取得
することができる。
【0100】前記製造方法では、光学異性体(A)単離
後の溶液中では光学異性体(B)の濃度が光学異性体
(A)の濃度よりも高いため、通常の結晶化を行なうの
みでも、光学異性体(B)のみを結晶化、単離して、光
学異性体(B)を取得することができるが、工程(d)
において、エステル交換後の反応液から光学異性体
(B)を結晶化する際に、エステル(A′)を添加すれ
ば、エステル(A′)による光学異性体(A)の結晶化
阻害により、光学異性体(B)をより効率的に結晶化す
ることができる。工程(d)において、エステル
(A′)を添加したばあいには、工程(e)において母
液に含まれるエステル(A′)を化学的にエステル交換
して光学異性体(A)に戻す。
【0101】前記工程(d)におけるエステル(A′)
を添加するばあいの添加量は、工程(a)における溶液
において含まれる(B′)の量に順じ、光学異性体
(A)および(B)ならびにエステル(A′)のエステ
ル残基、結晶化に使用する溶媒の種類にもよるが、一般
に、エステル(A′)/光学異性体(A)がモル比で5
/3〜10/1程度となるように添加されるのが好まし
い。
【0102】この循環プロセスにおいて使用される化学
的エステル交換については、本発明の製造方法における
結晶化後の母液に、有機アミンおよび交換後の光学異性
体におけるエステル残基に対応するアルコールを添加し
て反応させたのち、有機アミンおよびアルコールを留去
することにより実施することができる。
【0103】化学的エステル交換に使用するアルコール
はエステル交換を受けるエステル1モルあたり、1〜1
000モル、とりわけ2〜10モルの割合で使用するの
が好ましく、化学的エステル交換に使用するアルコール
が、メタノール、エタノールなどの低沸点アルコールと
なるような組み合わせになっているプロセスが循環させ
るためには好ましい。
【0104】有機アミンとしては、モノアルキルアミン
(たとえば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルア
ミン、ブチルアミン)、ジアルキルアミン(たとえば、
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、
ジイソプロピルアミン)、トリアルキルアミン(たとえ
ば、トリメチルアミン、トリエチルアミン)、環状アミ
ン(たとえば、モルホリン)、芳香族アミン(たとえ
ば、ピリジン)などを使用することができるが、とりわ
け、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピ
ルアミンなどの低沸点ジアルキルアミンを使用するのが
好ましい。また、有機アミンはエステル交換を受けるエ
ステル1モルあたり、0.01〜1000モル、とりわ
け0.1〜10モルの割合で使用するのが好ましい。
【0105】前記循環プロセスを行なえば、1サイクル
で光学異性体(A)および(B)をいずれも高純度にえ
ることができ、化学的エステル交換後に有機アミンおよ
びアルコールを充分に留去することができれば、実際上
無限にプロセスを循環させることができるため、不斉化
学反応を行なわなくても、循環させるだけで、高純度の
光学異性体(A)および(B)を効率よく取得すること
ができる。
【0106】また、結晶化時の溶液の揺らぎ(溶液温
度、濃度などの部分的不均一さ)に基づく対掌体の混入
による光学純度の低下を抑制できるとともに、1サイク
ルあたりの光学異性体取得量が多いため、工業上有利で
ある。
【0107】つぎに、エステル交換法により光学異性体
(A)、(B)およびエステル(B′)を含む溶液を調
製し、本発明の方法を適用するばあいについて説明す
る。
【0108】光学異性体(A)および(B)の溶液にエ
ステル(B′)を形成するアルコールを加え、光学異性
体(B)を酵素で不斉エステル交換して光学異性体
(A)の結晶化に使用する溶液を調製するばあい、光学
異性体(A)が光学異性体(B)よりも多量に含まれる
とともに、光学異性体(B)の結晶化を阻害するエステ
ル(B′)を含む混合物を1つの反応で直接うることが
できる点から好ましい。
【0109】本発明の方法により光学異性体(A)を結
晶化させ、単離するばあいにも光学異性体(A)と光学
異性体(B)の割合は光学異性体(A)が多いほど好ま
しく、したがって、エステル(B′)の割合も多いほど
好ましいが、このばあい光学異性体(B)の割合を少な
くするためには、酵素およびエステル交換用アルコール
の使用量を増やし、長時間反応させるというように、コ
ストが高く、また副反応が多くおこる方法によらなけれ
ばならない。
【0110】本発明の方法では、従来法と異なり、エス
テル(B′)が光学異性体(B)の析出を抑制するた
め、エステル交換の程度を低くした範囲でも光学分割を
行なうことができ、モル比で光学異性体(A)/光学異
性体(B)が4/6〜10/1、エステル(B′)/光
学異性体(B)が5/3〜10/1、とりわけ、光学異
性体(A)/光学異性体(B)が3/1〜4/1、エス
テル(B′)/光学異性体(B)が2/1〜7.8/1
であれば純度の高い光学異性体(A)を高収率でうるこ
とができる。
【0111】前記エステル交換用アルコールの例として
は、前述のエステル(B′)のエステル残基を与えるア
ルコールが使用される。
【0112】また、前記酵素としては、トランス−3−
置換グリシッド酸エステル(I)およびエステル交換用
アルコールを基質とし、立体選択的にエステル交換する
能力を有する酵素であれば使用しうる。その具体例とし
てはつぎの酵素があげられる。
【0113】トランス−3−置換グリシッド酸エステル
(I)の(2S,3R)−異性体を選択的にエステル交
換する酵素としては、たとえばセラチア(Serrat
ia)属、カンジダ(Candida)属、ムコール
(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomo
nas)属、アスペルギルス(Aspergillu
s)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)
属、アブシディア(Absidia)属、フサリウム
(Fusarium)属、ギベレラ(Giberell
a)属、ノイロスポラ(Neurospora)属、ト
リコデルマ(Trichoderma)属、リゾプス
(Rhizopus)属、アクロモバクター(Achr
omobacter)属、バシラス(Bacillu
s)属、ブレビバクテリウム(Brevibacter
ium)属、コリネバクテリウム(Corynebac
terium)属、プロビデンシヤ(Providen
cia)属、サッカロマイコプシス(Saccharo
mycopsis)属、ノカルディア(Nocardi
a)属、アルスロバクター(Arthrobacte
r)属微生物由来のエステラーゼ、α−キモトリプシ
ン、豚肝臓エステラーゼ、豚すい臓エステラーゼなどを
使用することができる。
【0114】前記酵素の具体例としては、たとえばアブ
シディア コリンビフェラ(Absidia cory
mbifera)IFO 4009、同IFO 401
0、アスペルギルス オクラセウス(Aspergil
lus ochraceus)IFO 4346、アス
ペルギルステレウス(Aspergillus ter
reus)IFO 6123、フサリウム オキシスポ
ラム(Fusarium oxysporum)IFO
5942、同ATCC 659、フサリウムソラニ
(Fusarium solani)IFO 523
2、ギベレラ フジクロイ(Gibberella f
ujikuroi)IFO 5368、ムコール アン
グリマクロスポラス(Mucor angulimac
rosporus)IAM 6149、ムコール シル
シネロイデス(Mucor circinelloid
es)IFO 6746、ムコール フラバス(Muc
orflavus)IAM 6143、ムコール フラ
ギリス(Mucor fragilis)IFO 64
49、ムコール ジェネベンシス(Mucor gen
evensis)IAM 6091、ムコール グロボ
サス(Mucorglobosus)IFO 674
5、ムコール ジャンセニ(Mucor jansse
nii)IFO 5398、ムコール ジャバニカス
(Mucorjavanicus)IFO 4569、
同IFO 4570、同IFO 4572、同IFO
5382、ムコール ランプロスポラス(Mucor
lamprosporus)IFO 6337、ムコー
ル ペトリンスラリス(Mucor petrinsu
laris)IFO 6751、ムコール プランベウ
ス(Mucor plumbeus)IAM 611
7、ムコール プライニ(Mucor praini)
IAM 6120、ムコール プシラス(Mucor
pusillus)IAM 6122、ムコール ラセ
モサス(Mucorracemosus)IFO 45
81、ムコール ラマニアヌス(Mucor rama
nnianus)IAM 6128、ムコール レカル
バス(Mucor recurvus)IAM 612
9、ムコール シルバティカス(Mucor silv
aticus)IFO 6753、ムコール スピネッ
センス(Mucor spinescens)IAM
6071、ムコール サブチリシマス(Mucor s
ubtilissimus)IFO 6338、ノイロ
スポラ クラッサ(Neurospora crass
a)IFO 6068、リゾプス アリザス(Rhiz
opus arrhizus)IFO 5780、リゾ
プス デレマー(Rhizopus delemar)
ATCC 34612、リゾプス ジャポニカス(Rh
izopus japonicus)IFO 475
8、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma
viride)IFO 4847、アクロモバクター
サイクロクラステス(Achromobacter c
ycloclastes)IAM 1013、バシラス
スフェリカス(Bacillus sphaeric
us)IFO 3525、ブレビバクテリウム ケトグ
ルタミカム(Brevibacterium keto
glutamicum)ATCC 15588、コリネ
バクテリウム アルカノリティカム(Coryneba
cterium alkanolyticum)ATC
C 21511、コリネバクテリウム ハイドロカーボ
クラスタム(Corynebacterium hyd
rocarboclastum)ATCC 1559
2、コリネバクテリウム プリモリオキシダンス(Co
rynebacterium primorioxyd
ans)ATCC 31015、プロビデンシヤ アル
カリファシエンス(Providencia alca
lifaciens)JCM 1673、シュードモナ
ス ムタビリス(Pseudomonas mutab
ilis)ATCC 31014、シュードモナスプチ
ダ(Pseudomonas putida)ATCC
17426、同ATCC17453、同ATCC 3
3015、セラチア リクエファシエンス(Serra
tia liquefaciens)ATCC 275
92、セラチア マルセッセンス(Serratia
marcescens)ATCC 13880、同AT
CC 14764、同ATCC 19180、同ATC
C 21074、同ATCC 27117、同ATCC
21212、セラチア マルセッセンス(Serra
tia marcescens)Sr41(FERMB
P−487(微工研条寄 第487号))、カンジダ
パラプシロシス(Candida parapsilo
sis)IFO 0585、サッカロマイコプシス リ
ポリティカ(Saccharomycopsis li
polytica)IFO 0717、同IFO 07
46、同IFO 1195、同IFO1209、同IF
O 1548、ノカルディア アステロイデス(Noc
ardia asteroides)IFO 338
4、同IFO 3424、同IFO 3423、ノカル
ディア ガードネリ(Nocardia gardne
ri)ATCC 9604、アルスロバクター ウレア
ファシエンス ノブ バール(Arthrobacte
r ureafaciens nov. var.)、
アルスロバクター グロビフォルミス(Arthrob
acter globiformis)、カンジダ シ
リンドラシア(Candida cylindrace
a)由来のエステラーゼなどをあげることができる。
【0115】また、アルカリ性リパーゼ(アクロモバク
ター(Achromobacter)由来、和光純薬工
業(株)製)、リパーゼB(シュードモナス フラジ
(Pseudomonas fragi)22−39B
由来、和光純薬工業(株)製)、リパーゼM「アマノ」
10(ムコール ジャバニカス(Mucor java
nicus)由来、天野製薬(株)製)、リパーゼ タ
イプXI(リゾプス アリザス(Rhizopus ar
rhizus)由来、シグマ社製)、タリパーゼ(リゾ
プス デレマー(Rhizopus delemar)
由来、田辺製薬(株)製)、リパーゼNK−116(リ
ゾプス ジャポニカス(Rhizopusjaponi
cus)由来、長瀬産業(株)製)、リパーゼN(リゾ
プス ニビウス(Rhizopus niveus)由
来、天野製薬(株)製)、リパーゼSP 435&52
5(カンジダ アンタークティカ(Candida a
ntarctica)由来、ノボ社製)、アルカラーゼ
(バシラス リヘニホルミス(Bacillus li
cheniformis)由来、ノボ社製)、リパーゼ
タイプVII(カンジダ シリンドラシア(Candi
da cylindracea)由来、シグマ社製)、
リパーゼ(ブタ膵臓由来、和光純薬工業(株)製)、エ
ステラーゼ(ブタ肝臓由来、シグマ社製)、コレステロ
ールエステラーゼ(カンジダ ルゴサ(Candida
rugosa)由来、長瀬産業(株)製)、リパーゼ
OF(カンジダ シリンドラシア(Candida c
ylindracea)由来、名糖産業(株)製)、リ
パーゼQL(アルカリゲネスエスピー(Alkalig
enes sp.)由来、名糖産業(株)製)、リパー
ゼAL(アクロモバクター エスピー(Achromo
bacter sp.)由来、名糖産業(株)製)、リ
パーゼPL(アルカリゲネス エスピー(Alkali
genes sp.)由来、名糖産業(株)製)などの
市販酵素を用いることもできる。
【0116】これら酵素のうち、セラチア(Serra
tia)属、カンジダ(Candida)属、アルカリ
ゲネス(Alcaligenes)属、アクロモバクタ
ー(Achromobacter)属微生物由来のエス
テラーゼを用いるのが好ましく、とりわけ、セラチア
マルセッセンス(Serratia marcesce
ns)、カンジダ シリンドラシア(Candida
cylindracea)微生物由来のエステラーゼを
使用するのが好ましい。
【0117】一方、トランス−3−置換グリシッド酸エ
ステル(I)の(2R,3S)−異性体を選択的にエス
テル交換する酵素としては、たとえばミクロコッカス
(Micrococcus)属、アグロバクテリウム
(Agrobacterium)属、マイクロバクテリ
ウム(Microbacterium)属、リゾビウム
(Rhizobium)属、シトロバクター(Citr
obacter)属、デバリオミセス(Debaryo
myces)属、ハンセニアスポラ(Hansenia
spora)属、ハンゼヌラ(Hansenula)
属、ピチア(Pichia)属、ロドスポリディウム
(Rhodosporidium)属、シゾサッカロミ
セス(Schizosaccharomyces)属、
スポロボロミセス(Sporobolomyces)
属、クロエケラ(Kloeckera)属、トルラスポ
ラ(Torulaspora)属、ストレプトミセス
(Streptomyces)属微生物由来のエステラ
ーゼなどを使用することができる。
【0118】かかる微生物酵素の具体例としては、ミク
ロコッカス ユリエ(Micrococcus ure
ae)IAM 1010(FERM BP−299
6)、アグロバクテリウム ラジオバクター(Agro
bacterium radiobacter)IAM
1526、同IFO 13259、マイクロバクテリ
ウム エスピー(Microbacterium s
p.)ATCC 21376、リゾビウム メリロッテ
ィ(Rhizobium meliloti)IFO1
3336、シトロバクター フロンディ(Citrob
acter freundii)ATCC 8090、
デバリオミセス ハンセニー バル ファブリ(Deb
aryomyces hansenii var. f
abryi)IFO 0015、デバリオミセス ネパ
レンシス(Devaryomycesnepalens
is)IFO 0039、ハンセニアスポラ バルビエ
ンシス(Hanseniaspora valbyen
s)IFO 0115、ハンゼヌラ ポリモアファ(H
ansenula polymorpha)IFO10
24、ハンゼヌラ サツルナス(Hansenula
saturnus)HUT 7087、ピチア ファリ
ノーサ(Pichia farinosa)IFO 0
607、ピチア パストリス(Pichia past
oris)IFO 0948、同IFO 1013、同
IAM 12267、ピチア ウイカーハミー(Pic
hia wickerhamii)IFO 1278、
ロドスポリディウム トルロイデス(Rhodospo
ridium toruloides)IFO 055
9、シゾサッカロミセス ポンベ(Schizosac
charomyces pombe)IFO 035
8、スポロボロミセス グラシリス(Sporobol
omyces gracillis)IFO 103
3、クロエケラ コルティシス(Kloeckera
corticis)IFO 0633、トルラスポラ
デルブルエキー(Torulaspora delbr
ueckii)IFO 0422、ストレプトミセス
グリセウス サブスプ グリセウス(Streptom
yces griseus subsp. grise
us)IFO 3430、同IFO 3355、ストレ
プトミセス ラベンデュラー サブスプ ラベンデュラ
ー(Streptomyceslavendulae
subsp. lavendulae)IFO 336
1、同IFO 3415、同IFO 3146由来のエ
ステラーゼなどをあげることができる。
【0119】酵素は市販酵素を使用してもよく、微生物
細胞の培養液からえられるものであってもよい。また、
酵素は微生物の野性株、変異株からえられるものであっ
てもよく、遺伝子組み換え、細胞融合などの生物工学的
手法により誘導された細菌であってもよい。
【0120】前記微生物由来の酵素は、特開平3−15
398号などに記載された慣用の培養法(たとえば、慣
用の炭素源、チッ素源および無機塩類を含有する培地
中、常温乃至加温下、かつ、好気的条件下、pH5〜
8)で微生物を培養し、培養液から遠心分離、濾過など
の常法により、菌体を除去し、必要に応じ、さらに、吸
着樹脂などを用いて不純物を除去することによりえられ
るが、微生物培養液をそのままの形で酵素として用いる
こともできる。
【0121】これら酵素はそのまま使用することもでき
るが、凍結乾燥して使用することができ、またポリアク
リルアミド法、含硫多糖ゲル法(たとえば、カラギーナ
ンゲル法)、寒天ゲル法、光架橋性樹脂法、ポリエチレ
ングリコール法、セライト法、膜吸着法などの公知の方
法で固定化して使用することもできる。
【0122】さらに、これら固定化された酵素は、固定
化されたものをカラムに充填して使用することもでき
る。
【0123】前記酵素のうちでは、E値が高いものが、
立体選択性が高く、光学異性体(A)がエステル
(A′)に交換される量が少なく、一方、光学異性体
(B)がエステル(B′)に交換される量が多く、した
がって、光学異性体(A)が析出するのを抑制するエス
テル(A′)の量が少なく、光学異性体(A)の析出量
が多くなり、一方、光学異性体(B)の析出は抑制され
るため好ましい。
【0124】E値は酵素の立体選択性を表わすポピュラ
ーな指標の1つであり、単位濃度当たりの各立体異性体
についての酵素反応速度比((2R,3S)−エステル
についてのエステル交換速度と(2S,3R)−エステ
ルについてのエステル交換速度との比(単位濃度当た
り))となっている。
【0125】また、E値については、一般に反応が相当
程度進行したばあいには、酵素の失活、副反応、測定誤
差などの影響が大きく出るため、本明細書におけるE値
は、副反応、逆反応、測定誤差の少ない範囲である転換
率10%(トランス−dl体の10%がエステル交換さ
れた時点)のときのE値である。E値は式:
【0126】
【数1】
【0127】で表わされる値であり、酵素それぞれに特
有の値である。
【0128】すなわち、E値がきまり、エステル交換の
転換率がきまれば、酵素の種類に関係なくエステル交換
反応後の光学異性体の比率が定まり、それから取得され
る結晶の光学純度、収率も予測することができることに
なる。
【0129】本発明の方法に用いる溶液を調製するのに
好ましいE値は20以上、さらには50以上である。前
記のごとき好ましいE値を有する酵素は、適宜実験的に
選択することができる。
【0130】酵素の使用量は、使用する酵素の種類、使
用形態などによっても異なるが、通常、光学異性体
(B)1g当たり、1×10〜1×105U、好ましく
は1×102〜1×104Uのオリーブ油加水分解活性を
有する量の酵素を使用するのが好ましい。
【0131】オリーブ油加水分解活性は、オリーブ油に
リパーゼが作用するときにエステル結合の切断に伴って
増加する脂肪酸の量を測定する脂肪消化力試験法(「医
薬品研究」Vol.11,No3 505−506(1
980))により求められる。
【0132】エステル交換反応は、適当な溶媒中または
無溶媒で実施することができ、溶媒としては、芳香族有
機溶媒(たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、
ハロゲン化芳香族有機溶媒(たとえば、クロロベンゼ
ン、ジクロロベンゼン)、脂肪族有機溶媒(たとえば、
ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン)、ハロゲン化脂
肪族有機溶媒(たとえば、ジクロロメタン、クロロホル
ム、四塩化炭素、トリクロロエタン)、ケトン系溶媒
(たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイ
ソブチルケトン)、エーテル系溶媒(たとえば、ジメチ
ルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテ
ル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフ
ラン、1,4−ジオキサン)、エステル系溶媒(たとえ
ば、酢酸エチル、酢酸ブチル)などをあげることがで
き、とりわけ、トルエン、キシレン、ヘキサン、四塩化
炭素、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピ
ルエーテルを用いるのが酵素の失活が少なく、反応速度
が速い点で好ましい。
【0133】基質である光学異性体(A)、(B)の濃
度は、概ね0.02〜3モル/L、とりわけ0.02〜
2モル/Lとするのが反応速度が速く、エステル交換反
応の設備を小型化できる点で好ましく、エステル交換用
アルコールの量は、光学異性体(B)1モルに対して
0.6〜10モル、好ましくは0.8〜5モルであるの
が酵素の失活を抑制し、反応速度を速めることができる
点で好ましい。
【0134】反応系中に水分が混入するとエステル交換
反応とともに加水分解反応がおこり、そののち本発明の
方法を適用したばあいに収率の低下が生じる。したがっ
て、酵素がエステル交換反応についての活性を示すため
に必要とする以上の水の存在を極力避けて反応させるこ
とが好ましい。また、溶媒によっては、加水分解物の溶
解度の低いものもあり、純度の低下にもつながることが
ある。
【0135】反応は常温ないし加温下、好ましくは10
〜50℃、とりわけ20〜40℃で好適に進行する。
【0136】エステル交換反応における転換率は、酵素
の立体選択性、光学異性体(A)の収率などに応じて適
宜選択することができ、また、基質であるトランス−3
−置換グリシッド酸エステル(I)、エステル(B′)
のエステル残基に応じ、酵素活性、反応温度、反応時間
などを変化させることにより自在に変えることができ
る。
【0137】従来法で純度の高い光学異性体(A)を収
率良くうるためには、酵素の選択性がある程度以上であ
ることが必要であるとともに、一般にエステル交換の転
換率をあげることも必要である。
【0138】しかし、エステル交換の転換率をあげるた
めには、反応が相当程度進行した段階で酵素反応液に少
量しか含まれない光学異性体(B)をエステル交換しな
ければならないため、多量の酵素、長時間の反応による
酵素の失活、不安定なトランス−3−置換グリシッド酸
エステル(I)の化学的分解、酵素の選択性が完全でな
いことに由来する光学異性体(A)の酵素的エステル交
換などを考えあわせると、高度に転換率をあげること
は、工業的には不可能である。
【0139】たとえば、特開平8−259552号公報
には、ラセミ型トランス−3−(4−メトキシフェニ
ル)グリシッド酸メチルエステルをセラチア マルセッ
センス由来のエステラーゼで不斉エステル交換すること
により、その(2S,3R)−異性体を(2S,3R)
−ブチルエステル/(2S,3R)−メチルエステルを
モル比で7.8/1とする((2S,3R)メチルエス
テル10.8gと(2S,3R)n−ブチルエステル1
01.85g)ことが記載されているが、基質1モル当
たり、5×105Uのエステラーゼを使用して、24時
間反応後、反応溶液が3分の1になるまで溶媒を減圧留
去し、さらに5×105Uのエステラーゼを添加して1
6時間反応させている。
【0140】このような方法は、反応時間が長すぎ、か
つ、操作が煩雑であるとともに、高価な酵素の使用量が
多すぎるため、実質的に工業的に使用することができな
い。
【0141】これに対し、本発明の方法によれば、たと
えば、セラチア マルセッセンスSr41(FERM
BP−487)由来のエステラーゼを使用したばあいに
は、ラセミ型トランス−3−(4−メトキシフェニル)
グリシッド酸メチルエステルからその(2S,3R)−
異性体の70%をn−ブチルエステルに転換する(エス
テル(B′)/光学異性体(B)=7/3)だけで(1
×105U、24時間反応)、反応後の混合物から純度
99%以上の(2R,3S)−3−(4−メトキシフェ
ニル)グリシッド酸メチルエステルを酵素反応に使用す
るラセミ体に含まれる(2R,3S)−異性体のうちの
80%以上を取得することができる。
【0142】なお、エステル交換に使用するラセミ体の
溶解度が低い溶媒を用いるため、反応開始から終了まで
結晶が析出しているばあいも本発明に含まれる。このば
あいには、エステル交換反応後、酵素とともに結晶を濾
別し、そののち酵素と結晶との分離を行なう一方、濾液
は別に冷却し、析出した結晶を濾別することにより、目
的物をえてもよく、また、エステル交換反応後、反応液
をそのまま冷却し、析出した結晶を酵素とともに濾別
し、ついで酵素と分離することによって目的物をえても
よい。
【0143】また、エステル交換反応を行なうだけでは
結晶は析出しないが、反応の途中で溶媒を留去させ、結
晶を析出させるばあいも本発明に含まれる。溶媒を途中
まで留去させたのちの結晶の単離は、前記と同様にして
行なえばよい。溶媒を大部分留去させたのち異なった溶
媒を加えて結晶の単離を行なうばあいにも同様にして行
なえばよい。溶媒を大部分留去させるばあいには、エス
テル交換反応により生成したアルコールも系外に除くこ
とができるため、のちのエステル交換反応がすすみやす
くなる。
【0144】このように、トランス−3−置換グリシッ
ド酸エステル(I)からその光学異性体を工業的に製造
するに際し、単独では実際上使用することができないと
考えられていたエステル交換法を、晶析法と組み合わせ
ることにより、エステル交換の転換率が低い段階で酵素
反応を停止させても、高純度、高収率で光学異性体
(A)がえられることを見出し、光学異性体(A)の工
業的に適用可能な製造方法としたことに本発明の方法の
特徴がある。
【0145】前記説明は、エステル(B′)が存在しな
ければ光学異性体(B)が結晶化するが、エステル
(B′)が存在するため光学異性体(A)は結晶化する
が光学異性体(B)は結晶化しない状態となるまで光学
異性体(A)の結晶化を行なうことにより、光学異性体
(A)を単離する方法であるが、従来から光学異性体
(A)を単離するのに使用されている条件でも光学異性
体(A)を析出させる際に、エステル(B′)を存在さ
せることによって溶液(ABB′)または溶液(AA′
BB′)から光学異性体(B)の析出を一層しにくくす
ることができるため、溶液(ABB′)または溶液(A
A′BB′)からの光学異性体(A)の析出量を従来法
に比べて増加させることができる。また、エステル交換
率の低い溶液(ABB′)または溶液(AA′BB′)
からでも従来法と比較して高い収率、高い純度で光学異
性体(A)を製造することができる。
【0146】たとえば、トランス−3−置換グリシッド
酸エステル(I)(光学異性体(A)および光学異性体
(B))を、光学異性体(B)とエステル残基のみが異
なるエステル(B′)を形成するアルコールおよび立体
選択的にエステル交換する能力を有する酵素、さらには
転換率10%におけるエステル交換反応についてのE値
が20以上の酵素、たとえばセラチア マルセッセンス
Sr41(FERMBP−487)由来のエステラーゼ
の存在下でエステル(B′)/光学異性体(B)がモル
比で13/7〜7.8/1、さらには2/1〜8/2に
なるようにエステル交換反応を行なってえられた溶液
(溶媒を交換した溶液であってもよい)から光学異性体
(A)の結晶化を行ない、最初の光学異性体(A)の量
に対して75%以上、さらには80%以上の収率で純度
99%以上の光学異性体(A)を単離することができ
る。
【0147】なお、前記溶媒を交換した溶液とは、エス
テル交換反応によって生成したアルコールを除去するた
めに、また反応途中で溶媒の全部または一部を交換した
溶液、エステル交換反応時にはエステル交換反応に適す
る溶媒を使用し、晶析時には晶析に適する溶媒を使用す
るために溶媒の全部または一部を交換した溶液などのこ
とであり、光学異性体(A)を高純度かつ高収率でうる
ことができるように適宜選べばよい。
【0148】なお、エステル交換反応を行なってえられ
た溶液には、エステル交換反応後、反応液から慣用の方
法(たとえば濾過、デカンテーション)により酵素を除
去してえられる溶液も含まれるものである。
【0149】このようにしてえられるトランス−3−置
換グリシッド酸エステルの光学異性体(A)として、た
とえば(2R,3S)−異性体を用い、常法、たとえば
特公昭46−16749号公報、特公昭63−1399
4号公報、特開平5−201865号公報、特開平2−
289558号公報、特公平2−28594号公報、ケ
ミカル アンド ファーマシューティカル ブレチン
(Chem. Pharm. Bull.)18(10),2028−20
37(1970)、特開平2−17168号公報、特開
平4−234866号公報、特開平5−222016号
公報、特開平4−221376号公報、特開平5−20
2013号公報、特開平2−17170号公報、特開平
2−286672号公報、特開平6−279398号公
報、特開昭58−99471号公報、特開平8−269
026号公報、特開昭61−118377号公報、特開
平6−228117号公報、特開平2−78673号公
報、欧州特許出願公開第796853号明細書(199
4)、オランダ王国特許出願公開第1006293号明
細書(1997)などに記載の方法にしたがって、一般
式(IV):
【0150】
【化16】
【0151】(式中、環Bは前記と同じ、R4は水素原
子、2−(ジメチルアミノ)エチル基または
【0152】
【化17】
【0153】)で表わされるアミノチオフェノール誘導
体(たとえば2−アミノチオフェノール、2−アミノ−
5−クロロチオフェノール、2−アミノ−5−ベンジル
チオフェノール、2−(ジメチルアミノエチルアミノ)
チオフェノール、一般式:
【0154】
【化18】
【0155】(式中、環Bは前記と同じ)で表わされる
化合物など)と反応させるか、または一般式(V):
【0156】
【化19】
【0157】(式中、環Bは前記と同じ)で表わされる
ニトロチオフェノール誘導体(たとえば2−ニトロチオ
フェノール、2−ニトロ−5−クロロチオフェノール、
2−ニトロ−5−ベンジルチオフェノールなど)と反応
後、ニトロ基を還元して、一般式(VI):
【0158】
【化20】
【0159】(式中、環A、環B、R1およびR4は前記
と同じ)で表わされる(2S,3S)−3−(2−アミ
ノフェニルチオ)−3−フェニル−2−ヒドロキシプロ
ピオン酸エステル類を製造し、必要であれば加水分解し
たのち、分子内閉環して一般式(VII):
【0160】
【化21】
【0161】(式中、環A、環BおよびR4は前記と同
じ)で表わされる(2S,3S)−2−フェニル−3−
ヒドロキシ−1,5−ベンゾチアゼピン誘導体とし、こ
の化合物を、任意の順序で、5位チッ素原子をジメチル
アミノエチル化し、3位に置換した水酸基をアセチル化
して、一般式(II):
【0162】
【化22】
【0163】(式中、環A、環BおよびR2は前記と同
じ)で表わされる(2S,3S)−1,5−ベンゾチア
ゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩を製造す
ることができる。前記合成経路を以下に示す。
【0164】
【化23】
【0165】一般式(II)で表わされる(2S,3S)
−1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその薬理的に
許容しうる塩の具体例としては、たとえば(2S,3
S)−2−(4−メトキシフェニル)−3−アセトキシ
−5−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2,3−ジ
ヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン
(ジルチアゼム)、(2S,3S)−2−(4−メトキ
シフェニル)−3−アセトキシ−5−[2−(ジメチル
アミノ)エチル]−8−クロロ−2,3−ジヒドロ−
1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オン、(2
S,3S)−3−アセトキシ−5−[3−[4−(2−
メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]プロピル]−
2,3−ジヒドロ−2−(4−メトキシフェニル)−8
−クロロ−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オ
ン、(2S,3S)−3−アセトキシ−8−ベンジル−
2,3−ジヒドロ−5−(2−ジメチルアミノエチル)
−2−(4−メトキシフェニル)−1,5−ベンゾチア
ゼピン−4(5H)−オンや、それらの薬理的に許容し
うる塩などがあげられる。
【0166】一方、トランス−3−置換グリシッド酸エ
ステル類の光学異性体(A)としてたとえば(2S,3
R)−異性体を用い、常法、たとえば前述の(2R,3
S)−異性体を用いて一般式(II)で表わされる(2
S,3S)−1,5−ベンゾチアゼピン誘導体を製造す
るのに採用しうる既知方法にしたがって一般式(IV)で
表わされるアミノチオフェノール誘導体と反応させる
か、または一般式(V)で表わされるニトロチオフェノ
ール誘導体と反応後、生成物のニトロ基を還元して、一
般式(VIII):
【0167】
【化24】
【0168】(式中、環A、環BおよびR1は前記と同
じ)で表わされる(2R,3R)−3−(2−アミノフ
ェニルチオ)−3−フェニル−2−ヒドロキシプロピオ
ン酸エステル類を製造し、必要であれば加水分解したの
ち、分子内閉環して一般式(IX):
【0169】
【化25】
【0170】(式中、環A、環Bは前記と同じ)で表わ
される(2R,3R)−2−フェニル−3−ヒドロキシ
−1,5−ベンゾチアゼピン誘導体とし、この化合物
を、任意の順序で、5位チッ素原子をジメチルアミノエ
チル化し、3位に置換した水酸基をアセチル化すること
により、一般式(III):
【0171】
【化26】
【0172】(式中、環A、環Bは前記と同じ)で表わ
される(2R,3R)−1,5−ベンゾチアゼピン誘導
体に導くことができる。前記合成経路を以下に示す。
【0173】
【化27】
【0174】一般式(III)で表わされる(2R,3
R)−1,5−ベンゾチアゼピン誘導体またはその薬理
的に許容しうる塩の具体例としては、たとえば(2R,
3R)−シス−2−(4−メチルフェニル)−3−アセ
トキシ−5−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−8−
メチル−2,3−ジヒドロ−1,5−ベンゾチアゼピン
−4(5)−オンや、それらの薬理的に許容しうる塩な
どがあげられる。
【0175】さらに、本発明の製造方法でえられるトラ
ンス−3−置換グリシッド酸エステルの光学異性体
(A)を出発原料として用い、従来既知の方法により、
光学分割剤として有用な一般式:
【0176】
【化28】
【0177】(式中、環Aおよび環Bは前記と同じ、*
は不斉炭素原子を表わす)で示される光学活性トレオ−
ニトロカルボン酸化合物を製造することもできる。
【0178】かかる光学活性トレオ−ニトロカルボン酸
化合物の製法において、環Aおよび環Bは前記1,5−
ベンゾチアゼピン誘導体の製造方法におけるものと同様
のものをあげることができるが、環Aが4−低級アルコ
キシフェニル基、環Bが式:
【0179】
【化29】
【0180】(式中、Halはハロゲン原子を表わす)
で示される置換ベンゼン環であるばあいが好ましく、環
Aが4−メトキシフェニル基、環Bは前記式においてH
alが塩素原子であるものがとりわけ好ましい。
【0181】具体的には、たとえば、トランス−3−置
換グリシッド酸エステルの光学異性体(A)を、特公昭
61−18549号などに記載された方法により、一般
式:
【0182】
【化30】
【0183】(式中、環Bは前記と同じ)で示されるニ
トロチオフェノール化合物と反応させた後、生成物をケ
ミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレチン
(Chem. Pharm. Bull.)18(1
0),2028−2037(1970)記載の方法に従
って生成物を加水分解することにより、実施することが
できる。
【0184】この方法では、トランス−3−置換グリシ
ッド酸エステルの(2R,3S)体を使用すれば、トレ
オ−ニトロカルボン酸化合物の(2S,3S)体をえる
ことができ、トランス−3-置換グリシッド酸エステルの
(2S,3R)体を使用すれば、トレオ−ニトロカルボ
ン酸の(2R,3R)体をえることができる。
【0185】なお、本明細書における直鎖または分枝鎖
低級アルキル基とは、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖
アルキル基のことであり、また、直鎖または分枝鎖低級
アルコキシ基とは、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖ア
ルコキシ基のことであり、さらに、シクロアルキル基と
は、炭素数3〜6のシクロアルキル基のことであり、そ
して、アリール基とは、炭素数6〜10のアリール基の
ことである。
【0186】また、本明細書における直鎖または分枝鎖
アルキル基とは、炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖ア
ルキル基のことであり、アルコキシアルキル基とは、ア
ルコキシ基の炭素数が1〜6でアルキル基の炭素数が1
〜6のアルコキシアルキル基のことであり、また、アリ
ールアルキル基とは、アリール基の炭素数が6〜10で
アルキル基の炭素数が1〜6のアリールアルキル基のこ
とである。
【0187】
【実施例】つぎに本発明を実験例などに基づいてさらに
詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0188】実験例1 表1記載の量の(2R,3S)−3−(4−メトキシフ
ェニル)グリシッド酸メチルエステル(以下、MPGM
という)、(2S,3R)−MPGM、(2S,3R)
−MPGR3((2S,3R)−MPGMのメチルエス
テルをR3エステルにしたもの、R3=n−プロピル基、
n−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジ
ル基、シクロヘキシル基、2−オクチル基)およびメタ
ノール30mlを300mlのナスフラスコに入れ、昇
温して溶解し、マグネチックスターラーで撹拌しながら
−15℃まで冷却した。−15℃になったのち5分間静
置し、上澄液中の各成分の濃度をHPLCで測定し,
溶液量を換算して上澄液中における各成分の量を求め
た。また、(晶析前(2R,3S)−MPGM量−上澄
液中(2R,3S)−MPGM量)を結晶析出量として
求めた。結果を表1に示す。
【0189】なお、析出した結晶の一部をサンプリング
し、濾過後、結晶と等量のメタノール(−15℃)で洗
浄し、真空乾燥させたのち、HPLCで純度を調べた結
果、いずれも(2R,3S)−MPGMの含有率は99
%以上であった。
【0190】*:HPLC 条件 カラム充填剤:キラルセル(CHIRALCEL)OD
(ダイセル化学工業(株)製) 展開溶媒:ヘキサン−イソプロパノール(20:1) 流速:1.0ml/min カラム温度:40℃ 検出:237nmの紫外線吸収
【0191】
【表1】
【0192】実験例2 表2〜表7に記載の量の(2R,3S)−MPGM、
(2S,3R)−MPGM、(2S,3R)−MPGn
Bu((2S,3R)−MPGMのメチルエステルをn
−ブチルエステルにかえたもの)およびメタノール30
mlを300mlナスフラスコに入れ、2.5cmマグ
ネチックスターラー、300rpmで撹拌して溶解させ
たのち、表2〜表7に記載の温度に冷却し、所定時間
(0、0.5、1時間)経過後撹拌を止め、上澄液をサ
ンプリングし、その濃度をHPLCで測定し、溶液量を
換算して上澄液中の量を求めた。また、(晶析前(2
R,3S)−MPGM量−上澄液中(2R,3S)−M
PGM量)を結晶析出量として求めた。
【0193】白濁時間は晶析温度にしたのち、白濁を生
じるまでの時間を示し、上澄液中の各異性体の量は白濁
を生じる前に採取したサンプルのHPLC測定より求め
た。
【0194】(a)(2S,3R)−MPGnBu/
(2S,3R)−MPGM=1.7(モル比)
【0195】
【表2】
【0196】(b)(2S,3R)−MPGnBu/
(2S,3R)−MPGM=2.0(モル比)
【0197】
【表3】
【0198】(c)(2S,3R)−MPGnBu/
(2S,3R)−MPGM=2.2(モル比)
【0199】
【表4】
【0200】(d)(2S,3R)−MPGnBu/
(2S,3R)−MPGM=2.4(モル比)
【0201】
【表5】
【0202】(e)(2S,3R)−MPGnBu/
(2S,3R)−MPGM=2.7(モル比)
【0203】
【表6】
【0204】(f)(2S,3R)−MPGnBu/
(2S,3R)−MPGM=3.8(モル比)
【0205】
【表7】
【0206】実験例3 表8記載の量の(2R,3S)−MPGM、(2S,3
R)−MPGM、(2S,3R)−MPGnBuと、表
8記載の量の表8記載の溶媒とを1000mlナスフラ
スコに入れ、2.5cmマグネチックスターラー、30
0rpmで撹拌して溶解させたのち、表8記載の温度に
冷却後、すぐに撹拌を止め、上澄液をサンプリングし、
その濃度をHPLCで測定し、溶液量を換算して上澄液
中の量を求めた。また、(晶析前(2R,3S)−MP
GM量−上澄液中(2R,3S)−MPGM量)を結晶
析出量として求めた。結果を表8に示す。
【0207】なお、析出した結晶の一部をサンプリング
し、濾過後、結晶と等量のメタノール(−10℃)で洗
浄し、真空乾燥したのちHPLCで純度を調べたとこ
ろ、いずれも(2R,3S)−MPGMの含有率は99
%以上であった。
【0208】
【表8】
【0209】実験例4 表9に記載の量の(2R,3S)−MPGM、(2S,
3R)−MPGM、(2S,3R)−MPGnBuおよ
び表9記載の量のメタノールを300mlナスフラスコ
に入れ、2.5cmマグネチックスターラー、300r
pmで撹拌して溶解させたのち、−10℃に冷却して1
時間撹拌後,撹拌を止め上澄液をサンプリングし、その
濃度をHPLCで測定し、溶液量を換算して上澄液中の
各異性体の量を求めた。析出晶を濾取し、結晶と等量の
メタノールを用い、−10℃で洗浄することにより結晶
を取得し、HPLCで組成を調べた。結果を表9に示
す。
【0210】
【表9】
【0211】実験例5 表10記載の量の(2R,3S)−MPGM、(2S,
3R)−MPGM、(2R,3S)−MPGnBu、
(2S,3R)−MPGnBuおよびメタノール30m
lを300mlナスフラスコに入れ、2.5cmマグネ
チックスターラー、300rpmで撹拌して溶解させた
のち、30分かけて−15℃まで冷却後,2時間経過後
撹拌を止めて上澄液をサンプリングし、その濃度をHP
LCで測定し,溶液量を換算して上澄液中の量を求め
た。また、(晶析前(2R,3S)−MPGM量−上澄
液中(2R,3S)−MPGM量)を結晶析出量として
求めた。結果を表10に示す。
【0212】なお、析出した結晶の一部をサンプリング
し、結晶と等量のメタノールを用い、−15℃で洗浄
し、真空乾燥後、HPLCで組成を調べた。
【0213】
【表10】
【0214】実験例6 (2R,3S)−MPGM 10.4g、(2S,3
R)−MPGM 10.4g、(2S,3R)−MPG
nBu 40.5gおよびメタノール150mlからな
る溶液を500mlナスフラスコに入れ、2.5cmマ
グネチックスターラー、300rpmで撹拌し、30分
かけて−10℃まで冷却し10分撹拌した。析出した結
晶を濾取し、10mlのメタノール(−10℃)で洗浄
したのち真空乾燥し、HPLCで組成を調べた。その結
果、(2R,3S)−MPGMを99%以上含む結晶
4.5g(晶析前の(2R,3S)−MPGMから43
%の収率)を単離できた。
【0215】また、結晶取得後、母洗液の洗液に相当す
るメタノール10mlを濃縮留去したのち、−10℃に
冷却して(2S,3R)−MPGMの種晶を添加してそ
のまま30分撹拌すると、液が濁りアモルファス状物が
析出した。析出したアモルファス状物を濾取し、その組
成をHPLCで測定したところ、種晶と同じ配置の(2
S,3R)−MPGMを最も多く含むが、(2R,3
S)−MPGMもほぼ同量、さらに(2S,3R)−M
PGnBuを(2S,3R)−MPGMの約2/3含む
固体であることがわかった。
【0216】実験例7 (2RS,3SR)−MPGM 104g(0.5モ
ル)((2R,3S)−MPGM 52g、(2S,3
R)−MPGM 52gを含む)をキシレン500m
l、n−ブタノール80ml、水0.25mlの混液に
溶解後、参考例1−(2−b)でえられたセラチア マ
ルセッセンス由来のエステラーゼ200mg(オリーブ
油分解活性4×104U)を懸濁し、30℃で24時間
撹拌した。反応液をHPLCで分析したところ、(2
R,3S)−MPGM 50g、(2S,3R)−MP
GM 13.5gおよび(2S,3R)−MPGnBu
44gからなることがわかった。
【0217】反応液から濾紙を用いて酵素を濾去したの
ち、60〜70℃、減圧で濃縮して溶媒をすべて留去す
るとオイル状の残渣がえられた。濃縮残査にメタノール
150mlを添加し、撹拌すると結晶が析出した。さら
に晶析率をあげるために、この液を−15℃まで冷却
し、−15℃に達したのち30分撹拌し、ついで、析出
晶を濾取し、−15℃に冷却したメタノール40mlで
洗浄した。えられた結晶を真空乾燥し、(2R,3S)
−MPGM 44.2gをえた。このときの母洗液をH
PLCで分析した結果、(2R,3S)−MPGM 6
g、(2S,3R)−MPGM 13.5gおよび(2
S,3R)−MPGnBu 44gからなることがわか
った。
【0218】収率:85.0%(仕込みラセミ体中の
(2R,3S)−MPGMを100%としたときの値) (2R,3S)−MPGMの含有率:99%以上 実験例8 (2RS,3SR)−MPGM 20.8g((2R,
3S)−MPGM10.4g、(2S,3R)−MPG
M 10.4gを含む)、n−ブタノール16ml、キ
シレン100ml、参考例1−(2−b)でえられたセ
ラチア マルセッセンス由来のエステラーゼ10mg
(オリーブ油分解活性2×103U)、水25μl、温
度30℃の条件で酵素反応を表11記載のエステル交換
率になるまで行なったのち、濾紙を用いて酵素を濾別
し、60〜70℃、減圧で濃縮して溶媒を留去してオイ
ル状の残渣をえた。
【0219】えられた残渣にメタノール30mlを添加
し、300mlナスフラスコ中、2.5cmマグネチッ
クスターラー、300rpmで撹拌し、−10℃に冷却
後撹拌を止め、上澄液をサンプリングし、その化合物濃
度をHPLCで測定し、溶液量を換算して上澄液中の量
を求めた。また、(晶析前(2R,3S)−MPGM量
−上澄液中(2R,3S)−MPGM量)を、結晶析出
量として求めた。結果を表11に示す。
【0220】なお、析出した結晶の一部をサンプリング
し、濾過し、結晶と等量のメタノール(−10℃)で洗
浄し、真空乾燥したのちHPLCで調べた結果、いずれ
も(2R,3S)−MPGMの含有率は99%以上であ
った。
【0221】
【表11】
【0222】実験例9 (2RS,3SR)−MPGM 104g(0.5モ
ル)((2R,3S)−MPGM 52g、(2S,3
R)−MPGM 52gを含む)をキシレン500m
l、n−ブタノール80mlの混液に溶解後、参考例1
−(2−a)でえられたセライト固定化エステラーゼ
3.0g(オリーブ油分解活性2.5×104U)を懸
濁し、30℃で24時間撹拌した。反応液をHPLCで
分析した結果、組成は(2R,3S)−MPGM 51
g、(2S,3R)−MPGM 14.7gおよび(2
S,3R)−MPGnBu 38gからなることがわか
った。
【0223】反応液から濾紙を用いてセライト固定化エ
ステラーゼを濾別したのち、60〜70℃、減圧で濃縮
して溶媒をすべて留去するとオイル状の残渣がえられ
た。濃縮残査にメタノール 150mlを添加し、撹拌
すると結晶が析出した。さらに晶析率をあげるためにこ
の液を−10℃まで冷却し、−10℃に達したのち30
分撹拌したのち、析出晶を濾別し、−10℃に冷却した
メタノール40mlで洗浄した。えられた結晶を真空乾
燥し、(2R,3S)−MPGM 43.1gをえた。
このときの母洗液をHPLCで分析した結果、(2R,
3S)−MPGM7g、(2S,3R)−MPGM 1
4.7gおよび(2S,3R)−MPGnBu 38g
からなることがわかった。
【0224】収率:82.9%(仕込みラセミ体中の
(2R,3S)−MPGMを100%としたときの値) (2R,3S)−MPGMの含有率:99%以上 実験例10 (1)(2RS,3SR)−MPGM20gおよび(2
S,3R)−MPGnBu 41gをメタノール 150
mlに約30〜40℃で溶解した。この溶液を撹拌下冷
却し、0℃で(2R,3S)−MPGMの種晶10mg
を添加し、−10℃まで30分かけて冷却した後、同温
度で10分間撹拌した。析出晶をグラスフィルターで濾
取し、−10℃のメタノール20mlで洗浄した後、真
空乾燥し、(2R,3S)−MPGMをえた。また、濾
液および洗液を併せて、(2R,3S)−MPGM、
(2S,3R)−MPGMおよび(2S,3R)−MP
GnBuを含むメタノール溶液をえた。
【0225】(2)前記メタノール溶液にメタノール1
00mlおよびジイソプロピルアミン10mlを添加
し、30℃で16時間撹拌することにより、(2S,3
R)−MPGnBuは(2S,3R)−MPGMに変換
された。
【0226】(3)反応液を0℃で、30分間静置し、
析出した(2S,3R)−MPGMの結晶をろ取し、5
℃のメタノール40mlで洗浄した。母液を減圧濃縮す
ることにより、(2S,3R)−MPGMおよび(2
R,3S)−MPGMをほぼ等量含む残査をえた。
【0227】(4)残査に(2RS,3SR)−MPG
Mの全量が約20gになるように、(2RS,3SR)
−MPGMを添加し、さらに、(2S,3R)−MPG
nBuおよびメタノールを加えて前記(1)の工程に付
した。
【0228】前記(1)〜(4)の工程を3回繰り返し
た結果を表12に示す。
【0229】
【表12】
【0230】前記3回の繰り返しにより、(2R,3
S)−MPGMを合計16.2gえることができ、ま
た、各回でえられた(2R,3S)−MPGMはいずれ
も純度98%以上、光学純度97%以上であった。
【0231】また、光学異性体として使用した(2S,
3R)−MPGnBuよりも、モル数の多い(2S,3
R)−MPGMを結晶として取得することができるた
め、えられる(2S,3R)−MPGMのうち、(2
S,3R)−MPGnBuとして必要な量だけを化学的
エステル交換して(2S,3R)−MPGnBuとすれ
ば、高純度の(2S,3R)−MPGMも取得すること
ができる。
【0232】実験例11 2Lの撹拌装置付反応容器に(2RS,3SR)−MP
GM187g(0.9モル)[(2R,3S)−MPG
M93.5gおよび(2S,3R)−MPGM93.5
gを含む]をキシレン720mlおよびn−ブタノール
57.6ml(0.9モル)の混液に溶解する。この溶
液に、参考例1−(2−a)でえられたセライト固定化
エステラーゼ3.0g(予め精製水0.81mlを加え
たもの、オリーブ油分解活性2.5×104U)を懸濁
し、15mmHgの減圧下、30℃で4時間撹拌した。
反応液をHPLCで分析した結果、(2R,3S)−M
PGM91.6g、(2S,3R)−MPGM24.3
gおよび(2S,3R)−MPGnBu83.2gから
なることがわかった。
【0233】反応液からセライト固定化エステラーゼを
濾別した後、濾液を60〜70℃で減圧濃縮することに
よりオイル状の残査がえられた。残査にメタノール15
0mlを添加し、撹拌下、−10℃まで冷却し、−10
℃に達したのち、さらに30分撹拌して結晶を析出させ
た。析出晶を濾取し、−10℃のメタノールで洗浄後、
結晶を真空乾燥することにより、(2R,3S)−MP
GM82.3gをえた(純度99%以上)。母液および
洗液を併せ、HPLCで分析した結果、(2R,3S)
−MPGM9.1g、(2S,3R)−MPGM24.
1gおよび(2S,3R)−MPGnBu83.0gを
含むことがわかった。
【0234】参考例1 (1)デキストリン1%、硫酸アンモニウム0.2%、
ミーストS(アサヒビール(株)製)2%、リン酸一カ
リウム0.2%、硫酸マグネシウム0.05%、硫酸第
一鉄0.001%、span85(ソルビタン トリオ
レエート界面活性剤、花王(株)製、レオドールSP−
300 1.5%w/vおよびポリアルキレングリコー
ル誘導体系界面活性剤(カラリン102、三洋化成工業
(株)製)0.2%v/vよりなる液体培地18L(p
H7.0)を30L容ジャーファメンターに入れ,滅菌
後、予め同培地で27.5℃、20時間往復振盪培養し
たセラチア マルセッセンスSr41(FERM BP
−487)の前培養液200mlを接種し、25℃で
0.33vvm、0.5kg/cm2・G、300rp
mの条件下で、L−プロリン1.5%を連続添加しなが
ら28時間培養した。この培養液10Lを遠心除菌後、
吸着樹脂SP207(三菱化学(株)製)にて不純物を
除去した。えられた上澄液は、限外濾過膜(SLP10
53、旭化成工業(株)製)を用いて1Lまで濃縮後、
1.0×104U/mlのオリーブ油分解活性を持つエ
ステラーゼ1080mlをえた。
【0235】(2−a)前記(1)でえた濃縮酵素液3
0mlを500ml容ナス型フラスコに入れたセライト
(セライトコーポレーション製、California, USA)3
0gに浸みこませたのち、均一に混ぜた。ロータリーエ
バポレーターを用いて外温30℃で減圧乾燥し、8.2
U/mgの活性を有するセライト固定化エステラーゼ3
6.5gをえた。
【0236】(2−b)前記(1)でえた濃縮酵素液1
000mlを凍結乾燥して、1.96×105U/gの
オリーブ油分解活性を有するエステラーゼ54gをえ
た。
【0237】参考例2 2%ポリビニルアルコール(商品名:ポバール117、
(株)クラレ製)225mlと局方オリーブ油75ml
の混液を5〜10℃にて10分間、14,500rpm
で乳化し、えられたオリーブ油乳化液5.0mlと0.
25Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)4.0ml
(2.5mM塩化カルシウムを含む)を37℃で10分
間予熱しておいた。これに1mlの酵素液を加え、37
℃で20分間反応させたのち、アセトン−エタノール混
液(1:1)20mlを加えて反応を停止し、フェノー
ルフタレインを指示薬として0.05NNaOH溶液で
滴定した。以上の方法で1分間に1μモルの脂肪酸を遊
離する酵素量を1ユニットとした。
【0238】
【発明の効果】本発明によると、トランス−3−フェニ
ルグリシッド酸エステル類の光学異性体混合物を含む溶
液から、所望の光学異性体の結晶を純度良く、かつ、母
液中の所望の光学異性体の濃度が従来法よりもはるかに
低くなるまで結晶化させることができる。また、ラセミ
型トランス−3−フェニルグリシッド酸エステル類を酵
素で不斉エステル交換後、反応生成物から所望の光学異
性体を純度良く、かつ、母液中の所望の光学異性体の濃
度が従来法よりもはるかに低くなるまで結晶化させるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における光学異性体(A)、光学異性体
(B)およびエステル(B′)を溶解した溶液から、エ
ステル(B′)が存在しなければ光学異性体(B)が析
出するが、エステル(B′)が存在するため光学異性体
(A)は析出するが光学異性体(B)は析出しない状態
を、本発明に使用する特定の溶液a(光学異性体
(A)、光学異性体(B)およびエステル(B′)の比
率ならびに溶媒、濃度が一定で光学異性体(A)の濃度
>光学異性体(B)の濃度、エステル(B′)は光学異
性体(B)の結晶化を抑制するのに充分な量含有されて
いる溶液)について温度および時間を変数としたばあい
の関係を説明するためのグラフである。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12N 9/16 C12N 9/16 // A61K 31/5513 A61K 31/5513 A61P 25/22 A61P 25/22 (C12N 9/16 C12R 1:43 C12R 1:43) C07M 7:00 C07M 7:00 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 303/00 - 303/48 C07D 301/00 - 301/32 C12N 9/00 - 9/16

Claims (29)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I): 【化1】 (式中、環Aは置換または非置換のベンゼン環、R1
    エステル残基を示す)で表わされるトランス−3−置換
    グリシッド酸エステルの2位、3位不斉炭素に基づく、
    1つの光学異性体(A)、他の光学異性体(B)および
    光学異性体(B)とエステル残基のみが異なるエステル
    (B′)を溶解した溶液[ただし、光学異性体(B)の
    エステル残基がメチル基またはエチル基であり、エステ
    ル(B′)のエステル残基が光学異性体(B)のエステ
    ル残基よりも炭素数が多い直鎖または分枝鎖アルキル
    基、アルコキシ基(これらの基はハロゲン原子で置換さ
    れていてもよい)、アリールアルキル基(この基は直鎖
    もしくは分枝鎖低級アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖低
    級アルコキシ基またはハロゲン原子で置換されていても
    よい)、シクロヘキシル基である]から、エステル
    (B′)が存在しなければ光学異性体(B)が析出する
    が、エステル(B′)が存在するため光学異性体(A)
    は析出するが光学異性体(B)は析出しない状態となる
    まで光学異性体(A)の結晶化を行ない単離することを
    特徴とする光学異性体(A)の製造方法。
  2. 【請求項2】 光学異性体(A)、光学異性体(B)お
    よびエステル(B′)以外に、さらに光学異性体(A)
    とエステル残基のみが異なり、エステル(B′)と同じ
    エステル残基を有するエステル(A′)を少量含んでい
    てもよい溶液から光学異性体(A)の結晶化を行なう請
    求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 溶液において光学異性体(A)/光学異
    性体(B)がモル比で4/6〜10/1で、エステル
    (B′)/光学異性体(B)がモル比で5/3〜10/
    1である請求項1記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 溶液においてエステル(A′)/光学異
    性体(A)のモル比がエステル(B′)/光学異性体
    (B)のモル比の9/35以下である請求項2記載の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 光学異性体(A)の製造に使用する溶媒
    が、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン原子
    で置換されていてもよい芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲ
    ン原子で置換されていてもよい脂肪族炭化水素系溶媒、
    エステル系溶媒である請求項1、2、3または記載の
    製造方法。
  6. 【請求項6】 光学異性体(A)の結晶化を行ない単離
    する際の温度が−30〜+15℃、結晶化前の溶液にお
    ける光学異性体(A)の濃度が0.5〜4モル/Lであ
    る請求項1、2、3、4または記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 エステル(B′)を形成するアルコール
    を含み、かつ、光学異性体(A)および光学異性体
    (B)を溶解させた溶液中、立体選択的にエステル交換
    する能力を有する酵素の存在下で光学異性体(B)のエ
    ステル交換反応を行なってえられた溶液(溶媒を交換し
    た溶液であってもよい)を、光学異性体(A)の結晶化
    および単離を行なう溶液として使用する請求項1、2、
    3、4、5または記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 酵素が、転換率10%におけるエステル
    交換反応についてのE値が20以上の酵素である請求項
    記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 エステル(B′)を形成するアルコール
    を含み、かつ、光学異性体(A)および光学異性体
    (B)を溶解させた溶液中、立体選択的にエステル交換
    する能力を有する酵素の存在下でエステル(B′)/光
    学異性体(B)がモル比で5/3〜10/1になるよう
    にエステル交換反応を行なってえられた溶液(溶媒を交
    換した溶液であってもよい)を光学異性体(A)の結晶
    化および単離を行なう溶液として使用する請求項記載
    の製造方法。
  10. 【請求項10】 光学異性体(A)の絶対配置が(2
    R,3S)、光学異性体(B)の絶対配置が(2S,3
    R)である請求項1、2、3、4、5、6、7、8ま
    記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 環Aが4−メトキシフェニル基であ
    り、光学異性体(B)のエステル残基がメチル基であ
    り、エステル(B′)のエステル残基がn−ブチル基で
    ある請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または
    10記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 一般式(I): 【化2】 (式中、環Aは置換または非置換のベンゼン環、R1
    エステル残基を示す)で表わされるトランス−3−置換
    グリシッド酸エステルの2位、3位不斉炭素に基づく1
    つの光学異性体(A)および他の光学異性体(B)を、
    光学異性体(B)とエステル残基のみが異なるエステル
    (B′)を形成するアルコールおよび立体選択的にエス
    テル交換する能力を有する酵素の存在下でエステル
    (B′)/光学異性体(B)がモル比で13/7〜7.
    8/1になるようにエステル交換反応を行なってえられ
    た溶液[ただし、光学異性体(B)のエステル残基がメ
    チル基またはエチル基であり、エステル(B′)のエス
    テル残基が光学異性体(B)のエステル残基よりも炭素
    数が多い直鎖または分枝鎖アルキル基、アルコキシ基
    (これらの基はハロゲン原子で置換されていてもよ
    い)、アリールアルキル基(この基は直鎖もしくは分枝
    鎖低級アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖低級アルコキシ
    基またはハロゲン原子で置換されていてもよい)、シク
    ロヘキシル基であり、溶媒を交換した溶液であってもよ
    から光学異性体(A)の結晶化を行ない、最初の光
    学異性体(A)の量に対して75%以上の収率で光学純
    度99%以上の光学異性体(A)を単離することを特徴
    とする光学異性体(A)の製造方法。
  13. 【請求項13】 酵素が、転換率10%におけるエステ
    ル交換反応についてのE値が20以上の酵素である請求
    12記載の製造方法。
  14. 【請求項14】 光学異性体(A)の絶対配置が(2
    R,3S)、光学異性体(B)の絶対配置が(2S,3
    R)である請求項12または13記載の製造方法。
  15. 【請求項15】 酵素がセラチア マルセッセンス由来
    のエステラーゼであり、エステル(B′)/光学異性体
    (B)がモル比で2/1〜8/2であり、光学異性体
    (A)の収率が80%以上である請求項12記載の製造
    方法。
  16. 【請求項16】 環Aが4−メトキシフェニル基であ
    り、光学異性体(B)のエステル残基がメチル基であ
    り、エステル(B′)のエステル残基がn−ブチル基で
    ある請求項121314または15記載の製造方
    法。
  17. 【請求項17】 (a)一般式(I): 【化3】 (式中、環Aは置換または非置換ベンゼン環、R1はエ
    ステル残基を示す)で表わされるトランス−3−置換グ
    リシッド酸エステルの2位、3位不斉炭素に基づく、1
    つの光学異性体(A)、他の光学異性体(B)および光
    学異性体(B)とエステル残基のみが異なるエステル
    (B′)を溶解した溶液[ただし、光学異性体(B)の
    エステル残基がメチル基またはエチル基であり、エステ
    ル(B′)のエステル残基が光学異性体(B)のエステ
    ル残基よりも炭素数が多い直鎖または分枝鎖アルキル
    基、アルコキシ基(これらの基はハロゲン原子で置換さ
    れていてもよい)、アリールアルキル基(この基は直鎖
    もしくは分枝鎖低級アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖低
    級アルコキシ基またはハロゲン原子で置換されていても
    よい)、シクロヘキシル基である]を調製し、 (b)この溶液から、エステル(B′)が存在しなけれ
    ば光学異性体(B)が析出するが、エステル(B′)が
    存在するため光学異性体(A)は析出するが光学異性体
    (B)は析出しない状態となるまで、光学異性体(A)
    の結晶化を行ない、 (c)光学異性体(A)の結晶を単離し、 (d)光学異性体(A)および光学異性体(B)ととも
    に母液中に存在する、エステル(B′)を化学的にエス
    テル交換して光学異性体(B)としたのち、光学異性体
    (B)の結晶化を行ない単離し、 (e)一般式(I)で表わされるトランス−3−置換グ
    リシッド酸エステルおよびエステル(B′)を母液に加
    えて工程(b)の結晶化に供する溶液とし、 (f)前記工程(b)、(c)、(d)および(e)を
    この順序で繰り返すことを特徴とする光学異性体(A)
    および光学異性体(B)の製造方法。
  18. 【請求項18】 工程(d)において、さらに反応液に
    光学異性体(A)とエステル残基のみが異なり、エステ
    ル(B′)と同じエステル残基を有するエステル
    (A′)を加え、工程(e)において母液に含まれるエ
    ステル(A′)を化学的にエステル交換して光学異性体
    (A)に戻す請求項17記載の製造方法。
  19. 【請求項19】 工程(a)において、光学異性体
    (A)、光学異性体(B)およびエステル(B′)以外
    に、さらに光学異性体(A)とエステル残基のみが異な
    り、エステル(B′)と同じエステル残基を有するエス
    テル(A′)を少量含んでいてもよい溶液から光学異性
    体(A)の結晶化を行なう請求項17または18記載の
    製造方法。
  20. 【請求項20】 光学異性体(B)のエステル残基がメ
    チル基またはエチル基であり、エステル(B′)のエス
    テル残基が光学異性体(B)のエステル残基よりも炭素
    数が多い直鎖または分枝鎖アルキル基、アルコキシアル
    キル基(これらの基はハロゲン原子で置換されていても
    よい)、アリールアルキル基(この基は直鎖もしくは分
    枝鎖低級アルキル基、直鎖もしくは分枝鎖低級アルコキ
    シ基またはハロゲン原子で置換されていてもよい)であ
    る請求項1718または19記載の製造方法。
  21. 【請求項21】 工程(a)における溶液において光学
    異性体(A)/光学異性体(B)がモル比で4/6〜1
    0/1で、エステル(B′)/光学異性体(B)がモル
    比で5/3〜10/1である請求項17記載の製造方
    法。
  22. 【請求項22】 工程(a)における溶液において光学
    異性体(A)/光学異性体(B)がモル比で4/6〜1
    0/1で、エステル(B′)/光学異性体(B)がモル
    比で5/3〜10/1であり、工程(d)におけるエス
    テル(A′)の添加量が、溶液におけるエステル
    (A′)/光学異性体(A)がモル比で5/3〜10/
    1である請求項18記載の製造方法。
  23. 【請求項23】 工程(a)における溶液においてエス
    テル(A′)/光学異性体(A)のモル比がエステル
    (B′)/光学異性体(B)のモル比の9/35以下で
    ある請求項19記載の製造方法。
  24. 【請求項24】 光学異性体(A)および光学異性体
    (B)の製造に使用する溶媒が、アルコール系溶媒、エ
    ーテル系溶媒、ハロゲン原子で置換されていてもよい芳
    香族炭化水素系溶媒、ハロゲン原子で置換されていても
    よい脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒である請求
    171819202122または23記載
    の製造方法。
  25. 【請求項25】 工程(b)および工程(c)における
    光学異性体(A)の結晶化を行ない単離する際の温度が
    −30〜+15℃、結晶化前の溶液における光学異性体
    (A)の濃度が0.5〜4モル/Lである請求項17
    181920212223または24記載の
    製造方法。
  26. 【請求項26】 請求項1、2、3、4、5、6、7、
    8、9、10、11、12、13、14、15、16、
    17、18、19、20、21、22、23、24また
    は25記載の方法で、光学異性体(A)として、(2
    R,3S)−3−置換グリシッド酸エステルを製造し、
    製造された(2R,3S)−3−置換グリシッド酸エス
    テルを用いて、一般式(II): 【化4】 (式中、環Aおよび環Bはそれぞれ置換または非置換ベ
    ンゼン環、R2は−CH2CH2N(CH32または 【化5】 を示す)で表わされる(2S,3S)−1,5−ベンゾ
    チアゼピン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩
    する法。
  27. 【請求項27】 環Aが4−メトキシフェニル基であ
    り、環Bが非置換ベンゼン環であり、R2が−CH2CH
    2N(CH32である請求項26記載の製造方法。
  28. 【請求項28】 請求項1、2、3、4、5、6、7、
    8、9、11、12、13、15、16、17、18、
    19、20、21、22、23、24または25記載の
    方法で、光学異性体(A)として、(2S,3R)−3
    −置換グリシッド酸エステルを製造し、製造された(2
    S,3R)−3−置換グリシッド酸エステルを用いて、
    一般式(III): 【化6】 (式中、環Aおよび環Bはそれぞれ置換または非置換ベ
    ンゼン環を示す)で表わされる(2R,3R)−1,5
    −ベンゾチアゼピン誘導体またはその薬理的に許容しう
    る塩製造する法。
  29. 【請求項29】 請求項1、2、3、4、5、6、7、
    8、9、10、11、12、13、14、15、16、
    17、18、19、20、21、22、23、24また
    は25記載の方法で、光学異性体(A)として、(2
    R,3S)−または(2S,3R)−3−置換グリシッ
    ド酸エステルを製造し、製造された(2R,3S)−ま
    たは(2S,3R)−3−置換グリシッド酸エステルを
    用いて、一般式: 【化7】 (式中、環Aおよび環Bはそれぞれ置換または非置換ベ
    ンゼン環を示し、*は不斉炭素原子を示す)で表わされ
    る光学活性トレオ−ニトロカルボン酸化合物製造する
    法。
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