JP3344337B2 - タンディッシュの予熱方法 - Google Patents

タンディッシュの予熱方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼の連続鋳造用タ
ンディッシュを予熱する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、タンディッシュ耐火物のコストや
タンディッシュにおける熱的ロスの軽減を目的として、
常温まで冷却せずにタンディッシュ多数回連続使用操業
が広まりつつある。しかしながら、このタンディッシュ
多数回連続使用操業時には、タンディッシュの内壁に付
着・残留した地金(Fe)が、バーナによる予熱雰囲気
(CO2 等)で酸化され、FeO を生成する。
【0003】生成されたFeO は、次の鋳込み時に、鋼中
の脱酸元素によって還元され、反対に、脱酸元素が酸化
されて、介在物例えばAl2O3 が生じる。生成したAl2O3
は、鋼の清浄度を悪化させるばかりか、浸漬ノズル詰ま
りや、浸漬ノズル詰まりに伴うモールド内溶鋼の湯面変
動、あるいは、モールドパウダーに富化して物性を変化
させることによる鋳片の表面疵や、ブレークアウトの誘
発など、操業や品質に著しい悪影響を及ぼすという問題
がある。
【0004】そこで、従来、このFeO の生成を抑制する
ために、例えば、鉄と鋼 Vol.80(1994)-T140に開示さ
れているような、タンディッシュの無予熱待機や、CAMP
-ISIJ Vol.9 (1996)-771,772 に開示されているよう
な、高温の不活性ガスを用いた予熱が試みられていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者で
は、無予熱で待機できる時間に限りがあり、操業上の柔
軟性に欠けるという問題があった。また、後者は、多額
の設備投資が必要であること、及び、加熱熱量がガスバ
ーナに比べると小さく、一旦、タンディッシュが冷える
と予熱が困難であるという問題がある。
【0006】本発明は、上記した従来の問題点に鑑みて
なされたものであり、簡便、安価に、低温あるいは高温
のタンディッシュ内における付着・残留地金の酸化を抑
制できるタンディッシュの予熱方法を提供することを目
的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明のタンディッシュの予熱方法は、タンデ
ィッシュを予熱するに際し、タンディッシュ内壁に、炭
又は燃焼により炭化する有機物を各々炭酸カルシウム
混合したものを酸化抑制物質として散布あるいは付着
させた後、ガスバーナにより予熱することとしている。
そして、このようにすることで、タンディッシュ内壁近
傍のCOガス分圧を高めたり、地金の表層部におけるAl濃
度を高くし、FeO の生成を防止したり、抑制することが
出来る。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明者は、タンディッシュの予
熱時における地金酸化(FeO 生成)防止策として、種々
の実験を繰り返した結果、予熱時、タンディッシュ内
壁に、炭素又は燃焼により炭化する有機物を各々炭酸カ
ルシウムと混合したものを酸化抑制物質として散布ある
いは塗布・吹き付け等の手段により、付着させること、
上記酸化抑制物質をタンディッシュ内に散布ある
いは付着させる前に、タンディッシュ内を不活性ガスに
より置換すること、 タンディッシュの予熱中断時に、
不活性ガスを吹込むこと、が効果的であることを見出し
た。以下にそれぞれについて、その作用を述べる。
【0009】[炭素粒の作用] 予熱中におけるタンディッシュ内のような高温雰囲気下
においては、ガスバーナによる予熱雰囲気中のCO2 ガス
は、下記の化学式1に示すように、酸化性ガスとして作
用し、タンディッシュ内壁に付着した地金を酸化する。
【0010】
【化1】Fe+CO2 →FeO +CO
【0011】Fe−O−C系を例にとると、1200℃に
おいて、上記した化学式1の反応によるFeO 生成を防止
するためには、例えば図2に示すように、雰囲気圧力P
に対するCOガス分圧pCOの比(pCO/P)を0.75ま
で高める必要がある。しかしながら、ガスバーナにおい
て、多量のCOガスを発生する不完全燃焼条件は、安全上
実現しがたいので、タンディッシュ内の雰囲気全体を還
元雰囲気に保つバーナ加熱は不可能と言える。
【0012】これに対して、タンディッシュ内壁に炭素
粒を散布あるいは付着させておけば、タンディッシュ内
壁近傍のみにおいて、下記の化学式2に示すように、炭
素粒の燃焼により生じたCOガスが還元雰囲気を形成する
のである。この方法によれば、バーナの燃焼条件を変化
させることなく、安全かつ簡便に、タンディッシュ内壁
近傍のCOガス分圧を高めることができ、FeO の生成を防
止することができる。
【0013】
【化2】C+CO2 →2CO
【0014】なお、炭素粒の代わりに燃焼により炭化す
る有機物を用いても同等の効果が得られることは言うま
でもない。
【0015】[炭酸カルシウムの作用] 炭酸カルシウムCaCO3 は、炭素Cと混合して用いると、
以下の作用が得られる。すなわち、炭酸カルシウムを炭
素と共存させ、加熱すると、下記の化学式3に示すよう
に、CaO とCOガスが生成される。
【0016】
【化3】CaCO3 +C→CaO +2CO
【0017】生成されたCaO は、次回鋳込時に鋼中Al2O
3 を低融点化し、タンディッシュ内での浮上分離を促進
する作用がある。また、生成されたCOガスの作用は、上
記の炭素粒の作用に述べた通りである。
【0018】このように、炭酸カルシウムを用いると、
炭素粒が雰囲気により酸化され、生じるCOガスに加え、
化学式3に示す反応によってもCOガスが発生するので、
COガス濃度が高まり、FeO の生成防止、あるいは、生成
されたFeO の還元作用が強化される。また、高温の不活
性ガスを用いてタンディッシュを予熱する場合にも、既
に生成されているFeO の還元が可能となる。
【0019】[不活性ガスの作用] 特に、炭素あるいは燃焼により炭化する有機物を使用す
る場合においては、散布あるいは付着させた酸化抑制物
質の酸化は、予熱ガス雰囲気あるいは化学式3に示した
反応によってのみ進行することが望ましい。熱間タンデ
ィッシュ内においては、付着させた酸化抑制物質が大気
によって酸化する速度は、上記雰囲気あるいは反応によ
って酸化する速度に較べて早いので、大気による酸化が
生じ始めると、タンディッシュ内に付着させた酸化抑制
物質の殆どが短時間のうちに酸化し尽くされ、本発明が
期待する効果が少なくなるためである。
【0020】従って、熱間タンディッシュ内壁に、炭
又は燃焼により炭化する有機物を各々炭酸カルシウムと
混合した酸化抑制物質を、散布あるいは付着させる場合
には、タンディッシュ内を予め不活性ガスにより置換し
ておくことが望ましいのである。
【0021】上記と同様の理由で、タンディッシュ内の
点検等の事情により、予熱を一旦中断する場合にも、タ
ンディッシュ内への大気侵入によって付着させた酸化抑
制物質の急激な酸化を防止するために、タンディッシュ
内に不活性ガスを吹込むことが望ましいのである。
【0022】以上のように、本発明のタンディッシュの
予熱方法は、上記した本発明者の知見によってなされた
ものであり、タンディッシュを予熱するに際し、タンデ
ィッシュ内壁に、炭素又は燃焼により炭化する有機物
各々炭酸カルシウムと混合したものを酸化抑制物質とし
散布あるいは付着させた後、ガスバーナにより予熱す
るものである。
【0023】発明は、タンディッシュ内壁に散布ある
いは付着させる酸化抑制物質として、炭素又は燃焼によ
り炭化する有機物を各々炭酸カルシウムと混合して用い
たものである。この方法の場合には、炭素粒が酸化され
てCOガスが生じ、また、炭酸カルシウムと炭素の反応に
よってもCOガスが発生するので、COガス濃度が高まり、
FeO の生成防止、あるいは、生成されたFeO の還元作用
を強化することができると共に、高温の不活性ガスを用
いてタンディッシュを予熱する場合にも、既に生成され
ているFeO の還元が可能となる。
【0024】また、本発明は、上記の方法において、タ
ンディッシュ内壁に酸化抑制物質を散布あるいは付着さ
せる前に、タンディッシュ内を不活性ガスにより置換す
るものである。さらに、必要に応じて、タンディッシュ
の予熱中断時に、タンディッシュ内に不活性ガスを吹込
むようにしたものである。このようにすれば、タンディ
ッシュ内に付着させた酸化抑制物質の酸化速度を遅くす
ることができ、本発明の効果を持続させることができ
る。
【0025】なお、本発明の適用に際しては、次回の鋳
込み溶鋼への炭素やAl、Caの富化が許容される範囲内に
納まるように、炭素粒や炭酸カルシウム等の添加量を決
定することは言うまでもない。
【0026】
【実施例】以下、本発明のタンディッシュの予熱方法を
図1に示す一実施例に基づいて説明する。図1の(a)
は本発明のタンディッシュの予熱方法を実施するタンデ
ィッシュの平面図、(b)は(a)を側面方向から見た
図である。
【0027】図1において、1は本発明方法を適用する
例えば容量が50ton のタンディッシュであり、その内
壁、特に斜線で示す敷部1aに、例えば炭素粒を重点的
に吹き付けるのである。なお、図1中の2は浸漬ノズル
を示す。
【0028】図1に示したタンディッシュ1を多数回使
用操業に供し、Mn濃度が0.7〜1.0%のAl−Siキル
ド炭素鋼を鋳込んだ場合において、本発明方法を実施し
た場合と、実施しない場合の結果を下記表1に示す。
【0029】なお、表1中の「T/D」はタンディッシ
ュを、「空T/D時間」とは、前回の鋳込み終了から次
回の鋳込み開始まで、タンディッシュが鋳込みに供され
ていない時間を、「予熱時間」とは、タンディッシュが
コークス炉ガスバーナにより予熱された時間を、「鋳込
み初期Mn酸化ロス」とは、鋳込み開始から5ton 鋳込み
時と、100ton 鋳込み時の鋳片のMn濃度の差を、「鋳
込み初期T.[O] 上昇」とは、鋳込み開始から5ton 鋳込
み時と、100ton 鋳込み時の鋳片のトータル酸素濃度
の差を、「T/D内添加物に起因する鋳込み初期成分変
化」とは、鋳込み開始から5ton 鋳込み時と、100to
n 鋳込み時の鋳片成分のうち、[C],[Al],[Si] につい
て、タンディッシュ内添加物の影響と見積もられる差、
を表す。また、表1中の下段には、各々の例が該当する
本発明の請求項1〜を示しており、○は実施したこと
を、×は実施していないことを、−は無関係であること
を示す。
【0030】
【表1】
【0031】上記した表1に示すように、本発明を実施
していない例において、空T/D時間や予熱時間が長く
なると、大気あるいは予熱雰囲気(CO2 等)による地金
Feの酸化が進行し、生成されたFeO の酸化作用により、
次回鋳込初期に鋼中合金元素(表1中には一例としてMn
を示している)の酸化ロスや、清浄度T.[O] の悪化、ま
た、酸化により生じたAl2O3 等の介在物が浸漬ノズルの
内壁に付着し、浸漬ノズルが閉塞するといった現象が顕
著に発生した。
【0032】これに対して、本発明を実施した例では、
タンディッシュの予熱に起因する諸問題を軽微なレベル
にまで抑制することができた。特に実施例に示すよう
に、本発明を採用した方法を実施すると、最も効果的で
あった。しかし、実施例に示すように、不活性ガスに
よるタンディッシュ内の置換を必要な段階で実施しない
場合には、本発明の効果は低かった。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
安全かつ簡便に、タンディッシュ内壁近傍におけるFeO
の生成を抑制、防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のタンディッシュの予熱方法を
実施するタンディッシュの平面図、(b)は(a)を側
面方向から見た図である。
【図2】Fe−O−C系における還元平衡図であり、横軸
は温度(℃)を、縦軸は雰囲気圧力Pに対するCOガス分
圧pCOの比(pCO/P)を示す。
【符号の説明】
1 タンディッシュ 2 浸漬ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−129057(JP,A) 特開 平5−177316(JP,A) 特開 平8−197208(JP,A) 特開 平3−180256(JP,A) 特開 昭62−17078(JP,A) 特開 平3−221247(JP,A) 特開 昭63−188460(JP,A) 特開 平8−257708(JP,A) 特開 平10−43844(JP,A) 特開 平9−76055(JP,A) 国際公開96/8328(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/10 310 B22D 43/00 B22D 41/015

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンディッシュを予熱するに際し、タン
    ディッシュ内壁に、炭素又は燃焼により炭化する有機物
    を各々炭酸カルシウムと混合したものを酸化抑制物質
    して散布あるいは付着させた後、ガスバーナにより予熱
    することを特徴とするタンディッシュの予熱方法。
  2. 【請求項2】 タンディッシュ内壁に酸化抑制物質を散
    布あるいは付着させる前に、タンディッシュ内を不活性
    ガスにより置換することを特徴とする請求項1に記載の
    タンディッシュの予熱方法。
  3. 【請求項3】 タンディッシュの予熱中断時に、タンデ
    ィッシュ内に不活性ガスを吹込むことを特徴とする請求
    項1又は2に記載のタンディッシュの予熱方法。
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