JP3338093B2 - 透明導電膜及びその作製方法 - Google Patents

透明導電膜及びその作製方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は透明導電膜及びその作製
方法に関し、さらに詳しくは(100)結晶配向のスズ
添加酸化インジウム膜及びその作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】スズ添加酸化インジウム膜(以下「IT
O膜」という)は導電性が良好で、その上可視光波長域
で透光性が良好のため、従来から各種のディスプレイや
太陽電池の透明電極、熱反射ガラス板、防曇、防水、帯
電防止ガラス板、電磁シールガラスなどに用いられてい
る。酸化インジウム(In23)のイオン構造は、図8
に示すように格子定数が10.118オングストローム
のbixbyite型体心立方晶であり、単位格子には
16分子が含まれている。図8中、黒丸はインジウム原
子を表わし、白丸は酸素原子を表わしている。また、破
線は酸素欠陥位置を表わし、ここを酸素原子が埋めれば
蛍石(CaF2)型構造の酸化物になる。
【0003】また、電子帯構造について説明すると、I
23はエネルギ禁制帯幅が3.7eVの絶縁体であ
り、価電子帯は酸素の2p状態から成り、伝導帯はイン
ジウムの5s及び5p状態から成るものと考えられる。
ここで酸化インジウムにスズを添加すると伝導帯に電子
が供給される結果、n型の導電性となり、低抵抗にな
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、現在使用さ
れているITO膜は、1,000オングストローム程度
の膜厚では1×10-4Ω・cm程度の抵抗を有し、かな
り低抵抗であるが、膜厚が増すにつれて、図9に示すよ
うに比抵抗は単調に増大する。したがって、大電流用電
極に使用することは難かしかった。
【0005】このような事情のため、透明導電膜の性
能、殊に大電流に利用できる低抵抗の透電膜の出現が望
まれていた。そこで本発明は、上述した従来のITO膜
における難点を解消し、透光性が良好で、しかも膜厚が
増大しても低抵抗特性を有する透明導電膜及びその作製
方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、以上の目
的を達成すべく種々研究を重ね、図8に示すIn23
結晶構造において、インジウムは酸素の約2/3のイオ
ン半径しかないので無視し、さらに酸素欠陥も無視した
模型を考えた場合、その稠密面は(100)であり、
た、実用の際、ITO膜は非晶質であるガラス基板上に
成膜した状態で使用するため、基板からの静電ポテンシ
ャルは無視でき、稠密面を基板と平行にして成長させる
のが理想的であると考えた。換言すれば、非晶質基板上
でのITO膜の理想的結晶配向は(100)であると考
えられ、(100)配向のITO膜は、電気的光学的特
性の面で優れているものと予想され、実験事実もこのこ
とを裏付けている。
【0007】一方、ITO膜は膜厚が厚くなるにつれて
成長初期の2次元成長から3次元成長へ移行し、結晶配
向も(100)配向は(211)配向に変化し、電気的
光学的特性が劣化する傾向がある。そこで、本発明者等
は2次元成長が支配的で(100)配向している薄膜部
のみを有効に利用するため、ITO膜の膜厚成長方向
に、一定周期毎に結晶配向を乱すような層を設ければ、
比抵抗を小さく抑え、断面積は大きくできることが可能
のため、透明導電膜全体として電気抵抗が低下し、大電
流用に利用できる透明導電膜を提供できるとの知見に達
し、本発明を完成することができた。
【0008】すなわち、本発明の透明導電膜は、基板面
に対し(100)方向に結晶配向したITO膜と、該
ズ添加酸化インジウム膜に、膜厚方向に周期的に形成し
た非晶質スズ添加酸化インジウム膜と、膜厚方向に周期
的に形成した非晶質スズ添加酸化インジウム膜と、から
構成したものである。
【0009】また、本発明の透明導電膜の作製方法は、
酸化スズ含有酸化インジウム焼結体ターゲットを酸素を
含有する希ガスでスパッタリングして基板面に(10
0)方向に結晶配向したITO膜を結晶成長させる工程
と、この(100)結晶配向ITO膜成長過程で、IT
O膜の結晶成長を撹乱させ、当該撹乱領域を非晶質化す
る少くとも一の工程と、から成るものである。
【0010】
【作用】以上のように請求項1の透明導電膜は、基板面
に対し(100)方向に結晶配向されているから、電気
的光学的特性面で優れた特性を有している。また、請求
項3の透明導電膜は、基板面に対し(100)方向の結
晶配向したITO膜と、このITO膜の膜厚方向に周期
的に形成した非晶質層と、の複合構成になっており、I
TO膜が(100)方向にのみ2次元配向された積層構
造に成っている。したがって、比抵抗は小さく抑えられ
るとともに、断面積は大となるから、透明導電膜全体と
しての電気抵抗は大幅に低下する。
【0011】さらに、本発明の透明導電膜の作製方法に
よれば、酸化スズ(SnO2)を含有する酸化インジウ
ム(InO2)焼結体ターゲットを酸素(O2)を含有す
る希ガスでスパッタリングするため、ターゲットからス
パッタリングされたO2は一部排気(真空中でスパッタ
するから)されても、不足するO2は補充されるので基
板面にはターゲットと同じ組成のスズ添加酸化インジウ
ム膜を成長させることができる。そして、(100)結
晶配向ITO膜の結晶成長過程において、その(10
0)結晶配向ITO膜の結晶成長を撹乱させ、当該撹乱
領域を非晶質化する工程を少くとも一含むため、基板面
に対し(100)方向に結晶配向したITO膜の膜厚方
向に少くとも一の非晶質層を有する透明導電膜が形成さ
れる。
【0012】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の透明導電膜及
びその作製方法に関する代表的な実施例について説明す
る。図1は透明導電膜Aの概略構成を示す縦断面図で
ある。同図中、1は透明導電膜Aを結晶成長させるガラ
ス基板であり、2はガラス基板1上に(100)方向に
結晶配向した、厚さ5,000オングストロームのIT
O膜である。この透明導電膜Aは、以下のようにして作
製される。
【0013】すなわち、図示していない真空槽(以下、
単に「槽」という)内に設けた基板ホルダー(図示せ
ず)に、ガラス基板を保持しておき、酸化スズ(SnO
2)を5重量%含有する酸化インジウム(In23)焼
結体をターゲット位置に取付ける。その後、槽内を一
旦、10-5Torr程度に真空排気した後、槽内にスパ
ッタガスとしてO2ガスを1%含むArガスを導入(ガ
ス圧:0.4パスカル)し、スパッタ電圧350Vで反
応性スパッタリングし、上述したガラス基板上に、5,
000オングストローム厚のITO膜を形成させた。以
上の作製方法により作製されたITO膜を試料Aとす
る。
【0014】2は、透明導電膜Bの概略構成を示す縦
断面図である。同図中、1はガラス基板、2はガラス基
板1上に(100)方向に結晶成長した厚さ5,000
オングストロームのITO膜、3は(100)結晶配向
して形成されたITO膜3内に形成された非晶質層(厚
さ100オングストローム)である。
【0015】この透明導電膜Bは、以下のようにして作
製される。まず、上述の透明導電膜Aの場合と同様に、
図示していない槽内に設けた基板ホルダー(図示せず)
にガラス基板を保持しておき、SnO2を5重量%含む
In23焼結体をターゲットホルダー(図示せず)に取
付ける。次いで、槽内を一旦10-5Torr程度に真空
排気した後、槽内をO2ガスを1%含むArガスで充満
(ガス圧:0.4パスカル)し、スパッタ電圧350V
で、反応性スパッタリングし、基板温度250℃のガラ
ス基板面に(100)結晶配向のITO膜1を連続成長
させる。
【0016】そして、(100)結晶配向ITO膜1の
成長過程で、一定時間ガラス基板温度を100℃に下げ
結晶成長の途中過程で結晶成長を撹乱させ、その結晶成
長撹乱部分を非晶質化し、非晶質層3を形成した。非晶
質層3形成後は、再び上述した反応性スパッタリングに
より(100)結晶配向ITO膜を成長させ、厚さ5,
000オングストロームにした。得られたITO膜を試
料Bとする。
【0017】3は、透明導電膜Cの概略構成を示す縦
断面図である。本実施例の透明導電膜Cは、(100)
結晶配向ITO膜内に一定周期で、2層の非晶質層3,
3を形成した以外は、その構成のみならず作製方法も透
明導電膜Bと同様である。作製方法により得られた透
明導電膜を以下、試料Cとする。
【0018】図4は、透明導電膜Dの概略構成を示す縦
断面図である。本実施例の透明導電膜Dは、(100)
結晶配向ITO膜内に一定周期で3層の非晶質3,3及
び3を形成した以外は、その構成のみならず作製方法も
透明導電膜Bと同様の方法で行われる。以下、作製方
法により得られた透明導電膜を、試料Dと呼ぶこととす
る。
【0019】次に、上記作製方法により得られた試料
A,B,C及びDの抵抗を調べるため、四端子法で、最
上層のITO膜の比抵抗(Ω・cm)を測定した。測定
結果は図5の試料No対比抵抗図に示されるように、IT
O膜内に形成した非晶質層の層数が多い(100)結晶
配向ITO膜ほど比抵抗が小さいことが判る。
【0020】また、上記作製方法によって得られたIT
O膜の結晶配向状態を調べるため、代表例として試料A
と試料DのX線回折像を調べた。使用したX線回折装置
のX線源はCuKα線である。試料A及び試料DのX線
回折像を図6及び図7に示す。ただし、図6及び図7の
横軸はブラック反射角(2θ)を、縦軸は回折強度をカ
ウント数/秒(cps)をキロ単位で示したものであ
る。
【0021】図6及び図7のX線回折像によれば、試料
A及びDは、何れも(400)面からのX線反射信号が
顕著であり、基板面に対して(100)配向しているこ
とを示している。しかも、図7における(400)反射
ピークが、図6の(400)反射よりも遥かに大であ
り、ITO膜のみで形成された試料Aよりも、基板面に
対して(100)配向の度合いが強いことを表わしてい
る。これは、ITO膜が2次元成長層が多段積層されて
いることを示しているものと考えられる。
【0022】透明導電膜B〜Dにおいては、透明導電膜
内の非晶質層の形成は、基板上に(100)結晶配向し
たITO膜の成長途中で、基板温度を100℃に降下さ
せることで、結晶成長を撹乱させて非晶質化する例につ
いて説明したけれども、(100)配向ITO膜内に非
晶質層を形成させる方法は、このような基板温度降下法
に限られるものではない。例えば、試料を、ITO膜の
成長過程でスパッタチャンバー(槽)間を2回移動させ
て、結晶成長を撹乱させ、その結晶成長撹乱部分を非晶
質化させてもよい。
【0023】また、上記実施例においては、ITO膜を
(100)結晶配向させるときの基板に、ガラス基板を
用いた例について説明したが、ガラス基板に限られるも
のではなく、プラスチック等の基板を用いてもよい。な
お、ITO膜の結晶成長させるときの基板温度は250
℃の場合について説明したが、ほぼ200℃〜250℃
程度であればよい。また、ITO膜内に形成する非晶質
層は100オングストローム程度であればよく、100
オングストロームよりも厚くなると比抵抗が大になり、
透明導電膜の電気抵抗が大になる。また100オングス
トロームより薄くすると、ITO膜を2次元成長させる
働きが弱くなる。
【0024】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
にかかる透明導電膜は、基板面にITO膜が(100)
結晶配向されているため、電気的光学的特性に優れてい
る。殊に、ITO膜の膜厚方向に周期的に非晶質層を設
けているため、透明導電膜内のITO膜は(100)方
向に2次元成長し結晶配向した積層構造になっており、
比抵抗が小さく、かつ断面積が大きいため、大電流用の
透明電極としての使用が可能である。しかも、その作製
方法が極めて容易であるから、各分野の透明導電用の電
子材料として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】明導電膜の概略構成を示す縦断面図であ
る。
【図2】明導電膜の概略構成を示す縦断面図であ
る。
【図3】明導電膜の概略構成を示す縦断面図であ
る。
【図4】明導電膜の概略構成を示す縦断面図であ
る。
【図5】本実施例の各種試料の透明導電膜の比抵抗を示
す特性図である。
【図6】明導電膜の結晶構造のX線回折パターンダ
イアグラムである
【図7】明導電膜の結晶構造のX線回折パターンダ
イアグラムである
【図8】In23の結晶構造モデル図である。
【図9】ITO膜の膜厚対比抵抗の関係を示す特性図で
ある。
【符号の説明】
1 基板 2 ITO膜 3 非晶質層 A,B,C,D 透明導電膜(本発明)
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01L 31/04 H01L 31/04 M (56)参考文献 特開 昭63−89436(JP,A) 特開 平4−173958(JP,A) 特開 平1−311511(JP,A) 特開 平5−343716(JP,A) 特開 平6−60723(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 5/14 C30B 29/16 G02F 1/1343 H01L 31/04 C23C 14/08 H01B 13/00 503

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板面に(100)方向に結晶配向した
    スズ添加酸化インジウム膜と、 該スズ添加酸化インジウム膜に、膜厚方向に周期的に形
    成した非晶質スズ添加酸化インジウム膜と、 を設けたこ
    とを特徴とする透明導電膜。
  2. 【請求項2】 酸化スズ含有酸化インジウム焼結体ター
    ゲットを酸素を含有する希ガスでスパッタリングし、基
    板面に(100)方向に結晶配向したスズ添加酸化イン
    ジウム膜を結晶成長させる工程と、 この(100)結晶配向スズ添加酸化インジウム膜の結
    晶成長過程において、該(100)結晶配向スズ添加酸
    化インジウム膜の結晶成長を撹乱させ、該撹乱領域を非
    晶質化する少くとも一の工程と、から成る ことを特徴と
    する透明導電膜の作製方法。
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