JP3337568B2 - 鋼材吊上装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、鋼材等の磁性体を吸
着、吊上げ、運搬等に使用する永久磁石式吊上装置に係
り、特に内蔵した永久磁石を回転させることによって着
脱を切り替える装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の吊上装置は、例えば実公
昭６２−３９０２０号に記載されているように、ヨーク
内で回転する主磁石とヨークに固定された副磁石を有す
る。詳述すると、図３（ａ）、（ｂ）に示す通り、吊上
装置は磁気回路部１と非磁性体からなる磁気遮断板２を
介して磁気回路部を支持し、吊金具部４を有する基板３
とを有し、これらはボルト５によって一体的に組立てら
れている。磁気回路部１は吸着面６ａ、６ｂを各々有
し、強磁性体よりなる一対のヨーク７ａ、７ｂとこれら
の間に介在された非磁性スペーサ８ａ、８ｂを有すると
共に、スペーサ８ａ、８ｂの間に形成された円筒状の空
孔９を有する。空孔９内には、径方向に磁化され且つ軸
方向（Ｙ方向）が単極着磁された円柱状の主磁石１０が
回転自在に配置される。非磁性スペーサ８ｂの下部ある
いは非磁性スペーサ８ａの上部の一方には、Ｘ方向に磁
化された副磁石１４が固定される。

【０００３】上記構成により、主磁石１０を回転し、図
３（ａ）に示すＮ極とＳ極の位置（主磁石１０の極性と
副磁石１４の極性が同極）にすると、ヨーク７ａの端部
である吸着面６ａにはＮ極、ヨーク７ｂの端部である吸
着面６ｂにはＳ極が生じるように励磁され、これにより
鉄鋼片または鉄鋼製品等を吸着し吊上可能となる。次い
で、主磁石１０を１８０°回転し、主磁石１０の極性と
副磁石１４の極性が異極の位置にすると（図示せず）消
磁し、吸着面６ａ、６ｂは非励磁となり吸着力を失う。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前述した鋼材吊上装置
では、非励磁状態において主磁石の磁力と副磁石の磁力
とがバランスして吸着力が消失するように磁石の材質及
び形状が設定される。しかし量産ベースで実際に磁石を
製造する場合には、ロット間あるいは同一ロット内でも
組成の差異及び製造条件（例えば熱処理温度等）の差異
に基因して磁石間に多少なりとも磁気特性のバラツキが
生じ、また加工時に発生する寸法公差内でのバラツキ等
が加算されて、予定していた磁力バランスが得られず被
吸着物の脱着作業に支障を生ずる場合がある。また、主
磁石の磁力と副磁石の磁力をバランスさせるために磁気
短絡板を用いることが考えられるが、被吸着物を吸着し
た状態においても磁気短絡板を通過するバイパス回路が
形成されるため、磁力損失を生じて吸着力が低下すると
いう問題がある。従って本発明は、上記従来技術に存在
する問題点を解決し、吸着力の低下を伴わずに被吸着物
の脱着作業を容易に行なえる鋼材吊上装置を提供するこ
とを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明においては、非磁性体からなるスペーサを介
して対向し、且つ各々が吸着面を有する一対のヨークの
略中央部に円筒状空孔を有するヨーク部材と、前記空孔
内に回転自在に配置された径方向に磁極を有する主永久
磁石部材と、前記主永久磁石部材の極性と対応した磁極
を有し厚さ方向に磁化され固定された副磁石部材によっ
て構成された磁気回路構造を有する鋼材吊上装置におい
て、前記主永久磁石部材の表面に非磁性体を介して磁性
部材を設け、非励磁時に前記ヨークと前記磁性部材によ
って磁気短絡回路を形成し、両磁石の磁力バランスを得
る、という技術的手段を採用した。

【０００６】また本発明においては、前記円筒状空孔方
向をＮ、Ｓ交互の多極化すればより望ましい。さらに本
発明においては、前記磁気回路構造を複数個設けること
もできる。

【０００７】

【作用】上記構成によれば、非励磁時主磁石部材と副磁
石部材との間に磁力のアンバランスが生じた場合でも、
主磁石部材に設けた磁性部材により短絡回路が形成され
るので、被吸着物に非所望な磁束が流れるのを防止する
ことができ、もって被吸着物の脱着を速やかに行なうこ
とができる。

【０００８】また、磁気による吸着力Ｆと磁気回路との
関係は、磁気吸着面の磁束密度をＢ、面積をＳとすれ
ば、Ｆ∝Ｂ²×Ｓの関係にあり、すなわち磁束密度Ｂを
増加させるとその二乗で吸着力Ｆが増加する。他方、磁
束密度Ｂは永久磁石の減磁曲線と永久磁石の動作点Ｐｃ
との交点Ｐから定まる有効磁束密度Ｂｄと比例関係にあ
るため、図４に示すように、磁束密度Ｂの向上のために
は永久磁石の動作点Ｐｃを高くすることが必要である。
永久磁石の動作点Ｐｃは、その異方性方向長さをＬｍ、
異方性方向と直行する面積をＡｍとすれば、Ｐｃ∝Ｌｍ
／Ａｍの関係にあるから、異方性方向長さＬｍが一定で
あれば、面積Ａｍを小さくすることによって動作点Ｐｃ
を高くすることができる。すなわち、前述の構成の如
く、永久磁石を多極化することによって動作点Ｐｃが向
上し、有効磁束密度Ｂｄが向上し、磁気吸着面における
磁束密度Ｂが向上し、吸着力Ｆの増加が可能となる。

【０００９】

【実施例】本発明の実施例を図１及び図２に示す。それ
ぞれの図における鋼材吊上装置は、磁気回路部１と、非
磁性体からなる磁気遮断板２を介して磁気回路部１を支
持し吊金具部４を有する基板３とを有し、これらはボル
ト５（図３に示す）によって一体的に組立てられてい
る。磁気回路部１は、吸着面６ａ、６ｂを各々有し強磁
性体（鉄、鋼など）からなる一対のヨーク７ａ、７ｂ
と、これらの間に設置された非磁性体スペーサ８ａ、８
ｂを有すると共に、ヨーク７ａ、７ｂ及びスペーサ８
ａ、８ｂの間に形成された空孔９内に、回転用永久磁石
１１と前記磁石の磁化方向と平行に取付けられた非磁性
板１２及び前記非磁性板に取付けられた磁性部材１３に
よって構成された主磁石部材１０を有する。非磁性体ス
ペーサ８ａの上部には、紙面左右方向に磁化されたブロ
ック状永久磁石からなる副磁石部材１４が設置される。

【００１０】図１は被吸着物３０がヨーク７ａ、７ｂに
吸着された状態を示し、主磁石部材１０及び副磁石部材
１４はそれぞれ、ヨーク７ａ側がＳ極、ヨーク７ｂ側が
Ｎ極の状態にある。副磁石部材１４により発生した磁束
２０ａ、２０ｂ、２０ｃはヨーク７ｂ、吸着面６ｂを経
て被吸着物３０を通過した後、吸着面６ａ、ヨーク７ａ
を経て副磁石部材１４に戻る。また主磁石部材１０の磁
化方向は副磁石部材１４と同方向のため、主磁石部材１
０により発生した磁束２０ｄ、２０ｅも副磁石部材１４
により発生した磁束と同一の磁路を流れるので、図１の
場合主磁石部材１０は吸着力を増加させる働きをする。
この時、図１に示すように、磁性部材１３は非磁性板１
２及び非磁性体スペーサ８ｂとで囲まれており、その幅
（ｗ）が非磁性体スペーサ８ｂより狭いので、ヨーク７
ａ、７ｂとは接触せず、磁気回路上関与していないため
磁力損失（吸着力の低下）が生じることはない。

【００１１】次に被吸着物３０を取外す場合は、主磁石
部材１０と連動するレバー（図示せず）によって主磁石
部材１０を１８０°回転させることにより行なう。すな
わち図２に示すように、主磁石部材１０を図１の状態か
ら１８０°回転させてヨーク７ａ側がＮ極、ヨーク７ｂ
側がＳ極の状態として、副磁石部材１４及び主磁石部材
１０により発生した磁束は磁気回路１内で閉回路を形成
する。しかしながら主磁石部材１０と副磁石部材１４の
磁力バランスに偏りがあると、磁束の一部が被吸着物３
０を通過するために、被吸着物３０を取外す作業を容易
に行なうことができない。

【００１２】そこで本発明においては、非励磁時主磁石
部材１０と副磁石部材１４の両者に磁力差があると、そ
の差分はヨーク７ａ、７ｂと磁性部材１３によって磁気
的な短絡回路を構成して磁力バランスが得られ、被吸着
物３０を容易に取外しができるような磁気回路構造とし
た。図２は副磁石部材１４の方が主磁石部材１０より磁
力が大きい例を示し、その差分は２０ｃに示す磁気回路
構造を構成して磁力バランスが得られる状態を表す。

【００１３】また前記主磁石部材１０の軸方向を多極化
すれば吸着力の増加が可能となり、さらに前述の実施例
のいずれについても、同様の磁気回路構造を複数個有す
ること（図示せず）により、吸着力が格段に増加し、よ
り良い効果が得られる。

【００１４】

【発明の効果】以上記述したように本発明は、主磁石部
材の磁化方向に沿った表面に磁性部材を設け、ヨークと
磁性部材によって短絡回路を形成するので、主磁石部材
と副磁石部材との相互の磁力バランスを得ることが可能
となり、もって非励磁時に主磁石部材と副磁石部材の磁
力差によって発生した磁束が被吸着物を通過することが
なくなり、被吸着物の取外し作業を容易に行なうことが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る吊上装置の正面図であ
り、吸着状態を示す。

【図２】本発明の一実施例に係る吊上装置の正面図であ
り、非吸着状態を示す。

【図３】従来の吊上装置の正面図（ａ）、同Ａ−Ａ断面
図（ｂ）である。

【図４】永久磁石の減磁曲線を示す図である。

【符号の説明】

１…磁気回路部、２…磁気遮断板、３…基板、４…吊金
具部、５…ボルト、６ａ、６ｂ…吸着面、７ａ、７ｂ…
ヨーク、８ａ、８ｂ…非磁性スペーサ、９…空孔、１０
…主磁石部材、１１…回転用永久磁石、１１ａ、１１ｂ
…回転用永久磁石の表面の一部、１２…非磁性板、１３
…磁性部材、１４…副磁石部材、２０ａ、２０ｂ、２０
ｃ、２０ｄ、２０ｅ…磁束、３０…被吸着物

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 非磁性体からなるスペーサを介して対向
   しかつ各々が吸着面を有する一対のヨークの略中央部に
   円筒状空孔を有するヨーク部材と、前記空孔内に回転自
   在に配置された径方向に磁極を有する主永久磁石部材
   と、前記主永久磁石部材の極性と対応した磁極を有し厚
   さ方向に磁化され固定された副磁石部材によって構成さ
   れた磁気回路構造を有する鋼材吊上装置において、 前記主永久磁石部材の表面に非磁性体を介して磁性部材
   を設け、非励磁時に前記ヨークと前記磁性部材によって
   磁気短絡回路を形成し、両磁石の磁力バランスを得るこ
   とができることを特徴とする鋼材吊上装置。
2. 【請求項２】 前記円筒状空孔方向をＮ、Ｓ交互の多極
   化したことを特徴とする請求項１記載の鋼材吊上装置。
3. 【請求項３】 請求項１又は２に記載の磁気回路構造を
   複数個有することを特徴とする鋼材吊上装置。