JP3335374B2 - パワープラントのマウント構造 - Google Patents

パワープラントのマウント構造

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作美 長谷藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はパワープラントのマウン
ト構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、パワープラントのマウント構
造として、例えば特開平1−226429号公報に開示
されるように、エンジンをそのクランク軸が車幅方向に
位置するように配置すると共に、該エンジンの車体後方
に変速装置を配置し、該変速装置の軸を上記エンジンの
クランク軸に対して平行に位置付けて、該エンジンと変
速装置とを車体前後方向に並列に配置するとともに、上
記エンジンのクランク軸の延設方向両端のエンジンと変
速装置とを一体化したこのパワープラントの慣性主軸上
の2点を車体に対して支持することにより、該パワープ
ラントの車幅方向端部を支持する2個のマウントに対し
て、パワープラントの慣性主軸を回転軸とするロールの
モーメントが作用しないようにして、パワープラント
動が車体に伝達され難いように対策し、車体振動を有効
に抑制するものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようにエンジン及び変速装置を並列配置したパワープラ
ントにおいては、エンジンの車幅方向の両端部に配置す
る2個のマウントに対して、そのパワープラントの慣性
主軸上の位置をブラケット等を介して車体に取付けて
も、車体振動を効果的に低減し得ないことが判った。
【0004】即ち、エンジン及び変速装置を並列配置し
たパワープラントでは、一般に変速装置のケースがエン
ジンのブロック部と一体形成されるものの、これ等二者
がそのエンジンクランク軸、及び変速装置の入出力軸
回転に伴ってクランク軸と略平行なエンジン重心を通る
エンジンの慣性主軸、及びこの入出力軸と略平行な変速
装置の重心を通る変速装置の慣性主軸を中心として個々
独立に運動する(回動する)関係上、変速装置とエンジ
ンとのクランク軸方向に延びる一体形成部における接続
の弱い面を境にエンジンと変速装置とが互いに近接した
り離れたりする,いわゆる開閉モード動作が生じる。こ
のため、パワープラントに対するマウントの取付位置も
上記の開閉モード動作に伴って振動し、その結果、マウ
ントの上記慣性主軸上の位置も振動して、パワープラン
振動が車体に伝達されてしまう憾みがあることが判っ
た。
【0005】本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので
あり、その目的は、上記の如きエンジンと変速装置とを
並列配置したパワープラントにおいて、パワープラント
に対するマウントの取付位置を適切に選定することによ
り、エンジン稼働に伴うパワープラント振動がマウント
を介して車体に伝達されることを効果的に抑制して、車
体振動の効果的な低減を図ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本出願に係る発明では、パワープラントに対するマ
ウントの取付位置を、エンジンと変速装置との開閉モー
ド動作に拘らず振動しない点に選定することとし、この
振動しない点として、エンジンと変速装置との開閉モー
ド動作の節となる軸線上の位置に着目した。
【0007】即ち、請求項1記載の発明では、クランク
軸を車幅方向に配置したエンジンと、該エンジンの車体
前後方向に位置し上記エンジンのクランク軸に対して軸
を平行に位置付けた変速装置とを備え、上記エンジンの
クランク軸方向に延びるシリンダブロックと変速装置の
ケースとを一体化したパワープラントのマウント構造
対象とする。そして、上記パワープラントに対するマウ
ントの取付は1又は複数位置で行われ、該取付位置の少
くとも1つは、クランク軸方向一側から見て、上記エン
ジンのシリンダブロックと変速装置のケースとの一体化
部分における接続の弱い面を連ねた軸線上である開閉モ
ード動作の節となる軸線上において位置付ける構成とし
ている。
【0008】更に、請求項記載の発明では、上記請求
項1記載の発明と対象となる構成を同一として、上記
ワープラントに対するマウントの取付を3つの位置で行
い、該取付位置のうち1つを、クランク軸方向一側から
見て、上記エンジンのシリンダブロックと変速装置のケ
ースとの一体化部分における接続の弱い面を連ねた軸線
上である開閉モード動作の節となる軸線上において位置
付けるとともに、他の2つの位置を、上記開閉モード動
作の節となる軸線よりエンジン側及び変速装置側とに各
々隔てた位置である開閉モード動作が逆位相となる点に
位置付ける構成としている。
【0009】更に、請求項記載の発明では、上記請求
項1又は請求項2記載の発明を限定し、エンジンをその
上方が車体の後方に傾斜させて、上記開閉モード動作の
節となる軸線上のマウント取付位置をクランク軸及び変
速装置の入出力軸よりも上方に配置するパワープラント
のマウント構造としている。
【0010】
【作用】以上の構成により、請求項1記載の発明では、
パワープラントに対するマウントの取付位置が、エンジ
ンと変速装置との開閉モード動作の節となる軸線上の一
点に配置されていて、該一点は上記開閉モード動作に拘
らず振動が少ないので、マウントをパワープラントの
性主軸の延長線上位置させた場合に比べて振動が効果
的に抑えられて、エンジン稼働に伴うパワープラント
動が車体に伝達されることが効果的に抑制される。
【0011】更に、請求項記載の発明では、開閉モー
ド動作の節となる軸線上の一点に選定されたマウントの
パワープラント側取付点は振動が少なく、マウントの他
の2点のパワープラント側取付点は互いに開閉モード
作が逆位相となる位置に選定されていて、等価的に一点
が開閉モード動作の節となる軸線上に配置されたに等し
いので、マウントの3箇所の取付点全ては振動すること
がない。従って、このようなマウントの配置により、パ
ワープラント振動が車体に伝達されることが効果的に抑
制される。
【0012】特に、請求項記載の発明では、エンジン
の上方が車体後方に傾斜しているので、開閉モード動作
の節となる軸線上のマウントの位置が、エンジンよりも
変速装置側に位置する車体強度の高いサスペンションタ
ワー部に近接して、この両者を繋ぐブラケット等の長さ
が短縮され、その結果、上記ブラケット等を含むマウン
トの剛性が高く確保されて、マウントの固有振動数を高
く維持でき、マウントの振動がパワープラント振動と共
振することが確実に防止される。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1及び請求
項2記載の発明のパワープラントのマウント構造によれ
ば、マウントのパワープラント側取付点を、エンジンと
変速装置との開閉モード動作の節となる軸線上の点を考
慮した適切な位置に選定したので、その開閉モード動作
に拘らず、エンジン稼働に伴うパワープラント振動がマ
ウントを介して車体に伝達されることを効果的に抑制し
て、車体振動を一層有効に低減し得る効果を奏する。
【0014】特に、請求項記載の発明によれば、エン
ジン上方を車体後方に傾斜させて、マウントの1つの位
置を車体強度の高いサスペンションタワー部に近接させ
たので、マウントの剛性を高く確保して、エンジン回転
の常用域でマウントの共振を防止することができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基いて説明す
る。
【0016】図1ないし図3は本発明を前輪駆動車のパ
ワープラント構造に適用した実施例を示す。
【0017】同各図において、1は車両のボンネット、
2は該ボンネット1の下方に形成されたエンジンルーム
である。該エンジンルーム2内には多気筒エンジン3が
配置され、該エンジン3はクランク軸3aが車幅方向に
位置付けられて、車幅方向に横置き配置されている。ま
た、該エンジン3は図1に示すように、車体後方に傾斜
して配置されていると共に、吸気ポート3bが車体前方
側に、排気ポート3cが車体後方側に位置するように配
置され、上記吸気ポート3bには車体前方に延びる吸気
管4が連通接続され、排気ポート3cには排気管5が連
通接続される。該排気管5は斜め後ろ下方に向って延び
るよう配置される。
【0018】上記エンジン1において、吸気ポート3b
及び排気ポート3cが開口する燃焼室6は、シリンダ3
dの内周に嵌挿したピストン7により容積可変に形成さ
れると共に、吸気弁8及び排気弁9が配置される。該各
吸気弁8及び排気弁9の上方にはカムシャフト10,1
1が配置され、該各シャフト10,11は図3に示すよ
うに、その前端部に配置した従動スプロケット10a,
11aを駆動する2段階式のチェーン12,13を介し
てクランク軸3aにより回転駆動される。
【0019】エンジン1の図2右端部には、クラッチ装
置14が配置される。該クラッチ装置14は、エンジン
3のクランク軸3a端部に連結したフライホイール3e
と出力軸15とを断接する構成である。
【0020】また、図2に示すように、エンジン3の後
方には、例えば前進5段,後退1段の手動の変速装置2
0が配置されている。該変速装置20は、その入力軸2
0a及びこれに続けて一直線上に配置した出力軸20b
が共に上記エンジン3のクランク軸3aに対して並列に
位置付けられた状態でエンジンルーム2内に配置され
る。
【0021】上記変速装置20とクラッチ装置14との
間には、動力伝達機構23が配置される。該動力伝達機
構23は、上記出力軸15の図2右端部に駆動連結され
た駆動スプロケット23aと、変速装置20の入力軸2
0aに駆動連結された従動スプロケット23bと、該両
スプロケット23a,23bに巻掛けられたチェーン2
3cとから成り、クラッチ装置14の接続時に出力軸1
5に伝達された動力を動力伝達機構23を経て変速装置
20の入力軸20aに伝達する構成である。
【0022】一方、変速装置20の出力軸20bには、
その右端部にファイナルドライブピニオン20c配置さ
れている。
【0023】また、図1及び図2に示すように、変速装
置20の下方には、ドライブシャフト26が車幅方向に
延びて配置されている。該ドライブシャフト26には、
図2に示すように変速装置20のファイナルドライブピ
ニオン20cの直下方の位置において、前輪用デファレ
ンシャル28が配置されている。
【0024】上記デファレンシャル28は遊星歯車式よ
り成り、その構成は、図2に示すように、上記変速装置
20のファイナルドライブピニオン20cに噛合連係す
るリングギヤ28aと、該リングギヤ28aが連結され
たケース28bと、該ケース28bに配置された2個の
ピニオンギヤ28cと、ドライブシャフト26の左右の
シャフト部26a,26bに連結された2個のサイドギ
ヤ28dとを有している。
【0025】エンジン3は、図1及び図2に示すよう
に、シリンダヘッド部3xと、クランク軸3aとドライ
ブシャフト26の軸心とを結ぶ線より上方に位置するシ
リンダブロックアッパー3yと、シリンダブロックロア
3zとに区画され、該シリンダブロックロア3zの下面
にはオイルパン30が接続されている。上記シリンダブ
ロックアッパー3yは、図1に示すように車体後方に延
設されていて、変速装置20のケース20dと、デファ
レンシャル28における左右のシャフト部26a,26
bの軸受部29の上半部とが該シリンダブロックアッパ
ー3yに一体形成されている。
【0026】そして、図3に示すように、エンジン3と
変速装置20とは、その両者の一体形成部における接続
の弱い面(図1参照)を連ねた軸線Lを境に互いに近
接,離反する動作を繰返す開閉モード動作を生じる。
【0027】上記エンジン3と変速装置20との開閉モ
ード動作を制限すべく、シリンダブロックアッパー3y
には、図4に示すように、各種の対策が施されている。
図4のシリンダブロックアッパー3yにおいて、35a
は上記変速装置20の出力軸20bをファイナルドライ
ブピニオン20cの左右において支持する軸受部、36
aはデファレンシャル28における左側シャフト部26
aの軸受部である。上記変速装置20の軸受部35aに
は、補強部材としての3個のリブ38〜40の一端が接
続され、該各リブ38〜40は図中左方に延びてその他
端がシリンダブロックアッパー3yの後側側部20sに
補強連結されている。
【0028】また、図3に示すように、変速装置20の
斜め後方にはエンジン補機であるオルタネータ50が配
置される。該オルタネータ50は、エンジン3のオイル
パン30の位置に配置した他のエンジン補機51と共
に、駆動プーリ52を介してエンジン3のクランク軸3
aにより駆動される。該オルタネータ50は2点で支持
され、その一方の支持点50aは上記変速装置20の軸
受部35aの上端部に配置したボス部であり、他方の支
持点50bは、デファレンシャル28の軸受部36aか
ら略上方に延設したボス部の位置である。
【0029】そして、本発明の特徴点として、図3に示
すように、パワープラントの車幅方向の左右両端部に
は、図中破線で示すように、略三角形状のマウント75
が配置されている。該マウント75は、パワープラント
に対する取付が3位置、即ちシリンダブロックアッパー
3yの後側面の上端部の取付点75a、シリンダブロッ
クアッパー3yの前端面の下部の取付点75b、及びシ
リンダブロックロア3zのデファレンシャル軸受36a
の略下方に位置する取付点75cの3位置で行われてい
る。
【0030】上記マウント75のパワープラント側取付
点75aは、エンジン3と変速装置20との開閉モード
動作の節となる軸線L上の一点であり、残る他の2つの
取付点75b,75cは、各々、エンジン3と変速装置
20との開閉モード動作の節となる軸線Lよりもエンジ
ン側3及び変速装置20側とに各々隔てた位置に設定さ
れていると共に、この両取付点75b,75cの位置は
互いに上記エンジン3と変速装置20との開閉モード動
作が逆位相となる点である。
【0031】尚、図1においてOは、エンジン3と変速
装置20とを一体化したパワープラントの慣性主軸延長
線上に位置する点である
【0032】したがって、上記実施例においては、マウ
ント75のエンジン側取付点のうち、シリンダブロック
アッパー3yの後側面の上端部の取付点75aは、エン
ジン3と変速装置20との開閉モード動作の節となる軸
線L上の一点に配置されているので、該取付点75aは
上記の開閉モード動作に拘らず振動しない。
【0033】また、マウント75のパワープラント側取
付点の他の2点75b,75cは、各々、上記開閉モー
ド動作の節となる軸線Lからエンジン3側及び変速装置
20側に離間するが、互いに動作が逆位相となる位置に
あるので、この2点75b,75cは等価的に一点が上
記開閉モード動作の節となる軸線L上に配置されたに等
しい。従って、マウント75のパワープラント側の3箇
所の取付点75a〜75cは開閉モード動作とは無関係
となり、パワープラント振動がマウント75を介して車
体に伝達されることが効果的に抑制されて、車両の静粛
性の向上を効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両のパワープラント構造を左側方から見た断
面図である。
【図2】車両のパワープラント構造を展開した全体構成
図である。
【図3】同左側面図である。
【図4】エンジンのシリンダブロックアッパーの左側面
図である。
【符号の説明】
3 エンジン 3a クランク軸 3y シリンダブロックアッパー 20 手動変速装置 20a 入力軸 20b 出力軸 20d 変速機ケース 75 マウント 75a、75b、75c マウントのエンジン側取付
点 L 開閉モード動作の節となる
軸線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−226429(JP,A) 特開 昭59−40946(JP,A) 特開 平3−182837(JP,A) 実開 昭57−37018(JP,U) 実開 平2−50140(JP,U) 実開 昭59−104821(JP,U) 実開 昭60−97441(JP,U) 実開 平2−61729(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60K 5/12 B60K 5/04 F16F 15/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クランク軸を車幅方向に配置したエンジ
    ンと、該エンジンの車体前後方向に位置し上記エンジン
    のクランク軸に対して軸を平行に位置付けた変速装置と
    を備え、上記エンジンのクランク軸方向に延びるシリン
    ダブロックと変速装置のケースとを一体化したパワープ
    ラントのマウント構造であって、 上記パワープラントに対するマウントの取付は1又は複
    数位置で行われ、該取付位置の少くとも1つは、クラン
    ク軸方向一側から見て、上記エンジンのシリンダブロッ
    と変速装置のケースとの一体化部分における接続の弱
    い面を連ねた軸線上である開閉モード動作の節となる軸
    線上において位置付けられていることを特徴とするパワ
    ープラントのマウント構造。
  2. 【請求項2】 クランク軸を車幅方向に配置したエンジ
    ンと、該エンジンの車体前後方向に位置し上記エンジン
    のクランク軸に対して軸を平行に位置付けた変速装置と
    を備え、上記エンジンのクランク軸方向に延びるシリン
    ダブロックと変速装置のケースとを一体化したパワープ
    ラントのマウント構造であって、 上記パワープラントに対するマウントの取付は3つの位
    置で行われ、該取付位置のうち1つは、クランク軸方向
    一側から見て、上記エンジンのシリンダブロックと変速
    装置のケースとの一体化部分における接続の弱い面を連
    ねた軸線上である開閉モード動作の節となる軸線上にお
    いて位置付けられ、 他の2つの位置は、上記開閉モード動作の節となる軸線
    よりエンジン側及び変速装置側とに各々隔てた位置で
    開閉モード動作が逆位相となる点に位置付けられてい
    ることを特徴とするパワープラントのマウント構造。
  3. 【請求項3】 エンジンはその上方が車体の後方に傾斜
    して、上記開閉モード動作の節となる軸線上のマウント
    取付位置がクランク軸及び変速装置の入出力軸よりも上
    方に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2
    記載のパワープラントのマウント構造。
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