JP3330763B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP3330763B2
JP3330763B2 JP33753294A JP33753294A JP3330763B2 JP 3330763 B2 JP3330763 B2 JP 3330763B2 JP 33753294 A JP33753294 A JP 33753294A JP 33753294 A JP33753294 A JP 33753294A JP 3330763 B2 JP3330763 B2 JP 3330763B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、走行性、耐久性及び保
存性に優れた磁気記録媒体、特に強磁性金属粉末を用い
た薄膜塗布型磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録技術の分野では、高記録
密度への要求が高まっている。そして、塗布型の磁気記
録媒体においては、強磁性粉末の粒子サイズを小さくし
たり、その分散性を向上させたり、その磁性層中での充
填度を高めたりする方策が種々提案されている。さらに
有効な手段として、磁気特性の優れた強磁性金属粉末や
六方晶フェライトなどを用いることも行われている。
【0003】磁気記録媒体は、電磁変換特性の向上のた
め、磁性層表面はますます平滑化が必要である。このた
め従来公知の潤滑剤では十分な走行性、繰り返し走行
性、耐久性に効果を発揮し得なくなってきている。OA
機器としてのミニコン、パソコンの普及にともない外部
記憶媒体としての磁気記録ディスクの普及が著しく、そ
の使用環境も広がっており、温湿度に関し幅広い環境条
件下で使用・保存されるようになり、また使用環境も塵
埃が多い場所でも使用されるようになってきた。このた
め幅広い環境条件での使用に耐える潤滑性能が必要とさ
れている。
【0004】潤滑剤としては従来、鉱物油、シリコンオ
イル、高級アルコール、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、
牛脂、鯨油、鮫油の動物油あるいは植物油などが用いら
れてきたが、いずれも耐久性が不良であった。耐久性向
上のために特公昭51−39081号公報をはじめ周知
のように飽和及び不飽和の脂肪酸とアルコールのモノエ
ステルが多用されている。しかし、超平滑磁性面による
高密度記録の磁気記録媒体では、潤滑剤がモノエステル
では耐久性が不十分であった。不飽和結合を有する脂肪
酸モノエステルとしては、特公平4−4917号公報記
載のオレイン酸オレイルが挙げられるが、これは耐久性
が不十分である。これはモノエステルであるため結合剤
樹脂との相互作用が劣り長期の保存あるいは高温条件で
の使用で潤滑剤が揮散してしまうためと推定される。ま
た、特開昭61−280025号公報は、ポリグリセリ
ンの一部OHを脂肪酸でエステル化したものであるが、
これも耐久性が不十分である。これはOH基が残ってい
るため、潤滑剤と結合剤樹脂との相溶性が大き過ぎて磁
性層内に潤滑剤が溶解し、磁性層表面に浸出しにくく、
潤滑剤としての機能が発現しにくいのではないかと推定
される。また硬化剤として結合剤樹脂に含まれるポリイ
ソシアネートとOH基は反応するので、硬化剤と結合剤
樹脂との反応が阻害されるためと考えられる。
【0005】その他の該モノエステルを開示するものと
して、特公昭47−12950号公報には、不飽和アル
コールの脂肪酸エステル、例えばステアリン酸ビニルが
記載され、特開昭55−139637号公報には脂肪酸
エステル、脂肪酸アミドおよび脂肪酸の併用が開示され
ている。また、特開昭58−164025号公報には不
飽和脂肪酸エステルを、特開昭59−148131号公
報には不飽和脂肪酸エステルおよび炭化水素との併用を
開示し、特開昭62−1118号公報では分岐アルコー
ルの不飽和脂肪酸エステルを開示しているが、いずれも
耐久性は不十分であった。
【0006】また多価アルコールの脂肪酸エステルが特
公昭41−18063号公報(カルボン酸と2価アルコ
ールのエステル)、特公昭58−31655号公報(オ
レイン酸グリセリドトリエステル)、特開昭54−21
806号公報(3以上の不飽和結合を含むアルコールの
脂肪酸エステル)および特開昭61−198422号公
報(多価アルコールと脂肪酸のエステル)等に、多塩基
酸と鎖式アルコールとのエステルが特公昭47−146
63号公報、特開昭56−80829号公報、特開昭5
9−28236号公報、特開昭59−186129号公
報および特開昭61−24018号公報に開示されてい
る。しかしこれらの潤滑剤を使用しても、耐久性と電磁
変換特性を両立するものは得られなかった。
【0007】上記に示す従来の潤滑剤では、その潤滑効
果を高めるため使用量を多くすると、磁性塗膜の機械的
強度が弱くなり磁性層が削れ易く、削れた粉が走行経路
を汚したり、あるいは十分な耐久性が得られなかったり
した。またとくにこれらの開示例では高温あるいは高湿
環境で走行させたとき耐久性が不十分で、ドロップアウ
トが多発しエラー発生が多いという欠点を有していた。
【0008】また耐久性を向上させるための別の手段と
しては、磁性層に研磨剤・カーボンブラック等の微粒子
を添加する方法が提案・実施されているが、磁性層の耐
久性を向上させる目的で磁性層に研磨剤・カーボンブラ
ックを添加すると、電磁変換特性が低下するという問題
があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、
超平滑化した磁性層で十分な走行性、繰り返し走行性、
耐久性を有する磁気記録媒体を提供すること、幅広い
環境条件下での使用・保存および塵埃の多い環境での使
用でも高い耐久性の磁気記録媒体を提供すること、およ
び幅広い環境条件での使用・保存および塵埃の多い環
境での使用でもエラーレートの低い磁気記録媒体を提供
することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、非磁性
支持体上に非磁性粉末及び/又は強磁性粉末と結合剤樹
脂とを主体とする下層を設け、該下層の上に強磁性金属
粉末と結合剤樹脂とを主体とする上層を設けた磁気記録
媒体において、少なくとも該上層に潤滑剤として下記一
般式(1)で示される化合物を含むことを特徴とする磁
気記録媒体により達成される。
【0011】 R1 −OCO−R−COO−R2 ……(1) 〔式中、Rは−(CHR3 n − [nは1〜8の整数、
3 はH、CH3、C25、C37、またはC49] ま
たはこの−(CHR3 n −から誘導される不飽和結合
を含んでいても良い2価の基を示し、R1 およびR2
炭素数12〜26の鎖状不飽和炭化水素基で互いに同一
でも異なってもよい。〕
【0012】本発明は従来公知の技術では得られなかっ
た高度な走行耐久性、保存性を合せ持つ磁気記録媒体が
得られ、実用的な高密度磁気記録媒体を実現した。本発
明で用いる一般式(1)で表される潤滑剤は、不飽和結
合が導入されているため分子量の割りに粘度が小さく、
これにより流体潤滑性が高く、且つ比較的分子量が高い
ので走行中に蒸発による揮散がなく、長期間の繰り返し
使用でも良好な走行耐久性が得られる。また、本発明で
は潤滑剤の使用量が少ないので高い磁気特性を有する磁
気記録媒体が実現できたものである。
【0013】高記録密度媒体ではオーバーライト特性を
良好にするために上層磁性層を薄層化することが必要で
ある。しかし、薄層化すると磁性塗液中に含むことので
きる潤滑剤量が限られるので磁性層表面に浸出する潤滑
剤量は少なくなり耐久性保持はむずかしくなる。すなわ
ち磁性層表面に浸出する潤滑剤を多くするには上層(磁
性層)塗液に含む潤滑剤量を多くすることが、ひとつの
手段である。しかし、潤滑剤を多く添加すると磁性層表
面が荒れ、表面粗さが平滑にならなくなって高度な磁気
特性が得られないのである。本発明は少量の潤滑剤の添
加で磁性層表面に浸出して潤滑機能を呈し良好な耐久性
を得ることができる。しかも、本発明の潤滑剤は不飽和
構造を2個とエステル結合を2個有しており、これによ
って結合剤樹脂への親和性が高く、繰り返し長時間の走
行によって記録/再生ヘッドとの摺動で潤滑剤が次第次
第に除去されることがないので繰り返し使用しても高度
な走行耐久性が達成できるのである。
【0014】特に一般式(1)において、Rとして炭素
数が所定のジカルボン酸骨格を用いたことにより2個の
エステル基の間が親油性を呈し結合剤樹脂との相溶性が
適度になり、走行中の潤滑剤の脱落が防止されるためと
推定できる。本発明の化合物を示す一般式(1)におい
て、Rは−(CHR3 n −あるいはこの−(CH
3 n −から誘導される不飽和結合を含んでいても良
い2価の基を示す。nは1〜8の整数、R3 はH、CH
3、C25、C37、C49またはCH=CH2を示す。
1 およびR2 は炭素数12〜26の鎖状不飽和炭化水
素基で互いに同一でも異なってもよい。
【0015】該鎖状炭化水素基の該鎖状とは、直鎖でも
分岐でも構わないが、R1 およびR2 の両方が直鎖不飽
和であることが好ましく、その際R1 およびR2 の構造
が同じであるものが特に好ましい。更に、不飽和結合と
しては2重結合、3重結合いずれでも構わないが、2重
結合が好ましく、各1個以上であれば良く、2個以上あ
っても良い。また、2重結合はシスまたはトランスどち
らでも構わない。
【0016】R1 およびR2 の炭素数は各々12〜2
6、好ましくは14〜20、更に好ましくは、14〜1
8である。炭素数が12未満であると揮発性が高いため
走行時に磁性層表面から揮散してしまい走行停止とな
る。炭素数が26より大きいと分子のモビリティが低く
なるため潤滑剤が磁性層表面に浸出しにくく耐久性が不
良となる。
【0017】Rは直鎖で両末端にCOOHを有する2価
カルボン酸残基が好ましく、nは1〜4が好ましい。n
が小さいと繰り返し走行耐久性が悪く、大きすぎると粘
度が高くなったりして使いにくくまた耐久性も不良にな
る。
【0018】本発明の一般式(1)で表される化合物
は、HOCO−R−COOHで表されるジカルボン酸と
1 −OHおよびR2 −OHで表される鎖状不飽和アル
コールとのジエステルである。HOCO−R−COOH
で表されるジカルボン酸としては、マロン酸、コハク
酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン
酸、アゼライン酸、セバシン酸、メチルマロン酸、エチ
ルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸等の飽
和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン
酸、イタコン酸、ムコン酸等の不飽和ジカルボン酸が具
体例として挙げられる。
【0019】R1 −OHおよびR2 −OHで表される鎖
状不飽和アルコールとしては、cis−9−オクタデセ
ン−1−オール(オレイルアルコール)、trans−
9−オクタデセン−1−オール(エライジルアルコー
ル)、9,10−オクタデセジエン−1−オール(リノ
レイルアルコール)、9,12,15−オクタデセトリ
エン−1−オール(リノレニルアルコール)、cis−
9−trans−11,13−オクタデセトリエン−1
−オール(エレオステアリルアルコール)、2−ペンタ
デセン−1−オール、2−ヘキサデセン−1−オール、
2−ヘプタデセン−1−オール、2−オクタデセン−1
−オール、15−ヘキサデセン−1−オール等が具体例
として挙げられる。
【0020】これらのうち特に好ましい本発明の化合物
は直鎖不飽和アルコールと飽和ジカルボン酸とのエステ
ルである。具体的には、アルコール成分としては、オレ
イルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルア
ルコール、リノレニルアルコール、エレオステアリルア
ルコール等であり、ジカルボン酸成分としては、マロン
酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、メチルマロン
酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン
酸等である、これらのジエステルである。更に好ましく
は、マロン酸、コハク酸とオレイルアルコール、エライ
ジルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルア
ルコールとのジエステルである。
【0021】本発明の一般式(1)に相当する化合物は
1種単独で使用してもよく、また、2種以上を混合して
用いることもできる。
【0022】本発明の潤滑剤の使用量は、上層において
は上層の強磁性金属粉末100重量部に対し1重量部以
上、好ましくは3重量部以上、更に好ましくは、5重量
部以上であり、下層においては、微粉末100重量部に
対し1重量部以上、好ましくは3重量部以上、更に好ま
しくは、5重量部以上であり、上層下層とも添加するの
が好ましい。各層とも上限は20重量部であり、多すぎ
ると磁性層表面が粗くなって磁気特性が低下し、少ない
と耐久性が不良となる。
【0023】ここで、微粉末とは、下層が磁性層の場合
は、強磁性粉末を意味し、非磁性層の場合は非磁性粉末
を意味する。ここで、非磁性粉末とは後述の非磁性無機
粉末を指す。
【0024】下層に潤滑剤を添加する方法は、磁性層表
面に多量の潤滑剤を浸出させるため耐久性向上に効果を
発揮するが、本発明も例外ではない。しかし、本発明は
少量の潤滑剤で目的を達成できるので、有利である。し
かも、下層にBET比表面積30〜100m2 /g、好
ましくは40〜80m2 /gの非磁性無機粉末を用いる
と、磁性層表面が平滑になり易い。これにより高い磁気
特性を呈し、しかも走行耐久性が向上した。これは非磁
性無機粉末のため下層塗液の凝集性が小さく分散が良好
で磁性層表面が平滑になり易いためと推定される。また
非磁性無機粉末の比表面積が小さいので非磁性無機粉末
への潤滑剤の吸着量が減少し、その結果潤滑剤の磁性層
表面への浸出量が多くなることが耐久性向上に寄与して
いるものと考えられる。
【0025】本発明の磁気記録媒体の磁性層に使用する
強磁性金属粉末は、その粒子サイズは、望ましくは、比
表面積が30〜80m2 /gであってX線回折法から求
められる結晶子サイズが80〜300Åである。比表面
積が余り小さいと高密度記録に充分に対応できなくな
り、又余り大きくても分散が充分に行えずに平滑な面の
磁性層が形成できず又高密度記録に対応できなくなるの
で好ましくない。
【0026】強磁性金属粉末は、少なくともFeを含む
ことが好ましく、具体的には、Fe、Fe−Co、Fe
−Ni又はFe−Ni−Coを主体とした金属単体ある
いは合金である。本発明の磁気記録媒体を高記録密度化
するために、前記のように粒子サイズが小さいことが必
要であると同時に磁気特性としては、飽和磁化は110
emu/g以上、望ましくは120emu/g以上であ
る。又抗磁力としては、通常、800Oe(エルステッ
ド)以上、好ましくは、900〜1200Oeである。
そして、その粒子の軸比(長軸長/短軸長)は通常、3
以上、好ましくは、5〜15である。
【0027】更に特性を改良するために、組成中にB、
C、Al、Si、P等の非金属が添加されることもあ
る。通常、前記金属粉末の粒子表面は、化学的に安定さ
せるために酸化物の層が形成されている。
【0028】強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2重
量%とするのが好ましい。結合剤の種類によって最適化
するのが好ましい。強磁性粉末のpHは用いる結合剤と
の組み合わせにより最適化するのが好ましい。その範囲
は4〜12であるが、好ましくは5〜10である。本発
明の磁気記録媒体の上層は、下層上に設けられる。該下
層は非磁性粉末と結合剤樹脂を主体とする非磁性層であ
っても、強磁性粉末と結合剤樹脂を主体とする磁性層で
あっても、非磁性粉末と強磁性粉末との混合物と結合剤
樹脂を主体とする層であってもよいが、上層を薄膜化し
表面性、電磁変換特性等の面から下層は非磁性層が好ま
しい。下層を磁性層とする場合に使用する強磁性粉末と
しては、特に制限はないが、通常、γ−酸化鉄、Co含
有酸化鉄、バリウムフェライト、強磁性金属粉末等が使
用される。
【0029】本発明の構成層中には非磁性粉末の導電性
粒子を含有することができる。特に、カーボンブラック
を使用することは、帯電防止の点より望ましい。そのよ
うなカーボンブラックとしては、比表面積は5〜500
2 /g、DBP吸油量は10〜1500ml/100
g、粒子径は5nm〜300nm、pHは2〜10、含
水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/C
C、が望ましい。本発明に用いられるカーボンブラック
の具体的な例としてはキャボット社製BLACKPEA
RLS 2000、1300、1000、900、80
0、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社
製#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成
工業社製#3950B、#2400B、#2300、#
900、#1000、#30、#40、#10B、コロ
ンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAV
EN 150、50、40、15、ライオンアグゾ社製
ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックECDJ
−500、ケッチェンブラックECDJ−600などが
挙などがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで
表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表
面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわ
ない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前
にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。上層にカ
ーボンブラックを使用する場合は強磁性金属粉末に対す
る量は0.1〜30重量%で用いることが望ましい。さ
らに下層には全非磁性粉末に対し3重量%〜20重量%
含有させることが望ましい。カーボンブラックは上層・
下層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向
上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラック
により異なる。従って本発明に使用されるこれらのカー
ボンブラックは、その種類、量、組合せを変え、粒子サ
イズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性を
もとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であ
る。使用できるカーボンブラックは例えばカーボンブラ
ック協会編「カーボンブラック便覧」を参考にすること
ができる。
【0030】本発明の非磁性層に使用される非磁性粉末
のうち非磁性無機粉末としては、α化率90%以上のα
−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ
素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダ
ム、窒化ケイ素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸
化ケイ素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫
酸カルシウム、硫酸バリウムなどが単独または組合せで
使用される。
【0031】これら非磁性無機粉末の平均粒子径は通常
0.005〜2μm、特に0.01〜0.2μmが好ま
しいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を
組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広く
して同様の効果をもたせることもできる。非磁性無機粉
末の比表面積は前述したように潤滑剤の浸出を確保する
ためには通常0.5〜200m2/g、好ましくは30
〜100m2/g、更に好ましくは、40〜80m2
gである。比表面積が小さ過ぎると表面粗さが粗くな
り、大きすぎると分散しにくくなり表面粗さが大きくな
る。
【0032】タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率
は0.1〜5%、pHは2〜11が好ましい。本発明に
用いられる非磁性無機粉末の形状は針状、球状、サイコ
ロ状のいずれでも良い。本発明に用いられる非磁性無機
粉末の具体的な例としては、住友化学社製AKP−2
0、AKP−30、AKP−50、HIT−50、日本
化学工業社製G5、G7、S−1、戸田工業社製TF−
100、TF−120、TF−140、石原産業社製T
T055シリーズ、ET300W、チタン工業社製ST
T30などがあげられる。
【0033】本発明に用いられる研磨剤としては、一般
に使用される材料で溶融アルミナ、炭化ケイ素、酸化ク
ロム(Cr23)、コランダム、人造コランダム、ダイ
アモンド、人造ダイアモンド、ザクロ石、エメリー(主
成分:コランダムと磁鉄鉱)等が使用される。これらの
研磨剤はモース硬度が5〜10であり、平均粒子径が
0.05〜5μmの大きさのものが効果があり、好まし
くは0.2〜1.0μmである。これら研磨剤は結合剤
樹脂100重量部に対して3〜20重量部の範囲で添加
される。3重量部より少ないと十分な耐久性が得られ
ず、又20重量部より多すぎると充填度が減少し、十分
な出力が得られない。
【0034】本発明は非磁性層に含有する非磁性粉末、
磁性層の研磨剤の種類、量および組合せを変え、目的に
応じて使い分けることはもちろん可能である。例えば、
下層表面の耐久性を向上させる場合は下層の研磨剤量
を、上層表面の耐久性を向上させる場合は上層の研磨剤
量を多くするなどの工夫を行うことができる。これらの
研磨剤はあらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料
中に添加しても構わない。
【0035】本磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持
体が1〜100μm、好ましくは20〜85μm、下層
は1〜5μm、好ましくは、2〜4μm、上層は0.0
5〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.7μmであ
る。また、非磁性支持体と下層の間に密着性向上のため
の下塗り層を設けてもかまわない。この厚みは0.01
〜2μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。ま
た、非磁性支持体の一方の面にバックコート層を設けて
もかまわない。この厚みは0.1〜2μm、好ましくは
0.3〜1.0μmである。これらの下塗り層、バック
コート層は公知のものが使用できる。円盤状磁気記録媒
体の場合、片面もしくは両面に上記層構成を設けること
ができる。
【0036】本発明に使用される結合剤としては従来公
知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれら
の混合物が使用される。熱可塑性樹脂としては、ガラス
転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が100
0〜200000、好ましくは10000〜10000
0、重合度が約50〜1000程度のものである。この
ような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルア
ルコール、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステ
ル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル
酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エ
チレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニル
エーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合
体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。
【0037】また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂とし
てはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化
型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アク
リル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹
脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイ
ソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリ
オールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンと
ポリイソシアネートの混合物等があげられる。
【0038】これらの樹脂については朝倉書店発行の
「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されてい
る。また、公知の電子線硬化型樹脂を下層、または上層
に使用することも可能である。これらの例とその製造方
法については特開昭62−256219号公報に詳細に
記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用
できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビ
ニル−酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニ
ルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレ
イン酸共重合体、ニトロセルロース、中から選ばれる少
なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれ
らにポリイソシアネートを組み合わせたものがあげられ
る。
【0039】ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポ
リウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテル
ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレ
タン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポ
リカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用で
きる。ここに示したすべての結合剤について、より優れ
た分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COO
M、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2
−O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、
またはアルカリ金属塩基)、−OH、−NR2 、−N+
3 (Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−C
N、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を
共重合または付加反応で導入したものを用いることが望
ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8 モル /
gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
【0040】本発明に用いられるこれらの結合剤の具体
的な例としてはユニオンカーバイト社製 VAGH、V
YHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、V
YES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、P
KHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業
社製MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、
MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MP
R−TM、電気化学社製1000W、DX80、DX8
1、DX82、DX83、日本ゼオン社製MR110、
MR100、400X110A、日本ポリウレタン社製
ニッポランN2301、N2302、N2304、大日
本インキ社製パンデックスT−5105、T−R308
0、T−5201、バーノックD−400、D−210
−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製U
バイロンR8200、UR8300、RV530、RV
280、大日精化社製ダイフェラミン4020、502
0、5100、5300、9020、9022、702
0、三菱化成社製、MX5004、三洋化成社製、サン
プレンSP−150、旭化成社製、サランF310、F
210などがあげられる。
【0041】本発明に用いられる結合剤は各層の強磁性
粉末および非磁性粉末に対し、5〜50重量%の範囲、
望ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。塩化
ビニル系樹脂を用いる場合は5〜100重量%、ポリウ
レタン樹脂を用いる場合は2〜50重量%、ポリイソシ
アネートは2〜100重量%の範囲でこれらを組み合わ
せて用いるのが好ましい。
【0042】本発明において、ポリウレタンを用いる場
合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが1
00〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/c
2、降伏点は0.05〜10Kg/cm2が好ましい。
本発明の磁気記録媒体は多層からなる。従って、結合剤
量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン
樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の
量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、ある
いは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ各層で
変えることはもちろん可能である。
【0043】本発明に用いるポリイソシアネートとして
は、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニル
メタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ
ート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,
5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネー
ト、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタン
トリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これ
らのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、ま
た、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソ
シアネート等を使用することができる。これらのイソシ
アネート類の市販されている商品名としては、日本ポリ
ウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネー
ト2030、コロネート2031、ミリオネートMR、
ミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−10
2、タケネートD−110N、タケネートD−200、
タケネートD−202、住友バイエル社製、デスモジュ
ールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デス
モジュールHL等があり、これらを単独または硬化反応
性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで非磁
性層、磁性層ともに用いることができる。
【0044】本発明に使用する分散剤(顔料湿潤剤)と
しては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリス
チン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレ
イン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステ
アロール酸等の炭素数12〜18個の脂肪酸(R4CO
OH、R4は炭素数11〜17個のアルキルまたはアル
ケニル基);前記の脂肪酸のアルカリ金属(Li、N
a、K等)またはアルカリ土類金属(Mg、Ca、B
a)からなる金属石鹸;前記の脂肪酸エステルのフッ素
を含有した化合物;前記脂肪酸のアミド;ポリアルキレ
ンオキサイドアルキルリン酸エステル;レシチン;トリ
アルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩
(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンはエチレン、
プロピレンなど);等が使用される。この他に炭素数1
2以上の高級アルコール、及びこれらの他に硫酸エステ
ル等も使用可能である。これらの分散剤は結合剤樹脂1
00重量部に対して0.5〜20重量部の範囲で添加さ
れる。
【0045】潤滑剤としては、一般式(1)の化合物に
加え、更に以下の化合物を併用することもできる。即
ち、脂肪酸、前述以外の脂肪酸エステル、シリコンオイ
ル、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、フ
ッ化黒鉛、フッ素アルコール、ポリオレフィン、ポリグ
リコール、アルキル燐酸エステル、二硫化タングステン
等である。これら併用される潤滑剤は、全潤滑剤の30
〜70重量%である。
【0046】また本発明で用いられる添加剤のすべてま
たはその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加しても
かまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合す
る場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添
加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加す
る場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0047】本発明で使用する非磁性支持体には特に制
限はなく、通常使用されているものを用いることができ
る。非磁性支持体を形成する素材の例としては、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポ
リアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリサル
ホン、ポリエーテルサルホン、シンジオタクチックポリ
スチレン等の各種合成樹脂のフィルム、およびアルミニ
ウム箔、ステンレス箔などの金属箔を挙げることができ
る。非磁性支持体は一般には1〜100μm、好ましく
は25〜85μmの厚さのものが使用される。
【0048】本発明で用いられる有機溶媒は任意の比率
でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケ
トン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホ
ロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノー
ル、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチ
ルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロ
ヘキサノール、などのアルコール類、酢酸メチル、酢酸
ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチ
ル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチ
ルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサ
ン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳
香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロラ
イド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒド
リン、ジクロルベンゼン、等の塩素化炭化水素類、N,
N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用で
きる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではな
く、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解
物、酸化物、水分等の不純分が含まれても構わない。こ
れらの不純分は30重量%以下が好ましく、さらに好ま
しくは10重量%以下である。本発明で用いる有機溶媒
は必要ならば上層と下層でその種類、量を変えても構わ
ない。上層に揮発性の高い溶媒を用い表面性を向上させ
る、下層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジ
オキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、上層に溶
解性パラメータの高い溶媒を用い充填度を上げるなどが
その例としてあげられるが、これらの例に限られたもの
ではないことは無論である。
【0049】本発明の磁気記録媒体は、下層用に前記非
磁性粉末及び/又は強磁性粉末と結合剤樹脂、上層用に
前記強磁性金属粉末と結合剤樹脂、及び必要ならば他の
添加剤と共に有機溶媒を用いて混練分散して調整した塗
料を、非磁性支持体上に塗布し、必要に応じて配向、乾
燥して得られる。本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製
造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、および
これらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程から
なる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていて
も構わない。本発明に使用する強磁性粉末、結合剤、カ
ーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤な
どすべての原料はどの工程の最初または途中で添加して
も構わない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割
して添加しても構わない。例えば、ポリウレタンを混練
工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で
分割して投入してもよい。
【0050】磁性塗料の混練分散に当たっては各種の混
練機が使用される。例えば、二本ロールミル、三本ロー
ルミル、ボールミル、ペブルミル、トロンミル、サンド
グラインダー、ゼグバリ(Szegvari)、アトラ
イター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高
速衝撃ミル、ディスパー、ニーダー、高速ミキサー、ホ
モジナイザー、超音波分散機などを用いることができ
る。
【0051】本発明に使用する非磁性塗料は、上記磁性
塗料に準じて製造することができる。本発明の目的を達
成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程と
して用いることができることはもちろんであるが、混練
工程では連続ニーダや加圧ニーダなど強い混練力をもつ
ものを使用することにより本発明の磁気記録媒体の高い
Brを得ることができる。連続ニーダまたは加圧ニーダ
を用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべてまたはその
一部(ただし全結合剤の30重量%以上が好ましい)お
よび強磁性粉末100部に対し15〜500部の範囲で
混練処理される。これらの混練処理の詳細については特
願昭62−264722号公報、特願昭62−2368
72号公報に記載されている。
【0052】本発明の磁気記録媒体は、上述のようにし
て調製した下層塗料および上層塗料を非磁性支持体上に
下層塗料、該下層塗料の上に上層塗料を塗布することに
より製造されるが、下層塗布層が湿潤状態の間に上層塗
布層を形成する湿式同時重層塗布方式が好ましく、効率
的に生産することが出来る。このような湿式同時重層塗
布方式としては、例えば、特開昭62−212933号
公報に記載のものが挙げられる。
【0053】さらに、カレンダ処理ロールとしてエポキ
シ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐
熱性のあるプラスチックロールを使用する。また、金属
ロール同志で処理することも出来る。処理温度は、好ま
しくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であ
る。線圧力は好ましくは200Kg/cm、さらに好ま
しくは300Kg/cm以上である。
【0054】本発明の磁気記録媒体の上層中に含まれる
残留溶媒は好ましくは100mg/m2 以下、さらに好
ましくは10mg/m2 以下であり、上層に含まれる残
留溶媒が下層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ま
しい。磁性層が有する空隙率は下層、上層とも好ましく
は30容量%以下、さらに好ましくは10容量%以下で
ある。下層の空隙率が上層の空隙率より大きいほうが好
ましいが下層の空隙率が5%以上であれば小さくても構
わない。
【0055】本発明の磁気記録媒体は下層と上層を有す
るが、目的に応じ下層と上層でこれらの物理特性を変え
ることができるのは容易に推定されることである。例え
ば、上層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同
時に下層の弾性率を上層より低くして磁気記録媒体のヘ
ッドへの当りを良くするなどである。上層用の組成物お
よび下層用の組成物を溶剤と共に分散して、得られた塗
布液を非磁性支持体上に塗布し、配向乾燥して、磁性層
を非磁性支持体上に形成して磁気記録媒体をえる。又必
要により表面平滑化加工を施したり、所望の形状に裁断
したりして、本発明の磁気記録媒体を製造する。
【0056】本発明の磁気記録媒体は、データ記録用途
のフロッピーディスクや磁気ディスク、画像記録のアナ
ログ記録であってもよいが、ドロップ・アウトの発生に
よる信号の欠落が致命的となるデータ記録用途のディス
ク状媒体に対しては特に有効である。
【0057】
【実施例】以下に本発明を実施例により更に具体的に説
明する。ここに示す成分、割合、操作順序等は本発明の
技術思想から逸脱しない範囲において変更しうるもので
あることは本業界に携わるものにとっては容易に理解さ
れることである。従って、本発明は下記の実施例に制限
されるべきではない。尚、「部」とあるのはすべて「重
量部」のことである。
【0058】実施例1 下層(非磁性層) 非磁性粉末;TiO2 (平均粒子径 35nm、BET比表面積 40m2 /g、pH 6.9) カーボンブラック (平均粒子径 30nm、DBP吸油量 350ml/100g、BET比表 面積 950m2/g) 塩化ビニル系共重合体 13部 (日本ゼオン社製MR110(−SO3 Naとエポキシ環を含む) ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 (ネオペチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI= 0.9/2.6/1、-SO3Na基1×10-4eq/g含有) C18H35OCO(CH2)2COOC18H35(潤滑剤) 5部 メチルエチルケトン 200部
【0059】 上層(磁性層) 強磁性金属粉末 100部 (組成Fe:Ni=94:6、Hc1700Oe、結晶子サイズ195Å、 σs133emu/g、長軸径0.20μm、針状比10) ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 (ネオペチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI= 0.9/2.6/1、-SO3Na基1×10-4eq/g含有) α−アルミナ(平均粒子径0.3μm、BET比表面積10m2 /g)5部 カ−ボンブラック 5部 (平均粒子径200nm、DBP吸油量30ml/100g、 BET比表面積10m2 /g) C18H35OCO(CH2)2COOC18H35(潤滑剤) 5部 メチルエチルケトン 200部 上記2つの塗料のそれぞれについて、各成分を連続ニー
ダで混練したのち、サンドミルで分散した。得られた分
散液に日本ポリウレタン(株)製コロネート3041を
各上下層の塗布液にそれぞれ10部(固形分換算)を加
え、1μmの平均孔径を有するフィルタ-を用いて濾過し、
非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ
調製した。
【0060】得られた非磁性層塗布液を、乾燥後の厚さ
が2μmになるように塗布し、塗布直後にその上に上層
(磁性層)塗布液を厚さが0.3μmになるように、ポ
リエステル樹脂の下引き層を有するポリエチレンテレフ
タレート支持体(厚み:62μm、中心線表面粗さ:
0.01μm)の上に同時重層塗布を行い、両層がまだ
湿潤状態にあるうちに周波数50Hz、磁場強度200
ガウスまた周波数50Hz、120ガウスの2つの磁場
強度交流磁場発生装置の中を通過させてランダム配向処
理をおこない乾燥後、金属ロールと金属ロールの7段の
カレンダーで温度90℃、線圧300Kg/cmにて処
理を行い、3.5吋に打ち抜き表面研磨処理を施した
後、ライナーを内側に設置済の3.5吋カートリッジに
入れ、所定の機構部品を付加し、実施例1の3.5吋フ
ロッピーディスクを得た。
【0061】実施例2〜6、比較例1〜9 表1に記載の条件で実施例1に準じて各々のフロッピー
ディスクを作製した。詳細は以下の通りである。 比較例1 実施例1の潤滑剤に代えて表1記載のアルコール残基が
飽和のものを使用した。
【0062】比較例2 実施例1の潤滑剤に代えて表1記載のアルコール残基の
炭素数が少ないものを使用した。 比較例3 実施例1の潤滑剤に代えて表1記載のアルコール残基の
炭素数が多いものを使用した。
【0063】比較例4 実施例1の潤滑剤に代えて表1記載のジカルボン酸残基
の炭素数が多いものを使用した。
【0064】実施例2 実施例1の潤滑剤に代えて表1記載のジカルボン酸残基
が不飽和のものを使用した。 実施例3 実施例1の潤滑剤に代えて表1記載のアルコール残基の
炭素数が13のもの(下限値に近いもの)を使用した。
【0065】実施例4 実施例1の潤滑剤に代えて表1記載のジカルボン酸残基
の炭素数が8のもの(上限値に近いもの)を使用した。 比較例5 実施例1において、表1記載のもの(ジオレイルマレー
ト)を非磁性層を設けず磁性層のみの単層で乾燥厚2μ
mとした。
【0066】比較例6 実施例1において、表1記載のもの(ジオレイルアジペ
ート)を非磁性層を設けず磁性層のみの単層で乾燥厚2
μmとした。
【0067】比較例7 実施例1において、表1記載のもの(ジオレイルスクシ
ネート)を非磁性層を設けず磁性層のみの単層で乾燥厚
2μmとした。 比較例8 実施例1の潤滑剤に代えて表1記載のオレイン酸オレイ
ル(不飽和モノエステル)を使用した。
【0068】比較例9 実施例1の潤滑剤の添加量を少なくした。 実施例5 実施例1において、潤滑剤の添加量を変更した。 実施例6 実施例1において、潤滑剤の添加量を変更した。
【0069】得られたフロッピーディスクを以下の方法
により評価し、結果を表1に示した。 〔評価方法〕 再生出力の測定:再生出力の測定は、東京エンジニアリ
ング製ディスク試験装置SK606B型でギャップ長
0.45μmのメタルインギャップヘッドを用い、それ
ぞれ記録周波数625kHzで半径24.6mmの位置
において記録した後ヘッド増幅機の再生出力をテクトロ
ニクス社製オシロスコープ7633型で測定した。再生
出力は実施例1の出力を100として相対値で示した。
【0070】走行耐久性:日本電気(株)製フロッピデ
ィスクドライブFD1331型を用い、記録周波数62
5kHzで全240トラックに記録した後、半径が中心
から37.25mmの位置において以下のフローを1サ
イクルとするサーモサイクル試験を実施した。このサー
モ条件下において、パス回数で1800万回まで走行さ
せたときの走行停止までのパス回数をもって、走行耐久
性を評価した。 (サーモサイクルフロー)25℃、50%RH 1時間
→(昇温 2時間)→60℃、20%RH 7時間→
(降温 2時間)→25℃、50%RH 1時間→(降
温 2時間)→5℃、50%RH 7時間→(昇温 2
時間)→<これを繰り返す>
【0071】保存性:フロッピーディスクを60℃ 8
0%RHで2週間保存した後、上記のサーモサイクル試
験を実施し保存での耐久性を評価した。 ライナーウエア評価:ヘッドオフの状態で走行耐久性と
同じ環境で、サンプルを1800万パス走行させ、終了
したサンプルを走行後カートリッジケースを開き磁気デ
ィスクの磁性層表面を目視観察し評価した。 ○:磁性層表面に欠陥がないもの △:磁性層表面の一部に細かな傷が発生したもの ×:磁性層表面全体に細かな傷が発生したもの ××:磁性層表面全体に細かな傷が多数発生したもの
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】本発明は、非磁性支持体上に非磁性粉末
及び/又は強磁性粉末と結合剤樹脂とを主体とする下層
を設け、該下層の上に強磁性金属粉末と結合剤樹脂とを
主体とする上層を設けた磁気記録媒体において、少なく
とも上層に潤滑剤として不飽和結合を有する鎖状アルコ
ールと不飽和結合を有してもよいジカルボン酸とのジエ
ステルであって、炭素数を規定した特定構造の潤滑剤を
少なくとも磁性層中に含有せしめたことにより、超平
滑化した磁性層で十分な走行性、繰り返し走行性、耐久
性を有する磁気記録媒体、幅広い環境条件での使用・
保存および塵埃の多い環境での使用でも高い耐久性を有
する磁気記録媒体、および幅広い環境条件での使用・
保存および塵埃の多い環境での使用でもエラーレートの
低い磁気記録媒体を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−119629(JP,A) 特開 昭61−199220(JP,A) 特開 平7−192250(JP,A) 特開 昭50−147701(JP,A) 特開 昭56−80829(JP,A) 特開 平8−167137(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/725

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に非磁性粉末及び/又は
    強磁性粉末と結合剤樹脂とを主体とする下層を設け、該
    下層の上に強磁性金属粉末と結合剤樹脂とを主体とする
    上層を設けた磁気記録媒体において、少なくとも該上層
    に潤滑剤として下記一般式(1)で示される化合物を含
    むことを特徴とする磁気記録媒体。 R1 −OCO−R−COO−R2 ……(1) 〔式中、Rは−(CHR3 n − [nは1〜8の整数、
    3 はH、CH3、C25、C37、またはC49] ま
    たはこの−(CHR3 n −から誘導される不飽和結合
    を含んでいても良い2価の基を示し、R1 およびR2
    炭素数12〜26の鎖状不飽和炭化水素基で互いに同一
    でも異なってもよい。〕
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