JP3328438B2 - 固体酸触媒の製造方法 - Google Patents

固体酸触媒の製造方法

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一志 荒田
博美 松橋
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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、周期律表第IV属金属
化合物からなる−11.93以下という高い酸強度を有
する固体酸触媒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】化学工業においては、アルキル化反応、
エステル化反応、異性化反応等の酸触媒を必要とする反
応が多数知られている。従来この種の反応には、硫酸、
塩化アルミニウム、フッ化水素、リン酸、パラトルエン
スルホン酸等の酸触媒が使用されている。しかしこれら
の酸触媒は金属を腐食させる性質があり、高価な耐食材
料の使用あるいは耐食処理を施す必要があった。また通
常、反応後の反応物質との分離が困難な上に廃酸処理が
必要であり、アルカリ洗浄などの煩雑な工程を経なけれ
ばならず、環境面にも大きな問題があった。さらに触媒
を再利用することも非常に困難であった。
【0003】かかる状況に鑑み、本発明者らは周期律表
第IV族金属水酸化物もしくは水和酸化物を硫酸根含有
溶液と接触させた後、350〜800℃で焼成した硫酸
根含有金属酸化物が100%硫酸(Hは−11.9
3)より高い酸強度を示すことを見出し、固体酸触媒の
製造方法を提案した(特公昭59−6181公報)。こ
れらの固体酸触媒は、その高い酸強度故に様々な酸触媒
反応に対し高い触媒性能を有し、しかも腐食性が低く、
反応物質との分離が容易で廃酸処理も不要、触媒の再利
用も可能といった長所を有しており、様々な工業的反応
において、従来の酸触媒の代替が期待されている。しか
しながら、これらの固体酸触媒は、硫酸根含有溶液との
接触前の原料のIV族金属水酸化物もしくは水和酸化物
に起因すると思われる活性のばらつき等の問題があっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決するためになされたもので、本発明の目的は、高
活性な固体酸触媒を安定的に製造する方法を提供するこ
とにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決すべく鋭意研究を進めた結果、特定の条件下に得ら
れた周期律表第IV属金属水酸化物もしくは水和酸化物
を用いることにより、さらに高い触媒活性を有する固体
酸触媒を安定的に得ることができることを見出した。
【0006】本発明は、かかる知見に基づきなされたも
ので、pHが6.5〜8.5の範囲にあり、温度が40〜
100℃に加熱された溶液中で調製したジルコニウム水
酸化物もしくは水和酸化物を、硫酸根を含有するか、も
しくは焼成により硫酸根を発生する処理剤で処理した
後、350〜900℃の温度範囲で焼成することからな
る酸強度(H)が−11.93以下であり異性化反応
に用いられる固体酸触媒を製造する方法である。
【0007】本発明にいう周期律表第VI族金属として
は、ジルコニウムが用いられる。
【0008】第IV族金属水酸化物もしくは水和酸化物
は、一般には、水、または水と、例えば、メタノール、
エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール
との混合溶液に上記第IV族金属の塩、例えば、これらの
金属のアルコラート、塩化物、硫酸塩、オキシ塩化物あ
るいはオキシ硫酸塩等を溶解、あるいは懸濁させ、これ
に、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の水酸化物
あるいは炭酸塩等のアルカリ、特に好ましくは、アンモ
ニア水溶液を加えて、中和することにより得ることがで
きるが、この際、中和後の最終pHが6.5〜8.5の範
囲になるように、第IV族金属の水酸化物もしくは水和酸
化物を調製する必要がある。溶液のpHが6.5より低
くても、また8.5より高くても、最終的に製造した固
体酸触媒の活性は低下することが分かった。この場合
に、溶液の温度を40℃〜100℃に加温して行うと、
最終的に製造した固体酸触媒の活性はさらに向上するこ
とが明らかになった。すなわち、従来は、過剰のアルカ
リを加え、溶液中に溶解している第IV族金属を水酸化物
や水和酸化物として、より完全に回収しようとすること
が試みられていた。これが、触媒の活性に悪影響を与え
ていたことが判明した。
【0009】本発明は、上記のようにして得られる第I
V族金属の水酸化物もしくは水和酸化物を、硫酸根を含
有するか、もしくは焼成により硫酸根を発生する処理剤
で処理するものであるが、このときの硫酸根を含有する
処理剤としては、例えば、硫酸、硫酸アンモニウム、ア
ミンの硫酸塩等を水或いは有機溶媒に溶解したもの等を
用いることができる。また、焼成により硫酸根を発生す
る処理剤としては、例えば硫化水素や亜硫酸ガス等、あ
るいはこれらを水或いは有機溶媒に溶解したもの等を用
いることができる。これらの処理剤は、硫酸根として
0.01〜5モル濃度、あるいはこれに相当する量の硫
酸根を発生するような濃度、含有したものを用いること
が好ましい。
【0010】この処理剤による処理は、どのような方法
で行ってもよく、例えば上記で得られる第IV族の金属
水酸化物もしくは水和酸化物そのままに、あるいはこれ
らを一旦乾燥させて、0.1〜50重量倍の処理剤を散
布、または流下等をすることにより処理する方法、ある
いは1〜50重量倍の処理剤を含む液に水酸化物もしく
は酸化物を、このままあるいは乾燥して、浸漬する方法
等が採用できる。
【0011】上記処理剤で処理した後、過剰の処理液が
残存した場合には、吸引濾過或いは濾紙などに吸収させ
て除去することが望ましい。
【0012】次にこれを乾燥し、さらに活性化処理を行
う。活性化処理は空気又は窒素等のガス雰囲気中にて、
350℃〜900℃の温度で、特に好ましくは、350
〜650℃で、1〜10時間焼成することによって行う
ことが好ましい。
【0013】本発明で得られる固体酸触媒は、濃硫酸の
酸強度(H)−11.93よりも高い酸強度を有し、
異性化反応に優れた触媒性能を示す。本発明で得られる
固体酸触媒を異性化反応に用いると、反応は不均一系で
進行し、通常反応後は濾過等の手段により触媒と反応物
質を容易に分離することができ、さらに廃酸処理の必要
がなく、触媒を再利用することも可能である。尚、固体
酸触媒の酸強度(H)は、pKa値が既知の酸塩基変換
指示薬、例えば、p-ニトロトルエン(pKa値;−11.
4)、m-ニトロトルエン(pKa値;−12.0)、p-ニトロ
クロロベンゼン(pKa値;−12.7)、2,4-ジニトロト
ルエン(pKa値;−13.8)、2,4-ジニトロフルオロベ
ンゼン(pKa値;−14.5)、1,3,5-トリクロロベン
ゼン(pKa値;−16.1)等の乾燥シクロヘキサンあるい
は塩化スルフリル溶液に、触媒を浸漬し、触媒表面上の
指示薬の酸性色への変色を観察して、酸性色に変色する
pKa値と同じか、それ以下の値である。
【0014】
【実施例】触媒の調製例1 市販のオキシ塩化ジルコニウム100gを蒸留水2 lに
溶解し、この溶液を室温で撹拌しながら28%アンモニ
ア水を、それぞれ、pHが4、5、6、7、8、9、1
0になるまで加えて、各々沈澱を生ぜしめ、撹拌をやめ
て2〜3時間静置した。生成した水和ジルコニアを濾別
し、蒸留水250mlで2回洗浄した。得られた水和ジル
コニアを濾別し、50℃で48時間乾燥した。この乾燥
物2gを1規定硫酸30mlに1時間浸漬した。過剰の硫
酸を濾過により除去した後、室温で48時間乾燥した。
乾燥した硫酸処理物を空気気流中600℃で3時間焼成
し、約1.8gの硫酸根含有ジルコニア触媒を得た。
【0015】触媒の調製例2 市販のオキシ塩化ジルコニウム25gを蒸留水500ml
に溶解し、この溶液を60〜70℃に加熱し、撹拌しな
がら28%アンモニア水を、それぞれ、pHが4、5、
6、7、8、9、10になるまで加えて、各々沈澱を生
成させた。その後60〜70℃に保持したまま撹拌をや
めて、2〜3時間静置した。生成した水和ジルコニアを
濾別し、60〜70℃の蒸留水250mlで2回洗浄し
た。得られた水和ジルコニアを濾別し、50℃で48時
間乾燥した。この乾燥物2gを1規定硫酸30mlに1時
間浸漬した。過剰の硫酸を濾過により除去した後、室温
で48時間乾燥した。乾燥した硫酸処理物を空気気流中
600℃で3時間焼成し、約1.8gの硫酸根含有ジルコ
ニア触媒を得た。
【0016】また、上記のpH8で沈殿させた水和ジル
コニアを用いて調製して得た触媒を、1,3,5-トリク
ロロベンゼンを0.03%濃度で乾燥シクロヘキサンに
溶解した溶液に加えた結果、触媒表面に着色が認めら
れ、酸強度(H0)は−16.12以下と極めて高いことが
確認された。
【0017】活性試験 触媒の調製例1、2により製造した触媒について、ペン
タンの骨格異性化の転化率、選択率を測定することによ
り触媒活性の比較を行った。異性化反応は閉鎖循環系の
反応装置を用い、触媒量0.8g、ペンタン30〜50to
rr、反応温度0℃で行った。反応開始3時間後のペンタ
ンの転化率、異性化反応の選択率を、生成物をガスクロ
マトグラフィーで分析することにより求めた。生成物
は、イソペンタン、イソブタン、メタンであり、転化率
は、炭化水素の全モル数を100%として、イソペンタ
ン、イソブタン、メタンの合計モル数の分率で求めた。
異性化反応の選択率は、イソペンタン、イソブタンの合
計モル数の分率で求めた。
【0018】これらの結果を図1に示した。図の横軸
は、水和ジルコニアを沈殿させたときのpH、縦軸は転
化率(%)および選択率(%)である。図中の-●-は、触媒
の調製例1で得た触媒の転化率、-□-は、同じく選択
率、-◆-は、触媒の調製例2で得た触媒の転化率、-△-
は、同じく選択率である。
【0019】この結果から明らかなように、水和ジルコ
ニアをpH6.5〜8.5の範囲で調製することにより、
触媒活性を極めて高くでき、水和ジルコニアの調製時に
pHを前記範囲の一点にコントロールすることにより、
活性の安定した触媒を調製できることが分かる。また、
温度を室温より高くすることによって、さらに高い活性
を有する触媒を得られることも分かる。
【0020】
【発明の効果】本発明は、高活性な酸強度の高い固体酸
触媒を、安定的に製造することができるという格別の効
果を奏する。またこれらの固体酸触媒は、高い酸強度を
有するため、アルキル化、エステル化、異性化など様々
な酸触媒反応に高い触媒機能を示し、さらに、腐食性が
少なく、反応物質との分離が容易で廃酸処理が不要、ま
た触媒の再利用も可能といった多くの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】水和ジルコニウム調製時のpHとペンタンの骨
格異性化の転化率、選択率との関係を示す図。
【符号の説明】
●:触媒の調製例1で得た触媒の転化率。 □:触媒の調製例1で得た触媒の選択率。 ◆:触媒の調製例2で得た触媒の転化率。 △:触媒の調製例2で得た触媒の選択率。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 21/00 - 38/74 C07B 61/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 40〜100℃に加熱したpHが6.5
    〜8.5の範囲の溶液中で調製したジルコニウム水酸化
    物もしくは水和酸化物を、硫酸根を含有するか、もしく
    は焼成により硫酸根を発生する処理剤で処理した後、3
    50〜900℃の温度範囲で焼成することを特徴とする
    酸強度(H)が−11.93以下であり異性化反応に
    用いられる固体酸触媒の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記溶液のpHが7〜8の範囲であり異
    性化反応に用いられる請求項1記載の固体酸触媒の製造
    方法。
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