JP3319303B2 - 耐火性に優れた焼鈍省略型高力ボルト用鋼及びその製造方法 - Google Patents
耐火性に優れた焼鈍省略型高力ボルト用鋼及びその製造方法Info
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Description
おける各種構造物に用いる摩擦接合用の高力ボルトに関
し、特に耐火構造建造物への利用に適した耐火性に優れ
た高力ボルト用鋼及びその製造方法に関する。
温にさらされると強度が著しく低下するため火災が発生
しても鋼材の温度が高くならないように耐火被覆を施す
ことが義務づけられていた。
高温強度に優れた鋼材を使用することで、法令で義務づ
けられていた耐火被覆を削減または省略することが可能
となったことから、摩擦接合用の高力ボルトに対しても
高温強度の向上が要求されるようになってきた。
5-51698 号公報、特開平6-264141号公報等に開示されて
いるように、Mo添加鋼を基本として耐火性の向上を図
ったボルト及びナット用鋼が提案されている。
の発明はいずれも高温強度には優れているものの、Cr
等の合金元素が多量に添加されているうえ、NbやVが
添加されており、圧延ままの硬度が上昇するために、ボ
ルト成形前の軟化焼鈍が必要とされている。軟化焼鈍は
圧延組織中のセメンタイトを球状化して冷間加工性を向
上させる熱処理であるが、生産性を著しく阻害するとい
う問題があった。
を施さずに、室温で1000N/mm2 以上の高い引張強度を有
しかつ耐火性に優れた焼鈍省略型高力ボルト用鋼及びそ
の製造方法を提供することにある。
達成するために、本発明は以下に示す手段を用いてい
る。 (1)重量%(以下%は重量%を示す。)でC:0.15〜
0.25%と、Si≦0.2 %と、Mn:0.1 〜0.7 %と、C
r:0.2 〜1 %と、Mo:0.3 〜0.5 %と、Al:0.01
〜0.05%と、N:0.007 〜0.03%とを含有し、Al%/
N%:1.5 〜2.8を満足し、且つ下記(1)式を満足す
ることを特徴とする耐火性に優れた焼鈍省略型高力ボル
ト用鋼を提供する。
Si%) (1+2.16Cr%) (1+3 Mo%)とするとき、 1.5 ≦DI≦2.2 …(1) (2)上記(1)記載の組成を有する鋼を950 〜1050℃
に加熱し、950 ℃以下の仕上げ温度で熱間圧延を行うこ
とを特徴とする耐火性に優れた焼鈍省略型高力ボルト用
鋼の製造方法を提供する。
保しながらも、ボルト成形前の焼鈍省略を可能とする鋼
を得るため、鋼の化学成分と高温強度及び圧延まま硬さ
の関係について、鋭意研究を重ねた。
圧延まま硬さの上昇を抑えてボルト成形前の焼鈍省略を
可能とするためには、鋼材の焼入性を示す指標DI値が
一定範囲になるようにSi、Mn、Cr添加量を抑え、
Moを適量添加し、さらにNを通常レベルより多く含有
させ、かつAl%/N%を一定範囲内に制限すればよい
という知見を得た。また、V及びNbは圧延まま材の硬
さを著しく上昇させるため添加できないこと、さらに、
これを製造するにあたり、低温圧延を施すと、圧延まま
材の硬さの上昇を抑えて素材の変形能をさらに向上させ
ることができるという知見も得た。
焼入性を示す指標DI値が一定範囲になるようにSi、
Mn、Cr添加量を抑え、Moを適量添加し、さらにN
を通常レベルより多く含有させ、かつAl%/N%を一
定範囲内に制限し、またV及びNbを実質的に添加しな
いようにした鋼に低温圧延を施すようにして、優れた高
温強度を確保しながらも、ボルト成形前の焼鈍省略を可
能とする本発明の鋼及びその製造方法を見出だし、本発
明を完成させた。すなわち、本発明は鋼組成を下記範囲
に限定することにより、ボルト成形前の軟化焼鈍を施さ
ずに、室温で1000N/mm2 以上の高い引張強度を有しかつ
耐火性に優れた焼鈍省略型高力ボルト用鋼を提供するこ
とができる。また、製造条件を下記範囲に限定すること
により、素材の変形能をさらに向上させることができ
る。
由、及び製造条件の限定理由について説明する。 (1)成分組成範囲 Cは焼入性を高め、強度を上げるために必要な元素であ
り、0.15%未満では、必要とする強度レベルを確保する
ことができない。一方、0.25%を越えると圧延ままの硬
度上昇を招く結果となる。従って、C量は0.15〜0.25%
である。
を越えると圧延ままの硬度上昇を招くためSi量は0.2
%以下である。MnはSiと同様に脱酸材であると共
に、Cと同様に焼入性を高め、強度向上に必要な元素で
ある。しかしその量が0.1 %未満ではその効果が小さ
く、一方、0.7 %を越えると圧延ままの硬度上昇を招
く。従って、Mn量は0.1 〜0.7 %である。
確保するために必要な元素であるが、0.2 %未満ではそ
の効果が小さく、一方、1 %を越えると圧延ままの硬度
上昇を招く。従って、Cr量は0.2 〜1 %である。
であるとともに、焼入性を高める元素である。しかしそ
の量が0.3 %未満ではその効果が小さく、一方、0.5 %
を越えると圧延ままの硬度上昇を招くばかりかコストア
ップにもつながる。従って、Mo量は0.3 〜0.5 %であ
る。
く、AlNとして析出して組織を微細化することにより
高温強度を向上させる元素であるが、その量が0.01%未
満では必要な高温強度が得られず、0.05%を越えると酸
化物系の介在物が増加して靭性の低下を招く。従って、
Al量は0.01〜0.05%である。
化し、高温強度の向上に寄与する有効な元素であるが、
その量が0.007 %未満では必要な高温強度が得られず、
0.03%を越えると靭性の低下を招く。従って、N量は0.
007 〜0.03%である。
化することによって高温強度を向上させる作用を有し、
本発明において最も重要な元素であるが、このような作
用を発揮させるためにはこれらの比が重要であり、重量
比:Al%/N%の値が1.5〜2.8 の場合には組織の微
細化が達成され、必要な高温強度が得られる。この値が
1.5 未満の場合または2.8 を越える場合にはいずれも組
織が粗大化して必要な高温強度が得られない。従って、
重量比で規定するAl%/N%の値は1.5 〜2.8 であ
る。
昇させるため添加しない。 DI=0.54C%(1+3.33Mn%) (1+0.7 Si%) (1+
2.16Cr%) (1+3 Mo%)とするとき、 1.5 ≦DI≦2.2 …(1) DI値は本来、鋼の焼入れ性を表す指標であるが、同時
に圧延ままの硬さを予測する指標にもなり得る。上記
(1)式で表すDI値が1.5 未満の場合、焼入れ性低下
のため、ボルト成形後の熱処理で所定の強度を得ること
ができない。一方DI値が2.2 を越える場合、圧延まま
の硬度が上昇してボルト成形前の焼鈍省略が不可能とな
る。従って上記(1)式で表すDI値は1.5 〜2.2 であ
る。なお、当式はASTMの規格A255に基づくもの
で、通常圧延で得られるオーステナイト粒度番号:7と
して粒径及びC量の係数0.54を用いた。
り、ボルト成形前の軟化焼鈍を施さずに、室温で1000N/
mm2 以上の高い引張強度を有しかつ耐火性に優れた性能
を得ることが可能である。また、このような特性の鋼
は、以下の方法で製造することにより、その素材の変形
能をさらに向上させることが可能である。 (2)鋼製造工程 上記の成分に調整した鋼を950 〜1050℃に加熱し、950
℃以下の仕上げ温度で熱間圧延を行う。
は、加熱温度が950 ℃未満の場合、圧延時の変形抵抗が
高くなり、ロール寿命が短くなるためであり、一方、10
50℃を越える場合、鋼の加熱オーステナイト粒が粗大化
するためである。
は、仕上げ温度が950 ℃を越えると結晶粒の微細化が促
進されにくいため焼入れ性が上昇し、低温変態相が生成
しやすくなるためである。以下に本発明の実施例を挙
げ、本発明の効果を立証する。
び比較鋼(No.10 〜15) を溶製した後、同表に記載の加
熱条件及び仕上げ圧延条件で熱間圧延を行って放冷し、
22φの丸棒を製造した。これら圧延ままの丸棒から機械
加工により切り出した試験片を用いて硬さと限界圧縮率
を測定した。硬さは材料の変形抵抗と相関を有すること
が知られており、ボルト成形時の工具寿命を左右するた
め、焼鈍省略の可否を判断する指標として用いた。ま
た、限界圧縮率はボルト成形時の素材の変形能の指標と
して用いた。
た。限界圧縮率測定用試験片は図1に示すように直径14
mm、高さ21mmの円筒形で、上下面に拘束溝及び側面にV
字状の溝を有する切欠き付円筒試験片である。図1
(a)は試験片の上面図、図1(b)は試験片の側面図
で、1は拘束溝、2はV字状の溝、3は被圧縮面を示
し、図1(c)はV字状の溝の詳細寸法を示す。限界圧
縮率は、この試験片の上下面を拘束した状態で被圧縮面
3に圧縮荷重を加えて圧縮試験を行い、V字状の溝2の
溝底から割れが発生するまでの最大圧縮率で評価した。
o.10 〜15) の圧延ままの硬さ及び限界圧縮率を示す。
この表より、本発明鋼はいずれも圧延ままの硬さHRB
が本発明の目標値93以下を満たす86〜93となっており、
変形抵抗が低くなっていることがわかる。また限界圧縮
率も高い値を示しており、素材の変形能も優れているこ
とがわかる。特に、本発明の鋼組成及び製造条件を満た
すNo.1〜8 は著しく優れた素材変形能を示すことがわか
る。
度を変化させているが、仕上げ圧延温度が低いほど、圧
延ままの硬さが低下していることがわかる。一方、比較
鋼No.10,11,12 はそれぞれSi,Mn,Crの添加量が
多くなっており、圧延ままの硬さが上昇している。
(No.10 〜15) に表3に示す温度で焼入れ・焼戻しを施
して常温引張強さ1000N/mm2 以上とし、高温引張試験を
行った。表3には常温及び600 ℃での耐力と引張強さを
併せて示す。この表より、本発明鋼はいずれも常温強度
1000N/mm2 を確保し、かつ本発明の600 ℃耐力の目標値
365 N/mm2 以上を満たしており、高温強度にも優れてい
ることがわかる。これに対して比較鋼No.13 はMo添加
量が足りないために高温強度が不足している。また、N
o.14,15はAl%/N%の値が大きくなっており、組織
の細粒化の効果が得られなかったために高温強度が不足
している。
により、室温で1000N/mm2 以上の高い引張強度を有し、
かつ優れた高温強度を有する高力ボルト用鋼を、ボルト
成型前の軟化焼鈍を施さずに提供することができる。ま
た、製造条件を特定することにより、ボルト成形時の素
材の変形能をさらに向上させることができる。本発明の
鋼は、耐火構造建造物での摩擦接合用高力ボルトとして
使用可能であり、その生産性を大幅に高めるなど、産業
上、極めて有用である。
を示す図。(a)は試験片の上面図。(b)は試験片の
側面図。(c)は試験片のV字状の溝の詳細寸法を示す
図。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%でC:0.15〜0.25%と、Si≦0.
2 %と、Mn:0.1〜0.7 %と、Cr:0.2 〜1 %と、
Mo:0.3 〜0.5 %と、Al:0.01〜0.05%と、N:0.
007 〜0.03%とを含有し、Al%/N%:1.5 〜2.8 を
満足し、且つ下記(1)式を満足することを特徴とする
耐火性に優れた焼鈍省略型高力ボルト用鋼。 DI=0.54C%(1+3.33Mn%) (1+0.7 Si%) (1+
2.16Cr%) (1+3 Mo%)とするとき、 1.5 ≦DI≦2.2 …(1) - 【請求項2】 請求項1記載の組成を有する鋼を950 〜
1050℃に加熱し、950 ℃以下の仕上げ温度で熱間圧延を
行うことを特徴とする耐火性に優れた焼鈍省略型高力ボ
ルト用鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP25654196A JP3319303B2 (ja) | 1996-09-27 | 1996-09-27 | 耐火性に優れた焼鈍省略型高力ボルト用鋼及びその製造方法 |
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JPH10102203A JPH10102203A (ja) | 1998-04-21 |
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