JP2728084B2 - 高強度部品の製造方法 - Google Patents
高強度部品の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度であってし
かも耐遅れ破壊性に優れた高強度部品、例えばチェーン
ピン,ロックピン,スタッドボルト,六角ボルトなどの
高強度部品を製造するのに利用される高強度部品の製造
方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、橋梁,建築物および機械構造物等
の大型化に伴って高強度ボルトが多量に使用されるよう
になってきている。また、自動車の軽量化の要求に伴っ
て各種部品の高強度化および小型化がはかられるように
なってきている。 【0003】そして、特に強度が120Kgf/mm2
を超える高強度部品においては、耐遅れ破壊性が著しく
劣化することが知られており、安定した耐遅れ破壊性を
有していることが必須条件である。 【0004】遅れ破壊は、主としては湿潤環境で使用さ
れた場合において、水素の侵入・拡散によって生ずる水
素脆化現象であり、静的負荷を受けた部材が突然に脆性
的に破壊する現象である。そして、引張強度が120〜
140Kgf/mm2であるような焼もどしマルテンサ
イト鋼においては、旧オーステナイト粒界に沿ってクラ
ックが発生しそれが伝播することが知られている。これ
は、粒界がP,S等の不純物偏析あるいは炭化物の析出
によって脆化し、さらに使用環境中より侵入する水素に
起因する脆化が重なって発生する現象であるとされてい
る。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】このように、高強度部
品において、強度が120Kgf/mm2を超えると、
耐遅れ破壊性が著しく劣化するという問題点があった。 【0006】 【発明の目的】本発明は、このような問題点にかんがみ
てなされたもので、強度クラス12.9(強度120〜
140Kgf/mm2級)ないし14.9(強度140
〜160Kgf/mm2級)の高強度であってしかも耐
遅れ破壊性に優れた高強度部品、例えばチェーンピン,
ロックピン,スタッドボルト,六角ボルトなどを得るこ
とが可能である高強度部品の製造方法を提供することを
目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明に係る耐遅れ破壊
性に優れた高強度部品の製造方法は、重量%で、C:
0.12〜0.25%、Si:0.15%未満、Mn:
0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.00
5%以下、Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.7
0超過〜1.50%、V:0.05〜0.50%、A
l:0.01〜0.06%、N:0.005〜0.03
%、O:0.0015%以下、および必要に応じてN
b:0.20%以下,Ti:0.20%以下,Zr:
0.20%以下のうちから選ばれる1種または2種以
上、残部Feおよび不純物からなる鋼を素材とし、当該
鋼を熱間,温間あるいは冷間加工によって所望部品の粗
形状に成形した後焼入れを施し、転造や圧造などの冷間
塑性加工を行って所望の部品形状に加工した後に焼もど
しを施すようにしたことを特徴としているものであり、
通常の例えば転造→焼入れ→焼もどしの工程に代えて、
焼入れ→転造→焼もどしの工程を採用することによっ
て、転造後に当該転造部分を加工硬化させると共に残留
応力を付与し、疲労強度の著しい向上をもたらすことが
できるようにしたことを特徴としているものである。 【0008】以下、本発明に係る高強度部品の製造方法
において素材として用いられる高強度部品用鋼の成分範
囲(重量%)の限定理由について説明する。 【0009】C:0.12〜0.25% Cは熱処理によって所要の強度を得るために有効な元素
であり、このような効果を得るために0.12%以上含
有させることが必要である。しかし、0.35%を超え
て含有するととくに高強度部品の耐遅れ破壊性が劣化す
るので0.35%以下とする必要がある。また、焼入れ
を施したのちに転造等の冷間塑性加工を行う工程を採用
する場合には、焼入れ後の硬さが大きくなりすぎて冷間
塑性加工が困難になることのないようにするために0.
25%以下とするのがよい。 【0010】Si:0.15%未満 Siはオーステナイト化時の高温加熱による粒界酸化を
助長する元素であり、遅れ破壊の起点となりうるもので
あるため耐遅れ破壊性を劣化させる。そのため、Si量
は低い方が望ましく、特に0.05%以下とすることが
より好ましいが、ここではこの上限を0.15%未満と
した。 【0011】Mn:0.40%以下 Mnは溶製時の脱酸剤として有効であると共に焼入れ性
の向上に寄与する元素であるが、MnはSiとともに焼
入れ時の粒界酸化を助長し、耐遅れ破壊性を劣化させる
ので、低いほど好ましく、特に0.30%以下とするこ
とがより好ましいが、ここではその上限を0.40%と
した。 【0012】P:0.015%以下 Pはオーステナイト化時の高温加熱によってオーステナ
イト粒界に偏析を生じ、粒界を脆化させて耐遅れ破壊性
を劣化させるので、0.015%以下とした。 【0013】S:0.005%以下 SはPと同様にオーステナイト化時の高温加熱によって
オーステナイト粒界に偏析を生じ、粒界を脆化させて耐
遅れ破壊性を劣化させると共に、MnSを形成して耐遅
れ破壊性を劣化させるので、0.005%以下とした。 【0014】Cr:0.50〜1.50% Crは焼入れ性の向上に寄与する元素であるので、高強
度部品の寸法等に応じてその添加量を調整するのが良
く、これによってボルトの焼入れ性を確保する。そし
て、このような観点からはCr含有量を0.50%以上
とした。しかし、Crの添加は、通常の機械構造用高強
度部品を対象とした寸法では、2.00%まで添加する
ことによって焼入れ性の向上は十分であり、むしろ添加
しすぎるとSiおよびMnと同様に粒界酸化を助長して
耐遅れ破壊性を劣化させるので、0.50〜2.00%
の範囲とする必要がある。また、焼入れを施したのちに
転造等の冷間塑性加工を行う工程を採用する場合には、
焼入れ後の硬さが大きくなりすぎて冷間塑性加工が困難
になることのないようにするために、1.50%以下と
するのがよい。 【0015】Mo:0.70超過〜1.50% Moは焼入れ性の向上に寄与すると共に、結晶粒の微細
化およびオーステナイト粒界の強度向上に寄与する元素
であり、さらには焼もどし時に十分な2次硬化を得るこ
とができるようにし、引張強さ120Kgf/mm2以
上の高強度を得るための焼もどし温度が600℃を上回
るようにするために、0.70%超過とした。しかし多
く添加しても効果は飽和するのみならず、巨大な1次炭
化物が晶出してくるようになり、焼入れ時に残存して靭
性が低下するので、その上限を2.00%とした。ま
た、焼入れを施したのちに転造等の冷間塑性加工を行う
工程を採用する場合には、焼入れ後の硬さが大きくなり
すぎて冷間塑性加工が困難になることのないようにする
ために、1.50%以下とするのがよい。 【0016】V:0.05〜0.50%、 Vは焼もどし時に十分な2次硬化を得ることができるよ
うにするのに有効な元素であるので、このような効果を
得るために0.05%以上とした。しかし、多すぎると
巨大な一次炭化物が晶出し、焼入れ時に残存して靭性が
低下するので、その上限を1.50%とした。また、焼
入れを施したのちに転造等の冷間塑性加工を行う工程を
採用する場合には、焼入れ後の冷間塑性加工が容易にで
きるようにするために、その上限を0.50%とするの
がよい。 【0017】Al:0.01〜0.06% AlはNと共にAlNを形成して結晶粒を微細化し、靭
性の向上をはかるのに有効な元素であり、このような効
果を得るために0.01%以上とした。しかし、多すぎ
ると地疵となる大型介在物を生成し、Al2O3が疲労
の起点となるため0.06%以下とした。 【0018】N:0.005〜0.03% NはAlと共にAlNを形成して結晶粒を微細化し、靭
性の向上をはかるのに有効な元素であるので、このよう
な効果を得るために0.005%以上とした。しかし、
Nの添加量はAlの添加量のおよそ1/2とすることが
望ましいが、多すぎると地疵となる大型介在物を生成す
るので0.03%以下とした。 【0019】O:0.0015%以下O 含有量が多すぎるとAl2O3系の介在物を生成して
悪影響を及ぼすのでその上限を0.0015%とした。 【0020】Nb:0.20%以下,Ti:0.20%
以下,Zr:0.20%以下のうちから選ばれる1種ま
たは2種以上 Nb,Ti,Zrはいずれも微細な炭化物を形成し、結
晶粒の微細化に効果があり、耐遅れ破壊性の向上に寄与
する元素であるので、必要に応じてこれらの1種または
2種以上を添加するのもよい。しかし、各元素について
0.20%を超えて添加しても効果の向上は大きくない
ので、添加するとしても各々0.20%以下とするのが
よい。 【0021】本発明に係る高強度部品の製造方法では、
上記したより望ましい成分組成の鋼を素材とし、当該鋼
を高強度部品の粗形状に熱間,温間,冷間加工等により
成形した後焼入れを施し、次いで転造,圧造等の冷間塑
性加工を行って所定の高強度部品の形状に成形したのち
焼もどしを行うようにしている。このように焼入れ後に
冷間塑性加工を行ったのち焼もどしを施すようにしたの
は、冷間塑性加工の際の加工硬化および残留応力の付与
を焼もどし後にも維持されるようにし、高強度部品の疲
労強度をより一層向上させるようにするためであり、こ
のような疲労強度の向上は、低C含有量でかつMo,V
の炭化物形成による2次析出硬化型の鋼を素材とするこ
とにより可能となった。 【0022】 【実施例】表1に示す化学成分の本発明例による鋼A〜
Fおよび比較例の鋼G(SCM440H)をそれぞれ溶
製したのち造塊し、各鋼を直径8mmの線材に圧延し
た。 【0023】次いで、各線材に焼なましを施したのち引
張試験片および遅れ破壊試験片に加工し、各試験片に対
し、引張強度が120〜160Kgf/mm2となるよ
うに調質した。 【0024】 【表1】【0025】次いで、各供試片を用いて引張特性および
遅れ破壊特性を調べた。このとき、引張特性の試験に際
しては縮小JIS 4号試験片を使用した。その結果を
表2および図1に示す。 【0026】また、遅れ破壊特性の試験に際しては図2
に示す曲げ型促進試験片(l1=20mm,d1=6m
m,d2=4mm,R=0.1mm)を使用し、片持曲
げ荷重を負荷して行った。また、試験環境は0.1N−
HClとし、これを試験片の切欠部に滴下しながら曲げ
応力を加えた。そして、各供試材の遅れ破壊特性は、静
曲げ応力(σSB)に対する遅れ破壊試験30時間後に
おける強度(σ30h r)との比、すなわち遅れ破壊強
度比σ30hr/σSBで表わした。この結果を同じく
表2に示す。 【0027】 【表2】 【0028】表2に示すように、本発明例の鋼A〜F
は、引張強度120〜160Kgf/mm2に調質した
ときにおいて、伸びおよび絞りが良好な値を示してお
り、特に30時間強度比は比較例の鋼Gよりもかなり高
い値を示している。 【0029】次に、高強度部品の一例としてボルトを転
造加工により製造するにあたり、転造加工を焼入れ・焼
もどし前に行う通常の工程(表3のA,B,D,F,
G)と、焼入れ後に転造加工を行ってこの転造加工後に
焼もどしを行う本発明に基く工程(表3のA´,B´,
D´,F´)とを採用した場合における疲労特性への影
響を調べた。 【0030】この場合、ボルトに対して平均応力81K
gf/mm2を加える実体疲労試験を行って、3×10
6回後で破断しない応力振幅を調べた。この結果を表3
に示す。 【0031】 【表3】【0032】表3に示す結果より明らかなように、焼入
れ後に転造加工を行ったのち焼もどしを施すことによっ
て、転造加工の際の加工硬化および残留応力の付与によ
る効果をボルトに活用することが可能となり、疲労強度
を大幅に向上させることができた。 【0033】 【発明の効果】以上説明してきたように、本発明に係る
高強度部品の製造方法は、重量%で、C:0.12〜
0.25%、Si:0.15%未満、Mn:0.40%
以下、P:0.015%以下、S:0.005%以下、
Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.70超過〜
1.50%、V:0.05〜0.50%、Al:0.0
1〜0.06%、N:0.005〜0.03%、O:
0.0015%以下、および必要に応じてNb:0.2
0%以下,Ti:0.20%以下,Zr:0.20%以
下のうちから選ばれる1種または2種以上、残部Feお
よび不純物からなる鋼を素材とし、当該鋼を粗形状に成
形した後焼入れを施し、冷間塑性加工後に焼もどしを施
すようにしたものであるから、高強度でしかも耐遅れ破
壊性に優れた高強度部品を得ることが可能であり、しか
も当該高強度部品の耐疲労性をより一層向上させること
ができるようになるという非常に優れた効果をもたらし
うるものである。
かも耐遅れ破壊性に優れた高強度部品、例えばチェーン
ピン,ロックピン,スタッドボルト,六角ボルトなどの
高強度部品を製造するのに利用される高強度部品の製造
方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、橋梁,建築物および機械構造物等
の大型化に伴って高強度ボルトが多量に使用されるよう
になってきている。また、自動車の軽量化の要求に伴っ
て各種部品の高強度化および小型化がはかられるように
なってきている。 【0003】そして、特に強度が120Kgf/mm2
を超える高強度部品においては、耐遅れ破壊性が著しく
劣化することが知られており、安定した耐遅れ破壊性を
有していることが必須条件である。 【0004】遅れ破壊は、主としては湿潤環境で使用さ
れた場合において、水素の侵入・拡散によって生ずる水
素脆化現象であり、静的負荷を受けた部材が突然に脆性
的に破壊する現象である。そして、引張強度が120〜
140Kgf/mm2であるような焼もどしマルテンサ
イト鋼においては、旧オーステナイト粒界に沿ってクラ
ックが発生しそれが伝播することが知られている。これ
は、粒界がP,S等の不純物偏析あるいは炭化物の析出
によって脆化し、さらに使用環境中より侵入する水素に
起因する脆化が重なって発生する現象であるとされてい
る。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】このように、高強度部
品において、強度が120Kgf/mm2を超えると、
耐遅れ破壊性が著しく劣化するという問題点があった。 【0006】 【発明の目的】本発明は、このような問題点にかんがみ
てなされたもので、強度クラス12.9(強度120〜
140Kgf/mm2級)ないし14.9(強度140
〜160Kgf/mm2級)の高強度であってしかも耐
遅れ破壊性に優れた高強度部品、例えばチェーンピン,
ロックピン,スタッドボルト,六角ボルトなどを得るこ
とが可能である高強度部品の製造方法を提供することを
目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明に係る耐遅れ破壊
性に優れた高強度部品の製造方法は、重量%で、C:
0.12〜0.25%、Si:0.15%未満、Mn:
0.40%以下、P:0.015%以下、S:0.00
5%以下、Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.7
0超過〜1.50%、V:0.05〜0.50%、A
l:0.01〜0.06%、N:0.005〜0.03
%、O:0.0015%以下、および必要に応じてN
b:0.20%以下,Ti:0.20%以下,Zr:
0.20%以下のうちから選ばれる1種または2種以
上、残部Feおよび不純物からなる鋼を素材とし、当該
鋼を熱間,温間あるいは冷間加工によって所望部品の粗
形状に成形した後焼入れを施し、転造や圧造などの冷間
塑性加工を行って所望の部品形状に加工した後に焼もど
しを施すようにしたことを特徴としているものであり、
通常の例えば転造→焼入れ→焼もどしの工程に代えて、
焼入れ→転造→焼もどしの工程を採用することによっ
て、転造後に当該転造部分を加工硬化させると共に残留
応力を付与し、疲労強度の著しい向上をもたらすことが
できるようにしたことを特徴としているものである。 【0008】以下、本発明に係る高強度部品の製造方法
において素材として用いられる高強度部品用鋼の成分範
囲(重量%)の限定理由について説明する。 【0009】C:0.12〜0.25% Cは熱処理によって所要の強度を得るために有効な元素
であり、このような効果を得るために0.12%以上含
有させることが必要である。しかし、0.35%を超え
て含有するととくに高強度部品の耐遅れ破壊性が劣化す
るので0.35%以下とする必要がある。また、焼入れ
を施したのちに転造等の冷間塑性加工を行う工程を採用
する場合には、焼入れ後の硬さが大きくなりすぎて冷間
塑性加工が困難になることのないようにするために0.
25%以下とするのがよい。 【0010】Si:0.15%未満 Siはオーステナイト化時の高温加熱による粒界酸化を
助長する元素であり、遅れ破壊の起点となりうるもので
あるため耐遅れ破壊性を劣化させる。そのため、Si量
は低い方が望ましく、特に0.05%以下とすることが
より好ましいが、ここではこの上限を0.15%未満と
した。 【0011】Mn:0.40%以下 Mnは溶製時の脱酸剤として有効であると共に焼入れ性
の向上に寄与する元素であるが、MnはSiとともに焼
入れ時の粒界酸化を助長し、耐遅れ破壊性を劣化させる
ので、低いほど好ましく、特に0.30%以下とするこ
とがより好ましいが、ここではその上限を0.40%と
した。 【0012】P:0.015%以下 Pはオーステナイト化時の高温加熱によってオーステナ
イト粒界に偏析を生じ、粒界を脆化させて耐遅れ破壊性
を劣化させるので、0.015%以下とした。 【0013】S:0.005%以下 SはPと同様にオーステナイト化時の高温加熱によって
オーステナイト粒界に偏析を生じ、粒界を脆化させて耐
遅れ破壊性を劣化させると共に、MnSを形成して耐遅
れ破壊性を劣化させるので、0.005%以下とした。 【0014】Cr:0.50〜1.50% Crは焼入れ性の向上に寄与する元素であるので、高強
度部品の寸法等に応じてその添加量を調整するのが良
く、これによってボルトの焼入れ性を確保する。そし
て、このような観点からはCr含有量を0.50%以上
とした。しかし、Crの添加は、通常の機械構造用高強
度部品を対象とした寸法では、2.00%まで添加する
ことによって焼入れ性の向上は十分であり、むしろ添加
しすぎるとSiおよびMnと同様に粒界酸化を助長して
耐遅れ破壊性を劣化させるので、0.50〜2.00%
の範囲とする必要がある。また、焼入れを施したのちに
転造等の冷間塑性加工を行う工程を採用する場合には、
焼入れ後の硬さが大きくなりすぎて冷間塑性加工が困難
になることのないようにするために、1.50%以下と
するのがよい。 【0015】Mo:0.70超過〜1.50% Moは焼入れ性の向上に寄与すると共に、結晶粒の微細
化およびオーステナイト粒界の強度向上に寄与する元素
であり、さらには焼もどし時に十分な2次硬化を得るこ
とができるようにし、引張強さ120Kgf/mm2以
上の高強度を得るための焼もどし温度が600℃を上回
るようにするために、0.70%超過とした。しかし多
く添加しても効果は飽和するのみならず、巨大な1次炭
化物が晶出してくるようになり、焼入れ時に残存して靭
性が低下するので、その上限を2.00%とした。ま
た、焼入れを施したのちに転造等の冷間塑性加工を行う
工程を採用する場合には、焼入れ後の硬さが大きくなり
すぎて冷間塑性加工が困難になることのないようにする
ために、1.50%以下とするのがよい。 【0016】V:0.05〜0.50%、 Vは焼もどし時に十分な2次硬化を得ることができるよ
うにするのに有効な元素であるので、このような効果を
得るために0.05%以上とした。しかし、多すぎると
巨大な一次炭化物が晶出し、焼入れ時に残存して靭性が
低下するので、その上限を1.50%とした。また、焼
入れを施したのちに転造等の冷間塑性加工を行う工程を
採用する場合には、焼入れ後の冷間塑性加工が容易にで
きるようにするために、その上限を0.50%とするの
がよい。 【0017】Al:0.01〜0.06% AlはNと共にAlNを形成して結晶粒を微細化し、靭
性の向上をはかるのに有効な元素であり、このような効
果を得るために0.01%以上とした。しかし、多すぎ
ると地疵となる大型介在物を生成し、Al2O3が疲労
の起点となるため0.06%以下とした。 【0018】N:0.005〜0.03% NはAlと共にAlNを形成して結晶粒を微細化し、靭
性の向上をはかるのに有効な元素であるので、このよう
な効果を得るために0.005%以上とした。しかし、
Nの添加量はAlの添加量のおよそ1/2とすることが
望ましいが、多すぎると地疵となる大型介在物を生成す
るので0.03%以下とした。 【0019】O:0.0015%以下O 含有量が多すぎるとAl2O3系の介在物を生成して
悪影響を及ぼすのでその上限を0.0015%とした。 【0020】Nb:0.20%以下,Ti:0.20%
以下,Zr:0.20%以下のうちから選ばれる1種ま
たは2種以上 Nb,Ti,Zrはいずれも微細な炭化物を形成し、結
晶粒の微細化に効果があり、耐遅れ破壊性の向上に寄与
する元素であるので、必要に応じてこれらの1種または
2種以上を添加するのもよい。しかし、各元素について
0.20%を超えて添加しても効果の向上は大きくない
ので、添加するとしても各々0.20%以下とするのが
よい。 【0021】本発明に係る高強度部品の製造方法では、
上記したより望ましい成分組成の鋼を素材とし、当該鋼
を高強度部品の粗形状に熱間,温間,冷間加工等により
成形した後焼入れを施し、次いで転造,圧造等の冷間塑
性加工を行って所定の高強度部品の形状に成形したのち
焼もどしを行うようにしている。このように焼入れ後に
冷間塑性加工を行ったのち焼もどしを施すようにしたの
は、冷間塑性加工の際の加工硬化および残留応力の付与
を焼もどし後にも維持されるようにし、高強度部品の疲
労強度をより一層向上させるようにするためであり、こ
のような疲労強度の向上は、低C含有量でかつMo,V
の炭化物形成による2次析出硬化型の鋼を素材とするこ
とにより可能となった。 【0022】 【実施例】表1に示す化学成分の本発明例による鋼A〜
Fおよび比較例の鋼G(SCM440H)をそれぞれ溶
製したのち造塊し、各鋼を直径8mmの線材に圧延し
た。 【0023】次いで、各線材に焼なましを施したのち引
張試験片および遅れ破壊試験片に加工し、各試験片に対
し、引張強度が120〜160Kgf/mm2となるよ
うに調質した。 【0024】 【表1】【0025】次いで、各供試片を用いて引張特性および
遅れ破壊特性を調べた。このとき、引張特性の試験に際
しては縮小JIS 4号試験片を使用した。その結果を
表2および図1に示す。 【0026】また、遅れ破壊特性の試験に際しては図2
に示す曲げ型促進試験片(l1=20mm,d1=6m
m,d2=4mm,R=0.1mm)を使用し、片持曲
げ荷重を負荷して行った。また、試験環境は0.1N−
HClとし、これを試験片の切欠部に滴下しながら曲げ
応力を加えた。そして、各供試材の遅れ破壊特性は、静
曲げ応力(σSB)に対する遅れ破壊試験30時間後に
おける強度(σ30h r)との比、すなわち遅れ破壊強
度比σ30hr/σSBで表わした。この結果を同じく
表2に示す。 【0027】 【表2】 【0028】表2に示すように、本発明例の鋼A〜F
は、引張強度120〜160Kgf/mm2に調質した
ときにおいて、伸びおよび絞りが良好な値を示してお
り、特に30時間強度比は比較例の鋼Gよりもかなり高
い値を示している。 【0029】次に、高強度部品の一例としてボルトを転
造加工により製造するにあたり、転造加工を焼入れ・焼
もどし前に行う通常の工程(表3のA,B,D,F,
G)と、焼入れ後に転造加工を行ってこの転造加工後に
焼もどしを行う本発明に基く工程(表3のA´,B´,
D´,F´)とを採用した場合における疲労特性への影
響を調べた。 【0030】この場合、ボルトに対して平均応力81K
gf/mm2を加える実体疲労試験を行って、3×10
6回後で破断しない応力振幅を調べた。この結果を表3
に示す。 【0031】 【表3】【0032】表3に示す結果より明らかなように、焼入
れ後に転造加工を行ったのち焼もどしを施すことによっ
て、転造加工の際の加工硬化および残留応力の付与によ
る効果をボルトに活用することが可能となり、疲労強度
を大幅に向上させることができた。 【0033】 【発明の効果】以上説明してきたように、本発明に係る
高強度部品の製造方法は、重量%で、C:0.12〜
0.25%、Si:0.15%未満、Mn:0.40%
以下、P:0.015%以下、S:0.005%以下、
Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.70超過〜
1.50%、V:0.05〜0.50%、Al:0.0
1〜0.06%、N:0.005〜0.03%、O:
0.0015%以下、および必要に応じてNb:0.2
0%以下,Ti:0.20%以下,Zr:0.20%以
下のうちから選ばれる1種または2種以上、残部Feお
よび不純物からなる鋼を素材とし、当該鋼を粗形状に成
形した後焼入れを施し、冷間塑性加工後に焼もどしを施
すようにしたものであるから、高強度でしかも耐遅れ破
壊性に優れた高強度部品を得ることが可能であり、しか
も当該高強度部品の耐疲労性をより一層向上させること
ができるようになるという非常に優れた効果をもたらし
うるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】各供試鋼の焼もどし温度による硬さおよび引張
特性を調べた結果を示すグラフである。 【図2】遅れ破壊特性の試験に使用した試験片の説明図
である。
特性を調べた結果を示すグラフである。 【図2】遅れ破壊特性の試験に使用した試験片の説明図
である。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所
C21D 9/00 9542−4K C21D 9/00 B
F16B 35/00 F16B 35/00 J
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.重量%で、C:0.12〜0.25%、Si:0.
15%未満、Mn:0.40%以下、P:0.015%
以下、S:0.005%以下、Cr:0.50〜1.5
0%、Mo:0.70超過〜1.50%、V:0.05
〜0.50%、Al:0.01〜0.06%、N:0.
005〜0.03%、O:0.0015%以下、残部F
eおよび不純物からなる鋼を素材とし、当該鋼を粗形状
に成形した後焼入れを施し、冷間塑性加工後に焼もどし
を施すことを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた高強度部
品の製造方法。 2.重量%で、C:0.12〜0.25%、Si:0.
15%未満、Mn:0.40%以下、P:0.015%
以下、S:0.005%以下、Cr:0.50〜1.5
0%、Mo:0.70超過〜1.50%、V:0.05
〜0.50%、Al:0.01〜0.06%、N:0.
005〜0.03%、O:0.0015%以下、および
Nb:0.20%以下,Ti:0.20%以下,Zr:
0.20%以下のうちから選ばれる1種または2種以
上、残部Feおよび不純物からなる鋼を素材とし、当該
鋼を粗形状に成形した後焼入れを施し、冷間塑性加工後
に焼もどしを施すことを特徴とする耐遅れ破壊性に優れ
た高強度部品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8132273A JP2728084B2 (ja) | 1996-05-27 | 1996-05-27 | 高強度部品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8132273A JP2728084B2 (ja) | 1996-05-27 | 1996-05-27 | 高強度部品の製造方法 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62204132A Division JP2954216B2 (ja) | 1987-08-19 | 1987-08-19 | 高強度部品用鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08333625A JPH08333625A (ja) | 1996-12-17 |
JP2728084B2 true JP2728084B2 (ja) | 1998-03-18 |
Family
ID=15077433
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8132273A Expired - Lifetime JP2728084B2 (ja) | 1996-05-27 | 1996-05-27 | 高強度部品の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2728084B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102097974B1 (ko) * | 2019-07-15 | 2020-04-07 | 유대업 | 육각헤드 토크볼트 및 그 제조방법 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5576045A (en) * | 1978-12-05 | 1980-06-07 | Mitsubishi Steel Mfg Co Ltd | Steel for cold working and aging treatment |
JPS61130456A (ja) * | 1984-11-29 | 1986-06-18 | Honda Motor Co Ltd | 高強度ボルト及びその製造方法 |
JPS61147812A (ja) * | 1984-12-19 | 1986-07-05 | Nippon Kokan Kk <Nkk> | 遅れ破壊特性の優れた高強度鋼の製造方法 |
-
1996
- 1996-05-27 JP JP8132273A patent/JP2728084B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08333625A (ja) | 1996-12-17 |
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