JP3310484B2 - 繊維強化樹脂複合体 - Google Patents

繊維強化樹脂複合体

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JP3310484B2
JP3310484B2 JP32043394A JP32043394A JP3310484B2 JP 3310484 B2 JP3310484 B2 JP 3310484B2 JP 32043394 A JP32043394 A JP 32043394A JP 32043394 A JP32043394 A JP 32043394A JP 3310484 B2 JP3310484 B2 JP 3310484B2
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兼男 浜島
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は繊維強化樹脂複合体に関
する。本発明は各種の車両部品、産業機器、産業部品、
例えば歯車、バルブリフタ−、プーリ等に適用される繊
維強化樹脂複合体に利用できる。
【0002】
【従来の技術】繊維強化樹脂複合体の従来技術について
歯車を例にとって説明する。歯車の材料としては、特に
高負荷用途の歯車では、鋼等の金属材料が一般的である
が、近年、歯車の噛合い音の解消等を図るため繊維強化
樹脂複合体を用いたものが検討されており、主に次のよ
うなものがある。 射出成形によるチョップド繊維強化歯車(例えば特開
平2−8542号公報) 圧縮成形による連続繊維強化歯車(例えば特開平2−
241729号公報) これらのうち、の歯車が特に一般的であり、各方面で
広く応用されているが、特に高速あるいは高負荷を要す
る部品に対してはの歯車が使用されている。しかしこ
れらのものでは必ずしも充分な繊維強化樹脂複合体を期
待できない。
【0003】そこで近年、本出願人により、高強度の第
1強化繊維と切削加工性の良い他の強化繊維とを含み、
両者の特性を兼備することを目指した繊維強化樹脂歯車
が開発されている(特開平5−240325号公報)。
この公報によれば、高強度の第1強化繊維として高弾性
率をもつ炭素繊維やパラ系アラミド繊維が採用され、他
の強化繊維として加工性の良いメタ系アラミド繊維が採
用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した特開平5−2
40325号公報に係る技術によれば、第1強化繊維と
第2強化繊維とが含まれているものの、両者は独立性は
高く、単に縦糸と横糸との関係で混織されているにすぎ
ない。故に上記した特開平5−240325号公報に係
る技術によれば、高強度の第1強化繊維と加工性の良い
他の強化繊維とはフィラメントレベルでは混合されてい
ない。故に、第1強化繊維として高弾性率をもつパラ系
アラミド繊維を採用した場合には、パラ系アラミド繊維
は樹脂に対する濡れ性が充分でなく、従って繊維強化樹
脂複合体の全体としてみると、樹脂との密着性の向上に
は限界がある。即ち、樹脂に対して密着性が低下した部
分が局部的に発現し易い。この様な樹脂との密着性の低
下に起因して、パラ系アラミド繊維等の高強度繊維の本
来の特性が発現しにくい不具合がある。
【0005】本発明は上記した実情に鑑みなされたもの
であり、高強度の第1強化繊維よりも樹脂に対して濡れ
性が良い第2強化繊維を微細分散させることにより、樹
脂に対する密着性を改善し、一層高い強度が得られる繊
維強化樹脂複合体を提供することを共通の技術的課題と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を達
成すべく開発を進め、高強度の第1強化繊維と第1強化
繊維よりも濡れ性が良い第2強化繊維とをフィラメント
レベルで微細混合したり、あるいは、互いに短繊維同士
が絡んだ状態で微細混合されたフェルト材とすれば、繊
維全体において、樹脂に対する濡れ性が良い第2強化繊
維の分散性が一層微細となり、樹脂密着性の低下を補い
易く、繊維強化樹脂複合体の高強度化に有利であると着
想し、試験で確認し、本発明を完成したものである。
【0007】すなわち、請求項1に係る繊維強化樹脂複
合体は、高強度の第1強化繊維と第1強化繊維よりも樹
脂に対する濡れ性が良い第2強化繊維とを備えた繊維集
合体と、繊維集合体により補強された樹脂とを備えた繊
維強化樹脂複合体であって、繊維集合体は、第1強化繊
維と第2強化繊維とを混紡した混紡糸の集合体で構成さ
れており、第1強化繊維は有機系高強度・高弾性率繊維
であり、第2強化繊維は有機系繊維であることを特徴と
するものである。
【0008】請求項2に係る繊維強化樹脂複合体は、高
強度の第1強化繊維と第1強化繊維よりも樹脂に対する
濡れ性が良い第2強化繊維とを備えた繊維集合体と、繊
維集合体により補強された樹脂とを備えた繊維強化樹脂
複合体であって、繊維集合体は、連続する第1強化繊維
と連続する第2強化繊維とを束ねた束糸の集合体で構成
されており、第1強化繊維は有機系高強度・高弾性率繊
維であり、第2強化繊維は有機系繊維であることを特徴
とするものである。
【0009】
【0010】
【作用及び発明の効果】本発明に係る繊維強化樹脂複合
体で用いる第2強化繊維は、有機系繊維であり、メタ系
アラミド繊維があげられる。第1強化繊維は、有機系高
強度・高弾性率繊維であり、パラ系アラミド繊維、全芳
香族ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維が
あげられる。
【0011】請求項1に係る繊維強化樹脂複合体によれ
ば、高強度の第1強化繊維と樹脂に対する濡れ性が良い
第2強化繊維とが混紡して混紡糸つまり1本の糸を構成
している。ここで混紡糸とは、繊維フィラメント同志を
混合して紡いだ糸を意味する。この様にフィラメントレ
ベルで第1強化繊維と第2強化繊維とが微細混合してい
る。
【0012】請求項2に係る繊維強化樹脂複合体によれ
ば、高強度の第1強化繊維と樹脂に対する濡れ性が良い
第2強化繊維との繊維素同志、つまりフィラメント同志
を混合して束ねて束糸を構成している。
【0013】この様な本願発明に係る繊維強化樹脂複合
体によれば、樹脂に対する濡れ性が良い第2強化繊維の
分散度を一層微細にできる。故に、上記した特開平5−
240325号公報に係る技術に比較して、繊維集合体
のうち樹脂に対して密着性が悪い部分が局部的に発現す
ることが抑制される。よって繊維集合体と樹脂との密着
性が一層向上し、高強度の第1強化繊維の本来の強化機
能が確保され易くなり、ひいては繊維強化樹脂複合体の
強度が増加する。
【0014】この様な本願発明に係る繊維強化樹脂複合
体によれば、高強度の第1強化繊維が樹脂に対して濡れ
性が悪い場合であっても、前述の様に、濡れ性の良い第
2強化繊維が微細分散しているので、繊維集合体のうち
樹脂に対して密着性が悪い部分が局部的に発現すること
が抑制でき、繊維強化樹脂複合体の強度向上に有利であ
る。
【0015】特に繊維強化樹脂歯車に適用した場合に
は、歯部の強度向上に有利である。
【0016】
【実施例】本発明の各実施例を具体的に説明する。 (実施例1)第1強化繊維としての高強度・高弾性率の
有機系繊維であるパラ系アラミド繊維(直径:約12μ
m、帝人(株)製「テクノーラ」)と、第2強化繊維と
してのメタ系アラミド繊維(直径:約15μm、帝人
(株)製「コーネックス」)との各チョップト(短繊
維:長さ25mm)とを撚りをかけて混紡した構造のフ
イラメント糸である混紡糸2を用い、この混紡糸2を織
り込んで形成した平織り繊維クロス1を用いた。
【0017】図1に示す様に、このクロス1の幅はL
1、長さはL2で示され、辺1a〜1dを備えている。
上記した混紡糸2の要部の代表的な模式的構造を、図1
(A)にクロス1と共に示す。前述した様にこの混紡糸
2は、上記したパラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊
維とを混紡した糸である。図1(A)においてハッチン
グで示す領域をメタ系アラミド繊維として模式的に示
し、白抜きの領域をパラ系アラミド繊維として模式的に
示した。この様に混紡糸2においては、パラ系アラミド
繊維とメタ系アラミド繊維とが撚りをかけられた状態
で、1本の糸を構成すべく、繊維素として混合してい
る。
【0018】この混紡糸2は例えば次の様にして製造で
きる。即ち、両繊維のチョップト繊維を水中で解繊し、
その後に脱水して得た混合物を用い、混合物に撚りをか
けながら、引き抜いて混紡状態の1本の糸を形成でき
る。但し、混紡形態はこれに限定されるものではない。
ここで上記したクロス1の詳細スペックを表1に示す。
【0019】
【表1】 そして図1(B)に示す様にこのクロス1をロール状に
巻回して棒巻き体を形成し、その棒巻き体を湾曲して、
その一端部と他端部とを連結し、同様の混紡糸2で端部
3aを縫い合わせ、図1(C)に示すリング状の巻回体
つまりプリフォーム体3を作製した。
【0020】次に図2から理解できる様に、このプリフ
ォーム体3を2個略同軸的に上下に重ね合わせ、内側に
リング状のインサートメタル5(炭素鋼;S45C)を
嵌めた。図2に示す様に、150℃の成形用金型4にセ
ットした。この金型4は、インサート保持用の突部40
aを備えたダイス型40と、下端にリング状の押圧面4
1aを備えた押圧型41と、押圧型41の中央孔41b
に挿通されたパンチ42とを備えている。
【0021】本実施例では金型4を型締めした後、金型
4のキャビティ内を真空引きし、プリフォーム体3とイ
ンサートメタル5が、充分に型温と同一温度まで昇温す
るのを待った。次に、130℃に昇温、溶融した樹脂
(熱硬化アミノ・アラミド樹脂;武田薬品工業(株)
製、「CPレジン」)に触媒(臭化オクチル、1wt
%)を速やかに添加、攪拌して、減圧した金型4のキャ
ビティ内へ注入した。即ちRTM成形を実施した。これ
により繊維間に樹脂が含浸される。
【0022】本実施例では金型4で10分間樹脂を硬化
させて、図3に示す成形品6を取り出した。図3に示す
様にインサートメタル5は、凹部5a及び凸部5b更に
は内周面5eを備えている。成形品6の寸法は、図3に
示すL7が40.0mm、L8が55mm、L9が7
9.0mm、tが10mmである。
【0023】この成形品6の材料組織を切断し、その切
断部分を光学顕微鏡で調査したところ、メタ系アラミド
繊維とパラ系アラミド繊維とが1本の糸の内で微細分
散、つまりフィラメントレベルで実質的に均一に微細分
散して複合されていることが確認された。また、同様の
成形品6を用い、歯車形状へと加工刃具で歯切加工し、
歯車を形成した(表2参照)。歯部の歯面(即ち加工
面)は平滑であった。即ち、実施例1に係る複合体は、
メタ系アラミド繊維のみで強化した複合体と同等の加工
性、歯切り性を有していることがわかった。
【0024】加工刃具に対する攻撃性についても、伸び
量が大きいメタ系アラミド繊維のみで強化した複合体と
同等であり、加工刃具の消耗等も少ないことも確認され
た。この歯車を用いて、歯部の曲げ破壊荷重を測定し
た。この場合には歯車を固定し、互いに隣設する歯部間
のピッチ円付近に硬球体を押込むことにより、歯部に曲
げ荷重を加え、歯部が破断する際の破壊荷重を測定し
た。
【0025】試験結果は、図4において実施例1に係る
●で示す様に、400kgf近く得られ、パラ系アラミ
ド繊維が0%つまりメタ系アラミド繊維のみで強化した
歯車(即ち比較例:160kgf程度)に比較して約
2.5倍であり、極めて高い強度が得られることがわか
った。なおこの実施例1及び比較例では、複合体全体
(インサートメタル5を除く領域)を100vol%と
したとき強化繊維の総量は50vol%である。
【0026】
【表2】 本実施例に係る歯車8における繊維の代表的な配向形態
を図5に模式的に示す。図5から理解できる様に、歯部
7の噛み合い面70では、繊維100が木の年輪状に配
向している。また歯部7の最外周面としての歯先面75
では、基本的には、ほぼ周方向にのびる繊維101と、
歯車の軸芯にそってのびる繊維102とが交差して配向
している。また、歯部7の軸端面76では、ほぼ周方向
にのびる繊維103と、ほぼ放射方向にのびる繊維10
4とが交差して配向している。各繊維100〜104
は、前記したクロス1を構成していた混紡糸2である。
【0027】(試験例)上記した実施例1と同様の素
材、成形方法を採用し、第1強化繊維としてのパラ系ア
ラミド繊維と第2強化繊維としてのメタ系アラミド繊維
との配合割合(vol%)を表3に示す様に変え、実施
例1と同様の歯車を形成した。なおこの例においても、
複合体全体を100vol%としたとき強化繊維の総量
は50vol%である。
【0028】
【表3】 歯車を構成する繊維強化樹脂複合体の材料組織を光学顕
微鏡で観察したところ、いずれの複合体(NO.a〜N
O.h)についても、実施例1と同様にメタ系アラミド
繊維とパラ系アラミド繊維とが実質的にフィラメントレ
ベルで均一に微細分散していた。
【0029】また、いずれも比較的良好な歯切加工性を
示した。ただし、高強度・高弾性率繊維であるパラ系ア
ラミド繊維の配合比が80vol%以上では、歯切加工
性が徐々に低下し、加工面荒れが散見される傾向にあっ
た。これらの歯車の歯部の実体曲げ破壊荷重の測定結果
を、実施例1の結果と合わせて図4に示す。
【0030】図4の特性線から理解できる様に、パラ系
アラミド繊維が0%、即ちメタ系アラミド繊維のみから
なる紡績糸で強化した複合体で形成した歯車(比較例
)に比較すると、高強度・高弾性率繊維であるパラ系
アラミド繊維の割合が20〜70vol%のとき、大幅
に強度が向上することがわかった。 (実施例2、3)実施例2として、実施例1で用いた高
強度・高弾性率繊維としてのパラ系アラミド繊維に代え
て、全芳香族ポリエステル繊維(クラレ(株)製「ベク
トラン」:直径22μm)を用い、その他は実施例1と
同様に、歯車を形成した。その組織は光学顕微鏡でみた
ところ実施例1と同様に均一であり、歯車への歯切加工
性も良好であった。
【0031】更に実施例3として、実施例1のパラ系ア
ラミド繊維に代えて、超分子量ポリエチレン繊維(三井
石油化学工業(株)「テクミロン」:直径15μm)を
用い、その他は実施例1と同様に、歯車を成形した。そ
の組織は光学顕微鏡でみたところ実施例1と同様に均一
であり、歯車への歯切加工性も良好であった。これらの
歯車の破壊強度を測定し、結果を図6に示す。図6に示
す様に実施例2、実施例3は、実施例1と略同等あるい
はそれ以上の高い強度を有することがわかった。
【0032】なおこの例においても、複合体全体を10
0vol%としたときには、繊維総量は50vol%で
ある。上記した高強度・高弾性率繊維においても、パラ
系アラミド繊維と同様に、歯車実体での高強度を発現す
るためには、繊維総量において全芳香族ポリエステル繊
維や超高分子量ポリエチレン繊維の割合は20〜80v
ol%であり、より好ましくは30〜70vol%であ
った。
【0033】(参考例1) この例では、実施例1で用いた混紡糸2からなるクロス
を用いず、長さ10mmのメタ系アラミド繊維(直径:
約15μm)、及び、長さ10mmのパラ系アラミド繊
維(直径:約12μm)の短繊維状のチョップト繊維か
らなるフェルト材を用いた。このフェルト材は不織布で
あり、各チョップト繊維同士が機械的にかつ複雑に絡み
あって、交錯している。
【0034】そして、このフェルト材を円板状に打ち抜
き、これを重ね合わせて、内側にインサートメタルを配
し、実施例1と同様に成形品を形成し、成形品を歯切加
工して歯車を形成した。この例においても、複合体全体
を100vol%としたときには、繊維総量は50vo
l%である。この繊維総量において、メタ系アラミド繊
維とパラ系アラミド繊維との配合比(vol%)は、表
4に示す通りに変更した。
【0035】
【表4】 この例においても、成形品を切断してその組織を光学顕
微鏡で調査したところ、繊維は圧縮方向に垂直な面内で
ランダムに配向しており、2種類の繊維は、フィラメン
トレベルで実質的に均一に微細分散していた。この例で
も、材料組織が均一でかつ緻密であるため、成形品の歯
切加工性は、パラ系アラミド繊維90vol%まで、良
好な加工性を示した。
【0036】これらの歯車の歯部の曲げ強度を評価した
ところ、図7の特性線に示す様になった。この例では強
化繊維はフェルト材つまり不織布であり、各繊維同士が
機械的に複雑に絡み合っており、四方八方に分散してい
る。この例では短繊維同士が絡み合ったフェルト材を採
用しているので、強化繊維としてみると、前記した実施
例1の場合における混紡糸2のような特定方向における
繊維配向が無いため、歯部の曲げ強度の絶対値は、混紡
糸2を用いた実施例1をやや下回るが、図7の特性線か
ら理解できる様に、パラ系アラミド繊維の配合が30v
ol%〜80vol%の領域、つまり試験片NO.k〜
NO.pの領域では、明らかにパラ系アラミド繊維によ
る実体強度向上への寄与が認められた。
【0037】また図7から理解できる様に、パラ系アラ
ミド繊維が0%つまりメタ系アラミド繊維のみからなる
フェルト材で強化した複合体(即ち比較例)を上回る
特性が得られた。 (実施例5)この例においても、混紡糸からなるクロス
を用いずに、連続繊維をロービング系へと収束させる際
に、長く連続するメタ系アラミド繊維(直径:15μ
m)と長く連続するパラ系アラミド繊維(直径:12μ
m)とを引き揃えた混合ロービング糸9A(20te
x)からなる図9に示す平織り繊維クロス9(目付:1
30gr/m2 )を用いた。
【0038】図9に示す混合ロービング糸9Aにおい
て、ハッチングで示す領域をメタ系アラミド繊維として
模式的に示し、白抜きの領域をパラ系アラミド繊維とし
て模式的に示した。図9に模式的に示す様に、連続する
メタ系アラミド繊維及び連続するパラ系アラミド繊維
は、ランダムに混合するようにほぼ平行に引き揃えられ
ている。
【0039】そして、このクロス9を用い、実施例1と
同様の方法にて成形品を成形し、その成形品を歯切加工
して歯車を形成した。この例においても複合体全体を1
00vol%としたとき繊維総量は50vol%であ
る。この繊維総量においてアラミド繊維の配合比(vo
l%)は表5に示す通りとした。
【0040】
【表5】 成形品の組織を切断して光学顕微鏡で調査したところ、
ロービング断面にて、メタ系アラミド繊維とパラ系アラ
ミド繊維とは均一に微細分散していた。
【0041】この例においても両繊維が均一に分散して
いるため、成形品の歯切加工性も良好であるが、パラ系
アラミド繊維の配合比が70vol%以上の領域で歯切
加工性が急激に低下した。歯切加工後の歯車の歯部の実
体曲げ破壊荷重を評価したところ、図8の特性線に示す
様な結果となり、繊維総量においてパラ系アラミド繊維
配合比が10vol%〜60vol%の範囲にて、極め
て高い強度が得られることがわかった。
【0042】上記の様な混合ロービング糸9Aで織られ
たクロスによれば、先の実施例で用いた混紡糸2、フェ
ルト材と較べて、繊維の延びる方向において配向性が高
い。そのためパラ系アラミド繊維の配合は少量にて強度
向上に効果的となるが、同様の理由により、70vol
%以上では加工性が大幅に低下する。 (比較例)前述した比較例などについて説明する。メタ
系アラミド繊維からなる紡績系を織って形成したクロス
(比較例)、メタ系アラミド繊維からなるフェルト材
(比較例)、メタ系アラミド繊維の連続繊維を束ねた
ロービング糸を織って形成したクロス(比較例)を用
いる。
【0043】更に、パラ系アラミド繊維からなる紡績系
を織って形成したクロス(比較例)、パラ系アラミド
繊維からなるフェルト材(比較例)、パラ系アラミド
繊維からなる連続繊維を束ねたロービング糸を織って形
成したクロス(比較例)を用いた。繊維径等の条件
は、対応する実施例と同様にした。各々、前記した実施
例1と同様の方法により成形品を成形し、その成形品に
歯切加工で歯部を形成し、歯車とした。
【0044】歯切加工を行ったところ、伸び量が大きな
メタ系アラミド繊維のみが強化繊維として採用されてい
る比較例〜比較例については、良好な歯切加工性を
示した。しかし高強度・高弾性率をもつパラ系アラミド
繊維のみが強化繊維として採用されている比較例〜比
較例については、歯切加工性が悪く、歯車の歯面に繊
維が毛羽立った状態となり、加工刃具の消耗も激しかっ
た。
【0045】これらの歯車の歯部の破壊荷重を評価し
た。比較例及び比較例の結果を図4に示し、比較例
及び比較例の結果を図7に示し、比較例及び比較
例の結果を図8に示す。弾性率がパラ系アラミド繊維
ほどは高くないメタ系アラミド繊維のみの強化では、歯
部はあまり高い強度が得られない。また高強度・高弾性
率のパラ系アラミド繊維のみの強化でも、歯車の歯部の
実体強度は、それほど高くないことがわかる。
【0046】更に、比較例として、メタ系アラミド繊
維の連続繊維ロービング糸とパラ系アラミド繊維の連続
繊維ロービング糸(フィラメント収束本数は共に80
本)とを、50:50(vol比)で交互にハイブリッ
ド化した交織クロスを用いて、実施例1と同様に歯車を
形成した。これについも同様に歯切り加工の際には、歯
部の歯面においてパラ系アラミド繊維のロービング糸が
毛羽立ち、加工性が良くないことがわかった。
【0047】また、歯車の歯部の実体強度は、図8にお
いて比較例として示す様に、200kgf未満であり
あまり高くなく、パラ系アラミド繊維の高強度の特性を
生かせていないことがわかった。以上の説明から理解で
きる様に、高強度・高弾性率という長所をもつものの樹
脂に対する濡れ性、密着性がメタ系アラミド繊維よりも
落ちる短所をもつパラ系アラミド繊維の本来の特性を生
かすためには、樹脂との密着力に優れたメタ系アラミド
繊維とをフィラメントレベルで微細分散させた緻密なハ
イブリッド化が有効である。これにより樹脂との密着力
に優れたメタ系アラミド繊維が微細分散して、パラ系ア
ラミド繊維とメタ系アラミド繊維との接近度や接触度が
高まり、樹脂に対して濡れ性が良好でないパラ系アラミ
ド繊維の樹脂に対する濡れ性、ひいては樹脂に対する密
着性を補い得る。
【0048】しかし上記した一般的なロービング糸同志
の交織などでは、メタ系アラミド繊維とパラ系アラミド
繊維との独立性が高く、従ってパラ系アラミド繊維とメ
タ系アラミド繊維との接近度や接触度が低く、よって樹
脂に対して濡れ性が良いメタ系アラミド繊維の分散度が
低く、樹脂に対する密着性の向上には限界がある。 (その他)上記した例では、クロスに溶融樹脂を金型内
で装填して両者を一体化しているが、これに限らず、ク
ロスに樹脂を含浸させたプリプレグシートを用いて成形
品を成形しても良い。この場合には、プリプレグシート
を巻いて棒状体とするとともに、その棒状体の両端を合
わせてリング状としたリング状プリフォーム体とし、リ
ング状プリフォーム体を成形固化した成形品を形成し、
その成形品を歯切りし、これにより繊維強化樹脂歯車を
形成する。
【0049】また繊維強化樹脂複合体を構成するマトリ
ックス樹脂としては公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂
を採用できる。例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、
ポリイミド樹脂等の各種の熱硬化樹脂、あるいは、PE
S(ポリエ−テルサルフォン)、PEEK(ポリエーテ
ルエーテルケトン)等の各種熱可塑性樹脂を採用するこ
ともできる。
【0050】上記した各例では繊維強化樹脂複合体を1
00vol%としたとき繊維の総量を50vol%にし
ているが、これに限定されるものではなく、例えば30
〜70vol%にすることできる。上記した実施例では
成形品の外周部に歯切して外歯構造としているが、これ
に限らず内歯構造、ラック構造としても良いものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】クロスからリング状のプリフォーム体を形成す
る工程を示す図である。
【図2】リング状のプリフォーム体2個を金型のキャビ
ティに重ねた状態の断面図である。
【図3】リング状の成形品の斜視図である。
【図4】パラ系アラミド繊維の配合比と破壊荷重との関
係を示すグラフである。
【図5】木の年輪状の繊維の配向とともに示す繊維強化
樹脂歯車の歯部の部分斜視図である。
【図6】実施例1〜実施例3と破壊荷重との関係を示す
グラフである。
【図7】パラ系アラミド繊維の配合比と破壊荷重との関
係を示すグラフである。
【図8】パラ系アラミド繊維の配合比と破壊荷重との関
係を示すグラフである。
【図9】連続するパラ系アラミド繊維とメタ系アラミド
繊維とを揃えたロービング糸を織ったクロスと、ロービ
ング糸の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
図中、1及び9はクロス、2は混紡糸、3はプリフォー
ム体、4は金型、7は歯部、8は歯車、9Aは混合ロー
ビング糸を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−113458(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 70/00 - 70/88 F16H 55/00 - 55/56

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高強度の第1強化繊維と該第1強化繊維よ
    りも樹脂に対する濡れ性が良い第2強化繊維とを備えた
    繊維集合体と、該繊維集合体により補強された樹脂とを
    備えた繊維強化樹脂複合体であって、 該繊維集合体は、該第1強化繊維と該第2強化繊維とを
    混紡した混紡糸の集合体で構成されており、該第1強化
    繊維は有機系高強度・高弾性率繊維であり、該第2強化
    繊維は有機系繊維であることを特徴とする繊維強化樹脂
    複合体。
  2. 【請求項2】高強度の第1強化繊維と該第1強化繊維よ
    りも樹脂に対する濡れ性が良い第2強化繊維とを備えた
    繊維集合体と、繊維集合体により補強された樹脂とを備
    えた繊維強化樹脂複合体であって、 該繊維集合体は、連続する該第1強化繊維と連続する該
    第2強化繊維との繊維素同志を混合して束ねた束糸の集
    合体で構成されており、該第1強化繊維は有機系高強度
    ・高弾性率繊維であり、該第2強化繊維は有機系繊維で
    ることを特徴とする繊維強化樹脂複合体。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2において、第1強
    化繊維を構成する有機系高強度・高弾性率繊維は、パラ
    系アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、超高分子
    量ポリエチレン繊維の中から選ばれる少なくとも1種で
    あり、第2強化繊維を構成する有機系繊維はメタ系アラ
    ミド繊維であることを特徴とする繊維強化樹脂複合体。
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