JP3309299B2 - 改質アクリロニトリル系繊維の製造方法 - Google Patents

改質アクリロニトリル系繊維の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は改質アクリロニトリル系
繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、アクリロニトリル系繊維としては
各種のものが知られているが、いずれもアクリロニトリ
ルを主成分とするビニル共重合体からなる。このような
アクリロニトリル系繊維は、メリヤス、セーター、織
物、衣服、毛布等広範囲の繊維製品原料として利用され
ている。このアクリロニトリル系繊維は、羊毛に似た性
質を有する点に大きな特徴を有するが、吸湿性の点で
は、羊毛に比べて大きく劣っており、そのため、静電気
が発生しやすい、感触が冷たい等の問題を含む。アクリ
ロニトリル系繊維に見られるような問題を解決するため
に、その繊維にビニルモノマーをグラフト共重合反応さ
せることが試みられたが、アクリロニトリル系繊維にビ
ニルモノマーをグラフト共重合させることはむずかし
く、工業的に成功した例は皆無である。
【0003】一方、合成繊維に脱臭機能を付与させるた
めに、合成繊維に酸性基を金属塩の形態で導入する方法
が提案されている(特開昭62−142562号公報、
特開平5−7617号公報)。この方法は、酸性基を有
するビニルモノマーをグラフト共重合法により繊維に結
合させる工程を含むものである。この場合のグラフト共
重合は、ポリエステル繊維やポリアミド繊維を基材と
し、これに重合開始剤としての過酸化ベンゾイル等の有
機過酸化物の存在下で酸性基を有するビニルモノマーグ
ラフト重合させることによって行われている。この特許
公報には、アクリロニトリル系繊維に対してメタクリル
酸をグラフト共重合させる具体的方法については何ら示
唆されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の課題
は、吸湿性にすぐれた改質アクリロニトリル系繊維の製
造方法を提供することにある。本発明の他の課題は、消
臭効果を有する改質アクリロニトリル系繊維の製造方法
を提供することにある。本発明のさらに他の課題は、ア
クリロニトリル系繊維にメタクリル酸及び/又はヒドロ
キシル基含有メタクリル酸をグラフト共重合させる方法
を提供することにある。本発明のさらに他の課題は、以
下の記載において明らかに理解されるであろう。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成する
に至った。即ち、本発明によれば、過酸化水素と二価鉄
塩を含む水溶液中において、アクリロニトリル系繊維に
メタクリル酸及び/又はヒドロキシ基含有メタクリレー
トをグラフト共重合反応させることを特徴とする改質ア
クリロニトリル系繊維の製造方法が提供される。
【0006】本発明で用いるアクリロニトリル系繊維
は、ポリアクリロニトリル又はアクリロニトリルとビニ
ルモノマーとの共重合体からなる。ビニルモノマーとし
ては、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、アクリル酸、メ
タクリル酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メチルビニ
ルピリジン、スチレンスルホン酸等が用いられる。本発
明で用いる好ましいアクリロニトリル系繊維は、アクリ
ロニトリル含有率が20〜100重量%、好ましくは3
5〜90重量%のもので、コモノマーとして、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、アクリル酸メチル、スチレンスル
ホン酸、メタクリル酸メチル等の少なくとも1種を含む
ものである。また、アクリロニトリル系繊維には他の繊
維が含まれていてもよい。繊維の形状は、糸状や綿状、
布状、トウ状、不織布状等であることができる。
【0007】本発明においては、アクリロニトリル系繊
維(以下、単に繊維とも言う)に親水基を導入するため
に、過酸化水素と二価鉄塩を含有する水溶液中で、繊維
に対してメタクリル酸及び/又はヒドロキシ基含有メタ
クリレート(以下、単にメタアクリル系モノマーとも言
う)をグラフト共重合させる。ヒドロキシ含有メタクリ
レートとしては、メタクリレートのアルコール成分にヒ
ドロキシ基を含有するもの、例えば、メタクリル酸2−
ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピ
ル等が挙げられる。二価鉄塩としては、水中において2
価鉄イオンを放出し得るものであれば任意のものが用い
られる。このようなものとしては、硫酸第一鉄、塩化第
一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、硝酸第一鉄等がある。
この二価鉄塩と過酸化水素の組合せは、レドックス系触
媒を構成し、メタクリル系モノマーのグラフト共重合反
応を促進させる。水溶液中の過酸化水素濃度は、0.0
1〜0.1モル/l、好ましくは0.03〜0.06モ
ル/lである。また、鉄塩濃度は、0.5〜2ミリモル
/l、好ましくは0.7〜1.5ミリモル/lである。
【0008】また、この水溶液中には、必要に応じ、酸
を添加することができる。この酸の添加により、メタク
リル系モノマーの反応率(グラフト化率)を向上させるこ
とができる。酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン
酸、酢酸、ギ酸等が挙げられる。水溶液中の酸濃度は、
2〜4ミリモル/l、好ましくは2.5〜3.5ミリモ
ル/lである。さらに、この水溶液中には、従来公知の
金属封鎖剤、例えば、リン酸系やホスホン酸系のものの
他、EDTA、NTA等を添加することができる。アク
リロニトリル系繊維(絶乾重量)に対する水溶液の重量
比(浴比)は、5〜30、好ましくは5〜15である。
反応温度は、70〜110℃、好ましくは90〜100
℃であり、反応時間は、30〜180分、好ましくは6
0〜90分である。本発明において用いるメタクリル系
モノマーの使用割合は、アクリロニトリル系繊維(絶乾
重量)100重量部に対して、5〜100重量部、好ま
しくは10〜60重量部である。メタクリル系モノマー
の使用割合がこれより少ないと、親水基の導入割合が少
なすぎるために、改質効果が十分でなく、一方、多けれ
ば多いほど親水基導入割合は増加するが、効果の格別の
向上は得られず、経済的に不利である。
【0009】本発明の改質アクリロニトリル系繊維にお
いて、メタクリル系モノマーのグラフト化率(繊維に対
するメタクリル系モノマーの反応重量比)は、3〜60
重量%、好ましくは5〜40重量%である。このグラフ
ト化率が前記範囲を超えると、グラフト共重合反応に長
時間を要し、経済的に不利である。一方、前記範囲より
少ないと、十分な改質効果を得ることができない。グラ
フト化率は、繊維に対するメタクリル系モノマーの使用
割合及び反応条件で調節することができる。前記のよう
にして得られるメタクリル系モノマーをグラアト共重合
させた繊維は、必要に応じ、これに塩形成性陽イオンを
反応させてそのカルボキシル基COOHをCOOM(式
中、Mは塩形成性陽イオンを示す)に変換させることが
できる。この場合の陽イオンとしては、ナトリウムイオ
ン、カルシウムイオン、二価鉄イオン、二価銅イオン、
亜鉛イオン、二価マンガンイオン、銀イオン等の金属イ
オンの他、第4級アンモニウムイオン、第4級有機アン
モニウムイオン等が挙げられる。
【0010】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明する。なお、以下において示す%は重量%である。
【0011】実施例1 過酸化水素水(H22濃度:35%):0.3%、硫酸
第一鉄:0.02%、メタクリル酸:1.5%、キレス
トNTB(キレスト化学(株)、金属封鎖剤):0.0
3%、硫酸(50°Be):0.06%を含む水溶液1
50mlによく洗浄したカシミロン(3D ×76V G
K、旭化成工業製アクリル繊維)10gを浸漬して、常
温より徐々に昇温、100℃に至らしめ、その温度で1
時間処理し、よく水洗し、乾燥する。加工器内及び繊維
の表面にホモポリマーの付着は見掛けられない。化学分
析により算出したグラフト率は10.6%であった。
【0012】実施例2 過酸化水素水:0.5%、硫酸第一鉄(FeSO4・7
2O):0.02%、メタクリル酸:2.5%、キレ
ストNTB 0.05%、硫酸(50°Be):0.1
%を含む水溶液100mlに、よく洗浄したカネボウア
クリルWQ−1(1.8D ×76mm、鐘紡製アクリル繊
維)10gを浸漬して、実施例1と同様に処理した。加
工後の繊維の重量の増加率は10.1%であった。
【0013】実施例3 過酸化水素水:0.5%、硫酸第一鉄(FeSO4・7
2O):0.02%、メタクリル酸:3%、キレスト
NTB:0.05%、硫酸:0.05%を含む水溶液1
00mlに、トレロン1.5×38mm(東レ製)10
gを浸漬し、実施例1と同様に処理した。加工後の繊維
重量の増加率は9.6%であった。
【0014】実施例4 実施例3のトレロンの代りに、カネカロン(カネカロン
製モダクリル繊維)を用い、同様に処理した。化学分析
によるグラフト率は8.1%であった。
【0015】実施例5 実施例1においてメタクリル酸の代りに2−ヒドロキシ
エチルメタクリレートを用いた以外は同様に処理を行っ
た。加工後の繊維重量の増加率は9.3%であった。
【0016】実施例6 過酸化水素水:0.5%、硫酸第一鉄(FeSO4・7
2O):0.02%、メタクリル酸:1.5%、2−
ヒドロキシエチルメタクリレート:1.5%、キレスト
NTB:0.05%、硫酸:0.1%を含む水溶液10
0mlに、よく洗浄したシルパロン糸100d/−48
f(三菱レーヨン製)10gを浸漬し、100℃で1時
間処理した後、よく水洗乾燥する。処理後の繊維重量増
加率は14%、化学分析によるカルボキシル基含有率は
6.4%であった。
【0017】
【発明の効果】本発明による改質アクリロニトリル系繊
維の製造方法においては、前記のように、触媒として用
いる鉄塩の量が極めて少ないことから、改質繊維には着
色もなく、改質繊維から鉄塩を水洗除去するような脱鉄
処理は特に必要とされない。また、反応温度の制御も容
易であるため、繊維に対するメタクリル系モノマーのグ
ラフト共重合を均一に行うことができる。本発明の改質
アクリロニトリル系繊維は、その分子中にカルボキシル
基やヒドロキシ基を導入したことから、親水性の向上し
たものであると同時に、アンモニアやアミン、屎尿臭等
の塩基性悪臭物質に対する吸着性にすぐれたもので、脱
臭性繊維としての作用を示すものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 過酸化水素と二価鉄塩を含む水溶液中に
    おいて、アクリロニトリル系繊維にメタクリル酸及び/
    又はヒドロキシ基含有メタクリレートをグラフト共重合
    反応させることを特徴とする改質アクリロニトリル系繊
    維の製造方法。
  2. 【請求項2】 アクリロニトリル系繊維に対する前記メ
    タクリル酸及び/又はヒドロキシ含有メタクリレートの
    グラフト化率が3〜60重量%であることを特徴とする
    請求項1の方法。
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